LRTKレフィクシア株式会社

プロトタイプ製作依頼で振動による故障リスクを減らす6つの設計対策

製品開発において、プロトタイプ製作は設計の妥当性を確認し、量産前に不具合を発見するための重要な工程です。特に振動が発生する環境で使用する製品では、外観や基本機能に問題がなくても、運転中の繰り返し振動によって部品の緩み、基板の損傷、配線の断線、筐体の亀裂などが発生する可能性があります。

産業機械に取り付ける電子機器、車両搭載装置、搬送設備の制御機器、屋外設備の監視装置などでは、振動への対策が製品の信頼性を左右します。試作品の段階で振動に対する設計検証が不足していると、量産移行後に故障が顕在化し、設計変更や品質問題につながるおそれがあります。

一方、振動対策は単純に部材を厚くしたり、固定箇所を増やしたりすればよいものではありません。振動の周波数、製品の固有振動数、支持構造、部品の質量、締結方法、材料の疲労特性などを総合的に考慮する必要があります。対策によっては、ある周波数の振動を低減できても、別の条件では振動を増幅させる場合があります。

そのため、プロトタイプ製作を外部に依頼する際は、製作会社に形状や寸法を伝えるだけでなく、使用環境と振動による故障リスクを共有し、設計段階から適切な対策を検討することが重要です。

本記事では、プロトタイプ製作依頼で振動による故障リスクを減らすための6つの設計対策を解説します。さらに、製作会社へ共有すべき仕様、振動試験の進め方、試験結果を設計改善につなげる方法まで紹介します。

プロトタイプ製作で振動対策が重要になる理由

プロトタイプ製作では、製品の形状、寸法、組立性、基本動作などを優先して確認することが一般的です。しかし、実際の使用環境では、静止した状態では確認できない力が継続的に作用します。その代表例が振動です。

振動には、モーターや回転機構などから周期的に発生する振動、走行や搬送によって生じる不規則な振動、周辺設備から伝わる振動などがあります。また、輸送中には道路状況や荷扱いによる振動・衝撃が加わる場合もあります。これらは発生原因や周波数特性が異なるため、同じ製品でも使用条件によって故障の発生箇所が変わる可能性があります。

例えば、電子機器を搭載した筐体が運転中に振動すると、内部の基板やコネクタに繰り返し変形が発生することがあります。基板そのものが破損しなくても、はんだ接合部に応力が集中すれば、長期間の使用によって接続不良が発生する可能性があります。

また、外部から振動が伝わる機械部品では、ボルトの締結力が低下したり、接合面で微小な滑りが繰り返されたりすることがあります。固定部分にガタが生じると振動条件が変化し、異音や摩耗が進行する場合もあります。

特に注意したいのが共振です。製品や部品には、質量や剛性、支持条件によって決まる固有振動数があります。外部から加わる振動の周波数が固有振動数付近になると、条件によっては振動応答が大きくなり、想定以上の変形や応力が発生します。

共振による不具合は、静的な強度計算だけでは十分に評価できないことがあります。製品に加わる力が許容範囲内であっても、繰り返し振動によって局所的に応力が繰り返し作用し、疲労損傷が蓄積して破壊につながる場合があるためです。

さらに、プロトタイプと量産品では、材料、加工方法、組立方法、部品配置が変更されることがあります。試作品で問題が発生しなかったとしても、量産設計への変更によって固有振動数や振動応答が変わる可能性があります。

したがって、プロトタイプ製作では完成した試作品の動作確認だけでなく、振動の発生条件、振動が伝わる経路、損傷しやすい部位を事前に整理することが重要です。

設計初期から振動対策を検討すれば、支持位置の変更、部品配置の見直し、固定方法の改善などを試作段階で評価できます。故障が発生してから局所的に補強する方法と比べて、製品全体の性能や製造性を考慮した対策を選びやすくなります。

対策1:振動条件を明確にして共振を避ける

振動による故障リスクを減らす最初の対策は、製品に加わる振動条件を明確にし、共振が発生しにくい設計を検討することです。

振動対策を依頼する際に「振動に強い構造にしたい」と伝えるだけでは、製作会社が適切な設計条件を判断することは難しくなります。振動の大きさだけでなく、周波数、方向、継続時間、使用状態、固定方法などを具体的に伝える必要があります。

例えば、回転機械に取り付ける装置では、回転数に対応する周波数成分や、その整数倍の周波数成分が問題になる場合があります。回転数が変化する機械では、特定の運転条件でのみ大きな振動が生じる可能性もあります。

一方、搬送装置や移動体に搭載する製品では、複数の周波数成分が重なった不規則な振動を考慮する必要があります。この場合、単一周波数の振動だけでなく、実際の使用環境に近い周波数分布を把握することが重要です。

振動条件を整理する際は、加速度、周波数範囲、振動方向、作用時間を確認します。必要に応じて変位や速度、周波数ごとの振動強度も把握します。衝撃による荷重は通常の連続振動とは異なるため、落下や急停止などが想定される製品では別途評価条件を設定します。

こうした条件が明確になれば、製品の固有振動数が主要な加振周波数に近づかないよう、質量や剛性、支持条件を調整できます。

固有振動数は、一般に剛性が高くなると上昇し、質量が大きくなると低下する傾向があります。ただし、実際の製品には複数の振動モードが存在するため、一部の補強によってすべての振動問題が解決するわけではありません。

例えば、薄い板状部品に補強を追加すると、曲げ変形を抑えられる場合があります。しかし、補強位置や質量の増加によって別の振動モードが変化し、想定外の周波数で振動が大きくなる可能性もあります。

そのため、重要な部品では構造解析による固有振動数の推定と、試作品を使った実測を組み合わせる方法が有効です。設計段階では解析によって共振しやすい部位を把握し、試作後には振動試験などで実際の応答を確認します。

ここで注意したいのは、解析モデルの固定条件と実際の取付状態を一致させることです。試験中の固定方法が実機と大きく異なる場合、固有振動数や振動応答も変化する可能性があります。

また、共振を避ける方法として固有振動数を高くする設計が有効な場合がありますが、すべての製品に適しているわけではありません。防振支持によって高周波振動の伝達を減らしたい場合には、適切な範囲で支持系の固有振動数を低くする設計が必要になることもあります。

重要なのは、振動を一律に小さくすることではなく、製品に加わる振動と各部の応答の関係を把握することです。

プロトタイプ製作を依頼する段階で振動条件を数値や測定記録として共有できれば、製作会社も構造の補強位置や支持方法を検討しやすくなります。実環境の測定データがない場合は、使用する設備の運転条件や取付状態から仮の条件を設定し、試作後の測定結果に応じて見直す進め方が現実的です。

対策2:筐体と支持構造の剛性を最適化する

2つ目の対策は、製品の筐体や支持構造を見直し、振動による過大な変形を抑えることです。

製品の外装やフレームは、内部部品を保護するだけでなく、振動を伝達する経路にもなります。筐体が大きく変形すると、内部の基板、配線、機構部品などに余分な力が加わる可能性があります。

例えば、薄い板材で構成された筐体では、広い平面部分が振動によってたわみやすくなる場合があります。こうした構造では、板厚の変更、補強リブの追加、折り曲げ形状の採用、支持点の配置変更などが検討できます。

ただし、板厚を増やす方法は、剛性を高める一方で製品の質量も増加させます。軽量化が重要な製品では、単純な厚肉化よりも、荷重が集中する部分に必要な補強を配置する方が適切な場合があります。

また、樹脂製の筐体では、ボス形状、リブの配置、壁厚の変化が強度や成形性に影響します。補強を過剰に追加すると、成形時の変形や寸法ばらつきにつながる可能性もあるため、採用する材料や加工方法を踏まえた検討が必要です。

支持構造の設計では、製品をどこで固定するかも重要です。固定箇所が少ない場合、特定の部分に荷重が集中し、繰り返し振動によって変形や亀裂が発生することがあります。

一方、固定箇所を増やしすぎると、部品間の寸法誤差や熱変形によって組立時に余分な応力が生じる場合があります。支持点の数だけでなく、支持位置、取付面の平面度、荷重の伝達経路を考慮する必要があります。

特に重量のある部品を搭載する場合は、重心位置と支持点の関係を確認することが重要です。重心が支持面から大きく離れていると、振動によって支持部に大きな曲げモーメントが加わる可能性があります。

そのため、重量物を支持部に近い位置へ配置する、固定箇所の間隔を調整する、荷重を分散させるなどの方法が考えられます。ただし、部品配置を変更すると配線や放熱、保守性にも影響するため、製品全体の設計条件との調整が必要です。

また、筐体と内部構造の接触部分にも注意が必要です。通常時には隙間が確保されていても、振動時の相対変位によって部品同士が接触する場合があります。この接触が繰り返されると、摩耗、異音、表面処理の損傷などが発生する可能性があります。

こうした問題を防ぐには、振動時に想定される変位を確認し、必要なクリアランスを確保することが重要です。防振支持を採用する場合は、支持部の変形量が大きくなることもあるため、通常運転時だけでなく起動時や停止時の動きも考慮します。

プロトタイプ製作では、筐体の一部分だけを補強する前に、振動がどこから入力され、どの経路を通って内部部品へ伝わるのかを整理することが有効です。

荷重の伝達経路が明確になれば、必要な部分へ効率的に補強を配置でき、重量や組立工数の増加を抑えながら振動応答を改善しやすくなります。

試作品の評価では、変形が大きい箇所、支持部の近く、重量部品の固定箇所などを重点的に確認します。設計変更後は補強によって振動特性が変わっていないかを再評価し、局所的な改善が別の故障リスクを生んでいないかまで検証することが大切です。

対策3:ねじや接合部の緩みとガタを防止する

3つ目の対策は、振動によって発生するねじの緩みや接合部のガタを防止することです。

プロトタイプ製作では、部品の交換や調整がしやすいよう、ねじを使った組立構造が多く採用されます。しかし、振動環境では締結部の設計が不適切な場合、使用中に締結力が低下する可能性があります。

ねじの緩みには複数の原因があります。例えば、接合面で横方向の相対滑りが繰り返されると、条件によってはねじの回転緩みが進行します。また、接触面のなじみ、軟らかい材料の変形、温度変化などによって軸力が低下することもあります。

これらの現象を防ぐには、適切な締結力を確保するとともに、接合面の滑りや変形を抑える構造が必要です。

まず確認したいのが、ねじのサイズ、材質、締結長さ、被締結部材の構造です。必要な軸力に対してねじの強度が不足している場合や、接合部材が過度に変形する場合には、十分な締結性能が得られない可能性があります。

また、締付トルクを指定するだけでは、実際の軸力を完全に一定にすることはできません。ねじの摩擦状態や表面処理、潤滑条件などによって、同じトルクでも軸力にばらつきが生じるためです。

プロトタイプ製作を依頼する際は、締付トルクだけでなく、ねじや座面の状態、組立手順、締付工具の管理方法なども必要に応じて確認します。

緩み止め対策としては、機械的な回り止め構造、ねじの緩みを抑える部品、用途に適した固定剤などが検討できます。ただし、どの方法も使用環境や組立条件によって効果が変わるため、採用するだけで緩みが完全に防止されるとは限りません。

特に樹脂部品をねじで固定する場合は注意が必要です。樹脂は金属と比べて温度や時間の影響による変形が問題になりやすい材料もあり、締結部の圧縮変形によって軸力が低下することがあります。

そのため、金属製の補強部材を組み合わせる、締結部の接触面積を調整する、締付条件を見直すなどの対策を検討します。ただし、補強部材の追加によって応力が集中する場合もあるため、実際の構造に応じた評価が必要です。

ねじ以外の接合方法にも注意が必要です。接着、溶接、かしめ、圧入などを採用する場合、それぞれ振動に対する故障形態が異なります。

例えば、接着構造では接着面の剥離や繰り返し応力による劣化が問題になる場合があります。溶接構造では、溶接部の形状や品質によって疲労強度が変わります。圧入構造では、振動による微小な相対運動や保持力の低下に注意が必要です。

したがって、接合方法を選定する際は、静的な強度だけでなく、振動による繰り返し荷重、温度変化、分解の必要性、検査のしやすさも考慮することが重要です。

試作品の評価では、振動試験前後の締結状態を比較します。目視による確認に加え、必要に応じて締結力を評価する方法や、緩みの有無を確認するための適切な検査方法を採用します。

ただし、試験後の戻しトルクだけで試験前後の軸力変化を正確に判断することは難しい場合があります。重要な締結部では、評価目的に合った測定方法を選ぶことが必要です。

また、ねじの緩みが発生した場合は、単に締付トルクを増やすのではなく、接合面の滑り、支持剛性、振動方向、締結構造などを確認することが重要です。

緩みの原因を特定せずに対策すると、ねじの破損や接合部材の変形など、別の不具合につながる可能性があります。

プロトタイプ製作会社には、組立図だけでなく、重要な締結箇所、締付条件、緩み止めの必要性、分解や再組立の予定を共有しておくと、試作段階から再現性のある組立方法を検討しやすくなります。

対策4:基板・コネクタ・配線への振動負荷を減らす

4つ目の対策は、電子部品や配線に加わる振動負荷を抑え、電気的な接続不良や機械的な損傷を防ぐことです。

電子機器を含むプロトタイプでは、筐体自体に目立った変形がなくても、内部の基板、コネクタ、配線などに局所的な負荷が集中する場合があります。特に振動が長時間続く環境では、部品の固定方法や配線の取り回しが製品の信頼性に影響します。

まず検討したいのが、プリント基板の支持方法です。基板は比較的薄い板状の構造であり、固定位置や搭載部品の質量によって振動時の変形が変わります。支持点の間隔が大きい場合や、重量のある部品が基板中央付近に配置されている場合には、曲げ振動が問題になることがあります。

基板のたわみが大きくなると、電子部品の端子やはんだ接合部に繰り返し応力が生じ、条件によっては接合部の亀裂や接続不良につながります。こうした不具合は初期の動作確認では発見しにくく、振動中や一定期間の使用後に現れる可能性があります。

対策としては、基板の支持位置を見直す、必要な支持部材を追加する、重量部品を機械的に固定する、基板の形状や厚さを検討するなどの方法があります。ただし、支持点を増やすと組立時の反りや取付誤差によって基板へ応力が加わる場合もあるため、固定条件を含めた評価が必要です。

大型のコンデンサ、コイル、コネクタなど、比較的大きな質量を持つ部品については、はんだ接合部だけで振動荷重を受ける構造になっていないか確認します。必要に応じて補助固定や支持構造を設け、荷重を基板全体や筐体へ適切に伝える方法を検討します。

ただし、接着剤や樹脂材料による固定を追加する場合にも注意が必要です。材料の硬さ、熱膨張特性、使用温度、修理性などによっては、固定箇所に新たな応力が発生する可能性があります。単に部品を固めるのではなく、対象部品と使用条件に適した固定方法を選ぶことが重要です。

コネクタについては、振動による抜けや接触状態の変化を防ぐ構造を確認します。ロック機構の有無、嵌合状態、固定方向、ケーブルから伝わる荷重などを検討し、必要に応じて保持機構やケーブル支持を追加します。

コネクタを選定する際は、接点の電気的な仕様だけでなく、想定される振動条件への適合性や製造元が示す使用条件も確認します。接触部に微小な相対運動が生じると、接点材料や環境によっては摩耗や接触抵抗の変化が問題になる場合があります。

配線についても、固定位置と余長の管理が重要です。配線に余長がまったくない場合、筐体や基板の相対変位によって端子部分に引張荷重が集中する可能性があります。一方、余長が過剰な場合は、振動によって配線が周囲の部品に接触し、摩耗や被覆損傷につながることがあります。

そのため、配線の曲げ半径、固定間隔、可動部分との距離、コネクタ付近の負荷軽減などを考慮して取り回しを決めます。ケーブルクランプや支持部材を利用する場合には、固定箇所で配線が過度に圧縮されたり、急激に曲がったりしないよう配慮します。

振動する部品同士を接続する配線では、相対変位を許容できる構造が必要です。動きが想定される部分に適切な余長を設け、繰り返し曲げが一箇所へ集中しないようにします。ただし、許容できる曲げ条件はケーブルの構造や用途によって異なるため、採用する部材の仕様を確認することが前提となります。

プロトタイプ製作依頼では、基板の外形や取付穴だけでなく、重量部品の配置、コネクタの向き、ケーブルの固定方法、組立時の配線経路まで共有することが有効です。

試作品の振動評価では、外観や導通状態の確認に加え、可能であれば振動中の機能監視も行います。一時的な接触不良は振動停止後に再現しない場合があるため、試験中の電気的な状態を記録することで原因を特定しやすくなります。

対策5:防振材と減衰構造を適切に設計する

5つ目の対策は、防振材や減衰構造を適切に選び、製品に伝わる振動や共振時の応答を抑えることです。

振動対策では筐体や部品の剛性を高める方法が検討されますが、振動源から製品へ伝わる力を減らす方法もあります。その代表例が、弾性支持による防振と、振動エネルギーを散逸させる減衰構造です。

防振材には、ゴム系の弾性部材や用途に応じた防振支持部品などがあります。これらを製品と取付面の間に配置すると、条件によっては振動の伝達を低減できます。

ただし、防振材を取り付ければすべての振動が小さくなるわけではありません。防振支持された系にも固有振動数があり、加振周波数がその付近になると、製品側の振動が増幅される場合があります。

一般に、適切に設計された防振支持系では、支持系の固有振動数より十分高い周波数域で振動伝達を低減しやすくなります。一方、低い周波数域や共振付近では、期待した防振効果が得られないことがあります。

したがって、防振材の選定では、対象製品の質量、支持点の数、荷重の方向、加振周波数、必要な変位範囲などを確認する必要があります。

特に製品の重量と防振材の特性の組み合わせは重要です。支持する荷重に対して防振材が硬すぎる場合、想定した振動絶縁効果が得られない可能性があります。反対に、柔らかすぎる場合には静的なたわみや動的変位が大きくなり、周囲の部品との干渉や姿勢の不安定化を招くことがあります。

また、防振材には圧縮、せん断などの荷重方向による特性の違いがあります。使用する部材の許容荷重や変形特性を確認し、実際の設置方向に適した構造とすることが大切です。

ゴムなどの高分子材料では、温度、経年変化、周波数、変形量によって剛性や減衰特性が変化する場合があります。そのため、室温での簡易確認だけでなく、使用温度範囲や想定する運転条件で性能を評価することが望まれます。

一方、減衰構造は振動エネルギーを散逸させ、共振付近の応答を抑える目的で用いられます。例えば、振動する板材に用途に適した制振材料を組み合わせたり、部材間の相対運動を利用した減衰機構を設けたりする方法があります。

ただし、防振と制振は目的が異なります。防振は主に振動源から対象物へ伝わる振動を低減する考え方であり、制振は対象構造の振動応答を抑える考え方です。設計では両者の役割を区別し、必要に応じて組み合わせることが重要です。

例えば、機械設備の振動から電子機器を保護したい場合には、取付部の防振支持を検討できます。一方、筐体の広い板面が特定の周波数で大きく振動する場合には、局所的な補強や制振構造の方が適切な場合があります。

防振材を追加する際は、振動以外の性能にも注意します。放熱経路、接地経路、位置決め精度、防水性、耐候性、保守性などに影響する場合があるためです。

また、起動時や停止時に共振周波数付近を通過する機械では、その過程で大きな変位が生じる可能性があります。必要に応じて変位を制限する構造を検討しますが、制限部材が通常運転中に接触すると振動の伝達経路が変わるため、接触条件まで含めた評価が必要です。

プロトタイプ製作では、防振材を選定する前に、振動を低減したい対象と周波数範囲を明確にすることが重要です。筐体全体への振動伝達を抑えたいのか、特定部品の共振を減らしたいのかによって、適切な対策は異なります。

試作品では、防振材を取り付ける前後で振動応答を比較し、目的とする周波数域で効果が得られているか確認します。同時に、変位量、取付部への荷重、周辺部品との干渉なども評価することで、防振材の追加が別の故障要因にならないようにします。

対策6:繰り返し振動による疲労破損を防ぐ

6つ目の対策は、繰り返し振動による疲労損傷を考慮し、長期間の使用で破損しにくい構造を検討することです。

材料や部品は、一度の荷重では破損しない場合でも、繰り返し応力が作用することによって疲労損傷が進行し、亀裂の発生や破断につながることがあります。

振動による疲労破損は、外観上の大きな変形を伴わずに発生する場合があります。そのため、静的な強度だけで設計の安全性を判断するのではなく、繰り返し荷重の大きさや作用回数を考慮することが重要です。

疲労破損が発生しやすい箇所としては、断面形状が急激に変化する部分、穴の周辺、鋭い角部、溶接部、固定部の付け根などが挙げられます。こうした部分では応力集中が生じやすく、振動による繰り返し荷重が局所的な損傷につながる場合があります。

例えば、筐体の取付ブラケットでは、根元部分に曲げ応力が集中することがあります。静的な荷重に耐えられる構造であっても、運転中の振動によって曲げ応力が繰り返し作用すると、使用期間中に亀裂が発生する可能性があります。

対策としては、角部に適切な丸みを設ける、断面の急激な変化を避ける、荷重の伝達経路を見直す、補強位置を調整するなどの方法が考えられます。

ただし、形状変更によって必ず疲労強度が向上するとは限りません。補強によって剛性が変化すると、別の箇所に応力が集中したり、振動モードが変化したりする場合があるためです。

材料選定も重要な要素です。材料によって疲労特性は異なり、同じ応力条件でも使用環境や加工状態によって寿命が変わる可能性があります。

金属部品では、材料の種類、表面状態、残留応力、溶接や加工による影響などを考慮します。樹脂部品では、繰り返し応力に加えて、温度、湿度、時間依存の変形特性などが問題になる場合があります。

また、腐食が発生する環境では、疲労特性が低下する可能性があります。屋外設備や湿度の高い場所で使用する製品では、表面処理や材料の耐環境性を含めた検討が必要です。

疲労設計では、製品に作用する応力の大きさだけでなく、繰り返し回数や荷重の変動も重要になります。使用中に振動条件が変化する場合には、代表的な運転条件だけでなく、起動、停止、加減速などの状態も考慮します。

必要に応じて、構造解析によって応力集中箇所を推定し、試作品での振動測定やひずみ測定などと組み合わせて評価します。ただし、解析結果は境界条件、材料特性、接触条件などに影響されるため、実測結果との整合性を確認することが重要です。

試作品の段階では、疲労破損が疑われる箇所を重点的に観察し、亀裂、変形、締結部の異常などを確認します。必要に応じて適切な非破壊検査や詳細観察を行い、目視だけでは判断しにくい損傷の有無を評価します。

また、振動試験によって一定時間破損しなかったことだけで、すべての使用条件における寿命を保証できるわけではありません。試験条件と実使用条件の対応関係を確認し、必要な寿命評価の方法を検討することが大切です。

プロトタイプ製作を依頼する際は、想定する使用期間、運転時間、振動の発生頻度、交換可能な部品の範囲などを共有しておくと、耐久性を考慮した構造検討を進めやすくなります。

プロトタイプ製作依頼で共有すべき仕様と確認事項

振動に強いプロトタイプを製作するためには、設計対策だけでなく、製作会社へ渡す情報の整理も重要です。

プロトタイプ製作依頼では、外形寸法や材料、加工方法などの情報だけでなく、振動が発生する使用環境と求める耐久性を共有することが望まれます。

まず明確にしたいのが、製品の使用目的と設置条件です。産業機械に固定するのか、車両に搭載するのか、搬送装置の一部として使用するのかによって、想定する振動条件は変わります。

また、製品の取付方向、固定位置、周辺設備との位置関係も重要です。製品単体で振動試験を行う場合でも、実際の取付状態を適切に再現できなければ、使用環境での振動応答と異なる結果になる可能性があります。

次に確認したいのが、振動の仕様です。周波数範囲、加速度、振動方向、作用時間などを可能な範囲で整理します。不規則な振動が問題になる場合には、周波数ごとの振動強度を示す測定データなども有用です。

実環境の測定データがない場合には、設備の回転数、運転状態、移動条件、取付場所などから暫定的な評価条件を設定する方法があります。ただし、その条件が実際の振動環境を十分に代表しているかは、後の測定や試験で確認する必要があります。

製品内部の情報については、部品配置、重量部品の位置、基板の固定方法、配線経路、コネクタの種類、締結方法などを共有します。振動の影響を受けやすい部品がある場合には、その位置や機能を明確にしておくことが有効です。

さらに、製作会社に設計検討まで依頼する場合には、変更可能な範囲も整理します。筐体形状を変更できるのか、材料変更が可能なのか、内部部品の配置を調整できるのかによって、選択できる振動対策が異なるためです。

評価条件についても事前の合意が必要です。試験中に正常動作を維持する必要があるのか、試験後に機能を確認するのか、外観上の損傷をどこまで許容するのかなど、目的に応じて判定基準を設定します。

例えば、試験後に外観上の破損がなくても、接続不良や測定精度の変化が発生していれば、用途によっては不適合と判断する必要があります。一方、機能に影響しない一時的な振動応答については、設計仕様との関係で評価することになります。

そのため、単に振動試験に合格することを目的とするのではなく、製品の使用目的に対応した機能要件と判定条件を明確にすることが重要です。

また、プロトタイプの製作方法と量産時の製造方法が異なる場合には、その違いを確認しておきます。加工方法、材料特性、部品固定方法などの変更によって振動特性が変わる可能性があるためです。

製作会社との打ち合わせでは、試作品で確認する項目と量産設計へ移行する際に再検証する項目を区別しておくと、試験結果を適切に活用しやすくなります。

振動試験と不具合解析を設計改善につなげる方法

振動対策を検討したプロトタイプは、実際の使用環境や想定条件に応じた試験によって評価することが重要です。

振動試験には、一定の周波数で加振する方法、周波数を変化させる方法、不規則な振動を再現する方法などがあります。試験方法は製品の使用条件と評価目的に応じて選定します。

例えば、特定の回転数で振動が問題になる装置では、周期的な加振条件を用いた評価が有効な場合があります。一方、車両や搬送設備などで幅広い周波数の振動が発生する場合には、ランダム振動試験などが適していることがあります。

ただし、試験方法ごとに再現できる振動の特性は異なります。実際の振動環境を十分に確認せず、単一の試験条件だけで耐久性を判断することは避ける必要があります。

試験条件を決める際には、入力する振動の大きさ、周波数範囲、振動方向、作用時間、試験中の製品状態などを整理します。試験装置への固定方法も重要であり、実機での支持条件との違いが評価結果に及ぼす影響を検討します。

振動試験では、試験装置に設定した加振条件だけでなく、必要に応じて製品側の振動応答も測定します。筐体、基板支持部、重量部品の固定箇所など、故障リスクが高い位置を選んで測定すると、振動が増幅されやすい部位を把握しやすくなります。

また、試験中の機能監視も重要です。電子機器では、振動によって一時的な接触不良や信号異常が発生しても、試験終了後には正常動作へ戻る場合があります。

そのため、必要に応じて電源状態、通信状態、出力信号、センサーの測定値などを記録し、振動中に機能の異常が発生していないか確認します。

試験後には、外観、締結状態、コネクタの嵌合、配線の損傷、基板や筐体の亀裂などを確認します。試験前の状態を写真や測定記録として残しておくと、試験後の変化を比較しやすくなります。

不具合が発生した場合には、単に破損箇所を補強するのではなく、振動の入力条件と応答を確認し、原因を整理することが重要です。

例えば、ブラケットの根元に亀裂が発生した場合には、応力集中だけでなく、共振、支持条件、締結状態、材料特性などが関係している可能性があります。原因を特定せずに板厚を増やすと、質量や固有振動数が変化し、別の箇所で問題が発生する場合があります。

また、配線の断線が発生した場合には、配線そのものの強度だけでなく、固定位置、余長、曲げ半径、周辺部品との接触などを確認します。断線した配線を単純に太くする方法が、必ずしも適切な解決策になるとは限りません。

設計改善では、問題が発生した原因に対応する変更を行い、変更前後の振動応答や機能状態を比較します。可能であれば、変更内容と評価結果を記録し、どの対策が効果を示したのかを明確にします。

試験条件を変更する場合には、変更前後の結果を単純に比較できないことがあります。そのため、同じ条件での再試験を基本とし、試験条件を変更した場合にはその理由と影響を記録することが重要です。

さらに、プロトタイプの評価結果を量産設計へ反映する際には、量産時の材料、加工方法、組立条件を確認します。試作品で振動試験を実施していても、量産時に支持構造や締結方法が変更されれば、必要に応じて再評価することが望まれます。

このように、振動試験は単なる合否判定ではなく、製品の弱点を把握し、設計改善の妥当性を確認するための工程として活用することが大切です。

まとめ:振動に強いプロトタイプを実現するために

プロトタイプ製作依頼で振動による故障リスクを減らすには、製作後の補強だけに頼らず、設計初期から振動条件と故障要因を整理することが重要です。

まず、使用環境に応じた振動の周波数、加速度、方向、作用時間を把握し、共振が問題になりにくい構造を検討します。次に、筐体や支持構造の剛性、ねじや接合部の固定方法、基板や配線の支持状態を確認し、振動による変形や接続不良を抑える対策を検討します。

さらに、防振材や減衰構造を採用する場合には、その特性と使用条件の関係を確認する必要があります。繰り返し振動による疲労破損についても、材料特性や応力集中、想定する使用期間を考慮した評価が重要です。

振動に対する適切な設計は、製品の構造や使用環境によって異なります。剛性を高める方法、防振支持を採用する方法、部品の配置を変更する方法などにはそれぞれ利点と制約があり、一つの対策ですべての故障リスクを解消できるわけではありません。

そのため、プロトタイプ製作会社には図面や形状情報だけでなく、振動条件、取付方法、重要部品、求める機能、評価基準を具体的に共有することが大切です。

試作品では、解析や振動試験を通じて振動応答と不具合の関係を確認し、得られた結果を次の設計改善につなげます。量産設計へ移行する際にも、材料や加工方法、組立条件の変更による影響を確認することで、試作段階の検証結果をより有効に活用できます。

プロトタイプ製作を依頼する際は、単に仕様どおりの形状を製作できるかだけでなく、使用環境を踏まえた設計検討や評価方法について相談できるかも確認するとよいでしょう。

製作依頼の段階から振動対策を組み込むことで、不具合の早期発見と設計改善を進めやすくなり、量産後の故障リスクを低減するための判断材料を得ることができます。

ものづくりの次の一歩を、
相談から始めてみませんか。

加工・製造の外注先や共同開発のパートナー探しに。大田区産業振興協会の受・発注あっせん相談サービスをご利用いただけます。

ものづくり 外注先を探す。公益財団法人大田区産業振興協会の受・発注あっせん相談。無料でプロに相談!公的機関だから安心!
ものづくりの協力先探し大田区産業振興協会無料相談