試作品の製作を依頼する際、3Dプリントを活用すれば複雑な形状や一体構造の部品を製作しやすくなります。しかし、完成した試作品に力を加えたとき、積層した境界部分から割れたり、造形中に層が剥がれたりするトラブルが発生することがあります。特に、組立確認や動作試験に使用する機能試作品では、積層割れによって本来確認したい性能を評価できなくなる場合があります。
3Dプリント品の積層割れは、単純に材料の強度だけで決まるものではありません。造形方向、材料の乾燥状態、ノズル温度、積層ピッチ、造形速度、造形環境などが複雑に関係しています。同じ3Dデータを使用しても、造形条件が異なれば破損のしやすさが変わるため、製作を外部へ依頼する際には条件の確認が重要です。
また、見た目がきれいに仕上がっていても、内部の接合状態が十分とは限りません。試作品に求める強度や使用条件を明確にしないまま製作を進めると、納品後の組立試験で破損が見つかり、再設計や再製作が必要になることがあります。
この記事では、試作品製作依頼で3Dプリント品の積層割れを防ぐために確認したい6つの造形条件を解説します。積層割れの原因から、製作依頼時の仕様の伝え方、試作品の検査方法まで、実務で活用できる考え方を紹介します。
なお、ここで解説するノズル温度、押出量、内部充填などの条件は、主に熱可塑性樹脂を用いる材料押出方式の3Dプリントを対象としています。光造形方式や粉末を使用する方式では、材料の接合原理や品質を左右する条件が異なるため、同じ設定方法をそのまま適用することはできません。
3Dプリント品で積層割れが発生する原因と基本的な仕組み
3Dプリント品の積層割れとは、積み重ねた材料の層と層の境界付近で亀裂が生じたり、接合部分が剥離したりする現象です。材料押出方式の3Dプリントでは、加熱して軟化または溶融させた樹脂をノズルから押し出し、細い線状の材料を重ねながら立体形状を作ります。このとき、隣接する材料同士が十分に接合していないと、境界部分が破損の起点になりやすくなります。
積層割れを理解するうえで重要なのは、造形品の強度に方向性があることです。一般に、材料を連続して押し出した線の方向と、積層面を引き離す方向では、破壊の仕方や強度が異なる場合があります。これを強度の異方性と呼びます。特に積層面に垂直な引張荷重が作用すると、層間の接合状態が弱点になることがあります。
例えば、細長いブラケットを立てた状態で造形した場合と、寝かせた状態で造形した場合では、荷重に対する積層面の向きが変わります。使用中に曲げ荷重が加わる部品では、造形方向によって亀裂の発生位置が変化する可能性があります。そのため、試作品の強度を考える際には、形状だけではなく、どの方向から力が加わるのかを把握する必要があります。
もう一つの要因は、造形中の温度変化です。押し出された樹脂は冷却されるにつれて固化し、材料によっては収縮します。前の層が冷えすぎている場合や、部品内部に大きな温度差が発生している場合には、接合状態の低下や残留応力の発生につながります。残留応力とは、外部から力を加えていない状態でも部品内部に残っている応力のことです。これが大きくなると、造形中や造形後に亀裂が生じる原因になります。
さらに、材料の吸湿、押出量の不足、過度な冷却、内部充填の不足、急激な肉厚変化なども破損に関係します。こうした要因が複数重なると、外観に大きな異常がなくても、実際の使用時に積層割れが発生することがあります。
なお、積層割れと造形台からの剥がれは区別する必要があります。造形台から部品の底面が浮き上がる現象は、反りや初層の密着不足が主な原因となることがあります。一方、部品の途中に水平な亀裂が生じる場合は、層間接合や熱収縮の影響を重点的に確認します。両者は関連することもありますが、適切な対策は同じとは限りません。
試作品製作を依頼する際には、まず使用中の破損を防ぎたいのか、造形中の剥離を防ぎたいのかを整理することが大切です。この違いを明確にしておくと、製作会社と造形条件を検討しやすくなります。
造形条件1:荷重方向を考慮して積層方向と造形姿勢を決める
3Dプリント品の積層割れを防ぐうえで、最初に確認したいのが造形方向です。造形方向とは、部品を造形台に対してどのような向きで配置し、どの方向へ層を積み重ねるかを示す条件です。同じ形状でも造形姿勢を変更することで、荷重と積層面の関係が変わり、破損のしやすさに違いが生じます。
材料押出方式では、積層面に垂直な方向へ引張荷重が作用すると、層間の接合部分が破壊の起点になることがあります。そのため、強度が必要な部位では、想定する主な荷重が積層面を引き離す方向に作用しないよう、造形方向を検討することが基本になります。
例えば、片持ち形状のブラケットを製作する場合、先端に加わる荷重によって根元に曲げ応力が発生します。このとき、根元の引張応力が積層面を開く方向に作用すると、層間割れにつながる可能性があります。部品を横向きに配置することで改善できる場合もありますが、最適な姿勢は荷重方向、形状、内部充填、固定方法などによって異なります。
製作依頼時には、単に3Dデータを渡すだけではなく、部品をどの向きで使用するのか、どこを固定するのか、どの部分に荷重が集中するのかを伝えることが重要です。特に、ねじで締結する部分、軸を保持する部分、繰り返し曲げられる部分などは、破損の起点になりやすいため、重点的に確認します。
一方で、造形方向は強度だけを考えて決めればよいわけではありません。造形姿勢によって、表面の段差、穴の寸法精度、支持構造の必要量、取り外し後の表面品質も変わります。強度を優先した結果、重要な嵌合面の精度が確保しにくくなる場合もあります。
そのため、試作品製作の依頼では、強度を優先する面と寸法精度を優先する面を区別して伝えることが効果的です。例えば、荷重を受ける腕の部分は積層方向を重視し、組立基準となる穴や平面は必要に応じて後加工を前提とする方法があります。
また、部品に複数方向から荷重が加わる場合には、一つの造形方向だけですべての強度条件を満たせるとは限りません。必要に応じて形状の変更や部品の分割、補強構造の追加を検討します。
重要なのは、造形方向を製作会社の作業都合だけで決めず、試作品の使用目的と合わせて確認することです。積層面の向きを設計段階から意識することで、完成後の積層割れリスクを抑えやすくなります。
造形条件2:材料の乾燥状態と保管条件を管理する
積層割れを防ぐためには、造形に使用する材料の状態も重要です。材料押出方式で使用する樹脂材料の中には、空気中の水分を吸収しやすいものがあります。吸湿した材料をそのまま加熱すると、含まれていた水分が押出工程で気化し、押出状態や造形品質を不安定にすることがあります。
水分の影響によって、押し出した材料に気泡が発生したり、表面が粗くなったり、材料の吐出が不均一になったりする場合があります。材料や加工条件によっては、加熱中の加水分解などによって樹脂の性質が変化することもあります。こうした状態は、層間接合の不安定化につながる要因の一つです。
試作品の外観が一見きれいに仕上がっていても、細かな空隙が内部に残っている可能性があります。内部の空隙や材料劣化は、引張荷重や曲げ荷重を加えた際の破壊に影響するため、機能評価用の試作品では材料管理を軽視できません。
そこで製作依頼時には、使用する樹脂の種類に加え、必要な乾燥処理が実施されるかを確認します。材料ごとに吸湿特性や適切な乾燥条件が異なるため、一律の温度や時間を指定するのではなく、材料の仕様と実績に基づいて条件を決めることが重要です。
乾燥温度を必要以上に高くすると、材料が軟化して変形したり、熱による劣化が進んだりするおそれがあります。また、乾燥時間が不足すると内部の水分を十分に除去できない場合があります。乾燥処理は温度だけでなく、時間、乾燥装置の状態、材料の形状なども含めて管理する必要があります。
材料を乾燥した後の保管方法にも注意が必要です。乾燥後に長時間湿度の高い場所へ放置すると、材料によっては再び吸湿が進みます。特に長時間の造形では、造形開始時と終了時で材料の状態が変化する可能性も考慮します。
保管時には、材料の特性に応じた密閉容器や乾燥環境を利用し、開封日や乾燥履歴などを記録する方法が有効です。高い品質再現性が求められる場合には、材料ロットと使用履歴をひも付けて管理することで、不具合発生時の原因調査が容易になります。
製作会社へ依頼する際は、材料名だけでなく、機能試験に使用するため層間強度を重視していることも共有します。外観確認用の試作品と、繰り返し荷重を受ける機能試作品では、求められる材料管理の厳しさが異なるためです。
乾燥状態を適切に管理しても、造形温度や押出量が不適切であれば積層割れを防げるとは限りません。しかし、材料状態を安定させることは、ほかの造形条件の効果を正しく評価するための重要な前提になります。
造形条件3:ノズル温度を適正化して層間の接合を安定させる
材料押出方式の3Dプリントでは、ノズル温度が層間の接合状態に影響します。ノズル温度とは、樹脂材料を加熱して押し出す部分の設定温度です。材料が適切な状態で押し出され、前に形成した層と十分に接触することが、安定した造形品質につながります。
ノズル温度が低すぎる場合、樹脂の流動性が不足し、材料同士の接触や接合が不十分になることがあります。その結果、積層した材料の境界に空隙が残ったり、層間の接合強度が低下したりする可能性があります。
特に、細い壁や小さな突起など、もともと接合面積が限られる形状では、こうした影響が問題になることがあります。外観上の積層線が整っていても、内部の接合状態が十分であるとは限らないため注意が必要です。
一方、ノズル温度を高くすれば必ず積層割れを防げるわけではありません。温度が高すぎると、材料の熱劣化、糸引き、形状の崩れ、寸法精度の悪化などが生じる場合があります。熱に弱い樹脂では、過度な加熱によって材料本来の性能が低下する可能性もあります。
そのため、適切なノズル温度は材料の仕様を出発点とし、使用する造形装置、押出速度、積層ピッチ、周囲の温度条件などを考慮して設定することが重要です。材料の種類だけで一つの温度を決めるのではなく、実際の造形状態に合わせた調整が必要になります。
また、ノズルの設定温度と、前の層に接触する時点の樹脂温度は必ずしも同じではありません。材料がノズル内部で加熱される時間や、押出後に冷却される速度によって、層間の熱的な接合条件は変化します。
このため、造形温度を変更する場合には、造形速度や冷却条件も合わせて確認する必要があります。ノズル温度だけを変更しても、ほかの条件が適切でなければ期待した改善につながらないことがあります。
試作品製作の依頼では、製作会社がその材料について十分な造形実績を持っているかを確認するとよいでしょう。過去の実績がある場合でも、部品の大きさや形状が変われば温度条件の見直しが必要になる場合があります。
機能試作品では、必要に応じて評価用試験片を製作し、温度条件ごとの層間破壊の傾向を比較する方法が有効です。試験片を比較する際は、造形方向、形状、充填条件などを統一し、温度以外の影響をできるだけ小さくします。
温度条件を決める際には、表面の仕上がりだけで判断せず、寸法精度と必要な強度を両立できる範囲を探ることが大切です。適切なノズル温度の設定は、積層割れ対策の基本となる重要な造形条件です。
造形条件4:積層ピッチ・押出量・造形速度を調整する
積層ピッチ、押出量、造形速度も、3Dプリント品の積層割れに関係する条件です。これらは個別の設定項目ですが、実際には互いに影響し合うため、組み合わせて検討する必要があります。
積層ピッチとは、一層ごとに積み重ねる高さのことです。積層ピッチを小さくすると、一般に表面の段差を細かくしやすくなります。一方で、造形する層の数が増えるため、造形時間や各層の冷却状態も変化します。
積層ピッチが大きすぎる場合には、ノズルから押し出した材料と前の層との接触状態が不十分になり、層間の接合に悪影響を与えることがあります。ただし、積層ピッチを小さくすれば必ず強度が向上するわけではありません。ノズル径や押出線幅、材料の性質によって適切な範囲は異なります。
押出量も重要です。必要な量より少ない樹脂しか供給されない場合、材料同士の間に隙間が発生し、接合面積が不足する可能性があります。この状態は押出不足と呼ばれ、内部空隙や外周壁の欠損として現れることがあります。
逆に、押出量を過剰に増やすと、材料が余分にはみ出し、寸法精度や表面品質が悪化する場合があります。ノズルの移動経路と押出量のバランスが崩れると、局所的な盛り上がりや造形不良の原因にもなります。
そのため、押出量の設定では、材料の供給状態、ノズル径、押出線幅、積層ピッチの関係を確認する必要があります。造形データ上の設定だけでなく、実際に形成された線の幅や隣接線の接触状態を確認することが重要です。
造形速度についても同様です。速度が速すぎると、材料を十分に加熱・供給できず、押出不足や不安定な接合が発生する場合があります。特に、樹脂の流動性が低い条件や、大量の材料を連続して押し出す条件では注意が必要です。
一方で、造形速度を極端に遅くすると、材料が高温部分に滞留する時間が長くなったり、前の層が次の層を形成するまでに冷えたりするなど、別の問題が生じる可能性があります。造形速度は遅いほどよいという単純な関係ではありません。
また、部品の形状によって、一層を造形する時間は異なります。小さな部品では同じ場所へ短時間で次の層が積み重なり、大きな部品では前の層が長時間冷却されることがあります。これにより、同じ造形条件でも層間の接合状態が変化する場合があります。
試作品製作を依頼する際には、表面品質を優先するのか、強度を優先するのか、寸法精度を優先するのかを明確にしておくことが大切です。製作会社は要求品質に合わせて条件を調整しやすくなります。
特に積層割れが問題となる部品では、積層ピッチだけを細かくするのではなく、押出状態と造形速度を含めて最適化することが重要です。必要に応じて試験片で条件を比較し、安定した接合が得られる設定を選択します。
造形条件5:造形室温度と冷却条件を適切に管理する
造形中の温度環境は、積層割れの発生に大きく関係します。特に、冷却時の収縮が大きい材料を使用する場合には、造形室温度や冷却方法を適切に管理する必要があります。
樹脂材料は、加熱された状態から冷却される際に寸法が変化します。造形品の内部で温度差が大きくなると、部分ごとに収縮量の違いが生じ、内部応力が発生することがあります。この応力が層間の接合部分に集中すると、積層割れにつながる可能性があります。
例えば、大きな平板形状の部品では、外周部が先に冷えることで反りが発生する場合があります。また、高さのある箱形状や厚い壁を持つ部品では、造形途中に内部と表面の温度差が生じ、特定の高さで亀裂が発生することがあります。
こうした問題を抑えるためには、造形中の温度変化を適切に管理することが重要です。造形室の温度を安定させることで、急激な冷却や局所的な温度差を抑えられる場合があります。ただし、造形室の温度を制御できるかどうかは装置によって異なるため、使用設備に応じた対策を検討します。
また、すべての材料で造形室温度を高くすればよいわけではありません。材料によっては過度な保温により、細部の変形や表面品質の低下が発生する場合があります。適切な造形室温度は、材料の熱的特性と造形装置の仕様を考慮して設定する必要があります。
造形台の温度も確認すべき条件です。造形台を適切に加熱すると、初層の密着状態を安定させ、底面の反りを抑えやすくなる場合があります。ただし、造形台の温度管理だけで、部品全体の層間接合を保証できるわけではありません。
部品の高さが増すと、造形台から離れた部分では温度条件が変化します。そのため、高さのある試作品では、造形台だけでなく造形室全体の温度環境にも注意が必要です。
冷却ファンの設定も重要です。冷却を強めることで、細かな形状の崩れを抑えたり、張り出した部分の造形を安定させたりできる場合があります。一方で、冷却が過剰になると、前の層の温度が下がりすぎ、層間の接合に悪影響を与える可能性があります。
冷却条件は、材料の種類だけでなく、部品の形状や造形速度によっても調整が必要です。特に、細い柱状の部分と厚い壁が混在する部品では、同じ冷却設定でも部分ごとに温度履歴が異なります。
また、造形終了後の冷却方法にも注意します。高温の造形品を急に冷却すると、材料や形状によっては内部応力や変形が発生する場合があります。造形終了直後に部品を取り外すのではなく、材料の特性と製作条件に応じた冷却手順を設定することが望まれます。
試作品製作の依頼では、使用材料に適した保温環境が確保できるか、造形中に外気の影響を受けにくいか、冷却条件を調整できるかを確認するとよいでしょう。
特に、大型部品や厚肉部品を依頼する場合には、温度環境の影響が大きくなる可能性があります。造形サイズが大きいほど積層割れが必ず起こるわけではありませんが、部品全体の温度差や収縮を考慮した条件設定が重要になります。
造形条件6:外周壁・内部充填・支持構造を強度に合わせて設計する
積層割れを防ぐためには、造形時の外周壁や内部充填の設定も重要です。3Dプリント品は、見た目の外形が同じでも、内部構造によって荷重の伝わり方や変形のしやすさが変わります。
外周壁とは、部品の外形に沿って形成される押出線を積み重ねた壁状の部分です。外周壁の厚さや形成する線の本数は、部品の形状保持や荷重支持に影響します。特に、曲げ荷重を受ける部品では、外周部分が応力を多く負担することがあります。
外周壁が薄すぎる場合、荷重によって局所的な変形が生じ、破損につながる可能性があります。一方で、必要以上に外周壁を厚くすると、内部充填との関係や熱収縮の状態が変化するため、単純に厚くすればよいというものではありません。
内部充填は、部品の内部に形成する構造です。充填率や充填パターンによって、部品の剛性、質量、荷重伝達の経路が変化します。内部充填を増やすことで強度や剛性の改善が期待できる場合がありますが、積層面自体の接合不良を解消できるとは限りません。
特に、層間の接合が不十分な状態では、内部充填を増やしても積層割れが残る可能性があります。そのため、外周壁や充填構造の調整は、材料状態や造形温度などの基本条件が適切であることを確認したうえで行う必要があります。
部品形状そのものの見直しも重要です。薄い壁と厚い壁が急激につながる部分や、鋭い角を持つ部分では、荷重や熱収縮による応力が集中することがあります。このような箇所に亀裂が発生する場合には、肉厚の変化を緩やかにしたり、角部に丸みを設けたりすることで改善できる可能性があります。
例えば、ブラケットの根元に補強リブを追加する方法があります。リブを適切な位置に配置することで、荷重による変形を抑えられる場合があります。ただし、リブの接続部分に新たな応力集中が発生しないよう、形状と積層方向を合わせて検討する必要があります。
支持構造も造形品質に関係します。張り出し形状や空中に形成される部分では、造形中に材料を支えるための支持構造が必要になることがあります。支持構造の配置が不適切な場合、造形中のたわみや接触不足によって局所的な品質低下が発生する可能性があります。
また、支持構造を取り外す工程で、薄い壁や突起に力が加わり、積層面から破損する場合もあります。支持構造が必要な箇所では、取り外し方向や工具の接触位置まで考慮することが重要です。
試作品製作を依頼する際には、製作会社が内部充填や支持構造を自由に変更してよいのか、それとも設計者の承認が必要なのかを明確にしておくとよいでしょう。特に強度評価用の試作品では、内部構造が変わると評価結果を比較しにくくなるため注意が必要です。
完成した部品に必要な強度が得られない場合には、造形条件だけで対応しようとせず、部品の分割、一部の補強、別工法との組み合わせなども検討します。荷重を繰り返し受ける部品や、安全性が重要な部品では、3Dプリント品をそのまま使用できるかを慎重に判断する必要があります。
外周壁、内部充填、支持構造を適切に設定することは、積層割れのリスクを抑えるだけでなく、試作品の評価目的に合った構造を実現するためにも重要です。
試作品製作依頼で事前に共有したい図面と仕様情報
3Dプリント品の積層割れを防ぐには、造形条件を製作会社へ任せきりにするのではなく、必要な情報を依頼段階で共有することが大切です。特に、機能試作品では見た目の再現だけでなく、使用中の強度や変形に関する要求を伝える必要があります。
まず共有したいのは、試作品の使用目的です。外観確認用なのか、組立確認用なのか、動作試験用なのかによって、重視すべき条件が変わります。外観確認用であれば表面品質や形状再現性が重要になる場合がありますが、機能試作品では荷重や温度に耐えられることが優先される場合があります。
次に、部品へ加わる荷重の条件を伝えます。荷重の大きさだけでなく、力が加わる方向、固定位置、荷重を加える回数、使用中の変位などを整理します。例えば、一度だけ組み立てる部品と、繰り返し着脱する部品では、想定すべき破損の仕方が異なります。
ねじ締結部や嵌合部についても情報が必要です。締結時には局所的な圧縮や引張、曲げなどが発生する場合があります。また、嵌合時に部品を押し広げる構造では、積層方向によって破損のしやすさが変わる可能性があります。
図面には、重要寸法や許容差に加え、荷重がかかる箇所、変形を許容できない箇所、表面状態を重視する箇所を明示すると効果的です。3Dデータだけでは読み取れない使用条件を補足することで、製作会社が適切な造形方向を検討しやすくなります。
材料指定については、必要な特性を伝えることが重要です。強度、剛性、耐熱性、耐薬品性、耐衝撃性など、求める性能を整理します。特定の樹脂を指定する場合でも、その材料が造形条件や使用環境に適しているかを確認します。
また、実際の使用環境も共有します。屋内で短時間だけ使うのか、屋外で日射や温度変化を受けるのか、湿度の高い環境で使用するのかによって、適切な材料や評価方法が変わります。
積層割れを防ぐことが重要な部品では、造形方向の確認方法も事前に決めておくとよいでしょう。例えば、製作前に造形姿勢を示した資料を確認し、荷重方向との関係について合意しておく方法があります。
さらに、造形後に実施する仕上げ加工についても確認が必要です。支持構造の除去、表面研磨、穴加工、ねじ加工などでは、造形品に追加の力や熱が加わる場合があります。これらの工程によって積層面に損傷が生じないよう、加工順序や保持方法を検討します。
試作品の納品条件も明確にします。外観だけの確認でよいのか、重要寸法の測定結果が必要なのか、強度評価用の試験片を同時に製作するのかを決めます。必要な記録を事前に指定することで、納品後の評価を円滑に進められます。
製作会社と相談する際には、すべての造形パラメータを依頼者側で細かく指定する必要はありません。重要なのは、要求性能と制約条件を正確に共有し、製作側が提案する造形条件が目的に合っているかを確認することです。
このように、3Dデータ、図面、使用条件、品質要求を組み合わせて伝えることで、積層割れの原因となる認識違いを減らしやすくなります。
積層割れを見逃さない試作品の検査と評価方法
3Dプリント品は、外観が完成していても内部の接合状態が十分であるとは限りません。そのため、積層割れが問題となる試作品では、納品後の検査と機能評価が重要です。
最初に実施したいのは外観検査です。積層面に沿った亀裂、外周壁の隙間、異常な段差、局所的な剥がれなどがないかを確認します。特に、部品の角部、薄肉部、ねじ締結部、ブラケットの根元など、応力が集中しやすい部分を重点的に観察します。
外観検査では、亀裂がどの方向に伸びているかも重要な情報になります。積層面に沿って亀裂が発生している場合は、層間接合や熱収縮の影響が考えられます。一方、材料の押出方向を横切るように破断している場合には、荷重条件や部品形状なども含めて検討する必要があります。
次に、寸法検査を実施します。造形中の反りや収縮によって形状が変化している場合、組立時に無理な力が加わり、積層割れの原因になることがあります。特に、相手部品との嵌合寸法や、締結時の位置関係を確認することが重要です。
組立確認では、設計時に想定していなかった荷重が発生していないかを観察します。例えば、穴位置のずれによってねじ締結時に部品が引っ張られる場合や、嵌合がきつすぎて壁部分が広がる場合があります。このような状態では、造形品質が良好でも破損する可能性があります。
機能試作品では、実際の使用条件を模擬した負荷試験を検討します。曲げ荷重、引張荷重、繰り返し着脱、締結操作など、用途に応じた評価を行います。ただし、負荷試験では破損時の飛散や急激な変形などの危険があるため、試験方法と安全対策を事前に決める必要があります。
評価に使用する荷重や繰り返し回数は、試作品の目的に合わせて設定します。試験片や試作品の強度を比較する場合には、同じ形状、同じ造形方向、同じ試験条件で評価することが重要です。
必要に応じて、製品とは別に強度評価用の試験片を造形する方法もあります。試験片を使用すれば、温度や造形方向などを変更した場合の影響を比較しやすくなります。ただし、単純な試験片で得られた結果が、複雑な形状を持つ実部品の強度と完全に一致するわけではありません。
また、破損が発生した場合には、破断面の状態を確認します。層と層の境界で剥がれているのか、材料内部で破断しているのか、空隙が多いのかなどを観察することで、原因の絞り込みに役立ちます。
検査結果は写真と記録を組み合わせて残すことが望まれます。造形条件、試作品の識別番号、検査日、荷重条件、破損位置などを記録しておけば、再製作時に改善効果を比較できます。
重要なのは、試作品が一度の試験に耐えたことだけで、長期使用時の安全性まで保証されたと判断しないことです。繰り返し荷重、温度変化、湿度、経年変化などによって性能が変化する場合があります。
試作品の評価では、製品化に必要な条件を満たしているかを段階的に確認することが大切です。適切な検査と評価を行うことで、積層割れを早期に発見し、次の設計改善につなげられます。
積層割れが発生したときの原因分析と再製作の進め方
試作品に積層割れが発生した場合、すぐに造形温度を変更したり、充填率を上げたりするのではなく、まず破損状況を整理することが重要です。原因を十分に確認しないまま条件を変更すると、別の不具合が発生したり、改善効果を正しく判断できなくなったりする可能性があります。
最初に確認したいのは、破損が発生したタイミングです。造形中に割れたのか、造形後の取り外しで割れたのか、組立時に割れたのか、負荷試験中に割れたのかによって、疑うべき原因が変わります。
造形中に層間の亀裂が発生する場合には、材料の収縮、造形室の温度、冷却条件、層間接合などを重点的に確認します。特に、高さのある部品で一定の高さに沿って割れが発生している場合には、造形中の温度履歴が関係している可能性があります。
造形台から取り外す際に破損した場合には、取り外し方法や支持構造の配置を見直します。薄肉部や突起に過剰な力が加わっていないか、工具の使用方法が適切かを確認します。
組立時に破損した場合には、寸法精度や嵌合条件、締結方法を確認します。設計上の隙間が不足している場合や、ねじ締結によって積層面を開く方向へ荷重が加わる場合には、造形条件だけでなく設計変更が必要になることがあります。
負荷試験中に破損した場合には、荷重方向と積層方向の関係を確認します。積層面に垂直な引張応力が大きい場合には、造形方向を変更することで改善できる可能性があります。
また、破損した試作品と正常な試作品がある場合には、材料ロット、造形装置、造形条件、保管状態などの違いを比較します。同じ3Dデータを使用していても、材料や造形環境の違いによって品質が変わることがあります。
原因を調査する際は、変更する条件をできるだけ限定することが効果的です。例えば、ノズル温度の影響を確認したい場合には、ほかの主要な造形条件を固定して比較します。複数の条件を一度に変更すると、どの変更が改善につながったのか判断しにくくなります。
ただし、造形条件同士が強く関係している場合には、一つの条件だけでは十分な改善が得られないこともあります。その場合には、原因の仮説を整理したうえで、複数条件の組み合わせを計画的に比較します。
再製作では、変更した条件と評価結果を記録します。造形方向を変更した場合には、変更前後の姿勢が分かる資料を残します。温度や速度を変更した場合には、設定値と外観、寸法、強度などの評価結果を対応付けます。
このような履歴を残しておくと、同じ形状の再製作だけでなく、類似部品の製作にも知見を活用できます。試作品製作を一度きりの作業として扱うのではなく、設計条件と造形条件を蓄積する工程として考えることが重要です。
なお、複数回の条件調整を行っても必要な強度が得られない場合には、材料や造形方式そのものを見直す必要があります。積層割れが発生しにくい方向へ造形姿勢を変更できない場合や、荷重条件が厳しい場合には、切削加工など別の製作方法を検討することも有効です。
3Dプリントによる製作に固執せず、試作品の評価目的を達成できる方法を選択することが、再製作の繰り返しを減らすための重要な考え方です。
まとめ:6つの造形条件を確認して試作品の品質を安定させる
試作品製作依頼で3Dプリント品の積層割れを防ぐには、材料の強度だけでなく、造形方向、材料状態、温度、押出条件、冷却環境、内部構造を総合的に考えることが重要です。
特に重要なのは、積層方向と荷重方向の関係を理解することです。どれほど適切な温度や速度で造形しても、使用時の荷重が層間の弱い方向に集中する構造では、期待した強度を確保できない場合があります。設計段階から荷重の伝わり方を確認し、適切な造形姿勢を選択する必要があります。
また、材料の乾燥状態やノズル温度が不適切であれば、層間接合が不安定になる可能性があります。積層ピッチ、押出量、造形速度についても、一つの条件だけを最適化するのではなく、組み合わせて評価することが重要です。
さらに、造形室温度や冷却条件を適切に管理することで、急激な温度変化や収縮による不具合を抑えられる場合があります。外周壁、内部充填、支持構造についても、部品の使用目的と荷重条件に合わせた設定が必要です。
試作品製作を外部へ依頼する際には、3Dデータに加えて、使用目的、荷重条件、重要寸法、要求する品質、検査方法を共有することが効果的です。製作会社と条件をすり合わせることで、単に形状を再現するだけでなく、実際の評価に使用できる試作品を製作しやすくなります。
また、試作品は製作して終わりではありません。納品後の外観検査、寸法確認、組立試験、負荷試験などを通じて、想定した機能が得られているかを確認することが大切です。破損が発生した場合も、原因と対策を記録することで、次回の試作や製品化に役立てられます。
建設・土木分野では、3Dプリントを活用して施工治具、設備部品の模型、現場確認用の試作品などを製作する場面も考えられます。こうした試作品を現場で検証する際には、部品単体の品質だけでなく、使用場所、設置状況、施工条件を記録しておくことが重要です。
そこで活用を検討できるのが、現場写真や位置情報を記録するLRTK Phoneです。試作品を実際の現場で確認する際に、設置箇所や周辺状況を位置情報とともに記録することで、試作時の条件と現場での使用状況を整理しやすくなります。
さらに、現場で取得した記録をLRTKクラウドで共有・整理し、必要に応じてLRTK点群CADによる現場形状の確認や設計検討と組み合わせることで、試作品の設置状況や周辺条件を関係者間で検討しやすくなります。利用できる機能やデータの連携方法については、実際の運用環境に合わせて確認することが重要です。
試作品の造形条件と現場での評価結果を適切に管理し、設計改善へ反映することが、製品開発の品質向上につながります。3Dプリント品の積層割れ対策とあわせて、LRTK Phoneを活用した現場記録の管理も検討してみてください。
ものづくりの次の一歩を、
相談から始めてみませんか。
加工・製造の外注先や共同開発のパートナー探しに。大田区産業振興協会の受・発注あっせん相談サービスをご利用いただけます。
