製品開発を外注する際、機能や性能、外観、製造しやすさを優先するあまり、完成後の修理や点検のしやすさが十分に検討されないことがあります。試作品では問題なく動作していても、実際の使用環境で故障が発生した際に、部品交換のために製品全体を分解しなければならない、故障箇所を特定できない、交換用部品を調達できないといった問題が生じる場合があります。
こうした問題を軽減するために重要なのが、製品開発の初期段階から保守性を考慮した設計です。保守性設計とは、製品の点検、清掃、調整、修理、部品交換などを、安全かつ効率的に実施できるように構造や作業方法を検討することです。
特に製品開発を外部企業へ委託する場合、発注側が保守性に関する要求を明確にしなければ、受託側は機能や製造条件を中心に設計を進める可能性があります。その結果、製品完成後に修理しにくい構造が判明し、大幅な設計変更が必要になることもあります。
本記事では、製品開発の外注で修理しやすい製品を実現するための7つの保守性設計について解説します。故障時の対応方法、分解構造、交換部品、配線、診断機能、部品供給、保守手順まで、外注先と共有すべき具体的な検討事項を紹介します。
製品開発の外注で保守性設計が重要になる理由
製品開発において、保守性は製品の使用期間全体に影響する重要な設計要素です。製品が正常に動作している間は保守性の違いが表面化しにくいものの、故障や定期点検が必要になった段階で、その差が明確になります。
例えば、内部の消耗部品を交換する際、外装を取り外すだけで交換できる構造と、複数の基板や配線を取り外さなければ交換できない構造では、作業工数や作業ミスの発生リスクが異なります。
また、故障した部品を特定できない製品では、正常な部品まで交換してしまう可能性があります。原因の切り分けが難しい場合、製品を設置場所から取り外して確認する必要が生じ、設備の停止期間が長くなることもあります。
保守性の高い製品では、こうした作業上の負担を軽減できる可能性があります。ただし、保守性を高めるために構造を複雑にしすぎると、部品点数の増加や製造工程の複雑化につながることもあります。そのため、修理のしやすさだけでなく、性能、信頼性、安全性、製造性とのバランスを取ることが重要です。
製品開発を外注する場合には、発注側と受託側で保守性に対する認識が異なることがあります。発注側は長期間の使用や部品交換を想定していても、受託側は指定された機能を実現することを中心に設計する場合があります。
この認識の違いを防ぐには、開発開始時点で想定使用期間、保守担当者、故障時の対応範囲、交換対象部品、作業環境などを整理する必要があります。
特に産業機器、計測装置、制御装置、屋外設置機器などでは、製品を設置した後のアクセス条件が保守作業に大きく影響します。設計室では簡単に分解できても、実際の設置場所では工具が入らない、周囲の設備が干渉する、作業姿勢を確保できないといった問題が発生することがあります。
このような問題は、完成後の対策よりも設計初期から考慮する方が対応しやすい場合があります。製品開発の外注先を選ぶ際にも、必要な機能を実現できるかだけでなく、使用環境や保守作業まで踏まえた設計提案ができるかを確認することが大切です。
故障シナリオを整理して保守要求を明確にする
修理しやすい製品を実現するための最初の保守性設計は、想定される故障や点検作業を整理し、設計要求として明確にすることです。
保守性を考慮するといっても、対象となる製品によって必要な対策は異なります。例えば、頻繁に清掃する装置と、長期間密閉状態で使用する装置では、適切な分解構造が同じとは限りません。
まず、製品の使用目的、設置環境、使用頻度、想定される劣化要因を整理します。機械装置であれば摩耗、緩み、振動、潤滑状態の変化などが検討対象になります。電子機器であれば電源部、接続部、冷却部、表示部などの故障や劣化を想定します。
ただし、故障の発生頻度は設計条件や使用環境によって変わるため、一般的な故障事例をそのまま対象製品の故障率として扱うことは適切ではありません。過去の類似製品の保守記録や試験結果が利用できる場合には、それらを参考にして優先順位を決めます。
次に、故障した場合に誰が対応するのかを明確にします。使用者が簡単な清掃や消耗品交換を行うのか、専門の保守担当者が現場で修理するのか、製造元へ返送して対応するのかによって、必要な設計が変わります。
例えば、使用者が交換する消耗品であれば、専用工具を使用せず交換できる構造が適している場合があります。一方、電気的な危険や高温部への接触リスクがある部品では、専門担当者以外が容易に触れられない構造が必要になることもあります。
外注先には、保守対象となる部品と作業の範囲を具体的に伝えることが重要です。「修理しやすくする」という抽象的な要求だけでは、設計者ごとに解釈が異なります。
例えば、電源ユニットは現場で交換できること、内部の清掃箇所には指定工具でアクセスできること、定期交換部品を取り外す際に主要基板を分解する必要がないことなど、確認可能な条件にします。
さらに、故障が発生したときの影響も考慮します。製品全体が停止する故障と、一部機能だけが低下する故障では、求められる対応速度や交換方法が異なります。
重要な機能が停止する場合には、原因を短時間で切り分けられる診断機能や、故障部分を交換しやすい構造が有効です。ただし、交換作業の速さだけを優先して安全確認を省略する設計は避けなければなりません。
製品開発の外注では、こうした故障シナリオと保守要求を要求仕様書にまとめ、設計レビューの判断材料として共有します。保守性を開発後半の追加要望ではなく、最初から設計条件に組み込むことが重要です。
筐体と締結部を繰り返し分解できる構造にする
2つ目の保守性設計は、筐体や締結部を繰り返し分解できる構造にすることです。
製品内部の部品にアクセスするには、外装カバーや固定部品を取り外す必要があります。このとき、分解作業で部品が破損したり、再組立て後に性能が変化したりする構造では、保守作業が難しくなります。
特に注意したいのが、爪による固定、接着、圧入、特殊な締結方法です。これらは製品の小型化や組立工程の簡略化に有効な場合がありますが、構造によっては分解時に破損しやすく、再利用が難しいことがあります。
繰り返し開閉する部分では、ねじ締結などの再組立て可能な方法を検討します。ただし、ねじを増やせば必ず保守性が向上するわけではありません。ねじの本数や配置が不適切であれば、取り外し作業が複雑になり、締め忘れやねじの紛失につながる可能性があります。
そのため、保守頻度の高いカバーでは、締結点を必要な範囲に整理し、作業者が確認しやすい位置に配置することが重要です。
ねじを完全に取り外さずカバー側に保持できる構造や、締結位置を識別しやすい設計も有効です。作業者が小さな部品を落としやすい環境では、ねじの脱落防止が作業性の改善につながります。
また、樹脂筐体に繰り返しねじを締め込む場合には、ねじ山の摩耗や破損に注意が必要です。開閉頻度や材料特性に応じて、金属製のねじ受けなどを使用する方法も検討できます。
ただし、異なる材料を組み合わせる場合には、熱膨張差や固定部周辺の応力集中なども確認する必要があります。締結部の耐久性は、材料や形状、締付条件によって変わるため、実際の仕様に合わせた評価が必要です。
工具のアクセス性も重要です。ねじの位置が深い部分や狭い隙間にあると、工具を適切な角度で使用できないことがあります。設計段階で必要な工具と作業空間を確認し、周囲の部品を傷つけずに作業できるかを検討します。
屋外設置機器や防じん・防水性能が求められる製品では、分解後の密閉性能にも注意が必要です。カバーを取り外した際にシール材が変形したり、組立て時に挟み込まれたりすると、密閉性能が低下する可能性があります。
このような製品では、シール材の交換条件、取付方向、締付順序、再組立て後の確認方法まで設計に含めます。
製品開発の外注先には、分解できるかどうかだけでなく、繰り返し分解しても機能や安全性を維持できるかを確認するよう依頼することが重要です。
交換部品をモジュール化してアクセス性を高める
3つ目の保守性設計は、故障しやすい部分や交換が必要な部分を適切な単位に分け、作業しやすい位置に配置することです。
モジュール化とは、複数の部品や機能を一定のまとまりとして構成し、必要に応じて交換や取り外しを行えるようにする設計方法です。
例えば、制御基板、電源部、表示部、駆動部などを交換可能な単位として分けることで、故障した部分だけを取り外せる構造を検討できます。
一方、製品全体が一体化している場合、一部の部品を交換するために正常な部分まで取り外さなければならないことがあります。これは作業時間の増加だけでなく、分解時に別の部品を傷つけるリスクにもつながります。
ただし、すべての部品を独立したモジュールにすればよいわけではありません。モジュールを細かく分割すると、接続部品や固定部品が増え、接触不良や振動による緩みなど、新たな故障要因が生じる場合があります。
また、モジュール化によって製品寸法が大きくなったり、放熱経路が変化したりする可能性もあります。そのため、故障の影響、交換頻度、必要な性能、製造性を考慮し、適切な交換単位を決めることが重要です。
交換単位を決める際には、部品そのものの取り外しやすさだけでなく、周囲の構造にも注意します。
例えば、交換対象の基板が他の基板の下に配置されている場合、その基板を取り外すために複数の部品を分解する必要があります。交換部品を筐体の開口部に近い位置へ配置できれば、作業工程を減らせる場合があります。
ただし、アクセス性を優先して部品の配置を変更すると、振動、熱、電磁的な影響などが変わる可能性があります。配置変更後は、必要な性能を維持できるか確認することが大切です。
また、交換後の調整作業にも配慮します。部品を簡単に交換できても、交換後に複雑な位置調整や校正が必要であれば、保守作業全体の負担が大きくなります。
位置決め用の基準面や固定方法を工夫し、再組立て時のばらつきを抑える設計を検討します。精度が必要な装置では、交換後の確認測定や再校正が必要になる場合もあるため、その方法をあらかじめ定めておきます。
さらに、モジュール単位で交換する場合には、識別方法も重要です。外観が似ている部品や、仕様が異なる交換ユニットが混在すると、誤った組合せで組み立ててしまう可能性があります。
部品番号、仕様番号、取付方向などを識別できるようにし、互換性のない部品を誤って取り付けない仕組みを検討します。
製品開発の外注では、設計段階で交換対象部品を明示し、実際の作業順序を想定しながらモジュール構成と配置を決めることが重要です。
配線と接続部の誤接続や破損を防ぐ
4つ目の保守性設計は、配線と接続部を安全かつ確実に取り外せる構造にすることです。
電子機器や制御装置では、基板やセンサー、モーターなどが複数の配線で接続されています。保守作業では、これらの配線を取り外したり、再接続したりする場合があります。
配線の長さに余裕がない場合、カバーを開いた際にケーブルが引っ張られ、端子や接続部分が損傷することがあります。また、コネクタの位置が見えにくい構造では、取り外し時に配線そのものを引っ張ってしまう可能性があります。
このような問題を防ぐためには、カバーの開閉方向、部品の移動範囲、工具の使用位置などを考慮して配線経路を設計します。
特に開閉する部分に配線が通る場合には、必要な余長を確保し、繰り返しの曲げによって疲労が蓄積しないように配慮することが重要です。ただし、余長が大きすぎると、配線が他の部品に接触したり、組立て時に挟み込まれたりする可能性があります。
配線の余長と固定位置は、可動範囲や製品内部の空間に合わせて決める必要があります。
接続部については、誤接続を防ぐ工夫が求められます。例えば、形状が似ている複数のコネクタを近い位置に配置すると、保守作業後に接続先を取り違えるおそれがあります。
対策として、コネクタ形状の違い、識別表示、接続位置の整理、接続方向を限定する構造などを検討します。ただし、表示だけに頼ると、汚れや摩耗によって識別しにくくなることがあります。
誤接続によって重大な故障や安全上の問題が生じる接続部では、構造的に誤接続を防げるかも重要な判断基準です。
また、コネクタの抜き差し回数や保持力も確認します。繰り返し取り外す接続部には、その用途に適した接続方式を選ぶ必要があります。
製品内部の狭い部分では、コネクタをつまむ空間が不足し、取り外し作業が難しくなることがあります。コネクタの向きや周囲の部品配置を調整し、無理な力を加えずに作業できる構造を検討します。
振動が発生する製品では、配線固定や接続部の緩み対策も欠かせません。配線を固定することで振動による損傷を抑えられる場合がありますが、固定位置が不適切だと局所的な応力集中につながることがあります。
外注先には、通常使用時の配線信頼性に加えて、保守作業時の取り外し、再接続、再固定まで評価するよう依頼します。
配線図と実際の配線経路が一致していることも重要です。設計変更によって配線経路や接続先が変わった場合には、関連図面と作業手順も更新し、保守担当者が正しい情報を参照できる状態にしておきます。
故障診断と定期点検をしやすい構造にする
5つ目の保守性設計は、故障箇所を特定しやすくし、定期点検に必要な情報へアクセスできるようにすることです。
製品の修理では、部品交換そのものよりも故障原因の特定に時間がかかる場合があります。製品が動作しないという症状だけでは、電源、制御回路、配線、センサー、機械的な動作部分など、どこに問題があるのか判断できないことがあります。
このような状況に備え、設計段階で故障診断の方法を検討します。
例えば、電源状態や通信状態を確認できる表示、異常状態を区別する通知機能、内部の動作状態を確認できる診断機能などが考えられます。
ただし、診断機能を追加すると回路やソフトウェアが複雑になる場合があります。そのため、想定される故障と保守担当者の作業内容に合わせて、必要な診断情報を選ぶことが重要です。
故障診断では、異常の発生場所と原因を混同しないことも大切です。例えば、通信異常が表示された場合でも、その原因が通信回路自体にあるとは限りません。電源電圧の低下や接続不良によって通信異常が発生することもあります。
そのため、診断表示を設ける際には、表示内容が何を意味するのか、どの範囲まで判断できるのかを明確にします。
保守担当者が確認する順序を決めておけば、不要な部品交換を減らすことにつながります。
点検や測定を行う位置についても検討が必要です。電気的な確認が必要な製品では、測定器を接続する場所に安全にアクセスできるかが重要になります。
ただし、内部の測定点を増やすことで、感電、短絡、静電気による損傷などのリスクが高まる場合があります。測定点の配置は、安全対策や必要な保護構造と併せて検討しなければなりません。
定期点検が必要な機械装置では、摩耗箇所、潤滑状態、緩み、異音、温度などの確認方法を設計段階で整理します。
点検するために装置全体を分解しなければならない構造では、点検作業が負担になり、必要な保守が実施されにくくなる可能性があります。
点検窓やアクセス用カバーなどを設ける方法もありますが、開口部の追加によって強度や密閉性能が変化する場合があります。製品の使用条件を踏まえて適切な方法を選ぶことが重要です。
また、ソフトウェアを使用する製品では、異常が発生した時刻、動作状態、設定情報、ソフトウェアの版数などを確認できる仕組みが原因調査に役立つ場合があります。
記録する情報は必要性に応じて選び、保存容量、情報管理、安全性への影響なども考慮します。
製品開発の外注では、故障診断の対象範囲と確認方法を仕様書に明記し、試作評価の段階で保守担当者が必要な判断を行えるか確認することが大切です。
交換部品の供給と将来の仕様変更に備える
6つ目の保守性設計は、製品の使用期間中に必要となる交換部品を管理し、将来の仕様変更にも対応しやすい構成にすることです。
製品が分解しやすくても、交換部品を入手できなければ修理を実施できない場合があります。特に長期間使用する産業機器では、部品供給の継続性が保守計画に影響します。
製品開発の外注では、開発段階で使用する部品の選定だけでなく、製品完成後の交換部品についても確認することが重要です。
例えば、特定の用途向けに設計された部品を使用する場合、その部品が製品の使用期間中に継続して供給されるかを確認する必要があります。
ただし、将来の供給状況を完全に保証することは難しいため、供給停止の可能性を前提に代替方法を検討しておくことが有効です。
汎用的な寸法や接続方式を採用できる部分では、複数の候補部品を比較しやすい構造を検討します。一方、性能や安全性に大きく関係する部品では、単に外形寸法が同じという理由だけで代替できるとは限りません。
代替部品を採用する場合には、電気的特性、機械的強度、耐久性、温度条件、必要な安全要件などを確認する必要があります。
また、製品に使用する部品表の管理も重要です。部品番号、材質、仕様、採用した版数、対応する製品構成などを整理しておけば、保守時に必要な部品を特定しやすくなります。
設計変更が繰り返された製品では、同じ製品名でも内部構造や使用部品が異なる場合があります。そのため、製品の製造番号や構成情報と、適用できる交換部品を対応付けて管理することが望まれます。
例えば、制御基板の仕様を変更した場合、旧仕様の装置に新しい基板を取り付けられるか、配線や設定の変更が必要かを確認する必要があります。
この確認が不十分だと、物理的には取り付けられても正常に動作しない、特定の機能だけが使用できないといった問題が発生する可能性があります。
交換部品の互換性については、外注先と判断方法を共有し、必要に応じて検証結果を記録します。
消耗品についても、交換方法と保管条件を明確にしておきます。シール材、フィルター、摩耗部品などは、材質や使用環境によって劣化の進み方が異なります。
保管期間や交換時期を一律に決めるのではなく、部品の特性、使用条件、確認結果に基づいて管理方法を設定することが重要です。
さらに、外注契約では、設計図面や部品表などの引渡し範囲も確認する必要があります。製品完成後に保守対応を別の担当者や企業へ引き継ぐ可能性がある場合、必要な設計情報へアクセスできるかが重要になります。
ただし、外注先が保有する技術情報には権利や秘密保持上の制約がある場合があります。保守に必要な情報の利用範囲と提供条件は、開発開始時点で合意しておくことが望まれます。
保守手順と安全対策を設計成果物に含める
7つ目の保守性設計は、保守作業の手順と安全対策を明確にし、製品開発の成果物として整備することです。
製品の構造が修理しやすく設計されていても、作業手順が不明確であれば、保守担当者によって作業方法が異なり、組立てミスや部品破損が発生する可能性があります。
そのため、保守性設計では、製品そのものの構造と併せて、作業手順を検討する必要があります。
例えば、カバーを取り外す順序、使用する工具、配線を取り外す方法、交換部品の識別方法、再組立て時の注意点などを明確にします。
特に重要なのは、作業開始前の安全確認です。電気機器であれば電源の遮断と残留電荷への注意、機械装置であれば可動部の停止と不意の動作防止、圧力を使用する装置であれば残留圧力の確認などが必要になる場合があります。
具体的な安全対策は製品の構造、使用環境、適用される安全要件によって異なります。危険を伴う作業については、必要な資格や教育を受けた担当者が実施する範囲を明確にすることが重要です。
保守手順では、分解方法だけでなく、再組立て後の確認方法まで定めます。
例えば、ねじの締付条件、シール材の取付状態、配線の固定位置、可動部の動作範囲などを確認できるようにします。必要に応じて、機能試験、精度確認、密閉性能の確認などを実施する条件も整理します。
分解前と同じように組み立てられたように見えても、内部の配線が挟まれていたり、固定部品が正しい位置に取り付けられていなかったりする場合があります。
そのため、外観だけで判断せず、製品の機能や安全性に関係する項目を確認することが重要です。
保守手順書には、作業中に起こりやすい間違いも反映します。例えば、外観が似ている部品の取り違え、コネクタの半挿し、シール材のねじれ、締付不足など、試作評価で確認された問題を具体的に記載すると、再発防止に役立ちます。
また、保守に必要な情報を設計変更と連動させる必要があります。部品の配置や締結方法が変更されたにもかかわらず、古い手順書を使用すると、誤った作業につながる可能性があります。
外注先との間で、設計図面、部品表、保守手順書、検査方法などの更新責任を明確にしておくことが大切です。
さらに、保守作業の結果を記録する仕組みも検討します。故障内容、交換した部品、作業日時、実施した確認、作業後の状態などを残しておけば、同様の故障が発生した際の原因調査に役立ちます。
保守記録を蓄積することで、交換頻度の高い部品や、作業が難しい箇所を把握できる場合があります。こうした情報は、次の製品開発や設計改善にも利用できます。
製品開発の外注では、完成品の納入だけを終了条件とするのではなく、必要な保守情報が整備され、保守作業を実施できる状態になっているかを確認することが重要です。
製品開発の外注先と合意すべき保守性の評価基準
保守性設計を実際の製品に反映するには、発注側と外注先の間で評価基準を共有する必要があります。
「修理しやすい構造」「簡単に交換できる構造」といった表現は、目指す方向性を示すには有効ですが、そのままでは合否判定が難しい場合があります。
そのため、保守性を確認可能な要求へ具体化することが重要です。
例えば、特定の部品を交換する際に取り外す必要がある部品の範囲、使用する工具、必要な作業空間、再組立て後の確認項目などを定義します。
作業時間を評価する場合には、作業の開始条件と終了条件を統一する必要があります。工具の準備を含むのか、故障診断を含むのか、交換後の動作確認まで含むのかによって、測定結果は変わります。
作業時間だけでなく、分解時に破損しやすい部品がないか、取り外した部品を識別できるか、無理な姿勢で作業する必要がないかなども重要な評価項目です。
外注先との打ち合わせでは、設計レビューの段階を決めておくことも有効です。
構想設計の段階では、交換対象部品と保守作業の考え方を確認します。詳細設計の段階では、部品配置、締結方法、配線経路、工具のアクセス性などを確認します。
試作段階では、実際に分解と再組立てを行い、要求を満たしているか検証します。これらの確認を段階的に行うことで、開発後半に保守性の問題が集中するリスクを軽減できます。
また、設計変更時の判断基準も合意しておく必要があります。部品配置の変更や筐体形状の変更によって、製造しやすさが改善しても、保守性が低下する場合があります。
変更内容を確認する際には、機能や寸法への影響だけでなく、保守作業への影響も評価します。
外注先が複数存在する場合には、担当範囲の境界にも注意が必要です。例えば、筐体設計と回路設計を別の企業が担当する場合、配線の取り外し空間や基板へのアクセス性について、どちらが確認するのか不明確になることがあります。
このような問題を防ぐには、製品全体の保守性を確認する担当者を決め、各設計分野の情報をまとめて評価することが重要です。
さらに、設計データの引渡し条件にも注意します。図面だけでなく、部品構成、組立て方法、保守手順、確認結果など、製品完成後に必要な情報をあらかじめ整理しておきます。
保守性は単独の部品だけで決まるものではありません。外注先との情報共有と設計判断の積み重ねによって、製品全体の保守性を確保することが大切です。
試作段階で修理しやすさを検証する方法
保守性設計の効果を確認するには、試作段階で実際の保守作業を再現することが重要です。
設計図面上では部品を取り外せるように見えても、実物では工具が干渉する、配線が邪魔になる、固定部品を取り外しにくいといった問題が発生する場合があります。
そのため、試作品を使用して分解、部品交換、再組立て、動作確認までの一連の作業を実施します。
このとき、設計担当者だけでなく、実際に保守を担当する可能性がある作業者にも評価へ参加してもらうと有効です。
設計者は内部構造を理解しているため、部品の取り外し位置や作業順序を把握しています。一方、初めて製品を扱う担当者は、取付方法が分かりにくい部分や、間違えやすい接続部に気付く場合があります。
作業者による評価では、手順書だけで作業できるか、必要な工具を正しく判断できるか、部品を無理に動かさず取り外せるかなどを確認します。
また、作業時間を測定する場合には、作業者の経験や作業環境による差を考慮します。一度の測定結果だけで保守性を判断するのではなく、条件をそろえた複数回の評価や、作業上の問題点の記録が有効です。
繰り返し分解する製品では、開閉耐久性も評価対象になります。
例えば、繰り返しの分解によってねじ穴が摩耗しないか、固定用の爪が破損しないか、シール材が変形しないかなどを確認します。
必要な評価回数や合格基準は、想定する保守頻度、材料、構造、要求される使用期間に応じて設定します。特定の回数をすべての製品に適用できるわけではありません。
さらに、交換後の性能確認も重要です。基板やセンサーを交換した場合、製品が起動するだけでなく、必要な機能や精度を維持しているか確認します。
例えば、計測機器では交換後に校正や基準値の確認が必要になることがあります。機械装置では、可動部の位置や負荷状態が変化していないか確認する場合があります。
屋外設置機器では、分解と再組立て後に密閉性能が維持されているかを確認する必要が生じることもあります。
また、故障診断機能を設けた製品では、想定した異常状態を試験的に再現し、必要な情報が確認できるかを評価します。
ただし、異常状態の再現によって危険が生じる場合があるため、安全な試験方法を設計し、必要な設備と管理体制の下で実施することが重要です。
試作評価で問題が見つかった場合には、作業者の習熟不足だけを原因とせず、構造や表示、手順に改善の余地がないか検討します。
保守性の評価結果を設計へ反映し、変更後に再確認することで、実際の使用環境に適した製品へ近づけることができます。
保守性設計で起こりやすい失敗と改善方法
製品開発の外注では、保守性を意識して設計したつもりでも、実際の運用で問題が発生することがあります。
代表的なのが、分解のしやすさだけを評価し、再組立て後の性能確認を十分に行っていないケースです。
例えば、外装カバーを簡単に取り外せる構造でも、再組立て時にシール材の位置がずれやすければ、密閉性能が低下するおそれがあります。
この場合は、シール材の位置決め構造を見直すとともに、再組立て後に必要な確認を実施できるようにします。
また、部品交換を簡単にするために接続部を増やした結果、接触不良や振動による緩みが問題になる場合もあります。
モジュール化は保守性向上に有効ですが、接続点の増加が製品の信頼性に与える影響も確認しなければなりません。交換頻度が低い部品まで細かく分割するのではなく、保守上の必要性に応じて交換単位を設定することが重要です。
別の失敗として、試作品では修理しやすかったものの、量産時の設計変更によって保守性が低下するケースがあります。
例えば、組立工程を簡略化する目的で締結方法を変更した結果、修理時に分解しにくくなる場合があります。また、内部部品の配置変更によって、交換部品へのアクセスが難しくなることもあります。
こうした問題を防ぐには、量産移行時の設計レビューでも保守性を確認する必要があります。
さらに、製品完成時には保守手順が整備されていても、設計変更後に資料が更新されないことがあります。古い図面や手順書による作業は、誤組立てや部品取り違えにつながる可能性があります。
設計変更情報と保守資料を対応付け、どの製品構成にどの手順が適用されるのか明確に管理することが大切です。
外注先へ保守性の改善を依頼する際には、単に修理しにくいと伝えるのではなく、どの作業で、どのような問題が発生し、何に影響するのかを具体的に共有します。
例えば、特定の部品交換時に工具が筐体へ干渉する、配線を外さなければ基板を取り出せない、再組立て時にコネクタを取り違える可能性があるといった情報です。
問題を具体化することで、外注先も構造変更や作業方法の改善を検討しやすくなります。
まとめ|製品開発の外注では修理後の運用まで設計する
製品開発の外注で修理しやすい製品を実現するには、設計初期から保守性を要求仕様に組み込み、構造設計、部品選定、故障診断、保守手順まで一貫して検討することが重要です。
特に、故障シナリオの整理、繰り返し分解できる筐体構造、適切なモジュール化、配線や接続部の誤接続防止、診断しやすい仕組み、交換部品の供給管理、安全な保守手順の整備という7つの視点は、幅広い製品開発で検討する価値があります。
ただし、保守性を高めることだけを目的に構造を複雑にすると、製造性や信頼性に影響する場合があります。製品の用途、使用環境、想定する保守頻度に応じて、必要な保守性と他の設計要件のバランスを取ることが大切です。
また、製品開発を外注する場合には、保守性の要求を抽象的な表現にとどめず、実際の作業内容や評価方法に落とし込むことが欠かせません。
設計レビューと試作評価を通じて、分解、交換、再組立て、動作確認まで実施できるか検証することで、製品完成後の保守トラブルを軽減しやすくなります。
さらに、修理しやすい製品づくりには、製品完成後の保守記録を設計改善へつなげる視点も重要です。
特に建設現場や屋外設備など、複数の場所に設置された機器を管理する場合には、点検場所、故障発生位置、現場写真、修理実施日などの情報を整理しておくと、保守状況の把握や関係者間の情報共有に役立ちます。
こうした現場情報の記録には、LRTK Phoneの活用も選択肢になります。LRTK Phoneは、現場の位置情報や写真を取得・記録する用途で活用でき、点検箇所や修理対象設備の状況を位置情報と関連付けて整理する際に役立ちます。
例えば、屋外設備の点検時に、設備の設置場所と現場写真を記録しておけば、保守担当者が現場の状況を確認する際の補助情報として利用できます。位置情報の精度は測位環境や使用条件によって変わるため、必要な精度に応じた確認も重要です。
また、交換部品の情報や作業結果を別途管理する場合でも、現場写真や位置情報を関連付けることで、どの場所でどのような作業を行ったのかを把握しやすくなります。
製品開発の外注では、修理しやすい構造を実現するだけでなく、保守作業を安全に実施し、その結果を次の改善へ活用できる体制まで考えることが重要です。
設計段階から保守性を確保し、完成後はLRTK Phoneなどを活用して現場の位置情報や点検記録を整理することで、製品の保守管理と継続的な設計改善を結び付けやすくなります。
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