LRTKレフィクシア株式会社

文化財TLS計測で鏡面石材の飛び点を減らす5つの観測角度

鏡面石材でTLS計測の飛び点が発生する理由

文化財の三次元記録では、地上型レーザースキャナーを使ったTLS計測が活用されています。建造物、石垣、石碑、床面、石造物などを非接触で高密度に記録できるため、現況保存、修復前後の比較、変状確認、図面作成など幅広い用途に利用できます。

一方、石材であればどのような表面でも同じように計測できるわけではありません。特に表面を磨いた御影石などの鏡面石材では、粗い石材や風化した石材とは異なる反射特性を示します。TLSから照射されたレーザー光が表面で特定方向へ強く反射すると、受光部へ十分な反射光が戻らなかったり、周囲とは異なる距離として検出されたりすることがあります。

その結果、点群の一部が抜けるだけでなく、本来の石材表面から離れた位置に少数の点が発生する場合があります。実務ではこのような不自然な点を「飛び点」と呼ぶことがあります。飛び点が多い状態で点群をそのまま断面化すると、石材表面に存在しない凹凸が表示されたり、端部の位置が不明瞭になったりするため注意が必要です。

文化財計測では、単に見た目のきれいな点群を取得すればよいわけではありません。後から寸法や変位を確認できる記録として利用するのであれば、なぜ点が乱れているのかを判断できる状態にしておく必要があります。そのため鏡面石材では、計測後の点群処理だけに頼るのではなく、現場でレーザーの観測角度を調整することが重要です。

鏡面反射の特徴は、光があらゆる方向へ均等に戻るのではなく、入射方向に応じた特定方向へ強く反射することです。したがって、TLSと対象面の位置関係がわずかに変わるだけでも取得状態が変化する場合があります。ある位置では大きく乱れた面が、数十センチから数メートル据え替えて観測すると安定して取得できることもあります。

ここで重要なのは、「鏡面石材は測れない」と決めつけるのではなく、反射条件によって点群品質が変化する対象として扱うことです。観測角度、観測距離、点密度、石材表面の状態、周囲の光環境などを確認しながら複数方向から記録すれば、一方向だけのTLS計測より欠測や飛び点を抑えやすくなります。

また、鏡面石材に見えても、表面全体の反射特性が均一とは限りません。研磨状態、汚れ、風化、付着物、水分、補修履歴などによって反射状態が変わる可能性があります。同じ石材の一枚の板でも中央部と端部で取得状態が異なることがあります。

したがって文化財TLS計測では、計測開始時に代表的な石材面を試験観測し、どの角度から計測すると点群が安定するかを確認しておくことが有効です。そのうえで、以下の5つの観測角度を意識すると、現場で据替位置を判断しやすくなります。

観測角度1|正対を避けてわずかに斜めから計測する

鏡面石材をTLSで計測するとき、最初に確認したいのが対象面へほぼ正面から照射している状態です。正対する配置は形状を直感的に把握しやすいため、一般的な壁面計測では使いやすい位置です。しかし鏡面に近い表面では、正対に近い条件が常に最適とは限りません。

石材表面に対してレーザーがほぼ垂直に入射すると、反射光の挙動によっては局所的に取得状態が不安定になる場合があります。特に磨きの強い平滑面では、わずかな面の傾きや表面状態の差によって反射強度が急激に変わり、周囲と比べて異常な距離値や欠測が現れることがあります。

そこで実務では、正面位置だけに固定せず、TLSを左右方向へ少し移動させて斜めから観測する方法を試します。重要なのは、最初から極端に斜めへ移動するのではなく、正対位置から少しずつ角度を変えて取得状態を見ることです。

鏡面石材の大きな立面を計測する場合、正面から見て点群に不自然な帯状の乱れや孤立点が発生しているときは、左右方向へ据替位置を変えるだけで改善する可能性があります。これは対象物を別の方向から見ることで、レーザーの入射方向と反射方向の関係が変化するためです。

文化財では対象物へ接触できない場合が多く、石材表面へ反射防止材などを塗布するような方法は基本的に採用できません。そのため、対象側を変更するのではなく、観測側の位置を工夫して品質を確保するという考え方が重要になります。

ただし、斜めから見れば見るほどよいというわけではありません。角度を大きくしすぎると、石材表面をかすめるような照射となり、単位面積当たりの点密度が低下しやすくなります。また、目地や段差、彫刻の縁、石材同士の重なりによる遮蔽も増えます。

そのため、まずは正対からわずかに外した位置で確認し、そこで取得状態が安定するかを見ることが重要です。安定しない場合には、さらに位置を変えて別方向から補完します。

現場ではTLS本体の画面や計測後の簡易表示だけで判断せず、取得した点群を拡大して確認することも必要です。見た目では連続した面に見えていても、断面を切ると数センチ離れた飛び点が存在している場合があります。逆に、反射強度にムラがあっても距離値そのものは安定している場合もあります。

つまり評価すべきなのは色や反射強度の見栄えだけではなく、石材表面として距離値が連続しているかどうかです。正対位置と斜め位置で同じ面を試験計測し、点群の厚みや孤立点の量を比較すれば、その現場に適した観測方向を判断しやすくなります。

観測角度2|低すぎる入射角を避けて輪郭欠測を抑える

鏡面石材では正対を避けることが有効な場合がありますが、今度は斜めにしすぎることで別の問題が生じます。対象面をほぼ横から見るような低い入射角では、点群密度の低下や輪郭部分の欠測が起こりやすくなります。

例えば磨かれた石碑の側面を遠く離れた位置から浅い角度で観測すると、レーザーは表面をかすめるように照射します。この状態では、TLSから見た石材表面の投影面積が小さくなり、隣接点の間隔が対象面上で広がります。

正面から観測したときに数ミリから数センチ程度の間隔で並んでいた点が、斜め方向では対象面上で大きく離れることがあります。文化財の輪郭や小さな欠損を記録する場合、この点密度の低下が解析結果へ影響する可能性があります。

さらに、石材の縁や段差では手前側の面が奥側を遮ります。入射角が低くなるほど遮蔽範囲は広がるため、輪郭付近に点のない帯ができやすくなります。鏡面反射だけを意識して斜めへ移動すると、反射による飛び点は減っても形状欠測が増えることがあるため注意が必要です。

文化財TLS計測で重要なのは、反射条件と形状取得条件の両方を満たす角度を探すことです。一つの位置ですべてを取得しようとせず、面中央を安定して取得できる角度と、端部を取得する角度を分けて考える方法もあります。

例えば大きな磨き石の壁面であれば、やや斜めの位置から面中央を取得し、別の位置から端部や目地周辺を補完します。それぞれの点群を共通座標で統合すれば、一つの観測方向に依存する必要がなくなります。

また、浅い入射角で計測すると、石材表面のわずかな凹凸や目地が大きな遮蔽につながることがあります。正面から見れば数ミリ程度の凹凸でも、横方向からレーザーが当たるとその背後に影ができます。この影はTLSの欠測として残るため、文化財の細かな加工痕や接合部分を記録したい場合には特に注意が必要です。

現場では「飛び点が減った」という一つの指標だけで観測角度を決めないことが大切です。点群の厚み、欠測範囲、輪郭の連続性、必要な点密度を合わせて確認しなければなりません。

対象面に対して極端に浅い角度になっている場合には、TLSを対象へ近づける方法だけでは解決しないこともあります。距離を縮めても入射方向がほぼ同じであれば、遮蔽の条件そのものは大きく変わらないためです。その場合は、対象を中心に円弧を描くように据替位置を変え、もう少し正面寄りの方向から計測する方が有効です。

鏡面石材では「正面すぎない、斜めすぎない」範囲を探すことが基本となります。その適切な範囲は石材の研磨状態や形状によって変わるため、固定した角度をすべての現場へ適用するのではなく、試験観測によって決める必要があります。

観測角度3|左右から異なる角度で補完観測する

鏡面石材のTLS計測で最も実務的な対策の一つが、一方向だけで測り切ろうとしないことです。同じ石材面を左右から異なる角度で計測すると、一方で発生した飛び点や欠測をもう一方の観測で補える可能性があります。

鏡面反射は観測方向との関係で変化します。左側の観測位置ではレーザー光が受光部へ戻りにくい部分でも、右側へ据え替えると安定した反射が得られることがあります。この性質を利用し、反射条件の異なる点群を重ねて一つの形状を構成します。

文化財TLS計測では、この「異なる観測条件で同じ箇所を重複取得する」という考え方が重要です。重複領域があれば、単に欠測を補えるだけでなく、取得した形状が再現しているか確認できます。

例えば一方の観測だけで石材表面から離れた点が確認された場合、反対方向の点群と比較します。反対側では石材表面に連続した点が並び、離れた点が存在しないのであれば、孤立した点は反射条件によって生じた可能性を検討できます。

一方、左右どちらの観測でもほぼ同じ位置に同じ形状が現れているのであれば、それは石材そのものの凹凸や欠損である可能性が高くなります。このように複数方向からの観測は、単なる点数の追加ではなく、形状判断の裏付けにもなります。

特に文化財では、表面の微小な欠損、加工跡、摩耗などが記録対象になることがあります。点群処理の段階で孤立点を一律に除去すると、本来保存すべき微細形状まで消してしまう恐れがあります。そのため、現場で異なる方向から観測しておくことが、後処理時の判断材料になります。

左右から計測するときは、対象面の中央だけを重複させるのではなく、重要な輪郭や目地、文字、彫刻部分についても複数方向から見える配置を考えます。文化財の石造物では凹凸が複雑な場合が多いため、平面としての石材面だけでなく、奥まった部分や側面も含めた視認性を確認することが重要です。

また、複数方向から観測する場合には、点群同士を安定して統合できるようにする必要があります。据替ごとに点群の位置関係が不明確であれば、鏡面反射による飛び点以上に、点群結合の誤差が問題になる可能性があります。

したがって、対象物の周囲に安定した基準となる形状や測点を確保し、各観測を同一座標系へ整理することが重要です。文化財そのものへ標識を貼付できない場合には、対象外の安定した場所へ基準を設けたり、周辺形状を利用したりする方法を検討します。

左右方向の観測角度を変える際には、単純に左右対称の位置へ置く必要はありません。現場の通路、立入制限、文化財との離隔、安全性などを考慮しながら、異なる反射条件を得られる位置を選択します。

狭い室内では大きく左右へ移動できない場合もあります。その場合でも数十センチ程度の移動や高さ変更によって反射状態が変わることがあります。重要なのは、「同じ場所から同じ条件で繰り返し測る」のではなく、意図的に観測方向を変えることです。

観測角度4|上下方向の角度差で水平面と立面を補う

観測角度というと左右方向の移動を考えやすいですが、鏡面石材では上下方向の角度差も重要です。特に床面、台座上面、階段踏面、笠石、石造物の上面などを計測するときは、TLSの高さと対象面の位置関係が取得品質に大きく影響します。

例えば磨かれた石の床を一般的な三脚高さから観測すると、TLSから遠くなるほどレーザーは床面へ浅い角度で入射します。近距離では比較的安定して取得できていても、遠方では点密度が低下したり、反射条件が変化して飛び点や欠測が増えたりすることがあります。

大きな室内床面を一つの位置から測ると、TLSを中心として近距離と遠距離で観測角度が大きく異なります。そのため、点群を見ると一定距離を境に取得状態が変化する場合があります。

このような場合には、高さを変えるだけではなく、据替位置を増やして遠方部分を別の位置から観測します。対象面に対して適切な角度と距離を保ちやすくなるため、一地点から無理に遠くまで取得するより安定した結果が得られる可能性があります。

反対に、石碑や壁面上部の磨かれた石材では、低い位置から見上げる角度が大きくなります。上部ほど斜めから観測するため、面中央は取得できても上端や突出部の裏側が欠測する場合があります。

そのような場合には、安全に設置できる範囲でTLSの高さを変えるか、対象からの距離を調整して観測角度を変えます。高所作業を伴う場合は、点群品質より安全確保を優先し、必要に応じて別地点からの補完観測を選択します。

文化財施設では、三脚を自由な位置へ置けないこともあります。床面の保護、来場者動線、保存対象との離隔、展示物、仮設物などによって位置が制限されるからです。この場合でも、利用可能な位置の中で高さを少し変えたり、左右と上下の角度差を組み合わせたりすることで取得条件を変えられます。

特に鏡面石材の床と壁が連続している空間では、一つのTLS位置から両方を同じ品質で取得することは難しい場合があります。壁面に適した角度が床面に適しているとは限らないからです。そのため、壁面用の観測位置と床面用の観測位置を分ける考え方が有効です。

TLS計測では一回のスキャンで広い範囲を取得できることが利点ですが、広範囲を取得できることと、すべての面を最適条件で取得できることは同じではありません。鏡面石材では特にこの違いを意識する必要があります。

対象面ごとにどの方向からレーザーが当たっているかを考え、必要なら上下方向にも観測条件を変えることで、飛び点と欠測の両方を減らしやすくなります。

観測角度5|反射方向を確認しながら据替位置を決める

最後の観測角度は、事前に固定した数値だけで決めるのではなく、実際の取得状態を見ながら据替位置を調整することです。鏡面石材では表面状態によって反射条件が変わるため、「何度なら必ず問題ない」という単一の角度を決めることは適切ではありません。

同じ種類の石材でも、研磨の程度、経年変化、水分、汚れ、表面処理、微細な傷などによってレーザーの反射状態が異なる可能性があります。また、石材が完全な平面に見えても、実際にはわずかなうねりがあり、場所によって反射方向が変化することがあります。

そのため、本計測の前に短時間の試験観測を行い、点群状態を確認してからTLS位置を確定すると効率的です。

試験観測では、対象面の一部だけを見るのではなく、中央、端部、目地、彫刻、文字、角部など特徴の異なる箇所を確認します。中央面がきれいに取得できていても、端部だけ飛び点が発生していることがあります。

また、飛び点は三次元表示だけでは見落としやすい場合があります。視点方向によっては本来の面と重なって見えるからです。そこで対象面に直交する方向の断面を確認し、点群に不自然な厚みがないかを見ることが有効です。

本来ほぼ平面である磨き石の点群が数センチの厚みを持っている場合には、反射条件や点群結合状態を確認する必要があります。ただし、文化財では実際に石材が変形している場合もあるため、厚みがあるという理由だけで誤点と判断してはいけません。

異なる観測方向から同じ位置を確認し、再現性を確かめることが大切です。複数方向で同じ形状が確認できる場合は実形状の可能性を検討し、一方向だけで現れる孤立した形状は計測条件によるものかを慎重に判断します。

試験計測で飛び点が多い場合には、TLSを一度に大きく移動するのではなく、反射条件が変わる方向へ段階的に据え替えると原因を把握しやすくなります。左右方向へ移動したときに改善するのか、高さを変えると改善するのか、距離を縮めると改善するのかを確認します。

この作業は、単なる試行錯誤ではありません。どの条件で点群品質が変化したかを記録すれば、その石材面に対する有効な観測方向を判断する材料になります。

文化財TLS計測では再計測できるとは限りません。公開日程、足場、保存作業、天候、施設利用などの条件によって、同じ状態で再び現場へ入れない場合があります。そのため、現場で取得状態を確認し、必要な補完観測をその日のうちに行うことが重要です。

鏡面石材のTLS計測では距離と点密度も同時に管理する

観測角度を改善しても、観測距離や点密度が適切でなければ十分な文化財記録にはなりません。TLSでは一般に対象から遠くなるほど、対象面上での点間隔が広がります。

鏡面石材では反射条件だけに注目しがちですが、必要な形状をどの細かさで残すのかを先に決める必要があります。石造建築全体の形状記録を目的とする場合と、石材表面の細かな欠損を比較する場合では、必要な点密度が異なるからです。

例えば数センチ単位の形状把握が目的であれば比較的広い点間隔でも対応できる場合があります。一方、細かな加工痕や小さな欠損を追跡するのであれば、より高い点密度が必要になります。ただし必要精度や点密度は対象物、使用機器、成果物、解析方法によって変わるため、一律の値で決めるのではなく計測目的から設定します。

鏡面石材で飛び点が発生すると、高密度で計測すれば解決すると考えることがあります。しかし、反射条件が悪い状態で単に点数を増やしても、異常点まで増える可能性があります。

そのため最初に観測角度を改善し、そのうえで目的に合った密度を設定することが大切です。点密度は形状再現性を高めるための条件であり、不適切な反射条件そのものを解消する手段ではありません。

距離についても同様です。対象へ近づけば必ず飛び点が減るとは限りません。近距離になることで点密度は高くなりますが、鏡面反射の方向が不適切であれば取得状態が改善しないことがあります。

むしろ重要なのは、距離と角度を組み合わせて考えることです。近距離で極端な斜め角度になる位置より、少し離れていても適切な方向から観測できる位置の方が安定することがあります。

文化財現場では、対象物への接近距離が保存上の理由で制限される場合があります。そのため、対象へ近づくことを前提とした計測計画ではなく、許可された位置から必要な密度を確保できるか事前に検討しておくことが重要です。

飛び点と本来の凹凸を混同しない点群確認の考え方

鏡面石材の点群処理で特に注意したいのが、飛び点と文化財そのものの凹凸を混同することです。

点群処理には孤立した点や周囲から大きく離れた点を除去する方法があります。しかし、文化財では表面に欠け、彫り込み、加工痕、亀裂、補修跡などが存在するため、統計的に周囲から離れている点が必ず誤点とは限りません。

例えば磨かれた石碑に浅い文字が刻まれている場合、その文字部分の点群は周囲の平面からわずかに奥へ入ります。強い平滑化や外れ値除去を行うと、この形状まで消してしまう可能性があります。

そのため、鏡面石材の飛び点対策は後処理だけに依存しないことが重要です。現場で複数方向から計測し、同じ形状が再現するか確認できるデータを残しておけば、後から誤点を判断しやすくなります。

飛び点の確認では、点群を三次元表示するだけでなく、断面や局所的な拡大表示を使います。平面部分の厚みが急に増えている箇所や、周囲から離れた少数点が存在する箇所を確認します。

同じ場所について複数スキャンを比較することも重要です。一方では離れた点があり、別方向のスキャンでは安定した平面が取得できている場合、離れた点を反射による異常として検討しやすくなります。

一方、複数方向から見ても同じ位置に膨らみやへこみが存在するのであれば、実形状である可能性を考慮します。このとき、現地写真や過去の記録があれば併せて確認することで判断材料を増やせます。

文化財の点群は、単に形状モデルを作るためだけのデータではなく、将来の比較対象になる可能性があります。そのため、必要以上のフィルタ処理でデータを整えすぎないことも大切です。

元の観測点群と処理後点群を分けて保存し、どのような処理を行ったか記録しておけば、後から再評価できます。飛び点が存在する元データ自体も、計測条件を検証する資料として意味を持ちます。

文化財計測で観測角度を記録しておく重要性

文化財TLS計測では、完成した点群だけでなく、どの位置からどの方向を観測したかを記録しておくと再現性が高まります。

鏡面石材の場合、観測方向によって点群品質が変化するため、据替位置の情報は特に重要です。将来再計測を行うときに同じ条件を再現できれば、経年変化と観測条件による差を区別しやすくなります。

例えば数年後に同じ磨き石の変位を比較するとします。初回計測と再計測で観測方向が大きく異なれば、反射条件や点密度が変わり、比較結果に影響する可能性があります。

もちろん現場条件が変われば完全に同じ位置へTLSを置けないこともあります。それでも初回の観測位置や高さ、対象までのおおよその距離、観測方向を記録しておけば、できるだけ近い条件を選べます。

文化財の継続観測では、数値だけでなく計測方法の再現性が重要です。同じ機器や同じ担当者を永久に使用できるとは限らないため、第三者が見ても計測条件を理解できる形で残しておく必要があります。

TLS設置位置を現場座標で管理しておけば、将来の再計測にも利用しやすくなります。また、どのスキャンがどの面を担当しているか整理しておけば、点群統合後に異常箇所が見つかった場合でも元データへ戻って確認できます。

鏡面石材では、単一の完成点群だけを見ると、どの方向から取得された点なのか分からなくなる場合があります。そこで処理前の各スキャンも保存し、観測位置情報と対応付けておくことが望まれます。

これにより、飛び点が発見されたときに「どの方向のスキャンで発生しているか」を確認できます。特定方向だけで異常が発生していると分かれば、反射条件による影響を検討しやすくなります。

TLSと現場座標を組み合わせて再現性を高める

文化財TLS計測では、複数位置から取得した点群を一つの座標系へ統合する必要があります。鏡面石材で観測方向を増やす場合には、この座標管理がさらに重要になります。

左右、上下、斜め方向から計測した点群が高い整合性で統合されていれば、それぞれの長所を生かして欠測や飛び点を補完できます。一方、点群同士の位置合わせが不安定であれば、同じ石材面が二重に見えたり、本来存在しない厚みが発生したりします。

この状態では、鏡面反射による飛び点と点群統合誤差を区別しにくくなります。そのため、観測角度対策と座標管理は別々の問題ではなく、一体として考える必要があります。

現場座標を利用する場合には、対象文化財に直接影響を与えない場所へ安定した基準を確保し、各観測を共通座標へ結び付けます。必要に応じて周辺の基準点や既知点との関係を整理し、後から再現できる状態にします。

TLS点群全体へ位置情報を持たせることで、文化財の周辺環境や他の測量成果と組み合わせることもできます。石材単体だけでなく、建物全体、敷地、周辺構造物との位置関係まで統一的に管理できるようになります。

特に修復工事や保存整備では、点群から確認した位置を再び現地で確認したい場面があります。例えば特定の石材の角部、変状箇所、補修位置などを座標として整理しておけば、後日同じ場所を探しやすくなります。

そこでTLSによる高密度点群と、現場で扱いやすい座標計測を組み合わせる考え方が有効です。

LRTK Phoneのように現場で位置情報を扱える仕組みを併用すれば、TLSで取得した三次元情報と現地座標を関連付け、確認したい位置を現場作業へ戻す運用を検討できます。文化財そのものへ標識を残し続けることが難しい現場でも、周辺の安定した基準や座標情報を利用することで、再調査時の位置確認を行いやすくなります。

ただし、TLSと別の測位手段を組み合わせる際には、それぞれの精度、座標系、標高の扱い、観測環境などを確認する必要があります。異なる方法で得た数値をそのまま同一精度として扱うのではなく、利用目的に応じて検証することが重要です。

文化財計測で求められるのは、単に点を大量に取得することではありません。どこで、どの条件で、どのように取得したデータなのかを後から説明できることが重要です。鏡面石材のように観測条件の影響を受けやすい対象では、特にその考え方が求められます。

まとめ|鏡面石材は一方向から測り切らないことが重要

文化財TLS計測で鏡面石材を扱う場合、飛び点を完全に後処理だけで解決しようとすると、本来残すべき細かな形状まで除去してしまう可能性があります。重要なのは、現場計測の段階で反射条件を変え、安定した点群をできるだけ多く取得しておくことです。

まず、対象面への完全な正対だけに頼らず、わずかに斜めから観測して取得状態を確認します。ただし斜め角度を大きくしすぎると、点密度低下や遮蔽が増えるため注意が必要です。

次に、左右から異なる方向で同じ範囲を重複観測します。一方向で発生した飛び点や欠測を別方向から補えるだけでなく、本来の凹凸か異常点かを判断する材料にもなります。

さらに、床面や上面、壁面上部などでは上下方向の観測角度も検討します。左右位置だけを変えても取得状態が改善しない場合には、TLSの高さや対象との距離を変えることで反射条件が変化する可能性があります。

そして、固定された角度を機械的に適用するのではなく、現場で試験観測を行い、実際の点群を確認しながら据替位置を決めます。石材の研磨状態や経年変化によって反射状態は異なるため、その対象に適した条件を現地で確認することが重要です。

鏡面石材では、角度だけでなく観測距離、点密度、遮蔽、座標管理も合わせて考えます。一つの位置からすべてを取得しようとするのではなく、複数方向から得た点群を安定した座標系で統合することが、文化財記録として信頼できる成果につながります。

また、各スキャンの観測位置や方向を記録しておけば、将来の再計測でも近い条件を再現しやすくなります。経年変化を追う文化財計測では、完成点群だけでなく、計測方法そのものを記録として残す意識が重要です。

TLSは広い範囲を高密度に三次元化できる有効な計測手段ですが、鏡面石材のような対象では一回のスキャンですべてを正確に取得できるとは限りません。正対を少し外す、極端な斜め角度を避ける、左右から補う、上下方向を変える、取得状態を見ながら据え替えるという5つの観測角度を組み合わせることが、飛び点を減らす基本になります。

さらに、TLSで取得した点群を現場座標と関連付けておけば、保存調査、修復前後の比較、変状箇所の再確認といった次の作業へつなげやすくなります。現地で座標を扱いながら計測位置や確認地点を管理したい場合には、LRTK Phoneを組み合わせた運用も選択肢の一つとして検討できます。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

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