NETISに登録された新技術を工事で活用するとき、技術を選定することと、その技術を施工計画へ落とし込むことは別の作業です。NETISで有効と思われる技術を見つけても、施工計画書に登録番号と技術名称だけを書けば十分とは限りません。実際の現場では、どの工程で、どの範囲に、どのような体制で適用し、品質や安全をどう確認し、施工後にどのような記録を残すのかまで具体化する必要があります。
NETISは、国土交通省が新技術に関する情報を収集、共有、提供するために設けている仕組みです。一方、NETISに掲載されていること自体が、その技術について国が性能を証明、認証したことを意味するわけではありません。申請情報には技術開発者から提供された情報も含まれるため、実際の工事で採用するときは、現場条件や設計図書、施工条件などに照らして適用性を確認することが重要です。
特に施工者側からNETIS技術を提案する場合は、「便利そうだから使う」という説明ではなく、現場の課題と採用目的を結び付け、施工方法、適用範囲、管理方法、記録方法まで一連の計画として説明できる状態にしておく必要があります。地方整備局などが公開する資料では、NETIS登録技術を活用する場合に、新技術活用計画書や実施報告書、活用効果調査表などの作成、提出が必要になる運用例も示されています。実際に必要となる書類や手続きは工事や発注機関によって異なるため、最終的には契約図書、特記仕様書、適用される要領、監督職員との協議内容を確認することが前提です。
この記事では、NETIS活用を施工計画書へ盛り込むときに整理しておきたい内容を、7つの記載項目に分けて解説します。これから新技術の活用を検討する施工管理担当者はもちろん、すでに採用するNETIS技術が決まっていて、施工計画書への書き方を整理したい担当者にも使える考え方です。
NETIS活用を施工計画書に書くときの基本的な考え方
NETIS活用を施工計画書へ記載するときに最初に意識したいのは、「新技術の紹介資料」を作るのではなく、「その工事で新技術をどのように使用するかを説明する施工計画」を作るという点です。
NETISの掲載情報には、技術の概要、特徴、適用条件、従来技術との比較、施工方法など、検討に役立つ情報が整理されています。しかし、そこで説明されている内容を施工計画書へそのまま転記しても、現場固有の計画にはなりません。
たとえば、省力化が期待できる技術であっても、実際の施工箇所、作業人数、工程、周辺条件、施工数量などによって効果は変わります。狭い場所で使用する場合と、広い施工範囲で繰り返し使用する場合では、作業手順も管理方法も異なります。
そのため、NETIS掲載情報を「技術を理解するための資料」として参照し、その内容を実際の施工条件へ置き換える作業が必要です。
また、NETIS技術の活用には、発注者の指定によるものや、施工者からの提案によるものなど、複数の活用方式があります。新技術活用の運用では、試行申請型、発注者指定型、施工者選定型、フィールド提供型、テーマ設定型などの活用方式が示されています。工事ごとにどの方式で利用するのかを確認し、必要となる計画書や手続きを整合させることが重要です。
施工計画書とNETIS関係書類を別々に作成してしまうと、施工期間や施工場所、施工数量などが食い違うことがあります。提出前には、工事名、施工場所、工期、技術を使用する期間、活用方式など、共通する情報が一致しているかを確認しておくとよいでしょう。
記載項目1|技術名称・NETIS登録番号・活用方式を明確にする
1つ目の記載項目は、採用する技術を明確に特定できる情報です。
施工計画書には、NETISに掲載されている技術名称と登録番号を確認したうえで記載します。同じ目的に使用できる技術が複数存在する場合、単に「新技術を使用する」と書くだけでは、どの技術を計画しているのか判断できません。
特に重要なのが登録番号です。名称だけでは類似する技術と混同する可能性がありますが、登録番号を併記することで、NETIS上の情報との対応を明確にできます。
さらに、発注者指定なのか施工者側で選定した技術なのかなど、当該工事での活用方式も整理しておきます。施工者側で選定した場合には、なぜその技術を選んだのかという理由が後続する採用目的につながります。
ここで注意したいのは、過去に取得した資料だけを使って施工計画書を作成しないことです。施工計画を作る時点でNETIS上の掲載情報を確認し、登録状況や記載内容に変更がないかを確認しておくことが大切です。
また、NETISに書かれている効果を施工計画書で表現するときは、そのまま自工事の確定的な効果として扱わないようにします。「この技術を使えば必ず作業時間が短縮できる」と断定するのではなく、現場条件を踏まえて「作業の効率化を図る」「省力化を目的として活用する」など、計画段階であることが分かる表現にすると整理しやすくなります。
登録番号、技術名称、活用方式、採用目的を一続きで読める状態にすることが、NETIS活用を施工計画書へ落とし込む第一歩です。
記載項目2|採用目的と現場で解決したい課題を書く
2つ目は、新技術を採用する目的です。
施工計画書では、「NETIS登録技術だから使用する」という説明だけで終わらせず、現場のどの課題を解決するために採用するのかを記載します。この部分が明確になると、後の効果確認も行いやすくなります。
たとえば、施工工程に時間を要していることが課題であれば、作業手順の簡素化や省力化を目的とします。高所や狭所で作業する必要があるのであれば、危険箇所への立入りを減らすことが目的になる場合があります。出来形確認に多くの時間を要する工事では、計測や記録作業の効率化が採用目的になることもあります。
重要なのは、「技術の特徴」ではなく「現場側の課題」から文章を組み立てることです。
技術紹介資料では「高精度」「効率的」「安全性向上」といった説明が中心になりやすい一方、施工計画書で求められるのは、それがこの工事にどのように関係するかという説明です。
従来の施工方法についても簡潔に整理しておくと、新技術を採用する理由が分かりやすくなります。ただし、従来方法を過度に否定する必要はありません。従来方法でも要求品質を満たせるものの、今回の現場条件では作業負担、安全管理、記録作業などに課題があるため、新技術を利用するという構成にすると実務的です。
採用目的は、後で確認可能な内容にすることも重要です。
「品質を向上させる」という抽象的な目的だけでは、施工後に成果を評価しにくくなります。「確認作業の省力化を図る」「危険箇所での作業時間を抑える」「施工記録を位置情報と関連付けて管理する」など、施工後に振り返ることのできる表現にすると、NETIS活用の記録にもつながります。
また、複数の目的を詰め込みすぎると、何を検証したい技術なのかが曖昧になります。主目的と副次的な効果を分けて考え、施工計画書では最も重要な目的が読み取れるようにします。
記載項目3|適用範囲・施工箇所・適用時期を具体化する
3つ目は、新技術をどこで、いつ、どの程度使用するのかという適用範囲です。
施工計画書にNETIS技術の名称を書いても、施工範囲が明確でなければ現場での運用につながりません。「工事全体で使用する」のか、「特定工種だけで使用する」のか、「試験的に一部区間で使用する」のかを区別する必要があります。
施工箇所については、測点、区間、構造物名称、階層、施工ブロック、対象設備など、工事で通常使用している位置の管理単位と合わせて整理すると分かりやすくなります。
施工数量も重要です。全数量へ適用する場合と、一部数量のみへ適用する場合では、施工後の効果確認方法が変わります。一部だけに使うのであれば、なぜその範囲を選んだのかも説明できるようにしておきます。
さらに見落としやすいのが適用時期です。
NETIS技術を利用する工程が全体工程のどこに位置するのかを明確にしておかないと、必要な準備が間に合わない場合があります。施工前の設定や現場確認が必要な技術、作業員への説明が必要な技術、事前に基準データを登録する必要がある技術などでは、本施工だけでなく準備期間も考慮します。
逆に、適用しない条件を明記することも有効です。
天候、周辺環境、通信状態、作業空間、地盤条件、対象物の状態などによって適用できる範囲が限られる技術では、「どこで使うか」と同時に「どの条件では使わないか」を決めておくことで、現場判断のばらつきを減らせます。
NETIS上の適用条件は必ず確認し、現場条件がその範囲に入っているかを確認します。適用条件から外れる可能性がある場合は、安易に使用範囲を広げず、必要な確認や協議を行ったうえで計画を定めます。
適用範囲が明確になると、施工数量、工程、担当者、写真管理、効果確認の対象も連動して決めやすくなります。
記載項目4|施工方法・使用体制・作業手順を整理する
4つ目は、新技術を実際に使用するための施工方法と体制です。
NETIS技術を施工計画へ組み込む場合、新技術だけを独立した作業として考えるのではなく、既存の施工フローの中へ組み込む必要があります。
まず、新技術を使用する前工程、本工程、後工程を整理します。施工前に基準点の確認や対象範囲の設定を行い、新技術による施工や計測を実施し、その結果を確認して次工程へ移るというように、通常の施工手順との関係を明確にします。
ここで大切なのは、新技術を使った後に何を確認すれば次の工程へ進めるのかを決めることです。単に「新技術を使用して施工する」だけでは、工程上の判断点が不明確になります。
担当者の役割も整理します。
実際に機器やシステムを操作する担当者、施工結果を確認する担当者、データを保存する担当者、異常があった場合に判断する責任者などをあらかじめ決めておくと、現場での混乱を抑えられます。
新しい技術では、操作方法を知っている担当者だけが作業内容を理解し、その他の作業員が目的を理解していない状態が起こりやすくなります。朝礼や施工前打合せなどを利用し、何のための技術で、作業中に何へ注意する必要があるのかを関係者へ周知する計画も有効です。
データを扱う技術では、データの流れも施工手順の一部として考えます。
現場で取得した情報を誰が確認し、どこへ保存し、どのデータを正式記録として扱うのかを決めます。複数の担当者がそれぞれ別のデータを保管すると、施工後にどの記録が正しいものか分からなくなる可能性があります。
施工方法の章では、NETIS掲載資料の説明をそのまま転載するのではなく、自工事で行う作業順序へ置き換えて記載することが重要です。
記載項目5|品質・安全・環境への影響と対策を書く
5つ目は、新技術を使用することで変化する品質管理、安全管理、周辺環境への対応です。
新技術には、施工性向上、省力化、安全性向上などが期待されるものがあります。しかし、新しい方法を導入することで、従来とは異なる注意点が生じる可能性もあります。
施工計画書では、期待できる効果だけでなく、新技術を使用するときに新たに管理すべき事項まで整理します。
品質面では、新技術を使用した場合でも設計図書や仕様書で求められる品質を満たすことが基本です。NETIS技術を使ったこと自体が品質確認の代わりになるわけではありません。
たとえば、新技術によって計測や判定を効率化する場合でも、その計測結果をどの基準と照合するのか、異常値が出た場合にどう再確認するのかを決めておきます。
安全面では、従来作業と比較して危険作業を減らせるケースだけでなく、新しく使用する機器、電源、通信、移動作業などによって別のリスクが増えないかを確認します。
現場で機器を携行する技術であれば、足元確認がおろそかにならない作業方法を考える必要があります。重機と作業員が同じエリアで作業する場合は、新技術の操作に集中して重機接近への注意が低下しないような動線管理も必要です。
環境面についても同様です。騒音、振動、粉じん、排出物、資材使用量などに関して効果を期待する場合は、自工事でどのような条件のもとで確認するのかを整理します。
NETIS掲載情報は技術選定時の参考になりますが、現場ごとの安全管理や品質管理の責任がなくなるものではありません。したがって、NETIS上の説明だけで施工条件を決めず、設計図書や現場条件との整合を確認する必要があります。
記載項目6|施工管理方法・確認基準・異常時対応を決める
6つ目は、NETIS技術を利用した施工をどのように管理するかという項目です。
新技術を導入するときは、「正常に使用できた場合」だけでなく、「想定どおりに使用できなかった場合」をあらかじめ考えておくことが重要です。
最初に決めたいのが確認項目です。
施工後の出来形、取得データ、作業時間、機器の状態など、技術の種類によって確認すべき内容は異なります。そのため、何を見れば正常に施工できたと判断できるのかを施工前に定めます。
確認方法も具体化します。
自動的に結果が表示される技術であっても、その表示だけで判断してよいのか、別の方法で照合する必要があるのかを確認します。施工初期や条件が変化した地点などで従来の確認方法を併用し、結果に大きな差がないことを確認してから適用範囲を広げる方法も考えられます。
異常時対応は特に重要です。
機器の故障、通信不良、測定値の異常、データ欠損、想定外の現場条件などが発生した場合に、施工を継続するのか、一時停止するのか、従来方法へ切り替えるのかを事前に決めておきます。
現場で初めて判断すると、工程を優先するあまり十分な確認をせず施工を進めてしまう可能性があります。停止条件や再確認方法を施工計画段階で整理しておけば、担当者が変わっても同じ基準で対応しやすくなります。
また、新技術の管理基準と工事そのものの品質基準を混同しないことも重要です。
新技術側で「正常」と判定されても、それだけで工事の品質基準を満たしたことになるとは限りません。最終的には、工事に適用される規格、仕様書、設計図書などに基づいて確認します。
このように施工管理方法まで記載しておくことで、NETIS技術は単なる便利な道具ではなく、施工管理体系の中に組み込まれた技術になります。
記載項目7|効果確認・写真・位置情報・提出記録を計画する
7つ目は、施工結果とNETIS活用の効果をどのように記録するかという項目です。
新技術活用では、施工そのものが終われば完了というわけではありません。活用方式や対象技術、発注条件などに応じて、新技術活用計画書、実施報告書、活用効果調査表などが必要になる場合があります。
国土交通省の地方整備局などが公開する案内でも、NETIS登録技術の活用時には、対象となる場合に実施報告や活用効果調査を行う運用が示されています。具体的な提出対象や作成方法は技術や工事条件によって異なるため、当該工事に適用される最新の資料と発注者からの指示を確認する必要があります。
そのため施工計画書を作る時点で、「施工後に必要な記録」を逆算しておくことが重要です。
特に写真は後から撮り直せない情報です。新技術を使用する前の状況、使用中の状況、使用後の結果など、必要な段階で写真を残せるようにします。
ただし、写真だけ大量に保存しても、何を撮影したものなのか分からなくなることがあります。工事名、施工箇所、撮影日時、工種、作業内容などと写真を関連付けておくことが重要です。
位置情報を扱える場合は、施工箇所と記録を関連付けると、さらに管理しやすくなります。広い現場や線状構造物では、似た写真が多数発生するため、写真だけでは撮影地点を特定しにくくなります。位置情報や施工区間を紐付けておけば、施工後に確認するときの手間を減らせます。
効果確認についても、施工終了後に考えるのではなく、採用目的を設定した段階で確認方法を決めておきます。
たとえば省力化を目的としたのであれば、従来方法と比較できる作業工程や作業量を記録します。安全面の改善が目的なら、危険箇所で行う作業内容がどのように変化したかを記録します。品質管理の効率化が目的なら、確認工程や記録方法がどのように変わったかを整理します。
こうした情報が残っていれば、今回の工事だけでなく、次の現場で同じNETIS技術を採用するか判断するときにも活用できます。
NETIS活用を一度きりの施工実績で終わらせず、施工条件と結果を組み合わせて蓄積することで、自社の施工ノウハウとして再利用しやすくなります。
NETIS活用を施工計画書の中で完結させないことが重要
NETIS活用を施工計画書へ盛り込むときは、技術名称や登録番号だけを記載するのではなく、現場でどのように使うのかまで具体化することが重要です。
まず技術名称とNETIS登録番号、活用方式を明確にし、なぜその技術を使うのかという採用目的を整理します。次に、施工箇所、適用範囲、使用時期を決め、通常の施工工程へ新技術を組み込んだ作業手順を作ります。
さらに、品質、安全、環境面への影響を確認し、施工中の管理方法や異常時対応を決めます。最後に、施工後の効果確認や写真、位置情報、必要な提出記録まで計画しておけば、施工開始から記録整理まで一貫したNETIS活用が可能になります。
特に実務では、施工計画書を提出した時点でNETIS活用の管理が終わるわけではありません。現場では計画どおりの場所で新技術を使用したか、途中で適用条件が変化しなかったか、どのような結果が得られたかを継続的に記録する必要があります。
施工計画書に「どこで使うか」を書き、施工時には「実際にどこで使ったか」を残し、施工後には「どのような結果だったか」を確認できる状態にすることが理想です。この三つがつながっていれば、新技術活用の説明性が高まり、次回の施工計画にも情報を再利用できます。
一方、施工写真を共有フォルダへ保存するだけ、位置情報を別資料で管理するだけ、NETIS関係の記録を担当者個人が整理するだけといった運用では、情報が分散しやすくなります。施工後に写真と施工箇所を照合したり、新技術を使用した地点だけを探したりする作業に時間がかかる原因にもなります。
そこで、NETIS技術の活用記録を残す際には、現場写真、位置情報、施工内容をできるだけ一体で管理できる仕組みを検討すると効率的です。
LRTK Phoneは、現場写真・位置情報・施工記録を管理する自社プロダクトです。NETIS技術を使用した施工箇所の記録や、施工前・施工中・施工後の写真を位置情報と関連付けて残しておけば、施工後の確認や記録整理を進めやすくなります。NETIS活用を施工計画書への記載だけで終わらせず、現場での実施内容まで確実に記録したい場合は、LRTK Phoneを活用した施工記録管理も選択肢になります。