LRTKレフィクシア株式会社

文化財TLS点群から御神木周囲の根上がり量を測る6つの地表解析

御神木や大径木の周囲では、根系の成長や地盤条件、雨水による侵食、参道や境内の利用状況などが複合し、地表面に隆起や凹凸が現れることがあります。文化財や歴史的景観を含む場所では、こうした地表変化を把握したくても、根元付近へ測量標を打ち込んだり、樹木周辺を掘削したりする方法は採用しにくい場合があります。そこで活用しやすいのが、TLSによって取得した高密度な三次元点群です。

TLSは対象物へ直接接触せずに周囲の形状を記録できるため、御神木周辺の地盤形状を面的に残したい場面と相性があります。ただし、点群を取得しただけで「根上がり量」が自動的に分かるわけではありません。枝葉、下草、落ち葉、石、縁石、根そのものなどが混在する点群から地表面を抽出し、何を基準面とするのかを決め、どの方向の高さを比較するのかまで整理して初めて、再現性のある評価につながります。

この記事では、「TLS 文化財 計測」で情報を探している実務担当者を想定し、文化財周辺の御神木をTLS計測した点群から、根上がりの状態を定量的に読み取るための6つの地表解析を解説します。単に高い場所を色分けするだけではなく、現地条件による誤判定を減らし、将来の再計測にもつなげやすいデータ整理を意識して進めることが重要です。

文化財周辺で御神木の根上がりを点群解析する目的

御神木周囲の根上がりを計測する目的は、単純に「根が地面から何センチ出ているか」を測ることだけではありません。実務では、地表面の隆起がどこまで広がっているか、参道や石敷きなど周辺施設へどのような影響が現れているか、過去の記録と比較して変化しているかといった複数の観点から状態を整理する必要があります。

特に文化財を含む境内では、御神木そのものだけでなく、石造物、舗装、縁石、建物基礎、排水施設など周辺の構造物との位置関係も重要になります。根元から数メートル離れた場所で地表が盛り上がっていても、その原因が必ず樹根とは限りません。もともとの地形、施工時の盛土、石材の沈下、落ち葉の堆積、土砂移動などでも地表高さは変化します。

したがってTLS点群から分かるのは、基本的には「計測時点における表面形状」です。TLSの点だけから地下の根系構造を直接確定したり、隆起原因を断定したりすることは避ける必要があります。地表面の高まりと露出した根の位置関係、樹木の状態、舗装の変形、現地写真、過去資料などを照合しながら判断することが大切です。

一方でTLSの強みは、一部の測点だけではなく、対象範囲を面的な三次元情報として残せることです。水準測量などで代表点の高さを測る場合、測った位置については精密な比較ができますが、複雑な根元周辺のどこに最大隆起が存在するかを事前に決めるのは容易ではありません。高密度点群であれば、計測後に任意の位置へ断面を設定し直したり、範囲を変えて高さ分布を確認したりできます。

文化財調査では、現在の状態を把握することと同じくらい、数年後に比較可能な記録として残すことが重要です。そのため御神木周囲のTLS計測でも、その場で見栄えのよい三次元モデルを作ることより、再現可能な座標、評価範囲、基準面、断面位置、地表抽出条件を整理することが求められます。

解析1 地表点を抽出して根上がり評価の土台をつくる

根上がり量を分析する最初の工程は、TLS点群から「地表として扱う点」を整理することです。ここを曖昧にしたまま標高差を計算すると、草や落ち葉、低い枝、石材などの高さを根上がりとして拾ってしまう可能性があります。

御神木の周囲は、一般的な舗装面より点群分類が難しい環境です。根元には露出根が存在し、土と根の境界も連続的です。さらに落ち葉や苔、下草が地表を覆っている場合は、レーザーが実際の土面まで到達していない場所もあります。このため、単純に最も低い点だけを地盤と見なせばよいとは限りません。

まず解析対象範囲を定め、幹、枝葉、参拝設備、柵、案内板、人など明らかに地表解析へ不要な点を除きます。そのうえで、土面、舗装面、露出根、石など、残った対象の性質を確認します。解析目的が「周辺地盤全体の隆起」であれば露出根を除外して土面を評価する方法が考えられます。一方、「根を含めた通行面の突出量」を知りたい場合は、露出根の上面も表面として扱う必要があります。

この違いは結果へ大きく影響します。例えば根が地表から大きく露出している場所で、根の上面を地表点に含めれば突出量は大きくなります。しかし土壌そのものの隆起量を知りたい調査では、その値をそのまま「地盤の根上がり」と表現すると意味が変わってしまいます。解析前に何を測定値と定義するのかを決めておくことが重要です。

また、点群密度にも注意します。TLSではスキャナから近い場所と遠い場所、正面から照射できる面と斜めにしか見えない面で、取得点の密度や分布が異なります。御神木の幹や太い根の裏側では死角が生じやすく、点群が欠ける場合があります。複数位置から計測した点群を統合するときも、重複部分の整合性を確認しなければなりません。

地表モデルを作成する際には、細かな凹凸をどの程度残すかも検討します。極端に細かい格子で表面化すると、落ち葉や小石などの微細な形状まで強く表現されます。反対に粗すぎる格子では、根元付近に存在する局所的な隆起が平均化される可能性があります。目的とする変化の大きさに対して適切な空間単位で評価することが必要です。

文化財計測では、元の点群を残したうえで、地表抽出後の点群や解析用の地表モデルを別データとして管理すると便利です。後から分類条件を変更した場合でも、原点群から処理をやり直せます。根上がり解析では一度決めた処理が絶対ではなく、現地状況や比較目的に応じて見直す可能性があるためです。

こうして解析対象となる地表を整理することで、次の基準面設定や断面解析を行う土台が整います。

解析2 周囲の安定地盤から局所基準面を設定する

根上がり量を数値で表すには、「何に対して何ミリ、何センチ高いのか」という基準が必要です。標高そのものだけを表示しても、御神木が傾斜地に立っていれば、斜面上側と下側の高さの違いが強く現れ、根による局所的な盛り上がりを読み取りにくくなります。

そこで有効なのが、御神木周辺の比較的安定している地盤から局所的な基準面を作り、その面からの高さを求める方法です。

平坦な境内であれば、根の影響が比較的小さいと考えられる外周部の地表点を使って基準平面を設定できます。ただし実際の地面は完全な水平ではないため、水平面を機械的に当てはめるのではなく、周囲の地表傾斜を反映した面を設定する方が実態に合うことがあります。

斜面に生育する御神木では、この考え方がさらに重要です。例えば地表全体が5度程度傾いている環境で、水平面から高さ差を計算すると、樹木を挟んだ斜面上下の標高差まで根上がり量へ混入します。周辺地形を表す傾斜面を基準とし、そこから局所的に上側へ突出した量を見ることで、地形勾配と根元の隆起を分けて把握しやすくなります。

基準面を決めるときには、根上がりが疑われる範囲そのものを大量に含めないよう注意します。隆起部分を含めて平面を近似すると、基準面自体が上方向へ引かれ、本来の突出量が小さく算出されることがあります。御神木から十分に離れた部分や、現地観察で比較的安定していると判断できる範囲を候補として選ぶことが必要です。

一方、境内に石敷きや舗装がある場合、それらを基準として利用できるケースもあります。しかし舗装自体が根によって押し上げられていたり、経年沈下していたりする可能性があります。見た目が平らだからという理由だけで絶対的な基準と見なすのは避け、複数方向の地盤や既存構造物との整合を確認します。

基準面を設定したら、地表点から基準面までの距離を算出します。この距離を色分けすれば、周辺より上側へ突出している領域を面的に把握できます。御神木を中心に円形または放射状の隆起が現れる場合もあれば、一方向だけに細長く高まりが伸びる場合もあります。

ここで重要なのは、「基準面との差」と「根による隆起」を同義にしないことです。基準面との差はあくまで形状解析結果です。その原因を根系と判断するには、露出根の方向、周辺構造物の変形、排水や盛土の状況なども確認する必要があります。

また、再計測を予定している場合は、初回と次回で同じ基準面を再現できるよう、基準面に使用した範囲や設定方法を記録しておきます。毎回異なる範囲から基準面を作れば、実際の地表変化ではなく基準面の違いによって差が生じます。

根上がり量を継続的に追跡するなら、基準面をどのように定義したかは計測精度と同じくらい重要な管理情報になります。

解析3 放射状断面で根元から外側への隆起量を測る

面的な色分けは根上がりの分布を把握するのに便利ですが、隆起の高さや形状を詳細に読むには断面解析が有効です。御神木周囲では、幹の中心付近から外側へ向かって複数の放射状断面を設定すると、根元からどの程度の距離まで地表の高まりが続いているかを比較できます。

まず点群上で幹のおおよその中心位置を定めます。樹木の幹は必ずしも完全な円柱ではなく、根張り部分では大きく広がるため、単一高さの断面だけで中心を決めると不安定になる場合があります。根張りの影響が比較的小さい高さにある幹形状などを参考にし、解析上の基準中心を設定します。

その中心から複数方向へ断面線を伸ばします。例えば参道方向、建物方向、斜面上側、斜面下側、代表的な露出根の方向など、現場条件を反映した方向を選びます。等角度で放射状に配置して全体傾向を見る方法と、問題が起きている方向へ重点的に断面を追加する方法を組み合わせると分かりやすくなります。

各断面では、横軸を幹中心からの距離、縦軸を高さとして地表形状を確認します。根元近くで急激に地表が高くなり、外側へ向かって徐々に周辺地盤へ戻る形状が見えれば、隆起範囲を定量的に整理できます。

例えば幹から1メートル程度の範囲だけが高いのか、数メートル先まで緩やかな盛り上がりが続いているのかでは、周辺設備への影響の考え方が変わります。最大高さだけでなく、隆起が始まる位置、ピーク位置、周辺地盤へ戻る位置を記録しておくと、次回計測との比較にも利用しやすくなります。

断面位置を固定することも重要です。初回は露出根に沿った断面を取り、次回は少し横へずれた断面を取ってしまうと、異なる形状を比較することになります。三次元座標上で断面線を保存するか、幹中心からの方位と距離などを記録し、同じ位置を再現できるようにします。

また、一本の細い線だけから断面を抽出すると、点群の欠測や小さな凹凸の影響を受けやすくなります。一定幅を持つ帯状の範囲から代表的な表面を求める方法も有効です。ただし幅を広げすぎると隣接する別の根や地表形状まで平均化されるため、目的と点群密度を考慮して設定します。

御神木の周囲では、根が放射状に均等に伸びているとは限りません。そのため北側の断面ではほとんど隆起がなく、参道側だけ大きな高まりが確認されるといった結果になることもあります。この方向性そのものが、面的な最大値だけでは得にくい重要な記録です。

文化財周辺の維持管理では、根上がりがどの方向へ広がっているかを把握することで、石敷きや縁石、排水設備との関係を説明しやすくなります。断面図は専門的な三次元点群に慣れていない関係者へ状況を共有するときにも理解しやすい資料となります。

解析4 等高線と勾配から根上がりの広がりを読む

根上がりの状態は高さだけではなく、地表面の傾斜として現れる場合があります。最大隆起量がそれほど大きくなくても、狭い範囲で高さが急変していれば歩行や排水へ影響する可能性があります。反対に高さ差が大きくても、長い距離をかけて緩やかに変化している場合は、現地での見え方や利用上の影響が異なります。

そのため、TLS点群から作成した地表面について等高線や勾配を解析すると、根上がりの形状を別の視点から理解できます。

等高線では、同じ高さの地点を連続的につなぐことで、隆起の平面的な形を確認します。御神木の周囲に同心円状の等高線が集まっていれば、幹周囲にまとまった高まりが存在する可能性があります。一方、特定方向へ舌状に等高線が伸びていれば、局所的な盛り上がりや露出根の方向と対応しているかを確認できます。

ただし斜面では絶対標高の等高線だけを見ると、もともとの地形勾配が支配的になります。この場合は、前述した局所基準面との差を使った相対高さの等値線を作る方法が有効です。周辺地形の傾斜を差し引いたうえで、どの範囲が周囲から突出しているかを読みやすくなります。

勾配解析では、隣接する地表の高さ変化から傾斜の大きい場所を抽出します。根上がりによって舗装の端部が折れ曲がった場所や、露出根と土面の境界では急な勾配が現れることがあります。また、根上がりとは反対に地表が洗掘されて低くなっている場所でも勾配は大きくなるため、勾配が大きいこと自体を根上がりと判断しないようにします。

実務では相対高さと勾配を組み合わせて確認すると効果的です。相対高さが大きく、かつ周辺に急な勾配変化がある場所は、局所的な突出として特徴を整理できます。一方、相対高さは小さいものの勾配だけが大きい場所では、段差、石材、侵食など別要因を疑う必要があります。

参道や歩行空間に近い御神木では、こうした勾配変化の記録も重要です。根上がり量の最大値だけでは、歩行面がどこで急に変化しているかを説明できないためです。点群から地表勾配を面的に確認しておけば、現地で重点確認する場所を選びやすくなります。

等高線や勾配を作成するときも、地表モデルの解像度に注意します。細かすぎるモデルでは小石や落ち葉の形状が急勾配として大量に検出され、粗すぎれば本来確認したい根元の変形が平滑化されます。求めたい根上がりの規模に合わせ、元点群と解析面を往復しながら条件を調整します。

この解析は「何センチ上がったか」を測るというより、「どこからどこまで、どのような形で地表が変化しているか」を理解するための工程です。根上がりの影響範囲を地図上で整理する場合には特に有効です。

解析5 差分面で局所的な突出量と影響範囲を分ける

御神木周囲の地形が複雑な場合、断面だけでは全体像を見落とす可能性があります。そこで利用できるのが、基準となる面と現況地表との差を面的に計算する差分解析です。

考え方は、周囲の安定地盤をもとに推定した基準地表と、TLS点群から得られた現況地表を比較するというものです。各位置で両者の高さ差を求めれば、基準面より高い場所と低い場所を二次元的に整理できます。

御神木周囲で根上がりとみられる地表変形がある場合、幹の近くから特定方向へ正の差分が連続して現れることがあります。この分布を見ることで、最大突出量だけでなく、一定以上の差が存在する範囲を求められます。

例えば管理上、「最も高い位置」だけではなく「周辺面より明確に高くなっている範囲」を把握したい場合、差分面の方が説明しやすいことがあります。隆起範囲と石敷きや舗装範囲を重ねて確認すれば、どの構造物付近まで変形が及んでいるかを整理できます。

ただし、この解析結果は基準面の作り方に大きく依存します。理想的な元地盤形状を正確に復元できない現場では、差分値を過去からの絶対的な隆起量と解釈しないことが重要です。初回計測しか存在しない場合に作成する基準面は、あくまで現在の周辺地形から推定した比較面です。

したがって「基準面から80ミリ高い」という解析結果が得られても、「樹根によって80ミリ隆起した」と直ちに読み替えることはできません。もともとその場所が高かった可能性や、過去の盛土などの影響も残ります。初回計測で得られる値は、現在の地表突出量を整理するための指標として扱う方が安全です。

差分面では、局所的な異常値にも注意します。点群に残った草、小石、根の上面、人物などが一部に存在すると、非常に大きな差が小さな点として現れることがあります。最大値だけを報告するとこうした外れ値に左右されるため、周辺へ連続して存在する隆起か、単独のノイズかを元点群で確認します。

また、欠測部分を無理に補間すると、実際にはレーザーが届いていない場所へ架空の地表面が作られることがあります。特に太い幹の背面や根と根の隙間では遮蔽が生じやすいため、欠測と実測面を区別して扱う必要があります。

差分結果を色分けすると直感的ですが、表示範囲を変えるだけで印象が大きく変わります。毎回異なる色幅を使用すると、同じ変形でも強く見えたり弱く見えたりします。継続調査では差分表示の上限、下限、ゼロ付近の扱いなども可能な範囲で統一しておくと比較しやすくなります。

このように差分面は、御神木周囲の根上がり候補を面的に把握するうえで強力ですが、数値の意味を基準面とセットで説明することが欠かせません。

解析6 時系列点群から根上がりの変化量を追跡する

御神木周囲の根上がりを最も直接的に評価しやすくなるのは、同じ場所を複数時期にTLS計測し、時系列で比較できる状態になったときです。

初回計測では、現在の形状と仮定した基準地表との差しか分かりません。しかし2回目以降の計測では、過去に実際に取得した地表面と現在の地表面を比較できるため、「どの場所がどの程度変化したか」をより直接的に検討できます。

時系列比較で最も重要なのは、異なる時期の点群を同じ座標基準へ正しく合わせることです。数センチ程度の地表変化を追跡したいにもかかわらず、点群全体の位置合わせに同程度のずれが残っていれば、解析結果の意味が弱くなります。

御神木の幹そのものを位置合わせの唯一の基準にする方法にも注意が必要です。樹木は生物であり、幹表面や枝葉は時間とともに変化します。根元周辺も調査対象そのものなので、変化する可能性がある場所だけを基準にすると、実際の変形が位置合わせ側へ吸収される場合があります。

可能であれば、調査対象の変形から独立した周辺の安定部分に基準を持たせます。文化財周辺では恒久標識を新設できないこともあるため、既存の安定した構造物や測量基準との関係を適切に記録し、再計測時に同一座標へ復元できる方法を検討します。

二時期の点群を位置合わせしたら、それぞれから同じ条件で地表面を抽出します。ここでも処理条件を揃えることが重要です。初回は落ち葉を含み、次回は落ち葉を除いた状態で地表を作れば、季節差を根上がり変化として拾う可能性があります。

御神木周辺では季節条件の違いも無視できません。落葉量、下草の繁茂、降雨後の地表状態などによってレーザーが捉える表面が変わります。可能であれば近い季節や類似した地表条件で計測し、比較できない部分は無理に数値化しないことが大切です。

時系列差分では、前回地表に対して今回地表が高くなった場所、低くなった場所を分けて確認します。根系の影響が疑われる隆起だけでなく、雨水による土砂流出や踏圧による低下なども同時に現れる可能性があります。

例えば幹から特定方向へ連続的な正の変化が現れ、その範囲が露出根の方向と対応している場合、重点観察箇所として記録できます。一方、降雨水が流れる場所だけ負の差分が生じていれば、侵食の可能性を現地で確認するといった使い方ができます。

時系列比較では、単一地点の最大変化だけでなく、断面形状の変化も併用すると有効です。初回と次回で同じ放射状断面を作り、二本の地表線を重ねれば、どの距離帯で高さが変わったかを把握できます。

さらに、一定以上の差が連続する面積を追跡すれば、局所的なピーク値だけでなく変化範囲の拡大や縮小も記録できます。ただし、解析上のしきい値は点群精度、位置合わせ誤差、地表抽出のばらつきを考慮して設定する必要があります。

時系列TLS計測の価値は、異常を一度だけ見つけることではなく、同じ条件で記録を積み上げられる点にあります。文化財周辺の御神木では急激な変化だけでなく、長期間にわたる緩やかな地表変形を把握することにも意味があります。

根上がり解析で誤判定を防ぐための確認事項

TLS点群は高密度であるため、解析すると非常に細かな数値を表示できます。しかし、数値の桁が細かいことと、その差を実際の変形として判定できることは別問題です。

まず確認したいのが計測条件です。測距精度だけではなく、対象までの距離、入射角、点密度、複数スキャンの位置合わせ、地表面の材質などが最終結果へ影響します。幹や太い根による遮蔽が大きい場所では、点が取得できないこと自体も記録しておく必要があります。

次に、地表抽出処理による差があります。下草や落ち葉が存在する場所で、TLSが捉えた表面をすべて地盤として扱えば、実際の土面より高いモデルになることがあります。一方、フィルタ処理を強くしすぎれば、実際に存在する小さな隆起まで除去してしまう可能性があります。

表面補間にも注意が必要です。点がない場所を周囲の点から推定して埋める処理は、連続した地表面を作るうえでは便利ですが、御神木周囲のように遮蔽が多い場所では補間範囲を慎重に扱う必要があります。実測された隆起と、計算によって補われた面を同じものとして評価しないことが大切です。

また、御神木周辺では露出根と土壌隆起を区別する必要があります。根の上面を計測した値を「地表高さ」とするのか、「露出根高さ」として別に扱うのかによって解析結果は変わります。調査目的が地盤変形なのか、歩行面の突出なのか、根の露出状況なのかを明確にします。

石敷きや縁石が近い場合も同様です。根に押されて石材が持ち上がっている可能性がある一方、施工時から高さが異なっていた可能性もあります。初回TLSだけで変形原因を断定せず、過去写真や修理記録などがあれば照合します。

樹木の生育状態についても、TLS点群だけで判断できる範囲には限界があります。地表の隆起分布を把握できても、それが樹木の健全性を直接示す指標になるとは限りません。樹木そのものの状態判断が必要な場合には、適切な専門知識を持つ担当者による現地確認と組み合わせます。

根上がり解析の目的は、三次元点群から原因を断定することではなく、現地で確認すべき変形を客観的な位置と形状として整理することです。この位置付けを守ることで、文化財管理の資料として使いやすい成果になります。

文化財計測として残しておきたい記録条件

御神木周囲のTLS計測を継続的な文化財記録として活用するなら、点群ファイルだけを保存するのでは不十分です。後から同じ条件で解析できるよう、計測時と解析時の条件をセットで管理することが重要です。

まず残したいのが計測範囲とスキャン位置です。どの方向から何か所程度計測したのかが分からなくなると、次回調査で同じ死角条件を再現できません。特に幹の裏側や根張りの凹部などは観測位置によって取得状況が変わるため、スキャン配置を記録します。

次に座標基準です。ローカル座標で管理する場合でも、原点、軸方向、高さ基準を明確にします。再計測時に座標系が変わると、時系列比較のために追加の位置合わせが必要になります。

地表抽出の条件も残しておきます。どの範囲を地表として扱ったか、露出根を含めたか、植生をどのように除外したか、解析用表面をどの程度の細かさで作ったかといった情報です。将来別の担当者が処理したとき、結果が大きく変わるのを防ぐために必要です。

基準面の情報は特に重要です。単に「周辺地盤から作成」と記録するだけでは再現できません。御神木からどの程度離れた場所を使ったのか、どの範囲を除外したのか、傾斜面として設定したのかなど、後から同じ考え方を再現できる形で残します。

断面位置も座標情報として保存すると便利です。断面画像だけを保存した場合、後年に同じ線を点群上へ設定できないことがあります。幹中心との位置関係や方位も含めて管理すれば、時系列比較がしやすくなります。

現地写真も点群を補完する重要な情報です。TLS点群だけでは、点が土なのか落ち葉なのか、石なのかを判別しにくいことがあります。計測時の地表状態、露出根、舗装変形、周辺設備が分かる写真を残しておけば、後から解析結果の意味を確認しやすくなります。

天候や地表の湿潤状態なども、必要に応じて記録します。文化財の長期モニタリングでは、数年後に当時の現場条件を完全に思い出すことは困難です。計測データと現地記録を一体として保存することが、比較可能な資料を作る基本になります。

TLS点群と現地確認を組み合わせて御神木周囲を管理する

文化財周辺にある御神木の根上がりをTLS点群から把握するには、点群を取得するだけでなく、地表抽出、基準面設定、断面解析、等高線・勾配解析、差分解析、時系列比較という流れで整理することが重要です。

最初に地表として扱う点を整理し、草や落ち葉、構造物などの影響を確認します。次に周辺地盤から比較基準を定め、現在の地表がどの程度突出しているかを面的に確認します。放射状断面を使えば、幹からどの方向へどこまで隆起が続いているかを読み取れます。

さらに等高線や勾配を用いることで、最大高さだけでは分からない地表変化の形や急変箇所を把握できます。差分面では局所的な突出範囲を整理でき、複数時期のTLS点群が蓄積されれば、実際の地表変化を時系列で追跡しやすくなります。

一方、TLS点群から得られるのは基本的に表面形状です。地下にある根の位置や隆起の原因まで点群だけで断定することはできません。根上がりとみられる場所を抽出した後は、現地の露出根、地形、石敷き、舗装、排水状況、過去資料などと照合し、総合的に状態を確認する必要があります。

文化財計測では、最大値を一つ求めることよりも、どの座標を基準に、どの範囲を、どの処理条件で評価したかを残すことが重要です。同じ条件で再計測できれば、現在の状態把握だけで終わらず、数年後の比較資料として価値が高まります。

御神木周囲のように対象へ不用意に接触しにくく、複雑な地表形状を面的に記録したい場所では、三次元点群を現地管理へ取り入れるメリットがあります。広範囲をTLSで記録しつつ、現場で重点的に確認したい位置をより手軽に三次元計測・記録する運用を検討する場合は、LRTK Phoneを組み合わせることで、現地確認から位置情報付きの記録、継続的な比較へつなげやすくなります。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

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