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積雪期の文化財をTLS計測する7つの形状判別ポイント

積雪期に文化財をTLSで計測すると、無雪期とは異なる難しさが生じます。地上型レーザースキャナによるTLS計測では、短時間で広範囲の三次元点群を取得できる一方、積雪がある現場では、取得した点群が文化財そのものの表面なのか、文化財を覆っている雪面なのかを慎重に判断しなければなりません。

特に石垣、石造物、史跡、遺構、建築物外構などでは、数cmから数十cm程度の積雪でも角部や凹凸が丸くなり、本来存在する段差、目地、欠損、傾斜などが雪面形状に置き換わってしまうことがあります。その状態で点群を文化財本体の形状として処理すると、本来存在しない膨らみを記録したり、実際には存在する窪みや目地を消失させたりする可能性があります。

積雪期のTLS文化財計測で重要なのは、取得点数を増やすことだけではありません。雪に覆われている範囲と文化財表面が露出している範囲を識別し、どこまでを実測形状として扱えるのかを明確にする必要があります。反射強度、点群密度、形状の連続性、計測方向、積雪境界、過去データなど、複数の情報を組み合わせて判断することが基本です。

この記事では「TLS 文化財 計測」で情報を探している実務担当者を想定し、積雪期の文化財をTLS計測するときに、雪面と本来の文化財形状を混同しないための7つの形状判別ポイントを解説します。

積雪期のTLS文化財計測で最初に押さえる前提

TLSによる文化財計測では、レーザーが照射された位置の三次元座標を多数取得し、その集合から対象物の形状を再現します。しかし、積雪が文化財の表面を覆っている場合、基本的に得られるのはレーザーが実際に当たった雪面側の位置です。雪の下にある石材、地表面、遺構の輪郭が自動的に復元されるわけではありません。

この点は積雪期の計測を考えるうえで最も重要です。点群が高密度で滑らかに取得できていたとしても、それが文化財本体を正しく表しているとは限りません。むしろ均一な積雪があると、本来複雑な形状を持っている石垣や遺構が、点群上では滑らかな曲面として見えることがあります。

例えば石積みの表面に雪が付着している場合、個々の石の目地や小さな段差が雪で埋まり、石材本来の凹凸より外側に雪面が形成されます。この状態で断面を作成すると、実際の石積みよりも外側に張り出した断面になることがあります。反対に、窪んでいる場所へ雪が多く入り込めば、本来の凹部が点群上ではほとんど確認できなくなることもあります。

そのため積雪期のTLS文化財計測では、「計測できた点」と「文化財本体を計測できた点」を分けて考える必要があります。計測結果の品質を点数や密度だけで評価するのではなく、どの点がどの表面を表しているのかを判断する工程が欠かせません。

また、積雪は現場全体で一定の厚さになるとは限りません。日射、風、地表温度、構造物の向き、庇や樹木による遮蔽、周辺地形などによって積雪状態は変化します。同じ石垣でも南向きの面では石材が露出している一方、日陰側では数cm以上の雪が残ることがあります。

さらに、文化財計測では形状の記録そのものが成果になる場合があります。現況保存の目的で点群を残す場合、一時的な積雪形状を文化財の恒久的な形状として記録してしまうと、後年の比較時に誤った変化として解釈される可能性があります。

したがって、積雪期の計測では「どこを実形状として採用し、どこを積雪面として除外または注記するか」という判定ルールを計測前に決めておくことが重要です。現場担当者と点群処理担当者が別の場合は、現地写真、計測日時、気温、積雪状態、露出部の位置などを合わせて記録し、後工程でも判断できるようにしておく必要があります。

1. 高さ差だけで雪面と文化財面を判断しない

積雪期のTLS点群を見ると、まず高さの違いから雪面と文化財面を分けたくなります。しかし、単純な標高差だけで両者を判定するのは危険です。

積雪は文化財表面に対して必ず一定の厚さで積もるわけではありません。平坦な上面には厚く積もり、急な立面にはほとんど付着しない場合があります。凹部には雪が吹き込みやすく、凸部では風によって雪が除去されることもあります。そのため、文化財表面から積雪面までの距離は場所ごとに大きく異なる可能性があります。

例えば石段をTLS計測した場合、水平な踏面には雪が残っている一方、蹴上げ部分では石材が露出していることがあります。点群を断面表示すると、水平部分だけ数cm高く、垂直部分は本来の位置に近いという形になります。この形状を文化財本体だと解釈すると、段差寸法や踏面勾配を誤って記録する可能性があります。

石垣でも同様です。石材の上向き面には雪が乗りやすく、鉛直に近い面では雪が少なくなります。その結果、一つの石材の表面でも、場所によって本来面との距離が異なる点群が混在します。

形状判別では、単一地点の高さではなく、周辺の点群がどのようにつながっているかを見ることが重要です。文化財本体の表面であれば、構造上予想される平面、曲面、角部、目地などの特徴が一定の規則性を持って続くことがあります。一方、雪面は本来の凹凸を埋めながら滑らかにつながったり、風や融雪による不規則な起伏を持ったりします。

ただし、「滑らかだから雪」「粗いから石材」と単純に決めることもできません。風雪で硬く締まった雪面には細かな凹凸が生じることがありますし、保存状態の良い加工石では本来面が非常に平滑な場合もあります。

実務では、断面を一方向だけで確認するのではなく、縦断、横断、斜め断面など複数方向から確認すると形状の違いを把握しやすくなります。三次元表示だけでは分かりにくい数cm程度の膨らみも、断面表示すると連続的なオフセットとして確認できることがあります。

積雪面を判別するときは、「本来の文化財表面から何cm高いか」という単純な基準ではなく、その高さ変化が構造形状として説明できるか、周囲の露出部と連続しているか、積雪の付き方として自然かを合わせて確認することが必要です。

2. 稜線と角部の連続性から本来の形状を読む

文化財の形状を判別するときに有効なのが、稜線や角部の連続性を見る方法です。石材、基壇、階段、縁石状遺構、石造物などには、人為的または構造的に形成された角部が存在する場合があります。積雪すると、その鋭い角が雪によって丸くなり、本来の稜線が外側へ移動したように見えることがあります。

例えば直方体に近い石材の上面に雪が積もると、石材本来の上面と側面が交わる角は雪で覆われます。点群上では、本来90度に近い角が緩やかな曲面として取得される場合があります。この曲面を石材の摩耗や変形として解釈すると、文化財の劣化状態を誤って評価する恐れがあります。

ここで重要になるのが、露出している部分に存在する稜線を追跡することです。ある区間では石材の角が明瞭に取得され、その延長方向で突然丸くなっている場合、形状変化の位置と積雪境界が一致していないかを確認します。

文化財本体の稜線であれば、施工方法や石材形状に応じた方向性があります。一直線に近い稜線、一定の曲率を持つ縁、複数の石材が並ぶ目地などは、局所的な積雪による起伏とは異なる連続性を示すことがあります。

一方、雪面では風や融雪によって不規則な輪郭が形成されます。数十cmの範囲で膨らみが変化したり、文化財の構造とは関係のない方向へ丸みが続いたりする場合があります。

ただし、稜線を自動抽出しただけで文化財本体と判断するのは避けるべきです。雪面にも鋭い境界ができることがあります。融雪によって雪の端部が切り立っていたり、凍結した雪の塊が角状になっていたりすれば、点群上では明確な稜線として現れます。

そのため実務では、一つの角だけを見るのではなく、前後の形状と合わせて判断します。石垣なら隣接する石材との目地、石段なら次の段との関係、建築物外構なら壁面や基礎との位置関係を確認します。

積雪部分だけを局所的に拡大すると判断を誤りやすいため、周囲数m程度の構造形状を同時に確認することも有効です。文化財は単独の点や線ではなく、複数の構成要素が関係して形を作っています。その関係性を手掛かりにすることで、積雪によって隠れた部分を安易に文化財本体として採用することを防ぎやすくなります。

3. 反射強度は形状判別の補助情報として扱う

TLSでは、三次元座標だけでなく、レーザーの反射に関する情報を取得できる場合があります。積雪期の文化財計測では、この反射強度を利用して雪と石材、木材、地表などの違いを探る方法があります。

ただし、反射強度だけを使って「この値なら雪」「この値なら石」と固定的に分類するのは避ける必要があります。反射の状態は対象物の材質だけで決まるものではなく、表面状態、含水状態、レーザーの入射角、対象までの距離、使用する機器の特性など、さまざまな条件の影響を受けます。

雪についても状態は一定ではありません。降った直後の雪、締まった雪、融雪途中の湿った雪、凍結した雪では表面状態が異なります。同じ場所でも午前と午後で状態が変化することがあります。

文化財側にも変動要因があります。石材が乾燥している場合と濡れている場合では反射状態が変わることがありますし、苔、土、汚れなどが付着していれば同じ石材でも異なる値になる可能性があります。

したがって、反射強度は単独の判定基準ではなく、形状判別を補助する情報として利用します。

実務では、まず現地で確実に雪だと分かる場所と、確実に文化財表面が露出している場所を確認します。そのうえで、それぞれの点群がどのような反射傾向を示しているかを比較します。両者に明確な違いが確認できる場合は、積雪境界を探す補助材料として活用できます。

例えば石材が露出している範囲では一定の反射傾向を示し、その上に積雪している範囲で異なる傾向が連続して確認できれば、形状情報と組み合わせて雪面候補を抽出できます。

一方で、反射強度の境界と形状の境界が一致しない場合は注意が必要です。表面が濡れているだけなのか、苔や土が付着しているのか、実際に積雪境界なのかを現地写真などで確認します。

文化財計測では、数値による自動分類だけに頼らず、「どの部分を何と判断したか」を説明できる状態にしておくことが重要です。特に保存記録や変状比較に使用する点群では、分類根拠を残しておくことで、後から再評価しやすくなります。

反射情報は便利ですが、文化財そのものの形状を直接保証する情報ではありません。あくまで座標形状、現地写真、積雪状況、露出部との位置関係などと組み合わせることで価値が高まります。

4. 複数方向から計測して遮蔽と実形状を分ける

TLS文化財計測では、一つの設置位置から見えない部分が発生します。積雪期は、この遮蔽の問題と雪による形状変化が重なるため、点群を見ただけでは原因を区別しにくくなることがあります。

石垣の凹部、石段の蹴上げ、建物基礎の入り隅、石造物の背面などは、一方向からの計測ではレーザーが届きにくい場所です。さらに積雪によって凹部が埋まると、本来存在する奥行きが取得されないだけでなく、雪面によって滑らかな外形が形成されることがあります。

この状態では、一つの計測位置から得た点群だけを見ると、対象物が実際に滑らかな形状なのか、雪に覆われているのか、それとも単純に遮蔽されているのか判断しにくくなります。

そこで有効なのが、計測位置を変えることです。左右、正面、斜め方向などから対象を計測すると、ある方向では見えなかった表面が別の方向から確認できる可能性があります。

例えば石材同士の境界が正面からは雪に覆われて見えなくても、斜め方向から見ると側面の露出部が取得できる場合があります。その側面から本来の石材輪郭を追うことで、どこから雪面に切り替わっているかを判断しやすくなります。

複数方向の計測には、点群密度を増やす以上の意味があります。同一箇所を異なる入射方向から観測することで、形状が安定して確認できる部分と、観測方向によって見え方が大きく変わる部分を比較できるからです。

ただし、複数方向から計測しても、雪の下に完全に隠れている文化財表面を直接取得できるわけではありません。どの方向からレーザーを照射しても雪面しか見えない場合、その下の形状はTLS点群だけから確定できません。

この点を理解せずに複数スキャンを統合すると、高密度の雪面点群が生成され、それがあたかも高精度な文化財形状であるかのように見えることがあります。点密度が高いことと、対象物本体を計測できていることは別の問題です。

計測位置を決める際には、対象全体を均等に囲むだけではなく、積雪境界や石材の側面、段差、目地など、形状判別に使える部分を意識して配置すると効果的です。どの位置からどの文化財表面が見えるのかを現場で確認しながら進めることで、後処理で判断できる情報を増やせます。

5. 積雪境界と露出部から隠れた形状を追跡する

積雪期のTLS文化財計測では、雪に覆われている場所だけを見るのではなく、雪が途切れて文化財表面が露出している境界部分が重要な判断材料になります。

積雪が全面を均一に覆っている場所では、本来の文化財表面を直接確認する情報が少なくなります。一方、部分的に雪が融けている場所や、風によって雪が飛ばされた場所では、文化財本体の形状を直接取得できることがあります。

この露出部分から、平面、稜線、目地、傾斜、曲面などの形状を追跡すると、積雪範囲との違いを把握しやすくなります。

例えば石垣の下半分が露出し、上部だけに雪が付着している場合、露出している石材面の傾斜を確認できます。その傾斜を上方へ追ったとき、点群が途中から外側へ大きく膨らむのであれば、その変化が積雪によるものかを疑う材料になります。

ただし、露出部から形状を延長して雪の下を推定するときには注意が必要です。文化財形状が必ず一定方向に続くとは限らないからです。石垣では石ごとに面の向きが変わり、自然石を用いた構造では不規則な凹凸があります。遺構も途中で段差や欠損が存在する可能性があります。

したがって、露出部から雪の下へ線や面を延長する処理は「実測」と「推定」を明確に区別する必要があります。

保存記録として利用する場合、実測した文化財面、積雪面、推定形状を同じ点群やモデルとして一体化してしまうと、後からどこまでが実測だったか分からなくなる恐れがあります。

積雪境界を記録するときには、三次元点群だけでなく現場写真との対応も重要です。点群上で境界が不明瞭でも、写真では色や質感の違いから雪の端部を確認できる場合があります。逆に、写真では平面的に見える部分でも、点群断面を見ると積雪による膨らみを確認できる場合があります。

現地で確認できる範囲で、代表的な露出点や境界位置を記録しておく方法も有効です。どの場所が石材露出部で、どの場所が積雪面なのかを後工程へ伝えられれば、点群処理担当者の判断精度が高まります。

また、積雪境界は計測中にも変化する場合があります。日射による融雪や気温変化がある日は、午前中と午後で雪の範囲が変わることがあります。広い文化財を長時間かけて計測すると、スキャンごとに異なる雪面状態が記録される可能性があります。

そのため計測時刻と対象範囲を記録し、点群統合時に時間差を意識できるようにしておくことも大切です。同じ文化財を測ったデータであっても、取得時刻が異なれば雪面形状が変わっている可能性があります。

6. 過去点群や基準寸法と比較して変化を切り分ける

積雪期に取得したTLS点群だけでは判断が難しい場合、無雪期に取得した過去点群や既存の実測記録が重要な比較材料になります。

文化財の定期計測を行っている現場では、過年度の点群が保存されていることがあります。同じ座標系で比較できるデータがあれば、今回の積雪面と以前の文化財表面との差を確認できます。

例えば無雪期の石垣点群と積雪期の点群を重ねたとき、上向きの面だけ数cmから十数cm外側へ変化し、鉛直面では大きな差がないのであれば、積雪の影響を疑うことができます。

逆に、積雪が付着しにくい場所でも同じ方向へ変位している場合は、文化財そのものの変状、データ位置合わせの誤差、基準点の問題など、別の原因を確認する必要があります。

ここで重要なのは、過去点群との差をすべて積雪として扱わないことです。文化財は時間とともに変状する可能性があります。石材の移動、地盤変位、崩落、補修、周辺植生の変化なども差分として現れます。

また、異なる時期の点群を比較する場合、使用した座標基準や位置合わせ方法が一致しているかを確認する必要があります。位置合わせ自体に数cmのずれがあれば、積雪厚に近い差が全面的に発生し、雪による変化と区別しにくくなります。

そのため比較では、積雪の影響を受けていない安定した基準部分を使って全体位置を確認することが重要です。文化財周辺に安定した基準点や不動と考えられる構造物がある場合、それらを基準にデータ間の整合性を確認します。

既存図面や実測寸法も利用できます。階段の段高、石造物の外形寸法、建築物基礎の幅など、既知の寸法がある場合は、TLS点群上の形状と比較できます。

ただし、図面寸法を実物の現況形状と同一視しないことも必要です。古い文化財では施工時の設計値と現況が一致しているとは限りません。経年変化や過去の補修によって形状が変わっている可能性があります。

したがって、図面は「正解形状」として機械的に適用するのではなく、点群を判断する補助情報として扱うのが適切です。

定期計測を継続する予定がある文化財では、無雪期に一度高品質な基準点群を取得しておくと、その後の積雪期計測で有効です。文化財そのものの三次元形状を基準として保存しておけば、積雪、植生、一時的な覆いなどによる表面変化を判別しやすくなります。

7. 判別できない範囲を無理に補完せず記録に残す

積雪期のTLS文化財計測で最も重要な判断の一つが、「分からない部分を分からないまま残す」ことです。

点群処理では、欠損部分やノイズを補完して滑らかな三次元モデルを作成することがあります。見栄えの良い成果を作るだけであれば補完処理が有効な場面もありますが、文化財の形状記録では、実測できていない場所まで自動的に文化財形状として埋めることには注意が必要です。

積雪によって文化財表面が完全に隠れている範囲では、TLSが取得しているのは雪面です。その下にある文化財形状が既知でない限り、積雪点群だけから正確な形状を確定することはできません。

例えば石垣の目地が雪に完全に覆われている場合、隣接する石の境界位置を周囲からある程度推定できることはあります。しかし、雪の下で目地がどのように曲がっているのか、欠けや剥離があるのかまで確認することはできません。

この状態で周囲の形状から自動補間し、連続した石材面を作ってしまうと、実際には存在しない形状を記録する可能性があります。

文化財計測では、実測値と推定値の境界を明確にすることが重要です。積雪面は積雪面として残し、文化財本体の形状として利用しない方法があります。また、積雪範囲を別分類にして管理し、無雪期に再計測する対象として残す方法も考えられます。

この考え方は欠測部についても同様です。レーザーが届かなかった場所を周囲の点群から埋める場合、その補完面を実測点と区別できるようにしておく必要があります。

成果作成時には、点群の精密さだけではなく、データの由来を追跡できる状態が重要です。どの範囲が文化財露出面なのか、どこが積雪面なのか、どこが欠測なのか、どこを推定したのかを整理しておけば、後から利用する担当者が誤解しにくくなります。

特に文化財の劣化調査や経年変化比較に利用する場合、この区別は重要です。今回の積雪を石材の膨らみとして記録してしまえば、次回の無雪期計測との比較で大きな差が生じます。それを文化財の変形や剥落として誤認する可能性があります。

積雪期の計測目的が緊急記録でない場合は、積雪の影響が大きい場所を無理に完成させず、無雪期の追加計測を前提にする考え方もあります。

一方、災害後などで積雪期にしか計測機会を確保できないこともあります。その場合でも、「積雪時点の外形記録」と「文化財本体の形状記録」を区別することで、データの価値を保ちやすくなります。

TLSは高密度な点群を取得できるため、すべてが確定情報に見えやすいという特徴があります。しかし実務で重要なのは、点の数ではなく、その点が何を表しているのかを正しく管理することです。

積雪期のTLS文化財計測を現場運用へつなげる

ここまでの7つのポイントを実務で生かすためには、計測前、現場計測、点群処理、成果管理を一連の流れとして考える必要があります。

まず計測前には、対象文化財のどこに雪が残りやすいかを想定します。水平面、窪み、北向き斜面、建物や樹木の日陰などは積雪が残りやすい一方、鉛直面や風が当たりやすい突出部は露出する場合があります。

現地に到着したら、すぐにTLS計測を開始するのではなく、対象全体の積雪状態を確認します。文化財表面が確認できる場所、完全に雪で覆われている場所、融雪途中の場所を把握すると、その後の計測位置を決めやすくなります。

文化財表面が露出している場所は、積雪点群を判別するための重要な基準になります。そのため、積雪部だけを重点的に計測するのではなく、露出部とのつながりが分かる範囲を同時に取得することが重要です。

また、写真記録もTLS点群と組み合わせることで有効になります。積雪境界、湿った石材、凍結部分、落雪跡などは、点群だけでは分類しにくいことがあります。計測位置や撮影方向が分かるように写真を残しておけば、後処理で判断材料として利用できます。

計測中に天候が変化する場合もあります。降雪が始まれば、新しい雪が既存の文化財表面や基準点を覆う可能性があります。融雪が進めば、最初の計測時には見えなかった文化財表面が途中から露出することもあります。

このような場合、スキャンごとの取得時刻を意識する必要があります。同じ日のデータだから同じ表面状態とは限りません。午前と午後で積雪範囲が大きく変化している場合、点群統合後に二つの異なる表面が混在する可能性があります。

文化財計測では、現場で異常に気付いた時点で記録することが重要です。後処理担当者が現場に同行していない場合、「この部分は雪」「この石材は露出」「ここは氷結」といった情報がなければ、点群だけから判断しなければなりません。

また、積雪期に取得した点群を無雪期の点群と同じ用途で使うかどうかも事前に決めておくとよいでしょう。文化財周辺の地形把握や災害直後の外形記録が目的であれば、積雪面を含む点群にも価値があります。一方、石材表面の摩耗、ひび割れ周辺の微細形状、目地の状態などを詳細に記録する目的では、積雪の影響が大きな制約になります。

目的によって求めるデータ品質が異なるため、「積雪があるから計測できない」と一律に判断するのではなく、「今回取得できる情報は何か」を明確にすることが大切です。

積雪期でも、露出している立面、石材側面、建築物壁面などは十分な形状情報を取得できる場合があります。反対に、雪に完全に覆われた地表遺構は、本来面を直接計測できない可能性が高くなります。

対象ごとに計測可能範囲を整理し、積雪面と文化財面を分類できる状態を作ることが、成果の信頼性につながります。

現場で座標を伴う補助記録を残す方法も有効です。例えば積雪境界や露出部の代表位置を測位しておけば、TLS点群を後から確認するときの手掛かりになります。文化財全体を高密度にTLS計測しながら、必要な場所だけ現場で位置情報を追加することで、点群処理の判断材料を増やせます。

このような補助的な位置記録には、現場で扱いやすい測位機器を組み合わせる考え方があります。重要なのは、TLSと別の計測を競合させることではなく、それぞれの特徴を利用して記録情報を補完することです。

まとめ

積雪期の文化財をTLS計測するときは、取得された点群がそのまま文化財本体の表面を示しているとは限りません。雪に覆われた場所では、TLSが捉えているのは基本的にレーザーが到達した雪面であり、その下にある遺構や石材の形状を直接確認できない場合があります。

そのため、最初に確認したいのは高さ差だけで雪面を判定しないことです。積雪厚は場所によって変わり、水平面、鉛直面、凹部、突出部などで付き方が異なります。断面や周囲との連続性を見ながら判断する必要があります。

次に、稜線や角部を確認します。文化財本体に存在する構造的な線が雪によって丸くなっていないかを調べることで、積雪面を見分ける手掛かりになります。ただし雪そのものにも稜線が形成されるため、単独の特徴だけで決めるのではなく、周囲との関係を見ることが重要です。

反射強度も有効な補助情報になりますが、雪、石材、含水状態、入射角、距離など複数の条件で変化するため、固定値だけによる分類は避ける必要があります。現地で確実に判別できる雪面と露出面を比較し、その現場での傾向を把握する使い方が適しています。

さらに、複数方向から計測することで、遮蔽による欠測と積雪による形状変化を切り分けやすくなります。ただし、計測方向を増やしても雪の下を直接計測できるわけではありません。高密度な点群が得られても、その点群が文化財本体ではなく雪面である可能性を常に意識する必要があります。

積雪境界と露出部も重要です。文化財表面が見えている場所から形状の方向や稜線を追うことで、雪面との切り替わりを把握しやすくなります。ただし露出形状を雪の下まで延長した場合、それは実測ではなく推定になる可能性があります。

過去の無雪期点群や既存寸法との比較も有効です。定期計測を行う文化財では、無雪期の基準点群を保存しておくことで、積雪による表面変化と文化財そのものの変状を比較しやすくなります。

そして最も重要なのは、判別できない範囲を無理に文化財形状として完成させないことです。文化財保存のための三次元記録では、見栄えの良いモデルを作ることよりも、実測範囲と推定範囲を区別できることの方が重要になる場面があります。

積雪期のTLS文化財計測では、「どれだけ多くの点を取得できたか」だけでなく、「その点が文化財、雪、氷、地表のどれを表しているのか」を説明できる状態にすることが成果品質につながります。

TLSによる面的な三次元計測に加えて、積雪境界、露出部、基準位置などを現場で座標付きの補助情報として残せれば、後工程での形状判別をさらに行いやすくなります。こうした現場位置の記録や三次元データとの連携を効率化したい場合は、TLS計測を補完する選択肢としてLRTK Phoneを活用する方法も検討できます。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

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