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地下採石場のSLAM計測で粉じんによる点群欠損を防ぐ6つの換気タイミング

地下採石場でSLAM計測を行う場合、地上の建設現場や倉庫内とは異なる環境条件を考慮する必要があります。とくに注意したいのが、掘削、積込み、運搬、路面走行などによって発生する粉じんです。地下空間では自然風だけでは十分に拡散しにくく、発生した粉じんが坑道や切羽周辺に滞留することがあります。その状態でSLAM計測を行うと、レーザーやカメラが周囲の壁面や設備を安定して捉えにくくなり、点群の欠損、不要な浮遊点、自己位置推定の不安定化などにつながる可能性があります。

一方、坑内の換気はSLAM計測の都合だけで運転条件を決めるものではありません。適用される法令、事業場の保安規程、作業標準、換気計画などに従い、必要な換気や粉じん対策を確保することが前提です。SLAM計測の品質を上げる目的で、必要な換気を弱めたり停止したりすることは避けなければなりません。そのうえで、換気条件が変化した直後や、別区間から粉じんが流入している時間帯を避け、計測予定区間の状態が安定しているタイミングを選ぶことが重要です。

換気によって粉じんが別の場所へ移動したり、気流によって堆積していた粒子が再び舞い上がったりすることもあります。重要なのは、換気の有無だけを見るのではなく、どの作業の後に粉じんが増えやすいか、どの方向へ排出されるか、どの時点で計測予定区間の状態が安定するかを管理することです。

この記事では、「SLAM 計測」で検索して地下採石場や坑内空間の三次元計測方法を調べている実務担当者に向けて、粉じんによる点群欠損を抑えるために意識したい6つの換気タイミングを解説します。なお、ここで扱うのは点群品質を安定させるための計測上の考え方です。入坑可否や作業継続の判断については、現場で定められた安全管理基準、粉じん管理、必要に応じた酸素や有害ガスなどの確認を優先してください。

地下採石場のSLAM計測で粉じんが問題になる理由

SLAMは、センサーで周囲の形状や画像情報を取得しながら、自己位置の推定と周辺地図の生成を同時に進める技術です。移動しながら空間を連続的に取得できるため、地下坑道、採掘空間、機械室、長い通路など、据え置き型の計測を何度も行うと手間がかかる場所でも利用されています。

一方、SLAM計測では周囲から得られる形状や画像の特徴を継続的に利用します。そのため、空気中に多量の粉じんが存在すると、実際の壁面や天井、設備とは異なる位置から反射が得られたり、本来取得したい対象からの有効な反射が弱くなったりする可能性があります。

レーザーを利用する方式では、粉じんの粒子密度や粒径、計測距離、レーザーの波長、受光方式、信号処理などによって影響の程度が変わります。すべての粉じんが同じように点群へ現れるわけではありませんが、粉じんによるレーザー光の減衰や後方散乱によって、有効な測距点が減少したり、実際の対象物ではない点が取得されたりすることがあります。その結果、点群が部分的に薄く見える、壁面の輪郭が不明瞭になる、空間内に不規則な点が発生するといった現象が起こる可能性があります。

カメラ情報を併用する方式でも、粉じんによってコントラストや視認性が低下すれば、壁面の模様や角部などの視覚的特徴を捉えにくくなることがあります。地下採石場には似た形状が長く続く坑道もあるため、もともと識別しやすい特徴が少ない区間で粉じんの影響まで加わると、方式によっては自己位置推定に利用できる情報が減少する可能性があります。

また、粉じんは一様には分布しません。坑道の断面、換気設備の位置、曲がり部、勾配、分岐、重機の移動方向などによって濃度の高い部分が局所的に生じることがあります。坑道入口付近では問題がなくても、奥へ進んだ場所で見通しが急に悪くなることもあります。したがって、計測開始地点だけを確認して計測区間全体の状態を判断するのは避けた方がよいでしょう。

地下採石場のSLAM計測では、粉じん発生工程と計測工程を整理し、安全上必要な換気を確保したうえで、粉じんの状態が比較的安定した時間帯に計測することが重要です。

1.掘削や破砕作業が終わった直後に換気状態を確認する

最初に管理したいタイミングは、掘削や破砕など、粉じんを多く発生させる作業が終わった直後です。

地下採石場では、岩盤の掘削や破砕、床面の整形などによって細かな粒子が発生します。作業直後は目視でも分かるほど粉じんが舞っていることがありますが、問題になるのは目に見える大きな粒子だけではありません。粒径や気流の条件によっては、比較的小さな粒子が一定時間空気中に残ることがあります。そのため、見通しが回復したように感じても、計測条件が十分に安定しているとは限りません。

ここで重要なのは、掘削や破砕が終了したら直ちに計測へ移るのではなく、現場で定められている換気を継続し、必要に応じて所定の粉じん低減措置を行ったうえで状態を確認することです。作業中から換気設備を運転している現場では、SLAM計測のためにいったん停止して再起動するという意味ではありません。安全上必要な運転状態を維持しながら、計測可能な状態になったかを確認します。

採掘や破砕の作業計画にSLAM計測を組み込む場合は、前工程の終了時刻と計測開始判断の工程をあらかじめ連動させておくと、待機時間を管理しやすくなります。

たとえば午前中に粉じんを多く発生させる工程を行い、その後にSLAM計測を予定する場合には、前工程終了後も必要な換気を維持し、現場の安全確認と計測区間の状態確認を経てから計測担当者が入る流れにすると整理しやすくなります。

ただし、計測のための待機時間を一律に決める方法には注意が必要です。粉じんの低減に必要な時間は、坑道の長さや断面、換気量、風向、分岐数、粉じんの発生量などによって異なります。「何分経過すれば必ず計測できる」と固定するのではなく、現場で定められた安全基準や測定方法を前提に判断します。

SLAM計測の品質確認という観点では、計測予定ルートの始点だけではなく、途中と終点付近の状態も把握しておくことが有効です。粉じんが計測予定区間の奥側へ流れている場合、入口側が先に澄んでも、奥側には濃い粉じんが残っていることがあります。このような状況で入口から長距離計測を始めると、途中までは良好でも後半で点群品質が低下する可能性があります。

したがって、第一のタイミングでは、掘削や破砕作業の終了後に必要な換気が確保されているかを確認し、粉じん発生工程とSLAM計測工程を明確に分離することが重要です。

2.重機による積込みや運搬が終わった後に換気状態を再確認する

掘削や破砕が終わり、粉じんがいったん低減したとしても、その後の計測環境が維持されるとは限りません。地下採石場では、積込みや運搬のために重機や車両が移動することで、路面に堆積していた粉じんが再び空気中へ舞い上がる場合があります。

そのため、第二のタイミングとして重要なのが、重機による積込みや運搬が終わった後です。

実務では、掘削終了後には比較的見通しが良くなっていても、その後に搬出車両が何度も通行し、計測開始時には坑道内が再びかすむことがあります。とくに乾燥した路面では、車両の通過によって堆積した粉じんが再浮遊する可能性があります。

SLAM計測を始める直前まで車両が通行している場合、計測担当者が入った場所では視界が確保されていても、別区間に粉じんが移動している可能性があります。車両の走行によって生じる気流や既存の換気流に乗って、粉じんが計測予定区間へ移動することも考えられます。

そこで、計測前には「最後に粉じんを発生または再浮遊させる工程が何か」を明確にします。掘削終了だけでなく、積込み、搬出、清掃、車両移動まで含めた一連の工程が終了した後に、必要な換気が維持され、計測予定区間の状態が再び安定しているかを確認します。

たとえば、毎回「最終搬出車両が計測区間を離れた後に現場の換気状態と粉じん状態を確認し、計測開始条件を満たした場合にSLAM計測へ移る」という流れを決めておけば、日ごとの条件差を小さくできます。反対に、ある日は破砕直後、別の日は車両通行直後というように計測条件が大きく変わると、同じ場所を測っても点群品質の比較が難しくなります。

設備の維持管理や形状変化の確認などで定期的にSLAM計測する場合には、この再現性がとくに重要です。前回と今回で点群密度やノイズ量が異なる場合、それが実際の形状変化なのか、粉じん環境や計測条件の違いなのか判断しにくくなるためです。

安全上必要な換気を前提として、粉じんを再浮遊させる最終工程の後に状態を再確認することで、SLAM計測だけでなく、取得データを比較する条件も整えやすくなります。

3.換気条件が変わった直後ではなく空気の状態が安定してから計測する

第三のポイントは、換気設備の運転条件や局所的な気流条件が変わった直後に、状態確認を行わずSLAM計測を開始しないことです。

換気は坑内の安全や粉じん低減に不可欠ですが、送風方向や風量などの条件が変化した直後には、空気の流れによって床や設備上に堆積していた粒子が一時的に再浮遊することがあります。また、別区間に滞留していた粉じんが排気方向へ移動する途中で、特定の場所の粉じん濃度が一時的に高くなる可能性もあります。

これは換気を止めるべきという意味ではありません。安全上必要な換気を継続したうえで、SLAM計測は粉じんの移動状態を確認してから始めるという意味です。

坑道内の空気がどのように移動するかは、断面形状、分岐、風管、扉、設備配置などによって異なります。そのため、換気設備の操作時刻だけを計測開始の基準にするのではなく、現場の安全管理上必要な確認を行い、計測予定区間の粉じん状態が落ち着いていることを確認します。

目視確認は計測品質を判断する一つの補助情報にはなります。照明を坑道の奥へ向けたときに遠方が大きくかすんでいる場合などは、SLAM計測にも影響する可能性があります。ただし、目視だけでは粉じん濃度や人体への影響を適切に判断できません。現場で粉じん濃度の測定やその他の安全確認方法が定められている場合には、それらを優先します。

SLAM計測を開始する場所にも注意が必要です。粉じんの濃い領域が換気流に沿って移動している場合、その移動先へ向かって計測者が進むルートでは、途中から取得条件が悪化することがあります。計測品質の観点では、現場の換気計画を崩さない範囲で、比較的状態の安定した区間から計測を始める方法が考えられます。

SLAMでは開始直後に取得する周辺情報も重要です。開始地点から粉じんが多い場合、方式によっては十分な周辺形状や画像特徴を取得しにくくなる可能性があります。開始地点には、壁面、床面、天井、交差部など複数方向の形状を捉えやすく、計測条件が安定している場所を選ぶことが望まれます。

換気条件の変更から計測開始までに状態確認の工程を設けることで、粉じんが移動している途中の区間へ不用意に入ることを避けやすくなります。

4.計測区間を切り替える前に次の区間の換気状態を先行確認する

広い地下採石場を一度にSLAM計測しようとすると、計測時間が長くなり、途中で環境条件や作業状況が変化する可能性があります。そのため、坑道や採掘空間を複数区間に分けて計測する方法が有効な場合があります。

このとき第四のタイミングとして意識したいのが、現在の区間から次の区間へ移る前に、その区間の換気状態と粉じん状態を先行して確認することです。

たとえば、坑道をA区間、B区間、C区間に分けている場合、A区間を計測している間にもB区間では現場で定められた換気を維持します。A区間が終了した時点でB区間の安全確認と計測条件の確認を行い、条件が整っていれば次の計測へ移ります。

ここで重要なのは、SLAM担当者の判断だけで換気設備の風量や風向を変更したり、仮設送風機を追加したりしないことです。換気系統の変更は別区間の粉じんや空気環境へ影響する可能性があるため、必要な変更は現場の換気計画や管理手順に従って行います。

区間ごとに確認しながら進めれば、前半では粉じんが少なかったものの、後半の区間では別作業の影響で条件が悪化しているといった変化にも対応しやすくなります。粉じんが多い区間だけ計測を延期し、状態が安定してから取得する判断もできます。

地下空間では、距離だけで区間を分ける必要はありません。分岐、曲がり部、広い空洞への接続部、重機作業エリアなど、気流や作業条件が変化する位置を境界にすると管理しやすくなります。

たとえば、直線坑道から広い採掘空間へ入る場所では、空気の流れ方が変化し、粉じんの分布も変わる可能性があります。このような場所では、手前の坑道が良好だからといって奥側も同じ状態だとは判断できません。

計測区間と状態確認の単位をそろえておくと、「どこまで確認済みか」「どこまで計測済みか」を整理しやすくなります。複数人で作業する場合にも、区間名を統一しておけば進捗と計測条件を共有しやすくなります。

5.折返し計測の前に滞留部の換気状態を確認する

SLAM計測では、同じ場所へ戻るルートを設けることがあります。方式によっては、開始地点付近へ戻ったり、以前通過した区間へ再接続したりすることが、軌跡や地図全体の整合性を確認するうえで役立ちます。

しかし地下採石場では、往路で良好だった場所が、復路でも同じ状態とは限りません。

計測者や作業員の通行、車両運行、別区間の作業、換気状態の変化などによって、途中の分岐や凹部へ粉じんが滞留する場合があります。そこで第五のタイミングとして、折返し計測や既知区間への再接続へ入る前に、粉じんが滞留しやすい場所の状態を確認します。

とくに注意したいのは、行き止まり状の空間、坑道の拡幅部、大きな設備の背面、曲がり部、段差のある場所などです。主な気流から外れる場所では、周辺区間の見通しが良くても局所的に粉じんが残っていることがあります。

このような場所を折返しポイントにすると、往路では十分な形状を取得できたにもかかわらず、復路では粉じんの影響によって同じ形状を捉えにくくなる可能性があります。

ループ閉合機能を利用するSLAM方式では、以前通過した場所と再び対応付けるための形状や画像特徴が重要になります。そのため、再接続に利用したい区間は、できるだけ安定した環境で取得できるよう計画することが望まれます。

局所的な粉じん滞留が見つかった場合にも、計測担当者が独自に送風方向を変更するのではなく、現場の換気管理方法に従います。局所換気を行う場合には、粉じんを別の作業区間へ押し出したり、既存の換気系統を乱したりしないよう、現場の管理手順に基づいて実施します。

また、粉じん発生が続いている切羽付近などを再接続の重要地点に設定すると、計測条件を一定に保ちにくくなる場合があります。可能であれば、形状的な特徴があり、環境変化の比較的少ない場所を計測ルート上の確認地点として利用します。

6.再計測を始める前に粉じんが再浮遊していないか確認する

SLAM計測では、取得後の確認によって一部の点群が不足していることに気づき、その区間だけ再計測する場合があります。

ここで注意したいのが、「先ほど計測できた場所だから、すぐに戻れば同じ環境だろう」と判断することです。

再計測へ戻るまでの間に車両が通ったり、作業員が通行したり、別区間の作業や換気条件の変化によって粉じんが移動したりすると、粉じんが再び浮遊していることがあります。そこで第六のタイミングとして、再計測直前にも現場の安全状態と計測環境を確認します。

初回計測と再計測の条件が大きく異なると、同じ場所でも点群の状態が変わる可能性があります。既存点群と追加データを比較したり統合したりする場合、片方にだけ粉じん由来の不要点が多いと、形状の確認が難しくなることがあります。

再計測の目的が小さな欠損部の補完であれば、周辺全体を長時間取り直す必要がない場合もあります。ただし、利用するSLAM方式によっては、欠損部分へ到達するまでの自己位置推定や再ローカライズのため、周辺の既知形状を一定範囲取得した方が安定することがあります。

そのため、方式の特性を確認したうえで、状態の良い既計測区間から入り、周辺形状を取得しながら欠損部へ近づく方法を検討します。このとき粉じんが再浮遊している場合には、無理に計測を続けず、安全上必要な換気や粉じん対策が確保され、計測条件が再び整った後に取得する方がよいでしょう。

また、再計測が頻繁に発生する場合には、センサーや計測者の操作だけでなく、粉じん発生工程と計測時刻の関係も振り返ります。毎回同じ工程の後や同じ区間で欠損が発生するのであれば、計測タイミングやルートそのものを見直した方が効率的です。

換気だけでは防げない点群欠損への対策

粉じん環境を改善しても、地下採石場のSLAM計測では点群欠損が完全になくなるとは限りません。欠損の原因は粉じん以外にも存在します。

代表的なのは遮蔽です。

岩盤の突起、柱、設備、配管、大型機械などの裏側は、一方向から計測するだけではセンサーから見えない場合があります。これは換気を改善しても解消できないため、計測位置や通過方向を変える必要があります。

坑道断面が大きい場合には、中央を一度通過するだけでは壁面の凹凸や設備の背面などを十分に取得できないことがあります。必要な範囲に応じて左右へ寄った経路を追加したり、往路と復路で位置を変えたりすることで死角を減らせる場合があります。

計測時の動きも重要です。使用するシステムによって影響の程度は異なりますが、急激な旋回、大きな上下動、センサー視野を頻繁に遮るような持ち方は、自己位置推定や点群取得を不安定にする可能性があります。狭い坑道や足元の悪い場所では安全を最優先としながら、機器メーカーが推奨する範囲で滑らかな移動を意識します。

センサーの向きも確認します。作業者の体や携行品によって視野の一部が継続的に遮られていると、特定方向だけ点群密度が低くなることがあります。

粉じんによる欠損と遮蔽による欠損は、結果だけを見ると区別しにくい場合があります。広い面で点数が減少している場合には粉じんや反射条件などの環境要因も考えられますが、柱や設備の背面に沿って明確に抜けている場合には幾何学的な遮蔽が原因である可能性があります。

計測後には単に「穴がある」と判断するのではなく、欠損の位置や形状、計測ルート、粉じん状態を合わせて原因を切り分けることが重要です。

SLAM計測ルートと換気方向を合わせる考え方

地下採石場で効率的にSLAM計測を行うには、まず現場の安全上定められた換気計画を前提とし、その気流や作業区画に合わせて計測ルートを決める方法が有効です。

計測品質を理由に換気計画を勝手に変更するのではなく、計測者がどこから入り、どこを通り、どこで折り返し、どこで終了するのかを、既存の換気方向と粉じん発生工程に合わせて調整します。

重要なのは、計測者が粉じんの移動している領域を追いかけるようなルートになっていないか確認することです。

計測の進行方向と同じ方向へ粉じんが移動している場合、計測者が進むにつれて粉じんの濃い領域へ接近する可能性があります。そのような場合には、安全管理上許容される範囲で計測順序を変更したり、区間を分割したりする方法を検討します。

複数の分岐がある場合には、全体を必ず一回の連続計測で回る必要があるとは限りません。利用するSLAMシステムの仕様に応じて、主坑道を先に取得し、その後に各分岐を個別に取得する方法も考えられます。

分岐ごとに計測を分けると、環境状態を区間単位で確認しやすくなり、粉じんが多い区間だけ延期することもできます。一方、計測を分割すると、システムによっては後処理でデータを整合させる必要が生じます。

そのため、分割地点には共通して取得できる形状、管理点、明確な構造物などを確保しておくことが重要です。地下採石場では、似たような岩盤形状が長く続くこともあるため、単調な直線区間だけをデータ接続の手掛かりにするよりも、交差部や特徴的な形状、現場で管理された既知点などを利用した方が整理しやすい場合があります。

換気計画を前提にSLAM計測ルートを設計すると、安全管理と点群品質の両方を損なわずに工程を組み立てやすくなります。

計測後に確認したい粉じん由来の異常

SLAM計測が終わったら、現場で安全に確認できる範囲で、できるだけ早い段階にデータ品質を確認することが重要です。

粉じんの影響は、計測中の画面だけでは気づきにくい場合があります。移動軌跡が一見正常でも、後から点群を確認すると特定区間だけ点数が少なくなっていることがあります。

まず確認したいのは、点群の連続性です。

坑道壁面が途中で薄くなっていないか、天井や床のデータが急に少なくなっていないかを確認します。粉じんが多かった区間と欠損位置が一致する場合には、環境条件の影響を原因候補の一つとして考えます。

次に、不規則な浮遊点が多く存在していないか確認します。

実際には固定物が存在しない空間内に点が広く散っている場合には、粉じん、移動体、反射条件、その他のセンサーノイズなどが影響している可能性があります。ただし、不要点の原因は一つではないため、すべてを粉じんと決めつけないことが重要です。

壁面形状の厚みにも注目します。

本来は比較的明瞭な面として取得される場所が厚い帯状に見える場合、計測中の移動、自己位置推定誤差、表面状態、反射条件、環境ノイズなど複数の要因を確認する必要があります。

軌跡も合わせて確認します。長い直線坑道で位置の整合が悪化している場合には、粉じんだけでなく、周囲の形状が単調で識別しやすい特徴が不足していた可能性もあります。

重要なのは、点群だけを単独で見るのではなく、「どこで何の作業が行われていたか」「どの区間で粉じんが多かったか」「換気条件に変化があったか」「計測時にどの方向へ気流があったか」と結び付けて確認することです。

計測時刻や区間名を記録しておけば、現場で管理されている作業記録や換気・粉じん管理の記録と照合しやすくなります。粉じんによる問題を繰り返す現場では、SLAM計測結果を次回の計測タイミング改善にも利用できます。

地下採石場で再現性の高いSLAM計測を行うための管理方法

地下採石場で継続的にSLAM計測を行う場合、一度だけ良好な点群を取得するよりも、毎回できるだけ同じ条件で計測できる仕組みを作ることが重要です。

そのためには、計測ルート、計測開始地点、前工程の終了時刻、計測開始判断の条件などを可能な範囲で標準化します。換気については、現場の安全管理上定められた条件を前提とし、その状態と計測時刻を記録しておくと比較しやすくなります。

同じ坑道を定期的に取得する場合には、基本となる計測方向とルートを定めておくと条件を比較しやすくなります。ただし、死角の補完などのために別方向から取得する必要がある場合もあるため、主ルートと補助ルートを分けて管理するとよいでしょう。

毎回異なる担当者が感覚だけで「粉じんが少なくなった」と判断すると、計測条件にばらつきが生じます。入坑や作業継続については現場で定められた安全基準を使用し、それとは別にSLAM計測用の品質確認工程を決めておくと、判断を混同しにくくなります。

計測開始地点では、使用するシステムの手順に従って周囲の形状を十分に取得します。開始直後から急いで移動するのではなく、システムの状態とデータ取得状況を確認してから進みます。

長距離を計測する場合には、途中でデータ品質を確認できる地点を設定する方法もあります。すべての区間を計測した後で前半の問題が見つかると、再び長い距離を戻る必要があります。区間ごとに確認できれば、その場で再計測の必要性を判断しやすくなります。

また、現場の写真、基準点、区間名称などとSLAM点群を関連付けて管理すると、後からデータを確認するときに整理しやすくなります。

地下空間では地上のようにGNSSを安定して利用することが一般に難しいため、「どのデータがどの坑道や区間に対応するのか」という管理そのものが重要になります。SLAM計測のファイル名や計測区間名についても、現場で統一した命名方法を設定しておくことが望まれます。

地上側でGNSSを利用できる場合には、坑口周辺などで管理している座標と地下計測データをどのように関連付けるかを事前に検討します。地下へ絶対座標を引き継ぎたい場合には、現場条件と要求精度に応じて、既知点や基準点などを利用した座標接続方法を検討する必要があります。

このように、換気だけを単独で改善するのではなく、安全管理、基準位置、計測ルート、データ管理、再計測判断まで含めて標準化することで、SLAM計測の再現性を高めやすくなります。

まとめ

地下採石場のSLAM計測では、粉じんが点群品質に影響する重要な環境要因の一つです。粉じんの濃度や粒子の状態、センサー方式などによっては、レーザー光の減衰や後方散乱、不要点の増加、画像コントラストの低下などが起こり、点群や自己位置推定へ影響する可能性があります。

そのため、粉じん対策は単にSLAM計測直前だけ換気設備を動かせばよいというものではありません。坑内では適用される法令や保安規程、現場の換気計画に従い、安全上必要な換気を確保することが大前提です。計測品質のために必要な換気を弱めたり停止したりしてはいけません。

そのうえで、掘削や破砕終了後、重機による積込みや搬出終了後、換気条件が変化した後、次区間へ移る前、折返し計測の前、再計測の前という6つのタイミングで、計測予定区間の粉じん状態を確認することが重要です。

とくに注意したいのは、換気設備の運転条件が変化した直後に、計測区間の粉じん分布も変わる可能性があることです。これは換気を止めるという意味ではなく、安全上必要な換気を維持したまま、粉じんの移動状態を確認して計測開始時刻を選ぶという考え方です。

また、坑道全体を一度に計測するのではなく、作業区画や環境条件に合わせて複数区間に分ける方法も有効です。次区間へ入る前に状態を確認することで、粉じんが多い区間だけ計測を延期するなどの判断がしやすくなります。

一方で、点群欠損の原因は粉じんだけではありません。岩盤や設備による遮蔽、単調な坑道形状、急激な計測動作、移動体、反射条件なども影響します。取得後には欠損位置や不要点の分布、軌跡、計測ルートを確認し、粉じんによる問題なのか、遮蔽や自己位置推定など別の原因なのかを切り分けることが大切です。

地下採石場でSLAM計測を継続的に活用する場合には、計測開始条件、計測方向、区間分割、データ名、前工程との関係などを標準化しておくと、測定結果の比較や再計測判断を行いやすくなります。粉じんが多い特殊な現場ほど、機器性能だけでなく、どの環境状態で計測したかという運用条件が点群品質に関わります。

さらに、地下で取得したSLAM点群を地上の座標管理と組み合わせる場合には、坑口周辺の基準位置と地下データをどのようにつなぐかを事前に定めておくことが重要です。地上側の座標管理にLRTK Phoneを用いる場合も、地下SLAMとの接続に利用する基準点や管理方法をあらかじめ整理しておくことで、地上と地下の三次元データを目的に応じて扱いやすくなります。

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