SLAM計測は、現場を移動しながら周囲の形状を連続的に取得し、自分の位置を推定しながら三次元の点群データを作成する計測方法です。固定式の三次元計測では複数地点への機器設置や移設が必要になる場合がありますが、SLAM計測では計測者が機器を持って歩く、台車などで移動する、といった方法で広い範囲を連続的に取得できます。そのため、建設現場、工場、倉庫、設備室、地下空間、トンネル、既存建物など、短時間で現況を三次元化したい場面で活用しやすい方法です。
一方で、SLAM計測は単純に現場を歩けば高品質な点群データが完成するわけではありません。計測前の目的整理、現場確認、開始位置の決定、移動経路、計測中の姿勢、ループの作り方、データ処理、ノイズ除去、座標確認まで、一連の流れを理解しておく必要があります。特に実務では、現場で問題なく計測できたように見えても、処理後に点群を確認すると壁が二重になっていたり、通路の一部が欠けていたり、階層間の位置関係がずれていたりすることがあります。
この記事では、「SLAM 計測」で情報を探している実務担当者に向けて、点群データを作成するまでの流れを7つのステップに分けて解説します。単なる操作手順ではなく、各工程で何を確認し、なぜその作業が必要なのかまで理解できるように整理します。
SLAM計測で点群データが作られる仕組み
SLAMは、周囲の地図を作りながら、自分自身がその地図のどこにいるかを同時に推定する考え方です。SLAM計測では、レーザーなどによって取得した周囲の形状情報と、機器の移動に関する情報を組み合わせ、計測開始地点から現在位置までの軌跡を推定していきます。
三次元点群を取得する機器では、レーザーを周囲へ照射し、対象物までの距離や方向を連続的に計測します。ただし、レーザーによる距離情報だけでは、計測機器自体がどこへ移動したのかを正確に判断できません。そこで、連続して取得された周囲の形状を比較したり、慣性センサーなどから得られる動きの情報を利用したりしながら、機器の移動量や向きを推定します。
例えば、廊下を歩きながら計測するとします。計測開始時には壁、柱、扉などの形状が取得されます。少し前へ進むと、先ほど取得した壁や柱が別の角度から再び観測されます。SLAM処理では、このような共通する形状を手掛かりにして、「前の位置からどの方向へ、どの程度移動したか」を推定します。この処理を連続的に行うことで、計測者が歩いた軌跡が形成され、その軌跡に沿って取得された点を三次元空間上へ配置していきます。
この仕組みから分かるように、SLAM計測では周囲に特徴となる形状が存在することが重要です。柱、壁の凹凸、設備、梁、開口部など、位置を認識するための手掛かりが多い空間では比較的安定した処理を行いやすくなります。
反対に、長く続く同じ形状の通路、大きな平面だけで構成された空間、同じ棚が繰り返し並ぶ倉庫などでは、現在位置を判断するための特徴が少なくなることがあります。こうした場所では移動方法や計測ルートを工夫しないと、軌跡が徐々にずれたり、別の場所を同じ場所として認識したりする可能性があります。
そのためSLAM計測では、「どの機器を使うか」だけでなく、「どのような経路を、どのような速度と姿勢で移動するか」が点群品質に大きく関わります。
ステップ1 計測目的と必要な点群品質を決める
SLAM計測を始める前に最初に行いたいのが、点群データを何に使うのかを明確にすることです。目的によって必要な計測範囲、点の密度、位置精度、取得する対象物が変わるためです。
例えば、建物内部の概略形状を記録する目的と、配管や設備の位置関係を詳細に確認する目的では、必要となる点群の状態が異なります。現況確認が目的であれば、床、壁、柱、天井などの主要形状が把握できれば十分なことがあります。一方、設備改修の検討に利用する場合は、配管、ダクト、ケーブルラック、架台などもできるだけ欠測なく取得する必要があります。
土量計算や出来形確認などに利用する場合は、単に形が見えるだけでは不十分です。どの座標系でデータを管理するのか、基準となる高さをどのように扱うのか、必要な精度をどのように確認するのかまで考える必要があります。
計測対象も事前に整理します。現場全体を取得するのか、一部区画のみなのかによって計測時間やルートが変わります。特にSLAM計測では、必要以上に広い範囲を一つの計測として取得すると、処理時間が長くなったり、移動距離が増えて軌跡の誤差が蓄積したりすることがあります。
反対に、細かく分割しすぎると、それぞれの点群を後から統合する工程が必要になります。したがって、「一つの計測として取得する範囲」を事前に決めておくことが重要です。
また、点群を確認する端末や後工程も想定しておきます。大規模な点群は情報量が多い一方、ファイル容量も大きくなります。必要以上に高密度なデータを取得すると、表示や共有、編集が重くなる場合があります。
SLAM計測では、最大限に点を取得すること自体が目的ではありません。最終的な業務に必要な情報を、必要な品質で取得することが重要です。計測前に利用目的を決めることが、後工程を含めた効率化につながります。
ステップ2 現場条件を確認して計測ルートを設計する
目的を決めたら、次は現場を確認して計測ルートを考えます。SLAM計測の品質を安定させるうえで、ルート設計は非常に重要な工程です。
まず確認したいのが、開始地点と終了地点です。可能であれば、開始地点の周辺には壁、柱、設備など、形状の特徴が複数存在する場所を選びます。広い空間の中央や、同じ平面だけが続く場所よりも、周囲の形状を認識しやすい場所の方が初期状態を作りやすくなります。
次に、計測対象をどの順序で回るかを考えます。SLAM計測では、一方向へ長く進み続けるよりも、途中で既に通った場所へ戻る経路を作ることが重要です。以前計測した場所を再び観測することで、それまで蓄積していた軌跡のずれを調整できる可能性があるためです。
例えば建物の一つの階を計測する場合、入口から廊下を一直線に進み、そのまま終了するよりも、廊下から各室を回り、別の経路から再び入口付近へ戻る方が、同じ場所を複数方向から観測できます。
倉庫のように棚が多数並ぶ場所では、単純に通路を端から端まで往復するだけでは、似た形状が連続します。この場合は横方向の通路を利用したり、棚列をまたぐような経路を組み込んだりして、異なる形状を取得できるようにします。
階段を含む建物では、上下階をどのようにつなぐかも重要です。階段は高さ方向の移動が大きいため、急いで昇降すると軌跡が乱れやすくなる場合があります。踊り場や階段入口など、特徴の多い場所では落ち着いて計測し、周囲を十分に取得することが有効です。
また、人や車両が頻繁に移動する場所では、計測時間帯も検討します。SLAM処理は基本的に周囲の静的な形状を利用して位置を推定するため、大量の動体が存在すると安定した形状を認識しにくくなることがあります。
現場を歩き始める前に、開始地点、折り返し地点、再通過する場所、終了地点まで頭の中でルートを描いておくと、無駄な移動を減らしながら点群を取得しやすくなります。
ステップ3 開始地点で機器を安定させて計測を開始する
計測ルートが決まったら、実際にSLAM計測を開始します。このとき重要なのが、計測開始直後に急いで移動しないことです。
SLAM計測では、開始時点の周囲形状を基準として、その後の位置関係を構築していきます。開始直後から機器を大きく振ったり、急激に方向転換したりすると、十分な周囲情報を取得できないまま移動を開始することになります。
開始地点では、機器を安定させ、周囲の壁、床、柱、天井、設備などが取得できる状態を作ります。必要に応じて身体ごとゆっくり向きを変え、周囲の特徴を複数方向から取得します。
ただし、機器だけを手首で急激に回すような動作は避けた方がよいでしょう。SLAMでは機器の姿勢変化も連続的に推定するため、不自然に速い回転を加えると処理が難しくなる場合があります。
開始地点が現場座標や既知の位置と関係する場合は、その位置情報も記録しておきます。SLAMによって生成された点群は、計測機器内部のローカル座標を基準として生成される方式もあります。後から測量座標や設計座標へ合わせる必要がある場合は、座標が分かっている基準点や特徴点を計測しておくと、後工程で利用できます。
また、計測開始時にはデータ保存容量やバッテリー状態も確認します。現場の途中で保存容量不足や電源不足が発生すると、計測を分割せざるを得なくなる場合があります。
特に長時間のSLAM計測では、単純な残量表示だけでなく、予定している計測範囲を最後まで取得できる状態かを確認してから開始することが重要です。
ステップ4 一定した動きで現場をSLAM計測する
計測を開始したら、設計したルートに沿って現場を移動します。この工程では「速く歩くこと」よりも、「周囲を安定して観測できる動きを維持すること」が重要です。
SLAM計測では移動しながら連続して周囲の点を取得します。そのため、急激な加速、急停止、激しい上下動、急旋回が多いと、連続するデータ同士の対応関係を判断しにくくなる場合があります。
通常の歩行程度の安定した速度を意識し、曲がり角では少し速度を落とします。狭い通路から広い空間へ出る場所、階段、段差、扉周辺など、周囲の見え方が大きく変わる場所でも、急激に移動しないことがポイントです。
点群計測では、対象物がセンサーから見えていることも重要です。例えば配管の裏側を取得したい場合、正面から一度通過しただけでは裏側が遮蔽される可能性があります。柱や設備など立体的な対象物では、可能であれば複数の方向から観測します。
細い部材や複雑な設備周辺では、移動速度を少し抑えて十分なデータを取得することも有効です。ただし、一か所で機器を激しく振って点を増やそうとするのではなく、対象物に対する視線方向を変えながら安定して移動します。
大型の部屋では、壁際だけを一周すると中央部から見た形状が不足する場合があります。反対に中央だけを歩くと、壁際の設備や柱の裏側が欠けやすくなります。計測対象によっては、外周と中央を組み合わせたルートを考える必要があります。
天井設備を取得する場合は、機器の計測範囲を考慮しながら天井側が十分に観測できているか確認します。ただ上向きに機器を固定して歩くと、床や壁などSLAMの位置推定に利用しやすい周囲形状が不足することも考えられます。取得対象だけではなく、位置推定に利用できる周囲の形状も同時に計測することが重要です。
SLAM計測は、対象物だけを撮影する作業ではありません。自分の位置を推定するための環境情報も同時に取得しているという考え方で移動すると、ルートや姿勢を判断しやすくなります。
ステップ5 ループ閉合と再走査で位置ずれや欠測を抑える
SLAM計測における重要な考え方の一つが、ループ閉合です。これは、一度通った場所へ再び戻ることで、計測開始後に推定してきた軌跡と過去の位置を対応付ける処理です。
SLAMでは、移動するたびに少しずつ位置を推定していきます。一回ごとの推定誤差が小さくても、長い距離を移動すると誤差が蓄積する可能性があります。
そこで、以前取得した場所へ戻り、同じ壁、柱、設備などを再び認識すると、「現在推定している位置」と「以前記録した位置」の関係を確認できます。処理方式によっては、この情報を利用して軌跡全体を調整します。
例えば建物の外周を計測する場合、開始地点から一周して同じ入口へ戻れば、大きなループが形成されます。室内では、廊下から部屋へ入り、別の扉から再び廊下へ戻るような経路もループとして利用できる場合があります。
ただし、単に開始地点へ戻れば必ず正しく閉合するというわけではありません。戻ってきた場所で周囲の形状を十分に取得できなければ、同じ場所として認識されないことがあります。
開始地点へ戻ったらすぐに計測を終了するのではなく、開始時に取得した特徴的な壁や柱などを再度観測します。可能であれば、開始時と近い位置関係から周囲を取得すると、過去データとの対応を取りやすくなります。
再走査も重要です。計測中に「設備の裏側が取得できていない」「柱の背面を通っていない」「棚の上部が見えていない」と気付いた場合は、その場所を別方向から再度取得します。
SLAM計測では、現場を一度通っただけで完全な点群になるとは限りません。遮蔽物がある場所や複雑な形状では、複数方向から重複して取得することによって欠測を減らせます。
一方、同じ場所を必要以上に何度も複雑な経路で往復すると、計測データ量が増えるだけでなく、処理が複雑になる場合もあります。重要なのは、必要な場所に適切な重複を持たせることです。
ステップ6 SLAM処理で軌跡と点群データを生成する
現場での計測が完了すると、取得したデータを使ってSLAM処理を行います。利用する機器やシステムによって処理方法は異なりますが、基本的にはセンサーから取得した時系列データを解析し、計測機器の移動軌跡を推定したうえで、それぞれの点を三次元空間上へ配置します。
現場で取得した直後のデータは、必ずしも完成した一枚の点群になっているわけではありません。ある時刻に取得した点は、その時点での機器位置と姿勢に基づいて配置する必要があります。
例えば、歩きながら壁を計測している場合、1秒前と現在では計測機器の位置が異なります。各時刻の位置と姿勢を正しく推定できなければ、本来一枚の平面である壁が二重になったり、曲がったりして表示されます。
SLAM処理では、連続する点群の形状、機器の動きに関する情報、過去に観測した特徴などを利用しながら軌跡を計算します。ループ閉合が検出された場合には、ループ全体で整合するように軌跡を調整する処理が行われることがあります。
処理が完了すると、建物や設備、地形などを構成する多数の三次元座標点として点群が生成されます。色情報を取得できる構成では、各点に色が付与される場合もあります。
ここで注意したいのは、「処理が正常終了したこと」と「業務に利用できる点群になっていること」は同じではないという点です。
ソフトウェア上で処理が完了していても、軌跡がずれていれば壁が二重になる可能性があります。遮蔽が多ければ必要な部分が欠測していることもあります。また、計測中に動いていた人、車両、扉などが点として残る場合もあります。
そのためSLAM処理は、点群作成の終了地点ではなく、点群品質を確認する工程の入口として考えることが重要です。
ステップ7 点群を確認して補正・整理・出力する
SLAM処理によって点群が生成されたら、最後にデータを確認します。実務で使える点群にするためには、この確認工程を省略しないことが重要です。
最初に全体形状を確認します。平面図のように真上から見たり、側面から見たりして、建物や地形の形状が不自然に曲がっていないかを確認します。
特に確認しやすいのが、長い壁、柱列、廊下、床面です。本来直線である部分が途中から曲がっている場合、軌跡の推定にずれが発生している可能性があります。
次に、同じ対象物が二重に表示されていないか確認します。壁、柱、梁、設備などが二本重なって見える場合、異なる時間帯に取得したデータが正しく一致していない可能性があります。
部分的な欠測も確認します。点群を回転させながら表示すると、正面からは問題なく見えていた設備でも、裏側が大きく欠けていることがあります。
床や地面も重要です。土量計算や高さ確認に利用する場合、床面や地表面の点が十分に取得されている必要があります。人、車両、資材などによって地面が遮られている場所では、その下の点が取得されないことがあります。
不要点が多い場合はノイズ除去を行います。移動中の人や車両、反射によって生じた孤立点などが残っていると、断面作成や寸法確認の際に影響することがあります。
ただし、自動的にノイズを削除する処理では、実際に必要な細い部材まで除去される可能性があります。配管、電線、手すりなど細い対象を扱う場合は、除去後の状態を確認することが必要です。
座標を利用する業務では、点群の座標系も確認します。SLAM計測で生成したローカル座標のまま利用するのか、現場座標や公共座標などへ変換するのかを決定します。
既知点を使用して座標変換する場合は、一つの点だけではなく複数の確認点を利用し、変換後の点群が現場全体で整合しているか確認することが重要です。
点群の確認が完了したら、用途に応じた形式でデータを出力します。後工程で三次元表示、断面作成、寸法確認、設計データとの比較、体積計算などを行う場合は、それぞれの利用環境で扱える形式を選びます。
必要な範囲だけを切り出して出力する方法も有効です。現場全体の巨大な点群を毎回読み込むより、作業区画ごとに整理した方が扱いやすい場合があります。
SLAM計測後の点群データで確認したいポイント
SLAM計測で作成した点群は、全体を眺めるだけでは品質を判断できません。実務で利用する場合は、目的に応じて複数の視点から確認する必要があります。
まず確認したいのが位置関係です。壁、柱、床、天井など、現場の基本形状が正しくつながっているかを見ます。建物の一周計測では、開始位置と終了位置付近で壁が二重になっていないか確認します。
次に見るのが局所的な形状です。配管、梁、設備、棚などを取得した場合は、対象物の輪郭が途中で消えていないか、近接する部材同士が一つに潰れて見えていないかを確認します。
点群の密度も重要です。ただし、単純に点が多ければよいというものではありません。同じ場所だけ極端に密度が高く、重要な部分が疎になっていれば、計測ルートの改善が必要です。
断面表示も有効です。平面上では正常に見える点群でも、断面を見ると床が二重になっていたり、天井高さが途中で変化していたりする場合があります。
長距離を移動したSLAM計測では、開始地点付近と終了地点付近だけでなく、中間地点についても確認します。ループ閉合によって両端が一致していても、途中の軌跡に局所的な乱れが残っている可能性があるためです。
既知の寸法がある場合には、点群上で距離を確認する方法もあります。柱間隔、通路幅、既知点間距離など、信頼できる寸法と比較することで、点群全体の状態を判断する材料になります。
重要なのは、点群を「きれいに見えるか」だけで判断しないことです。使用目的に対して必要な位置、形状、高さ、範囲が取得できているかという観点で確認します。
SLAM計測で点群品質が低下しやすい代表的な原因
SLAM計測ではさまざまな現場を効率よく三次元化できますが、環境によっては位置推定が難しくなります。
代表的なのが、特徴の少ない空間です。長い直線廊下、均一な壁面、大きな床面などでは、現在位置を判断するための特徴が少なくなることがあります。
同じ形状が繰り返される場所にも注意が必要です。物流倉庫などで同じ棚列が長く続く環境では、異なる場所が似た形状として観測されます。横方向の通路や特徴的な設備をルートに含めることで、位置推定の手掛かりを増やすことが重要です。
ガラス、鏡面、濡れた面なども点群取得に影響する場合があります。反射の状態によっては、安定した距離情報を得にくいことがあります。特定の表面だけに依存せず、周囲の壁や柱なども十分に取得することが大切です。
大量の動体も注意点です。人や車両が頻繁に移動している場合、同じ場所を時間差で取得したときに周囲形状が大きく変化します。可能であれば動きが少ない時間帯を選びます。
急激な機器操作も点群品質を低下させる要因になります。走りながらの計測、急旋回、機器を大きく振る動作などは避け、できるだけ滑らかな移動を維持します。
遮蔽物による欠測はSLAM処理だけでは解決できません。センサーから見えていない場所の形状は基本的に取得できないため、柱の裏、設備の裏側、棚の上部などは別方向から取得する必要があります。
SLAM計測の品質を上げるには、処理後の補正だけに頼るのではなく、現場で良いデータを取得することが最も重要です。
SLAM計測と位置情報を組み合わせる意味
SLAMによる点群は、現場内部の相対的な形状を三次元化することに適しています。しかし実務では、「この点群が現場のどこに位置するのか」という絶対的な位置情報が必要になる場合があります。
例えば、造成地の地形を計測した点群を設計データと比較する場合、両者が同じ座標系でなければ正しく重ねることができません。
建設現場でも、SLAM点群を測量成果、図面、三次元設計データなどと組み合わせたい場合があります。このような用途では、SLAM計測で作成した形状データに位置情報を与える工程が重要になります。
方法の一つが、座標の分かっている点を点群内で特定し、それを基準として座標変換する方法です。複数の既知点を利用すれば、点群の位置だけでなく方向や大きさの整合性を確認しながら調整できます。
また、屋外など衛星測位を利用できる環境では、GNSSによる位置情報と三次元計測を組み合わせる考え方もあります。SLAMが得意とする連続的な三次元形状と、GNSSが得意とする地球上の位置情報を組み合わせることで、現場座標と関連付けた点群を扱いやすくなります。
ただし、位置情報を付けたからといって点群内部のすべての誤差が自動的に解消されるわけではありません。SLAM軌跡自体に大きなずれがある場合は、先に点群の形状や軌跡を確認する必要があります。
点群を現場座標で利用する場合は、形状の整合性と座標の整合性を分けて確認することがポイントです。
現場でSLAM計測を効率化するための運用方法
SLAM計測を現場で継続的に活用する場合、担当者ごとに計測方法が異なる状態を避けることが重要です。歩行速度、開始方法、ルート、確認項目などをある程度統一することで、点群品質のばらつきを抑えやすくなります。
まず、計測開始時の手順を決めます。開始地点で周囲を取得し、安定した状態を確認してから移動するという流れを標準化すると、担当者が変わっても同じ考え方で計測できます。
ルート設計についても、開始地点へ戻る、主要な交差部を複数回通る、重要設備は複数方向から取得するといった基本ルールを決めておくと効果的です。
計測後の確認項目も統一します。壁の二重化、床面の状態、欠測、不要点、座標、必要範囲などを毎回同じ順序で確認すれば、異常を早期に見つけやすくなります。
大規模現場では、一つの計測ですべてを取得しようとしないことも重要です。建物の階、工区、設備エリアなどで適切に分割し、管理しやすい単位で計測する方法があります。
ただし、後で複数データを統合する場合は、共通して取得する範囲を設けておきます。隣接する計測区画に共通する柱、壁、基準点などがあれば、後から位置関係を確認しやすくなります。
点群ファイルの名称や保存先もルール化すると、後工程が効率化します。計測日、工区、階、区画などが分かる名称にしておけば、複数回計測した現場でも取り違えを防ぎやすくなります。
SLAM計測を単発の計測作業として考えるのではなく、計測計画、現場取得、処理、確認、共有までを一つの業務フローとして整えることで、現場での活用範囲を広げやすくなります。
まとめ
SLAM計測で点群データを作成する流れは、現場を歩いてデータを取得するだけではありません。最初に利用目的と必要な点群品質を決め、現場条件を確認したうえで計測ルートを設計し、開始地点から安定した動きで計測します。その後、過去に通った場所を再び取得してループを作り、必要な対象を複数方向から再走査します。
現場計測後は、取得したデータからSLAM処理によって移動軌跡を推定し、それぞれの計測点を三次元空間へ配置することで点群データを生成します。しかし、処理が完了した時点で作業が終わるわけではありません。
壁や床の二重化、軌跡のずれ、欠測、不要点、座標系などを確認し、必要に応じて整理したうえで業務に利用できるデータとして出力するところまでが、SLAM計測の一連の流れです。
点群品質を安定させるために最も重要なのは、現場での取得方法です。特徴の少ない場所を高速で移動したり、長い距離を一方向へ進み続けたりすると、後処理だけで完全に修正することが難しい場合があります。開始地点、移動経路、速度、姿勢、ループ閉合、再走査までを意識して計測することで、後工程で扱いやすい点群を作りやすくなります。
さらに、作成した点群を現場座標と組み合わせれば、単なる三次元記録だけではなく、設計データとの比較、位置確認、寸法確認、体積計算、施工記録など幅広い用途へ展開できます。
現場で三次元計測と位置情報をより一体的に扱いたい場合は、スマートフォンを活用した測位や点群取得、現場データの共有までを一つの流れで行えるLRTK Phoneの活用も検討できます。SLAM計測で取得した三次元情報を、現場の座標やその後の施工管理へつなげることで、点群データを「見るためのデータ」から「現場で使うデータ」へ発展させることができます。