LRTKレフィクシア株式会社

人や車が動く現場のSLAM計測でノイズを減らす7つの工夫

人や車が動く現場でSLAM計測が難しくなる理由

SLAM計測は、センサーで周囲の形状や画像などを取得しながら、自分の位置を推定し、周辺環境の地図を同時に構築していく技術です。設備調査、建築物の現況確認、土木構造物の記録、施工中の出来形確認など、さまざまな現場で活用できます。しかし、人や車両、重機、台車などが頻繁に移動する現場では、静かな屋内や通行規制された場所と比べて計測条件が複雑になります。

注意したいのは、「動いている物体が点群に入ること」と「SLAMの自己位置推定そのものが不安定になること」は同じ問題ではないという点です。通行人を計測した結果、人物の形に相当する不要な点が残ったとしても、周辺の壁や柱などを安定して捉えていれば、センサーの軌跡は比較的良好に推定できる場合があります。一方で、視野の大部分を大型車両や人の集団が占め、静止している周囲の構造物を十分に取得できなくなると、自己位置推定に利用できる情報まで不安定になる可能性があります。

たとえば倉庫では、フォークリフトや台車が通過するたびに視界が遮られることがあります。道路沿いの施工現場では、通行車両が次々にセンサーの前を横切ります。工場では作業員や搬送設備が継続的に移動しており、駅や公共施設では通行そのものを完全に止められないケースも珍しくありません。このような場所では「誰もいない瞬間に計測する」という理想条件を求めるより、動体が存在することを前提に計測方法を組み立てる方が現実的です。

また、動いている対象から取得された点は、同じ対象であっても取得時刻によって位置が変化します。そのため、点群上では人や車が引き伸ばされたように見えたり、同じ場所に複数の輪郭が重なったり、路面や壁の前に浮いた点が発生したりすることがあります。こうした現象をすべてSLAMの失敗と判断すると、原因分析を誤りやすくなります。

実務では、最初から動体を完全に排除することを目標にするのではなく、計測に必要な静止構造物を安定して取得し、動体の影響を局所的なノイズとして扱える状態をつくることが重要です。そのためには、時間帯、ルート、センサーの向け方、歩行速度、再計測方法、後処理まで含めて考える必要があります。

工夫1|人や車が少ない時間帯と計測ルートを選ぶ

最初に見直したいのが、計測を行う時間帯と移動ルートです。動体が多い現場であっても、一日中同じ交通量や作業量が続いているとは限りません。搬入前、休憩時間、作業工程の切り替え時、施設利用者が少ない時間など、比較的動体が減少する時間帯を把握できれば、SLAM計測の難易度を大きく下げられます。

重要なのは、単純に「人が少ない時間」を探すだけではありません。計測対象の周囲で、どの方向に人や車が流れているかまで確認します。たとえば車両通路と平行に長距離を歩くルートでは、前方を走る車両が長時間視野を占めることがあります。一方、固定された壁や柱に近い側へ計測ルートを寄せれば、車両が通行していても静止物を継続的に取得しやすくなります。

施工現場では、計測担当者だけでルートを決めるのではなく、現場の動線管理と組み合わせて考えることも有効です。資材搬入経路、重機の旋回範囲、作業員の主要動線を事前に確認し、その中心を横切る回数を減らします。通路を完全に封鎖できない場合でも、数分間だけ通行量が減るタイミングをつくれるのであれば、その時間に重要区間を優先して計測できます。

計測ルートは、最短距離だけを基準にすると必ずしも良い結果になりません。中央部を一直線に進む方が距離としては短くても、人や車に囲まれやすいのであれば、壁際や構造物沿いを通る方がSLAMには有利な場合があります。周囲に静止した特徴が連続して存在する経路を選ぶことが、安定した自己位置推定につながります。

また、開始地点と終了地点についても、人や車が滞留しやすい場所は避けた方が扱いやすくなります。計測開始直後は周辺環境を安定して取得したい場面であり、終了時には取得結果を確認する余裕も必要です。出入口、荷さばき場、交差部などではなく、比較的静止環境を確保しやすい場所から開始できるよう計画します。

事前に現場を短時間歩き、通行量の変化を見るだけでも計測計画は改善できます。SLAM計測では、センサー性能だけでなく、いつ、どこを、どの順番で歩くかという計画そのものが品質を左右します。

工夫2|移動体を追いかけず静止物が見える距離を保つ

人や車が多い現場では、無意識に前方の移動体を追いかけるような計測になりやすいため注意が必要です。たとえば狭い通路を車両の直後について移動すると、センサーから見える範囲の大部分をその車両が占めることがあります。車両自体は移動しているため、SLAMが利用したい固定環境の情報量が減ってしまいます。

このような場合は、前方の対象との距離を空け、壁、床、天井、柱、設備などが十分に視野へ入る状態に戻してから進む方が安全です。人の集団についても同様で、集団のすぐ後ろを歩き続けるより、通過を待つか、静止構造物を広く取得できる位置へ移動してから計測を再開します。

動体そのものをセンサーに映さないことが目的ではありません。現実の現場では、人や車が一度も視野に入らない状態を維持するのは難しいためです。重要なのは、動体が視野に入っても、その周辺に十分な静止物が残っている状態をつくることです。

たとえば大型車両が一時的に前方を横切ったとしても、左右の壁や床面、天井、柱列などが継続して取得できていれば、環境との対応関係を維持しやすくなります。反対に、大型車両へ極端に接近し、その車体だけが広い範囲を占める状態が長く続けば、計測条件は厳しくなります。

交差部でも同様です。車両が連続的に横切る場所を急いで通過すると、取得データの多くが異なる位置に移動する物体で構成される可能性があります。その場合は少し手前で待機し、静止環境が見える時間を確保してから通過した方が結果を確認しやすくなります。

特に、同じ車両や人を基準物のように扱わないことが重要です。現場で目立つ大型車両や設備であっても、それが移動可能なものであれば、計測中の位置が固定されているとは限りません。SLAM計測では「目立つもの」ではなく「動かないもの」を安定して捉えるという考え方が基本になります。

工夫3|壁・柱・路面など動かない特徴を視野に残す

動体の多い場所でSLAM計測を安定させるうえで、最も基本となるのが静止した周辺環境を継続的に取得することです。壁、柱、梁、路面、床、天井、固定設備、開口部、段差など、計測中に位置が変わらない対象を視野の中に残すことを意識します。

SLAMでは、連続する計測データの間で周囲の特徴を対応付けながら、自分がどのように移動したかを推定します。そのため、人や車が多いこと自体よりも、固定環境の情報が極端に少なくなる状態を長時間続けないことが重要です。

たとえば広いヤードの中央を歩く場合、近距離に固定物が少なく、周囲を走行車両が行き交っていると、計測条件が難しくなることがあります。同じ場所でも、建物沿い、縁石沿い、固定柵沿いなど、動かない形状を連続して取得できるルートを通れば、安定性を高められる可能性があります。

屋内でも考え方は同じです。広い物流施設で移動車両が多い場合、通路中央だけを見るのではなく、柱列や壁面、天井構造などを同時に取得できる位置関係をつくります。静止物が複数方向に存在すると、前方の一部を人や車に遮られても、別方向の情報を利用できる余地が残ります。

ただし、単に壁へ近づけば良いわけではありません。極端に近づきすぎると、視野に入る形状が一方向へ偏ったり、センサーの計測範囲を十分に活用できなかったりする場合があります。壁、床、柱、天井など異なる向きの面が適度に見える位置を選ぶことが重要です。

同じ形状が長く繰り返される環境にも注意します。均一な壁が長距離続く通路や、同形状の柱が等間隔で並ぶ場所では、静止物が存在していても位置を区別する情報が少ない場合があります。そのような場所では、扉、開口、標識位置、設備形状、床面の変化など、場所ごとの差が分かる固定要素を多く含めるように計測します。

人や車が動いている現場では、動体を避けることばかり意識すると計測ルートが不自然になりがちです。むしろ「固定された構造物を途切れずに見続けられるか」という視点でルートを決める方が、現場で判断しやすくなります。

工夫4|急旋回や急加速を避けて安定した速度で移動する

動体の多い現場では、人や車を避けるために計測者自身の動きも不安定になりやすくなります。突然立ち止まる、急に方向を変える、通行車両を避けるために早足になるといった動作が連続すると、周辺環境の変化だけでなく、センサー自身の動きも複雑になります。

SLAM計測では、できるだけ滑らかに移動することが基本です。必ず一定速度でなければならないという意味ではありませんが、必要以上の急旋回や急加速を避け、周囲を継続的に取得できる動きを心掛けます。

特に方向転換では、角を急激に曲がるより、前後の環境が一定時間重なるように緩やかに向きを変える方が扱いやすくなります。曲がる前に見えていた柱や壁の一部と、曲がった後に見える環境の両方を連続的に取得できれば、位置関係を維持しやすくなります。

人を避ける際にも、小刻みに左右へ動き続けるのではなく、安全な場所で一度待機する方が良い場合があります。車両が通過するたびにルートを変更すると、予定していた計測範囲から外れたり、同じ区間を不規則に往復したりしやすくなります。現場の安全を最優先としたうえで、待てる場所では待ち、安定したルートへ戻ってから再開します。

また、センサーを保持する姿勢もなるべく一定にします。動体を避けようとして頻繁にセンサーの向きを大きく振ると、取得範囲が急変します。周辺確認は必要ですが、計測機器自体は安定した姿勢を維持し、対象空間を連続的に取得することが大切です。

車両交通がある場所では、速く歩いて短時間で終わらせたいと考えがちですが、計測時間を短縮することと計測品質を安定させることは同じではありません。早歩きによって静止物を取得できる時間が減れば、結果として再計測が必要になる可能性もあります。

現場ごとに適切な速度は異なるため、特定の歩行速度を一律の基準にするより、点群や軌跡を確認しながら、その環境で安定する動き方を決める方が実務的です。

工夫5|動体が多い区間は一度で取り切ろうとせず分割する

人や車の動きが激しい場所を、一回の連続計測ですべて取得しようとすると、計測条件が悪い区間まで無理に進んでしまうことがあります。そこで有効なのが、現場を複数の区間に分けて考える方法です。

たとえば、比較的静かな屋内区間、車両が交差する出入口、作業員が多い作業区画、再び静かな設備区画という順に続く現場であれば、全区間を同じ条件で扱う必要はありません。交通量の多い出入口だけ時間帯を変えて計測したり、人の流れが落ち着くまで待ったりすることができます。

分割すると、問題が発生したときの切り分けもしやすくなります。長時間の計測後に点群の一部へずれが見つかった場合、どの場所で問題が発生したかを特定するには確認作業が必要です。短い区間ごとに品質を確認していれば、異常が現れた区間を限定しやすくなります。

ただし、単純にデータを細かく分ければ良いわけではありません。後で複数区間を同じ座標系へ統合する場合には、区間同士の位置関係を確認するための共通部分が必要です。隣接区間の間に十分な重複範囲を持たせ、柱、壁、固定設備など、後から対応を確認できる対象を取得しておくことが重要です。

たとえば車両通路を境に左右の区画を別計測する場合、通路の直前で計測を終了するのではなく、安全を確保できる範囲で通路周辺の固定構造物を両方の計測に含めます。こうして共通の静止環境を残しておけば、後処理で位置関係を確認しやすくなります。

分割計測は、現場作業の停止時間を最小化するうえでも有効です。長時間の全面通行止めが難しい現場でも、重要な区間だけ短時間規制する方法なら調整できる場合があります。

SLAM計測では、最初から最後まで一つの連続データにすることより、必要な範囲を必要な品質で取得することが重要です。動体が集中する場所を無理に連続計測へ含めず、現場条件に合わせて区切ることで、結果の確認や再計測も行いやすくなります。

工夫6|同じ場所を条件を変えて再計測し重複部分を確認する

動体ノイズが避けられない現場では、一度の計測結果だけで判断せず、重要区間を再計測する方法が有効です。同じ場所をもう一度通ることで、一時的に存在した人や車と、常に同じ場所に存在する壁や設備を区別しやすくなります。

一回目の計測で車両が停車していた場所が、二回目には空いていれば、その背後にある床や壁を追加で取得できます。反対に、一回目には人がいなかった場所に二回目だけ人がいれば、二つのデータを比較することで動体由来の点を判断しやすくなります。

再計測では、まったく同じ動きを機械的に繰り返す必要はありません。対象によっては、少し位置や視線方向を変えた方が隠れていた部分を取得できます。特に車両、資材、人によって一時的に遮られる現場では、往路と復路で異なる方向から取得することで欠測を補えることがあります。

一方で、重複部分の確認を目的とする場合は、固定構造物を共通して取得することが重要です。柱、壁、床、固定設備などが一回目と二回目で一致しているかを確認し、点群同士に不自然な二重化や位置差がないかを見ます。

このとき、動いている人や車の位置が異なること自体は異常ではありません。比較する対象はあくまで静止した構造物です。一時的な動体だけを見て「二つの計測結果が一致していない」と判断しないようにします。

重要設備の寸法確認や断面作成など、後工程で高い再現性が求められる場所は、最初から複数回計測する計画にしておく方法もあります。一度目の結果を現場で確認し、遮蔽物や不足部分が見つかったら、その場で補足計測します。

現場を離れた後に欠測へ気付くと、再入場や交通規制の調整が必要になる場合があります。人や車が多い現場ほど、取得直後の確認と補足計測を組み合わせることが、作業全体の効率化につながります。

工夫7|計測後に動体由来の点を分離して点群を確認する

どれだけ現場で工夫しても、人や車が動いている環境では不要な点が一定量含まれる可能性があります。そのため、計測時の対策だけでなく、計測後に動体由来の点を確認する工程も必要です。

動体ノイズは、点群上でさまざまな形に現れます。人の形が途中で途切れて見えたり、移動車両が進行方向へ伸びたように見えたり、路面上に浮いた点が連続したりすることがあります。同じ区間を複数回取得した場合には、一方のデータにだけ存在する対象として見つかることもあります。

ここで重要なのは、不要点を大量に削除すること自体を目的にしないことです。後処理で強いフィルタリングを行うと、細い配管、手すり、フェンス、ケーブル、小さな段差など、実際に必要な構造までノイズとして除去してしまう可能性があります。

まず、利用目的を明確にします。床面の高さや路面形状を確認する目的であれば、床より上を移動している人物や車両の点は比較的分離しやすい場合があります。一方、設備周辺の詳細な現況を記録する場合には、動体と細い固定設備が近接していることがあり、単純な自動除去だけに頼るのは適しません。

動体除去機能や点群フィルタの有無、処理方法は使用する計測環境によって異なります。そのため、特定の機能が必ず利用できることを前提にせず、最終成果に不要な点が残っていないかを目視でも確認します。

特に、動体の背後にある部分は注意が必要です。車両そのものを点群から削除できても、計測時に車体で遮られていた路面や壁が自動的に復元されるわけではありません。点を消す処理と、隠れて取得できなかった部分を補う処理は別問題です。

したがって、後処理だけで動体問題を解決しようとするのではなく、現場計測の段階で遮蔽を減らし、必要に応じて別方向から再計測しておくことが重要です。良好な点群をつくる基本は、取得時に必要な情報を十分確保し、そのうえで不要点を整理するという順番です。

動体ノイズとSLAMの位置ずれを混同しない

人や車が映り込んだ点群を確認したとき、「SLAMの精度が悪い」と判断してしまうことがあります。しかし、動体による不要点と、センサー軌跡の推定誤差は分けて確認する必要があります。

たとえば人が歩いた跡のような点が空間に残っていても、壁面や柱が一枚の面として自然に整っていれば、自己位置推定自体は大きく崩れていない可能性があります。この場合の主な問題は、成果物に不要な動体点が含まれていることです。

一方、同じ壁が二重に見える、往路と復路の床面高さが合わない、柱の位置が途中から連続的にずれる、閉じた経路を一周した後に開始地点と終了地点の周辺形状が一致しないといった現象がある場合は、自己位置推定やデータ統合を含めて確認する必要があります。

動体が多い環境では、両方が同時に発生する場合もあります。そのため、点群を確認するときは、最初に固定物を見ることが重要です。人物や車両ではなく、建物、床、壁、柱、縁石、固定設備などを基準として整合性を判断します。

また、動体だけが原因とは限りません。長い直線空間、似た形状が連続する場所、特徴の少ない広場、反射しやすい面、暗い環境、遮蔽物が多い場所など、SLAM計測に影響する条件は複数あります。人や車が多かったという理由だけで原因を断定すると、対策を誤る可能性があります。

たとえば壁面が二重になっている場合でも、通行人の点を削除するだけでは改善しません。原因が自己位置推定のずれであれば、計測ルート、重複範囲、静止特徴の取得方法などを見直す必要があります。

実務では「動いている対象に発生したノイズなのか」「固定構造物までずれているのか」を最初の判断基準にすると、再計測すべきか、後処理で対応できるかを決めやすくなります。

人や車が動く現場で決めておきたい計測ルール

動体が多い現場では、担当者個人の判断だけに頼るより、簡単な計測ルールを事前に決めておく方が品質をそろえやすくなります。

まず決めたいのは、計測を一時停止またはやり直す条件です。たとえば大型車両が長時間視野を遮った場合、作業員の集団によって壁や床がほとんど取得できなかった場合、予定ルートから大きく外れた場合など、再計測する判断基準を共有します。

次に、動体が通過したときの対応を統一します。すぐに追い越すのか、立ち止まって待つのか、別ルートへ変更するのかが担当者ごとに異なると、取得データの性質も変わります。原則として安全を優先しながら、静止環境を十分取得できる状態へ戻ってから進むという考え方を共有しておくと判断しやすくなります。

計測区間の区切りも事前に決めておくと便利です。動体の少ない区間と多い区間を分け、特に条件の厳しい場所だけ現場で結果確認を行う運用にすれば、すべての区間を同じ密度でチェックする必要はありません。

また、計測時刻や現場状況を簡単に記録しておくことも重要です。後から点群に異常が見つかった際、その時間に大型車両が通過していたのか、資材搬入が行われていたのかが分かれば、原因を切り分けやすくなります。

複数人でSLAM計測を行う場合は、歩き方やセンサーの保持方法も一定にします。ある担当者は頻繁に立ち止まり、別の担当者は速い速度で移動すると、同じ機器を使っていても取得条件に差が生じます。

SLAM計測では、機器の設定だけでなく、人の運用も計測条件の一部です。人や車が多い現場ほど、現場での行動を簡単なルールとして標準化する効果が大きくなります。

SLAM計測後に確認したい品質チェック

SLAM計測が終わったら、点群全体を眺めるだけでなく、動体の影響を受けやすい場所を重点的に確認します。

最初に見るのは、壁、床、柱などの固定構造物です。面が途中で二重になっていないか、同じ柱が複数位置に現れていないか、床が不自然に段差状になっていないかを確認します。往復した区間がある場合には、同じ固定物が重なるかどうかも重要です。

次に、動体が多かった場所を確認します。人物や車両の点が残っているだけなのか、その周辺の固定物まで欠けているのかを分けて見ます。不要な人物点だけであれば後処理で対応できる可能性がありますが、背後の壁や床そのものが取得できていなければ補足計測を検討する必要があります。

また、通行量が多かった交差部や出入口は、前後の区間とのつながりを確認します。その場所を境に点群全体がずれていないか、構造物が連続しているかを見ることで、局所的なノイズなのか軌跡に関わる問題なのかを判断しやすくなります。

重要寸法を使用する場合には、点群の見た目だけで判断しないことも大切です。既知点や管理点、既知寸法、別の計測方法など、用途に応じた基準と照合します。SLAM計測結果が滑らかに見えていても、必要な精度を満たしているかどうかは別途確認が必要です。

特に出来形確認、変位確認、設計データとの比較など、座標精度が重要な用途では、計測結果をそのまま採用するのではなく、現場の基準座標との整合を確認します。動体ノイズが少ないことと、絶対的な位置精度が高いことも同じではありません。

現場で結果を確認できる環境であれば、計測終了直後に重要箇所だけでも見ることをおすすめします。人や車の流れは時間によって変わるため、再計測が必要だと分かった時点ですぐに条件の良い時間帯を狙える可能性があります。

点群品質の確認では、不要点の数だけを見るのではなく、目的とする構造物が連続して取得できているか、位置関係が崩れていないか、必要範囲に欠測がないかという順番で判断することが重要です。

まとめ|動体を消すより静止環境を安定して捉える

人や車が動く現場でSLAM計測を行うと、人物や車両に由来する不要点、遮蔽による欠測、静止環境の情報不足などが発生しやすくなります。しかし、人や車が存在するだけでSLAM計測が成立しなくなるわけではありません。

重要なのは、動体を完全に排除することよりも、SLAMが利用できる静止環境を継続して取得することです。人や車が少ない時間帯を選び、固定構造物が見えるルートを設定し、移動体へ接近しすぎず、急な動きを避けて計測します。条件の厳しい区間は分割し、重要箇所は複数回取得することで、一時的な遮蔽やノイズの影響を減らせます。

さらに、計測後には人物や車両の点だけを見るのではなく、壁、床、柱などの固定物が正しく重なっているかを確認します。動体由来の不要点と、自己位置推定のずれを分けて考えることで、後処理で対応できる問題なのか、再計測が必要な問題なのかを判断しやすくなります。

現場によって、人の密度、車両速度、固定構造物の量、計測範囲、必要精度は異なります。そのため、一つの設定をすべての現場へ当てはめるのではなく、短い試験計測と結果確認を行い、その場所に合ったルートや歩き方を決めることが実務的です。

SLAM計測を安定させるためには、高性能な機器だけに頼るのではなく、現場条件を観察し、静止物をどう取得するかという計測計画まで含めて考える必要があります。特に人や車が常に動いている現場では、時間帯、ルート、速度、重複計測、品質確認を一連の作業として標準化することで、再計測や後処理の負担を減らしやすくなります。

また、屋外や現場座標との位置関係まで含めて点群を活用したい場合は、SLAMによる相対的な空間把握だけでなく、位置情報をどのように与えるかも重要になります。計測した点群を現場の座標と結び付け、施工管理や現況記録などへつなげたい場合には、LRTK Phoneを組み合わせた位置計測の活用も検討できます。SLAM計測と位置情報をそれぞれの得意分野に応じて使い分けることで、動体の多い現場でも、取得から確認、活用まで一貫した計測フローを構築しやすくなります。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

LRTK Phoneの使い方・実例を見る
資料請求導入相談
現場をスマホで3DスキャンLRTK Phone実例を見る

技術記事一覧へ戻る →