地下街をSLAM計測するとき、精度や点群品質を左右する要因の一つが通行人です。地下街は駅、商業施設、オフィス、駐車場、地下通路などが接続していることが多く、時間帯によって人の流れが大きく変化します。壁や柱、店舗前面などの固定物を利用して自己位置を推定したい場面でも、多数の人が連続してセンサーの前を横切ると、固定環境の観測が減り、人物由来の点が点群に混在することがあります。
特に混雑した地下街では、同じ場所でも朝と昼、平日と休日、店舗営業時間中と営業時間外で計測条件が大きく異なります。そのため、SLAM計測を安定させるには、機器設定や歩き方だけを見るのではなく、「いつ計測するか」を計画段階で決めることが重要です。
ただし、人が少なければ必ず高精度になるわけではありません。地下街では長い直線通路、似た形状の柱列、ガラスや金属面、照明条件の変化、シャッター閉鎖による景観変化など、別の要因もSLAMに影響します。時間帯選定は、こうした条件を踏まえたうえで動体ノイズを減らすための一つの対策として考える必要があります。
この記事では、「SLAM 計測」で情報を探している実務担当者に向けて、地下街で通行人による動体ノイズを抑えるための6つの時間帯選定について、計測計画、現場動線、再計測、記録方法まで含めて解説します。
地下街のSLAM計測で通行人が問題になる理由
SLAMは、センサーで周囲の環境を観測しながら、自己位置の推定と周辺地図の生成を同時に進める技術です。方式によって利用するセンサーや処理方法は異なりますが、多くの場合、連続して観測される周囲の特徴や形状の対応関係を利用しながら位置を推定します。
地下街のような環境では、壁、柱、天井、床、設備、店舗境界など、多数の固定物があります。一方で、その間を大量の通行人が移動します。センサーから見ると、固定した柱と歩行中の人物が同じ観測範囲に入り、人が移動するたびに周囲の見え方が変わります。
通行人が少数であれば、固定物を十分に観測できるため、大きな問題にならない場合もあります。しかし、通路を埋めるほどの人流が発生すると、センサーから壁や店舗面までの視線が遮られ、固定環境を継続的に観測しにくくなります。さらに、人物や荷物などの移動物体が点群として残ると、後処理で確認した際に本来存在しない形状が混ざって見えることがあります。
地下街では同じ方向へ多数の人が歩く場面もあります。通勤時間帯のように一方向へ大きな流れができている場合、計測者も人流に沿って移動しなければならず、任意の位置で立ち止まったり、壁際へ移動したりすることが難しくなります。結果として、計測ルートそのものが人流によって制限されます。
逆に、人が極端に少ない時間帯でも注意が必要です。店舗のシャッターが閉まると、営業時間中とは周囲の形状や見え方が変わります。営業時間中に開放されている入口が閉鎖され、仮設什器や清掃機器が置かれることもあります。そのため、単純に「最も人が少ない時間」を選ぶのではなく、何を計測したいのかを先に決めることが重要です。
店舗前面や営業中の通路形状を記録することが目的なら、営業時間外では必要な状態を取得できない場合があります。一方、地下街の柱、壁、床、天井、設備配置など固定構造を中心に取得するのであれば、営業時間外の静かな環境が有利になる可能性があります。
つまり、地下街での時間帯選定では、「人が少ないこと」と「計測対象が必要な状態になっていること」の両方を確認する必要があります。
時間帯選定1|店舗開店前の比較的静かな時間を狙う
地下街でSLAM計測を行う際に候補になりやすいのが、店舗開店前の時間帯です。商業施設部分が本格的に営業を始める前であれば、買い物客が少なく、通路中央だけでなく壁際や店舗前面付近も計測しやすくなることがあります。
ただし、地下街は店舗だけで構成されているとは限りません。鉄道駅への連絡通路として利用されている場所では、店舗開店前でも通勤客が非常に多い場合があります。そのため、「開店前だから空いている」と決めつけるのではなく、実際の人流を事前確認することが欠かせません。
候補時間を決める際には、現地で同じ曜日の状況を確認しておくと計画を立てやすくなります。例えば、通勤客が集中する通路と、商業区画中心の通路では、人が減る時間が異なります。地下街全体を一つの時間帯で計測しようとせず、区画ごとに適した時間を分ける考え方も有効です。
店舗開店前には別の注意点もあります。搬入作業、清掃、設備点検、店舗スタッフの出入りなどが集中する可能性があります。買い物客が少なくても、台車や清掃機器が頻繁に通ると、点群に動体が入りやすくなります。また、床面清掃中で通路の一部が使用できないこともあります。
そのため、事前に施設管理者へ確認し、一般利用者だけでなく管理作業の時間も把握しておくことが重要です。
計測開始直後から長距離を一気に歩くより、まず短い区間で試験計測を行い、通行人や作業車両の量、固定物の見え方、計測ルートの取りやすさを確認すると安全です。問題が少なければ、その状態を維持しながら計測範囲を広げます。
また、開店前はシャッターが閉まっている店舗が多くなる可能性があります。シャッター面は大きく連続した平面になるため、営業時間中とは異なる環境になります。店舗入口、ショーケース、什器などを含めた現況記録が必要な場合には、開店前のデータだけで目的を満たせるかを事前に確認します。
開店前という名称だけで判断せず、固定構造の計測が目的なのか、営業状態を含めた現況計測が目的なのかを明確にすることが、この時間帯を活用するポイントです。
時間帯選定2|平日の通勤ピーク後から昼前を候補にする
駅と接続する地下街では、朝の通勤時間帯に人流が急増します。そのピークが落ち着いた後から昼前までの時間は、SLAM計測の候補になりやすい時間帯の一つです。
朝のピーク時には、人の流れが連続しているため、壁や柱が通行人に遮られやすくなります。計測者が一定速度で歩くことも難しくなり、追い越し、立ち止まり、急な進路変更などが発生しやすくなります。SLAM計測では、計測機器そのものの性能だけでなく、計測者が安定した動線を確保できるかも重要です。
ピーク終了後であれば、人の流れが途切れる時間が増え、固定物を継続的に観測しやすくなります。特に柱列、壁面、出入口周辺などを複数方向から取得したい場合、通路上で位置を調整できる余裕があることは大きな利点です。
ただし、平日の午前中であっても、すべての地下街が空いているわけではありません。観光地、行政施設、病院、大型商業施設などと接続している地下街では、午前中から一定の人流が続く場合があります。さらに、イベント開催日や周辺施設の催事によって通常とは異なる流れになる可能性もあります。
そのため、時間帯は固定した時刻だけで設定するより、「朝の主要な人流が落ち着いてから昼の流入が増える前」というように、現場の人流変化に合わせて設定するほうが実務的です。
計測計画では、混雑が少なくなる区間から優先して取得する方法もあります。例えば、駅改札に近い区間ではまだ人が多くても、そこから離れた商業通路では人流が減っている可能性があります。その場合は、空いている区画から計測し、駅側はさらに人が減ってから戻るという順序にできます。
このように、SLAM計測の時間帯と経路を一体で計画すると、待ち時間を減らしながら動体ノイズの少ないデータを取得しやすくなります。
時間帯選定3|昼休み直後の人流変化を確認して計測する
オフィス街と接続している地下街では、昼休み前後に飲食店やコンビニエンス型店舗へ向かう人が増えます。そのため、正午付近を単純に計測時間として選ぶと、想定以上に混雑する場合があります。
一方、昼休みの主要な移動が落ち着いた後には、一時的に人流が少なくなる可能性があります。この時間を利用できれば、店舗営業時間中の状態を維持したまま計測できる点が利点です。
営業時間外ではシャッターが閉じてしまう店舗前面や案内表示、通路との接続状態などを記録したい場合には、営業中かつ比較的人が少ない時間を探す必要があります。昼のピーク直後は、その候補の一つです。
ただし、昼休みの時間は周辺施設によって異なります。特定の時刻を全国共通の基準として使うことは適切ではありません。オフィス街、観光地、駅周辺、商業中心地では、人が増減するタイミングが異なります。
さらに、飲食店が集中している地下街では、昼の混雑が長時間続く場合があります。店頭に行列が形成されれば、歩行している人が少なくても通路の固定物が隠れます。SLAM計測では、移動している人物だけでなく、壁際に滞留する人も観測を遮る要因になります。
したがって、昼休み後を利用する場合は、単純な通行人数だけではなく、「壁際まで見通せるか」「柱周辺に人が滞留していないか」「店舗前の行列が解消しているか」を現地で確認することが重要です。
人が一定周期で増減する場所では、一度通過しただけで取得を終えない方法も考えられます。最初の計測時に人で隠れていた場所を記録しておき、人流が減ったタイミングで別方向から再度取得します。複数回観測することで、人物で隠された固定構造を補完しやすくなります。
昼間の計測は営業時間外より人が多くなりやすい反面、実際の利用状態に近い地下街を記録できる利点があります。計測目的によっては、人が完全にいなくなることを目指すより、必要な状態を残しつつ人流が少なくなる時間を探すほうが適しています。
時間帯選定4|夕方の帰宅ピークを避けて遅い時間帯を検討する
駅に接続する地下街では、夕方から夜にかけて帰宅者が増えます。朝と同様、一方向または複数方向から大きな人流が発生するため、SLAM計測には難しい時間帯になりやすいと考えられます。
特に駅改札、地下鉄連絡口、バスターミナル連絡通路、オフィスビル接続部などでは、通行人が連続してセンサーの前を横切ります。壁面や柱列がほとんど見えない状態になることもあり、計測者自身も人の流れに合わせて移動しなければなりません。
このピークを避けて、帰宅者の流れが落ち着いた時間を候補にすると、営業時間中でも比較的計測しやすい可能性があります。
ただし、夕方以降は飲食目的の利用者が増える地下街もあります。帰宅ピークが終わった後でも、飲食店街や駅周辺では別の人流が続くことがあります。朝のように単純にピーク後が空くとは限りません。
そのため、地下街を一括して評価せず、エリアごとの利用特性を確認します。駅連絡部、飲食店街、物販区画、オフィス接続部では、人の減り方が異なります。駅連絡部が空くまで待つ一方、先に人の少ない区画を取得するなど、計測順序を入れ替えることで効率化できます。
遅い時間帯では照明条件にも注意します。地下街は基本的に人工照明環境ですが、営業時間終了に近づくと店舗照明が消灯したり、照明運用が変化したりする可能性があります。カメラ情報を利用するSLAM方式では、照明条件の大きな変化が観測条件に影響する場合があります。
また、閉店準備が始まると、看板、什器、清掃用具、台車などが通路側へ移動する可能性があります。人が減っていても、計測対象の状態が通常営業時と変わっていることがあります。
したがって、遅い時間帯を選ぶ場合も「人が少ないから適切」と考えるのではなく、照明、店舗状態、管理作業、通路利用の状況まで含めて判断する必要があります。
時間帯選定5|閉店後や施設管理時間帯を活用する
固定構造を中心に詳細なSLAM計測を行いたい場合、閉店後や施設管理時間帯は有力な候補になります。一般利用者が大幅に減る環境を確保できれば、壁、柱、床、天井、設備周辺を人に遮られず観測しやすくなります。
通路中央だけでなく、壁際や柱の周囲を複数方向から取得できるため、点群の欠測を補いやすくなります。また、混雑時には難しい折返しや周回ルートを設定しやすくなることも利点です。
長い地下通路では、一方向へ進むだけの計測より、特徴の多い場所を経由しながら往復し、既に観測した範囲へ戻るルートを組むほうが、計測結果を確認しやすい場合があります。閉店後であれば、人流を妨げない範囲でこうした経路を取りやすくなります。
一方、閉店後には営業時間中とは異なる環境条件が現れます。店舗シャッターが閉まると、通路側から見える形状が大きく変わります。営業中に開放されていた出入口も固定面に変わるため、取得した点群がどの状態を表すものなのか明確にしておく必要があります。
また、一般利用者がいなくても、清掃員、警備員、設備管理者、搬入作業者などが活動している可能性があります。清掃機器や台車が計測範囲を移動すれば、それらも動体ノイズの原因になります。
施設管理時間帯を利用する場合には、計測作業と他の管理作業が重ならないよう調整することが重要です。計測者が清掃ルートや搬入動線へ入り込むと、安全面でも作業効率面でも問題が生じます。
さらに、営業時間外の地下街では入退場可能な経路が限定される場合があります。防火戸、シャッター、管理扉などにより、通常は連続している通路が分断されることも考えられます。計測ルートを事前に確認せず現場へ入ると、予定していた周回ができない可能性があります。
そのため、閉店後計測では、作業可能範囲、出入口、管理扉の開閉、避難経路、他作業の実施場所などを施設側と事前に確認し、許可された範囲で計測します。
時間帯選定6|部分規制や点検作業と合わせた計測時間を設定する
地下街で通行人をできるだけ避けたい場合、単に一日の中で人が少ない時間を探すだけでなく、施設側が実施する点検、工事、清掃、保守などの時間帯に合わせて計測する方法もあります。
例えば、特定区画が一時的に一般利用者の通行対象外になる機会があれば、その範囲では人物による遮蔽を大きく減らせる可能性があります。設備改修前後の現況計測や、改修対象区画の三次元記録を目的とする場合には特に有効です。
ただし、規制されているから自由に計測できるわけではありません。工事や点検作業中には、作業員、資機材、仮設設備などが通常とは異なる位置に存在します。一般利用者がいなくても、移動する作業員や台車が点群へ入り込むことがあります。
さらに、仮囲い、養生、仮設照明などが設置されていると、通常状態の地下街とは異なる形状になります。何を取得したいかによっては、工事中のデータだけでは不足します。
重要なのは、計測目的と施設作業の工程を合わせることです。例えば、改修前の躯体形状を取得したいのであれば、仮設物が設置される前に計測する必要があります。完成状態を取得したいのであれば、工事資材が撤去された後が適しています。
設備の位置だけを確認したい場合と、一般利用状態の現況を残したい場合でも適切なタイミングは異なります。
また、部分規制された範囲を計測する場合でも、隣接区画には一般利用者がいる可能性があります。規制区画から通常通路へ戻る境界付近では人流が増えるため、その部分だけ別時間に取得する方法も検討できます。
時間帯を施設全体で統一するのではなく、「区画Aは開店前」「区画Bは昼の谷間」「区画Cは管理時間帯」というように分けて計画すると、地下街の利用実態に合わせたSLAM計測がしやすくなります。
時間帯だけでなく計測ルートも合わせて設計する
通行人による動体ノイズを減らすには、時間帯選定だけでは十分でない場合があります。同じ人数の通行人がいても、歩くルートによって固定物の見え方は大きく変わるためです。
例えば、広い地下通路の中央を歩くと、左右の壁面まで一定距離があり、通行人がその間に入りやすくなります。一方、壁側へ寄れば近距離の壁や柱を安定して観測しやすくなる場合があります。ただし、店舗入口や人の滞留位置を妨げないようにする必要があります。
また、一度で通路全幅を取得しようとせず、往路と復路で観測方向を変える方法も考えられます。往路では片側の壁面を意識し、復路では反対側を補うことで、通行人に遮られた部分を別のタイミングで取得できます。
交差部では進行方向を変える人が多くなり、急にセンサー前へ入る可能性があります。そのため、交差点状の場所へ高速で進入せず、周囲の固定物を観測できる状態を保ちながら通過します。
階段、エスカレーター周辺、改札接続部、店舗入口付近も人流が集中しやすい場所です。こうした場所を一筆書きで通過するより、人が減るまで別区画を計測し、後で戻るほうが良い場合があります。
地下街は長い直線が続くこともあります。同じ形の柱、同じ幅の通路、類似した店舗前面が連続すると、周囲形状の変化が少なくなる場合があります。可能であれば、特徴的な交差部、階段周辺、壁面の変化点などを含む経路を組み、同じ場所へ戻って整合性を確認できるルートを考えます。
SLAM計測は「最短距離で全区間を歩けばよい」というものではありません。人流、固定物の見え方、重複観測、折返し位置などを合わせて設計することが重要です。
通行人が残る環境で動体ノイズを抑える計測方法
地下街では、どれだけ時間帯を選んでも完全に無人にできないことがあります。公共通路として常時利用されている場所では、一般利用者を止めずに計測しなければならない場合もあります。
その場合は、人がいることを前提に計測方法を調整します。
まず重要なのは、通行人そのものを追うような動きを避けることです。計測者が人物を避けるために急旋回したり、急に向きを変えたりすると、センサー姿勢も大きく変化します。進行方向を頻繁に変えず、周囲を確認しながら可能な範囲で滑らかな移動を保ちます。
次に、人に隠された場所を一度で取得しようとしないことです。柱の前に人が立っているなら、その場で無理に接近するより、別方向から取得するか、後で戻るほうが安全です。
通行人が途切れた短い時間を利用することも有効です。地下街では常に同じ密度で人が流れているとは限らず、列車到着や信号、周辺施設の出入りなどにより、数十秒から数分単位で流れが変化する場合があります。人が多い状態で強引に進むより、固定物が見えるタイミングを待つほうが良い場面もあります。
また、人が密集している区間と空いている区間を同じ速度で通過する必要はありません。混雑区間は安全を優先し、必要であれば計測を区切ります。後から再計測できるよう、どこまで取得したのかを記録しておくと管理しやすくなります。
計測後には点群を確認し、人物の形状が大量に残っていないか、壁面や床面が人で隠れて欠けていないか、通路形状に不自然な重なりがないかを確認します。
後処理でノイズ除去できる場合でも、必要な固定物まで消してしまわないよう注意が必要です。人物と壁面が近接している場所では、強いフィルタ処理によって壁際の必要点まで除去される可能性があります。可能であれば現場段階で動体の影響を減らし、後処理への依存を小さくするほうがデータを確認しやすくなります。
地下街特有の条件を踏まえてSLAM計測結果を確認する
地下街のSLAM計測では、通行人以外にも結果へ影響する要因があります。時間帯を選んで人物ノイズを減らしても、それだけで計測品質を判断してはいけません。
代表的なのが、類似形状の繰り返しです。長い地下通路では同じ形状の柱や壁が連続し、複数区画の外観が似ていることがあります。このような環境では、計測後に通路全体の形状や交差部の位置関係を確認し、明らかなずれや重複がないかを確認することが重要です。
ガラス面や鏡面に近い素材、金属設備なども場所によっては観測へ影響します。センサー方式によって影響の現れ方は異なるため、特定素材に対して常に同じ結果になると考えず、実際のデータを確認します。
照明条件も同様です。地下街は外光の影響が小さい場所が多い一方、地上出入口や吹き抜け付近では明暗差が大きくなることがあります。また、営業時間外に店舗照明が消えると、昼間とは異なる視覚環境になります。
床面についても注意が必要です。光沢のある床材、濡れた床、反射の強い部分などでは、利用するセンサーによってデータの取得状態が変わる可能性があります。
こうした場所では、計測中に異常へ気付けるよう、短い区間ごとにデータ確認の機会を設けると有効です。地下街全域を長時間計測した後で問題を発見すると、再計測範囲が大きくなります。
始点付近、交差部、折返し点、特徴的な柱、出入口など、位置関係を確認しやすい場所を節目として設定し、区画ごとに計測結果を確認します。
さらに、複数日に分けて計測する場合は、毎回異なる状態で取得される可能性があります。店舗什器、人流、工事区画、仮設看板などが変化するため、何月何日のどの時間帯に取得したデータなのかを管理することが重要です。
再計測しやすい記録を残して品質を安定させる
地下街のSLAM計測では、計測そのものだけでなく記録管理が重要です。動体ノイズが多かった場合、後日同じ場所を再計測する必要が生じる可能性があるからです。
「地下街を計測した」という記録だけでは、どの区間をどの時間帯に取得したのか分かりません。再計測時には、開始位置、終了位置、計測日時、経路、通行人の多さ、周辺状況などが分かるようにしておくと便利です。
特に同じような通路が続く地下街では、写真だけで場所を特定しにくい場合があります。柱番号、店舗区画、出入口番号、通路名称、階段番号など、施設側で管理されている識別情報が利用できる場合は、計測記録と対応させます。
また、「人が多かった」という主観的な記録だけでなく、どのような状態だったかを残すと再計画に役立ちます。例えば、駅方向への人流が連続していた、店舗前に行列があった、清掃機器が往復していた、搬入台車が多かった、といった状況です。
同じ場所を別時間帯に再計測した場合には、どちらのデータを採用するか判断できるようにします。単純に後から取得したデータを採用するのではなく、欠測、動体ノイズ、点群の整合性、必要対象の取得状態を比較することが重要です。
計測の始点と終点も記録しておくと、ルート管理が容易になります。長距離の地下街を複数区間へ分ける場合、区間同士に適度な重複を持たせておけば、後で位置関係を確認しやすくなります。
人流の少ない時間帯は限られている場合があります。そのため、本番当日に初めてルートを考えるのではなく、事前調査で開始地点、折返し地点、再確認地点を決めておくことが重要です。
LRTK Phoneを活用して計測位置と現場記録を結び付ける
地下街でのSLAM計測は、点群を取得するだけで完結するとは限りません。計測区間、時刻、現場写真、再計測箇所などを後から照合できる状態にしておくことで、データの管理がしやすくなります。
特に地下街では、似た景観が長く続くため、「この点群はどこの通路だったか」「この欠測はどの地点だったか」を後から判断しにくくなることがあります。そこで、計測時に場所を識別できる情報を合わせて記録しておくことが重要です。
地上やGNSS測位が利用できる範囲では、LRTK Phoneを使って計測開始前後の位置情報や現場記録を取得し、計測データとの対応関係を整理する方法が考えられます。一方、地下街内部では衛星信号を直接受信しにくい、または受信できない場所が多いため、地下街全域でGNSSによる位置をそのまま取得できるとは限りません。
そのため、地下内部では施設図面上の区画、出入口番号、柱番号、階段番号、既知点などと組み合わせて管理し、地上へ接続する位置で座標情報との関係を確認する考え方が重要です。
例えば、地上側の入口付近で位置を記録し、そこから地下街内部の計測開始点までの接続関係を整理しておけば、SLAM点群がどのエリアを示しているかを管理しやすくなります。さらに、再計測が必要な場所について現場写真、時刻、区画情報を記録しておけば、別日に同じ場所へ戻る際の手掛かりになります。
点群を取得する機器と、現場の位置情報や写真を記録する仕組みを分けて考えるのではなく、一連の現場記録として整理することが重要です。
特に長大な地下街を複数日に分けて計測する場合、データ名だけで管理すると区間の取り違えが起こりやすくなります。計測日、開始位置、終了位置、方向、時間帯、現場状況を一緒に管理すれば、後工程でデータを確認する担当者も状況を把握しやすくなります。
LRTK Phoneを現場記録の入口として活用し、地上の座標情報と地下街内部の区画管理を結び付けることで、SLAM計測データを現場全体の記録として扱いやすくなります。
まとめ
地下街のSLAM計測で通行人による動体ノイズを減らすには、機器設定や後処理だけでなく、計測する時間帯を適切に選ぶことが重要です。
候補となるのは、店舗開店前、平日の通勤ピーク後から昼前、昼休み後の人流が落ち着く時間、夕方の帰宅ピーク後、閉店後の施設管理時間帯、部分規制や点検と重なる時間帯などです。ただし、具体的に人が少なくなる時刻は地下街の立地や用途によって異なるため、一律の時間を基準にするのではなく現地の利用状況を確認して決める必要があります。
また、人が少ない時間が常に最適とは限りません。閉店後にはシャッターが閉まり、営業時間中とは地下街の状態が変わります。清掃や搬入が始まれば、一般利用者が少なくても別の動体が増える可能性があります。SLAM計測の目的を明確にし、必要な対象が取得できる状態と人流の少なさを両立させることが大切です。
時間帯と同時に計測ルートも検討します。人に遮られた場所は無理に一度で取得せず、往復や周回によって別方向から補完します。駅接続部や交差部など混雑しやすい場所は後回しにし、人が少ない区画から計測する方法も有効です。
さらに、計測後は人物由来の点が大量に残っていないか、壁や柱が欠測していないか、通路形状に不自然なずれがないかを確認します。動体ノイズだけに注目せず、繰り返し形状、照明、反射面、長い直線区間など地下街特有の条件も合わせて確認することが、安定したSLAM計測につながります。
そして、再計測を前提に、計測日時、区間、開始位置、終了位置、人流状況、現場写真などを残しておくことも重要です。地下街内部ではGNSS測位が利用しにくい場所が多いため、施設内の区画情報や柱番号などを使いながら位置関係を整理し、地上へ出られる地点では座標情報との関係を確認しておくと管理しやすくなります。
地下街のSLAM計測を単なる点群取得で終わらせず、位置、時刻、写真、計測区間まで一体で記録したい場合は、LRTK Phoneを現場記録の起点として活用することで、計測データを後から確認しやすい形へ整理できます。