LRTKレフィクシア株式会社

船内通路のSLAM計測で金属反射と揺れの誤差を減らす7つの方法

船内通路でSLAM計測が難しくなる理由

SLAM計測は、センサーで周囲の形状や画像特徴を取得しながら、自分自身の位置と姿勢を推定し、移動経路に沿って三次元情報を構築する技術です。固定式の計測とは異なり、計測者が移動しながら広い範囲を連続的に取得できるため、建物内部、地下空間、設備室、プラント、トンネルなど、複雑な空間を効率よく記録したい場面で利用されています。

一方、船内通路にはSLAM計測を不安定にし得る条件が複数あります。代表的なのが、光沢の強い金属面、似た形状が長く続く通路、可動する扉や人、狭い場所での急な姿勢変化、そして船体の揺れや振動です。

船舶内部には、鋼板、金属製扉、配管、ダクト、手すり、機器カバーなどが多く存在します。表面が滑らかな金属や光沢の強い塗装面では、使用する距離センサーの方式や入射角によって反射状態が変わり、欠測や外れ点、実在しない位置の点が生じる場合があります。

ただし、金属だから必ず計測できないわけではありません。取得状態は、表面の粗さや塗装、センサーとの距離、入射角、周囲の形状、使用するセンサー方式などによって変化します。特に注意したいのは、鏡面性が高い面が広く続き、周囲に位置推定の手掛かりとなる立体形状が少ない環境です。

船体の揺れについては、影響を一律に断定できません。船体と計測対象が一体となって動く場合、船内の相対形状だけを見れば、その剛体運動がそのまま形状誤差になるとは限りません。一方で、IMUを含むセンサー融合方式では慣性系に対する運動も観測するため、船体運動や振動の大きさ、周期、アルゴリズムの前提によっては推定へ影響する可能性があります。画像を利用する方式では、急な動きによるブレや特徴追跡の不安定化も考慮が必要です。

さらに、船内通路には似た景観が連続しやすいという特徴があります。同じ幅の通路、同じ形状の扉、等間隔の照明、繰り返し配置された配管などが長く続くと、LiDARや画像から得られる幾何学的・視覚的な手掛かりが不足し、進行方向など一部の方向で位置推定が不安定になる場合があります。

したがって、船内でSLAM計測を行うときは、金属反射、船体状態、歩行方法、経路設計、閉合確認、既知位置や既知寸法との照合を一つの作業として考えることが重要です。

ここからは、船内通路のSLAM計測で金属反射や揺れの影響を抑え、計測結果を確認しやすくするための7つの方法を順番に解説します。

方法1 鏡面性の高い金属面を主な基準にしない

船内通路をSLAM計測するとき、最初に注意したいのが光沢の強い金属面です。

レーザーなどの能動センサーを利用する場合、照射した光が対象物からどのように戻るかによって距離情報の取得状態が変わります。表面が粗い物体では反射光が比較的広い方向へ散乱する一方、鏡面に近い表面では特定方向へ強く反射し、センサーへ十分な信号が戻らないことがあります。

また、複数の面を経由した反射などによって、実際の表面とは異なる位置に外れ点が現れる場合があります。船内にある磨かれた金属板、光沢の強い機器カバー、ステンレス製の部材などでは、このような現象に注意が必要です。

重要なのは、金属面をすべて避けることではありません。船内では金属を避けて計測すること自体が現実的ではないため、鏡面性の高い面だけに位置推定を依存しない計測経路を考えることが重要です。

例えば、通路の片側に滑らかな鋼板が長く続いていても、反対側に扉枠、配管、バルブ、梁、段差、標識、機器などの立体的な特徴が存在する場合があります。計測時には、こうした奥行きや形状変化のある対象がセンサーの視野に継続して入るように移動すると、位置推定に使える情報を増やしやすくなります。

センサーを金属壁に極端に近づけることも避けたいところです。至近距離で一つの平面が視野の大部分を占めると、周囲形状の情報が減り、位置や姿勢を推定するための幾何学的な手掛かりが少なくなる可能性があります。

安全を確保できる場合は、左右の壁、床、天井、扉枠、配管など複数方向の形状を同時に取得できる位置を意識します。ただし、船内では通行区分、設備との離隔、転倒防止などが計測効率より優先されます。

取得後の点群では、金属面周辺に浮遊点や二重面が発生していないか確認します。壁面から離れた位置に薄い点群が伸びている場合や、実際には存在しない面が現れている場合には、反射条件の影響を候補の一つとして確認します。

ただし、外れ点の原因を見た目だけで金属反射と断定するのは避けます。位置推定のずれ、動体、複数スキャンの位置合わせなどでも似た見え方になることがあるため、周囲の面との連続性や別方向から取得した点群と比較して判断することが大切です。

方法2 揺れが小さい時間帯と船体状態を選ぶ

船内SLAM計測では、計測装置の性能だけでなく、計測時の船体状態を記録しておくことが重要です。

船舶は係留中でも、波、風、航走波、荷役、機関やポンプなどの稼働によって揺れたり振動したりすることがあります。航行中はローリング、ピッチング、上下動などが加わり、計測者自身の歩行も重なるため、センサーが受ける運動はより複雑になります。

ただし、船体が動いた量と点群誤差を単純に一対一で結び付けることはできません。LiDAR主体、画像主体、LiDARとIMUの融合、画像とIMUの融合など、SLAMの構成によって影響の出方が異なるためです。

実務上は、条件をできるだけそろえることで、異常が発生したときに原因を切り分けやすくなります。可能であれば、係留条件が安定し、荷役や重量物移動が少なく、主要機器の運転状態が大きく変化しない時間帯を選びます。航行中より停泊中のほうが安定した条件を確保しやすい場合がありますが、停泊しているだけで精度が保証されるわけではありません。

計測前には、実際の揺れや振動を確認し、使用するシステムに追跡状態や品質表示がある場合は、その表示も確認します。装置ごとに許容できる運動条件は異なるため、一般論だけで「この程度の揺れなら問題ない」と数値を決めるのは避けます。

計測途中で明らかに大きな船体運動や振動が発生した場合は、安全確保を優先します。その後の扱いは、使用するSLAMシステムの手順に従って、継続、区間分割、再計測、再初期化などを判断します。大きく揺れたあとに立ち止まれば自動的に誤差が解消されるとは限りません。

また、IMUを搭載した装置であっても、揺れや急な運動が自動的に吸収されると決めつけないことが重要です。慣性情報は姿勢や運動推定に利用されますが、最終的な性能はセンサー構成、処理方式、環境条件に左右されます。

計測記録には、時刻だけでなく、停泊中か航行中か、主要機器が稼働していたか、荷役があったか、大きな揺れや振動が発生したかといった情報を残しておくと、後処理で異常区間を確認するときに役立ちます。

方法3 歩行速度とセンサー姿勢をできるだけ一定にする

船内通路では、設備、段差、扉、人の通行などを避けるために歩行が不規則になりやすくなります。しかし、SLAM計測では計測者の移動をできるだけ滑らかにすることが基本です。

歩行速度を頻繁に変えたり、装置を急に振ったり、身体ごと素早く振り返ったりすると、連続する観測間で見える形状や画像が大きく変化します。

SLAMは連続する観測から移動量や姿勢変化を推定するため、観測間の重なりが不足したり、対応付けが難しくなったりすると、追跡が不安定になる場合があります。

狭い船内通路では、周囲の安全を確保しながら、無理のない一定速度で進むことを意識します。

特に曲がり角では注意が必要です。直線通路から曲がり角へ入る際に身体を急旋回させると、センサー視野が一気に入れ替わります。可能な範囲で大きな弧を描くように向きを変え、曲がる前後の壁面や床面を連続的に取得できるようにします。

扉を通過するときも同様です。狭い開口を通る直前に装置を大きく傾けたり、通過直後に急に向きを変えたりすると、その瞬間だけ観測条件が大きく変化します。

可能であれば扉の状態を事前に確認し、計測中に不用意に動かないよう調整します。ただし、防火扉や水密扉など安全上の管理が必要な設備については、船舶側の運用ルールを最優先します。

また、計測装置の持ち方も途中で大きく変えないことが望まれます。胸の前で保持していた装置を突然頭上へ持ち上げるなど、センサー位置と姿勢が急変する動作は避けます。低い配管を避けるために姿勢を変える必要がある場合でも、できるだけ緩やかに動作します。

床面に段差が多い船内では、上下方向の動きにも注意します。段差を急いで越えるとセンサーが大きく上下するため、歩行安全を優先しつつ、できるだけ安定した動作を心掛けます。階段では手すりの使用など安全上必要な動作を優先し、そのうえで装置を急に振らないようにします。

SLAM計測で重要なのは、ゆっくり歩けば必ず高精度になるという単純な考え方ではありません。極端に遅い移動や長時間の静止が適しているかどうかは装置や処理方式によって異なります。重要なのは、使用するシステムの推奨条件の範囲で、観測の連続性を保ちやすい滑らかな動きを維持することです。

方法4 特徴の少ない長い通路には識別しやすい区間をつくる

船内通路では、同じ形状が長く繰り返されることがあります。

壁、床、天井がほぼ平行で、同じ形状の扉が等間隔に並び、配管も直線的に続いている場合、人間が見ても現在地を見失いやすくなります。SLAMでも、幾何形状や画像特徴が不足すると位置推定が不安定になる可能性があります。

特に長い直線通路やトンネルのような環境では、一部の方向に対する幾何学的な拘束が弱くなり、ドリフトが生じやすいことが知られています。

対策として有効なのは、既存の特徴的な場所を計測経路に意図的に含めることです。

例えば、階段室、通路の交差部、設備室入口、大きなバルブ、配管の集中部、梁、ハッチ、床の段差などは、単純な平面が続く場所よりも位置を識別するための手掛かりになりやすい場合があります。

直線通路だけを端から端まで一直線に計測するのではなく、安全上問題がなければ、途中でこうした特徴的な区間を観測し、その後通路へ戻る経路を設定する方法があります。

現場条件によっては、一時的な識別物を配置する方法も考えられます。ただし、SLAM方式によって何を特徴として利用するかは異なるため、単純な色付きマーカーを置けば必ず効果があるとは限りません。

レーザー形状を主に利用する方式では、平面的な印刷物よりも、奥行きを持つ形状のほうが幾何学的な拘束として利用されやすい場合があります。一方、画像情報を併用する方式では、模様や明暗差などの視覚特徴が役立つことがあります。

そのため、識別物を設置する場合には、使用するSLAM方式がどの情報を利用しているかを確認します。

さらに、仮設物を配置する際には通行や安全設備を妨げてはいけません。船内通路は避難経路として利用されることもあるため、通路幅や扉の開閉を阻害する配置は避けます。

既設設備だけで十分な特徴が確保できる場合には、無理に何かを追加する必要はありません。重要なのは、計測経路を事前に確認し、似た景色が長く続く区間を把握しておくことです。

その区間では、特徴的な場所を経由する、往復で観測を重ねる、装置の推奨範囲で速度を安定させるといった対応を決めておけば、本番計測で条件をそろえやすくなります。

方法5 往路と復路を重ねてループ閉合を確認する

船内SLAM計測で重要な考え方の一つが、既に通った場所を再観測してループ閉合を成立させることです。

SLAMでは移動しながら位置と姿勢を推定していくため、オドメトリの誤差が経路に沿って蓄積することがあります。長距離を一方向だけ計測すると、終点側で生じたずれに気付きにくくなる場合があります。

そこで利用されるのがループ閉合です。

例えば、船内通路の入口から奥へ進み、別経路または同じ通路を通って開始地点付近まで戻ります。開始時に観測した場所を終了時にも再び観測できれば、システムが同一場所を正しく認識した場合、蓄積した軌跡誤差を最適化によって減らせることがあります。

ただし、単に開始地点へ戻れば必ず閉合するわけではありません。

終了時のセンサー方向や視点が開始時と大きく異なり、共通して見える範囲がほとんどない場合には、同一場所として認識しにくいことがあります。また、似た形状が繰り返される環境では、別の場所を同じ場所と誤認する誤閉合にも注意が必要です。

そのため、開始地点周辺では少し広めに空間を取得し、床、壁、天井、扉、設備など複数の特徴を記録しておくことが有効です。終了時にも同じ範囲を再観測し、閉合後の結果が不自然に変形していないか確認します。

長い通路では、最終地点だけでなく途中にも小さなループを設ける方法があります。

例えば、通路途中の横通路や設備室入口を利用して一周し、元の通路へ戻ります。このような中間閉合を設定すると、長い一筆書きの経路だけに依存しない構成にできます。

往路と復路を完全に同じ位置で歩く必要はありません。安全に余裕がある場合には、少し異なる位置や角度から同じ構造物を観測することで、点群の再現性や反射由来の外れ点を比較しやすくなる場合があります。

計測後には、開始地点と終了地点の点群や軌跡がどの程度整合しているか確認します。壁の角や扉枠が二重に見えている場合、床面に段差のようなずれが発生している場合、同一配管が二本に分かれて見える場合などは、閉合状態や位置推定を確認するきっかけになります。

ループ閉合は誤差を自動的にゼロにする仕組みではありません。閉合検出が成立しない場合や、誤った場所で閉合してしまう場合もあるため、処理後の点群や軌跡を確認する工程が重要です。

方法6 階段・扉・曲がり角で急な姿勢変化を避ける

船内通路でSLAM計測が不安定になりやすい場所は、直線区間だけではありません。階段、狭い扉、急な曲がり角、ハッチ周辺、低い天井部では、センサー視野や姿勢が短時間で大きく変わりやすくなります。

直線通路を歩いている間は、壁や床などの特徴が少しずつ移動して見えます。しかし、90度の曲がり角で急に身体を回転すると、それまで見えていた壁が短時間で視野から外れ、新しい壁面が現れます。

この切り替わりが急すぎて前後の観測の重なりが少なくなると、対応付けが難しくなる場合があります。

対策として、曲がり角へ近づく前から徐々に向きを変え、角部そのものを観測しながら回転します。直線通路側と次の通路側をつなぐ共通形状が残るように動くことが狙いです。

狭い扉でも同じ考え方が使えます。

扉の直前まで正面だけを向いて進み、通過した直後に急旋回するのではなく、扉枠、周辺壁、床面などを連続的に観測しながら通過します。

船内には段差の大きい階段が設置されていることもあります。階段を上るときは、水平方向の移動に加えて高さ方向の変化が連続するため、装置の姿勢変化も増えます。

手すりを使用しなければ安全を確保できない場所では、計測精度よりも転倒防止を優先します。安全な保持方法を事前に決め、一人で安全な計測が難しい場合には、船側の安全ルールに従って補助体制を整えます。

船体が大きく揺れている状態で階段を移動する必要がないのであれば、安全面からも安定した状態を待つ判断が考えられます。ただし、計測を中断した場合にデータをどのように再開・接続するかは、使用するシステムの仕様に従います。

扉やハッチのように計測中に動く物体にも注意が必要です。

往路では開いていた扉が復路では閉じていると、同じ場所でも観測形状が大きく変わります。ループ閉合に利用する地点では、可能であれば周囲の状態を大きく変えないことが望まれます。

作業員が途中で扉を開閉する可能性がある場合には、開始前に計測範囲と安全上の運用を共有しておくと作業しやすくなります。

方法7 基準点や既知寸法で点群の整合性を確認する

SLAM計測で見た目のきれいな点群が完成しても、それだけで寸法や位置が正しいとは限りません。

船内通路では、長距離ドリフト、反射による外れ点、閉合不足、特徴の少ない区間での推定不安定などが複合して発生する可能性があります。

そこで、可能な範囲で既知の基準を利用して確認します。

既設の測量基準点や船体内の管理基準点が利用できる場合には、それらを計測結果と関連付けることで位置や姿勢の確認に使えます。

ただし、船舶そのものが移動するため、地球上の絶対座標と船体内部の相対座標は分けて考える必要があります。停泊中に外部座標へ関連付ける場合でも、船体姿勢が時間によって変化すれば、船内各点の絶対位置も変化します。

船内設備の寸法確認が目的であれば、船体に固定した座標系の中で整合性を確認するほうが適切な場合があります。

例えば、測量で確認済みの基準点間距離、管理図面と照合できる部材間隔、現場で独立して測った通路幅や扉幅などを利用し、点群上の値と比較します。

ここで重要なのは、一つの既知寸法が一致しただけで全体を正しいと判断しないことです。単一の距離確認では、絶対位置、回転、局所的な変形、長距離ドリフトなどを十分に検証できません。

そのため、開始地点、中間地点、終点付近など複数箇所で確認し、可能であれば方向や高さが異なる基準を組み合わせます。

水平距離だけでなく、高さ方向も確認します。船内にはデッキ間を結ぶ階段や段差が多く、上下方向の不整合がある場合には、異なる階層を接続したときに問題が見つかることがあります。

同じ場所を複数回計測し、点群同士を比較する方法も有効です。

例えば、同じ通路を別の時間帯に計測し、壁面や扉枠など船体に固定された構造物がどの程度一致するか確認します。ただし船体全体の姿勢が変わっている場合には、単純な地球固定座標で比較するのではなく、目的に合った船体座標系や共通基準に位置合わせして比較する必要があります。

点群を設備更新、改修計画、干渉確認、寸法確認などに利用する場合には、必要とする精度に対して計測方法と検証方法が十分かを確認することが大切です。

SLAM計測は広い空間を効率よく三次元化できる一方、用途によってはトータルステーション、GNSS、固定式スキャナーなど、別の測量方法や高精度計測との組み合わせが適する場合もあります。

求められる精度、対象物、計測距離、現場条件を整理したうえで利用方法を決める必要があります。

金属反射と船体揺れを分けて考えることが重要

船内SLAM計測で点群が乱れたとき、船が揺れたから誤差が出た、金属だから計測できなかったと一つの原因だけで説明してしまうのは避けたいところです。

実際には、複数の要因が同時に発生している可能性があります。

反射条件による問題は、特定の表面周辺に局所的な外れ点や欠測として現れることがあります。一方、位置推定のドリフトや閉合不良は、通路全体の壁や床が少しずつずれていく形で現れることがあります。

船体揺れについても、船体とセンサーの相対関係、IMUを含むかどうか、画像を利用するかどうか、揺れの大きさや周期などによって影響が異なります。したがって、揺れがあったという事実だけで点群不良の原因を確定しないことが重要です。

例えば、鏡面状の壁面付近だけに外れ点が多く、ほかの構造物は整合している場合には、反射条件を原因候補として確認できます。

逆に、扉枠、床、天井、配管など周辺全体が同じ方向へずれている場合には、位置推定、閉合、複数区間の位置合わせなどを確認したほうがよいでしょう。

また、特定地点を境に点群の向きが急に変わっている場合には、その場所で急旋回、段差通過、センサーの持ち替え、追跡喪失、大きな振動などが発生していなかったか確認します。

こうした原因分析をしやすくするためにも、計測中の記録は重要です。

どこで大きく揺れたか、どこで人を避けたか、どこで扉の開閉があったか、どこで装置の持ち方を変えたか、システムに警告表示が出たかなどを記録しておけば、後処理時に異常箇所と照合できます。

SLAM計測では、取得時に失われた情報や誤った対応付けを後処理だけで完全に修正できるとは限りません。問題箇所を早く特定できれば、その区間だけ再計測する判断もしやすくなります。

船内では再入場に手続きが必要な場合もあるため、運用上可能であれば現場を離れる前に取得結果を確認し、再計測が必要な区間がないか判断できる体制にしておくと効率的です。

船内SLAM計測を効率化するための事前計画

船内通路の計測品質は、現場に入ってからの操作だけでは決まりません。計測前のルート設計によって、閉合の作りやすさや異常区間の把握しやすさが変わります。

まず、図面や現地確認によって対象範囲を把握します。

入口、出口、長い直線通路、階段、扉、行き止まり、分岐、設備室などを確認し、どこで折り返すか、どこでループをつくるかを決めます。

長い一本の経路として計測するより、複数の短い閉合区間に分けたほうが管理しやすい場合があります。

例えば、デッキごとに閉合させ、最後に階段区間で接続するといった方法です。複数階層を一度に長時間歩くよりも、区間ごとに取得品質を確認しやすくなります。

次に、人や設備の移動を確認します。

船内通路は作業員が頻繁に通るため、人が多く移動している時間帯では動体の点や遮蔽が増えることがあります。また、計測者が人を避けるために急な方向転換を繰り返すと、観測の連続性を保ちにくくなります。

可能であれば、作業工程と調整し、通行量が比較的少ない時間帯に計測します。

ただし、避難経路や日常業務を計測のために塞ぐことはできません。現場の安全管理者や船側担当者と調整し、計測作業が通常運用を妨げないようにします。

照明条件も確認しておきたいポイントです。

画像情報を利用するSLAMでは、極端に暗い場所、強い逆光、急激な明暗変化などが特徴追跡へ影響する場合があります。LiDARを主体とする方式でも、安全に歩行するために必要な照明は確保しなければなりません。

照明を追加する場合には、船内設備や防爆要件など現場固有の安全条件を確認します。

また、長時間計測では電源管理や保存容量も重要です。途中で電源が切れたり保存領域が不足したりすると、データの欠落や再計測につながる場合があります。

開始前に十分な電源残量と保存容量を確認し、長い範囲であれば計測区間ごとにデータを分ける方法も検討します。ただし、区間分割後の接続方法は使用するシステムの仕様に合わせます。

さらに、開始地点を適当に決めないことも重要です。

狭く単調な金属通路から開始するより、比較的広く、扉、梁、配管、床面、天井など複数方向の特徴が見える場所を開始候補にすると、初期の追跡状態を確認しやすい場合があります。

終了時にも同じ場所へ戻れる経路にすれば、閉合確認にも利用できます。

船内SLAM計測では、計測時間を短くすることだけを目標にすると、再計測や後処理に時間がかかることがあります。

計測前に経路を確認し、閉合地点、特徴の少ない区間、可動物が多い区間、安全上の注意区間を決めておくことが、結果として作業全体の効率化につながります。

まとめ 船内通路では計測条件と閉合確認をセットで考える

船内通路は、金属面が多く、似た形状が連続し、扉や人などの動体も入りやすいうえ、船体が揺れたり振動したりするという特徴があります。

そのため、一般的な建築物内部と同じ感覚で一方向へ歩くだけでは、反射由来の外れ点、位置推定のドリフト、閉合不良、観測の途切れなどが発生する可能性があります。

金属反射の影響を減らすには、鏡面性の高い面だけを位置推定の手掛かりにせず、扉枠、配管、床、天井、梁など複数の立体形状が見える経路を選ぶことが重要です。

船体揺れについては、揺れがあるだけで点群誤差が生じると決めつけず、使用するSLAM方式との関係を確認します。そのうえで、波、風、機械運転、荷役などを含めた船体状態を記録し、可能であれば条件の安定した時間帯を選ぶと、異常原因を切り分けやすくなります。

計測中は、急加速、急旋回、急な持ち替えを避け、観測の重なりを保ちやすい滑らかな移動を意識します。階段や曲がり角では前後の空間が連続して観測できるように動き、扉や可動物の状態も可能な範囲で一定に保ちます。

長い通路では、同じような景観が続くことによる幾何学的な拘束不足にも注意します。特徴的な設備や分岐部を経路へ含め、必要に応じて中間ループをつくります。

そして、船内SLAM計測で欠かせないのが閉合後の確認です。

往路だけで計測を終了するのではなく、可能であれば開始地点や既知地点を再観測し、ループ閉合が正しく成立しているかを確認します。開始時と終了時の点群が整合しているかを見て、必要に応じて既知寸法や基準点とも照合します。

SLAM計測は、広い船内空間を効率よく三次元化するための有効な手段ですが、取得した点群をそのまま正しいものとして扱うのではなく、計測経路、閉合状況、既知寸法や基準点との整合を確認する工程まで含めて運用することが重要です。

特に船内のようにGNSS信号を利用しにくい場所では、内部ではSLAMや船体固定の基準を用いた相対的な形状取得を行い、屋外や上部甲板など衛星測位が利用できる場所ではGNSSによる位置基準を取得するなど、目的に応じて複数の計測手段を使い分ける考え方があります。

ただし、屋外で取得したGNSS座標と船内SLAM点群を結び付ける方法は、使用する機器やソフトウェアによって異なります。必要に応じて共通基準点や座標変換を用い、船体の姿勢や計測時刻も含めて整合方法を決めることが大切です。

高精度な位置情報の取得、現場での記録、点群や座標データの活用までを一連の作業として考える場合は、GNSSを利用できる場所でLRTK Phoneを活用し、位置基準や点群データを取得する方法も選択肢になります。船内のGNSSが届きにくい区間については、SLAMなど別の方法との役割分担を明確にしたうえで運用することが重要です。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

LRTK Phoneの使い方・実例を見る
資料請求導入相談
現場をスマホで3DスキャンLRTK Phone実例を見る

技術記事一覧へ戻る →