水たまりがSLAM計測の点群に影響する理由
SLAM計測は、移動しながら周囲の形状を取得し、その観測結果を使って自己位置を推定しながら点群を構築する方法です。短時間で広い範囲を計測しやすいため、建設現場、地下空間、設備施設、造成地、道路、トンネル、屋内施設など、さまざまな場所で利用されています。
一方、SLAM計測では周囲の物体から安定した観測情報を得ることが重要です。床、壁、柱、梁、設備、構造物などの位置関係を連続的に捉えることで、移動経路を推定し、点群同士の位置を合わせていきます。そのため、周囲に観測しにくい面や状態があると、取得点そのものだけでなく、場合によっては自己位置推定にも影響する可能性があります。
その代表例の一つが水たまりです。
レーザーを利用するSLAM計測では、照射した光が対象物からどのように戻るかによって点の取得状態が変わります。一般的な乾いたコンクリート面や土面、壁面では、表面で反射した光の一部が計測機器へ戻り、距離として取得されます。しかし、水面は乾いた床面とは反射特性が異なります。
水面では光が鏡面反射に近い挙動を示すことがあり、照射方向と水面の角度によっては、計測機器へ十分な反射光が戻らない場合があります。その結果、本来床面として存在している位置に点が取得されず、水たまり部分だけ点群が抜けたように見えることがあります。
反対に、水面周辺で得られた不安定な反射や複数の反射経路などによって、実際の構造物とは一致しにくい点が混在する場合もあります。こうした点が多いと、点群上に水面付近だけ薄い膜のような形状が現れたり、床より下や周辺に孤立した点が見えたりすることがあります。本記事では、このように現実の形状を適切に表していない点を便宜上「誤点群」と呼びます。
重要なのは、水たまりがあれば必ず大きな誤差が発生するわけではないという点です。影響の程度は、計測方式、レーザーの波長や特性、入射角、距離、水深、水面の揺れ、濁り、床材、周囲の構造、歩行速度などによって変わります。
したがって、水たまりのある現場でSLAM計測を成功させるには、「水があるから計測できない」と考えるのではなく、水面が不安定な観測対象になり得ることを前提として計測経路や機器姿勢を設計することが重要です。
誤点群を抑える方法1|水面へ浅い角度でレーザーを当て続けない
水たまりがある場所で最初に意識したいのが、水面に対する計測方向です。
SLAM計測では、計測者が移動するとレーザーの照射位置や角度も連続的に変化します。このとき、水たまりの縁に沿って長距離を移動し、水面へ浅い角度から照射し続けるような経路を取ると、水面から安定した反射を得にくい状態が長く続く可能性があります。
特に広い水たまりが通路の片側に連続している場合、水面側に機器を向けたまま移動すると、観測できる特徴の一部が長時間不足することがあります。床面だけを問題として考えるのではなく、その区間でSLAMが参照できる壁、柱、設備、段差、開口部などがどの程度存在するかも確認する必要があります。
対策として有効なのは、水面を視野の一部に含めつつ、周囲の安定した構造物も十分に観測できる姿勢を維持することです。
例えば、通路中央に水たまりがある場合、水面だけを正面に見ながら直進するよりも、左右の壁や柱、天井付近の構造、設備などが継続して取得できる位置を通った方が、自己位置推定に利用できる情報を確保しやすくなります。
また、水たまりの縁を通る際には、機器を極端に下向きへ傾けて水面だけを密に計測しようとする必要はありません。目的が床面形状の記録であったとしても、水面の下にある床形状をレーザー点群だけから確実に復元できるとは限らないためです。
水たまりによって見えない床面は、「その場では直接観測しにくい領域」として扱った方が安全です。周囲の乾いた床面や構造物を安定して取得し、後工程で水面領域を識別できる状態を残すことが重要になります。
水面に対する入射角を完全に管理することは、歩行型のSLAM計測では現実的ではありません。しかし、同じ不利な角度を長時間維持しないように経路を工夫することはできます。
水たまりの横を長く直進する必要がある場合には、往路と復路で位置を変える、通路の反対側も通る、水面を斜めに横切る観測方向を追加するなど、異なる方向から周囲を取得することで、一方向だけに依存した点群になることを防ぎやすくなります。
誤点群を抑える方法2|水たまりを避けた周回経路を先に決める
SLAM計測で重要なのは、単に対象範囲を歩き切ることではありません。自己位置推定に利用できる特徴を継続して観測しながら、計測開始位置や既に通過した場所へ適切に戻れる経路を設計することが重要です。
水たまりが多い現場では、現場へ入ってからその場の判断だけで避け続けると、計測経路が不規則になりやすくなります。
例えば、予定していた通路中央に大きな水たまりがあり、右へ避けた後に障害物があって左へ戻り、さらに足場を避けるため別方向へ移動するといった動きが続くと、歩行軌跡が複雑になります。経路が複雑になること自体が直ちに問題になるわけではありませんが、急な方向転換や同じ特徴の少ない場所を長く通過する状況はできるだけ減らした方が、安定した計測を行いやすくなります。
そのため、SLAM計測を始める前に現場を短時間確認し、水たまりの位置と通行可能範囲を把握しておくことが有効です。
特に確認したいのは、計測開始地点から終了地点まで安全に一周できるか、途中で大きな水たまりによって通路が分断されていないか、水面を避けた場合でも壁や柱などの特徴を継続的に観測できるかという点です。
広い現場では、水たまりを避けるために一筆書きで全域を計測しようとするより、複数の小さな周回に分けた方が扱いやすい場合があります。
例えば、現場全体を大きく一周した後、設備周辺、柱列周辺、屋外と屋内の接続部などを小さく周回します。こうすることで、水たまりによって一部の床面情報が不安定でも、壁や設備などの重複観測を増やすことができます。
ただし、水面を避けることだけを優先し過ぎて、毎回まったく異なる場所を通るのも適切とは限りません。SLAMでは、過去に観測した空間を再び観測することが位置関係の整合性を高めるうえで役立ちます。
そのため、水たまりを避けながらも、柱、壁の角、設備の外形、開口部など、同じ特徴が再度観測できるルートを意識するとよいでしょう。
現場によっては、作業開始時には小さかった水たまりが、降雨や排水状況の変化によって広がることもあります。前日の経路をそのまま再利用するのではなく、毎回計測直前に通行可能範囲を確認することも重要です。
誤点群を抑える方法3|走査高さと姿勢を一定に保つ
水たまりを避けながらSLAM計測を行うと、計測者は足元を確認する機会が増えます。その結果、通常よりも機器が上下したり、左右へ傾いたりしやすくなります。
この姿勢変化は、水面そのものとは別の問題を生む可能性があります。
歩行型のSLAM計測では、計測者の移動に伴って周囲を連続的に観測します。機器を大きく振ったり、急激に向きを変えたりすると、連続する観測間で見える範囲が大きく変わります。十分な特徴が存在する環境であれば処理できる場合もありますが、水面によって床側の観測が不安定になっている場所では、さらに急激な姿勢変化が加わると条件が厳しくなります。
そのため、水たまりのある区間ほど、機器の高さと向きを意識して安定させることが重要です。
例えば、水たまりをまたぐために機器を大きく振りながら移動したり、足元を見るため機器ごと下向きへ傾けたりすると、壁や柱などの観測範囲が一時的に狭くなることがあります。足元確認は安全上必要ですが、計測機器まで大きく振る必要がないよう、歩行速度を落として移動する方が適しています。
また、水たまりを避けるために縁石や段差へ上がる場合にも注意が必要です。高さが急に変化する場所では、通常の歩行より大きな上下動が発生します。段差を越えること自体を避ける必要はありませんが、走ったり飛び越えたりせず、周囲を十分観測しながらゆっくり通過することが重要です。
同じ理由から、水たまりの横を通過する区間では速度を一定に保つことも有効です。
乾いた場所では速く歩き、水たまりに近づくと急停止し、その後急に方向を変えるという動きを繰り返すより、少し早めに減速し、安定した速度で迂回した方が観測状態を連続させやすくなります。
SLAM計測では、対象物へ機器を近づければ必ず精度が高くなるわけではありません。水面を細かく取得しようとして機器を急に低くするより、周囲の構造を安定して捉えられる走査高さを維持する方が、現場全体の点群を整えやすい場合があります。
計測目的が床面の出来形確認や排水勾配の確認などで、特に床面情報が重要な場合には、水が残った状態で無理に床面を取得するのではなく、必要に応じて排水後に補足計測を行う判断も重要です。
誤点群を抑える方法4|水面周辺を異なる方向から重ねて計測する
水面周辺の点群品質を高めるうえで有効なのが、一方向だけの観測に依存しないことです。
同じ場所であっても、観測方向が変わるとレーザーと対象面の角度が変わります。水面では特に方向によって反射状態が変化しやすいため、ある方向から取得できなかった部分が、別方向からは周囲の構造として取得できる場合があります。
ここで重要なのは、水面そのものを複数方向から完全に計測することではありません。
目的は、水たまりの周囲にある乾いた床、壁、柱、縁石、側溝、設備基礎などを複数方向から取得し、水面領域との境界を判断しやすくすることです。
例えば、床面の一部に水たまりがある場合、片側から一度通過しただけでは、点群上で床面の欠測なのか、本当に開口部や段差が存在するのか判断しにくいことがあります。反対側からも取得しておけば、水たまりの周囲の床形状が連続して確認でき、欠測領域の位置を把握しやすくなります。
設備基礎の周囲に水が溜まっている場合も同様です。
一方向からのみ取得すると、水面付近の点の乱れによって基礎下端や床面との取り合いが不明瞭になる場合があります。基礎の反対側や斜め方向から追加計測しておけば、基礎そのものの形状を複数方向から確認できます。
異なる方向から取得することは、自己位置推定の安定にも役立つ場合があります。
同じ柱列や壁面、設備などを往路と復路で再び観測できれば、過去に取得した位置との整合を取りやすくなります。特に水たまりが連続する長い通路では、片道だけで終了せず、別側から戻って重複区間を設けることが有効です。
ただし、重複を増やせば増やすほど良いわけではありません。
同じ場所を無計画に何度も通るとデータ量が増え、後処理の確認対象も増えます。また、人や車両が頻繁に動く現場では、時間差によって動体由来の点が増える可能性もあります。
したがって、水面周辺については、必要な構造物が別角度から確認できる程度の重複を意識し、目的を持って再走査することが重要です。
誤点群を抑える方法5|取得後に水面由来の点を識別して除去する
現場でどれだけ計測方法を工夫しても、水面付近の不要点を完全になくせるとは限りません。そのため、水たまりが存在する現場では、取得後の点群確認まで含めて計測工程と考える必要があります。
最初に確認したいのは、水たまりが存在していた位置と、点群上の異常位置が一致しているかです。
計測時に水たまりの位置を把握していれば、点群を確認した際に、水面領域で発生している欠測や孤立点を比較的判断しやすくなります。一方、水たまりの位置を記録していないと、本当に床が凹んでいるのか、水面による欠測なのか、単純な遮蔽なのかを判別しにくくなります。
そのため、計測時に位置情報付きの写真などを残しておくことも有効です。点群と現場写真を合わせて確認できれば、異常な点が発生した理由を推定しやすくなります。
水面由来と考えられる不要点は、周囲の床面との連続性を見ることで判断できる場合があります。
例えば、平坦な床の一部だけに不規則な点が浮いている場合や、水たまりの位置に一致して孤立点が集中している場合には、実際の構造物ではない可能性を検討します。
ただし、自動的なノイズ除去を強く適用するだけでは不十分です。
現場には小さな配管、段差、ボルト、排水溝、設備脚部など、本当に存在する細かな形状もあります。孤立点を一律に削除すると、必要な対象まで消してしまう可能性があります。
特に出来形確認や既設設備の記録を目的とする場合には、点群の密度だけで機械的に判断せず、周囲の形状や写真、設計情報などと合わせて確認することが重要です。
水面上や水面付近に発生した不要点を除去した後は、床面が取得できていない場所を無理に補間しないことも大切です。
周囲の床面から推測して面を作成すると見た目はきれいになりますが、それは実際に観測したデータではありません。計測結果を施工確認や数量算出などへ使用する場合には、実測部分と推定部分が混同されないようにする必要があります。
水たまりによって必要な床面が取得できなかった場合は、その範囲を欠測として扱い、必要であれば排水後に再計測する方が確実です。
SLAM計測では点群をきれいに見せることよりも、どの部分が観測でき、どの部分が観測できなかったのかを把握できる状態にすることが重要です。
水たまりのある現場でSLAM計測前に確認したいこと
誤点群を抑えるには、計測中の工夫だけでなく、計測前の現場確認が大きく影響します。
最初に確認したいのは、水たまりの範囲です。小さな水たまりが数か所あるだけなのか、床面の広い範囲が冠水しているのかでは、計測方法が大きく変わります。
数十センチ程度の小さな水たまりであれば、歩行位置を少し変えるだけで対応できる場合があります。一方、通路全体が水で覆われている場合には、水面を避ける経路そのものが確保できないことがあります。
その場合は、安全面も含めて、計測を実施するタイミングを再検討する必要があります。
また、水たまりの深さにも注意が必要です。
浅く見えていても、床にくぼみがあれば想定以上に深い場合があります。濁った水では底面が見えず、段差や開口部が隠れている可能性もあります。SLAM計測のために無理に水たまりへ入ることは避けるべきです。
床面が濡れている現場では、滑りやすさも重要な確認事項です。計測者が転倒すれば、計測データ以前に重大な問題になります。
計測ルートを計画する際には、点群品質だけでなく、安全に歩行できるかどうかを最優先に考える必要があります。
さらに、計測開始前には水たまり以外の環境も確認します。
壁や柱が少ない広い空間、同じ形状が連続する場所、鏡面性の高い材料が多い場所などが水たまりと重なると、自己位置推定に使える特徴が少なくなる場合があります。
そのような場所では、可能であれば周囲の特徴的な構造物を含む経路を選び、計測開始直後から十分な周辺形状を取得できるようにします。
開始位置についても、特徴の少ない水たまりの中央付近ではなく、壁、柱、設備など複数の形状が観測できる場所を選ぶ方が扱いやすくなります。
水面だけでなく濡れた床面にも注意する
水たまりがない場所であっても、床面が濡れている場合には注意が必要です。
薄い水膜ができている床は、見た目ではほぼ乾いた床に見える場合があります。しかし、表面の状態が変わることで反射特性も変化するため、乾いた部分と濡れた部分で点の取得状態に差が現れることがあります。
特に平滑なコンクリート面や塗装された床面などでは、濡れることで光沢が強くなる場合があります。
その結果、点群上で一部の床面密度が変化したり、観測方向によって点が抜けたりする可能性があります。
ここで注意したいのは、点の密度差だけを実際の凹凸として判断しないことです。
床面形状を確認する場合には、単一方向から取得した断面だけを見るのではなく、周囲の複数方向の点や乾いた範囲との連続性を確認します。
雨天直後の屋外現場では、水たまりと濡れた路面が広い範囲に混在することがあります。このような条件では、晴天時と同じ速度、同じ経路で計測するのではなく、状況に合わせて計測条件を調整する必要があります。
排水できる場所であれば、必要な床面を記録する前に排水することも有効です。
ただし、工事の記録として「水が溜まっている状態そのもの」を残したい場合もあります。その場合は、水面を床面データとして扱わず、水たまりの範囲や周囲の高さ関係を別の観測情報として記録する考え方が適しています。
SLAM点群だけですべてを表現しようとせず、写真や現場記録と組み合わせることで、後から状況を理解しやすいデータになります。
誤点群を減らしながらSLAMの自己位置推定を安定させる考え方
水たまり対策というと、水面の点をどう減らすかだけに注目しがちですが、SLAM計測では自己位置推定を安定させることも重要です。
点群の品質は、個々のレーザー点の測距状態だけで決まるわけではありません。計測中の位置と姿勢が適切に推定され、それぞれの観測結果が正しい位置関係で配置されて初めて、現場全体として整った点群になります。
そのため、水たまりが多い現場では、床面以外の安定した特徴を積極的に利用する必要があります。
例えば、柱の角、壁と床の境界、梁、設備基礎、配管支持部、開口部などは、移動しながら位置関係を確認しやすい対象です。
広い床面に水が張っていても、周囲に壁や柱が十分存在すれば、床だけに依存せず空間全体を観測できます。
反対に、広い屋外ヤードのように周囲の構造物が少なく、さらに大きな水たまりが存在する場所では、観測できる特徴が限られる場合があります。
このような環境では、長距離を一方向へ移動してから戻るのではなく、特徴のある構造物の周囲を通過しながら複数の小さな周回を作る方法が有効です。
また、計測中に点群表示や位置状態を確認できる場合には、水たまりを通過した直後だけでなく、その先の区間でも異常がないか確認します。
SLAMの位置ずれは、問題が起きた場所ですぐ視覚的に分かるとは限りません。しばらく移動した後、過去に取得した壁や柱と再び重なったときにずれが見えることもあります。
そのため、現場の特徴的な場所を基準として、点群が二重になっていないか、壁面が不自然に厚くなっていないか、同じ柱が別位置へ重複していないかなどを確認します。
水面由来の局所的な誤点群と、SLAMの軌跡ずれによる空間全体の二重化は別の問題です。
局所的なノイズだけを見ていると、自己位置推定側の問題を見逃す可能性があります。逆に、少量の水面ノイズが存在するだけで計測全体を失敗と判断する必要もありません。
どの範囲に異常があり、局所的な反射の問題なのか、それとも位置合わせに影響しているのかを切り分けて確認することが重要です。
水たまりが多い現場で再計測を減らす運用方法
SLAM計測の効率を高めるには、現場で取得してから事務所へ戻って初めて点群を確認する運用をできるだけ避けることが重要です。
水たまりがある現場では特に、現場状況を覚えているうちにデータを確認すると、問題の原因を判断しやすくなります。
例えば、水面付近に点の抜けが見つかった場合、その場所が水たまりだったことを現場で把握していれば、欠測理由をすぐ判断できます。
一方、数日後に点群だけを見た場合には、本来床が存在しない場所なのか、水による欠測なのか、遮蔽物があったのか分かりにくくなることがあります。
そのため、計測直後には少なくとも全体形状を確認し、重要部分に大きな欠測やずれがないかを見ることが有効です。
水たまりの多い区間については、周囲の構造物が十分取得できているか、床面が必要以上に乱れていないかを確認します。
もし計測目的上重要な箇所が欠測していれば、その場で補足計測できる可能性があります。
特に床面の高さや設備基礎との取り合いなどを確認する必要がある現場では、水面によって必要箇所が観測できなかった場合、そのまま処理を続けても必要な情報は増えません。
可能であれば水を除去し、対象面が露出した状態で補足する方が確実です。
一方、床面そのものが成果として重要ではなく、壁や設備配置の記録が目的であれば、水面部分の欠測を許容できる場合もあります。
SLAM計測では、すべての点を同じ品質で取得することより、利用目的に必要な部分を確実に取得することが重要です。
例えば、既設設備の位置把握が目的なら、設備外形、配管、支持構造、壁面などの取得を優先します。水たまり部分の床点が少なくても、目的に必要な形状が十分取得できていれば、再計測が不要な場合があります。
逆に、排水計画や床面勾配の確認が目的であれば、水たまり部分はまさに確認したい場所です。その場合、水面下を点群から推測するのではなく、排水後に改めて床面を取得することを検討します。
このように、再計測の判断基準は「点群がきれいか」ではなく、「目的に必要な情報が取得できているか」に置くことが重要です。
まとめ|水面を避けるのではなく影響を管理してSLAM計測する
水たまりがある現場では、レーザーの反射条件が乾いた床面とは異なるため、欠測や孤立点などが発生する場合があります。しかし、水たまりが存在するだけでSLAM計測そのものができなくなるわけではありません。
重要なのは、水面を安定した床面と同じように扱わないことです。
第一の方法は、水面へ不利な角度から長時間照射し続けないようにし、壁や柱などの安定した構造も同時に観測することです。
第二の方法は、水たまりを避けながらも過去に観測した構造を再び捉えられるよう、計測前に周回経路を計画することです。
第三の方法は、水たまりを避けるときほど機器の高さや姿勢、歩行速度を安定させ、急激な動きを減らすことです。
第四の方法は、水面周辺を一方向だけから取得せず、異なる方向から周囲の床、壁、設備などを重複して観測することです。
第五の方法は、取得後に水たまりの位置と点群を照合し、水面由来と考えられる不要点を識別しながら処理することです。
この5つを組み合わせることで、水面だけを無理に正確に取得しようとするのではなく、現場全体として信頼できるSLAM点群を作りやすくなります。
また、水面による局所的な誤点群と、SLAMの自己位置推定が不安定になったことによる全体的なずれは分けて考える必要があります。水たまり付近に数点の異常があることと、壁や柱が二重になるような軌跡ずれは同じ問題ではありません。
現場で重要なのは、計測目的に必要な形状が取得できているかを確認することです。
床面の高さが重要で、水によってその床を直接取得できないのであれば、無理に補間せず排水後に補足します。設備配置の把握が目的であれば、水面周辺の不要点を適切に処理しつつ、設備や壁など必要な形状が取得できているかを優先して確認します。
SLAM計測は、現場を歩くだけで自動的に完全な点群が得られる仕組みではありません。対象物の状態、移動経路、観測方向、速度、重複計測、後処理までを含めて計画することで、成果の安定性を高められます。
特に水たまりや濡れた床がある現場では、「水面をどう測るか」だけではなく、「水面から十分な情報が得られなくても周囲の構造から安定して位置を把握できるか」という視点が重要です。
現場で取得した点群や位置情報を、その場で確認しながら記録・共有できる環境を整えることも、再計測の削減につながります。SLAM計測だけでなく、現場の位置情報や三次元データをより手軽に扱う運用を検討している場合は、LRTK Phoneを活用した現場計測も選択肢の一つです。