工場、建築現場、設備更新工事、駅施設、倉庫、プラントなど、作業員が多い場所でSLAM計測を行うと、壁や床、柱、設備と一緒に人物まで点群として記録されることがあります。作業員が一時的に立っているだけであれば後処理で削除できる場合がありますが、計測者の周囲を複数の人が移動し続ける環境では、人物の輪郭が何重にも残ったり、固定物が人物によって隠されたりして、点群整理に手間がかかります。
さらに注意したいのは、人物点群を後から削除することと、SLAM計測そのものを安定させることは同じではないという点です。動いている人物を大量に捉えた状態で自己位置推定が不安定になった場合、人物の点だけを削除しても、すでに生じた軌跡のずれや固定構造物の二重化まで自動的に直るとは限りません。そのため、作業員が密集する現場では、人物点群を後処理で消す方法だけではなく、計測段階から固定物を安定して取得する考え方が重要です。
この記事では、「SLAM 計測」で現場の三次元化を検討している実務担当者に向けて、作業員が多い環境で人物点群を減らし、取得後の点群を整理しやすくする5つの方法を解説します。人の動きを完全に止められない現場でも実践しやすいように、計測前の調整、歩行方法、重複計測、点群処理、最終確認までを一連の流れとして整理します。
作業員が密集する現場で人物点群が問題になる理由
SLAM計測では、計測機器を移動させながら周囲の形状を取得し、連続する観測結果から自己位置と周囲の地図を構築していきます。壁、柱、床、梁、棚、設備などの固定された形状が十分に取得できれば、移動しながらでも位置関係を推定しやすくなります。一方、人のように計測中に位置が変わる対象は、固定された環境とは異なる振る舞いをします。
たとえば、通路に作業員が立っている瞬間に計測すると、その人の身体表面が点群として取得されます。数秒後に作業員が移動すると、次の位置にも新しい人物点群が生成される場合があります。多数の人が行き交う場所では、実際には何もない空間に人型の点が複数残り、点群を上から見たときに通路がノイズで埋まったように見えることもあります。
特に問題になりやすいのが、人物による遮蔽です。人物そのものの点群は削除できても、その人物の背後にあった壁、配管、棚、機械などが取得されていなければ、削除後には欠測部分が残ります。つまり、「余計な人物点群がある」という問題と、「本来必要だった固定物の点がない」という問題が同時に起こります。
人物が計測機器の近くを横切る状況も注意が必要です。視野の大部分を一時的に人物が占めると、固定物から得られる情報が少なくなります。SLAMの方式や使用するセンサー、周辺環境によって影響の程度は異なりますが、動いている対象ばかりが観測される状態は、安定した自己位置推定にとって望ましい条件とはいえません。
また、作業員だけを問題視すると、別の動体を見落とすことがあります。台車、フォークリフト、移動式作業台、開閉中の扉、揺れているシート、運搬中の資材なども、計測中に位置が変われば動体です。人物点群を整理する際は、人の形だけを探すのではなく、計測時間中に移動していた物体全体を対象として考える必要があります。
人物が多い現場では、「後から全部消せばよい」と考えるより、最初から人物に遮られにくい取得方法を組み立てる方が効率的です。SLAM計測では、取得後の編集作業だけでなく、取得時の動線設計が最終的な点群品質を大きく左右します。
方法1 計測時間と作業動線を調整して人物の写り込みを減らす
人物点群を減らす最も基本的な方法は、計測する時間と場所を調整し、センサーの周囲に入る人数そのものを減らすことです。高度な点群処理を行う前に、取得時点で不要な人物を少なくしておけば、その後の編集作業も軽くできます。
ただし、現場全体を停止させる必要があるとは限りません。工事や設備運転を止めにくい場所では、計測者が通過する短い時間だけ通路を空けてもらう方法があります。計測予定の区間を細かく分け、計測者が近づいた区間だけ一時的に通行を調整すると、現場全体への影響を抑えながら人物点群を減らせます。
朝礼直後、休憩時間、資材搬入時間、作業交代時間など、人の流れには現場ごとの傾向があります。常に混雑しているように見える現場でも、時間帯によって人の密度が変化することがあります。事前に現場担当者へ作業予定を確認し、比較的移動が少ない時間を選ぶだけでも取得条件は変わります。
重要なのは、「人数が少ない時間」だけではなく、「人の移動が少ない時間」を探すことです。数人が定位置で作業している状況と、多数の作業員が計測者の前を横切り続ける状況では、点群への影響が異なります。どうしても作業員が画面内に入る場合でも、頻繁に位置が変わらない状態の方が、後から対象範囲を特定しやすいことがあります。
計測前に作業員へ計測経路を共有することも有効です。計測者がどこを通るのか分からない状態では、作業員が突然目の前へ入ったり、計測者を避けようとして逆にセンサーの進行方向を横切ったりすることがあります。計測経路と予定時間を簡単に共有し、「計測者が通過するときだけ少し間隔を空ける」といった運用にすると、無理な作業停止をせずに動体を減らせます。
一方で、安全を犠牲にして計測経路を優先してはいけません。重機作業、揚重、車両通行、高所作業などが行われている場所では、点群取得のために既存の安全ルールを変更するのではなく、安全上許可された動線の中で計測方法を組み立てます。人物点群を減らすために作業員の退避を求める場合も、現場責任者の指示や現場ごとの安全管理方法に従う必要があります。
人が完全にいなくなるまで待つより、人物の流れを把握して「固定物を見通せる数十秒」を作ることが現実的です。この短い計測可能時間を区間ごとに確保するだけでも、人物に隠されていない壁面や設備面を取得できる割合を増やせます。
方法2 固定構造物を優先して捉える計測ルートを設定する
作業員が多い環境では、単純に通路の中央を一直線に歩くだけではなく、どの固定物を継続して捉えるかを意識して計測ルートを設定します。人物点群の除去を考えるうえでも、まず固定構造物の点群が十分に存在していることが重要です。
たとえば、広い作業床を多数の作業員が行き来している場合、床面だけを見ながら進むより、壁、柱、梁、固定設備など、位置が変化しない形状を継続して取得できるルートを選びます。固定物が連続して観測できれば、人が一時的に横切っても周囲の環境との関係を確認しやすくなります。
計測者のすぐ近くを人物が通過する状況では、人物がセンサー視野の大きな部分を占めることがあります。このような場所では、人の列へ正面から進入するより、可能であれば固定された壁や設備側へ適切な距離を確保しながら進む方が、固定形状を取得し続けやすくなります。
ただし、固定物へ極端に近づけばよいわけではありません。センサーには取得しやすい距離や視野条件があり、近すぎる対象は十分に取得できない場合があります。また、狭い場所では計測者自身が設備へ接触する危険もあります。計測機器の仕様と現場条件を確認し、必要な固定物が視野に入り続ける範囲でルートを選ぶことが基本です。
曲がり角も重要です。人の多い通路で角を急に曲がると、曲がった直後に作業員や資材で視界が遮られ、固定構造物を十分に取得できないことがあります。曲がり角の手前と通過後で共通して見える壁、柱、天井形状などを意識し、急激に姿勢を変えずに進むことで、前後の区間をつなげやすくなります。
広い現場では、一定の重複を持ったルートを設定することも重要です。一度目の通過で人物に隠された壁面を、別方向からの通過で補える可能性があります。特に中央部に作業員が密集している場合、外周側から取得した後に別の方向から戻ることで、一方向だけでは見えなかった固定物を取得できます。
このとき、「人物のいない点群を一回で完成させる」という考え方にこだわる必要はありません。一回の計測で全方向を完全に取得しようとすると、かえって人の多い場所に長時間とどまることになります。複数の短いルートで固定構造物を補完する方が、現場によっては扱いやすくなります。
計測中に大勢の人が集まっている場所へ無理に入り込むのではなく、その区画を一度保留し、周囲から固定物を取得してから人が減ったタイミングで追加計測する方法もあります。SLAM計測では、移動経路そのものを計測品質管理の一部として考えることが大切です。
方法3 同じ場所を複数回計測して一時的な人物点群を見分ける
人物点群と固定物を見分けるうえで有効なのが、同じ場所を異なるタイミングで複数回取得する方法です。壁や柱は基本的に同じ位置に残りますが、作業員は時間が変われば別の場所へ移動します。この違いを利用すると、一時的に存在していた点と固定物の点を区別しやすくなります。
たとえば、通路を往路と復路で計測した場合、往路では右側に作業員が立っていて、復路ではその人が移動していることがあります。二つの取得結果を比較すると、両方で同じ位置に存在する壁面は固定物である可能性が高く、一方のタイミングだけに現れる人物形状は動体候補として判断しやすくなります。
この方法は、人物を自動的に完全除去することを意味するものではありません。作業員が長時間同じ位置に立っていた場合には、複数回の計測で同じ場所に人物が存在することもあります。また、移動式資材や台車が長時間置かれている場合も、一時的な物体なのか現況として残すべき物体なのかは目的によって判断が変わります。
そのため、重複計測では「いつ計測したか」という情報も重要になります。一回目と二回目をほぼ同時に取得するより、作業状況が少し変化したタイミングで再度通過した方が、人の位置が変わりやすくなります。逆に、施工進捗によって固定設備や資材配置まで変化するほど時間を空けると、単純な比較が難しくなります。
現場の目的によって、何を残すべきかも決めておきます。完成形状を取得したい場合には作業員や仮設資材を除外したいことが多い一方、施工途中の現況記録では、その時点に存在していた仮設物を残したい場合もあります。「動いたものはすべて削除する」というルールではなく、計測目的に合わせて残す対象を定義することが必要です。
同じ場所を複数方向から計測する利点は、人物点群の識別だけではありません。最初の通過で人に遮られて取得できなかった壁や床が、別方向では取得できることがあります。人物を削除した後に穴だけが残る状態を避けるためにも、重要な場所では一方向だけに依存しない取得が有効です。
また、重複区間は計測結果そのものを確認する材料にもなります。同じ固定構造物が往路と復路で大きく異なる位置に見える場合は、単なる人物ノイズではなく、自己位置推定や点群の整合に問題がないかを確認する必要があります。人物を削除する前に、固定物同士が自然に重なっているかを見ることで、後処理だけでは解決できないずれに気づきやすくなります。
人物の多い場所ほど、一度の取得結果を正解とみなさず、時間や方向を変えて固定物を再確認する考え方が重要です。
方法4 時系列情報と点群の連続性を使って人物候補を除去する
計測後の点群から人物を整理する場合は、単に「人らしい形」を探すだけではなく、点の位置、時間的な変化、周囲との連続性などを組み合わせて判断します。利用できる処理方法は使用する計測環境や点群編集機能によって異なりますが、人物点群には固定構造物とは異なる特徴があります。
代表的なのは、時間とともに位置が変わることです。計測データに取得時刻やフレーム単位の情報が保持されている場合、短時間のうちに位置が変化している点の集合を動体候補として扱える場合があります。作業員が歩いていると、連続した取得の中で人体表面の位置が変化するため、固定された壁面とは異なる挙動になります。
ただし、時系列だけで人物を確実に判定できるとは限りません。計測者自身が移動しているため、センサーから見れば固定壁も相対的には位置が変化します。SLAMで推定した座標系へ変換した後に、同じ場所に安定して残る点なのか、一時的にしか存在しない点なのかを評価する必要があります。
点群の形状も判断材料になります。壁や床は比較的連続した面を形成しますが、人物は局所的な点の塊として取得されることがあります。そのため、周囲の大きな面から独立した小さな点群を抽出し、不要物候補として確認する処理が使われることがあります。
一方で、「小さな点群だから削除する」という処理を強くかけすぎると、配管、手すり、細い支柱、ケーブル、機器の突起、標識など、本来必要な構造物まで消す可能性があります。人物除去を目的としたフィルタでも、対象物の寸法や現場の形状を確認しながら適用する必要があります。
高さ範囲を利用する方法もありますが、これも単独では扱いに注意が必要です。人物が存在しやすい高さ帯を一括削除すると、同じ高さにある設備、壁、棚、配管などまで削除してしまいます。床面から一定高さの点をまとめて消すような処理は、人物だけを対象にした方法にはなりません。
人物認識や物体分類に対応した処理環境では、人と推定された領域を候補として抽出できる場合があります。この場合でも、自動分類の結果を無条件に削除するのではなく、固定設備や構造物が誤って人物として判定されていないかを確認することが重要です。作業服、資材、養生材、複雑な機械形状などが混在する建設現場では、一般的な室内空間より分類が難しくなることがあります。
人物点群の除去は、できるだけ段階的に行う方が安全です。明らかに孤立している人物形状を先に除去し、その後に壁や設備近くに残った点を確認することで、必要な固定物をまとめて削除するリスクを減らせます。
特に壁際に立っていた人物は注意が必要です。身体と壁面の点が接近しているため、範囲選択で人物だけを削除しようとすると、背後の壁まで削ってしまうことがあります。別のタイミングで取得した壁面が存在するなら、そのデータを確認しながら不要部分を整理します。
点群処理では「できるだけ多く削除する」ことが目的ではありません。最終成果として必要な固定物を保ちながら、計測中に一時的に存在した人物や動体を必要な範囲で除外することが目的です。除去強度よりも、残すべき形状を定義することが先になります。
方法5 最後は固定物を基準に目視確認して人物点群を整理する
自動処理やフィルタを使用しても、作業員が密集する現場では人物点群がすべてきれいに分離されるとは限りません。最終的には、固定構造物との関係を確認しながら目視で整理する工程が重要になります。
確認するときは、点群を一方向だけから見るのではなく、上面、側面、断面など複数方向から確認します。上から見ると小さな点の塊にしか見えなくても、横から見ると人体に近い高さと形状を持っていることがあります。反対に、人に見えた点群が実際には配管支持材や機械の一部であることもあります。
人物の輪郭が明確に残っている場所は比較的判断しやすいものの、移動中の人物は身体が連続した形で取得されない場合があります。腕、脚、胴体が別々の点群となったり、複数時刻の位置が重なって帯状のノイズになったりすることがあります。このような点は、一つずつ人型を探すのではなく、周囲の固定面と連続しているかどうかを確認すると整理しやすくなります。
床面近くも慎重に確認します。歩行中の人物の足元には点が残ることがありますが、床そのものを削除してしまうと、床面モデルや高さ確認に影響します。床面から孤立して上方へ伸びている点だけを対象にするなど、必要な面を残す意識が必要です。
壁際では、人物点群を削除した後の状態も確認します。人物の背後が一度も取得されていなければ、削除後に壁面へ穴が生じます。その穴を周囲の点から機械的に埋めればよいとは限りません。実測点と補間された形状は意味が異なるため、成果物の目的によっては欠測として扱い、必要なら追加計測を検討します。
重要設備の周囲では、人物の削除によって対象物のエッジまで消していないか確認します。バルブ、フランジ、盤、配管、柱脚、開口部、手すりなどは、人が作業するときに身体が接近しやすい場所です。人物だけを選択したつもりでも、設備の一部が一緒に削除されることがあります。
元データを残した状態で編集を進めることも大切です。人物除去後の点群だけを保存して元のデータを上書きすると、必要な点まで削除したことに後から気づいても戻せない可能性があります。取得時のデータ、処理途中のデータ、人物除去後の成果データを区別して管理しておけば、比較や再処理を行いやすくなります。
また、人物を消したことによって点群が見た目にきれいになっても、それだけで品質確認を終えてはいけません。人物点群が多かった区間では、固定物が十分に取得されているか、軌跡に不自然なずれがないか、同じ壁や柱が二重化していないかまで確認します。
人物点群の削除は仕上げ工程ですが、品質を保証する工程そのものではありません。固定構造物の形状が正しく残っていることを確認して初めて、人物除去が適切だったと判断できます。
人物点群を除去した後に確認したいSLAM計測の品質
人物点群を整理した後は、点群全体の整合性を確認します。ここで重要なのは、人物が見えなくなったかではなく、計測対象となる固定物が目的に応じた状態で取得できているかです。
まず確認したいのが二重化です。同じ柱の輪郭が二本に見えたり、壁面が薄く二枚に分かれて見えたりする場合、人物点群だけの問題ではない可能性があります。計測中に自己位置推定がずれた区間や、別の経路を重ねた部分の整合を確認します。
重複計測した場所では、往路と復路で取得した固定物が自然に重なっているかを見ることができます。同じ柱、壁角、設備端部などが大きく離れて見える場合は、人物を削除して見た目を整える前に、計測結果そのものの扱いを検討する必要があります。
次に確認したいのが欠測です。人物が立っていた場所を削除すると、その背後に取得点がないことがあります。壁面の一部が空いている場合、単なる削除漏れではなく、計測時に遮蔽されていた可能性があります。特に寸法確認や既設設備の位置把握を目的とする場合、必要部分が欠けていれば追加取得が必要になることがあります。
点群密度の急な変化も確認します。人物除去を強く行った場所だけ極端に点が少なくなっていると、周囲の固定物まで削除している可能性があります。平面視だけでは分かりにくいため、断面表示で壁面や設備の輪郭を確認すると判断しやすくなります。
現場内に既知の寸法や位置がある場合は、それらとの照合も参考になります。ただし、既知値そのものの管理状態や基準が異なる場合もあるため、単一箇所だけで判断するのではなく、複数の固定対象で確認する方が安全です。
SLAM計測結果を測量や施工管理へ利用する場合は、必要精度や成果物の作成方法が業務によって異なります。点群が視覚的に滑らかであることと、業務上必要な精度を満たしていることは同じではありません。使用目的に応じて、必要な基準点や既知点との照合、別手段による確認などを組み合わせます。
また、人物を消すために平滑化やノイズ除去を強くすると、角部や細部まで丸くなることがあります。点群の見た目をきれいにする処理と、現場形状を忠実に残す処理は必ずしも一致しません。出来形確認、設備位置確認、図面作成、維持管理記録など、点群を何に使うのかを先に決め、その目的に必要な形状を残すことが重要です。
人物が多い現場ほど計測時の記録を残す
作業員が密集する現場では、後から点群を見ただけでは、「この点は人物だったのか」「実際に存在する設備だったのか」を判断しにくいことがあります。そのため、計測データとあわせて現場状況を記録しておくと、後処理時の判断材料になります。
たとえば、どの区間を何時ごろ計測したのか、どこに作業員が集中していたのか、資材搬入や車両通行があったのかといった情報が分かれば、点群上の不自然な部分と現場状況を対応させやすくなります。
写真も有効です。点群上では孤立した物体に見えても、同じ時間帯の現場写真を確認すると、そこに作業員や移動式機材が存在していたことが分かる場合があります。反対に、不要な人物点群だと思っていた形状が固定設備だったと確認できることもあります。
重要なのは、写真だけを大量に撮影するのではなく、位置と時間が分かる形で記録することです。広い工事現場では似たような通路や設備が複数存在するため、写真だけでは撮影場所を判断できなくなることがあります。
計測区間、位置、時刻、作業状況などを関連付けて管理しておけば、後から人物点群を編集するときだけでなく、追加計測が必要になった場所を再訪するときにも役立ちます。人物によって隠されていた設備を再計測する場合、前回どの方向から取得したのかが分かれば、次は異なる方向から補完できます。
こうした現場記録を位置情報と結び付けて残す用途では、LRTK Phoneを活用する方法もあります。現場で位置を確認しながら写真や地点情報を記録し、SLAM計測を行った区間や確認箇所を整理しておけば、点群編集だけでは分からない現場状況を振り返りやすくなります。
SLAM計測で重要なのは、点群ファイルだけを成果として扱うことではありません。どのような現場条件で取得したのか、どこで遮蔽が発生したのか、どの場所を再確認したのかという情報も含めて管理することで、点群の信頼性を判断しやすくなります。
まとめ
作業員が密集する現場でSLAM計測を行うと、人物が点群として残るだけでなく、人物による遮蔽、固定構造物の欠測、移動物体によるノイズなど、複数の問題が同時に発生します。そのため、人物点群の処理は後から人型の点を削除するだけでは十分ではありません。
第一の方法は、計測時間と作業動線を調整し、計測者の周囲を横切る人物をできるだけ減らすことです。現場全体を停止できなくても、計測する区間だけ短時間通行を調整したり、人の移動が少ない時間を選んだりすることで、取得条件を改善できます。
第二の方法は、人物ではなく壁、柱、梁、固定設備などを継続して捉えられる計測ルートを設定することです。作業員が視野を横切っても固定構造物を取得し続けられる経路を選べば、人物点群を除去した後にも必要な形状を残しやすくなります。
第三の方法は、同じ場所を複数回、異なるタイミングや方向から取得することです。一時的に存在する人物と、常に同じ場所に存在する固定物を比較しやすくなるだけでなく、一回目に人物で遮られた部分を別方向から補完できる可能性があります。
第四の方法は、時系列、点群の連続性、周囲との位置関係などを利用して人物候補を整理することです。ただし、強いフィルタを一律に適用すると、細い配管や手すりなど必要な形状まで削除するおそれがあります。自動処理は人物候補を絞り込む手段として使い、残すべき固定物を基準に調整することが重要です。
第五の方法は、最終的に目視で確認することです。人物の背後に欠測がないか、壁や設備まで削除していないか、固定構造物が二重化していないかを複数方向から確認します。人物が消えて見た目がきれいになったことだけを完成条件にせず、SLAM計測結果全体の整合性を見る必要があります。
作業員が多い現場ほど、「計測」「人物除去」「品質確認」を別々に考えないことがポイントです。計測段階で固定物を十分に取得し、重複区間を設け、現場状況を記録したうえで人物点群を整理すれば、後処理だけに頼るよりも扱いやすいデータを作りやすくなります。
さらに、点群だけでは判断できない現場状況を後から確認できるよう、計測場所や時刻、写真などの記録を位置情報と関連付けて残しておくと、追加計測や成果確認にもつなげやすくなります。SLAM計測と現場の位置記録を一体的に管理したい場合は、LRTK Phoneを活用し、計測地点や現場写真を位置情報とともに整理する運用も検討できます。