LRTKレフィクシア株式会社

粉じんが多い解体現場のSLAM計測で浮遊誤点を減らす5つの対策

解体現場でSLAM計測を行うとき、完成した建物や通常の屋内計測とは異なる難しさがあります。はつり、切断、破砕、積み込み、搬出などによって粉じんが発生し、空間中を漂う粒子が計測に影響する可能性があるためです。さらに、作業員、重機、吊り荷、養生材、解体材なども動き続けるため、SLAMが前提とする固定した周辺形状を安定して観測しにくくなることがあります。

とくにレーザーを用いるSLAM計測では、条件によっては空中の粉じんから反射が返り、本来は何もない空間に点が現れたり、奥にある壁や柱の点が取得しにくくなったりすることがあります。ただし、空中に見える点のすべてが粉じんによるものとは限りません。移動中の人や資材、露出した鉄筋、ケーブル、細い部材などが孤立点のように見えるケースもあります。

そのため、粉じんの多い解体現場では「後処理ですべて消す」という考え方だけでは不十分です。計測する時間、計測位置、機器の状態、歩き方、ルート、取得後の点群確認までを一連の作業として設計することが重要です。本記事では、SLAM 計測を実務で扱う担当者に向けて、粉じんが多い解体現場で浮遊誤点を減らすための5つの対策を、現場運用の流れに沿って解説します。

粉じんが多い解体現場でSLAM計測が難しくなる理由

SLAMは、計測機器が移動しながら周囲を観測し、自己位置の推定と周辺形状の地図化を並行して進める技術です。固定位置へ機器を何度も据え直す方法とは異なり、作業者が歩いて広い範囲を取得できるため、建物内部や設備周辺、施工途中の空間などを効率よく三次元化したい場面で活用しやすい方法です。

しかし、解体工事中の建物は周囲の状態が絶えず変化します。壁の撤去によって昨日まで存在していた面がなくなり、仮置きされた解体材が移動し、作業員や重機が行き来します。さらに、はつりや切断などの工程では大量の粉じんが生じる場合があります。SLAM計測にとっては、固定した構造物が減る一方で、時間とともに位置が変化する対象が増えやすい環境です。

レーザーによる距離計測では、発射した光が対象物から戻ることで距離を求めます。粉じんなどの粒子が空間中に多く存在すると、条件によっては粒子から反射が返ったり、対象物へ届く光や対象物から戻る光が弱くなったりすることがあります。その結果、壁までの間に本来の構造物ではない点が現れる、奥側の面の点が少なくなる、輪郭が不明瞭になるといった変化が生じる可能性があります。影響の程度は機器の計測方式、粉じんの濃度や粒径、対象物までの距離、対象面の性状などによって異なるため、一律の条件で判断することはできません。

本記事では、固定構造物として説明しにくく、粉じんや移動物など一時的な要因によって空間中へ現れた可能性のある点を、実務上の便宜から「浮遊誤点」と呼びます。ただし、三次元表示で空中に浮いて見えるという理由だけで誤点と判断してはいけません。解体現場では天井から垂れたケーブル、露出した鉄筋、支持材、細い配管、破断した部材なども存在します。見る方向や点密度によっては、これらが孤立した点や小さな塊に見えることがあります。

浮遊誤点が増えると、点群を見たときの印象が悪くなるだけではありません。壁面の前に不要な点が多ければ壁位置を読み取りにくくなり、床上に散乱点が多ければ床面と解体片の区別が難しくなります。断面を作成したときにも不要な点が混ざり、目的とする輪郭を確認するための処理が増えます。

さらに注意したいのが、SLAMの自己位置推定への影響です。SLAMの方式によって処理方法は異なりますが、周囲から取得した特徴や形状を継続的に対応付けながら位置と姿勢を推定する方法では、移動物や一時的な観測が多い環境は好ましい条件とはいえません。粉じんが見えただけで直ちにSLAMが破綻するわけではありませんが、固定構造物の観測が不足する状況と動的な対象が多い状況が重なれば、安定した取得が難しくなる可能性があります。

したがって、解体現場の粉じん対策は単純な点群ノイズ除去の問題として考えるのではなく、計測環境を整え、固定構造物を確実に観測し、問題が発生した区画を後から切り分けられるようにすることが基本になります。

対策1 発じん作業と時間をずらして計測する

粉じんが多い解体現場で最初に検討したい対策は、機器設定の変更ではなく計測時間の調整です。解体現場の粉じん量は一日中一定ではありません。はつりや切断が集中する時間、解体材を集積する時間、搬出を行う時間、作業区画を切り替える時間などによって、計測環境は大きく変化します。

強い発じん作業が行われている場所の近くで計測すると、粉じんだけでなく作業員、工具、重機、運搬物なども取得範囲へ入りやすくなります。そこで可能であれば、対象区画で強い発じんを伴う作業が行われている時間を避け、比較的空間が安定した時間にSLAM計測を実施します。

ただし、「作業が止まった直後なら問題ない」と決めつけることにも注意が必要です。細かな粉じんは発じん作業の終了後もしばらく浮遊する可能性があります。また、開口部や換気、送風などによる気流で、別区画から粉じんが流れ込むこともあります。そのため、工程だけを見るのではなく、計測直前に実際の対象区画の状態を確認する必要があります。

実務では、粉じんが完全になくなるまで待つことを目標にすると計測機会を失うことがあります。解体工事は短時間でも形状が変わるため、記録したかった壁や設備が次工程で撤去されてしまう可能性があるからです。重要なのは、記録したい現況が残っている期間の中で、相対的に条件の良い時間を探すことです。

そこで有効なのが、本計測前の短い確認計測です。床、壁、柱など形状を判断しやすい固定物が含まれる小さな範囲を取得し、点群の状態を確認します。壁の手前に散乱した点が極端に多い、床面が認識しにくい、空間中へ不規則な点が広がっているといった状態が確認された場合は、そのまま広範囲を計測せず、時間帯やルートを見直す判断ができます。

短い確認計測は、担当者の感覚だけで「今日は粉じんが多い」と判断するよりも、取得結果を直接比較できる点に利点があります。同じ確認区画を用意しておけば、作業前、作業停止後、別時間帯などで結果を比較しやすくなります。ただし、点数の多さだけで良否を決めるのではなく、目的とする壁や柱が連続した形として認識できるかを見ることが重要です。

工程担当者との情報共有も欠かせません。どの区画で発じん作業を予定しているのか、重機や搬出車両がいつ通るのか、作業区画がどの順番で移動するのかを事前に把握できれば、計測の時間割を組みやすくなります。

また、発じん作業との時間分離には点群品質以外の意味もあります。粉じんで視界が悪い場所や重機が稼働している場所では、計測者自身が周囲を確認しにくくなります。SLAM計測では機器の表示を確認しながら移動する場面もありますが、安全な歩行と周囲確認が最優先です。計測品質を求めて危険な作業時間へ入るのではなく、作業動線と分離できる時間を選ぶことが基本となります。

粉じん環境では、高性能な機器を使用したとしても環境条件そのものを無視できるわけではありません。取得後に大量の不要点を除去するより、最初から比較的安定した時間を選ぶ方が、再計測や点群処理を含めた全体の負担を抑えやすくなります。

対策2 粉じん源と気流を見て走査位置を決める

発じん作業と時間をずらしても、解体現場の粉じんを完全になくせるとは限りません。次に重要になるのが、発じん源、気流、計測対象、計測者の位置関係です。

粉じんは室内へ均一に分布するとは限りません。発じん源の近くでは濃くなり、開口部や換気の影響によって一定方向へ流れることがあります。また、空気の動きが小さい場所では滞留する場合もあります。そのため、「同じ部屋だからどこから計測しても同じ」と考えず、区画内でも比較的条件の良い位置を探します。

例えば柱を計測する場合、発じん源と柱の間へ入って正面から取得する必要がなければ、反対側や斜め方向から取得できないか検討します。壁面についても、粉じんが流れている帯の中を長く歩くより、比較的空気が安定している側から連続的に取得できる経路を選んだ方が、不要な点の影響を受ける区間を短くできる場合があります。

ここで、「対象から離れれば離れるほど良い」と考えるのは適切ではありません。必要以上に対象物から離れれば、点密度や形状の表現が変わる可能性があります。計測方式ごとに使用条件が異なるため、粉じん源から距離を確保することと、必要な対象を適切に観測できる位置を確保することを両立させる必要があります。

重要なのは、粉じんが多い場所を完全に避けることではなく、計測目的上必要な区間とそうでない区間を区別することです。例えば、粉じんが濃い区画の奥に確認したい構造物がある場合は、その場所までの経路全体を細かく計測しようとするのではなく、固定物を継続して観測できる安全な経路を選び、条件の悪い区間へ滞在する時間を必要以上に長くしないようにします。

計測を開始する場所も重要です。可能であれば、最初から粉じんの濃い場所へ入るのではなく、壁、柱、床、階段などの固定構造物を十分に確認できる比較的安定した場所から開始します。SLAM計測では計測中に周囲の形状を連続して観測するため、開始直後から粉じんや移動物ばかりが取得される状況は避けたいところです。

安定した場所で計測を開始し、固定構造物をつなぎながら目的区画へ進めば、途中で点群状態が変化した場所を把握しやすくなります。例えば、ある開口を通過してから急に散乱点が増えた場合、その先の気流や発じん状況が変わっている可能性を考えられます。広い範囲を一つの均一な空間とみなさず、小さな環境の連続として捉えることがポイントです。

粉じんの流れを考える際には、安全上の制約も優先します。解体現場には床開口、段差、解体材、仮置き物、重機の旋回範囲などがあります。点群をきれいにするために危険な場所へ回り込むことは避けなければなりません。安全に通行できる範囲の中で、粉じん源と対象物との位置関係を調整するという順序で考えます。

また、粉じん対策として送風や換気が行われている場合でも、計測担当者が独自判断で設備の状態を変更するのは避けます。現場の安全管理や作業計画に従い、既存の気流条件を確認した上で計測位置を決めることが大切です。

対策3 センサー面を清浄に保ち移動と向きを安定させる

粉じんが多い現場では、空中に漂う粒子だけでなく、計測機器のセンサー面や保護面へ付着する粉じんにも注意が必要です。空中の粉じんは時間とともに移動しますが、機器表面に付着した汚れは、そのままにすると計測を継続している間も影響し続ける可能性があります。

そのため、計測開始前にはセンサー周辺の状態を確認し、メーカーや機器の取扱方法に従って適切な状態にしておきます。計測途中でも急に取得状態が悪化した場合は、単に空間中の粉じんが増えたと決めつけず、機器表面の汚れなども確認対象に含めます。ただし、清掃方法は機器ごとに異なるため、現場の布や手袋で不用意にこするような扱いは避け、定められた方法で取り扱う必要があります。

同時に見直したいのが、計測者の動きです。粉じん環境では「悪い場所を早く抜けたい」という心理から移動速度が急に上がることがあります。しかし、SLAM計測では周囲を継続的に観測しながら自己位置を推定するため、必要以上に速い移動や急激な方向転換は避けた方が管理しやすくなります。

一方で、粉じんが多い場所に長時間立ち止まれば必ず良いデータになるわけでもありません。粉じんや作業員など時間とともに変化する対象が多い環境では、停止時間を増やすことで一時的な対象が大量に含まれる場合もあります。重要なのは、単純に速く歩くことでも長く停止することでもなく、周囲の固定形状を継続して観測できる範囲で滑らかに移動することです。

壁沿いを計測するときには、対象との距離を急激に変えながら蛇行するより、安全な範囲でおおむね安定した位置関係を保って移動します。柱を回り込む場合も、機器を急に反対方向へ振るのではなく、周辺の床、壁、隣接する柱などが継続して観測される経路を意識します。

このためには、計測開始前の歩行ルート確認が重要です。床面に解体片、配線、段差、仮設材、開口などがあれば、計測中に急停止や大きな姿勢変化が起こりやすくなります。画面を見ながら初めて障害物に気付く状況を避けるためにも、先に安全な通行経路を確認しておきます。

また、広い現場を一回の長時間計測ですべて取得しようとしないことも重要です。粉じんの状態は時間と場所で変化します。一つの計測データの中へ、非常に条件の良い区画と悪い区画を長く混在させると、どこから状態が変化したのか追いにくくなります。

階、部屋、施工区画、作業状態の変化などを基準に適度に計測を区切れば、問題が生じた場合の再計測範囲を限定できます。例えば途中で発じん作業が再開された場合、その時点で一度計測を区切ることで、発じん前と発じん後のデータを分けて確認しやすくなります。

粉じんという制御しにくい要因が存在するからこそ、歩行速度、機器の向き、計測区間の長さ、センサー状態など、計測者側で管理できる条件を安定させることが重要です。複数の不安定要因を同時に重ねないことが、取得後に原因を判断しやすい点群につながります。

対策4 固定構造物をつなぐ計測ルートを組む

粉じんが多い解体現場では、単純に最短距離で対象範囲を歩くルートが最適とは限りません。SLAM計測で重要なのは、計測中に周囲の固定構造物を継続して観測しやすい経路を作ることです。

解体途中の建物では壁がなくなり、広い床と柱だけになる場合があります。設備や間仕切りが撤去されると、それまで存在していた形状的な特徴も減っていきます。さらに粉じん、作業員、重機などの動的な要素が増えると、固定形状を安定して観測できる場面が少なくなることがあります。

そこで、残っている柱、壁、梁、床、階段、開口部など、位置関係を確認しやすい構造物をつなぐように計測ルートを考えます。例えば柱が一定間隔で並んでいる空間なら、何もない中央部を一気に横断するだけでなく、複数の柱を継続的に観測できる側を通る方が、取得結果を後から確認しやすい場合があります。

壁の交差部や出入口、階段付近など、形状に特徴がある場所が残っている場合は、その周辺を経路に含める方法も考えられます。重要なのは、点数を増やすために構造物へ近づくことではなく、周囲との位置関係を追いやすい固定形状を継続して観測することです。

特に重要な対象については、可能な範囲で異なる方向から確認することも役立ちます。固定された柱や壁であれば、別方向から観測しても基本的には同じ位置へ形状が現れます。一方、粉じんや移動物など一時的な対象は、時間や観測方向が変わると同じ形で再現されない場合があります。この違いが、取得後の判断材料になります。

ただし、「多方向から取得すれば良い」という理由で同じ粉じん区画を何度も往復するのは逆効果になる可能性があります。条件の悪い空間を繰り返し通れば、一時的な点も追加されることがあります。重要箇所に限って観測方向を追加するなど、目的に応じて取得量を調整します。

開始地点と終了地点の設定も考えておきたいポイントです。条件が許せば、計測の後半で開始地点周辺や既に取得した固定構造物へ再び近づく経路を取ることで、同じ構造物がどのように再現されているか確認する材料を増やせます。ただし、開始地点へ戻っただけで精度が保証されるわけではありません。ルートを閉じることは状態確認の一つの材料として考え、成果の位置精度確認とは分けて扱います。

解体材の山や仮置き資材を固定構造物として扱わないことも重要です。計測している瞬間には静止していても、後で移動する可能性があります。SLAMの観測対象として取得されること自体は避けられなくても、ルート設計や後日のデータ比較で位置の基準として頼りすぎない方が安全です。

柱が同じ形状、同じ間隔で並ぶような環境では、現場上の位置を取り違えない工夫も必要です。階、区画、柱位置、開始場所などを記録しておけば、後で点群を確認するときに実空間との対応を取りやすくなります。

さらに、ルート上へ確認地点を設定しておくと運用しやすくなります。特徴的な柱、壁の交差部、階段、開口など、状態を判断しやすい場所で点群表示を確認し、周辺の固定形状が大きく崩れていないかを見ます。そこで浮遊点が急激に増えたり、構造物の輪郭が分かりにくくなったりしていれば、長い距離をそのまま進む前に計測を区切れます。

解体現場では一日の途中でも形状が変わります。そのため、計測ルートと同時に取得時刻や工事状態を記録しておくことが重要です。午前のデータに存在した壁が午後のデータに存在しない場合、それが計測エラーなのか実際に撤去されたのかを判断するには、現場工程の情報が必要になります。

粉じん対策としてのルート設計は、単に粉じんを避けるためだけのものではありません。固定形状を継続して観測し、状態の変化した区間を特定しやすくし、再計測が必要になったときに対象範囲を限定するための設計でもあります。

対策5 点群の連続性と再現性から浮遊誤点を見分ける

どれだけ計測条件を整えても、粉じんの多い解体現場で不要な点を完全に防げるとは限りません。そのため、取得後には点群を確認し、目的とする構造物と一時的な点を見分ける工程が必要です。

まず確認したいのは、点の連続性です。床、壁、柱、梁などの固定構造物は、欠測が存在する場合でも周辺と関係した面や線として認識できることが多くあります。一方、粉じんや一時的な移動物に由来する点は、周囲から離れた場所へ散在したり、不規則な小さな塊として現れたりする場合があります。

ただし、一方向から三次元表示を眺めただけでは判別できません。視点を回転させたり、必要な範囲を薄い断面として確認したりしながら、周辺構造物との位置関係を見ます。壁の手前に点がある場合でも、それが壁に沿った細い設備なのか、壁とは無関係に空間へ広がった点なのかによって判断は異なります。

床上の点にも注意が必要です。解体現場では細かな解体片、露出した鉄筋、設備基礎、段差などが実際に存在します。床面より少し高い位置にある点をすべて不要と判断すると、必要な現況情報まで削除する可能性があります。

そのため、不要点処理を行う前に「この点群を何のために使うのか」を明確にします。柱や壁など大きな構造物の位置関係を把握することが目的なのか、床面の凹凸を確認するのか、残存する細い部材まで記録するのかによって、残すべき情報は変わります。

処理前の元データを保持することも大切です。不要点を削除したデータだけを保存すると、後から必要な部材まで消していたことに気付いても確認できません。元データを残し、処理後の点群と比較できる状態にしておけば、フィルタリングの影響を確認できます。

再現性も浮遊誤点を判断する材料になります。同じ固定構造物を別方向から取得した場合、基本的には同じ位置に似た輪郭が現れることが期待されます。一方、粉じんなど一時的な対象は、観測時間が変わると同じ位置に同じ形で現れない場合があります。

ただし、解体現場では「再現しないから誤点」と単純に判断できません。計測の間に実際の部材が撤去された可能性があるからです。複数の点群を比較するときは、取得時刻、工事進捗、作業状態を合わせて確認する必要があります。

作業員や重機による点も同様です。移動中の対象は点群上で伸びたり複数位置へ残ったりする場合がありますが、停止していた対象は一時的に固定物のように見えることがあります。そのため、自動的な孤立点除去だけですべてを分類できると考えず、現場記録と三次元形状を合わせて確認することが重要です。

浮遊誤点の整理で避けたいのは、「点群をきれいに見せること」そのものを目的にすることです。実際の現場には欠損した壁、粗い破断面、散乱した解体材、露出部材などが存在します。それらまで均一な面に見えるよう削除してしまえば、現況記録として必要な情報を失う可能性があります。

点群の品質は、不要点が少ないことだけでは決まりません。利用したい対象が判別でき、必要な範囲が取得され、後から現場との関係を確認できることが重要です。浮遊誤点の除去は、目的とする情報を守りながら不要な観測を整理する作業として考える必要があります。

粉じんの多い解体現場でSLAM計測を進める実務手順

5つの対策を実際の現場へ落とし込むには、計測前、計測中、計測後を別々に考えないことがポイントです。一連の工程としてつなげることで、浮遊誤点への対応だけでなく、欠測や再計測の負担も抑えやすくなります。

最初に決めるのは取得目的です。解体前の全体形状を記録するのか、残存する柱や床を確認するのか、設備撤去後の空間を三次元化するのかによって、必要な対象は変わります。目的が曖昧なまま現場全体を取得しようとすると、必要性の低い粉じん区画へ入る回数が増え、処理対象となるデータも増大します。

次に解体工程を確認します。発じんを伴う作業が行われる区画、時間帯、重機の動線、解体材の搬出経路などを把握し、計測可能な時間と場所を整理します。同じフロアで作業していても、場所によって粉じんの状態が違う可能性があるため、工程情報と実際の現場状態を両方確認します。

計測開始前には、安全に歩行できるルートを確認します。床開口や段差、解体片、仮置き材などがあれば、計測中に画面を確認しながら突然回避することのないよう経路を決めます。同時に、計測開始地点や確認地点として使用する固定構造物を選びます。

その後、短い確認計測を実施します。床や壁、柱などの輪郭が判断できるか、空間中に大量の散乱点が現れていないかを確認します。ここで状態が悪い場合は、広範囲の本計測を始める前に時間やルートを変更します。

本計測では比較的条件の良い場所から開始し、固定構造物をつなぐように進みます。必要以上に急いだり、逆に一か所へ長時間滞在したりせず、周囲の形状を継続して取得できる動きを意識します。

現場条件が変化する場所では計測を区切ります。部屋や階が変わる場所だけでなく、急に粉じんが増えた地点、発じん作業が再開された時点、作業員や重機の往来が増えた場面なども区切りとして考えられます。

計測中には、三次元データだけでなく現場状態も記録しておくと後処理に役立ちます。特定の区画で作業員が頻繁に横切った、養生材が大きく揺れていた、解体材を移動していた、粉じんが急に濃くなったといった情報があれば、点群上の不自然な形状を確認するときの判断材料になります。

取得後は、まず元データを保持した状態で全体を確認します。床、壁、柱などの主要な固定構造物が連続しているか、空間中に不規則な点が集中している場所はないか、途中から形状が大きく変化していないかを見ます。

問題区画が見つかったら、その区画だけを詳細に確認します。一つの方向から判断せず、表示方向や断面位置を変えます。現場記録がある場合は、取得時の作業状況とも照合します。必要に応じて不要点を整理した後は、目的とする構造物まで失われていないかを確認します。

再計測が必要な場合も、現場全体を最初から取得し直すのではなく、問題が生じた区間を限定できる状態にしておくことが重要です。このためにも、最初から計測を適切な区画単位へ分け、開始地点と終了地点、取得日時、工事状態を管理しておくことが役立ちます。

浮遊誤点対策でやってはいけない判断

粉じんによる点群への影響を意識すると、不要点をできるだけ多く消したくなることがあります。しかし、解体現場では「空中にある点は削除」「少数の点は削除」といった単純な判断が適さない場合があります。

まず避けたいのが、孤立点をすべて粉じん由来とみなすことです。解体途中では細い鉄筋、ケーブル、金物、支持材などが露出します。これらは点群上では連続した大きな面にならず、小さな点の集合として現れることがあります。現場確認をせずに削除すれば、記録したかった対象そのものを失う可能性があります。

次に注意したいのが、強い後処理を前提として悪条件でも計測を続行することです。不要な点を後から消せたとしても、粉じんの影響によって本来必要な面の点が取得できていなければ復元できません。誤点の除去と欠測の補完は別の問題です。必要な構造物が十分に取得できていない状態では、後処理だけで完全な成果にできるとは限りません。

また、点群が滑らかで見た目が整っていることを品質の基準にするのも危険です。解体現場の実物には凹凸、欠損、破断、残置物があります。それらを処理で過度に均してしまえば、現況と異なる三次元データになる可能性があります。

粉じんが多かったという理由だけで、位置ずれのすべてを粉じんのせいにすることも避けます。SLAM計測の結果には、歩行経路、周囲形状、動的対象、機器状態、計測時間、位置合わせ方法など複数の要因が関係します。ずれが見つかった場合は、どこから状態が変化しているのかを確認し、原因を切り分ける必要があります。

反対に、点群上で粉じんらしい点が少ないという理由だけで計測品質が十分だと判断することもできません。不要点が少なくても、自己位置推定のずれや高さ方向の誤差などが存在する可能性があります。点群のノイズ量と成果として必要な位置精度は分けて確認することが大切です。

点群の見た目と位置精度を分けて確認する

粉じん対策を行うと、どうしても点群の見た目へ意識が向きます。しかし、SLAM計測の成果を現況確認だけでなく位置や寸法の確認へ利用する場合は、「浮遊誤点が少ないこと」と「必要な位置精度を満たしていること」を別々に考える必要があります。

非常にきれいな点群でも、全体がわずかに傾いている、区画間でずれが生じている、長い移動の中で誤差が蓄積しているといった可能性があります。一方で多少の散乱点が残っていても、主要な固定構造物の位置関係が用途に必要な範囲で確認できるケースもあります。

したがって、点群を評価するときは、まず取得目的を基準にします。現場の概況把握が目的なのか、構造物の位置確認へ利用するのか、別の設計データと重ね合わせるのかによって必要な確認内容は変わります。

位置や高さを重要な成果として扱う場合には、用途に応じて既知位置や別の測量成果などと照合する方法を検討します。どの程度の確認が必要かは業務目的や要求精度によって異なるため、一律の数値だけで判断するのではなく、成果の使い方に合わせて確認方法を決めます。

粉じんの影響を見るときも、点群全体ではなく区間ごとに確認すると原因を追いやすくなります。例えば条件の良い通路部分は整っているのに、発じん区画へ入った後だけ不規則な点が増えているのであれば、環境条件の変化が一つの手掛かりになります。一方、粉じんの状態に関係なく徐々に形状がずれている場合は、ルートや周囲形状など別の要因も確認する必要があります。

複数回計測する現場では、確認方法を統一しておくことも有効です。毎回同じ固定構造物を確認地点として利用し、同じような範囲で点群状態を見ることで、条件変化を比較しやすくなります。

解体工事は現場形状そのものが変わるため、完全に同一条件で比較することは難しいものの、取得日時、区画、工程状態を記録しておけば、「実際に撤去された変化」と「計測上の変化」を切り分ける材料になります。

SLAM計測では、取得点数の多さや画面上の見栄えだけを成果品質と考えないことが重要です。必要な構造が取得されていること、不要な観測を識別できること、現場上の位置との関係を確認できることを組み合わせて評価することで、粉じんの多い現場でも実務に使いやすい三次元データへつなげられます。

まとめ 粉じん対策は計測前後を一体で管理する

粉じんが多い解体現場でSLAM計測を行うと、空中に漂う粒子や移動する作業員、重機、資材などの影響によって、本来の固定構造物とは考えにくい点が点群へ含まれることがあります。また、粉じんの条件によっては奥側にある構造物を十分に取得できず、欠測や輪郭の不明瞭さにつながる可能性もあります。

こうした環境で浮遊誤点を減らすには、後処理だけに頼らないことが重要です。第一の対策は、強い発じん作業とSLAM計測の時間を可能な範囲で分離し、比較的状態の良い時間帯を選ぶことです。本計測前に短い確認計測を行えば、広範囲を取得する前に条件の良否を判断しやすくなります。

第二の対策は、粉じん源と気流を確認し、計測対象をどこから観測するかを考えることです。粉じんが多い帯へ必要以上に滞在せず、安全な範囲から必要な固定構造物を取得できる走査位置を選びます。

第三の対策は、機器のセンサー面を適切な状態に保つとともに、移動速度や向きを安定させることです。急激な移動や方向転換を減らし、周囲の固定形状を継続して観測しながら滑らかに進みます。長時間の計測を一回で行うのではなく、環境条件の変わり目でデータを区切ることも有効です。

第四の対策は、固定構造物をつなぐ計測ルートを組むことです。柱、壁、床、階段、開口部など、位置関係を判断しやすい対象を継続して観測します。重要箇所については必要に応じて異なる方向から確認し、一時的な点と固定形状を区別する材料を増やします。

第五の対策は、取得後に点群の連続性と再現性を確認することです。空間中の孤立点を機械的に削除するのではなく、固定構造物との関係、別方向からの観測、現場記録、取得時刻、工事進捗などを組み合わせて判断します。処理前データを保持し、必要な構造まで削除していないことを確認することも欠かせません。

粉じんの多い解体現場では、完全に理想的な状態を待ってから計測できるとは限りません。工事は進み続け、今日残っている壁や設備が次の工程では撤去されることもあります。そのため、「粉じんがなくなるまで待つ」のではなく、取得すべき現況が残っている時間の中から比較的条件の良いタイミングを選び、計測区画を適切に分けながら進めることが現実的です。

同時に、浮遊誤点が少ないことだけを成果品質の基準にしないことも重要です。点群がきれいでも位置や高さの確認が必要になる場合があります。反対に多少の不要点が含まれていても、利用目的に必要な固定構造物が明確に取得されていれば活用できるケースがあります。最終的には、どの対象を、何のために、どの程度の確かさで記録するのかを基準に判断します。

SLAM計測を解体現場で安定して活用するためには、計測時間、走査位置、機器状態、移動方法、ルート設計、点群確認を一つの工程として管理することが大切です。粉じんという環境条件を完全に排除できなくても、条件が変化した場所を把握し、問題区間だけを切り分けられる計測方法にしておけば、再計測や後処理の負担を抑えながら必要な三次元情報を残しやすくなります。

さらに、取得した三次元情報を現場の位置情報や記録業務と結び付け、計測後の確認や現地での位置把握まで一連の作業として扱いたい場合には、LRTK Phoneを活用する方法もあります。SLAM計測で得た現況情報と位置情報を現場業務へつなげ、記録から確認までを効率化したい場合は、LRTK Phoneの活用を検討してみてください。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

LRTK Phoneの使い方・実例を見る
資料請求導入相談
現場をスマホで3DスキャンLRTK Phone実例を見る

技術記事一覧へ戻る →