道路基盤地図情報の納品データを受け取ったとき、最初に必要になるのは「ファイルが開けるか」だけを見ることではありません。実務では、仕様書どおりの範囲が入っているか、座標や属性が整っているか、図形同士の関係に矛盾がないか、既存資料や現地状況と照合して後工程で使える状態になっているかまで確認する必要があります。
道路基盤地図情報は、道路工事完成時の道路形状をもとに道路構造を表現する二次元のGISデータとして扱われることが多く、道路台帳附図や測量成果、工事完成図、現地写真などと組み合わせて確認されます。ただし、すべての道路やすべての時点の現況が必ず含まれるとは限らず、対象範囲や作成時期、利用条件を確認しないまま使うと誤解につながります。
検収が甘いまま次の工程へ進むと、道路管理、道路台帳更新、占用協議、工事計画、維持管理、庁内共有などの段階で手戻りが発生しやすくなります。この記事では、道路基盤地図情報で検索している実務担当者に向けて、納品時に確認したいチェック項目を8つに整理して解説します。
納品データ検収が重要になる理由
道路基盤地図情報は、道路の形状や道路構造を地物ごとに整理し、道路管理や関連業務で参照しやすくするための基礎データとして使われます。道路台帳、工事完成図、維持管理の点検資料、占用協議、災害時の状況確認、庁内の地図共有などと組み合わせることで、道路空間を確認するための土台になります。
検収で特に注意したいのは、道路基盤地図情報が単なる背景地図ではないという点です。車道、歩道、道路縁、距離標、構造物、付属物など、仕様で定められた地物がレイヤや属性として整理されるため、表示画面上では問題なく見えても、座標系が違っていたり、属性名が仕様とずれていたり、図形の接続や重なりに不具合があったりすると、集計、検索、図面作成、他データとの重ね合わせで問題が出ます。
また、道路基盤地図情報は一度納品されて終わりではなく、更新しながら使い続けることが多いデータです。検収時にデータの作成条件や更新範囲が不明確なままだと、次回更新時にどこまでを差し替えるべきか判断しづらくなります。特に、過年度データ、工事完成図、測量成果、航空写真、現地確認結果などを複数組み合わせて整備している場合は、出典や作成時点の整理が不可欠です。
納品直後は、発注者も受注者も業務内容をよく覚えています。しかし、半年後、一年後に別の担当者が使うときには、作成の経緯が分からなくなっていることがあります。だからこそ、検収ではデータそのものだけでなく、仕様書、協議記録、作業報告、メタデータ、更新履歴、確認結果を一体で確認することが重要です。道路基盤地図情報の品質は、納品時の検収でかなり左右されます。
チェック項目1 納品範囲とファイル一式が仕様どおりか確認する
最初に確認すべきなのは、納品データの範囲と構成です。道路基盤地図情報の検収では、まず発注仕様書、特記仕様書、作業計画書、協議記録、変更指示、納品一覧を照合し、受け取ったファイルが契約上求めた内容を満たしているかを確認します。ここを飛ばして中身の確認から始めると、あとで一部区域が抜けていた、添付資料が不足していた、成果品の版が古かったといった問題に気づくことがあります。
納品範囲では、対象道路の路線、区間、行政区域、交差点周辺、道路改良済み区間、工事完了区間などが、仕様どおりに含まれているかを見ます。道路基盤地図情報は地図上で連続して見えるため、一見すると全体が整備済みに見えることがあります。しかし、実際には一部の支線、側道、歩道部、橋梁部、交差点内部、管理境界付近が対象外だったり、更新対象から外れていたりする場合があります。検収では、対象範囲を文章だけでなく地図上でも確認し、納品範囲の外縁が仕様と一致しているかを見ることが大切です。
ファイル一式の確認では、地物データ、属性データ、スタイル設定、位置合わせに必要な情報、作業報告、品質確認結果、更新履歴、データ定義書、凡例、図面出力用ファイルなどがそろっているかを確認します。納品形式が複数ある場合は、閲覧用、編集用、保管用、交換用のどれが正式成果なのかを明確にしておく必要があります。似た名前のファイルが複数あると、担当者が誤って作業途中版を正式成果として保管してしまうことがあります。
ファイル名やフォルダ構成も軽視できません。年度、業務名、路線名、区域名、作成日、版番号などが分かる命名になっていないと、将来の検索や引き継ぎで混乱します。たとえば「最新版」という名前だけでは、後で本当に最新なのか判断できません。検収時には、ファイル名と納品一覧を照合し、同一内容の重複、不要な中間ファイル、空フォルダ、古い版の混在がないかを確認します。
また、圧縮ファイルで納品された場合は、解凍後に文字化けや階層崩れが起きていないかも確認します。道路基盤地図情報では、ファイル同士が参照関係を持つことがあります。フォルダ名の変更や階層の崩れにより、関連ファイルが正しく読み込めなくなることもあります。検収では、受領直後の状態を保管しつつ、確認用の作業コピーを作成して開くのが安全です。
この段階で大切なのは、問題を「データ品質の問題」と「納品物不足の問題」に分けることです。ファイルが足りない、範囲が違う、版が不明という状態では、細かな品質確認をしても判断がぶれます。まず納品一式がそろっていることを確認し、そのうえで位置や属性の確認に進むのが、道路基盤地図情報の検収を効率よく進める基本です。
チェック項目2 座標系と位置精度の前提が明確か確認する
道路基盤地図情報を実務で使ううえで、座標系と位置精度の確認は非常に重要です。画面上で道路形状がそれらしく表示されても、座標系の設定が違っていると、測量成果、台帳図、航空写真、工事図面、現地で取得した写真位置や点群と重ねたときにずれが生じます。検収時には、データがどの座標参照系を前提として作成されているのか、どの単位で管理されているのか、座標系の設定ファイルや説明資料がそろっているのかを確認します。
特に注意したいのは、データファイルを開いたときに自動で表示できることと、正しい座標情報を持っていることは別だという点です。閲覧環境によっては、座標系が未設定でも仮の位置に表示されたり、別の座標系として解釈されても大きな違和感なく見えたりすることがあります。道路基盤地図情報を他の地理空間データと重ねる前に、座標系の記載、設定ファイル、データ定義書、作業報告の内容を照合する必要があります。
位置精度については、単に「高精度」と書かれているだけでは検収条件として不十分です。どの資料を基に作成したのか、現地測量を行ったのか、既存図面を変換したのか、航空写真や点群から判読したのかによって、期待できる精度は変わります。道路縁や道路構造物などの線形が、どの程度の位置精度で整備されているのか、仕様書で求めた基準と合っているかを確認します。
検収では、代表点を選んで既知点や既存の測量成果と比較する方法が有効です。交差点角、道路縁の折れ点、構造物の端部、管理境界付近など、位置の意味が比較的明確な点を選び、差がどの程度あるかを確認します。ただし、比較対象の資料にも誤差や作成年次の違いがあります。道路基盤地図情報の納品データだけを一方的に正誤判定するのではなく、比較対象の信頼性も合わせて見ます。
高さ情報を扱う場合は、道路基盤地図情報そのものの検収と、点群、縦断図、横断図、現地測量成果など関連資料の検収を分けて考えることが重要です。道路基盤地図情報は二次元データとして扱われることが多いため、標高や三次元形状を設計や数量計算に使う予定がある場合は、どのデータに高さの根拠があるのか、どの範囲で使用できるのかを確認する必要があります。標高値や点群を重ねて表示できるからといって、すべての地物が同じ精度で高さ管理されているとは限りません。
座標系と位置精度の確認は、検収後の活用範囲を決める意味も持ちます。道路基盤地図情報を庁内閲覧や台帳参照に使うのか、工事計画の下図として使うのか、現地での確認や施工管理に近い用途まで広げるのかによって、必要な精度は変わります。納品データに求める品質と実際の利用目的がずれていないかを確認しておくことで、後工程での過信や誤用を防げます。
チェック項目3 図形データの欠損や重複がないか確認する
道路基盤地図情報の検収では、図形データの欠損や重複を丁寧に確認する必要があります。道路形状は連続した線や面で構成されるため、一部の欠けや重なりがあっても、縮小表示では見逃されやすいものです。しかし、後で検索、集計、面積計算、延長計算、図面出力を行うと、不具合として表面化することがあります。
欠損の確認では、対象範囲内にあるべき道路縁、車道、歩道、交差点部、分離帯、橋梁部、道路付属物などが抜けていないかを見ます。特に、交差点、曲線部、道路改良区間、工事境界、行政界付近、橋梁と一般道路の接続部は欠損が起きやすい箇所です。道路基盤地図情報では、地物ごとのつながりが重要になるため、単に線や面が存在するかだけでなく、接続すべき箇所が仕様どおりに接続しているかを確認します。
重複の確認では、同じ位置に同じ種類の図形が二重に入っていないかを見ます。過年度データに新しいデータを重ねたとき、古い線を削除せずに新しい線を追加してしまうと、見た目では一本の線に見えても、内部的には二重の図形になっていることがあります。これにより延長や件数が過大に集計されたり、編集時に片方だけが移動して不整合が起きたりします。
線の途切れや微小な隙間も重要です。画面上ではつながっているように見えても、拡大すると端点がわずかに離れていることがあります。道路縁や区間管理用の線が途切れていると、区間単位の管理や検索で問題になります。また、線が交差しているのに節点が作られていない、面が閉じていない、不要な自己交差があるといった幾何的なエラーも検収対象になります。
面データでは、隙間、重なり、穴、外周のねじれ、極端に細い面、意図しない小さな面がないかを確認します。車道や歩道などの面が正しく閉じていない場合、面積計算や色分け表示に影響します。道路基盤地図情報を管理システムに取り込む場合、こうした図形エラーが取り込み失敗や表示崩れの原因になることもあります。
図形データの確認は、全範囲を目視するだけでは限界があります。代表的な箇所を拡大して確認する目視点検と、幾何チェック機能による機械的な点検を組み合わせるのが現実的です。ただし、自動チェックで検出されたエラーがすべて修正対象とは限りません。道路構造上、意図的に分割されている図形や、管理上必要な重なりが存在する場合もあります。重要なのは、エラー候補を仕様や業務目的に照らして判断し、修正すべきものと許容するものを記録に残すことです。
チェック項目4 属性項目と入力ルールがそろっているか確認する
道路基盤地図情報は、図形だけでなく属性情報とセットで価値を持ちます。線や面が正しい位置にあっても、路線名、管理区分、地物種別、幅員、構造、更新日、出典、確認状況などの属性が不足していると、検索や集計、台帳連携に使いにくくなります。検収では、属性項目が仕様どおりに用意されているか、入力値がルールに沿っているか、空欄や表記ゆれがないかを確認します。
まず確認したいのは、属性項目名とデータ定義です。仕様書で求めた項目がすべて含まれているか、項目名が勝手に変更されていないか、文字型、数値型、日付型などの扱いが適切かを見ます。たとえば、幅員や延長のような数値項目が文字列として入っていると、後で集計や条件抽出を行う際に不便です。日付項目の表記が統一されていない場合も、更新管理で問題になります。
次に、入力ルールの統一を確認します。同じ意味の値が複数の表記で入力されていると、検索漏れや集計ミスにつながります。全角と半角、漢字とかな、略称と正式名称、空白の有無、単位の書き方などが混在していないかを見ます。道路基盤地図情報は長期的に更新されることが多いため、表記ゆれを放置すると、次回以降のデータ更新でさらに混乱が広がります。
空欄の扱いも重要です。未入力なのか、該当なしなのか、不明なのか、調査対象外なのかが区別されていないと、検収時にも後利用時にも判断できません。すべての空欄が問題とは限りませんが、空欄を許容する項目と必須入力の項目は明確にしておく必要があります。必須項目に空欄がある場合は、受注者に確認し、修正または理由の記録を求めるべきです。
属性と図形の対応も見ます。道路縁、車道、歩道、距離標、構造物など、地物ごとの属性が正しい図形に対応しているかを確認します。図形は正しくても、属性が別の地物のものになっている場合があります。複製、結合、変換、形式変換の過程で属性がずれることは珍しくありません。
さらに、コード値を使う場合は、コード表との整合性を確認します。管理区分や地物種別をコードで持つ場合、定義されていないコードが混ざっていないか、古いコード体系が残っていないか、コードと表示名が一致しているかを確認します。コード管理が不十分だと、システム取り込み時に分類が崩れたり、意図しない表示になったりします。
属性情報の検収は、地味ですが実務への影響が大きい部分です。道路基盤地図情報を単に見るだけなら図形の確認で済む場面もありますが、検索、集計、更新、台帳連携、庁内共有まで考えると、属性品質が使いやすさを左右します。納品時に属性ルールを整えておくことが、将来の維持管理コストを下げる近道になります。
チェック項目5 道路区域や道路縁などの整合性を確認する
道路基盤地図情報では、道路縁、車道、歩道、交差点部、構造物、付属物など、複数の地物が互いに関係しています。道路区域界や道路台帳附図を併用する業務では、道路基盤地図情報の地物と道路区域の境界線との関係も確認対象になります。検収では、それぞれの地物を単独で見るだけでなく、地物同士の位置関係や論理的な整合性を確認する必要があります。
道路区域界を扱う場合に注意したいのは、道路区域の境界線を土地境界や権利関係を示す線として扱わないことです。道路管理上の区域を確認するための線と、用地境界、筆界、所有権の境界は意味が異なります。道路基盤地図情報や関連する道路台帳資料を境界確認に使う場合は、利用目的を明確にし、必要に応じて用地図、境界確認資料、登記関係資料、測量成果などを別途確認します。
道路区域界と道路縁の関係では、道路縁が道路管理上の範囲と不自然に矛盾していないかを確認します。道路縁が区域外へ大きくはみ出していたり、古い線形と新しい線形が混在していたりすると、管理範囲の理解に影響します。特に、道路拡幅、交差点改良、歩道整備、側溝整備などが行われた区間では、旧形状と新形状が混在していないかを注意して見ます。
道路中心線や区間線を別データとして持つ場合は、道路基盤地図情報との関係も確認します。中心線が道路構造と大きくずれていないか、道路の連続性に沿っているか、交差点で不自然に途切れていないかを見ることで、路線延長や区間管理への影響を把握できます。道路台帳や点検記録と結び付ける場合、区間設定が不適切だと、記録の紐づけが難しくなります。
歩道や車道の区分を持つ場合は、道路構造として自然な配置になっているかを確認します。歩道が車道を不自然に横切っていないか、分離帯や植樹帯の位置関係が仕様に沿っているか、交差点部で面のつながりが破綻していないかを見ます。道路基盤地図情報は、細かな地物が多いほどデータ量が増え、変換や編集時の不整合も起きやすくなります。
橋梁、トンネル、踏切、地下道、横断歩道橋などの特殊な道路構造が含まれる場合は、一般部と同じ見方だけでは不十分です。上下方向の重なりや管理区分の違いがあるため、平面表示だけで判断すると矛盾に見えることがあります。検収時には、特殊構造物の扱いが仕様でどのように定義されているかを確認し、そのルールに従って表現されているかを見ます。
整合性確認で大切なのは、機械的な正しさだけでなく、道路として自然に読めるかを見ることです。道路基盤地図情報は、現実の道路空間を業務目的に合わせて抽象化したデータです。完全にすべてを表現するのではなく、利用目的に必要な形で整理されます。そのため、検収では「なぜこの表現になっているのか」を確認し、仕様、現地実態、利用目的の三つが矛盾していないかを見極めることが必要です。
チェック項目6 既存資料や現地情報との差分を確認する
道路基盤地図情報の納品データは、既存資料や現地情報と比較して検収することが重要です。データ単体で見れば整っていても、道路台帳、工事完成図、測量成果、航空写真、現地写真、点検記録などと照らしたときに差分が見つかることがあります。差分そのものが悪いわけではありませんが、その差分が正しい更新なのか、作業ミスなのか、資料の時点差なのかを判断する必要があります。
まず、比較対象となる既存資料の作成年月や基準を確認します。古い資料と最新の納品データを比べれば、道路改良や補修工事によって差が出るのは自然です。一方で、納品データが古い資料に基づいて作られている場合、現地の最新状況と合わない可能性があります。道路基盤地図情報の検収では、どちらが新しい情報なのかを整理しながら差分を見ることが欠かせません。
差分確認では、道路の線形、幅員、交差点形状、歩道の有無、道路付属物の位置、構造物の追加や撤去、管理境界付近の変化などを確認します。特に、近年工事が行われた区間や、維持補修が頻繁に行われる区間は重点的に見ます。工事完成図がある場合は、完成図と納品データの形状が対応しているか、完成図の内容が道路基盤地図情報に適切に反映されているかを確認します。
現地情報との照合では、写真や簡易な現地確認が役立ちます。全範囲を詳細に現地確認するのは現実的でない場合でも、代表箇所や疑義箇所を選んで確認することで、データの信頼性を判断しやすくなります。たとえば、道路縁の位置が既存資料と大きく違う箇所、交差点形状が変わっている箇所、属性が未入力の箇所、図形の線が不自然な箇所などは、現地写真や現地測位で確認すると判断しやすくなります。
差分を見つけたときは、すぐに誤りと決めつけるのではなく、原因を分類します。現地が変わったために納品データが正しい場合もあります。既存資料が古いために差が出ている場合もあります。逆に、納品データの変換ミス、判読ミス、入力漏れ、座標系のずれが原因の場合もあります。検収記録には、差分の場所、内容、確認資料、判断結果、修正要否を残しておくと、受注者との確認がスムーズになります。
既存資料との差分確認は、道路基盤地図情報の品質だけでなく、庁内にある資料の状態を見直す機会にもなります。道路台帳と現地が合っていない、工事完成図が反映されていない、過年度成果の版管理が曖昧になっているといった課題が見つかることもあります。納品データの検収を単なる受領確認で終わらせず、既存情報を整理するきっかけにすることで、道路管理全体の精度を高めることができます。
チェック項目7 メタデータと更新履歴が残っているか確認する
道路基盤地図情報を継続的に使うためには、メタデータと更新履歴の確認が欠かせません。メタデータとは、データそのものを説明する情報です。作成者、作成日、対象範囲、使用資料、座標系、作成方法、精度の考え方、更新内容、制約事項などが整理されていれば、後からデータの意味を判断しやすくなります。逆に、メタデータが不足していると、見た目は整ったデータでも、どこまで信用してよいか分からなくなります。
検収時には、納品データに対応する説明資料があるかを確認します。道路基盤地図情報の各地物がどのように定義されているか、属性項目の意味は何か、空欄や不明値はどう扱うのか、どの資料を基に整備したのかが明記されていることが望ましいです。特に、複数の資料を組み合わせて作成した場合は、地物ごと、区域ごと、更新箇所ごとに出典が異なることがあります。その情報が残っていないと、将来の更新時に判断できません。
更新履歴では、どの範囲を新規作成したのか、どの範囲を修正したのか、どの地物を削除したのかを確認します。道路改良や工事完了に伴う更新では、旧データとの差分が重要です。変更前後の状態が分からないと、更新内容が妥当かどうかを検収しにくくなります。また、将来の問い合わせ対応で「いつ、なぜ、この形状になったのか」を説明できなくなるおそれがあります。
版管理も重要です。道路基盤地図情報の納品データには、初回納品、修正版、再修正版、最終版など複数の版が発生することがあります。検収では、どの版が正式成果なのかを明確にし、古い版と混在しないように整理します。修正依頼を出した後は、修正箇所だけでなく、修正していない箇所に意図しない変更が入っていないかも確認する必要があります。
制約事項の記録も見落とせません。たとえば、現地確認ができなかった箇所、資料が古い箇所、判読が難しかった箇所、今後の更新で再確認が必要な箇所などは、納品時に明示しておくべきです。これらを記録せずに正式成果として扱うと、利用者がデータの限界を知らずに判断してしまう可能性があります。道路基盤地図情報は、用途によって求められる確からしさが変わるため、制約を明確にすることは品質管理の一部です。
メタデータと更新履歴は、検収時には後回しにされがちです。しかし、長期運用では最も効いてくる部分でもあります。担当者が変わっても、年度が変わっても、データの意味と作成経緯が分かる状態にしておくことが、道路基盤地図情報を資産として活用するための条件です。
チェック項目8 後工程で利用できる形式になっているか確認する
最後に確認したいのは、納品データが後工程で問題なく利用できる形式になっているかです。道路基盤地図情報は、納品された時点で完結するものではなく、閲覧、編集、検索、共有、台帳連携、工事資料作成、現地確認、更新作業などに使われます。そのため、検収では「仕様どおり納品されたか」だけでなく、「実際に使えるか」を確認する必要があります。
まず、想定している閲覧環境や管理環境でデータを開けるかを確認します。ファイル自体が開けることはもちろん、文字化けがないか、地物の分類が正しく表示されるか、属性が欠けずに読めるか、座標が正しい位置に表示されるかを見ます。データ形式の変換を経て納品されている場合は、変換前後で図形や属性が失われていないかも確認します。
編集を行う予定がある場合は、編集しやすい構造になっているかも重要です。道路基盤地図情報では、地物が細かく分かれすぎていると編集が煩雑になります。一方で、大きな図形にまとめられすぎていると、区間ごとの更新が難しくなります。路線、区間、地物種別、更新単位に応じて適切に分割されているかを確認します。将来の部分更新を見据えるなら、どの単位で差し替えるのかも考えておく必要があります。
共有を前提とする場合は、閲覧用データと編集用データを分けることも検討します。編集用データには詳細な属性や作業情報が必要ですが、庁内共有や関係部署への提供では、必要な情報だけを整理した閲覧用データのほうが扱いやすい場合があります。検収時に、正式保管用、業務利用用、閲覧共有用の位置づけを明確にしておくと、誤ったファイルを配布するリスクを減らせます。
台帳や関連資料との連携を行う場合は、識別子の扱いを確認します。路線番号、区間番号、地物番号、管理番号などが安定していないと、外部の記録と紐づけることが難しくなります。図形を修正するたびに識別子が変わってしまうと、過去の点検記録や工事記録との関係が切れてしまいます。道路基盤地図情報を継続運用するなら、識別子の付与ルールと更新ルールを検収時に確認しておくことが重要です。
また、データ容量や表示速度も実務上の確認ポイントです。詳細すぎるデータは正確に見えても、日常業務で扱いにくい場合があります。閲覧や検索に時間がかかる、共有時にファイルが重すぎる、現地で扱いにくいといった問題があれば、利用目的に応じた軽量化や分割が必要になることがあります。ただし、軽量化によって必要な情報が失われては本末転倒です。原本を保管しつつ、用途別に派生データを作る考え方が安全です。
後工程での利用確認では、実際の業務を想定した簡単な操作を試すと効果的です。対象路線を検索する、特定の属性で抽出する、既存資料と重ねる、図面として出力する、現地確認用に表示する、更新箇所を切り出すといった操作を行い、問題がないかを見ます。道路基盤地図情報の検収は、納品物を受け取るための儀式ではなく、次の業務に安心して渡すための確認作業です。
検収後の活用を見据えたまとめ
道路基盤地図情報の納品データを検収するときは、ファイルがそろっているか、開けるか、見た目が整っているかだけでは不十分です。納品範囲、座標系、位置精度、図形品質、属性品質、地物間の整合性、既存資料との差分、メタデータ、更新履歴、後工程での利用性まで確認することで、初めて実務で使えるデータかどうかを判断できます。
検収の目的は、受注者のミスを探すことだけではありません。道路基盤地図情報を長く使える道路管理の基礎データとして整えることが本質です。納品時に確認した内容を記録し、修正経緯を残し、制約事項を明確にしておくことで、将来の更新や引き継ぎが楽になります。担当者が変わっても、どの資料を基に、どの範囲を、どの基準で整備したのかが分かる状態を作ることが大切です。
実務では、すべての項目を同じ深さで確認するのは難しい場合もあります。その場合は、利用目的に応じて重点を決めます。台帳更新に使うなら属性と識別子を重視し、工事計画に使うなら位置精度と既存資料との差分を重視し、庁内共有に使うなら表示や検索のしやすさを重視します。ただし、座標系、納品範囲、正式版の管理は、どの用途でも共通して外せない確認項目です。
道路基盤地図情報の品質を高めるには、机上での検収に加えて、現地での確認も重要になります。図面や既存資料だけでは判断しきれない道路縁、構造物、工事後の変化、点検対象の位置などは、現場で位置情報付きの記録を残すことで、検収や更新の根拠を強化できます。現地で取得した高精度な位置情報や写真を道路基盤地図情報と組み合わせれば、データの確認、修正、共有がより進めやすくなります。
道路基盤地図情報を単なる納品成果として終わらせず、現場とつながる実用的な管理データとして活かしたい場合は、スマートフォンを使って高精度な位置情報を取得し、現地確認や記録作成を効率化できる仕組みが役立ちます。納品データの検収後、現場での確認や更新作業まで見据えるなら、LRTK Phoneのような現地計測と位置情報記録を支援する選択肢も、道路基盤地図情報の活用範囲を広げる方法の一つとして検討しやすくなります。