NETIS活用の費用対効果を説明する前に整理すべき考え方
NETIS活用の費用対効果を説明するとき、最初に押さえたいのは、単に「新しい技術を使うと便利です」と伝えるだけでは、社内稟議や発注者への説明材料として十分ではないという点です。実務担当者が整理すべきなのは、従来手法と比べて何が変わり、どの作業が減り、どのリスクが下がり、その結果として現場全体にどのような効果が見込めるのかという差分です。
国土交通省は、NETISを新技術活用スキームの中核となる新技術情報提供システムとして位置づけています。新技術活用スキームでは、新技術情報の収集と共有、直轄工事等での活用、効果の検証・評価、さらなる改良や技術開発といった流れが体系化されています。一方で、NETISに掲載された情報は、その技術の証明や認証を意味するものではありません。申請情報は技術開発者からの申請に基づく情報であり、掲載された申請内容そのものを国土交通省が評価して保証しているわけではないため、登録の有無だけで個別現場の効果を断定しないことが重要です。([MLIT][1])
費用対効果という言葉は、購入費や利用費に対してどれだけ作業時間を削減できるか、という狭い意味で使われがちです。しかし、建設現場や測量、維持管理、施工記録の実務では、時間短縮以外にも、再測や再訪問の減少、帳票作成の効率化、記録整理の負担軽減、確認作業の削減、危険箇所での滞在時間の短縮、関係者間の情報共有の円滑化など、複数の要素が導入効果を構成します。
ここで注意したいのは、社内の投資判断で使う広い意味の費用対効果と、NETISの活用効果調査で用いられる評価の考え方を混同しないことです。NETISの活用効果調査では、経済性、工程、品質・出来形、安全性、施工性、環境の6項目で従来技術との比較を行う運用が示されています。また、令和7年度からの全国統一運用では、経済性はイニシャルコストを対象とし、ライフサイクルコストを経済性の評価に含めない考え方が示されています。社内稟議で複数年の投資回収や維持管理効果を検討すること自体は有効ですが、公式の活用効果調査へ記載するときは、最新の様式や記載要領に従って区別する必要があります。([CGR][2])
また、費用対効果を説明する相手によって、重視される観点は変わります。現場担当者にとっては日々の段取りや作業時間の短縮が重要であり、経営層や管理部門にとっては導入費用に対してどれだけ継続利用できるかが重要です。発注者への説明では、品質確保、施工性、安全性、適用条件、算定根拠など、工事との関係を分かりやすく示す必要があります。したがって、同じ技術でも説明先に応じて資料の見せ方を調整することが大切です。
この記事では、NETIS活用の費用対効果を説明するために、実務担当者が押さえておきたい6つの算定ポイントを整理します。特定製品の価格や一つの現場条件に依存せず、比較対象、費用項目、時間削減、品質・安全面の効果、現場条件によるばらつき、説明資料への落とし込み方を順に確認します。
算定ポイント1:比較対象となる従来手法を明確にする
費用対効果を算定するときに最も重要なのは、比較対象となる従来手法を明確にすることです。新技術を導入した効果は、単独の機能だけを見ても把握しにくく、これまでの方法と比べてどの負担が増減したかを整理することで見えやすくなります。従来手法が曖昧なままでは、導入効果も曖昧になり、説明資料の説得力が弱くなります。
たとえば、現場写真の整理を例にすると、従来は撮影後に事務所で写真を分類し、測点や施工箇所、撮影方向、日付、作業内容を確認していたとします。この作業にどの程度の時間がかかっていたのか、どの工程で確認漏れが起きやすかったのか、誰がどのタイミングで修正していたのかを整理しておくと、新技術導入後との差分が見えます。単に「写真管理が楽になる」と表現するよりも、「撮影時点で位置や施工箇所に関する情報を整理し、後工程の照合作業を減らせるかを検証する」という形にすると、算定の対象を明確にできます。
比較対象を明確にする際には、現場の作業を大きな単位だけで捉えず、工程を分解することが有効です。準備、現地作業、確認、記録整理、社内共有、発注者提出、修正対応というように分けると、どの工程で効果が出ているのかを追いやすくなります。NETIS活用に伴う効果を検証するときも、現地作業だけでなく、事務作業や確認作業まで含めて実態を把握しておくと、導入前後を比較しやすくなります。
また、従来手法の算定では、理想的な最短時間ではなく、実際の運用に近い代表値を基準にすることが大切です。熟練者が担当した最短時間だけを基準にすると、新技術の効果を過小評価する可能性があります。一方で、不慣れな担当者の極端に長い作業時間だけを基準にすると、効果を大きく見せすぎるおそれがあります。複数現場や複数担当者の実績がある場合は、中央値や平均値、代表的な作業条件を整理し、算定条件を明記しておくと説明しやすくなります。
比較対象には、時間だけでなく、作業人数、確認回数、移動回数、再訪問の有無も含めると実態が見えやすくなります。たとえば、現場確認のために複数人で移動していた作業の一部を事務所から確認できるようになった場合は、現場滞在時間だけでなく移動時間や待機時間も変化します。ただし、現地確認が法令、仕様書、監督職員との取り決めなどで必要な場合は、技術導入によって省略できると一律に考えてはいけません。削減できる作業と、引き続き必要な作業を分けて算定することが重要です。
NETIS活用の費用対効果を説明する第一歩は、新技術の機能を並べることではなく、従来手法の負担を具体的に言語化することです。比較対象が明確であれば、導入後の差分を自然に説明できます。逆に、従来手法が曖昧なままでは、導入効果の数字だけを示しても、その根拠を説明しにくくなります。
算定ポイント2:導入時に発生する費用を漏れなく整理する
費用対効果を説明するうえで、費用側の整理は欠かせません。ただし、ここで重要なのは、特定の価格を示すことではなく、どのような費用項目が発生する可能性があるのかを漏れなく洗い出すことです。費用項目を整理しておけば、導入判断をする側は、初期負担と継続負担の違いを理解しやすくなります。また、効果側と対応させることで、どの費用がどの成果に結び付いているのかを説明できます。
導入時の費用には、機器やシステムの利用に直接関わる費用だけでなく、準備、教育、運用ルールの整備、データ管理、社内展開に関する負担も含めて検討します。たとえば、現場担当者が使い方を覚える時間、記録様式を統一する時間、既存の提出資料に合わせて出力方法を確認する時間などは、導入初期の実務負担になります。これらを無視すると、導入後に想定以上の準備が必要になり、費用対効果の見込みと実績がずれやすくなります。
一方で、導入初期にかかる負担と、継続運用で発生する負担は分けて考える必要があります。初回の設定や教育は一度だけ発生する要素が多い一方、定期的な点検、データ整理、アカウント管理、機器保管、運用ルールの更新などは継続的に発生する場合があります。社内の投資判断では、初期費用、年間費用、現場ごとの追加費用などに分けると、利用回数や横展開による違いを把握しやすくなります。
費用を整理するときは、直接費と間接的な業務負担を分けると実務に落とし込みやすくなります。直接費には、機器、利用環境、保守、付属品、通信、設置、設定などが考えられます。間接的な負担には、教育、操作確認、社内説明、運用マニュアル作成、現場ルールの変更、データ確認などがあります。実際に発生する項目は技術によって異なるため、製品仕様や契約条件、現場条件を確認したうえで算定する必要があります。
また、費用は増加要因だけではありません。新技術の導入によって、従来必要だった外注作業、移動、再測、資料修正、二重入力、紙資料の管理などの負担が減る場合があります。そのため、費用対効果の説明では、新たに発生する費用と、削減が見込まれる費用を分けて示すことが大切です。削減効果については、実績がない段階で確定値として扱わず、過去実績や試行結果に基づく想定値として示すと安全です。
ここで、NETISの公式な活用効果調査と社内の投資判断は分けて扱います。社内稟議では複数年の利用、横展開、維持管理上の効果などを含めて投資回収を検討できますが、NETISの活用効果調査における経済性は、現行の説明資料ではイニシャルコストを対象とする運用が示されています。公式様式を作成する場合は、社内ROIの計算をそのまま転記せず、最新の記載要領に合わせることが重要です。([CGR][2])
さらに、費用を説明する際には、現場単位で見るのか、部署単位で見るのか、会社全体で見るのかによって判断が変わる点にも注意が必要です。ある一つの現場だけでは効果が限定的でも、同種工事で横展開できれば、教育や運用ルール整備の負担を複数案件に分散できる場合があります。反対に、利用頻度が低い場合は、保管や教育の再実施などによって想定した効果が出にくいこともあります。どの利用範囲を前提にした算定なのかを明確にすることが大切です。
算定ポイント3:省力化できる作業時間を工程ごとに算定する
NETIS活用の費用対効果を説明する際、比較的分かりやすい効果が作業時間の変化です。しかし、作業時間を算定するときに現場作業だけを見ると、実際の変化を取りこぼすことがあります。新技術の導入は、現地作業の短縮だけでなく、事前準備、記録整理、確認、修正、報告といった後工程にも影響するため、工程ごとに分けて確認する必要があります。
まず確認したいのは、現地作業の時間です。測量、写真撮影、施工確認、出来形確認、位置確認、記録作成など、現場で行う作業のうち、どの部分が短縮される可能性があるのかを整理します。たとえば、従来は測点を確認してから撮影し、野帳にメモを残し、事務所で写真とメモを照合していた場合、新しい記録方法によって一部の照合作業が減るかもしれません。ただし、その効果は技術の機能、操作手順、現場条件によって異なるため、試行時の実測時間で確認することが重要です。
次に、事務作業の時間を見ます。現場で記録した情報を整理し、ファイル名を修正し、提出様式に合わせ、関係者へ共有する作業は、現場によって大きな負担になることがあります。複数の施工箇所や複数の担当者が関わる現場では、記録形式が揃っていないことで確認に時間がかかる場合もあります。新技術によって記録方法や位置情報の扱いを統一できれば、事務作業の省力化につながる可能性があります。
さらに、確認待ちや手戻りに関する時間も重要です。現場写真の撮り忘れ、撮影方向の不明確さ、測点情報の不足、施工箇所の取り違えなどがあると、担当者間で確認が発生し、場合によっては現地へ戻る必要があります。このような手戻りは、追加作業だけでなく工程調整にも影響します。省力化の算定では、通常作業の短縮時間と、手戻りが発生した場合の追加時間を分けて集計すると実態を把握しやすくなります。
作業時間を算定する際には、作業人数を掛け合わせた人時で見る方法も有効です。たとえば、一つの確認作業が30分短縮されても、三人が関わっていたのであれば、合計の人時では差が大きくなります。現場担当者、協力会社、管理者、事務担当者など、それぞれの作業がどう変わるかを整理すると、局所的な時間短縮だけでは見えない効果を把握できます。逆に、新技術の利用に補助者が必要になる場合や、導入初期に確認作業が増える場合は、その時間も含める必要があります。
省力化の説明では、短縮時間を過度に大きく見せないことが重要です。新技術は、現場条件、担当者の習熟度、通信環境、作業手順との相性などによって効果が変わります。導入初期には操作確認やルールづくりに時間がかかる場合もあります。そのため、初回利用時、標準運用時、習熟後というように段階を分けて記録すると、効果の変化を説明しやすくなります。
費用対効果の算定では、作業時間の削減を単純な数字として示すだけでなく、どの工程で、誰の作業が、どのような理由で変わったのかを説明することが大切です。工程ごとの作業時間を導入前後で同じ条件にそろえて記録すれば、現場担当者にも管理部門にも伝わりやすい資料になります。
算定ポイント4:品質・安全・手戻り削減の効果を数値化する
NETIS活用の効果は、作業時間の短縮だけではありません。品質の安定、安全性の向上、手戻りの削減も重要な評価対象です。ただし、これらは時間短縮に比べて単純な金額へ換算しにくいため、説明資料では曖昧な表現になりがちです。「品質が向上する」「安全性が高まる」と断定するのではなく、どの指標がどの程度変化したのかを記録することが大切です。
品質面では、記録漏れ、記載ミス、写真の取り違え、位置情報の不足、測点の誤認、施工箇所の確認不足などを指標にできます。従来手法でどのような不備が発生していたのか、どの工程で修正が必要になっていたのかを整理すると、新技術導入後に変化した品質上の負担を把握しやすくなります。写真と位置に関する情報を一緒に確認できる技術であれば、撮影箇所の特定に要する確認時間や、場所不明の写真件数などを比較項目にできます。
安全面では、危険箇所での滞在時間、確認のための再進入回数、高所や狭所での作業時間、交通規制内での作業時間などを指標にできます。新技術の活用によって現場への立入り回数や滞在時間が実際に減った場合は、その変化を安全面の説明材料にできます。ただし、必要な現地確認を省略してよいという意味ではありません。法令、施工計画、安全管理上必要な確認は維持したうえで、追加的な立入りや再確認をどこまで減らせたかを評価することが重要です。
手戻り削減は、費用対効果を説明するうえで特に整理しやすい要素です。手戻りは、発生してから対応するまでに複数の人が関わり、工程調整や資料修正が必要になる場合があります。たとえば、施工後に写真不足が判明した場合、現場確認、再撮影、関係者への連絡、資料差し替え、提出資料の再確認などが発生します。手戻り削減を算定するときは、発生件数だけでなく、一件あたりの対応時間と関係人数も記録すると実態に近づきます。
品質、安全、手戻りの効果を数値化する際には、発生件数、確認回数、再作業回数、差し戻し回数、再訪問回数、修正時間などを使うと実務に落とし込みやすくなります。すべてを金額換算する必要はありません。導入前後で同じ定義の指標を継続的に記録できれば、現場ごとの比較や次回の判断材料として使えます。
また、品質や安全の効果は、短期的な費用対効果だけでは測り切れない場合があります。記録が整理されていれば、後日の問い合わせ対応や維持管理資料として参照しやすくなる可能性があります。一方で、将来の維持管理コスト削減まで見込む場合は、根拠のない金額を置かず、実績がない段階では定性的な効果や参考値として扱うことが安全です。
費用対効果を説明する資料では、時間短縮の数値に加えて、品質不備、手戻り、安全上の追加作業などの変化を併記すると、多面的に効果を示せます。NETISの公式な活用効果調査を作成する場合は、指定された6項目の定義や従来技術との比較方法に従い、社内独自の指標とは区別して記載することが重要です。
算定ポイント5:現場条件による効果のばらつきを見込む
NETIS活用の費用対効果は、どの現場でも同じように出るわけではありません。施工規模、作業範囲、現場の広さ、通信環境、担当者の習熟度、発注者の提出様式、協力会社の体制、既存の記録方法などが異なれば、同じ技術でも効果の出方は変わります。そのため、費用対効果を説明する際には、効果が大きく出やすい条件と、効果が限定的になりやすい条件を分けて整理する必要があります。
効果が出やすい可能性があるのは、記録量が多く、確認作業が複雑で、後工程の整理に時間がかかっている現場です。たとえば、施工箇所が広範囲に分散している現場、撮影枚数が多い現場、複数の担当者が記録を行う現場、位置確認や出来形確認が頻繁に発生する現場では、記録方法の標準化や情報整理の効率化による差が現れやすい場合があります。反対に、作業範囲が小さく、記録量が少なく、従来手法でも負担が小さい現場では、導入負担に対して効果が小さく見えることがあります。
現場条件によるばらつきを見込むためには、最も効果が出た事例だけを基準にしないことが大切です。効果が出やすい現場、標準的な現場、効果が出にくい現場といった複数のケースを設定し、作業量や導入回数を変えて試算すると、説明に現実感が出ます。特に社内稟議では、どの種類の現場に展開できるのか、利用頻度がどの程度見込めるのかを示すことで、単発事例に依存しない判断がしやすくなります。
また、担当者の習熟度も重要な要素です。新技術は、使い始めた直後から最大の効果が出るとは限りません。操作方法を覚え、現場ごとの運用ルールが整い、記録の確認方法が定着してから効果が安定する場合があります。導入初期の教育時間や試行期間を考慮せずに効果だけを算定すると、実際の運用で負担感が出ることがあります。費用対効果の説明では、導入初期と定着後を分けて記録すると現実的です。
通信環境や現場環境も見逃せません。屋外、屋内、地下、山間部、構造物周辺、狭所、高所など、現場環境によって利用できる機能や取得品質が変わる技術があります。新技術の活用にあたっては、現場で必要な精度、記録項目、データの確認方法を事前に整理し、想定した条件で利用できるかを確認することが重要です。位置情報を利用する技術であれば、測位環境や補正情報の利用条件など、技術固有の制約も確認する必要があります。
費用対効果を説明する際には、効果のばらつきを隠すのではなく、あらかじめ前提条件として示すほうが信頼性は高まります。どの条件で効果が大きく、どの条件では限定的なのかを示すことで、導入判断をする側は実際の現場へ当てはめやすくなります。NETISに掲載された技術を使うこと自体を目的にするのではなく、現場課題に適合するかを確認し、適用条件を踏まえて算定することが重要です。
算定ポイント6:説明資料では投資回収だけでなく再現性を示す
費用対効果を説明する資料では、導入費用に対してどの程度の効果が見込めるかを示すことが重要です。しかし、社内向けの投資回収だけに偏ると、現場での実用性や横展開の条件が伝わりにくくなることがあります。継続的に導入するかを判断するためには、その効果が他の現場でも再現できるか、運用として継続できるか、担当者が変わっても同じ手順で使えるかを整理することが大切です。
再現性を説明するためには、効果が出た理由を分解する必要があります。たとえば、ある現場で作業時間が短縮された場合、その理由が担当者個人の工夫によるものなのか、技術の機能によるものなのか、運用ルールの整備によるものなのかを分けて考えます。担当者の経験に強く依存している場合、別の現場で同じ効果が出るとは限りません。一方で、記録様式の統一、撮影手順の標準化、データ管理ルールの共通化といった仕組みによる効果であれば、他現場でも再現しやすくなります。
説明資料では、導入効果を一度きりの成果として示すのではなく、継続利用した場合に何が変わるかも整理すると判断材料が増えます。初回導入では教育や設定に時間がかかっても、次回以降に同じ手順を使える場合は準備負担が減る可能性があります。複数現場で使うことで操作経験が蓄積され、社内ルールも整いやすくなります。ただし、こうした学習効果は自動的に生じるものではないため、教育方法や運用手順を標準化しておくことが必要です。
また、再現性を示すには、効果を測る指標をできるだけ固定しておくことが重要です。現場ごとに異なる指標で評価すると、比較が難しくなります。作業時間、確認回数、再訪問回数、写真整理時間、修正回数、提出資料の差し戻し件数など、継続して記録できる指標を決めておくと、導入効果を蓄積できます。これにより、次回の稟議や説明資料で、過去の実績を同じ尺度で比較しやすくなります。
説明資料では、効果を大きく見せることよりも、算定根拠を明確にすることが重要です。どの作業を対象にし、どの期間で測り、どの担当者の作業を含め、どの条件を除外したのかを示すことで、数字の意味が明確になります。費用対効果の説明は、数字の大きさだけで評価されるものではありません。現場で実際に使った条件が分かること、次の現場でも同じ方法で検証できることが重要です。
投資回収を扱う場合は、それが社内の経営判断のための指標なのか、NETISの公式な活用効果調査の記載なのかを明確に分けます。社内資料では、複数年の利用や横展開を含む投資回収を検討できますが、公式の活用効果調査では指定された評価項目や記載方法に従う必要があります。二つの目的を一つの数値へ混在させず、資料の用途ごとに算定方法を分けることが安全です。
NETIS活用の価値を考える際には、短期的な省力化に加えて、現場記録の標準化、品質管理の安定、説明資料作成の効率化、後日の確認のしやすさなど、運用改善につながる要素もあります。ただし、長期効果を金額換算する場合は、根拠となる実績や前提条件を明記し、確定的な効果として扱わないことが大切です。
費用対効果を説明資料に落とし込むときの注意点
NETIS活用の費用対効果を説明資料に落とし込む際には、読み手が判断しやすい構成にすることが重要です。技術の機能説明から始めるのではなく、現場課題、従来手法、導入後の変化、算定根拠、期待効果、適用条件という順で整理すると、流れが自然になります。特に社内稟議や発注者への説明では、技術そのものの新規性だけでなく、現場課題に対してどのように作用するのかを示す必要があります。
説明資料の冒頭では、まず現場で困っていることを明確にします。写真整理に時間がかかっている、施工箇所の確認に手間がかかっている、記録の抜け漏れが発生しやすい、危険箇所への再確認が必要になる、提出資料の修正が多いといった課題を具体的に整理します。そのうえで、従来手法ではどのような作業が必要で、新技術を活用するとどの部分が変わるのかを示します。この順序にすると、費用対効果の数字が単独で浮かず、現場課題と結び付いた説明になります。
算定根拠を書くときは、前提条件を省略しないことが大切です。対象とした工種、作業範囲、記録件数、作業人数、算定対象とした工程、導入初期か定着後かといった条件が分からないと、読み手は数字を判断できません。前提条件を明確にすることで、別の現場に適用する際にも補正しやすくなります。費用対効果の説明では、数字そのものだけでなく、数字を導いた条件と方法を残すことが重要です。
注意したいのは、効果を断定しすぎないことです。NETISに掲載された技術を活用したからといって、すべての現場で作業効率や品質、安全性が同じように改善するとは限りません。「必ず短縮できる」「必ず削減できる」と表現するのではなく、「当該条件では短縮が確認できた」「過去実績から削減が見込まれる」「試行結果では確認回数が減少した」といった、根拠と条件が分かる表現にすると安全です。
また、説明資料では、効果が出にくい条件や運用上の注意点も書いておくと信頼性が高まります。担当者教育が必要であること、現場ルールの統一が必要であること、記録項目を事前に決める必要があること、データ確認の担当を明確にする必要があることなどです。新技術の導入は、機器やシステムを使うだけで完結するとは限りません。運用設計まで含めて説明することで、現場での定着条件を判断しやすくなります。
費用対効果を示す資料では、定量効果と定性効果を分けて記載すると整理しやすくなります。定量効果は、作業時間、確認回数、再作業回数、整理時間など、数値で比較できるものです。定性効果は、記録の確認しやすさ、情報共有のしやすさ、担当者間の認識合わせなど、直接金額へ換算しにくいものです。定性効果を無理に金額換算せず、観察結果や利用者コメントとともに整理する方法も有効です。
公式のNETIS活用効果調査を作成する場合は、社内向けの費用対効果資料と同じ形式で済ませず、最新の指定様式と記載要領を確認する必要があります。NETISの活用効果調査では、従来技術との比較を前提に、経済性、工程、品質・出来形、安全性、施工性、環境の各項目を評価する考え方が示されています。([KKR Japan][3])
最後に、説明資料は一度作って終わりではなく、実際の現場で検証し、次回の算定に反映することが重要です。導入前の想定と導入後の実績を比較すれば、次の現場ではより現実に近い費用対効果を示せます。複数現場で同じ指標を記録すれば、効果が出やすい条件と出にくい条件も整理しやすくなります。
まとめ:費用対効果は現場記録と一体で説明する
NETIS活用の費用対効果を説明するためには、導入費用と削減効果を単純に比較するだけでは不十分です。従来手法を明確にし、導入時に発生する費用項目を整理し、省力化できる作業時間を工程ごとに算定し、品質・安全・手戻りの変化を記録し、現場条件によるばらつきを見込み、再現性のある説明資料に落とし込むことが重要です。これらを順に整理することで、感覚的な説明ではなく、実務に基づいた費用対効果を示しやすくなります。
特に大切なのは、費用対効果を現場記録と切り離して考えないことです。現場でどの作業にどれだけ時間がかかっていたのか、どのような確認作業が発生していたのか、どのような手戻りがあったのかを記録していなければ、導入効果を比較することは難しくなります。逆に、現場記録が整理されていれば、作業時間の変化だけでなく、品質管理や安全面の変化も説明しやすくなります。
NETIS活用を社内や発注者に説明する際には、新技術の機能だけを前面に出すのではなく、現場課題に対してどのような変化が確認できたのかを示すことが大切です。導入によって減った作業、変わった確認手順、記録品質の変化、追加作業や再訪問の変化を具体的に整理することで、費用対効果は伝わりやすくなります。導入前の想定、導入中の運用、導入後の検証を一つの流れとして管理することが、次回の判断精度を高めます。
なお、社内の投資回収や複数年の費用対効果を算定する資料と、NETISの公式な活用効果調査は目的と評価方法が異なります。社内資料では長期利用や横展開を含めて検討できますが、公式な活用効果調査では最新の様式と評価基準に従う必要があります。この区別を明確にしておくことで、制度上の評価と社内判断を混同せずに説明できます。
現場写真と位置情報を一体で扱いたい場合、LRTK Phoneには高精度位置情報付きの写真を保存し、写真と位置情報をクラウド上で確認できる測位写真機能があります。こうした機能を使う場合も、導入効果を事前に断定するのではなく、撮影後の整理時間、現場への再確認回数、記録の確認時間などを導入前後で記録し、自社の現場条件に即して効果を検証することが重要です。([Lefixea Irtk][4])