石礫の多い農地で除礫が必要になる理由
土地改良における除礫とは、農地の表面や作土層に含まれる石や礫を取り除き、耕起、播種、定植、管理、収穫などの農作業を行いやすい状態へ整える作業です。農林水産省の技術資料でも、除礫は作土内にある営農上支障となる石礫を減らす土層改良工法として整理されています。山間部の農地、河川沿いの農地、造成によって切土や盛土が行われた圃場では、土の中に大小さまざまな石礫が含まれていることがあります。
石礫が多い状態を放置すると、耕うん機械や作業機の刃が石に衝突し、摩耗や変形、破損が起こる可能性があります。石を避けながら作業しなければならないため、走行速度を落とす必要が生じ、同じ面積を耕す場合でも作業時間が長くなります。機械の振動が増えれば、作業者の負担も大きくなります。
播種や定植への影響も無視できません。表面に石礫が多い農地では、土を細かく均一に砕きにくく、播種床の高さや硬さにばらつきが生じます。種子を一定の深さに配置できず、発芽の時期や生育状態がそろいにくくなる場合があります。苗を植える際にも石が障害となり、根鉢を適切な深さへ収めにくくなることがあります。
根菜類では、根が石に当たって曲がったり分岐したりすることがあります。石礫が密集している層では、根が伸びられる空間そのものが少なくなるため、作物の形状や生育に影響する可能性があります。根菜類以外でも、作土層が浅くなれば根が十分に広がらず、乾燥や倒伏の影響を受けやすくなることがあります。
石礫が多い農地では、水分の動きが場所によって異なる場合があります。粗い礫が集中する部分では水が速く抜ける一方、細粒分の多い土が局所的に締まった部分では水が停滞することがあります。同じ圃場の中に乾きやすい場所と湿りやすい場所が混在すると、かん水や施肥の管理が難しくなります。
ただし、石礫をすべて取り除けばよいとは限りません。細かな礫まで完全に除こうとすると、良質な表土も一緒に持ち出されるおそれがあります。深く掘りすぎれば、下層にある粘性の高い土や有機物の少ない土が表面へ混ざり、作土の状態を悪化させる可能性があります。重機を何度も走行させることで、除礫前より土を締め固めてしまう場合もあります。農林水産省の資料でも、機械施工で完全に除礫することは難しく、造成やほ場整備では施工機械による締固めに留意する必要があるとされています。
土地改良で重要なのは、農作業の支障となる石礫を必要な範囲で取り除き、利用可能な表土をできるだけ残すことです。そのためには、対象とする石礫の大きさ、処理する深さ、施工範囲、施工後に必要な作土厚を事前に決める必要があります。
除礫の完成状態は、見た目だけでは判断できません。表面の石が少なくなっていても、通常の耕うん深さに多量の石礫が残っていれば、営農を始めた後に再び問題が起こります。一方、作物の根域や機械の作用深さより深い場所にある石まで無理に取り除くと、工事規模が必要以上に大きくなります。
除礫計画では、対象作物、使用する農業機械、想定する耕うん深さ、圃場の排水条件、土地の造成履歴などを整理し、実用上必要な改善水準を設定することが大切です。補助事業を利用する場合は、対象となる石礫の粒径、含有率、施工深さなどに事業ごとの要件が設けられていることがあるため、申請先の最新要綱を確認します。
除礫計画の前に確認する現地条件
除礫方法を選ぶ前には、農地内の石礫の状態を調査します。調査を十分に行わず、見えている石だけを基準に方法を決めると、施工開始後に想定外の石礫層が見つかり、機械や工程の変更が必要になることがあります。
最初に確認するのは石礫の大きさです。片手で持てる小石が中心なのか、複数人でなければ動かしにくい石が含まれているのか、機械で掘り出す必要のある転石があるのかによって、適した施工方法が変わります。
石の形状も確認します。丸みのある礫は比較的転がりやすい一方、角張った石や板状の石は作業機へ引っ掛かりやすく、回収機の内部で詰まりや損傷の原因になることがあります。割れやすい石が多い場合は、施工中に細かく砕け、回収対象の粒径が変化する可能性もあります。
次に、石礫が分布する深さを調べます。表面だけに露出しているのか、通常の耕うん深さまで混在しているのか、それより深い層に石礫が集中しているのかを把握します。圃場内の複数箇所で試掘し、深さごとの状態を比較することが有効です。
試掘位置は圃場中央だけに偏らせません。出入口、法尻、農道側、排水路側、切土部、盛土部なども確認します。造成農地では、同じ圃場内でも搬入土や元地盤の違いにより、石礫量が大きく異なることがあります。
地表に石が少なくても、薄い表土の下に礫質層が存在する場合があります。反対に、地表には石が多く見えても、過去の耕起によって集まった表面付近だけの問題であることもあります。この違いを把握せずに全面を深く掘削すると、必要以上に土壌を乱してしまいます。
土質と含水状態も重要です。湿った粘性土では石に土が付着しやすく、機械で回収した際に表土を一緒に持ち出しやすくなります。ふるい分けを行う場合は網面が詰まり、処理能力が低下することがあります。乾燥しすぎた土では粉じんが発生し、周辺農地や道路、住宅への影響が生じる可能性があります。
圃場の傾斜や凹凸も調べます。急な傾斜がある場所では、回収機の安定した走行が難しくなります。深いわだちや局所的な軟弱部があると、作業機の作用深さが一定にならず、石礫の回収量にばらつきが生じます。
暗渠排水、給水管、排水管、管理孔、境界杭などの位置も確認します。深耕や掘削を伴う方法では、地中設備を損傷する危険があります。既存図面がある場合も、現地で排水口や管理施設の位置を照合し、作業できる深さや進入禁止範囲を決めます。
さらに、機械の搬入経路、圃場内の旋回スペース、回収物の仮置き場所を確認します。高い処理能力を持つ機械でも、狭い農道を通れない場合や、圃場内で方向転換できない場合は使用できません。
回収した石礫をどこへ移動するかも施工前に決めておきます。仮置き場所が遠いと、回収作業より運搬作業に時間を取られます。石礫を集めても搬出できなければ、圃場内の動線を塞ぎ、後工程に影響します。
現地調査の結果は平面図や区画図に記録し、石礫が多い区域、大きな転石の位置、地中設備の周辺、軟弱部などを分けて整理します。圃場全体へ同じ方法を適用するのではなく、条件ごとに施工方法を変えることで、過剰な工事を避けやすくなります。
除礫方法1 手作業で表面の石礫を拾う
手作業による除礫は、圃場表面に露出した石を人が拾い、容器や運搬車両へ積み込む方法です。施工面積が小さい場合、石礫量が少ない場合、機械が進入しにくい場所では有効です。
この方法の利点は、回収対象を目で確認しながら選別できることです。農作業に支障となる大きな石だけを回収し、細かな礫や表土を圃場に残すことができます。境界杭、給水設備、排水口、畦畔などの近くでも、構造物を損傷する危険を抑えながら作業できます。
石礫が圃場全体ではなく、一部の区域に集中している場合にも適しています。農業機械が頻繁に旋回する出入口付近や、播種機が通る予定の部分など、必要な場所を優先して処理できます。
一方で、広い農地や石礫量の多い農地では作業時間が長くなります。腰を曲げる姿勢や重量物を持ち上げる作業が続くため、作業者への負担が大きくなります。足元の石で転倒したり、石同士に手を挟んだりする危険にも注意が必要です。
手作業を行う場合は、回収対象となる石の大きさを事前に統一します。基準が曖昧だと、作業者によって拾う石の範囲が異なり、仕上がりにばらつきが生じます。現地で見本となる石を示し、それ以上の大きさを回収するなど、判断しやすい基準を設けます。
集めた石を圃場内へ無計画に積み上げると、運搬車両が接近できず、積み替え作業が増えることがあります。一時集積場所は、農業機械や運搬車両の通行を妨げず、排水経路を塞がない場所に設定します。
表面の石を拾った後に浅く耕起すると、地中にあった石が新たに現れます。その石を再び拾う工程を行えば、表面除礫だけよりも作土層を改善できます。ただし、深く耕しすぎると大量の石が同時に出ることがあるため、段階的に作用深さを変えることが重要です。
手作業は、機械除礫の仕上げとしても利用できます。圃場中央は機械で処理し、機械が近づけない端部や設備周辺を手作業で補う方法です。施工範囲と石礫量が限定されている場合は、大型機械を搬入するより合理的な選択となります。
除礫方法2 レーキ作業で石礫を列状に集める
レーキ作業による除礫は、圃場表面や浅い層にある石礫をかき寄せ、列状または帯状に集める方法です。集めた石礫は、別の機械や人力で積み込みます。小石から中程度の石が広い範囲に散在している農地に向いています。
この方法では、石をその場で回収するのではなく、最初に集積しやすい状態へ整えます。圃場全体を歩いて一つずつ拾う場合と比べて、積み込み場所を限定できるため、後工程を効率化しやすくなります。
施工前には地表面の大きな凹凸を整えておきます。深いわだちや段差があると、作業機の高さが安定せず、石を十分に集められない場所と、土を過剰にかき取る場所が生じます。大きな転石がある場合は、先に別の方法で撤去します。
作業機の作用深さは、回収したい石礫の分布に合わせます。深く作用させすぎると、下層にある石を大量に掘り起こし、同時に表土も集めてしまいます。浅すぎると、わずかに埋まった石を取り逃します。最初に小さな区域で試験施工を行い、回収量や土の混入状態を確認します。
走行方向も重要です。圃場の長辺方向へ走行すると旋回回数を減らせますが、排水勾配や傾斜の向きによっては別方向が適する場合があります。複数方向へ作業すると回収率が高まることがありますが、走行回数が増えるため、土壌の締固めにも注意します。
石礫を集めた列は、排水溝や出入口を塞がない位置に形成します。集積したまま降雨を受けると、付着した土が固まり、石と土を分離しにくくなります。レーキ作業と積み込み作業をできるだけ連続して行う工程が望まれます。
湿った土では石礫と土が塊になり、十分に選別できないことがあります。乾燥した土では粉じんが発生しやすくなります。天気予報だけでなく、前日までの降雨量や圃場の乾き具合を確認し、適切な時期に施工します。
レーキ作業は、すべての細かな礫を取り除く方法ではありません。農業機械へ衝突する石や、播種床の形成を妨げる石を効率よく集めるための方法です。必要以上に深くかき起こさず、営農上必要な範囲を処理することが大切です。
除礫方法3 石礫回収機で連続的に回収する
石礫回収機による方法は、圃場を走行しながら土中や表面の石礫を拾い上げ、土を落として回収部へ集める方法です。一定規模以上の農地で、回収対象の石礫が広範囲に分布している場合に適しています。
石礫を集める工程と回収する工程を連続して行えるため、条件が合えば手作業より多くの面積を処理できます。圃場内へ長い石礫列を残さずに作業できるため、後続作業の動線も確保しやすくなります。
ただし、回収できる石の大きさや作用深さには機種ごとの限界があります。大きな転石や板状の石が多い場所では、作業部の停止や損傷につながる可能性があります。事前調査によって大きな石を確認し、必要に応じて先行撤去します。使用する機械の取扱説明書や施工条件を確認し、対象粒径、作用深さ、必要なトラクター出力などを満たすか判断します。
土壌の含水状態は処理能力に大きく影響します。湿った粘性土では、石に土が厚く付着し、分離部が詰まりやすくなります。回収物へ表土が多く混ざれば、運搬量が増え、圃場から失われる土量も大きくなります。
走行速度を上げすぎると、石を十分に拾えなかったり、作業機が地表面で跳ねたりする場合があります。低速にしすぎると施工期間が長くなり、同じ場所を何度も走行することで締固めが進む可能性があります。試験施工を行い、回収状態と表面の仕上がりを確認しながら速度を調整します。
回収部に石礫がたまると、機械全体の重量が増えます。軟弱な場所や降雨後の圃場では沈み込みやわだちが発生しやすくなるため、満載になる前に排出する方法も検討します。排出場所が遠いと作業の中断時間が増えるため、圃場近くに安全な仮置き場所を確保します。
機械による除礫後は、地表面に小さな凹凸や走行跡が残ることがあります。そのままでは水たまりや播種深さのばらつきにつながるため、必要に応じて整地します。ただし、整地のために重機を過度に走行させないよう、除礫と仕上げの動線を計画します。
一度の施工で石礫をすべて回収できるとは限りません。作用深さより下にある石は残り、後の耕起によって表面へ現れることがあります。将来の耕うん深さを考慮し、複数回に分けて処理するか、深耕と組み合わせるかを判断します。
除礫方法4 ふるい分けで土と石礫を分離する
ふるい分けによる除礫は、石礫を含む土を掘り取り、網状や格子状の装置を通して、利用する土と回収する石礫を分離する方法です。表面から石を拾うだけでは改善が難しく、作土層の中へ石礫が高密度に混在している場合に検討されます。
この方法は、対象となる土層を掘り取って処理するため、一定の深さまで石礫を減らしやすい点が特徴です。分離する粒径を調整し、営農上支障となる大きさの石を重点的に除去できます。
一方で、掘削、仮置き、ふるい分け、土の戻し、整地という複数の工程が必要です。施工範囲が広い場合は、土を置く場所、処理機械を設置する場所、回収した石礫を置く場所を確保しなければなりません。
ふるい目を細かくしすぎると処理速度が低下し、湿った土が詰まりやすくなります。土塊まで石礫側へ残り、利用可能な表土を多く失うこともあります。反対に、ふるい目が粗すぎると、農作業に支障となる石が土と一緒に戻ります。
適切な分離粒径は、対象作物や使用する農業機械によって異なります。細かな礫を完全に除くことを目標とするのではなく、耕うんや播種、収穫の妨げとなる大きさを基準に設定します。
掘削時には表土と下層土を不用意に混ぜないよう注意します。表土には有機物や作物生育に利用される細根が含まれ、下層土と混合すると、排水性、保水性、通気性などが変化する可能性があります。必要に応じて表土と下層土を分けて仮置きし、設計した層構成を踏まえて戻します。農林水産省の施工指針でも、客土前後の工程として表土はぎ、基盤整地、表土戻しなどを条件に応じて行う考え方が示されています。
ふるい分け後の土は、掘削と処理によってほぐれた状態になります。戻した直後は沈下しやすく、場所によって厚さや締まり方が異なると、不陸が発生することがあります。土を戻す厚さと機械の走行経路を管理し、施工後の沈下を見込んで仕上げます。
全面的なふるい分けは工事規模が大きくなりやすいため、石礫の多い区画だけを処理する方法も有効です。試験区を設け、処理能力、表土の回収率、仕上がり状態を確認してから本施工へ移行すると、過剰な施工を防ぎやすくなります。
除礫方法5 表土の入れ替えと客土を行う
石礫の割合が非常に高く、ふるい分けを行っても十分な土量を確保できない場合は、表土の入れ替えや客土を検討します。石礫を含む土層を一定の深さまで撤去し、農地利用に適した土を搬入して作土層を再構成する方法です。
この方法は、石を一つずつ取り除くのではなく、石礫の多い土層そのものを交換する考え方です。造成時に礫質土や岩砕が表面近くへ配置された圃場、土よりも石礫の割合が高い区域などで選択されます。
ただし、土を搬入すれば必ず良好な農地になるわけではありません。搬入土の粒度、粘性、透水性、保水性、有機物の状態などを確認する必要があります。既存土と性質が大きく異なる場合、両者の境界付近に水が滞留し、根が伸びにくくなることがあります。搬入元、過去の利用履歴、異物の混入、必要に応じた土壌分析の要否も確認し、事業仕様や自治体、土地所有者の基準に適合する土を使用します。
客土の厚さは、対象作物の根域と耕うん深さを踏まえて設定します。厚さが不足すると、耕起のたびに下層の石礫が表面へ混ざります。必要以上に厚くすると、圃場の高さや排水勾配が変わり、用水や排水施設との高さ関係に影響します。
既存の表土に利用価値がある場合は、すべてを搬出せず、石礫を分離した後に再利用する方法もあります。長期間耕作された表土を廃棄すると、有機物を含む土壌資源を失うことになります。利用可能な表土と石礫の多い下層を分けて扱うことが重要です。
客土後は圃場の標高が変化するため、周辺農道との段差、隣接地への雨水流出、用水の取り入れ、表面排水の方向を確認します。水田では均平性が営農に大きく影響し、畑地でも局所的なくぼみに水が集中する可能性があります。
土が湿った状態で重機を繰り返し走行すると、客土層の内部に締まった層ができる場合があります。表面が平らでも根の伸長や排水を妨げることがあるため、施工時の含水状態と走行回数を管理します。農林水産省の施工指針でも、客土工に先立つ事前排水、地耐力の確保、客入面の整地が必要とされています。
表土入れ替えでは、搬出土量と搬入土量の管理が重要です。計画面積に施工厚を掛けた数量だけでは、施工前の凹凸や土のほぐれ、施工後の沈下を十分に反映できない場合があります。施工前後の地形や仕上がり高さを確認しながら、過不足を調整します。
除礫方法6 深耕と段階除礫を組み合わせる
深耕と段階除礫を組み合わせる方法は、耕起する深さを段階的に増やし、その都度表面へ現れた石礫を回収する方法です。表面除礫を行っても、耕うんのたびに新しい石が出てくる農地に適しています。
最初に地表へ露出した大きな石を回収し、その後に浅く耕起します。新たに現れた石を回収した後、次の工程で少し深く耕起します。この作業を繰り返し、必要な作土深さまで石礫を減らします。
最初から深く耕すと、多量の石が一度に表面へ出て、回収作業が追いつかなくなることがあります。大きな石が作業機へ衝突し、損傷を招く可能性もあります。下層土が急に表面へ混ざり、土壌の性質が大きく変化することにも注意が必要です。
段階除礫では、各工程の耕起深さと回収量を記録します。深さを増しても大量の石が続けて出る場合は、深い位置まで礫質層が分布している可能性があります。一定の深さから回収量が減る場合は、目標とする作土層へ近づいているかを判断する材料になりますが、回収機の性能や土の含水状態でも数量は変わるため、試掘や施工後の耕起状態と合わせて確認します。
深耕前には、暗渠排水や埋設管の位置を必ず確認します。全面を同じ深さで耕せない場合は、地中設備周辺だけ浅く施工し、必要な箇所を手作業で仕上げます。
施工時の土壌水分も重要です。湿った土を深く耕すと、大きな土塊ができたり、作業機の通過部分が締まったりすることがあります。乾燥しすぎると作業抵抗と粉じんが増えるため、土が適度にほぐれる時期を選びます。
段階除礫は、一度の工事で完成させず、営農と並行しながら複数年に分けて行うこともできます。毎年の耕起前後に石礫を回収し、作業の支障を少しずつ減らしていく方法です。
無制限に深く掘り進めるのではなく、農業機械の作用深さや作物の根域を考慮して目標深さを決めます。深い場所の石まで除こうとすると、新たな石礫を掘り起こし続けることになり、工事規模が必要以上に拡大します。
除礫方法を選ぶための判断基準
除礫方法は、石の大きさだけで選ぶものではありません。石礫量、分布深さ、施工面積、土質、含水状態、圃場の傾斜、機械の搬入条件、施工期間などを総合的に判断します。
表面に少量の石が散在している場合は、手作業による回収が適しています。機械の搬入や広い仮置き場所が不要で、構造物周辺にも対応できます。
小石から中程度の石が広い範囲へ散在している場合は、レーキ作業で列状に集める方法が有効です。施工面積が広く、連続走行できる場合は石礫回収機を検討します。
作土層内に石礫が高密度で混在し、表面から回収する方法では改善が難しい場合は、ふるい分けが候補になります。石礫の割合が非常に高く、処理後に利用できる土が少ない場合は、表土入れ替えや客土を検討します。
耕起のたびに下層から石が現れる場合は、深耕と段階除礫を組み合わせます。大きな石だけ先行して掘り出し、その後にレーキや回収機で小さな石を処理するなど、複数の方法を組み合わせることも有効です。
方法を比較する際は、除礫作業だけの処理能力で判断しません。石礫の積み込み、仮置き、運搬、処理、仕上げ整地までを含めて工程を評価します。回収機の能力が高くても、運搬が追いつかなければ作業は中断します。
試験施工を行い、一定面積を処理するための時間、回収量、土の混入量、施工後の地表状態を確認すると、方法を選びやすくなります。圃場内で条件が異なる場合は、区画ごとに方法を変えることも重要です。
除礫工事で表土を失わないための注意点
除礫工事では、石だけでなく土も一緒に回収されます。石礫に多量の土が付着したまま搬出すると、良質な表土が圃場外へ失われ、施工後に客土が必要になることがあります。
特に湿った粘性土では石へ土が付着しやすいため、施工時期を調整します。回収した石を一時的に乾かし、付着土を落として圃場へ戻す方法もあります。ただし、雨水によって濁水が周辺へ流出しないよう、仮置き場所の排水管理が必要です。
ふるい分けでは、分離粒径を細かくしすぎないことが重要です。細かな礫まで除こうとすると、土塊や有機物を含む表土も回収側へ移りやすくなります。農作業に必要な水準を明確にし、それより小さな礫は残す判断も必要です。
施工前に表土厚、石礫の分布深さ、計画する処理深さを確認し、作業機の作用深さを計画値に合わせて管理します。表土より深い位置まで除礫する必要がある場合は、表土を先にはぎ取って分けて仮置きするなど、下層土との不用意な混合を避けます。表土を扱う工事では、はぎ取り、仮置き、表土戻しの数量と土質を確認し、設計した作土厚を確保することが重要です。
重機の走行による締固めにも注意します。除礫によって石が減っても、土壌が過度に締まれば根の伸長や排水性に影響します。運搬車両の通路を固定し、圃場全体を無秩序に走行しないようにします。
軟弱な状態では作業を中止し、土が適度に乾いてから再開する判断も必要です。工期を優先して湿った圃場へ機械を入れると、深いわだちや締固めが生じ、後の整地作業が増える可能性があります。
回収した石礫の仮置きと処理方法
除礫では、回収作業と同時に石礫の仮置きや処理を計画する必要があります。回収物を圃場内へ置いたままにすると、農業機械の走行や排水を妨げ、工事完了後も営農を開始できません。
仮置き場所は、運搬車両が安全に近づける場所へ設定します。圃場の出入口や排水溝の上、地盤が軟らかい場所は避けます。積み上げる高さが大きくなる場合は、崩落や転石が起こらないよう安定した形状にします。
回収した石礫には土、根、作物残さなどが混ざることがあります。再利用を検討する場合は、異物を分け、粒径や土の付着状態を確認します。農道や排水施設の材料として利用できる場合もありますが、用途に必要な粒度、強度、排水性などを確認し、施設管理者、土地所有者、発注者の承認や設計条件に従って判断します。
圃場の隅へ無計画に埋めると、後から沈下したり、耕作範囲へ再び石礫が現れたりする可能性があります。農地内で利用または保管する場合も、将来の営農や排水に影響しない位置と方法を選びます。農地の形質変更や盛土、埋立てに関して自治体の条例や許認可が関係する場合があるため、規模や場所に応じて事前に確認します。
自然由来の土砂や石礫は、廃棄物処理法上の廃棄物から除外される土砂として扱われる場合がありますが、コンクリート片、廃プラスチック、金属、汚泥などが混入している場合や、性状、排出経緯、処分方法によっては扱いが異なります。自己判断で圃場外へ捨てたり他所へ埋めたりせず、搬出先の受入条件と自治体、発注者、処理業者の確認を受けます。環境省の通知でも、土砂と建設廃棄物を区分し、混入物や性状に応じた適正処理を求めています。([環境省][1])
搬出する場合は、運搬車両へ土を付着させたまま道路へ出ないようにします。出入口付近の清掃方法や、運搬経路の安全を事前に確認します。石礫を過積載にすると、荷崩れや走行上の危険につながるため、車両の最大積載量を守り、積載状態を管理します。
除礫後の整地と排水管理
除礫後の農地は、石礫を取り除いた跡や機械の走行跡によって凹凸が生じることがあります。仕上げ整地を行い、農業機械が安定して走行できる地表面へ整えます。
ただし、表面を平らに見せるだけでは不十分です。局所的なくぼみが残ると、降雨後に水がたまり、作物の生育や機械作業に影響します。圃場全体の排水方向を確認し、排水溝や落水口へ水が流れる高さ関係を整えます。
除礫によって地表面の高さが下がることがあります。石礫と一緒に土を多く持ち出した区域では、周辺より低くなりやすいため、必要に応じて土を戻します。客土を行った区域では、反対に周辺より高くなり、雨水が隣接地へ流れる場合があります。
深耕や掘削を行った場所は、施工後に沈下することがあります。工事直後だけでなく、降雨後や一定期間経過後にも不陸を確認します。沈下を見込まずに最終高さを決めると、後からくぼみが発生する可能性があります。
除礫後に土を細かく砕きすぎると、強い雨で表土が流れやすくなることがあります。作付けまで長期間空く場合は、裸地の状態を放置せず、施工時期と営農計画を合わせることが大切です。必要に応じて被覆作物や表面保護などを検討します。
下層から石が再び現れる原因が表土流出である場合、除礫だけを繰り返しても改善しません。圃場外からの水の流入、農道からの土砂流入、法面の浸食なども確認し、必要に応じて周辺の排水対策を行います。
除礫工事の数量と進捗を管理する方法
除礫工事の進捗は、施工した面積だけでは正確に把握できません。同じ面積でも、石礫の量や大きさによって必要な作業時間が大きく異なるためです。
圃場を複数の区画へ分け、区画ごとに施工方法、作用深さ、施工日、作業時間、回収量を記録します。石礫の多い区域と少ない区域を分けて記録すれば、次の工程や別の圃場の計画にも活用できます。
回収量は重量、容積、運搬回数など、現場で継続して確認できる単位へ統一します。容積で管理する場合は、石礫の間にできる空隙や付着土の量によって見掛けの数量が変わることに注意します。重量と容積を相互換算する場合は、現場で測定した単位体積重量など、採用した換算根拠を記録します。
施工済み面積と完成面積も分けて管理します。石礫を列状に集めただけの区域、積み込みまで終わった区域、搬出と整地まで完了した区域では、進捗状態が異なります。除礫、積み込み、搬出、整地の各工程を区別して記録します。
施工前後の写真は、同じ位置と方向から撮影します。全景だけでなく、石礫の多い場所、試掘箇所、回収物、整地前後の状態も残します。掘削後に土を戻す工法では、完成後に見えなくなる深さや下層の状態も工程ごとに記録します。
施工区域を地図上で管理すると、未施工範囲や再施工が必要な範囲を把握しやすくなります。地中設備の周辺、大きな転石の位置、軟弱部、仮置き場所なども記録すれば、作業者間で情報を共有しやすくなります。
除礫後に再び石が現れた場合は、位置と耕起深さを記録します。以前の施工深さより下から出たのか、周辺から流入したのかを検討する資料になります。
数量管理は工事費の整理だけを目的とするものではありません。どの方法でどの程度の改善効果が得られたかを確認し、次回の除礫計画を合理化するためにも重要です。
まとめ
石礫の多い農地を改善する方法には、手作業による表面除礫、レーキ作業による集積、石礫回収機による連続回収、ふるい分け、表土入れ替えと客土、深耕と段階除礫があります。
表面に少量の石が散在する農地では、手作業が合理的です。広い範囲に小石や中程度の石が分布する場合は、レーキ作業や石礫回収機が候補になります。作土層全体へ石礫が混在する場合はふるい分け、石礫の割合が高く処理後に利用可能な土が不足する場合は表土入れ替えや客土を検討します。
耕うんのたびに石が出る農地では、深耕と回収を段階的に繰り返す方法が適しています。一つの方法だけに限定せず、大きな転石を先に撤去し、その後に機械で小さな石を回収し、端部を手作業で仕上げるなど、複数の方法を組み合わせることも有効です。
除礫で重要なのは、石を多く取り除くことだけではありません。利用可能な表土を残し、重機走行による締固めを防ぎ、施工後の排水と作土厚を確保する必要があります。回収した石礫の仮置き、再利用、搬出、処理まで含め、工事全体の流れを計画することが大切です。
施工前には、石礫の大きさ、分布深さ、土質、含水状態、地中設備、搬入経路を確認します。小規模な試験施工によって回収量や表土の混入量を把握すれば、過剰な工事を避けやすくなります。
施工後も、耕起によって現れた石の位置や量、沈下や排水の状態を継続して確認します。除礫を一度限りの作業と考えず、営農と合わせて段階的に農地を改善していく視点が必要です。
土地改良の施工範囲や石礫の発生位置、施工前後の状態を現場で分かりやすく残すには、位置情報付き写真や測位データを記録できるLRTK Phoneの活用も選択肢になります。記録方法や精度は、使用する端末、測位環境、補正情報の取得状況、運用手順によって異なるため、必要な成果仕様に合わせて確認します。