測量業務のデジタル化を進める際、「測量ソフトはIT導入補助金の対象になるのか」「2026年の新制度では何が変わったのか」と疑問を持つ企業は少なくありません。
測量会社や建設会社では、現場で取得した座標データの整理、測量成果の作成、3D点群の処理、土量計算、出来形管理など、多くの業務でソフトウェアが活用されています。こうした業務を効率化するために新しいシステムを導入する場合、国の補助金制度を利用できる可能性があります。
ただし、測量ソフトであれば何でも補助対象になるわけではありません。対象となる事業者の要件、ソフトウェアの登録状況、業務改善との関連性、対象経費の範囲、申請手続きなど、複数の条件を満たす必要があります。
さらに、2026年から従来のIT導入補助金は「デジタル化・AI導入補助金」へ名称が変更されました。AIを含むITツールの導入支援が明確化される一方、申請に必要な資料や事業計画の要件についても、2026年の公募要領に基づく確認が必要です。
この記事では、測量ソフトの導入を検討している企業の実務担当者に向けて、2026年の制度概要から補助対象を判断する5つの条件、測量業務における具体的な活用例、申請時の注意点まで詳しく解説します。
測量ソフトは2026年のIT導入補助金の対象になるのか
結論から言えば、測量ソフトは2026年のデジタル化・AI導入補助金の対象となる可能性があります。ただし、実際に申請できるかどうかは、導入するソフトウェアが制度上の要件を満たし、申請する年度のITツールとして登録されているかなどによって判断されます。
デジタル化・AI導入補助金は、中小企業や小規模事業者などが業務効率化や生産性向上を目的としてITツールを導入する取り組みを支援する制度です。
測量業務に特化したソフトウェアでも、所定の業務プロセスに対応し、必要な登録を受けていれば、申請対象となる余地があります。
例えば、測量データの整理から成果作成までを一元管理するシステム、現場の施工記録を共有するクラウド型ソフトウェア、測量成果の確認や業務管理を効率化するシステムなどが検討対象として考えられます。
一方、座標変換やファイル形式の変換だけを行う単独の補助ツール、測量機器に付属する簡易的なソフトウェア、特定の機器を操作するだけのプログラムなどについては、制度で定められた業務プロセスへの適合性を慎重に確認する必要があります。
重要なのは、測量用という分類やソフトウェアの機能だけでは補助対象と判断できないことです。
2026年の通常枠では、対象となるソフトウェアについて、所定の業務プロセスを少なくとも1種類備えることが求められています。汎用プロセスのみを保有するITツールは単独では交付申請できないため、登録されているプロセスの種類を確認する必要があります。
また、ソフトウェアが補助対象として登録されていても、申請企業が事業者要件を満たしていなければ利用できません。逆に、申請企業が対象となっていても、未登録のソフトウェアを任意に購入して補助金を申請することはできません。
そのため、測量ソフトの導入を検討する際は、製品の機能比較と並行して、制度上の登録状況を確認することが基本になります。
測量会社が補助金を活用する目的は、単に新しいソフトウェアを導入することではありません。現場作業の省力化、内業時間の削減、情報共有の迅速化、成果物の品質安定など、導入後にどのような改善を実現するかが重要です。
補助金の利用可否を確認すると同時に、自社の測量業務に本当に必要な機能を見極めることが、導入効果を高める第一歩になります。
2026年の新制度で変更された重要ポイント
2026年の制度を理解するうえで、まず押さえておきたいのが名称変更です。
従来のIT導入補助金は、令和7年度補正予算事業からデジタル化・AI導入補助金という名称になりました。これはAIを含むデジタル技術の導入を支援する方向性を明確にしたものですが、名称が変わったことで、従来は対象外だったすべてのソフトウェアが新たに対象となったわけではありません。
基本的な仕組みは引き続き、制度に登録されたIT導入支援事業者とITツールを通じて、中小企業等が生産性向上を目指すものです。
測量会社が一般的な業務効率化ソフトウェアの導入を検討する場合、まず確認したいのは通常枠です。この枠では、所定の条件を満たすソフトウェア購入費やクラウド利用料、導入関連費などが支援対象として設定されています。
2026年にはAIを利用するソフトウェアについても制度上の位置付けが明確にされています。ただし、AI機能が搭載されていることだけを理由に交付決定を受けられるわけではありません。
例えば、点群データの分類や図面情報の整理にAIを活用するソフトウェアであっても、制度に必要な登録を受けていなければ対象にはなりません。また、AIを搭載していない測量ソフトであっても、業務プロセスへの適合と登録要件を満たせば検討対象になります。
2026年の通常枠では、労働生産性の向上に関する事業計画や、申請内容に応じた賃上げ要件の確認も重要です。さらに、申請者の財務状況を確認する書類も必要となっており、従来の申請経験だけでは対応しきれない変更点があります。
特に、過去に補助金を利用した企業は注意が必要です。過去の交付決定状況によっては、追加の要件や制限が適用される場合があるため、2026年の公募要領で申請資格を確認する必要があります。
申請日程については、2026年3月30日から受付が開始されています。2026年10月24日時点で公表されている通常枠の第6次締切は、2026年10月30日17時です。交付決定は同年12月10日が予定されています。ただし、日程は変更される可能性があるため、申請時には最新の募集スケジュールを確認してください。
測量ソフトの導入では、現場で使い始めたい時期と交付決定の時期が合わないこともあります。補助金の利用を予定する場合は、ソフトウェアの選定だけでなく、申請準備や導入スケジュールも含めて計画することが大切です。
条件1:申請企業が補助対象事業者の要件を満たしていること
測量ソフトの導入で補助金を利用するためには、最初に申請企業が補助対象事業者に該当しているかを確認する必要があります。
2026年のデジタル化・AI導入補助金は、主に中小企業や小規模事業者などを対象としています。測量会社、建設会社、土木施工会社なども、所定の事業者要件を満たしていれば申請を検討できます。
ただし、測量業を営んでいるという理由だけで、自動的に対象になるわけではありません。
申請企業の資本金や従業員数、事業形態、事業実態などが確認対象になります。対象となる企業規模は業種区分によって異なるため、自社がどの区分に該当するかを確認することが重要です。
例えば、測量業務を中心とする会社と、土木工事を中心に請け負う建設会社では、制度上の業種区分を確認する際の判断材料が異なる場合があります。法人登記上の事業目的だけでなく、実際に行っている事業の内容も整理しておくと、申請時の確認を進めやすくなります。
個人事業主についても、制度の対象となる可能性があります。ただし、事業の実態や必要書類などについて、法人とは異なる確認が必要です。
また、申請企業には、日本国内で事業を営んでいることや、地域別最低賃金に関する条件など、制度が定める各種要件への適合も求められます。
従業員を雇用している測量会社では、申請前に労務管理の状況を確認しておくことも大切です。勤務形態が複数ある場合や、現場作業員と内業担当者で勤務条件が異なる場合には、賃金に関する情報を正確に把握しておく必要があります。
さらに、2026年の通常枠では、申請に必要な書類として財務状況を確認する資料が求められています。
法人の場合は直近の貸借対照表や損益計算書に加え、所定の登記事項証明書や納税証明書などを準備します。個人事業主の場合は、本人確認書類、確定申告関連書類、青色申告決算書または収支内訳書などが必要となります。提出書類の種類や対象期間については、申請時点の公募要領を確認してください。
測量会社の場合、決算書類を経理担当者や外部の会計担当者が管理していることもあります。補助金を担当する技術部門だけで準備を進めると、必要な書類が申請期限までにそろわない可能性があります。
そのため、導入を検討する初期段階から、経営者、経理担当者、現場責任者の間で情報を共有しておくことが望ましいでしょう。
過去に同種の補助金を利用した企業も、前回の申請内容をそのまま流用することは避けるべきです。過去の交付決定状況によっては、追加の確認事項や異なる事業計画要件が適用される場合があります。
申請企業の要件を早い段階で確認することで、ソフトウェアを選定した後に申請できないことが判明する事態を防ぎやすくなります。
条件2:測量ソフトが登録済みのITツールであること
測量ソフトの補助金利用で、特に重要なのがITツールの登録状況です。
デジタル化・AI導入補助金では、補助対象となるITツールは、IT導入支援事業者によって事前に登録され、事務局の承認を受けている必要があります。
つまり、測量ソフトとして広く使われている製品や、高度な機能を持つシステムであっても、制度に登録されていなければ補助金の対象として申請できません。
ここで注意したいのは、ソフトウェアの販売会社が「補助金の対象になる可能性があります」と案内していることと、実際に登録が完了していることは別だという点です。
製品紹介資料に補助金に関する記載があっても、2026年の制度に対応する登録が完了しているかどうかは、改めて確認する必要があります。
過去の年度に登録されていたソフトウェアについても、2026年の制度で利用できるとは限りません。制度は年度ごとに公募要領や登録情報が管理されるため、申請する年度における登録状況を確認することが基本です。
測量ソフトを探す際には、制度の公式サイトにあるITツール検索機能を利用し、対象となる製品や提供事業者の情報を確認します。
検索結果だけで判断しにくい場合は、提供事業者に対して、登録されているソフトウェアの名称、登録範囲、対象となる業務プロセス、利用できる申請枠などを確認するとよいでしょう。
測量分野では、ひとつのシステムに複数の機能が搭載されていることがあります。
例えば、測量データの読込、座標計算、3D点群の編集、数量算出、成果物の作成、クラウド共有などが、同じシステムで利用できる場合です。
しかし、システムに含まれる機能がすべて同じ条件で補助対象になるとは限りません。登録されているソフトウェア本体と追加機能が区別されていたり、契約内容によって対象範囲が変わったりする可能性があります。
そのため、実際に導入する機能構成と、制度に登録されているITツールの内容が一致しているかを確認する必要があります。
特に、測量機器とソフトウェアを一体で販売している製品では注意が必要です。
販売されている構成全体が補助対象なのか、ソフトウェア部分だけが対象なのか、追加サービスはどのように扱われるのかを明確にしておかなければなりません。
また、提供事業者が登録申請中の場合も、その時点では登録済みと判断できません。申請の受付期限までに必要な登録と承認が完了しているかを確認することが重要です。
測量ソフトの機能面で導入候補を絞り込んだら、契約を進める前に登録状況を確認し、制度上の対象範囲を提供事業者と共有しておきましょう。
条件3:対象業務と生産性向上の計画が制度に適合すること
2026年のデジタル化・AI導入補助金では、対象となるソフトウェアの登録だけでなく、導入によってどのような業務改善を実現するかも重要です。
特に通常枠では、制度で定められた業務プロセスに対応するITツールを導入し、労働生産性の向上につなげることが求められます。
ここでいう業務プロセスとは、ソフトウェアが持つ機能によって、特定の業務の効率化や労働生産性の向上が期待される業務区分を意味します。
2026年の通常枠では、顧客対応や販売支援、会計・財務・経営などの共通業務に加えて、その他の業種固有の業務プロセスも設定されています。
測量会社の場合は、専門的な測量業務を支援するソフトウェアが業種固有のプロセスに該当する可能性があります。ただし、該当するかどうかは、個別のITツールの登録内容に基づいて判断する必要があります。
例えば、従来は現場から持ち帰った測量データを担当者が個別に整理し、複数のソフトウェアを使って成果物を作成していたとします。
新しいシステムの導入によって、データの整理、計算、確認、成果作成までの作業を効率化できれば、内業時間の削減や入力ミスの低減につながる可能性があります。
また、複数の現場で取得した測量成果を一元管理できれば、担当者間でのデータ共有が容易になり、過去の成果を探す時間や資料の受け渡しにかかる手間を減らせる場合があります。
このような改善を計画に盛り込む際は、単に「作業が効率化される」と記載するだけでなく、現状の課題と導入後の変化を具体的に整理することが重要です。
例えば、測量成果を作成するために必要な作業時間、データの再入力回数、成果物の修正回数、現場と事務所の間で発生する確認作業などを把握しておくと、改善効果を説明しやすくなります。
仮に、ひとつの現場の測量成果を整理する作業に平均4時間かかっていた場合、導入後に3時間で完了できるようになれば、その工程では1件当たり1時間の作業時間削減になります。
月間の処理件数が多い会社ほど、こうした改善が業務全体に与える影響も大きくなります。
ただし、工程ごとの作業時間短縮率と、補助金制度で定める労働生産性の指標は同じものではありません。
2026年の通常枠では、営業利益、人件費、減価償却費、従業員数、年間の平均労働時間などを用いた労働生産性の指標が設定されています。企業全体としての生産性向上を説明する必要があるため、現場での作業効率だけでなく、事業全体への影響も考えることが大切です。
また、申請内容によっては、賃金引上げに関する事業計画や目標の達成が要件となる場合があります。実現可能性を十分に検討せず、形式的に高い数値目標を設定することは避けるべきです。
測量ソフトの導入効果を整理する際は、現場作業と内業を分けて考えると分かりやすくなります。
現場作業では、測量結果の記録時間、測り直しの発生状況、測量データの受け渡しなどが改善対象になります。
内業では、座標計算、データ整理、数量計算、成果物作成、提出資料の確認などが改善対象になります。
これらを一連の業務として捉え、ソフトウェアの導入によってどの工程が改善されるかを明確にすれば、実態に即した事業計画を作りやすくなります。
補助金の交付決定を得ることだけを目的とした計画ではなく、導入後も継続して活用できる業務改善計画にすることが重要です。
条件4:ソフトウェアと測量機器の対象経費を区別すること
測量ソフトの導入で補助金を活用する際には、どの経費が補助対象になるのかを正確に区別する必要があります。
2026年の通常枠では、所定のソフトウェア購入費、クラウド利用料、導入関連費などが補助対象として設定されています。クラウド利用料については、制度で認められた範囲内で最大2年分が対象となります。
また、ソフトウェアと組み合わせて導入する機能拡張、データ連携、セキュリティ対策、導入設定、研修、保守サポートなども、登録内容や条件によって対象となる場合があります。
一方、測量業務に使用するハードウェアは、ソフトウェアとは扱いが異なります。
例えば、衛星測位受信機、レーザー測量機器、測量用の専用端末、現場で使用する撮影機器などは、通常枠でソフトウェアと同じように補助対象になるものではありません。
測量ソフトと一緒に導入するからといって、測量機器の購入費まで自動的に対象になるわけではない点に注意が必要です。
2026年の制度には、一部のハードウェアを対象とする別の申請類型もあります。しかし、そこで対象となる機器は用途や組み合わせるソフトウェアなどに条件が設けられており、一般的な測量機器の購入を広く支援する制度ではありません。
そのため、測量機器とソフトウェアを組み合わせたシステムを導入する場合は、ソフトウェア部分と機器部分の経費を区分して確認する必要があります。
例えば、現場で取得した位置情報をクラウド上で整理し、測量成果や施工記録を管理する仕組みを導入するとします。
この場合、クラウド型ソフトウェアの利用に関する経費は、制度上の要件を満たせば対象として検討できる可能性があります。
しかし、現場で位置情報を取得するための測位機器や専用端末については、別途対象可否を判断しなければなりません。
また、導入に必要な教育や設定作業についても、すべてが無条件で対象になるわけではありません。
補助対象となるソフトウェアに関連する導入研修や設定作業であっても、登録された役務の範囲や申請条件に適合している必要があります。
既存のシステムから新しい測量ソフトへ移行する場合には、データ移行やシステム連携に関する作業も発生します。こうした作業についても、登録されたオプションや役務として認められているかを確認することが大切です。
実務上は、導入するシステムの構成を明確にし、補助金の対象として申請する部分と、それ以外の部分を区別できる状態にしておくと管理しやすくなります。
特に、測量ソフトの提供事業者から複数の機能やサービスを組み合わせた提案を受ける場合は、登録済みのITツールと対象経費の範囲を確認してください。
補助金を利用することを前提に不要な機能まで導入するのではなく、現場に必要な機能を選定し、制度上の対象範囲と照らし合わせることが重要です。
条件5:登録支援事業者との共同申請と導入時期を守ること
2026年のデジタル化・AI導入補助金では、申請する企業が単独で手続きを完結できるわけではありません。
通常枠では、制度に登録されたIT導入支援事業者と共同で申請を進める仕組みになっています。
IT導入支援事業者は、導入するITツールの選定や申請に必要な情報の整理、事業計画の作成支援、導入後の手続きなどを支援する役割を担います。
そのため、測量ソフトを選ぶ際には、ソフトウェアの機能だけでなく、提供事業者が2026年の制度に対応しているかを確認する必要があります。
販売会社がソフトウェアを取り扱っていても、その会社が登録済みのIT導入支援事業者であるとは限りません。
また、登録支援事業者であっても、申請したい測量ソフトがその事業者の登録ITツールとして利用できるかを確認する必要があります。
申請時には、企業の基本情報や必要書類に加えて、導入するITツールの情報、事業計画、数値目標などを整理します。
申請企業と支援事業者の間で役割分担を決め、どちらが何を準備するのかを明確にしておくことが重要です。
特に注意したいのが、ソフトウェアの発注や契約を行うタイミングです。
2026年の制度では、原則として交付決定を受けた後に対象ITツールの発注、契約、支払いなどを行う必要があります。
交付決定前に発注や契約、支払いを行った経費は、補助対象として認められないため注意が必要です。
ここでいう交付決定は、申請を受け付けたことや、支援事業者と申請内容について合意したこととは異なります。
申請を提出した段階では、まだ補助金の交付が認められたわけではありません。交付決定の通知を確認するまで、対象となる契約などを進めないことが重要です。
測量会社の場合、繁忙期や工期の都合によって、早急に新しいシステムを使い始めたい場面があります。
例えば、次の工事案件から新しい測量ソフトを利用したいと考えていても、補助金の審査に時間がかかる場合は、導入開始時期を調整しなければなりません。
また、申請の準備段階では、所定の電子申請用アカウントの取得や、情報セキュリティ対策に関する自己宣言なども必要になります。
2026年には情報セキュリティ対策の自己宣言に関する申請システムの変更もあるため、過去に取得した宣言用の識別情報をそのまま利用できるとは限りません。申請する募集回で有効な手続きを確認してください。
これらは手続きを始めてから完了するまでに一定の期間を要することがあるため、締切直前に準備を始めることは避けた方がよいでしょう。
交付決定後も、導入すれば手続きがすべて完了するわけではありません。
ソフトウェアの納品や利用開始、支払いなどを適切に行い、所定の期限までに事業実績報告を提出する必要があります。
さらに、導入後の生産性向上などについて、制度で定められた効果報告も求められます。
こうした手続きを考えると、測量ソフトの補助金申請は、導入前の準備から導入後の運用管理までを含む取り組みとして考えることが重要です。
測量業務別に考える補助金活用の可能性
測量ソフトと一口にいっても、その用途はさまざまです。
ここでは、測量会社や建設会社でよく発生する業務を取り上げ、どのようなソフトウェア導入が生産性向上につながる可能性があるのかを整理します。
なお、以下は業務改善の検討例であり、記載した種類のソフトウェアがすべて補助対象として登録されていることを意味するものではありません。
まず、測量成果の作成業務です。
現場で取得した観測データを整理し、座標計算や測量成果の作成を行う作業は、測量会社にとって重要な業務のひとつです。
従来の作業では、現場ごとに取得したデータを担当者が整理し、複数の形式に変換したうえで、成果物を作成する場合があります。
データ管理から成果作成までを支援するシステムを導入できれば、入力作業の重複や転記ミスを減らせる可能性があります。
次に、3D点群データの処理業務です。
3D点群は、地形や構造物の形状を多数の三次元座標として記録したデータです。造成工事、道路工事、構造物の現況把握など、さまざまな場面で活用されています。
しかし、点群データは情報量が多く、整理や不要点の除去、座標系の確認、設計データとの比較などに時間がかかる場合があります。
点群データの処理を効率化するソフトウェアを導入することで、内業負担の軽減が期待できます。
また、土量計算や出来形管理に関する業務も、デジタル化による改善が考えられる分野です。
従来は現場で複数の測点を計測し、その結果を事務所で整理して数量を算出していた場合でも、三次元データを活用できれば、対象範囲の形状をより詳細に把握しやすくなります。
ただし、土量や出来形の計算結果は、測定条件やデータ密度、座標精度、計算方法などの影響を受けます。ソフトウェアを導入するだけで、すべての計測や検査の精度が保証されるわけではありません。
現場の要求精度や適用する施工管理基準に応じて、測定方法と処理方法を適切に選ぶ必要があります。
さらに、施工記録の管理にも改善の余地があります。
建設現場では、測量結果だけでなく、作業状況を示す写真、位置情報、施工日、作業内容などの情報が必要になります。
これらが別々の場所で管理されていると、後から特定の記録を探す際に手間がかかります。
現場写真や位置情報、施工記録を一元管理できる仕組みを導入すれば、現場と事務所の間で情報を共有しやすくなります。
特に、複数の現場を並行して管理している会社では、データの保管方法を統一することが、確認作業の効率化につながります。
このように、測量業務にはソフトウェアによって改善を図れる工程が多数存在します。
ただし、補助金の対象となるかどうかは、個別のソフトウェアの登録内容や業務プロセスへの適合性によって決まります。
まずは改善したい業務を明確にし、その業務に対応した登録ITツールを探すという順番で検討することが重要です。
測量ソフト導入の申請準備から実績報告までの進め方
測量ソフトの導入で補助金を活用する場合は、申請に必要な書類を集める前に、社内の課題を整理することから始めると効率的です。
最初に、現在の測量業務の流れを確認します。
現場での測量作業、データの取り込み、計算処理、成果作成、社内確認、発注者への提出など、各工程でどのような作業が発生しているかを整理してください。
この段階では、特定のソフトウェアを導入することを前提にせず、時間がかかっている工程や、作業ミスが発生しやすい工程を把握することが大切です。
次に、改善したい業務の優先順位を決めます。
例えば、現場の計測作業そのものに時間がかかっているのか、それとも現場で取得したデータを事務所で整理する作業に負担が集中しているのかによって、必要なシステムは異なります。
内業の効率化が目的であれば、座標計算や成果作成を支援するソフトウェアが候補になります。
現場と事務所の情報共有が課題であれば、クラウド型の記録管理システムが適している可能性があります。
改善対象が決まったら、制度の公式検索機能を利用して、登録済みのITツールを確認します。
このとき、機能だけでなく、登録された業務プロセス、導入形態、提供事業者、運用サポートの内容なども確認することが重要です。
その後、IT導入支援事業者と相談しながら、導入するシステムの構成と事業計画を具体化します。
事業計画では、現状の作業時間や処理件数、改善後の目標などを整理します。
例えば、毎月一定数の測量成果を作成している会社であれば、成果作成にかかる平均時間を記録し、導入後にどの程度の作業削減を目指すかを検討できます。
ただし、目標は実態に基づいて設定する必要があります。
現場ごとの条件によって作業時間が大きく変わる場合は、単純な平均値だけではなく、案件の規模や作業内容による違いも考慮するとよいでしょう。
並行して、申請企業の要件確認と必要書類の準備を進めます。
電子申請に必要なアカウント、所定の情報セキュリティ対策に関する手続き、事業実態を確認できる書類、財務関係書類などを、余裕を持って準備することが重要です。
申請内容がまとまったら、IT導入支援事業者と共同で交付申請を行います。
申請後は事務局による審査が行われます。申請したこと自体は交付決定を意味しないため、結果が通知されるまで対象ITツールの発注や契約を進めないよう注意してください。
交付決定を受けた後は、定められた事業実施期間内にソフトウェアの導入を進めます。
導入時には、現場担当者が実際に操作できる状態を整えることが重要です。
例えば、操作研修を実施し、データの保存場所やファイル名の付け方、成果物の確認方法などについて社内ルールを設定します。
ソフトウェアを導入しても、担当者ごとに使い方が異なれば、期待した業務改善につながらないことがあります。
特に測量データは、座標系や基準点、標高の扱いを誤ると、その後の計算や成果物に影響する可能性があります。
新しいシステムの導入時には、既存の業務と結果を照合し、必要な精度や品質を確保できているかを確認することが望ましいでしょう。
導入完了後は、必要な証憑を整理して事業実績報告を行います。
発注や契約、納品、支払い、運用開始などを確認できる資料について、制度の指定に従って適切に保管する必要があります。
その後も、効果報告に備えて業務改善の実績を継続的に記録します。
導入前と導入後で作業時間や処理件数がどのように変化したかを把握しておけば、補助金に関する報告だけでなく、社内の業務改善にも活用できます。
測量ソフトの導入を一時的な設備更新として終わらせず、継続的な業務改善につなげることが大切です。
測量ソフトとIT導入補助金に関するよくある質問
測量ソフトの導入を検討している企業からは、制度の対象範囲や申請方法について、さまざまな疑問が寄せられます。
ここでは、特に確認しておきたいポイントを整理します。
「測量ソフトであれば、どの製品でも補助金を利用できますか」という疑問については、利用できるとは限りません。
制度上の対象となるには、所定の業務プロセスへの適合や事務局へのITツール登録などが必要です。
測量会社向けに開発されたソフトウェアであっても、未登録の製品は対象として申請できません。導入前に、2026年の制度で登録されているかを確認してください。
「3D点群を処理するソフトウェアも対象になりますか」という疑問については、個別の登録状況によって判断が分かれます。
点群処理ソフトウェアの中には、データの編集や変換を中心とするものもあれば、測量成果の管理や業務全体を支援する機能を備えたものもあります。
ただし、機能が豊富であることと、制度上の業務プロセスに適合していることは同じではありません。登録内容を確認し、申請できる範囲を判断する必要があります。
「クラウド型の測量ソフトでも補助金を申請できますか」という疑問については、登録済みで所定の要件を満たすクラウド型ソフトウェアであれば、通常枠で検討できる可能性があります。
2026年の通常枠では、クラウド利用料も一定の期間について補助対象経費として設定されています。
ただし、すでに契約しているサービスの継続利用分や、登録されていない機能などが、そのまま対象になるとは限りません。
新規導入なのか、既存契約の変更なのかによっても確認事項が異なるため、支援事業者と契約内容を整理してください。
「測量機器も一緒に導入できますか」という疑問については、ソフトウェアと機器を区別して考える必要があります。
通常枠はソフトウェアの導入を中心とする制度であり、測量機器の購入費が一般的に対象となるわけではありません。
機器とソフトウェアがセットになっている場合には、制度上の対象範囲と導入する構成を確認することが重要です。
「個人で測量業を営んでいても申請できますか」という疑問については、個人事業主も申請対象となる可能性があります。
ただし、事業実態を確認できることや、制度上の要件を満たしていることが必要です。確定申告に関する書類など、個人事業主に求められる資料も確認してください。
「AI機能が付いていない測量ソフトは対象外ですか」という疑問については、AI機能の有無だけで判断されるわけではありません。
2026年の制度ではAIを含むITツールの導入支援が明示されていますが、AI非搭載のソフトウェアも、所定の要件を満たせば対象として検討できます。
重要なのは、申請するソフトウェアが登録されていることと、制度で定められた条件を満たしていることです。
「すでに購入した測量ソフトについて、後から補助金を申請できますか」という疑問については、通常は対象になりません。
原則として、交付決定前に発注、契約、支払いなどを行った経費は補助対象にならないためです。
すでに利用を始めているソフトウェアについては、過去の支出を補助対象にできると考えず、新たな導入計画の対象範囲を支援事業者に確認してください。
「補助金を申請すれば必ず交付決定を受けられますか」という疑問については、交付決定が保証されるわけではありません。
事業者要件やITツール登録などの条件を満たしていても、申請内容の審査によって交付の可否が決まります。
そのため、補助金の交付を前提に、導入後の運用体制や社内計画を確定させることには注意が必要です。
「ほかの補助金と組み合わせることはできますか」という疑問については、対象経費の重複や各制度の併用制限を確認する必要があります。
同じ経費について、複数の公的補助制度から重複して支援を受けることが認められない場合があります。
測量機器の導入支援制度とソフトウェアの導入支援制度を別々に検討する場合でも、対象経費が重なっていないかを確認し、各制度の公募要領に従って判断してください。
まとめ:制度の対象確認と現場の業務改善を同時に進めよう
2026年から、従来のIT導入補助金はデジタル化・AI導入補助金へと名称が変更されました。
測量ソフトについても、所定の条件を満たす場合には、補助金を活用して導入できる可能性があります。
ただし、測量業務に使用するソフトウェアであれば何でも対象となるわけではありません。
申請する企業が対象事業者の要件を満たしていること、ソフトウェアが登録済みのITツールであること、業務プロセスや生産性向上の計画が適合すること、対象経費を正しく区分すること、登録支援事業者と適切な時期に共同申請することが重要です。
特に、測量機器とソフトウェアを組み合わせたシステムでは、ハードウェアとソフトウェアを混同しないよう注意する必要があります。
また、補助金を利用してソフトウェアを導入すること自体が、業務改善の最終目的ではありません。
現場で取得した測量データをどのように整理するか、成果作成にかかる時間をどのように減らすか、現場と事務所の間で情報をどのように共有するかといった課題を明確にすることで、導入効果を高めやすくなります。
測量業務のデジタル化を進める際には、測量計算や点群処理だけでなく、現場写真や位置情報、施工記録の管理もあわせて見直すと効果的です。
こうした現場情報のデジタル管理を検討する場合には、LRTK Phoneも選択肢のひとつになります。
LRTK Phoneは、現場での位置情報取得や位置情報付き写真の記録、施工状況の記録・共有などに活用できる自社プロダクトです。測量や施工管理に関する情報をデジタル化し、現場で取得したデータを後から確認しやすい形で管理する業務に役立ちます。
なお、LRTK Phoneの導入について補助金の活用を検討する場合も、製品名や機能だけで対象と判断することはできません。申請する年度の登録状況、導入する構成、対象経費、申請条件などを個別に確認する必要があります。
測量ソフトの導入を検討している企業は、2026年の制度要件を確認しながら、現場から内業までの業務フローを見直してみてください。補助金の対象確認と並行して、自社の業務に適したデジタル化を進めることが、長期的な生産性向上につながります。