河川予定地に関係する地籍調査で最初に整理すること
地籍調査の対象となる土地が河川予定地に含まれている場合は、通常の筆界調査に加えて、河川法上の指定、現在の河川区域、将来の河川工事、用地取得の進み具合、既設の河川管理施設を分けて整理する必要があります。これらは相互に関係しますが、同じ線を示す資料ではありません。
河川法上の河川予定地は、河川管理者が河川工事を施行するため必要があると認めるときに、その工事によって新たに河川区域内の土地となるべき土地を指定する制度です。指定は、工事の実施計画からみて施行が確実となった日以後に行い、指定、変更または廃止の際には公示することとされています。したがって、単に計画図に「河川事業予定地」「河川改修予定地」などと記載されているだけでは、河川法第五十六条に基づく正式な河川予定地であるとは限りません。([e-Gov Law Search][1])
最初に確認したいのは、対象地について法令上の指定が存在するのか、それとも事業説明用の計画範囲や用地取得予定範囲が示されているだけなのかという点です。正式な指定がある場合は公示の内容と関係図面を確認し、指定年月日、指定者、対象河川、対象区間、変更や廃止の有無を整理します。正式な指定を確認できない場合は、資料中の名称だけで河川予定地と断定せず、河川管理者または事業担当部署へ照会します。
河川予定地に指定されたことだけで、登記上の所有者、地番、地目、地積または筆界が直ちに変更されるわけではありません。また、将来の用地取得線が一筆の途中を通っていても、その計画線が現在の筆界になるわけではありません。指定区域、取得予定線、現在の筆界は別の情報として管理する必要があります。
地籍調査は、毎筆の土地について所有者、地番及び地目を調査し、境界及び地積を測量して、地図と簿冊を作成する調査です。河川予定地の指定線を調べることは重要ですが、指定線の確認だけで地籍調査上の境界調査が完了するものではありません。登記関係資料、地籍調査成果、既往の官民境界資料、現地の標識、関係者の確認などを総合して調査します。([e-Gov Law Search][2])
河川周辺では、河岸線、護岸の端、堤防の法肩や法尻、管理用通路の端、柵、側溝、水路などが境界のように見えることがあります。しかし、これらは現況地形または管理施設の位置であり、所有権の境界や筆界と一致するとは限りません。国土交通省の河川敷地境界確定手続でも、河川区域の境界と国有地の境界は必ずしも一致しないと明示されています。([CBR][3])
したがって、地籍調査の初期段階で、河川予定地線、現在の河川区域線、河川管理施設の位置、事業計画線、用地取得予定線、登記上の筆界候補線を別々に表示した照合図を作ると整理しやすくなります。線種や注記を変え、どの資料のどの時点の線であるかを明記しておくことが重要です。
対象地が河川予定地に関係すると分かったら、市町村などの地籍調査実施者だけでなく、対象河川の管理者、河川事業担当部署、用地担当部署にも早めに資料の有無を確認します。現地立会いの直前になって変更図面や過去の境界確認書が見つかると、土地所有者への説明や調査図の修正に時間を要します。資料の所在、閲覧条件、更新日、利用上の注意を先に整理しておくと、後の協議を進めやすくなります。
資料1 河川予定地の指定の公示と関係図面
最初に照合する資料は、河川予定地の指定、変更または廃止に関する公示と、その範囲を示す関係図面です。実務上の文書名は、告示、公告、公示文、縦覧図、区域図、位置図など管理者によって異なることがあります。法令上の根拠を確認する際は、文書名だけでなく、河川法第五十六条に基づく指定であることを本文や担当部署への照会で確かめます。
公示本文では、指定者、指定年月日、河川名、対象区間、指定内容、効力に関する記載を確認します。図面が別途縦覧されている場合は、本文と図面の図面番号、作成年月日、対象区間が対応しているかを確かめます。写しだけが残っている場合は、原本または現在の管理資料との対応も確認します。
関係図面は指定区域の全体像を示すために作成されたものであり、個々の筆界点を現地で復元するための測量成果とは限りません。小縮尺の位置図では、地番界、道路、水路、堤防、建物などが簡略化され、指定線の位置を細部まで読み取れないことがあります。指定図に描かれた線を、そのまま地籍調査上の筆界線として採用することは避けます。
対象地を特定するときは、現在の地番だけでなく、字名、旧地番、左右岸、近隣橋梁、距離標、堤防や樋門などの位置情報を併用します。指定後に分筆、合筆、換地、地番変更などが行われていると、指定当時の地番と現在の地番が一致しない場合があります。閉鎖登記記録、旧公図、分筆時の地積測量図などを用いて新旧地番の対応を整理します。
河川事業は長期間にわたることがあるため、当初指定だけでなく、変更または廃止の公示の有無を確認します。指定範囲の一部が変更されている場合や、河川工事の進捗に伴って現在の河川区域が別途定められている場合があります。古い資料だけを根拠に、現在も同じ範囲が有効であると断定しないことが大切です。
紙図面を複写、スキャンまたは画像化して重ね合わせる場合は、紙の伸縮、複写倍率、画像の傾き、局所的な変形を考慮します。一か所だけを基準に位置合わせすると、離れた場所でずれが拡大することがあります。複数の安定した地物や既知点を用いて確認し、座標のない図面は区域の概略確認用として扱います。
指定図に座標値がある場合でも、座標系、測地系、測量年度、使用基準点、点番号の定義を確認します。座標値が記載されているという理由だけで、現在の測量成果へ無条件に重ねることはできません。変換の要否や基準点の状態を確認したうえで使用します。
この資料から得られるのは、主として河川法上の指定の根拠と指定範囲です。照合図では、筆界候補線や用地取得予定線とは異なる線種で表示し、「河川予定地指定線」「公示図による概略線」など、精度と意味が分かる注記を付けます。
資料2 河川区域図・河川現況台帳・管理資料
二つ目に確認する資料は、現在の河川区域や河川管理施設を把握するための河川区域図、河川現況台帳、平面図、施設台帳、完成図その他の管理資料です。資料の名称や整備状況、閲覧範囲は河川管理者や河川の区分によって異なるため、対象区間を所管する窓口へ確認します。
同じ河川名でも、本川と支川、上流と下流、指定区間の内外などで管理者が異なる場合があります。また、近接する水路が普通河川、法定外公共物、農業用水路など別の管理体系に属することもあります。地図上の見た目や通称だけで担当部署を判断せず、河川名、左右岸、橋梁名、距離標、地番を組み合わせて対象区間を特定します。
河川区域図では、現在の河川区域と、必要に応じて河川保全区域など別の指定区域を確認します。河川予定地と現在の河川区域が隣接する場所、過去の予定地指定図と現在の区域図で線が重なって見える場所、工事完成後に管理範囲が変わった場所を抽出します。
河川現況台帳や施設台帳には、堤防、護岸、水門、樋門、排水施設、管理用通路、距離標などが記載されていることがあります。ただし、これらは河川管理の目的で作成された資料であり、土地の筆界や所有権界を直接示すものとは限りません。河川区域線が公図の線と重なって見えても、それだけで官民境界が確定していると判断しないようにします。
堤防の法尻、護岸の背面、管理用通路の端、柵の位置なども同様です。管理施設は施工条件や維持管理上の理由により、用地境界から離して設置されることがあります。構造物の端部を筆界候補として検討する場合は、完成図、用地図、境界確定図、座標成果などとの対応を確認します。
管理資料を入手したら、作成者、作成年月日、更新日、対象区間、図面番号、縮尺、座標系、測地系、基準点を記録します。河川工事の着手前、施工中、完成後で複数の平面図が存在する場合は、どの時点の状態を示すものかを区別します。
公開用の概略図と、管理者が保有する詳細な測量成果では利用目的が異なります。公開図だけで対象地周辺の位置を判断できない場合は、地籍調査の目的、必要な区間、希望する資料の種類を説明し、閲覧または提供が可能な範囲を確認します。内部資料が存在することを前提にせず、保有状況と利用条件を窓口で確かめる姿勢が必要です。
資料3 河川整備計画・事業計画・用地関係図
三つ目に照合する資料は、河川整備計画、事業説明図、設計平面図、用地平面図、丈量図、用地実測図、分筆計画図などです。これらを確認すると、対象地が河川予定地として扱われる背景、予定される河川工事、取得を予定する土地の範囲を把握しやすくなります。
河川事業には、河道の拡幅、堤防の新設や移設、放水路、遊水地、調節池、ダム、護岸、管理用通路などさまざまな形態があります。ただし、広域的な河川整備計画に示された整備区間と、個別土地の用地取得範囲は同じ精度で作成されているわけではありません。概略図は事業の方向性を理解する資料として使い、筆界点の位置決定には用いません。
対象地周辺で用地測量が実施されている場合は、用地平面図や用地実測図を確認します。図面には、既存筆界、取得予定線、残地、中心線、計画法線、施工区域、管理用通路、幅杭などが併記されている場合があります。凡例、点名、線種を確認し、意味の異なる線を区別します。
特に注意したいのは、用地取得予定線と現在の筆界の違いです。一筆の途中を取得予定線が横断している場合、その線は将来の分筆や取得を想定した計画線であり、未分筆の段階では現在の筆界ではありません。地籍調査の図面へ表示する場合は、「用地取得予定線」「分筆計画線」などと明記します。
河川工事の中心線、堤防法線、計画河岸線、施工区域線、管理境界線も目的が異なります。中心線から一定幅を機械的に用地境界と判断することは避け、用地設計や丈量図の根拠を確認します。地形、構造物、取付道路、残地利用などによって取得範囲が変わることがあります。
事業計画は、概略設計、予備設計、詳細設計、用地測量、施工、完成という段階で修正される可能性があります。複数年度の図面がある場合は、最新日付だけでなく、承認状況、図面の目的、変更履歴、現在も有効な計画かどうかを担当部署へ確認します。
すでに用地取得が進んでいる地域では、取得済みと未取得、分筆済みと未分筆、工事済みと未施工の土地が混在することがあります。登記上の所有者が河川管理者側へ移転していても、現地に境界標が残っているとは限りません。反対に、幅杭や工事杭が残っていても、その位置が登記へ反映された筆界であるとは限りません。
過去の用地立会いが行われている場合は、境界確認書、立会記録、座標成果、点の記、現地写真、分筆登記の有無を確認します。誰が、どの土地について、どの範囲を確認したのかを整理し、地籍調査に利用できる確定資料と、事業途中の参考資料を区別します。
資料4 登記事項証明書・地図・公図・地積測量図
四つ目に確認する資料は、登記事項証明書、不動産登記法第十四条の地図、地図に準ずる図面である公図、地積測量図、土地所在図などの登記関係資料です。河川予定地の指定範囲を確認する場合でも、一筆ごとの所在、地番、地目、地積、所有者、分筆や合筆の履歴は登記資料から整理します。
登記事項証明書では、現在の所有者だけでなく、河川事業に伴う分筆、所有権移転、地目変更などの時期を確認します。古い指定図に記載された地番が現在存在しない場合は、閉鎖登記記録や分筆履歴を追い、指定当時の筆が現在のどの筆に対応するかを整理します。
地図または公図では、対象筆と隣接筆、道路、水路、堤防敷、無地番の土地などの位置関係を確認します。ただし、地図と地図に準ずる図面では精度や法的位置付けが異なり、公図の精度も地域によって差があります。図面の種類を確認せず、すべてを同じ精度の座標図として扱うことは避けます。
河川沿いでは、旧河道、廃川敷、堤防敷、水路、細長い残地などが複雑に記載されることがあります。公図上の河川形状と現在の河岸線が異なる場合でも、現況に合わないという理由だけで公図上の筆界を誤りと断定することはできません。作成年代、分筆履歴、河川工事、災害復旧などを調べます。
地積測量図がある場合は、作成年月日、作成者、境界点、辺長、面積計算、引照点、座標値、測量の目的を確認します。座標値が記載されていても、座標系、測地系、使用した基準点、現存する引照点を確認しなければ、現在の測量成果へ正しく重ねられないことがあります。
古い地積測量図では、道路端、建物角、護岸、石積みなどからの距離で境界点を示している場合があります。河川工事によって基準物が撤去または改築されている場合は、その図面だけで位置を復元することが難しくなります。周辺筆の図面、既往測量成果、写真、工事前後の資料を組み合わせて検討します。
地積測量図と用地図、河川管理図を重ねて不一致が生じても、直ちに一方を誤りと判断しません。作成目的、作成時点、座標基準、分筆前後、紙図面の変形、設計変更などを確認します。複数の線の平均や中間を便宜的な筆界とする方法は避けます。
河岸の侵食や土砂堆積などで現況地形が変わった場合も、現況の変化だけを根拠に筆界位置が移動したと即断しないことが重要です。土地の法的状態には個別事情が関係するため、登記資料、既往成果、関係法令、所管部署の見解を踏まえて慎重に調査します。
資料5 地籍調査成果・官民境界資料・既往測量成果
五つ目に確認する資料は、過去の地籍調査成果、官民境界確認書、境界確定図、用地測量成果、筆界点座標、図根点成果、点の記、立会記録、現地写真などです。対象地域または隣接地域で既に調査や境界確認が実施されている場合、筆界候補を検討する重要な資料になります。
地籍調査が完了している地域では、地籍図と地籍簿だけでなく、筆界点番号、筆界点座標、図根点、精度区分、測量記録の有無を確認します。現地の標識が亡失していても、適切な座標成果と利用可能な基準点があれば、過去の筆界点位置を検討できる場合があります。
一方、地籍調査の作業中に作成された調査図、素図、筆界案と、認証など所定の手続を経た成果は区別する必要があります。調査途中の図面には、所有者確認が終わっていない線、関係機関との協議中の線、修正前の点番号が含まれる可能性があります。資料を受け取る際は、成果の状態、作成年月日、版、更新履歴を確認します。
河川との官民境界について過去に協議が行われている場合は、官民境界確認書、河川敷地境界確定書、境界確定図、立会者名簿、委任関係、境界標設置記録、現地写真などを確認します。署名や押印のある文書でも、対象地番、対象区間、添付図面、現地標識との対応が不明であれば、その効力や利用範囲を担当部署へ確認します。
古い境界図では、護岸角、道路端、石積み、建物角などから境界点までの距離が示されていることがあります。基準物が改築または撤去されている場合は、別の引照点や座標成果が残っていないかを調べます。図面に描かれた構造物が現在の構造物と同一であると推測だけで判断しないことが大切です。
用地測量成果では、既存筆界点、取得予定点、幅杭、中心杭、施工基準点、仮点などの点種を区別します。点番号だけでは意味が分からない場合は、点名一覧、成果表、凡例、点の記を確認します。用地幅杭や工事杭は筆界標と外観が似ていても、現在の筆界を示すとは限りません。
地籍調査成果と官民境界資料が一致しない場合は、新しい資料を機械的に優先するのではなく、各資料の作成目的、座標基準、立会者、対象範囲、登記への反映状況を確認します。地籍調査後の分筆や境界確認がある場合もあれば、古い官民境界資料の一部だけが地籍調査へ利用されている場合もあります。
根拠が不足し、関係者の確認や所定の調査でも境界を明らかにできないときは、実施者が作業規程や関係手続に従って取り扱います。担当者の推測で線を確定させず、未確認事項、追加照会事項、採用しなかった資料と理由を記録します。
5資料を照合する実務手順
五つの資料は、精度も目的も異なるため、一度に重ねて一致度だけを比較するのではなく、法的な指定、現在の管理、将来計画、登記関係、既往境界成果の順に整理すると分かりやすくなります。
最初に、河川予定地の指定の公示と関係図面を確認し、正式な指定の有無、指定年月日、対象区間、変更または廃止の有無を整理します。対象筆の全部が含まれるのか、一部が含まれるのかは、図面の精度に応じて概略または座標で区別して記録します。
次に、河川区域図や河川現況台帳などから、現在の河川区域と管理施設の位置を整理します。河川予定地線と現在の河川区域線が接する場所、管理施設が民有地側へ近接する場所、過去の図面と現在の管理図で形状が異なる場所を抽出します。
続いて、河川整備計画、設計図、用地関係図を確認し、計画河道、堤防法線、施工区域、用地取得予定線、分筆計画線を区別します。どの線が最新で、どの段階の設計に基づくかを記録します。
その後、登記事項証明書、地図、公図、地積測量図を用いて現在の筆構成を整理します。指定当時から分筆や合筆がある場合は、新旧地番対照を作成します。対象筆だけでなく、周辺の道路、水路、河川敷地、残地を含めて確認すると、図面間の対応を把握しやすくなります。
最後に、地籍調査成果、官民境界資料、既往測量成果を用いて筆界点の候補位置を検討します。座標を使用する場合は、座標系、測地系、基準点、成果の精度、点の状態を確認します。現地標識がある場合は、点番号と資料の対応を確認してから採用の可否を判断します。
デジタル上で重ね合わせるときは、各資料を、直接座標で照合できる成果、既知点による補正が必要な図面、区域の概略確認に限る図面に分類します。小縮尺の計画図を無理に変形して座標測量成果へ一致させると、見かけ上は重なっても根拠を失います。
ずれを評価するときは、距離だけでなく、方向、分布、局所性を確認します。図面全体がほぼ同じ方向へずれる場合は、座標系、測地系、原点、画像位置合わせの違いが考えられます。一部区間だけ形状が異なる場合は、設計変更、分筆、施工変更、地形変化などを検討します。
現地立会い前には、河川予定地線と筆界候補が近接する箇所、標識が亡失している箇所、取得予定線が一筆を横断する箇所、資料間で線が一致しない箇所を論点として整理します。候補線が複数ある場合は、無理に一本へまとめず、それぞれの根拠と未確認事項を示します。
現地立会いで確認する境界標と河川構造物
河川予定地周辺には、筆界杭、官民境界標、河川管理杭、用地幅杭、中心杭、工事杭、測量鋲、距離標などが設置されている場合があります。外観が似ていても用途が異なるため、発見した標識をすべて筆界標として扱うことはできません。
標識を確認するときは、刻印、文字、番号、材質、設置方向、周辺地物、既往成果との対応を記録します。杭が傾いている、浮いている、埋没している、周辺地盤が洗掘されている場合は、設置時の位置を保っているか慎重に判断します。
河川周辺では、増水、洗掘、土砂堆積、斜面崩壊、護岸工事、維持管理作業などにより標識が移動または亡失することがあります。発見位置だけを根拠に採用せず、座標成果、引照点、点の記、周辺点との辺長や方向を確認します。
現地では、堤防の法肩と法尻、護岸の端部、河岸線、管理用通路、柵、側溝、水路、樋門、水門なども記録します。ただし、これらは筆界そのものではなく、候補位置を検討するための現況情報です。構造物が境界に沿っているように見える場合でも、完成図や境界確定図との対応を確認します。
立会いでは、河川管理者が示す河川区域または管理上の位置、土地所有者が認識する利用の境、登記資料や既往成果から検討した筆界候補、河川予定地の指定線を言葉と図面で区別します。同じ「境界」という語が、区域界、所有権界、筆界、利用界を指して使われることがあるためです。
写真は、標識の刻印や状態が分かる近景と、橋梁、堤防、護岸、道路などとの位置関係が分かる遠景を撮影します。撮影方向、撮影位置、点番号、日時を関連付けて保存します。河川沿いは似た景観が連続するため、写真だけを独立して保存すると後日場所を特定しにくくなります。
河岸や護岸付近で作業する場合は、水位、天候、上流の降雨、足場、出水時の退避経路を確認します。管理区域への立入り、草木の除去、掘削、標識の設置などは、土地所有者の承諾に加え、河川管理者その他の管理者への確認が必要となる場合があります。安全と管理上の指示を優先します。
資料の線が一致しない場合の考え方
五つの資料を集めても、線が完全に一致するとは限りません。資料が一致しないことだけで、いずれかが直ちに誤りであると判断せず、作成目的、作成時期、精度、座標基準、変更履歴を整理します。
河川予定地の公示図は区域を示すことが主目的であり、筆界点を復元する測量図ではない場合があります。小縮尺図を地積測量図へ重ねると、線幅、図化、画像化の影響で無視できないずれが生じることがあります。ずれの大きさを一律に決めつけず、元図の縮尺と精度を確認します。
公図は位置関係を把握する重要な資料ですが、地域によって精度が異なります。公図の形へ合わせるために、座標に基づく測量成果を任意に変形させることは避けます。地図の種類、作成経緯、周辺の整合を確認します。
紙図面の伸縮、複写倍率、スキャン時の傾き、縦横比の変化もずれの原因になります。二点だけを合わせる補正では局所的な変形を評価できないため、複数点で残差を確認し、補正後の精度を記録します。
座標系や測地系の違いも確認します。古い成果と現在の成果では、測地系、平面直角座標系の系番号、任意座標、基準点が異なる場合があります。図面に座標値があるだけでは同一基準とは判断できません。
事業の設計変更も不一致の原因になります。初期計画線、詳細設計線、用地取得線、施工変更線、完成後の管理線は位置が異なる場合があります。図面名と日付だけでなく、承認状況と現在の有効性を担当部署へ確認します。
分筆や合筆がある場合は、古い指定図の筆界表示と現在の地図が一致しないことがあります。対象地番だけでなく周辺筆を含めて変遷を追い、旧地番と現地の対応を確認します。
河岸の侵食、堆積、災害復旧、護岸工事などで現地地形が変わっている場合もあります。ただし、現況地形の変化だけで筆界の位置を決めることはできません。過去の成果、登記経過、法的取扱いを含めて個別に検討します。
複数の候補線の中間を便宜的に採用することは避けます。不一致が解消できない場合は、どの資料同士が、どの区間で、どの方向へ、どの程度ずれているかを記録し、追加資料、照会先、未確認事項を整理します。
最終的に筆界を明らかにできない場合は、地籍調査実施者が関係法令と作業規程に従って取り扱います。根拠が不足した線を確定線と同じ表示にせず、候補、参考、計画、未確認などの注記を付けます。
河川予定地で注意したい行為制限と関係部署への確認
河川法第五十七条では、河川予定地において、土地の掘削、盛土、切土その他土地の形状を変更する行為や、工作物の新築または改築を行う場合、原則として河川管理者の許可が必要とされています。一方、河川法施行令第三十五条では、耕うんと、地表から深さ一・五メートル以内の土地の掘削または切土が同条の許可を要しない行為として定められています。([e-Gov Law Search][1])
ただし、政令上の適用除外に該当するかどうかは、実際の作業内容を確認して判断する必要があります。盛土、工作物の設置、掘削と工作物新築を組み合わせる作業などは別の検討が必要です。また、河川法第五十七条の許可が不要であっても、土地所有者の承諾、河川管理施設への立入り、他法令、自治体の管理規則、工事契約上の手続が不要になるとは限りません。
境界標を探すための掘削、見通し確保のための草木の除去、仮杭の設置、測量機器の据付けなどを予定するときは、作業位置、深さ、面積、設置物、期間、使用機械を整理し、必要に応じて河川管理者へ事前相談します。地籍調査担当者が許可の要否を独自に断定しないことが安全です。
河川予定地に含まれる土地が民有地であっても、所有者の承諾だけで法令上の制限を受けないとは限りません。反対に、指定された土地の通常利用がすべて禁止されると説明するのも正確ではありません。行為の種類と規模、指定範囲、既存施設との関係により取扱いが異なります。
河川予定地の指定と用地取得は別の手続です。指定されたことだけで直ちに所有権が移転したり、取得時期や補償内容が決まったりするわけではありません。土地所有者から事業時期、買収範囲、補償について質問を受けた場合は、地籍調査担当者が推測で回答せず、河川事業担当部署または用地担当部署へ案内します。
照会時には、地番、位置図、河川名、左右岸、近隣橋梁、作業位置、予定行為、掘削深さ、設置物、期間、現況写真を用意します。河川予定地、河川区域、河川保全区域、用地取得予定地が近接している場合は、どの区域のどの手続を確認しているのかを明確にします。
調査結果を記録するときのポイント
河川予定地に関する地籍調査では、最終的に採用した筆界だけでなく、どの資料をどのように確認し、どの線を採用しなかったかを記録することが重要です。将来、河川工事、用地取得、分筆、災害復旧が進んだ際に、調査時点の判断根拠を再確認できるようにします。
資料台帳には、資料名、法的または業務上の位置付け、作成者、作成年月日、取得日、図面番号、縮尺、座標系、測地系、基準点、更新履歴、閲覧元を記録します。同じ名称の図面が複数ある場合は、年度、版、承認状況を明確にします。
河川予定地については、指定の根拠、公示年月日、対象区間、指定図面、変更または廃止の有無を整理します。河川区域図や管理資料については、基準日、管理者、施工前後の別、区域線と施設線の別を記録します。
事業関係図では、計画線、設計線、用地取得予定線、施工区域線、完成後の管理線を区別します。凡例を保存し、地籍調査の照合に使った線と参考にとどめた線を明示します。
境界点については、点番号、座標、点種、標識の種類、残存状態、根拠資料、確認日、確認者、現地写真を関連付けます。同じ場所に複数業務の点番号がある場合は、地籍、用地、河川工事、基準点などの出典を区別します。
立会記録には、参加者、所属、代理権の確認状況、確認した区間、現地で示された位置、説明内容、合意できた事項、合意できなかった事項、追加照会事項を記載します。土地所有者と河川管理者の認識が異なる場合は、それぞれの説明と根拠を分けて記録します。
写真には、撮影地点、撮影方向、日時、点番号、周辺地物を記載します。標識の近景だけでなく、橋梁、護岸、堤防、道路、建物などを含む遠景を残します。
照合図では、確認済み筆界、筆界候補線、河川予定地指定線、現在の河川区域線、用地取得予定線、工事計画線を異なる線種で表現します。色だけに依存すると白黒印刷で判別しにくいため、実線、破線、一点鎖線、線幅、注記を組み合わせます。
未確認の線には、「参考」「計画」「候補」「公示図からの概略転記」「調査中」などの注記を付けます。確定した筆界と同じ線種にすると、後の利用者が誤認するおそれがあります。
新しい資料の発見や事業計画の変更に備え、元資料を残したまま版管理を行います。古い図面を上書きせず、更新日、変更箇所、変更理由、確認者を記録します。
まとめ
地籍調査の対象地が河川予定地に含まれる場合は、河川法上の指定、現在の河川区域、将来の事業計画、用地取得予定線、登記上の筆界、現地の河川構造物を分けて確認することが重要です。
照合する五つの資料は、河川予定地の指定の公示と関係図面、河川区域図や河川現況台帳などの管理資料、河川整備計画や用地関係図、登記事項証明書・地図・公図・地積測量図、地籍調査成果・官民境界資料・既往測量成果です。
指定図に描かれた線、現在の堤防や護岸、管理用の柵、用地幅杭が、そのまま現在の筆界を示すとは限りません。資料の作成目的、作成年月日、縮尺、座標系、基準点、変更履歴を確認し、異なる性質の線を別々に管理します。
資料間で線が一致しない場合は、中間線を便宜的に採用せず、図面の精度、座標基準、地番の変遷、設計変更、施工履歴、現況地形の変化を確認します。判断できない事項は未確認として記録し、地籍調査実施者、河川管理者、事業担当部署、用地担当部署で確認します。
河川予定地内の掘削、盛土、切土、工作物の新築または改築には河川法上の許可が関係することがあります。適用除外や他の手続もあるため、作業内容を具体化して所管窓口へ確認することが安全です。
現地で境界標や河川構造物の位置を記録する場合は、点番号、座標、写真、撮影方向、根拠図面を一体的に管理すると、帰所後の照合と関係者への説明を進めやすくなります。現場で位置情報付きの記録を行う手段としてLRTK Phoneを使用し、写真や座標、注記をLRTKクラウドで整理し、必要に応じて取得した点群と計画線や筆界候補線をLRTK点群CADで確認する方法もあります。ただし、河川周辺では樹木、堤防、橋梁などによる衛星測位の遮蔽が生じることがあるため、必要精度、測位状態、発注者の基準を確認し、既往成果や測量機器による検証と組み合わせて使用することが大切です。