試作開発の相談で防水設計を先に固める理由
屋外で使用する電子機器、産業用センサー、計測装置、携帯型端末などの試作開発では、防水性能の確保が重要な設計課題になります。内部の電子回路や電源部に水分が侵入すると、腐食、絶縁性能の低下、接触不良などが発生し、機器の動作や安全性に影響する可能性があるためです。
しかし、試作開発の相談時に「防水仕様にしたい」「雨にぬれても使える構造にしたい」と伝えるだけでは、必要な設計条件が十分に共有されない場合があります。防水性能は、シール材料を選定するだけで確保できるものではありません。筐体の合わせ面、シール溝、ねじの配置、ケーブル引出口、組立方法、使用環境など、複数の要素が相互に関係しています。
例えば、試作段階では水の侵入が確認されなかった筐体でも、量産時の成形収縮や部品公差によって合わせ面に隙間が生じ、防水性能が安定しなくなることがあります。また、常温で問題がなくても、高温や低温、温度変化の繰り返しによってシール材の状態や筐体の変形量が変わり、水の侵入につながる場合があります。
こうした問題を防ぐには、試作開発の初期段階から防水要求を具体化し、設計条件と評価方法を一体で検討することが大切です。
特に、開発を外部企業へ相談する場合、発注側が求める防水性能と、設計側が想定する試験条件に違いがあると、試作完成後に追加の設計変更が必要になることがあります。筐体の基本形状を決めた後では、シール溝や締結部の配置を変更するために、内部部品のレイアウトまで見直さなければならない可能性もあります。
そのため、試作開発の相談では、使用環境、侵入経路、材料、圧縮条件、部品公差、評価試験という6つの視点を確認しておくことが有効です。
本記事では、防水性能が求められる製品の試作開発を担当する設計者や開発管理者に向けて、シール設計で確認したい具体的なポイントと、外部の開発パートナーに相談する際の情報整理方法を解説します。
確認1:使用環境と必要な防水性能を明確にする
シール設計で最初に確認したいのは、製品がどのような環境で使用され、どの程度の水分にさらされるかという点です。
防水性能という言葉には、雨水への耐性、水しぶきへの耐性、一時的な水没への耐性など、異なる使用条件が含まれます。これらを区別せずに設計を進めると、必要以上に複雑な構造になったり、実際の使用環境に対して防水性能が不足したりする可能性があります。
例えば、屋外に設置する計測装置では、降雨だけでなく、風によって吹き付けられる雨水、筐体表面を流れる水、設置方向による水の滞留などを考慮する必要があります。
一方、作業者が携帯する機器では、雨天使用に加えて、ぬれた手による操作、地面への一時的な接触、清掃時の水分付着などが想定されます。設備内部に組み込む装置では、結露や洗浄作業による水分の影響が問題になる場合もあります。
これらの使用条件は、シール構造の選定に直接関係します。
試作開発を相談する段階では、通常使用時に想定される水の接触方法に加え、誤使用や保守作業時に発生し得る条件も整理しておくと、要求仕様を具体化しやすくなります。
防水等級を指定する場合には、等級の数値だけでなく、その等級が対象とする試験方法や条件を確認することが重要です。例えば、一定条件での水没に関する試験への適合が、強い噴流水に対する性能まで自動的に保証するわけではありません。
また、試験条件を満たしたとしても、実際の使用環境で発生するすべての水分負荷や経年変化に対して、防水性能が保証されるとは限りません。
そのため、「どの防水等級を目指すか」という情報だけでなく、「なぜその等級が必要なのか」「どのような水のかかり方を想定しているのか」を開発パートナーと共有することが大切です。
さらに、使用温度の範囲も初期段階で確認します。
樹脂製筐体と金属部品では、温度変化による寸法変化の傾向が異なります。温度によって合わせ面の状態が変化すると、シール材の圧縮量も変動する可能性があります。
屋外設置機器では、日射による温度上昇と夜間の冷却が繰り返されることがあります。内部空気の温度変化によって筐体内外に圧力差が生じる場合もあり、シール部や通気構造への影響を検討する必要があります。
ここで重要なのは、防水性能と結露対策を混同しないことです。
外部から液体の水が侵入していなくても、筐体内部の湿気が温度低下によって結露する場合があります。したがって、結露が問題となる製品では、液体の侵入防止に加えて、内部湿度、温度変化、通気や乾燥の方法などを別の設計課題として扱う必要があります。
試作開発の相談では、使用場所、設置方向、想定される水分負荷、使用温度、洗浄方法、要求寿命、保守頻度を具体的に説明することが、防水設計の出発点になります。
確認2:水の侵入経路とシール方式の適合性を確認する
必要な防水性能を明確にした後は、筐体のどこから水が侵入する可能性があるかを確認します。
防水設計では、筐体の外周合わせ面だけでなく、ねじ穴、コネクタ、ケーブル引出口、操作ボタン、表示窓、通気部など、外部と内部をつなぐ部分を確認する必要があります。
外周の合わせ面に十分なシールを設けても、別の貫通部から水が侵入すれば、製品全体として必要な防水性能を満たせません。
したがって、試作開発の相談では、筐体の断面や内部構造を確認しながら、水の侵入が想定される経路を洗い出すことが重要です。
代表的なシール方式には、弾性体のガスケットを合わせ面に配置する方法、環状のシール材を溝に収める方法、接着剤や封止材によって隙間を埋める方法などがあります。
それぞれの方式には適した用途と制約があり、すべての製品に共通する最適な方式があるわけではありません。
例えば、保守作業で筐体を繰り返し開閉する製品では、再組立時のシール状態を管理しやすい構造が求められます。開閉後にシール材を再使用できるか、交換が必要かについても、材料特性や使用条件に基づいて判断する必要があります。
一方、通常は開閉しない小型機器では、接着や封止によって水の侵入経路を減らす設計が検討される場合があります。ただし、接着方式では、接着面の清浄度、材料との相性、硬化条件、温度変化への追従性などが性能を左右します。
分解や修理が必要になった場合の対応も考慮しなければなりません。
環状のシール材を使用する場合には、シールを配置する位置と、外部から加わる水圧の方向を確認します。シールの位置が不適切だと、圧力によってシール材が移動したり、意図した接触状態を維持できなくなったりする可能性があります。
また、筐体の角部では、シール材が過度に伸ばされたり、折れ曲がったりしないように注意が必要です。
特に、角の小さい矩形形状に環状シールを配置する場合、溝の角部形状とシール材の変形状態を確認することが重要になります。
ケーブルやコネクタの周囲も見落としやすい箇所です。
ケーブル引出口では、ケーブル外径のばらつき、被覆材の硬さ、曲げによる荷重、引張力などがシール性能に影響する場合があります。ケーブル自体の構造によっては、外周を密封していても、内部の隙間を通じて水分が移動する可能性があるため、使用するケーブルの仕様まで確認する必要があります。
コネクタについても、接続された状態と未接続の状態で防水条件が異なる場合があります。保護キャップの有無や使用時の取り扱いを含めて要求条件を整理します。
さらに、密閉構造の製品では、温度変化による圧力差への対策が必要になることがあります。
通気部材を利用する設計では、気体の通過と液体の侵入抑制を両立できる条件を確認しなければなりません。通気部材にも水圧や使用環境に関する適用限界があるため、採用するだけであらゆる防水要求を満たせるわけではありません。
試作開発の相談時には、各侵入経路について、どの方式でシールするのか、どの部分を部品側で防水するのか、組立工程でどのような処置が必要なのかを明確にしておくことが大切です。
確認3:シール材料の耐環境性と長期信頼性を確認する
シール方式が決まったら、使用環境に適した材料を選定します。
防水用のシール材には、弾性を利用して隙間を密封するゴム材料や、接着・充填によって水の侵入を抑える材料などがあります。
弾性シール材の場合、柔らかければ必ず防水性能が高くなるわけではありません。材料の硬さ、圧縮後の復元性、耐熱性、耐寒性、耐候性、耐薬品性などを総合的に確認する必要があります。
例えば、屋外で長期間使用する製品では、紫外線、酸素、オゾン、温度変化などによる材料劣化を考慮します。洗浄液や油分に接触する装置では、使用する液体に対する耐性が重要です。
材料と接触液の組み合わせによっては、シール材が膨潤したり、硬化したり、強度が低下したりすることがあります。
こうした変化は、シール材の寸法や接触圧力を変化させるため、初期の防水性能が良好でも、使用を続けるうちに漏水リスクが高くなる可能性があります。
一般的に、シール材の選定では、使用温度と接触する液体の種類を確認し、その条件に適した材料を選びます。ただし、同じ材料分類であっても、配合や硬さなどによって性能が異なる場合があります。
そのため、材料名だけで適否を判断せず、採用候補となる材料の仕様と、実際に使用する環境との適合性を確認することが重要です。
長期信頼性を考える際には、圧縮永久ひずみにも注意が必要です。
圧縮永久ひずみとは、シール材を一定の条件で圧縮した後、荷重を取り除いても元の形状に完全には戻らない性質を評価する指標です。
シール材が長期間圧縮された状態で使用されると、材料や温度条件によって復元性が低下することがあります。その結果、筐体の変形や熱収縮などで合わせ面が変化した際に、必要な接触状態を維持しにくくなる可能性があります。
特に、高温環境で長時間使用する製品では、初期の密封性能だけでなく、経年変化後の性能を検討することが大切です。
また、低温環境ではシール材が硬くなり、合わせ面の変化に追従しにくくなる場合があります。
試作開発の相談では、使用温度の上限だけでなく、低温時の性能も確認する必要があります。
シール材を接着する場合には、筐体材料との相性にも注意します。
樹脂筐体と金属筐体では、表面状態や熱膨張の傾向が異なり、接着界面に生じる負荷も変わります。表面処理や洗浄方法によって接着状態が左右される場合もあるため、材料選定と組立工程を切り離して考えないことが重要です。
さらに、シール材の供給安定性も確認しておきます。
試作では入手しやすい材料を使用できても、量産時に同等品へ変更すると、硬さや寸法、耐環境性などが変わる可能性があります。
そのため、試作段階から材料の仕様を明確にし、変更が発生した場合に再評価が必要となる条件を整理しておくと、量産移行時の品質管理につながります。
材料選定に迷う場合には、使用環境と要求寿命を開発パートナーへ提示し、候補材料の特性と評価方法を合わせて相談することが有効です。
確認4:シールの圧縮率と溝寸法・締結条件を確認する
弾性シール材を使用する場合、防水性能を左右する重要な設計項目が圧縮量です。
シール材は、筐体の合わせ面などによって適切に圧縮されることで接触力を発生させ、隙間からの水の侵入を抑えます。
ただし、圧縮量が不足すると接触状態が不十分になり、漏水につながる場合があります。一方、過度に圧縮すると、材料への負荷が大きくなり、変形や損傷、復元性の低下を招く可能性があります。
したがって、単に強く締め付ければ防水性能が向上するという考え方は適切ではありません。
試作開発の相談では、使用するシール材の寸法と、筐体を組み立てたときの溝深さや合わせ面間隔から、適切な圧縮状態を確保できるかを確認します。
例えば、環状のシール材を溝に配置する場合、シール材の断面寸法、溝の幅と深さ、圧縮後に材料が広がるための空間などが重要です。
弾性材料は圧縮によって形状が変化するため、溝内に十分な余裕がないと、意図しない方向へ材料が押し出されたり、局所的に大きな負荷が発生したりする場合があります。
そのため、溝の深さだけでなく、幅や形状を含めて設計する必要があります。
圧縮率の適正範囲は、シール材の種類、硬さ、断面形状、静的な使用か可動部での使用かといった条件によって異なります。
設計時には材料に適した推奨条件を確認し、寸法公差を考慮したうえで、圧縮量が不足する場合と過大になる場合の両方を検討します。
ここで見落としやすいのが、締結力と筐体の変形です。
ねじで固定する筐体では、ねじの近くとねじから離れた部分で、合わせ面の変形状態が異なることがあります。
特に、樹脂製の薄肉筐体や、合わせ面の長い構造では、締結位置によって局所的な浮き上がりが発生し、シール材の圧縮状態が均一にならない可能性があります。
そのため、ねじの本数や配置、ねじ締結部周辺の剛性、筐体の肉厚などを含めて確認する必要があります。
また、締付トルクだけでシール圧縮量を管理できるとは限りません。
ねじの摩擦状態や部品の変形によって、同じ締付トルクでも締結状態にばらつきが生じる場合があります。
必要に応じて、筐体の合わせ面が所定の位置で接触する構造や、シール材の過圧縮を抑える構造を検討することが有効です。
ねじの繰り返し着脱を想定する製品では、ねじ穴や締結部の耐久性も考慮します。特に樹脂部品では、繰り返し締結によるねじ山の摩耗や損傷が、締結状態の変化につながる場合があります。
さらに、シール溝の角部や端部についても確認が必要です。
溝の角が鋭すぎると、組立時にシール材を傷つける可能性があります。逆に、意図しない大きな丸みがあると、シール材の保持状態や圧縮状態が設計と異なる場合があります。
試作開発では、加工方法や成形方法に応じて実現可能な溝形状を検討し、加工ばらつきを含めて性能を確認することが重要です。
開発パートナーへ相談する際には、シール材の寸法、溝形状、締結方法、ねじ配置、筐体材料を一体の設計条件として提示すると、実際の組立状態を想定した検討が進めやすくなります。
確認5:筐体の寸法公差と組立品質を確認する
試作開発で防水性能を確保するには、設計上のシール条件だけでなく、実際に製作される部品の寸法ばらつきも考慮する必要があります。
設計図面上ではシール材が適切に圧縮される構造でも、筐体の寸法や平面度が変動すると、部分的に圧縮量が不足することがあります。
特に、樹脂成形品では、材料の収縮、肉厚差、成形条件などによって反りや変形が生じる場合があります。
また、切削加工による試作品と、成形加工による量産品では、形状や寸法のばらつき方が異なるため、試作品で得られた防水性能がそのまま量産品でも再現されるとは限りません。
このため、試作開発の相談では、試作時の製造方法と量産時に想定する製造方法を共有することが重要です。
例えば、初期試作では切削加工を利用し、量産では射出成形を予定している場合、成形時の抜き勾配、反り、収縮などを考慮して設計を進める必要があります。
切削加工では実現しやすい平坦な合わせ面であっても、成形品では構造上の工夫が必要になる場合があります。
そのため、外形寸法だけでなく、シール面の平面度、溝の深さ、合わせ面の位置関係など、防水性能に直接関係する寸法を重要管理項目として整理します。
公差を設定する際には、個々の寸法を単独で確認するだけでは不十分です。
筐体、シール材、締結部などの寸法ばらつきが組み合わさったとき、最も圧縮量が小さくなる条件と、最も大きくなる条件を検討する必要があります。
このような公差の積み重ねを考慮することで、部品がそれぞれ図面の許容範囲内で製作されていても、組立後のシール性能に問題が生じる可能性を事前に把握しやすくなります。
また、シール面の表面状態も重要です。
合わせ面に傷、異物、加工痕、成形時の段差などがあると、シール材との接触が局所的に不十分になる可能性があります。
特に、シール材が接触する部分を横切るような傷や溝は、水の通り道になる場合があります。
必要な表面粗さや形状精度は、使用するシール材とシール方式によって異なるため、材料仕様と加工条件を踏まえて設定することが重要です。
組立作業性についても確認します。
シール材を溝に配置するとき、ねじれや引っ張り、部分的な浮き上がりが発生すると、設計どおりの密封状態を確保できない場合があります。
組立時にシール材が外れやすい構造では、作業者によって取り付け状態が変わる可能性があります。
そこで、シール材の位置決めがしやすい溝形状、組立中に脱落しにくい構造、異物の付着を確認しやすい作業手順などを検討します。
また、接着や封止を使用する場合は、材料の塗布量や塗布位置、硬化条件などを管理する必要があります。
塗布量が不足すると隙間が残る可能性があり、過剰な塗布は内部部品への付着や組立不良につながる場合があります。
試作段階では、設計担当者が慎重に組み立てることで良好な結果が得られても、量産時には複数の作業者が同じ品質で組み立てられる構造が求められます。
そのため、防水性能を安定させるには、設計図面だけでなく、組立手順や検査方法まで確認することが大切です。
試作開発の相談時には、シール面の管理寸法、公差、外観状態、異物管理、組立順序、締結条件などを具体的に共有すると、製造工程を含めた防水設計につながります。
確認6:防水試験の条件と量産時の再現性を確認する
シール設計の最終的な妥当性を判断するには、実際の試作品を用いた評価試験が必要です。
図面上で適切な構造に見えても、材料のばらつき、加工誤差、組立状態、温度変化などの影響によって、想定どおりの防水性能が得られない場合があります。
そのため、試作開発の相談では、設計方法だけでなく、どのような試験で要求性能を確認するかを初期段階から決めておくことが重要です。
防水試験の方法は、製品の使用環境や要求仕様に応じて選定します。
雨水や水しぶきへの耐性を確認したい場合と、一定条件での水没に対する耐性を確認したい場合では、適切な試験方法が異なります。
また、製品に防水等級を表示することを目指す場合には、該当する等級の試験条件と判定基準を正しく確認する必要があります。
ここで注意したいのは、試験に合格したという事実と、あらゆる使用環境で故障しないという保証を区別することです。
防水試験は、定められた条件における性能を確認するものです。実際の製品では、温度変化、振動、落下、経年劣化などが組み合わさって発生する可能性があります。
そのため、必要に応じて、これらの負荷を与えた後の防水性能も確認することが有効です。
例えば、屋外で長期間使用する製品では、温度サイクル試験の前後で防水性能を比較する方法が考えられます。
温度の上昇と低下が繰り返されると、筐体やシール材の寸法、接触状態が変化する場合があります。初期状態では漏水が認められなくても、温度変化後に弱い部分が顕在化する可能性があります。
携帯型機器では、落下や衝撃を受けた後に筐体の合わせ面が変化することも想定されます。
ただし、どの負荷をどの程度与えるかは、製品の用途と要求仕様によって決める必要があります。過度な試験条件を一律に設定するのではなく、実際に発生する可能性のある負荷と、要求する安全余裕を踏まえて評価計画を作成することが大切です。
試験時には、合否判定の方法も明確にします。
水の侵入が確認された場合に、どのような状態を不合格とするのか、試験後にどの部位を確認するのか、電気的な機能確認を行うのかなどを決めておきます。
防水等級に関する試験では、適用する試験規定に従って判定する必要があります。一方、製品独自の評価では、機能への影響や内部の水分付着など、用途に合った判定基準を設定することが考えられます。
また、防水試験で問題が発生した場合には、単にシール材を変更するのではなく、水の侵入経路と原因を確認することが重要です。
例えば、合わせ面からの侵入なのか、ねじ穴からの侵入なのか、ケーブル引出口からの侵入なのかによって、必要な設計変更は異なります。
原因を特定しないままシール材を厚くしたり、締結力を大きくしたりすると、別の不具合につながる可能性もあります。
試験結果を設計改善につなげるには、試作品の図面版数、使用材料、組立条件、試験条件、不具合の発生位置などを対応付けて記録することが重要です。
さらに、試験に使用する試作品の数や製作条件にも注意します。
少数の試作品が合格しただけでは、量産時のばらつきを十分に評価できない場合があります。
量産化を予定する場合には、製造条件の違いや寸法ばらつきを考慮した試験計画を検討し、製造工程で防水性能を維持できるかを確認する必要があります。
量産工程では、すべての製品に完成品の水没試験などを実施することが適切とは限りません。製品構造や生産条件によっては、気密性を利用した漏れ検査などを工程内の確認方法として検討する場合があります。
ただし、気体を用いた漏れ検査の結果が、特定条件での防水性能と必ずしも直接一致するわけではありません。採用する場合には、要求する防水性能との関係を確認し、検査方法の妥当性を検証する必要があります。
試作開発の相談では、初期評価、設計変更後の再評価、量産移行前の確認、工程内検査までを見据えて話し合うことで、防水性能を継続的に管理しやすくなります。
試作開発の相談前に整理したい設計資料と評価情報
防水性能が求められる製品の試作開発では、相談前にどの程度の情報を整理できているかによって、設計検討の進めやすさが変わります。
必ずしも完成した図面を用意する必要はありませんが、製品の用途や使用環境を具体的に説明できる資料があると、開発パートナーとの認識の違いを減らしやすくなります。
まず、製品の使用目的と設置環境を説明できるようにします。
屋外で固定して使用するのか、作業者が持ち運ぶのか、水が直接かかる場所で使用するのかによって、防水要求は異なります。
また、使用期間、保守頻度、開閉の必要性、清掃方法なども重要な条件です。
次に、筐体の概略形状と内部部品の配置を整理します。
電子基板、電池、コネクタ、操作部、表示部などの配置によって、シールを設けられる位置や必要なスペースが変わります。
内部部品のレイアウトが確定していなくても、変更できない寸法や、外部と接続しなければならない部分を示しておくことで、防水構造を検討しやすくなります。
既存の試作品がある場合には、その写真や図面を共有することも有効です。
特に、過去の試験で水の侵入が発生した場合には、発生位置、試験条件、組立状態などをできるだけ具体的に伝えることが重要です。
「以前の試作品で水が入った」という情報だけでは、原因を絞り込むことが難しいためです。
例えば、特定のねじ付近に水分が認められた場合、ねじ穴の構造、シール面の変形、締結部周辺の寸法などを重点的に確認できます。
また、試作から量産までの計画も共有しておくと、設計方法を選びやすくなります。
初期試作では、設計変更しやすい加工方法を優先することがあります。一方、量産時には成形性や組立作業性を考慮した構造が必要になる場合があります。
最初から量産方法を想定しておけば、試作品の評価後に筐体構造を大きく変更するリスクを抑えやすくなります。
相談時には、どの条件が必須で、どの条件に調整の余地があるかを区別して伝えることも大切です。
例えば、防水性能の要求が最優先なのか、筐体サイズを変更できないことが最優先なのかによって、選択できるシール方式は変わります。
要求条件に優先順位を付けることで、設計上の制約が発生した際にも、開発パートナーと合理的な判断を進めやすくなります。
さらに、試作開発を外部へ依頼する場合には、設計変更の管理方法を決めておくと有効です。
シール材を変更した場合、材料の硬さや寸法が変わることがあります。筐体の溝寸法を変更した場合には、圧縮状態が変化します。ねじの配置を変更すれば、合わせ面の変形状態が変わる可能性があります。
こうした変更を個別に記録せずに試作を繰り返すと、防水性能が改善した理由や、逆に悪化した原因を判断しにくくなります。
そのため、図面の版数、変更内容、変更理由、使用材料、試験結果を対応付けて管理することが重要です。
試作開発の相談では、どの段階で設計レビューを行い、どの条件を確定し、どの評価結果をもって次の工程に進むかを事前に共有しておくと、手戻りの少ない開発につながります。
防水設計は、筐体設計だけで完結するものではありません。電子回路、機構設計、材料選定、部品製作、組立、品質評価といった複数の工程が関係します。
そのため、関係する担当者が同じ要求仕様と評価結果を参照できる状態を整えることが、防水性能を安定して実現するための重要な取り組みになります。
まとめ|6つの確認で防水性能の安定した試作開発を進める
試作開発で防水性能を確保するには、シール材の選定だけでなく、使用環境、筐体構造、材料特性、圧縮条件、部品公差、評価試験を総合的に検討する必要があります。
最初に確認したいのは、製品がどのような水分負荷を受けるかという要求条件です。雨水への耐性と水没への耐性では、設計上の重点が異なる場合があります。防水等級だけで判断せず、実際の使用状況を明確にすることが重要です。
次に、水が侵入する可能性のある経路を整理し、それぞれに適したシール方式を検討します。筐体の外周だけでなく、コネクタ、ケーブル引出口、操作部、ねじ穴などを含めて確認する必要があります。
シール材料については、初期の密封性能だけでなく、温度変化や接触液、経年劣化による影響も考慮します。
また、シール材の圧縮量、溝寸法、ねじ配置などを適切に設計し、筐体の寸法公差や組立ばらつきが発生しても、必要な性能を確保できるかを確認することが大切です。
最後に、実際の試作品を用いて防水性能を評価し、設計条件と試験結果を対応付けて管理します。
防水性能は、一度の試験合格だけで開発上の確認が完了するとは限りません。量産時の加工ばらつき、組立条件、使用環境での経年変化などを考慮し、必要な検証を進めることが重要です。
試作開発を外部企業へ相談する場合には、これら6つの確認事項を事前に整理することで、要求仕様の認識違いや設計変更による手戻りを減らしやすくなります。
さらに、防水機器を実際の現場で使用する段階では、設置状態や使用環境、点検結果を継続的に記録することも重要です。
例えば、屋外設備の設置方向、配線の取り回し、雨水が滞留しやすい場所、シール部周辺の施工状態などを記録しておけば、製品の使用状況を確認する際の参考情報になります。
こうした現場情報の記録と共有には、位置情報を活用した写真管理や施工記録の整理が役立ちます。
LRTK Phoneは、現場写真と位置情報を関連付けた記録や、施工状況の共有に活用できる製品です。防水性能そのものを検証する専用試験装置ではありませんが、機器の設置場所、施工状況、点検時の状態などを記録し、開発担当者や現場担当者が情報を共有する用途に活用できます。
防水性能が求められる製品の開発では、設計段階の要求整理から試作評価、量産管理、現場での使用状況の把握まで、一貫した情報管理が重要です。
試作開発の相談では6つのシール設計確認を確実に進めるとともに、現場で得られる情報の記録・共有についても、LRTK Phoneの活用を検討してみてください。
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