LRTKレフィクシア株式会社

製品化支援でセンサーの経時ドリフトを見抜く6つの性能評価手順

製品化支援でセンサーの経時ドリフト評価が重要になる理由

センサーを搭載した製品の開発では、試作段階で高い測定精度を確認できても、長期間の使用によって測定値が変化する場合があります。出荷時には正常だった機器が、数か月から数年の使用を経て実際の状態と異なる値を示すようになれば、製品の信頼性や保守性に影響します。

このような時間経過に伴う測定特性の変化を経時ドリフトと呼びます。経時ドリフトは、温度センサー、圧力センサー、荷重センサー、湿度センサー、加速度センサーなど、さまざまな測定素子で検討すべき性能項目です。

ただし、経時ドリフトの大きさや発生要因は、センサーの測定原理、材料、電子回路、実装構造、使用環境によって異なります。すべてのセンサーに同じ試験条件や許容値を適用できるわけではありません。

製品化支援を受ける際には、センサー単体の仕様を確認するだけでなく、製品に組み込んだ状態で長期安定性を評価することが重要です。

例えば、センサー単体では安定していても、筐体の熱膨張によって基板に応力が加わり、出力が変化する場合があります。また、電源回路の基準電圧が変化すれば、センサー自体に異常がなくても測定値が変動する可能性があります。

こうした現象を適切に切り分けないまま補正処理を追加すると、本来解決すべき構造上の問題や部品の劣化を見逃しかねません。

さらに、経時ドリフトは短時間の動作確認だけでは発見しにくいという特徴があります。試作品を完成させた直後の測定結果だけで量産移行を判断すると、長期使用に関する不確実性が残ります。

そこで必要になるのが、初期特性の測定から環境試験、長期観測、個体差評価までを一連の手順として設計することです。

製品化支援では、開発初期から評価方法を明確にし、設計変更や量産判定に利用できるデータを蓄積することが求められます。

本記事では、センサーの経時ドリフトを見抜くための6つの性能評価手順と、評価結果を製品設計や品質管理に反映する方法を解説します。

手順1:使用条件と要求精度から許容ドリフトを数値化する

センサーの経時ドリフト評価で最初に行うべきことは、製品として許容できる測定誤差を明確にすることです。

経時ドリフトが発生すること自体が、直ちに製品不良を意味するわけではありません。重要なのは、想定する使用期間中の測定誤差が、製品の機能や安全性に支障を与えない範囲に収まるかどうかです。

例えば、周囲温度を参考表示する製品と、温度測定値を利用して設備を制御する製品では、必要な精度が異なります。前者では多少の表示誤差を許容できても、後者では誤差によって制御条件が変化し、設備の性能に影響する可能性があります。

そのため、製品化支援ではセンサーの仕様値をそのまま採用するのではなく、製品全体の要求性能から許容ドリフトを設定する必要があります。

まず、測定対象、測定範囲、使用温度、湿度、振動条件、通電時間、想定使用年数を整理します。さらに、測定結果を表示するだけなのか、制御や異常判定にも利用するのかを明確にします。

同じセンサーでも、用途が変われば求められる長期安定性は変わります。

次に、製品として許容できる総合的な測定誤差を決めます。その誤差には、初期校正の残差、温度依存性、繰り返し測定のばらつき、電子回路の変動、経時ドリフトなどが含まれます。

例えば、製品全体の最大許容誤差を仮に±1.0単位と設定した場合、経時ドリフトだけに±1.0単位を割り当てることはできません。初期誤差や環境変動による誤差も考慮し、経時変化に割り当てる許容範囲を決める必要があります。

各誤差を単純に加算する保守的な方法や、誤差の性質を区別して測定不確かさを評価する方法があります。どの方法を採用するかは、製品に求められる信頼性と評価目的によって判断します。

また、経時ドリフトの指標も統一しておくことが重要です。

初期測定値からの変化量で管理する方法、測定範囲に対する割合で管理する方法、一定期間当たりの変化率で管理する方法などがあります。

ただし、経時ドリフトが常に一定速度で進行するとは限りません。初期に大きく変化して、その後安定する場合もあれば、環境履歴によって変化方向が変わる場合もあります。

したがって、短期間の測定から求めた変化率を、そのまま製品寿命全体に外挿することは慎重に判断する必要があります。

さらに、ゼロ点の移動と感度の変化を区別することも欠かせません。

測定対象がゼロに相当する状態でも出力がずれる現象は、ゼロ点ドリフトとして扱います。一方、測定対象の変化量に対する出力の傾きが変化する現象は、感度ドリフトとして評価します。

ゼロ点ドリフトだけを補正しても、感度が変化していれば測定範囲の上側で大きな誤差が残る可能性があります。

製品化支援の初期段階では、許容誤差、評価期間、評価環境、ゼロ点と感度の判定基準を仕様として文書化しておくことが重要です。

これにより、試験結果が得られたときに、どの程度の変化を許容し、どの段階で設計改善が必要になるのかを客観的に判断できます。

手順2:基準器と測定環境を整えて初期特性を記録する

経時ドリフトを正しく評価するためには、時間経過による変化を比較できる初期データが必要です。

初期状態の測定条件が不明確な場合、後から測定値が変化しても、それがセンサーの経時ドリフトなのか、測定方法の違いなのかを判別できません。

そこで、製品化支援では評価対象のセンサーだけでなく、基準器、測定治具、電源、周囲環境を含めて試験系を整備します。

特に注意したいのが、基準器そのものの安定性です。

評価対象のセンサーより基準器の測定不確かさが大きい場合、小さな経時ドリフトを十分な信頼性で検出できないことがあります。また、基準器自体が時間経過によって変化していれば、センサーの変化と区別することが難しくなります。

基準器を選定するときは、校正状態、測定不確かさ、長期安定性、測定範囲を確認します。必要に応じて別の確認用標準を設け、基準器や試験系に異常な変化が起きていないかを点検できる体制を整えます。

測定環境についても、温度、湿度、電源電圧、設置姿勢、機械的な荷重をできるだけ再現可能な状態にします。

例えば、圧力センサーを評価する場合には、加圧装置や配管内の温度、圧力源の安定性、接続部の漏れなどが測定結果に影響する可能性があります。

荷重センサーでは、荷重の作用位置や治具の剛性、固定方法によって出力が変化することがあります。

こうした条件を記録せずに初期値だけを保存すると、数か月後の再測定で差が生じたときに原因を追跡できません。

初期特性の測定では、測定範囲の一点だけを確認するのではなく、用途に応じて複数の測定点を設定します。

測定範囲の下限付近、中間付近、上限付近などを確認することで、ゼロ点の変化だけでなく、感度や直線性の変化を把握しやすくなります。

また、同じ測定点で複数回の測定を行い、繰り返し性も記録します。測定値のばらつきが経時ドリフトとして検出したい変化量より大きい場合、評価方法そのものを見直す必要があります。

さらに、通電直後と十分に安定した状態の測定値を区別します。

センサーや周辺回路には、通電による自己発熱の影響を受けるものがあります。通電直後の値と安定後の値を比較すると、経時ドリフトではなくウォームアップ特性を観測している可能性があります。

そのため、通電開始から測定までの時間を統一し、必要に応じて出力が安定するまでの変化も記録します。

初期データには、測定日時、試作品の識別番号、センサーの製造ロット、回路やソフトウェアの版、校正条件、測定者なども関連付けます。

これらの情報は、後に複数個体の評価結果を比較したり、設計変更の影響を分析したりする際に役立ちます。

製品化支援では、単に初期精度を確認するだけでなく、将来の再測定時に同等の条件を再現できることが、長期安定性評価の基礎になります。

手順3:温度・湿度・電源変動による誤差を切り分ける

センサーの測定値が時間とともに変化した場合、その原因が経時ドリフトとは限りません。

温度や湿度の変化、電源電圧の変動、機械的な応力などによって、一時的に出力が変化する場合もあります。

これらの影響を区別せずに評価すると、実際には環境条件の違いによって発生した誤差を、経時ドリフトと誤認する可能性があります。

そのため、製品化支援では環境依存性と時間依存性を分けて評価することが重要です。

まず、温度の影響を確認します。

センサーの測定原理によっては、温度変化によって素子の電気特性や機械特性が変化します。さらに、センサーを固定する接着剤、基板、筐体などの熱膨張差が応力となり、測定値に影響する場合もあります。

温度特性の評価では、想定使用温度の範囲内で複数の温度条件を設定し、それぞれの条件で出力を測定します。

このとき、設定温度が目標値に到達しただけで測定を開始すると、センサー内部や筐体内部に温度差が残っている可能性があります。適切な安定時間を設け、測定対象の温度状態を確認する必要があります。

さらに、低温から高温へ変化させた場合と、高温から低温へ戻した場合の出力を比較します。

同じ温度に戻しても出力が一致しない場合、温度履歴によるヒステリシスが発生している可能性があります。

この現象は、長期的な経時ドリフトとは区別して評価する必要がありますが、実際の使用条件では両者が重なって測定誤差になることがあります。

次に、湿度や結露の影響を確認します。

湿度センサーのように湿度そのものを測定する製品だけでなく、電子回路や絶縁材料が湿度の影響を受ける製品でも検討が必要です。

水分の吸収によって材料特性が変化したり、結露によって回路の絶縁状態が変化したりすると、測定値が変動する場合があります。

また、湿度環境から取り出した直後の出力変化と、十分に乾燥した後にも残る変化は区別する必要があります。

前者は一時的な環境応答である可能性があり、後者は材料や構造に持続的な変化が生じた可能性を示します。

電源条件の評価も重要です。

センサーの出力や信号処理回路が電源電圧の影響を受ける構成では、電圧低下や電源ノイズによって測定値が変化する場合があります。

特に、電池駆動の製品や長い配線を使用する製品では、実際の運転条件に近い電源変動を考慮する必要があります。

評価時には、センサー出力と同時に電源電圧や周囲温度などを記録すると、変動要因の分析に役立ちます。

ただし、複数の環境条件を同時に変更すると、どの要因が出力変化を引き起こしたのか判断しにくくなります。

初期段階では条件を個別に変化させて影響を把握し、その後、実使用環境で想定される条件の組み合わせを評価すると効率的です。

製品化支援では、温度補正や電源変動対策で解消できる誤差と、時間経過によって残留する変化を整理することが、経時ドリフトの正しい判定につながります。

手順4:連続運転と保管後の測定で経時変化を追跡する

経時ドリフトを直接確認するためには、一定期間にわたって測定値を記録し、時間との関係を分析する必要があります。

短時間の性能試験では初期精度や繰り返し性を確認できても、長期使用による変化を十分に把握できない場合があります。

そこで、製品化支援では連続運転試験と保管後の再測定を組み合わせて評価する方法が有効です。

連続運転試験では、センサーを実際の使用条件に近い状態で動作させ、基準値に対する出力の変化を継続的に記録します。

このとき、測定値だけでなく、通電時間、温度、湿度、電源状態、負荷条件なども記録します。

時間経過に伴う測定値の変化が確認された場合でも、周囲温度の変動と一致しているなら、温度依存性が主要因である可能性があります。

一方、環境条件を一定に保っているにもかかわらず、同じ基準入力に対する出力が継続的に変化する場合には、センサーや周辺回路の長期安定性を詳しく調査する必要があります。

測定間隔は、検出したい変化の速さによって設定します。

通電直後の変化を確認したい場合には比較的短い間隔で測定し、数週間から数か月の変化を確認する場合には、長期にわたり安定して記録できる測定間隔を設けます。

測定間隔を短くすれば必ず評価精度が向上するわけではありません。記録されるデータ量と評価目的を考慮し、必要な変化を捉えられる設定にすることが重要です。

また、連続運転だけでなく、非通電状態で保管した後の性能変化も確認します。

センサーの中には、通電による発熱や材料への電気的な負荷が特性変化に影響するものがあります。一方、保管中の温湿度環境や材料の経時変化によって、非通電状態でも特性が変化する場合があります。

連続運転品と保管品を比較することで、通電時間に関係する変化と、暦上の経過時間に関係する変化を切り分ける手掛かりが得られます。

さらに、電源の投入と停止を繰り返す試験を組み合わせることも有効です。

実際の製品が間欠的に使用される場合、連続運転だけでは使用状態を十分に再現できません。電源投入後の安定時間、停止期間、再起動時の出力変化などを確認します。

時系列データの分析では、初期値との差だけでなく、変化方向、変化速度、変化の不連続性にも注目します。

徐々に一方向へ変化する場合、一定期間後に安定する場合、突然大きく変化する場合では、考えられる原因や必要な対策が異なります。

例えば、緩やかな変化には材料の応力緩和や電子部品の特性変化などが関係する可能性があります。一方、突然の出力変化には接続不良、電源異常、外部からの衝撃などが関係する可能性があります。

なお、測定データに単純な直線を当てはめて長期性能を予測する場合には注意が必要です。経時ドリフトの変化速度は一定とは限らず、短期間の傾向が長期間続く保証はありません。

製品化支援では、観測結果と予測結果を明確に区別し、実測データに基づいて長期安定性を判断することが重要です。

手順5:加速試験と実装状態の評価で劣化要因を特定する

製品化を進めるうえでは、想定使用年数と同じ期間だけ試験を続けることが難しい場合があります。

そのため、温度や湿度などの環境負荷を高め、劣化現象を比較的短期間で観察する加速試験が検討されます。

ただし、加速試験で発生した変化が、通常使用時の経時ドリフトと同じ仕組みで生じているとは限りません。

製品化支援では、加速試験の結果を単純に使用年数へ換算するのではなく、劣化要因を理解するための評価として活用することが重要です。

例えば、高温環境での保持試験では、電子部品や実装材料の特性変化、接着部の応力緩和などを確認できる場合があります。

また、温度サイクル試験では、材料の熱膨張差によって繰り返し応力が加わり、センサーの固定状態や出力特性に変化が生じる可能性があります。

湿度負荷を伴う試験では、吸湿による材料特性の変化や、絶縁状態の変化などが問題になる場合があります。

ただし、これらの現象はセンサーの構造や材料によって異なります。

過度な温度や湿度を加えると、実際の使用環境では発生しない劣化や損傷を引き起こす可能性があります。試験条件は、部品の使用可能範囲、想定環境、確認したい劣化機構に基づいて設定する必要があります。

加速試験を行う際には、試験前後の性能を同じ基準条件で測定することが基本です。

高温環境で測定した値と常温環境で測定した値を直接比較すると、温度依存性と経時変化が混在します。

そこで、試験前の基準測定、環境負荷の付与、所定条件での安定化、試験後の基準測定という流れを統一します。

必要に応じて試験途中にも測定を行い、変化がいつ発生したのかを確認します。

さらに重要なのが、センサー単体と製品実装状態の両方を評価することです。

センサー単体では問題がなくても、基板への実装、筐体への固定、樹脂による封止、配線の引き回しなどによって、センサーに機械的な応力が加わる場合があります。

例えば、荷重や圧力を測定する構造では、固定ねじの締結条件や接着剤の硬化収縮が初期出力や長期安定性に影響する可能性があります。

また、筐体内部に熱がこもる設計では、周囲温度が同じでもセンサー周辺の実温度が異なることがあります。

このような問題は、センサー単体の性能試験だけでは見つけにくいものです。

製品化支援では、量産時に使用する予定の基板、筐体、固定部品、配線構成を可能な限り再現し、完成品に近い状態で評価することが重要です。

加速試験後に経時ドリフトが確認された場合には、センサー素子、電子回路、固定構造、封止材料などを分けて調査します。

原因がセンサー素子そのものにある場合には、部品選定や校正方法の見直しが候補になります。一方、実装応力が主要因であれば、固定方法や材料構成を変更する方が効果的な場合があります。

加速試験の目的は、単に厳しい条件に耐えたことを確認するだけではありません。

どの条件で特性が変化し、どの構成要素が影響しているのかを把握することで、量産前の設計改善につなげることが重要です。

手順6:個体差を評価して補正・再校正・合否判定を決める

一つの試作品で経時ドリフトが小さかったとしても、量産品すべてが同じ性能を示すとは限りません。

センサーには製造ばらつきがあり、電子部品の特性、実装応力、材料の状態などによって、時間経過に伴う変化が個体ごとに異なる場合があります。

そのため、製品化支援の最終段階では、複数個体を用いて経時ドリフトのばらつきを評価することが必要です。

評価対象は、可能であれば異なる製造ロットや実装条件を含めて選定します。

同じ日に製作した少数の試作品だけでは、量産工程全体で生じるばらつきを十分に把握できない可能性があります。

ただし、必要な試験個体数は製品の重要度、想定する不良率、測定ばらつき、確認したい統計的信頼度によって変わります。一律の個体数だけで評価の妥当性を判断することは適切ではありません。

複数個体の評価では、平均的なドリフト量だけでなく、個体ごとの最大変化量や変化方向にも注目します。

例えば、多くの個体で小さな変化しか発生していなくても、一部の個体で大きな変化が発生している場合には、製造条件や実装状態に依存した問題が存在する可能性があります。

平均値だけで合否を判断すると、このような個体差を見逃すおそれがあります。

また、時間経過によってばらつきが拡大しているかどうかも重要です。

初期状態では個体間の出力差が小さくても、長期試験後に差が大きくなる場合、初期校正だけでは量産後の精度を十分に維持できない可能性があります。

評価結果に基づいて、補正処理や再校正の必要性を検討します。

ゼロ点の変化が主要な問題であれば、適切な条件でゼロ点を確認して補正する方法が考えられます。

感度の変化が問題になる場合には、複数の基準入力を用いた校正が必要になることがあります。

温度依存性が明確な場合には、温度情報を利用した補正処理が有効な場合もあります。

ただし、補正処理を導入すれば、すべての経時ドリフトを解消できるわけではありません。

補正に使用する温度センサーや基準回路にも誤差や経時変化が存在する可能性があります。また、補正モデルを作成した試作品では精度が向上しても、別の製造ロットでは十分な効果が得られない場合があります。

そのため、補正方法の評価では、補正モデルの作成に使用していない個体や測定データを用いて、再現性を確認することが重要です。

さらに、補正前の測定値と補正後の測定値を区別して保存できるようにすると、長期的な性能変化を追跡しやすくなります。

補正後の値だけを記録していると、センサー自体の劣化が進行していても、その傾向を把握しにくくなる可能性があります。

再校正の周期についても、製品の使用条件と経時ドリフトの実測結果から判断する必要があります。

すべてのセンサーに共通する再校正周期があるわけではありません。求められる精度、使用環境、長期安定性、保守方法によって適切な周期は異なります。

製品化支援では、測定性能を維持するために再校正が必要なのか、製品の使用期間中に校正なしで運用できる設計を目指すのかを明確にします。

最後に、個体差を含めた試験結果をもとに、量産品の受入基準、初期校正基準、出荷判定基準、使用中の異常判定基準を設定します。

これにより、経時ドリフトの評価を単なる試験結果で終わらせず、製品の品質保証に利用できる仕組みへ発展させることができます。

経時ドリフトの評価結果を量産設計へ反映する方法

センサーの経時ドリフト評価で重要なのは、測定データを取得することだけではありません。

評価によって確認された問題を、部品選定、回路設計、機構設計、製造工程、検査方法に反映することが製品化支援の重要な役割です。

例えば、経時ドリフトの主な原因がセンサー素子の長期安定性にある場合、測定原理や部品仕様の異なる候補を比較する必要があります。

初期精度が高い部品であっても、長期安定性や環境耐性が製品の使用条件に適していなければ、製品全体として必要な性能を満たせない可能性があります。

一方、電子回路の基準電圧や増幅回路が測定誤差の主要因になっている場合には、センサーの変更だけでは改善につながらないことがあります。

電源構成、信号処理回路、基板上の熱分布などを見直し、測定系全体の安定性を高める必要があります。

機構設計に原因がある場合には、センサーの固定方法や筐体材料、部品間の熱膨張差などを検討します。

特に、微小な変位や荷重を測定するセンサーでは、実装応力が測定結果に影響する可能性があります。

固定部の剛性を高めることが必ずしも最適とは限らず、センサーへ不要な応力を伝えにくい構造が必要になる場合もあります。

製造工程への反映も欠かせません。

試作段階で良好な性能を確認できても、量産時の組立条件が変われば、同じ性能を再現できない可能性があります。

例えば、接着剤の塗布量、硬化条件、固定ねじの締付条件、基板の実装条件などが変化すると、初期出力や長期安定性に影響することがあります。

製品化支援では、経時ドリフトに影響する重要な工程条件を明確にし、作業標準や検査基準に反映することが重要です。

また、設計変更後には、初期精度だけでなく長期安定性の再評価が必要になる場合があります。

センサーの固定材料を変更した結果、初期出力が改善しても、温度サイクル後の変化が大きくなる可能性があります。

そのため、改善前後の比較では、同じ評価条件を用いて効果を確認する必要があります。

量産移行の判断では、初期性能、環境依存性、経時ドリフト、個体差、補正後の性能を総合的に評価します。

経時ドリフトの問題を後工程の校正だけで解決しようとすると、保守作業が増えたり、校正できない使用環境で性能を維持できなかったりする可能性があります。

開発段階で根本原因を把握し、必要に応じて部品や構造を改善することが、長期的な品質安定につながります。

製品化支援を依頼する際に確認したい評価体制

センサーを搭載した製品の開発を外部へ相談する場合には、試作品を製作できるかどうかだけでなく、長期安定性をどのように評価できるかを確認することが重要です。

経時ドリフトの評価には、電子回路、センサー特性、機械構造、環境試験、測定データ解析など、複数の技術領域が関係します。

製品化支援を依頼する際には、これらをどの範囲まで対応できるのかを明確にしておく必要があります。

最初に確認したいのは、要求精度から評価条件を設定できる体制があるかどうかです。

依頼側が単に「長期間安定したセンサーにしたい」と伝えるだけでは、評価方法や合否基準を決めることが難しくなります。

製品の用途、想定使用期間、環境条件、許容誤差を整理し、具体的な試験仕様に落とし込めることが重要です。

次に、基準器や測定設備の管理体制を確認します。

経時ドリフトは小さな変化を対象とする場合があるため、試験系の測定不確かさや安定性が結果に大きく影響します。

使用する基準器の校正状態、環境条件の管理方法、測定データの保存方法などを確認しておくと、試験結果の信頼性を判断しやすくなります。

また、試験結果に異常が見つかった場合の原因分析能力も重要です。

経時ドリフトが確認されたとしても、原因がセンサー素子なのか、電子回路なのか、実装構造なのかによって対策は異なります。

測定データを提出するだけでなく、設計や製造条件との関係を分析し、改善方法を検討できる支援体制が望まれます。

さらに、試作から量産への移行を見据えた評価計画が必要です。

試作段階では手作業で調整していた部分が、量産段階では自動化や工程標準化の対象になることがあります。

その際、試作品で得られた性能が量産工程でも再現できるかを確認しなければなりません。

センサーの経時ドリフトに関係する工程条件を把握し、量産時の作業方法や検査方法へ反映できるかどうかも確認したいポイントです。

依頼時には、評価対象の製品仕様に加えて、過去の試験結果、使用予定のセンサー仕様、想定する設置環境、既に発生している不具合などを共有すると、具体的な検討を進めやすくなります。

既存製品で測定値の変化が発生している場合には、出荷時の校正記録、使用期間、設置条件、保守履歴を整理することも有効です。

情報がそろっていれば、再現試験の条件を絞り込み、問題の切り分けを進めやすくなります。

製品化支援では、評価試験の実施だけでなく、結果の解釈、設計改善、量産判定、保守方法の検討までを一連の工程として考えることが重要です。

まとめ:センサーの長期安定性を製品品質につなげる

センサーの経時ドリフトは、製品の初期動作確認だけでは見抜きにくい性能変化です。

試作段階で測定精度が良好でも、長期使用によってゼロ点や感度が変化すれば、製品として必要な測定性能を維持できなくなる可能性があります。

そのため、製品化支援では初期精度だけでなく、長期安定性を評価対象に含めることが重要です。

まず、製品の使用条件と要求精度から許容ドリフトを数値化します。次に、基準器と測定環境を整え、後から再現できる初期特性を取得します。

そのうえで、温度、湿度、電源条件による誤差を切り分け、連続運転や保管後の再測定によって時間経過に伴う変化を確認します。

さらに、加速試験や製品実装状態の評価によって劣化要因を調査し、複数個体の測定結果から量産時のばらつきや補正の必要性を判断します。

こうした評価を段階的に進めることで、経時ドリフトの発生状況を把握し、部品選定、回路設計、機構設計、製造条件の改善につなげることができます。

また、製品の長期安定性を管理するためには、開発時の試験データだけでなく、実際の設置環境や使用履歴を継続して記録することも重要です。

特に、屋外設備や建設現場などに設置するセンサーでは、設置場所、周辺環境、固定状態、保守作業の履歴が不具合原因の分析に役立つ場合があります。

同じ仕様のセンサーであっても、設置位置や環境条件が異なれば、長期的な性能変化に差が生じる可能性があります。

そのため、どのセンサーを、いつ、どこに設置し、どのような状態で使用してきたのかを確認できる記録体制が望まれます。

こうした現場情報の管理には、LRTK Phoneの活用も有効です。

LRTK Phoneは、現場写真や位置情報、施工記録の管理に活用できる自社プロダクトです。センサーを設置した設備の位置や施工時の状態を記録しておくことで、後日の点検や不具合調査で現場状況を確認しやすくなります。

例えば、センサーの設置位置、固定部の施工状態、交換前後の状況などを写真と位置情報に関連付けて管理すれば、測定性能の変化と現場での作業履歴を照合する際の手掛かりになります。

ただし、センサーの経時ドリフトを定量的に判定するためには、別途、適切な基準器による測定と性能評価が必要です。現場記録は、その測定結果を解釈するための補助情報として活用します。

製品化支援では、開発段階の性能評価と量産後の現場情報をつなげることが、継続的な品質改善につながります。

センサーの長期安定性を確保するには、測定値の変化を早期に把握できる評価方法を設計し、必要な改善を量産前に実施することが重要です。

さらに、出荷後も設置環境や保守履歴を確認できる仕組みを整えることで、不具合発生時の原因分析や次の製品開発に役立つ情報を蓄積できます。

センサーの経時ドリフトを単なる部品特性の問題として扱うのではなく、製品設計、製造品質、現場運用を含めて管理することが、信頼性の高い製品化を実現するための重要な取り組みです。

ものづくりの次の一歩を、
相談から始めてみませんか。

加工・製造の外注先や共同開発のパートナー探しに。大田区産業振興協会の受・発注あっせん相談サービスをご利用いただけます。

ものづくり 外注先を探す。公益財団法人大田区産業振興協会の受・発注あっせん相談。無料でプロに相談!公的機関だから安心!
ものづくりの協力先探し大田区産業振興協会無料相談