製品開発を外注する際、防水性能の確保は製品の信頼性や耐久性を左右する重要な設計課題です。特に屋外で使用する電子機器、工場設備に取り付ける制御装置、携帯型の計測機器などでは、雨水や洗浄水、結露による水分が筐体内部に侵入すると、電子部品の腐食や動作不良、絶縁性能の低下につながるおそれがあります。
防水性能の不具合は、必ずしもパッキンやシール材そのものの性能不足によって発生するわけではありません。筐体の合わせ面にわずかな隙間が生じたり、ねじの締結力が不均一になったり、ケーブルの引き込み部分から水が侵入したりするなど、複数の設計条件が影響します。
製品開発を外注する場合は、設計担当者、筐体加工業者、組立業者、検査担当者の間で防水要求の認識が一致していないことも問題になります。試作品では防水試験に合格していたにもかかわらず、量産段階で成形品の反りや組立条件のばらつきが発生し、防水性能を安定して確保できなくなるケースも考えられます。
こうした不具合を減らすには、製品の使用環境に合わせた防水要求を設定し、筐体構造、シール部品、締結方法、材料特性、開口部の設計を総合的に検討することが重要です。また、設計段階から試験方法と合否判定基準を明確にしておけば、外注先との認識違いを減らし、試作から量産への移行を円滑に進めやすくなります。
この記事では、製品開発の外注で防水性能の不具合を防ぐための6つの筐体設計対策を解説します。設計仕様のまとめ方から試作評価、量産時の品質管理まで、実務担当者が確認しておきたいポイントを具体的に紹介します。
製品開発の外注で防水性能の不具合が発生する主な原因
防水性能の不具合を防ぐには、まず水が筐体内部に侵入する経路を把握する必要があります。電子機器などの筐体は、外装部品だけで構成されているわけではありません。上下ケースの合わせ面、ねじ穴、コネクタ取付部、ボタン周辺、表示窓、ケーブル引き込み部など、複数の部品や接合部分によって構成されています。
これらの部分には、設計上の隙間や製造上の寸法ばらつきが存在します。防水設計では、その隙間をシール材で封止したり、水が直接侵入しにくい構造にしたりする必要があります。
例えば、上下の樹脂ケースをパッキンで密閉する構造を考えてみます。設計図面上ではパッキンが適切に圧縮されていても、実際の製品では成形による反りやねじ締結時の変形が発生する場合があります。
特に筐体の角部やねじ間隔が広い部分では、合わせ面の接触状態が変化しやすくなります。その結果、部分的にシール材の圧縮が不足すると、水が侵入する経路が形成される可能性があります。
また、屋外で使用する製品では、雨水だけでなく温度変化も考慮しなければなりません。日射によって筐体内部の温度が上昇し、その後の降雨によって急激に冷却されると、内部と外部の圧力差が変化します。この圧力差がシール部分に作用することで、わずかな隙間から水分が侵入しやすくなる場合があります。
製品開発を外注する場合は、このような複数の影響を誰が検討するのかを明確にしておく必要があります。
筐体設計を担当する企業が防水構造を検討していても、電子回路設計側でコネクタの位置を変更したり、組立工程でねじの種類が変更されたりすると、当初の防水性能が維持できなくなる可能性があります。
さらに、試作段階と量産段階では製造方法が異なることがあります。切削加工で製作した試作筐体では十分な平面度が得られていても、樹脂成形に変更した際に収縮や反りが発生し、シール面の状態が変化することがあります。
そのため、防水性能をパッキン単体の問題として扱うのではなく、設計、材料、加工、組立、検査を含めた製品全体の品質として管理することが重要です。
対策1:使用環境に合わせて防水要求と評価条件を明確にする
防水性能の不具合を防ぐための最初の対策は、製品に求められる防水性能を具体的な要求事項として定義することです。
製品開発の外注相談では、「屋外で使用するため防水にしたい」「雨に濡れても壊れない構造にしたい」といった表現が使われることがあります。しかし、こうした表現だけでは、外注先が適切な設計条件を判断することは難しくなります。
屋外使用といっても、短時間の雨にさらされる機器と、長期間にわたり風雨にさらされる機器では必要な対策が異なります。また、雨水に対する防水性能と、水没時の防水性能では、想定する水の作用条件が異なります。
防水要求を定義する際には、製品が使用される場所、設置姿勢、水にさらされる頻度、水のかかる方向、想定する水圧、温度変化、洗浄方法などを整理します。
例えば、屋外に固定される制御装置であれば、風雨によって側面や底面から水がかかることを考慮する必要があります。一方、携帯型の計測機器であれば、持ち運び中の雨水付着や、濡れた手による操作、保管時の湿気なども検討対象になります。
防水性能の指標としては、IPコードによる保護等級が用いられることがあります。IPコードは、筐体による危険な箇所への接近と固形異物の侵入に対する保護、および水の侵入に対する保護について、所定の試験条件に基づく等級を示すものです。
ただし、IP等級はすべての使用条件に対する防水性を保証するものではありません。例えば、一時的な水没を想定した試験条件に適合していても、それだけで噴流水や高圧洗浄、長期間の水中使用に対応できるとは限りません。水没と噴流水では試験条件が異なるため、実際の用途に必要な試験項目を個別に確認することが重要です。
また、IP等級の試験は所定の条件で実施されるため、温度変化、経年劣化、洗浄剤の付着、繰り返し開閉などによる影響については、必要に応じて追加評価を行うことが重要です。
外注先に依頼する際は、目標とする保護等級だけでなく、その等級を選定した理由も伝えることが望まれます。
例えば、屋外の壁面に取り付ける機器であれば、実際の設置姿勢を示したうえで、どの方向から水がかかる可能性があるのかを説明します。さらに、ケーブルが下向きに出るのか、側面から引き出されるのかによっても、水の流れ方や必要な防水構造は変わります。
もう一つ重要なのは、防水性能の合否判定基準を明確にすることです。
単に筐体内部に水が入らないことを要求するのか、所定の試験後に機器の安全性や機能が維持されることを要求するのかによって、評価方法が異なります。適用する規格や用途に応じて、許容される状態と許容できない状態を具体的に定義する必要があります。
外注先との認識違いを防ぐには、使用環境、目標等級、試験条件、合否判定方法を製品仕様書に記載し、設計開始前に双方で確認しておくことが効果的です。
特に使用環境が十分に確定していない開発初期段階では、想定条件を仮定として明示し、設計の進行に合わせて見直す方法が適しています。防水要求を曖昧なまま進めると、試作完了後に構造変更が必要になる可能性があるため、初期段階での仕様整理が重要です。
対策2:筐体の合わせ面とパッキンの圧縮構造を最適化する
防水筐体の設計で特に重要なのが、ケースの合わせ面とシール材の圧縮構造です。
多くの防水筐体では、樹脂や金属で製作されたケースの合わせ面にパッキンなどの弾性シール材を配置し、部品同士を締結することで水の侵入経路を遮断します。
しかし、パッキンを配置するだけで十分な防水性能が得られるわけではありません。シール材の材質、断面形状、溝寸法、圧縮量、合わせ面の平面度、筐体の剛性などが相互に影響します。
特に注意したいのが、シール材の圧縮量です。
パッキンは適切な圧縮によって接触面の微小な凹凸に追従し、シールに必要な接触圧を生み出します。圧縮量が不足すると隙間を十分に埋められず、水が通過する経路が残る可能性があります。
反対に、圧縮量が大きすぎる場合も問題です。過度な圧縮によってシール材が変形したり、溝からはみ出したり、長期間の使用によって弾性回復力が低下したりするおそれがあります。
そのため、防水設計ではシール材を強く押しつぶすことよりも、適切な圧縮状態を安定して維持することが重要になります。
具体的には、使用するシール材の推奨圧縮条件を確認したうえで、筐体の溝深さや合わせ面の寸法を設定します。その際は、図面上の基準寸法だけではなく、製造公差の影響も考慮する必要があります。
例えば、パッキンの厚さが規格範囲内で小さくなり、同時に筐体の溝が深く仕上がった場合、設計上の標準状態よりも圧縮量が不足することがあります。
逆に、パッキンが厚く、溝が浅く仕上がった場合には、圧縮量が過大になる可能性があります。
このような寸法の組み合わせを考慮するために、公差の積み上げによる検討を行い、想定される寸法範囲でシール性能が確保できるかを確認します。
また、パッキン溝の形状にも注意が必要です。溝の幅が不足していると、圧縮時にシール材が横方向へ変形する余地が少なくなり、局所的な応力が大きくなる場合があります。
一方、溝が広すぎたり位置決めが不十分だったりすると、組立時にパッキンがずれ、部分的な圧縮不足が発生する可能性があります。
角部の形状も重要です。シール材を急激に曲げる構造では、角部にしわや浮きが発生することがあります。製品形状に応じて角部の曲率やシール材の成形方法を検討し、全周で安定した接触状態を確保する必要があります。
さらに、パッキンが接触する筐体側の面についても、平面度や表面状態を確認しなければなりません。
切削加工による工具痕、樹脂成形による段差、金属部品の傷などが水の侵入経路になる場合があります。特にシール幅を横断するような連続した溝や傷は、漏水経路を形成する可能性があるため、機能上必要な面の品質を明確に指定することが重要です。
製品開発を外注する際には、パッキンの種類だけを指定するのではなく、シール面の位置、溝寸法、圧縮後の状態、面の仕上げ条件、組立方法まで含めて依頼することが望まれます。
試作評価では、パッキンの組付け状態を確認するとともに、必要に応じて圧縮状態の測定や接触状態の確認を行います。防水試験で漏水が確認された場合には、シール材の変更だけで対処するのではなく、圧縮量や合わせ面の状態も含めて原因を調査することが重要です。
対策3:ねじ配置と筐体剛性を見直して締結部の隙間を防ぐ
筐体の防水性能は、シール材の設計だけでなく、ケース同士を固定する締結構造にも大きく影響されます。
特に、ねじを使用して上下ケースを固定する構造では、ねじの配置、締結力、筐体の剛性によってパッキンの圧縮状態が変化します。
例えば、筐体の四隅だけをねじで固定した場合、ねじ付近では十分な圧縮力が得られていても、ねじとねじの中間部分ではケースが浮き上がることがあります。
このような状態では、パッキンの一部が十分に圧縮されず、防水性能にばらつきが生じる可能性があります。
この問題を防ぐには、筐体の大きさや形状、パッキンの反発力、ケースの材料特性を踏まえて、ねじの配置を検討する必要があります。
ねじの本数を増やせば必ず防水性能が向上するわけではありません。締結部を増やすことで組立作業が複雑になり、締め忘れや締結条件のばらつきが発生する可能性もあります。
また、樹脂筐体では、ねじ締結部に局所的な応力が集中すると、ボス部分の割れや変形が発生することがあります。
そのため、必要な締結力を確保しながら、局所的な応力集中を抑える設計が求められます。
筐体の剛性を高める方法としては、壁厚の調整や補強リブの追加などが考えられます。特に合わせ面の周辺に適切な補強を設けることで、締結時の変形を抑えられる場合があります。
ただし、補強リブを追加すると、樹脂成形では局所的な肉厚差によるヒケや反りが発生することもあります。したがって、剛性確保と成形性を両立させることが重要です。
ねじ締結部では、組立時の締付けトルクも管理対象になります。締付けが不足すると合わせ面に隙間が生じる可能性があり、締付けが過大になるとねじ部や筐体が損傷するおそれがあります。
樹脂部品の場合は、締結直後だけでなく、時間経過による応力緩和や材料の変形も考慮する必要があります。
製品の使用期間中に締結力が変化すると、パッキンの圧縮状態にも影響する可能性があります。
必要に応じて、締付けトルクだけに依存せず、パッキンの圧縮高さを構造的に制限する方法も検討します。例えば、ケース同士の所定の面を接触させることで、締結時の圧縮量を管理する構造が考えられます。
この場合も、部品公差や変形によってシール部の圧縮状態が変化しないかを確認する必要があります。
外注先との設計打ち合わせでは、ねじの本数や位置だけでなく、締付け条件、ねじの固定方法、組立順序、再組立の有無についても確認しましょう。
特に保守点検のために筐体を開閉する製品では、繰り返し締結によってねじ部が摩耗したり、シール材の状態が変化したりする可能性があります。
初回組立時の防水性能だけでなく、開閉後に再組立した状態でも必要な防水性能が得られるかを評価することが重要です。
対策4:コネクタやケーブル引き込み部の防水構造を設計する
防水筐体では、ケース本体の合わせ面だけでなく、外部との接続部分にも注意が必要です。
電源ケーブル、通信ケーブル、コネクタ、操作ボタン、表示窓などは、筐体に開口部を設ける必要があるため、水の侵入経路になりやすい部分です。
特にケーブル引き込み部では、ケーブル外径とシール部品の適合性が重要になります。
設計時に想定していたケーブルと、実際に組み立てるケーブルの外径が異なる場合、シール材が十分に密着せず、防水性能が低下することがあります。
また、ケーブルの外装材が変形しやすい場合や、表面に凹凸がある場合にも、密閉状態が不安定になる可能性があります。
そのため、ケーブル引き込み部を設計する際には、使用するケーブルの仕様を確認し、適切なシール構造を選定することが重要です。
ケーブル固定部品については、対応する外径範囲だけでなく、取付穴の寸法、固定方法、締付け条件、筐体との接触面の状態も確認します。
ケーブルを固定する部品自体に防水性能があっても、筐体との取付面が適切に密閉されていなければ、完成品として必要な防水性能を確保できない場合があります。
また、コネクタを採用する場合は、接続した状態と接続を外した状態の違いにも注意が必要です。
コネクタの仕様によっては、接続相手と正しくかみ合った状態でのみ所定の防水性能を発揮するものがあります。未接続の状態で水にさらされる可能性がある製品では、保護キャップなどを含めた構造検討が必要です。
操作ボタンについても、押し込み動作によってシール部分が変形することがあります。静止状態での防水試験に合格していても、濡れた状態で繰り返し操作すると、異なる負荷が発生する可能性があります。
特に、使用中に操作することを前提とした製品では、ボタンを操作した状態や操作直後の防水性能についても評価条件を検討します。
表示窓や透明カバーを接着する構造では、接着面の清浄度、接着剤の塗布状態、硬化条件、接着部の幅などが防水性能に影響することがあります。
接着部に気泡や未充填部分が残ると、局所的に水の侵入経路が形成される可能性があります。さらに、筐体と透明部品の熱膨張差によって接着部分に応力が生じる場合もあるため、使用温度範囲を踏まえた設計が重要です。
製品開発を外注する場合には、筐体設計と電子回路設計を別々に進めていることがあります。その際、電子回路側の都合でコネクタの位置や形状が変更されると、筐体側の防水構造にも影響します。
こうした手戻りを防ぐには、開発初期段階でコネクタ、ケーブル、ボタン、表示窓などの配置を確認し、変更時には防水性能への影響を再評価する仕組みを設けることが望まれます。
対策5:材料特性と製造ばらつきを考慮して筐体の変形を抑える
防水性能を安定させるには、筐体材料の特性と製造工程で発生する変形を考慮することが重要です。
防水筐体には樹脂や金属などさまざまな材料が使用されますが、それぞれ熱膨張、剛性、吸水性、耐候性、成形性などの特性が異なります。
例えば、樹脂筐体では、成形時の収縮や冷却条件によって反りが発生することがあります。
設計上は平坦な合わせ面であっても、実際の成形品では中央部分がわずかに浮き上がったり、角部が変形したりする場合があります。
その結果、パッキンの圧縮量が均一にならず、防水性能にばらつきが生じる可能性があります。
特に大型の筐体や薄肉構造では、製造時の変形がシール面に与える影響を確認する必要があります。
樹脂成形を予定している場合には、試作段階から量産時の成形条件を想定し、壁厚の急激な変化や不均一なリブ配置を避けるなど、成形性を考慮した設計を進めることが重要です。
一方、金属筐体では、切削加工や曲げ加工、溶接などによる変形が問題になることがあります。
特に薄い板金部品を組み合わせる構造では、締結時に面がたわみ、パッキンの接触状態が変化する可能性があります。
また、溶接構造の場合は、熱による変形が合わせ面の平面度に影響することがあります。必要に応じて加工順序や仕上げ工程を調整し、シール面に必要な寸法精度を確保します。
材料の熱膨張も見落とせない要素です。
筐体本体、透明カバー、金属インサート、シール材などに異なる材料を使用すると、温度変化によって各部品の膨張量や収縮量に差が生じます。
この差によって合わせ面に応力が発生したり、シール材の圧縮状態が変化したりする可能性があります。
例えば、屋外で使用する電子機器では、日中の温度上昇と夜間の冷却が繰り返されます。長期間にわたって温度変化を受ける製品では、初期状態だけでなく、温度サイクル後の防水性能も評価することが重要です。
さらに、材料によっては紫外線や湿気、薬品などによって特性が変化する場合があります。
樹脂材料の劣化によって割れが発生したり、シール材の硬化や弾性回復力の低下によって密閉性が変化したりする可能性があるため、製品の使用環境に適した材料を選定する必要があります。
外注先に材料を指定する際には、材料名だけでなく、要求する耐熱性、耐候性、機械的強度、防水構造との適合性も共有することが望まれます。
また、試作品と量産品で材料や加工方法を変更する場合には、防水性能に影響する部分を改めて評価する必要があります。
試作品では切削加工によってシール面の精度を確保できていても、量産時に成形方法へ変更すると、寸法公差や表面状態が変わる場合があります。
そのため、試作で得られた防水試験結果を、そのまま量産品の性能保証として扱うことは適切ではありません。
量産への移行時には、実際の製造条件で作られた部品を使用し、シール面の寸法、反り、組立状態、防水性能を確認することが重要です。
対策6:水の滞留・結露・内外圧差を考慮した筐体構造にする
防水性能を確保するうえでは、水が直接侵入する経路だけでなく、筐体周辺に水が滞留する状態や、内部で発生する結露についても考慮する必要があります。
特に屋外で使用する製品では、雨水が筐体の上面や部品の隙間に長時間残ることがあります。
水が滞留しやすい構造では、シール部分が継続的に水にさらされるため、使用条件によっては漏水リスクが高まる可能性があります。
このような問題を減らすには、水が流れやすい外装形状を検討することが効果的です。
例えば、筐体上面に大きなくぼみを設けないことや、水がたまりやすい段差を減らすことなどが考えられます。
また、設置方向が決まっている製品では、使用時の姿勢を考慮して水の流れを確認します。
ただし、排水を目的として筐体に穴を追加すると、その穴自体が水や異物の侵入経路になる場合があります。密閉が必要な領域に排水穴を設ける場合は、防水要求との整合性を十分に検討しなければなりません。
水の滞留と同様に重要なのが、筐体内部の結露です。
密閉された筐体であっても、内部に湿気を含んだ空気が存在する場合、温度変化によって内部表面に結露が発生する可能性があります。
結露は、外部から液体の水が直接侵入した場合とは異なる現象ですが、電子回路の腐食や絶縁性能の低下につながることがあります。
そのため、筐体内部に水滴が確認された場合でも、直ちにパッキンからの漏水と判断するのではなく、結露の可能性も検討する必要があります。
また、筐体内部の空気は温度変化によって膨張や収縮を起こします。
筐体内部と外部の圧力差が大きくなると、パッキンや接合部分に負荷がかかることがあります。特に温度変化が繰り返される環境では、シール部分への影響を評価することが重要です。
こうした条件への対策として、用途に応じて圧力調整用の通気部品を採用する方法があります。
液体の水の侵入を抑えながら気体を通過させる通気構造を設けることで、内外圧差を緩和できる場合があります。
ただし、通気部品を取り付ければ必ず結露や浸水を防げるわけではありません。部品の性能、取付位置、汚れや水滴による閉塞、使用環境などによって効果は変わります。
また、通気部品の採用によって筐体全体の防水性能が維持できるかについては、完成品で確認する必要があります。
製品によっては、通気構造を設けず、密閉性を高める設計のほうが適している場合もあります。そのため、製品の使用環境と内部機器の要求性能に応じて選択することが重要です。
外注先と設計を進める際には、筐体内部の発熱量、使用温度範囲、設置姿勢、雨水のかかり方、想定使用期間などを共有し、適切な防水構造を検討します。
防水性能は、シール材の密閉能力だけでなく、水の流れ、温度変化、内外圧差などを含む複合的な設計によって確保する必要があります。
製品開発の外注先へ渡す防水設計仕様書と図面の作成方法
製品開発の外注で防水性能の不具合を減らすには、設計内容を正確に伝えるための仕様書と図面が重要です。
防水筐体は複数の部品や工程によって構成されるため、口頭説明だけでは設計意図が十分に伝わらない可能性があります。
特に、筐体設計と組立作業を異なる企業へ依頼する場合は、各工程で必要な防水条件を明確にしておく必要があります。
まず、製品仕様書には使用環境と要求防水性能を記載します。
屋内使用なのか屋外使用なのか、雨水にさらされるのか、洗浄水がかかるのか、温度変化が大きい環境なのかなど、設計判断に必要な情報を整理します。
そのうえで、目標とする防水性能、適用する試験条件、使用時の設置姿勢、想定する使用期間などを明確にします。
次に、筐体図面では防水性能に直接影響する部分を重点的に管理します。
例えば、パッキン溝の深さや幅、合わせ面の平面度、シール面の表面状態、ねじ穴の位置、コネクタ取付穴の寸法などが対象になります。
こうした重要寸法には、製造方法や必要精度を考慮した公差を設定することが望まれます。
すべての寸法に厳しい公差を設定するのではなく、防水性能に影響する重要部分を特定し、必要な管理項目を絞り込むことが重要です。
また、防水性能は組立方法によっても変化するため、組立仕様書の作成も必要です。
パッキンの取付方向、組立前の清掃方法、ねじの締付け条件、接着剤を使用する場合の塗布方法や硬化条件などを明確にします。
特にシール面に異物が付着していると、わずかな異物でも局所的な隙間を形成する可能性があります。そのため、組立前の清掃や部品の取扱方法についても検討しておきます。
さらに、開発途中で設計変更が発生した場合の管理方法も決めておくことが重要です。
例えば、部品調達の都合でパッキンの材質を変更したり、組立性を改善するためにねじの配置を変更したりする場合、防水性能に影響する可能性があります。
こうした変更については、外注先の判断だけで進めるのではなく、発注側と外注側で変更内容と影響範囲を確認することが望まれます。
設計変更時には、変更前後の図面番号、変更理由、影響する部品、必要な再評価項目、承認履歴を記録しておくと、後工程での確認が容易になります。
製品開発を外注する際には、防水性能を外注先に任せきりにするのではなく、発注側も要求仕様と評価基準を理解し、設計判断に必要な情報を共有することが重要です。
複数の外注先が関わる場合には、防水設計全体の責任範囲と最終承認者を明確にしておくことで、設計変更の見落としや工程間の認識違いを減らしやすくなります。
試作から量産までに実施したい防水試験と品質確認
防水筐体の設計では、図面上で十分な対策を行っていても、実際の製品で性能を確認する必要があります。
試作品の防水試験は、設計が要求性能を満たしているかを確認するだけでなく、設計上の弱点を早期に発見するためにも重要です。
まず、初期試作段階では、シール構造や開口部の防水性能を確認します。
完成品全体の試験だけでなく、必要に応じてパッキン周辺、コネクタ取付部、ケーブル引き込み部など、漏水リスクの高い箇所を個別に評価する方法も考えられます。
例えば、筐体の合わせ面で漏水が疑われる場合は、パッキンの圧縮状態やシール面の寸法を確認します。
ケーブル引き込み部で漏水が疑われる場合は、ケーブル外径、固定部品の締付け状態、取付面の状態などを確認します。
防水試験の方法は、要求する保護等級や使用環境に応じて選定します。
散水、噴流水、一時的な水没などの試験は、それぞれ水の作用条件が異なります。そのため、ある条件の試験に合格したことだけを理由に、別の条件でも十分な防水性能があると判断することは適切ではありません。
また、実際の使用環境で温度変化や繰り返し操作が想定される場合は、防水試験と耐久試験を組み合わせることも重要です。
例えば、温度サイクル試験を実施した後に防水性能を再確認することで、熱膨張や収縮によるシール部への影響を評価できる場合があります。
ボタンやコネクタを繰り返し操作する製品では、所定の操作回数を経た後に防水試験を行うことで、使用に伴う性能変化を確認できます。
保守のために筐体を開閉する製品では、開閉と再組立を繰り返した後の状態についても評価することが望まれます。
ただし、試験条件は製品の想定使用方法や要求寿命に基づいて設定する必要があります。一律の試験回数や温度条件をすべての製品に適用するのではなく、用途に応じた評価計画を作成することが重要です。
量産段階では、試作段階とは異なる品質管理が必要になります。
試作品で良好な防水性能が得られていても、量産では部品寸法や組立条件にばらつきが発生する場合があります。
そのため、量産開始時には実際の製造設備と工程で製作された部品を使用し、防水性能を確認することが重要です。
初期の量産品については、防水性能に影響する部品寸法や組立条件を重点的に確認します。
また、全数試験を実施するのか、抜取試験とするのかについても、要求される品質水準、試験方法、製品特性、工程能力などを踏まえて判断する必要があります。
試験方法として気密試験を利用する場合もありますが、気密試験の結果がそのまま水密性能を保証するとは限りません。気体と液体では漏れの挙動が異なるため、適切な相関確認や評価が必要です。
さらに、検査で不具合が確認された場合に備えて、製造ロット、使用部品、組立条件、検査結果などを追跡できる記録を残しておくことも重要です。
防水性能の品質管理では、試験に合格したという結果だけでなく、どの設計条件と製造条件で合格したのかを管理することが、量産品質の安定につながります。
防水不具合が発生したときの原因調査と設計変更の進め方
防水試験や実際の使用環境で不具合が発生した場合は、原因を特定せずにシール材を変更するだけでは、再発を防げないことがあります。
防水不具合は、複数の設計条件や製造条件が組み合わさって発生することがあるため、段階的な原因調査が重要です。
まず確認したいのは、不具合が発生した条件です。
どの方向から水がかかったのか、試験前に温度変化があったのか、筐体を開閉した履歴があるのか、特定の製造ロットだけで発生しているのかなどを整理します。
次に、水が侵入したと考えられる箇所を確認します。
筐体内部に水滴が存在する場合は、合わせ面、ねじ穴、コネクタ周辺、ケーブル引き込み部などを確認します。
ただし、水滴が見つかった位置と実際の侵入箇所が一致するとは限りません。内部の部品や壁面を伝って水が移動する場合があるため、侵入経路を慎重に調査する必要があります。
また、前述したように結露による水分の可能性もあります。漏水と結露を区別するため、必要に応じて温度履歴や内部の湿度状態なども確認します。
設計上の問題が疑われる場合は、図面寸法と実測値を比較します。
例えば、シール面の平面度が要求範囲から外れていないか、パッキンの圧縮量が設計範囲内に収まっているか、ねじ締結によってケースが変形していないかなどを確認します。
一方、製造条件に原因がある場合は、成形条件、加工状態、シール材の取付方法、ねじの締付け条件、組立時の異物混入などを調査します。
不具合品だけでなく、同じ条件で製造された良品を比較することで、原因の絞り込みに役立つ場合があります。
設計変更を行う際は、変更によって別の問題が発生しないかも検討する必要があります。
例えば、漏水対策としてパッキンの圧縮量を増やす場合、筐体への負荷が増加する可能性があります。
ねじの本数を増やす場合には、組立性や部品強度への影響が生じることがあります。
また、接着剤によって漏水箇所を封止する方法では、分解修理が難しくなったり、材料同士の熱膨張差によって接着部に負荷が生じたりする可能性があります。
そのため、設計変更では防水性能だけでなく、製造性、組立性、保守性、耐久性を含めて総合的に判断することが重要です。
さらに、不具合対策を実施した後は、変更箇所に対する確認試験だけでなく、必要に応じて製品全体の防水性能も再評価します。
局所的な構造変更によって、別の部分の変形や締結状態が変化する可能性があるためです。
原因調査の結果、設計変更の内容、再試験の条件、検証結果を記録しておけば、後続の製品開発や類似製品の設計にも活用できます。
製品開発を外注している場合は、発注側と外注先が同じ情報をもとに原因を検討し、対策内容を合意したうえで変更を進めることが重要です。
まとめ|防水性能を安定させる製品開発と外注管理のポイント
製品開発の外注で防水性能の不具合を防ぐには、筐体の設計段階から使用環境や製造条件を考慮し、必要な防水性能を明確にすることが重要です。
特に、使用環境に応じた要求仕様の設定、パッキンの圧縮構造、ねじの締結方法、コネクタやケーブル引き込み部の密閉構造、材料特性による変形、水の滞留や結露への対策は、防水筐体を設計する際に確認しておきたいポイントです。
これらの条件はそれぞれ独立しているわけではなく、相互に影響します。例えば、筐体の材料を変更すると変形特性が変わり、パッキンの圧縮状態に影響する可能性があります。また、コネクタの位置を変更すると、開口部周辺の剛性や水の流れが変化することもあります。
そのため、防水性能は一つの部品だけで確保するものではなく、筐体全体の構造と製造工程を通じて管理する必要があります。
外注開発では、要求仕様を明確にしたうえで、設計図面、組立仕様、試験方法、合否判定基準を共有することが重要です。加えて、設計変更の履歴や試験結果を記録することで、不具合が発生した場合にも原因を追跡しやすくなります。
特に屋外設置型の製品では、設計段階の評価だけでなく、実際の設置環境や施工状態を記録しておくことも品質改善に役立ちます。
例えば、現場で防水機器の不具合が発生した際に、設置位置、筐体の向き、ケーブルの取り回し、周囲の排水状態、発生時の状況を記録しておけば、設計上の問題と施工・設置条件による問題を切り分けるための情報になります。
こうした現場情報の収集には、位置情報と写真を活用した記録管理が有効です。
LRTK Phoneは、現場写真や位置情報、施工記録を管理する際に活用できる製品です。現場で取得した情報を整理し、設計担当者や外注先との確認資料として利用することで、実際の使用環境を踏まえた不具合調査や改善検討を進めやすくなります。
防水性能の確保には、設計・製造段階の品質管理と、使用現場から得られる情報の両方が重要です。屋外機器の開発や設置後の品質改善に取り組む場合は、LRTK Phoneによる現場記録の活用も検討しながら、設計から製造、施工、保守まで一貫した情報管理を進めることが望まれます。
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