製品設計を外注する際、依頼内容を十分に整理しないまま設計を進めると、仕様の認識違いや設計変更が発生し、手戻りにつながることがあります。特に、製品の用途や求める性能、製造条件、評価方法が曖昧な状態では、外注先が適切な設計判断を行うことが難しくなります。
製品設計の外注では、技術力の高い依頼先を選ぶだけでなく、発注側が必要な情報を整理し、双方で共通認識を形成することが重要です。その中心となるのが要件定義です。
要件定義とは、製品に求める機能や性能、使用環境、設計上の制約、納品物、評価基準などを明確にする作業です。要件定義の精度を高めることで、設計途中の判断が円滑になり、不要な修正や確認作業を減らしやすくなります。
本記事では、製品設計の外注で手戻りを減らすために押さえておきたい6つの要件定義ポイントを解説します。初めて製品設計を外注する担当者だけでなく、既存の外注先との設計業務を改善したい実務担当者にも役立つ内容です。
製品設計の外注で要件定義が重要な理由
製品設計の外注では、発注側が求めている製品の姿と、外注先が理解している設計条件が一致しているとは限りません。発注側では当然と考えている条件でも、外注先に伝わっていなければ設計に反映されない可能性があります。
例えば、屋外で使用する機器の設計を依頼する場合、発注側は雨や直射日光への対応を当然の条件と考えているかもしれません。しかし、使用環境を具体的に伝えなければ、外注先は一般的な屋内使用を想定して設計する可能性があります。
この認識違いが試作段階で発覚すると、筐体構造や材料、部品配置などを変更しなければならない場合があります。変更範囲によっては、関連する図面や部品構成、評価計画まで修正が必要です。
また、製品設計では複数の条件が相互に影響します。小型化を優先すると内部空間が制限され、放熱性や組立性に影響することがあります。高い強度を求めると、材料や構造の見直しが必要になる場合もあります。
このような条件の関係を整理せず、個別の要求だけを外注先に伝えると、設計が進んでから要求同士の矛盾に気づくことがあります。
要件定義の目的は、単に希望条件を文書にまとめることではありません。製品として実現すべき内容を整理し、設計判断に必要な情報を外注先と共有することです。
特に重要なのは、確定している条件と検討中の条件を区別することです。すべての仕様を最初から確定できない場合でも、未決定事項を明確にしておけば、外注先は検討の前提を把握できます。
製品設計の外注で手戻りを減らすには、設計開始前の要件定義だけでなく、設計途中で要件を確認し、必要に応じて適切な手順で更新する仕組みも欠かせません。
ポイント1:製品の目的と使用環境を明確にする
製品設計の要件定義で最初に整理したいのは、製品を開発する目的です。製品の目的が曖昧な状態では、外注先が機能や構造を検討する際の判断基準を持ちにくくなります。
まず、誰が、どこで、何のために使用する製品なのかを明確にします。一般消費者が使用する製品なのか、製造現場の作業者が使用する機器なのかによって、求められる操作性や耐久性、安全対策は異なります。
例えば、現場作業者が屋外で使用する機器では、手袋を着用した状態で操作できることや、持ち運びやすさが重要になる場合があります。一方、工場内の固定設備に組み込む機器では、設置スペースや保守性、周辺設備との接続条件が重要になることがあります。
同じ機能を持つ製品でも、使用場面が異なれば適切な設計は変わります。そのため、製品の用途は抽象的な説明だけでなく、実際の使用手順が想像できる程度まで具体化することが望まれます。
使用環境も重要な要件です。屋内か屋外か、温度や湿度がどの程度変化するか、水や粉じんにさらされる可能性があるか、振動や衝撃が加わるかなどを整理します。
ただし、使用環境の条件を必要以上に厳しく設定すると、構造が複雑になる場合があります。実際の使用状況と想定されるリスクを踏まえて、必要な条件を設定することが大切です。
また、通常使用だけでなく、保管、輸送、清掃、点検といった場面も考慮します。通常使用では問題がなくても、輸送時の振動や保管中の温度変化が製品に影響する可能性があります。
製品の使用期間や使用頻度も共有しておくと、耐久性に関する設計判断がしやすくなります。毎日長時間使用する製品と、必要なときだけ短時間使用する製品では、想定すべき負荷が異なります。
要件定義では、製品の開発目的と使用環境を関連付けて記録することが重要です。単に「耐久性が必要」と記載するのではなく、どのような環境で、どの程度の使用に対応する必要があるのかを示します。
さらに、製品の導入によって解決したい課題も明確にしておきます。作業時間の短縮、操作ミスの低減、現場での確認作業の効率化など、開発目的が具体的であれば、設計上の優先順位も判断しやすくなります。
製品の目的が関係者間で一致していれば、設計途中で複数の選択肢が生じた場合にも、当初の目的に立ち返って判断できます。これが不要な仕様変更を防ぐ基本となります。
ポイント2:必要な機能と性能を具体的に定義する
製品の目的と使用環境を整理したら、必要な機能と性能を具体的に定義します。
機能とは、製品がどのような動作や処理を行うかを示すものです。一方、性能とは、その機能をどの程度の能力や精度で実現するかを示します。
例えば、測定機能を持つ製品であれば、対象物を測定できることが機能に該当します。測定範囲や許容誤差、測定に必要な時間などは性能に関する要件です。
製品設計の外注では、この2つを区別して伝えることが重要です。「高精度な測定ができること」という表現だけでは、必要な精度が外注先に伝わりません。
必要に応じて、測定対象、測定範囲、許容誤差、使用環境、測定方法などを定義します。具体的な数値は製品の用途や実現可能性を踏まえて設定し、外注先と妥当性を確認します。
操作性についても同様です。「使いやすい製品」という表現では、設計者ごとに解釈が異なる可能性があります。
操作回数を減らしたいのか、初めて使用する人でも操作手順を理解できるようにしたいのか、手袋を着用して操作できるようにしたいのかを整理します。
操作性を定量的に評価できる場合は、代表的な操作に必要な時間や手順数などを評価項目に設定する方法もあります。ただし、操作性は使用者の経験や環境にも左右されるため、実際の使用状況を想定した評価が必要です。
機能と性能の要件を整理する際には、優先順位も明確にします。
製品に求める条件には、必ず満たさなければならない必須要件と、可能であれば実現したい希望要件があります。これらを区別せずに外注すると、設計上の制約が生じた際に判断が難しくなります。
例えば、小型化と長時間動作を同時に求める場合、電源容量や放熱構造との兼ね合いが生じる可能性があります。どちらを優先するかが決まっていれば、外注先は設計の方向性を検討しやすくなります。
また、各要件について、なぜ必要なのかという背景を共有しておくことも有効です。
外注先が要求の理由を理解していれば、指定された方法では実現が難しい場合でも、目的を満たす代替手段を提案しやすくなります。
さらに、要件には識別番号や管理上の名称を付け、設計資料や評価結果と対応付ける方法が考えられます。どの設計内容がどの要件に対応しているかを追跡できれば、変更時の影響確認が容易になります。
機能と性能を明確にすることは、外注先への指示を細かくすることだけではありません。設計の自由度を適切に残しながら、最終的に満たすべき条件を共有することが重要です。
ポイント3:寸法・材料・製造条件などの制約を整理する
製品設計の外注では、機能や性能だけでなく、設計上の制約条件を明確にする必要があります。
制約条件とは、設計を進める際に守らなければならない寸法、材料、構造、製造方法、設置条件などです。
最初に整理したいのは、製品の外形寸法や設置スペースです。既存設備に組み込む製品では、取付位置や周辺部品との干渉が重要になります。
単に製品の最大寸法を示すだけでなく、取付穴の位置、配線や配管の取り回し、保守作業に必要な空間なども確認します。
設置場所に制約がある場合、現場の図面や写真、実測情報を外注先に共有すると、設計条件を理解してもらいやすくなります。
ただし、現場写真だけでは正確な寸法や形状を判断できない場合があります。寸法精度が必要な部分については、適切な測定方法によって確認した数値を提示することが重要です。
材料に関する要件も整理します。指定材料がある場合は、その理由も共有します。強度、耐食性、重量、加工性、使用環境への適合など、材料選定に影響する条件を明らかにします。
一方、特定の材料を使用する必要がない場合は、外注先に選定を任せる範囲を定めます。材料を過度に指定すると、製造方法や構造の選択肢が狭くなる場合があります。
製造条件については、想定する生産数量や製造工程、保有設備との適合性などを考慮します。
試作品を少数製作する段階では成立する設計でも、量産時には加工時間や組立作業、検査方法などの面で課題が生じる可能性があります。
そのため、将来的に量産を予定している製品では、試作段階から量産時の製造方法を想定しておくことが望まれます。
また、製品を構成する部品の入手性や、代替部品を使用する場合の承認条件も検討します。特定部品への依存が大きい場合、調達状況の変化が設計変更につながることがあります。
製品の安全性や関連法令、適用が必要な規格についても、要件定義の段階で確認します。対象となる要求事項は製品の用途や販売地域、構造などによって異なるため、必要に応じて専門知識を持つ担当者と確認します。
ここで重要なのは、必須の制約と、変更可能な条件を分けることです。
例えば、既存設備との接続位置は変更できなくても、筐体内部の部品配置は自由に設計できる場合があります。この違いを伝えることで、外注先は設計の自由度を把握できます。
制約条件を早い段階で整理することは、外注先の設計提案を制限するためではありません。実現できない方向への検討を減らし、限られた条件の中で適切な設計を進めるために必要な作業です。
ポイント4:設計範囲と納品物を明確にする
製品設計の外注で手戻りが発生する原因の一つに、依頼範囲の認識違いがあります。
発注側は製品全体の設計を依頼したつもりでも、外注先は一部の構造設計だけを担当する認識である場合があります。
製品設計には、構想設計、基本設計、詳細設計、部品選定、図面作成、試作支援、評価支援など、複数の業務があります。製品によっては、機構、電気、制御、組込み処理などの専門領域も関係します。
要件定義では、外注先にどこまでの業務を依頼するのかを明確にすることが重要です。
例えば、発注側が基本構想を作成し、外注先が詳細設計を担当する場合は、基本構想の確定状態や、外注先が変更を提案できる範囲を定めます。
複数の外注先が関係する場合は、各社の担当範囲と接続部分の責任を整理する必要があります。
機構設計と電気設計を別々に依頼する場合、部品の配置や配線スペースなど、両者が関係する項目について調整担当者を決めておくことが望まれます。
担当範囲が不明確なままでは、必要な検討が抜け落ちたり、複数の担当者が異なる前提で設計を進めたりする可能性があります。
納品物についても具体的に定義します。
製品設計の成果物には、設計図面、三次元形状データ、部品構成表、材料仕様、組立図、設計計算資料、評価記録などがあります。
ただし、必要な納品物は依頼内容によって異なります。すべての案件で同じ資料が必要になるわけではありません。
発注側が製造工程へ移行するために必要な情報を整理し、外注先と納品範囲を合意します。
特に注意したいのは、設計データの形式です。閲覧用の資料だけでは、その後の設計変更や製造準備に必要な編集作業ができない場合があります。
将来的に発注側で設計を変更する予定がある場合は、編集可能なデータの納品要否や使用できる形式を事前に確認します。
図面に必要な寸法、公差、材料情報、表面処理、検査条件などについても、どの程度まで記載するかを取り決めます。
設計データの権利関係や利用範囲も確認しておきたい事項です。納品されたデータを発注側がどの範囲で利用・変更できるかは、契約内容によって異なります。
また、設計途中のレビュー資料と最終納品物は区別して管理します。検討用の図面を完成版と誤認すると、製造準備や部品手配に影響する可能性があります。
各成果物について、作成担当者、確認担当者、承認担当者、納品時期を定めておくと、業務の進行を管理しやすくなります。
設計範囲と納品物を明確にすることは、追加作業を防ぐだけでなく、外注先との役割分担を円滑にし、成果物を次の工程で活用できる状態にするためにも重要です。
ポイント5:試作評価と合否判定の基準を決める
製品設計の要件定義では、設計した製品をどのように評価するかまで考えておく必要があります。
製品の機能や性能を定義していても、評価方法が決まっていなければ、完成した設計が要件を満たしているかを判断しにくくなります。
例えば、耐久性を求める製品の場合、「十分な耐久性があること」という表現だけでは、試験内容や合否基準を決められません。
想定する使用期間、使用頻度、負荷条件、評価対象、判定方法などを整理する必要があります。
製品設計の外注では、評価項目を設計完了後に決めるのではなく、要件定義の段階から検討することが重要です。
試作評価では、機能確認だけでなく、操作性、強度、組立性、環境への対応など、製品の特性に応じた項目を確認します。
評価項目ごとに、試験条件と合否基準を明確にします。測定値で判断できる項目は、必要に応じて許容範囲を設定します。
外観や操作感など、数値だけでは判断しにくい項目については、評価手順や判定例を共有し、評価者による判断のばらつきを減らす工夫が必要です。
また、評価に使用する試作品の状態も重要です。設計変更前の試作品と変更後の試作品では、評価結果を同じ条件で比較できない場合があります。
試作品には識別情報を付け、どの設計版に基づいて製作されたものかを記録します。評価結果にも対応する設計版や試験条件を残すことで、後から原因を追跡しやすくなります。
評価中に不具合が発見された場合は、その不具合が設計上の問題なのか、試作品の製造ばらつきなのか、評価条件によるものなのかを切り分ける必要があります。
原因を十分に確認しないまま設計変更すると、別の問題を引き起こす可能性があります。
試作評価の計画では、不合格となった場合の対応方法も決めておきます。外注先が原因調査を担当するのか、発注側が追加試験を実施するのか、設計変更を誰が承認するのかを整理します。
さらに、試作段階で確認する項目と、量産移行前に確認する項目を分けることも有効です。
初期試作では基本機能や構造の成立性を優先して確認し、その後の段階で耐久性や量産性を詳しく評価するなど、開発段階に応じた計画を立てます。
評価の目的と合格条件が明確であれば、外注先も設計段階から必要な検証を意識できます。
要件定義と評価計画を結び付けることで、設計完了後に初めて評価条件の不足が発覚するリスクを減らせます。
ポイント6:設計変更と情報共有のルールを定める
製品設計では、開発途中に仕様変更が必要になることがあります。
試作品の評価結果によって構造を見直す場合や、使用条件の追加、部品の変更、製造方法の見直しなどが発生する場合です。
そのため、製品設計の外注では、設計変更を完全になくすことを目指すのではなく、変更が必要になったときに適切に管理できる仕組みを整えることが重要です。
まず、要件や仕様を変更する場合の連絡方法を決めます。担当者間の口頭連絡だけで変更を進めると、変更内容が正式な設計資料に反映されない可能性があります。
変更を依頼する際には、変更対象、変更理由、希望する内容、影響が想定される範囲を記録します。
外注先には、変更によって影響する部品や図面、設計作業、評価項目などを確認してもらいます。
例えば、製品の外形寸法を変更する場合、筐体だけでなく、内部部品の配置や取付構造、放熱性、組立手順などに影響することがあります。
変更箇所だけを確認するのではなく、関連する設計要件への影響も評価することが大切です。
変更内容が確定したら、承認された仕様を関係者に共有します。変更前の資料を使用して作業が進まないように、図面や仕様書の版管理を行います。
版管理では、最新版を明確に識別できることが重要です。ファイル名や改訂履歴、承認状態などを管理し、どの資料が正式な設計条件なのかを確認できるようにします。
また、設計の重要な節目で仕様を確認する機会を設けます。基本設計の完了時、詳細設計の開始前、試作品の製作前などに確認を行うことで、認識違いを早期に発見しやすくなります。
ただし、レビューを実施するだけでは十分ではありません。指摘事項について、対応担当者と期限、完了条件を明確にし、未解決事項を管理する必要があります。
情報共有の頻度も案件の状況に合わせて設定します。設計初期には確認事項が多く発生しやすいため、比較的短い間隔で進捗を確認することが有効な場合があります。
一方、設計条件が安定している段階では、重要な進捗や課題を中心に確認する方法も考えられます。
発注側の意思決定が遅れると、外注先の作業が停止したり、暫定条件による設計が進んだりする可能性があります。そのため、質問に回答する担当者と最終的な承認者を決めておくことが重要です。
外注先との情報共有では、機密情報の取扱いにも配慮します。設計資料の共有範囲や保管方法、再委託先への情報提供条件などを必要に応じて取り決めます。
設計変更の記録と情報共有の仕組みを整えることで、変更そのものによる負担だけでなく、変更内容の伝達漏れによる二次的な手戻りを減らしやすくなります。
製品設計を外注する前に準備したい資料
製品設計の外注を円滑に進めるには、要件定義の内容を外注先に伝えられる資料として整理しておくことが重要です。
中心となるのは、製品の目的や要求仕様をまとめた要件定義書です。製品の用途、使用対象者、使用環境、必要な機能、性能、制約条件、評価方法などを記載します。
ただし、最初から詳細な文書を完成させることが難しい場合もあります。その場合は、現時点で把握している情報を整理し、不明点を明示した状態で外注先と検討を始めることもできます。
製品の外形や構造を説明するためには、構想図や手描きのスケッチ、参考図面などが役立ちます。完成度の高い設計図面がなくても、形状や配置の意図を共有する資料があれば、初期段階の認識合わせに利用できます。
既存製品を改良する場合は、現行製品の図面や仕様、過去に発生した不具合、改善したい課題などを整理します。
既存製品の問題点を共有することで、外注先は単に形状を変更するだけでなく、改善目的に沿った設計を検討しやすくなります。
また、設置場所や使用現場に関する情報も重要です。現場の写真、設置位置、周辺設備との関係、作業時の制約などを整理しておくと、現物確認が必要な箇所を判断しやすくなります。
製造に関係する情報としては、想定生産数量、利用予定の製造工程、組立方法、検査体制なども共有しておくことが望まれます。
さらに、開発の希望時期や、試作、評価、製造準備といった主要な工程の予定を示します。ただし、要件定義の内容が不十分な状態で日程だけを確定すると、後から大きな調整が必要になる場合があります。
資料を準備する際には、確定事項、希望事項、未決定事項を区別します。外注先がすべての記載内容を確定仕様と受け取らないようにすることが大切です。
要件定義書を外注先とすり合わせる進め方
要件定義書を作成しただけでは、外注先との認識が一致したとは限りません。
製品設計の外注では、要件定義書を双方で確認し、内容について共通理解を形成する工程が必要です。
最初の打ち合わせでは、製品の開発目的と重要な要件を説明します。この段階では、個別の寸法や仕様だけでなく、なぜその製品を開発するのか、何を最も重視しているのかを共有することが重要です。
次に、要件定義書を項目ごとに確認します。外注先から質問や懸念事項が示された場合は、その場で判断できる内容と、追加確認が必要な内容を分けて記録します。
外注先から技術的な提案があった場合は、提案内容が当初の目的や必須要件に適合するかを確認します。発注側が想定していなかった方法でも、要件を満たす合理的な選択肢であれば検討する価値があります。
一方、外注先の提案を採用することで、別の要件に影響が生じる場合もあります。必要に応じて関連する条件を確認し、変更の可否を判断します。
すり合わせの過程で重要なのは、未決定事項を放置しないことです。未決定事項には担当者と確認期限を設定し、設計のどの段階までに決める必要があるかを整理します。
例えば、材料の最終選定が詳細設計に影響する場合は、その工程に入る前に材料条件を確定する必要があります。逆に、初期の構想検討に影響しない項目であれば、後の段階で決定できる場合もあります。
要件定義の内容について双方が合意したら、基準となる版を設定します。その後に変更が必要になった場合は、変更管理の手順に従って更新します。
このように、要件定義書を一方的に渡すのではなく、外注先と共同で確認することで、設計開始後の認識違いを減らしやすくなります。
要件定義で起こりやすい失敗と防止策
製品設計の外注でよく見られる課題の一つは、要求が抽象的なまま設計を進めてしまうことです。
例えば、「できるだけ小さくする」「十分な強度を確保する」「操作しやすい構造にする」といった表現は、方向性を伝えるうえでは役立ちますが、具体的な設計条件としては不十分な場合があります。
このような要求を使用する際には、判断に必要な条件を追加します。小型化であれば設置スペースや許容外形、強度であれば想定荷重や使用条件を整理します。
別の失敗として、発注側の関係部署で要件が統一されていないケースがあります。
設計担当者は小型化を優先している一方で、製造担当者は組立性を重視し、保守担当者は内部部品へのアクセス性を求めている場合があります。
これらの要求を統合しないまま外注先へ伝えると、設計途中で要求の衝突が発覚することがあります。
防止するためには、外注前に関係部署の意見を整理し、要求の優先順位を決めることが重要です。
また、外注先に設計判断を任せる範囲が曖昧な場合も注意が必要です。
外注先が独自に条件を補って設計を進めた結果、発注側の想定と異なる製品になる可能性があります。外注先が判断できる範囲と、発注側の承認が必要な範囲を明確にしておくことが大切です。
過去の設計資料をそのまま流用することも、認識違いの原因になります。以前の製品に適用した条件が、新しい製品にも適切とは限りません。
既存資料を利用する場合は、今回の製品に必要な条件かどうかを確認し、不要な要求や矛盾する記載を整理します。
さらに、設計レビューを最終段階だけで行うことも手戻りの要因です。重要な設計判断が完了した後で問題を発見すると、関連する部品や資料への影響が大きくなる場合があります。
構想設計や基本設計の段階からレビューを実施し、重要な要件が適切に反映されているかを確認することが望まれます。
要件定義における失敗を防ぐには、文書を詳細にするだけでなく、関係者の認識を合わせ、未決定事項と変更内容を継続的に管理する必要があります。
仕様が未確定でも製品設計を外注するための考え方
新製品の開発では、外注を検討する段階ですべての仕様が確定しているとは限りません。
新しい技術を採用する場合や、製品の構造自体を検討している場合は、試作や技術検証を通じて仕様を決める必要があります。
このような場合でも、要件定義を省略するのではなく、確定している条件と検討が必要な条件を分けて管理することが重要です。
まず、製品の開発目的と必ず達成したい要件を整理します。実現方法が決まっていなくても、使用目的や必要な機能が明確であれば、外注先と検討を始めやすくなります。
次に、技術的な不確実性が高い項目を特定します。例えば、必要な性能を実現できるか、指定された寸法内に構造を収められるか、想定材料が使用環境に適しているかなどです。
不確実性が高い項目については、詳細設計に入る前に簡易試作や基礎的な評価を実施する方法があります。
最初から完成形の設計を進めるのではなく、重要な技術課題を段階的に確認することで、大きな手戻りを防ぎやすくなります。
また、外注契約の業務範囲も開発段階に応じて設定します。初期段階では構想検討や実現可能性の確認を依頼し、その結果を踏まえて詳細設計へ進む方法も考えられます。
この場合、各段階の終了時に何を判断するのかを明確にします。技術的な成立性を確認するのか、構造案を選定するのか、詳細設計へ移行する条件を決めるのかによって、必要な成果物は異なります。
仕様が未確定であること自体が問題なのではありません。未確定であることを関係者が認識せず、確定した前提として設計が進んでしまうことが問題です。
未決定事項を可視化し、判断の時期と責任者を設定することで、仕様が変化する開発案件でも外注先との連携を円滑に進めやすくなります。
まとめ:要件定義の精度を高めて製品設計の手戻りを減らす
製品設計の外注で手戻りを減らすためには、設計開始前の要件定義が重要です。
製品の目的や使用環境を明確にし、必要な機能と性能を具体化することで、外注先が設計判断を行うための基準を共有できます。
さらに、寸法や材料、製造条件などの制約を整理し、設計範囲と納品物を明確にすることで、依頼内容の認識違いを減らしやすくなります。
試作評価の方法と合否基準を事前に検討することも重要です。設計要件と評価方法を対応付けておけば、完成した設計が求める条件を満たしているかを確認しやすくなります。
また、製品開発では仕様変更が必要になる場合もあります。変更の承認手順や設計資料の版管理、情報共有のルールを整えることで、変更内容の伝達漏れや古い情報による作業を防ぎやすくなります。
要件定義は、外注先へ渡すためだけの文書ではありません。発注側と外注先が同じ目標に向かって設計を進めるための共通基準です。
特に、現場に設置する製品や設備の設計では、設置場所の状況や周辺構造物との関係、施工時の制約などを正しく把握することが重要になります。
現場の状態が設計の前提と異なっている場合、設計変更や取付構造の見直しが必要になることがあります。そのため、現場に関する情報を整理し、設計担当者と共有できる状態にしておくことが望まれます。
こうした現場情報の記録と共有を支援する手段として、LRTK Phoneの活用も考えられます。
LRTK Phoneは、現場写真や位置情報、施工記録の管理に活用できる製品です。現場の状況を位置情報と関連付けて記録することで、現地確認の内容を関係者へ伝える際の補助資料として利用できます。
例えば、屋外設備の設計や既存構造物への機器設置を検討する場合、設置予定場所の写真や周辺状況を記録しておくと、外注先との打ち合わせで現場条件を説明しやすくなります。
ただし、写真や位置情報だけで精密な寸法や製品公差を確定できるとは限りません。設計上必要な寸法精度に応じて適切な測定を行い、その結果と現場記録を組み合わせることが重要です。
製品設計の外注では、要件定義の内容だけでなく、その根拠となる情報の正確さと共有方法も成果に影響します。
要件定義の6つのポイントを押さえ、設計資料と現場情報を適切に管理することで、発注側と外注先の認識を合わせやすくなります。現場情報の記録・共有にはLRTK Phoneも活用しながら、設計から試作、評価、製造へと一貫した情報管理を進めることが、手戻りの少ない製品開発につながります。
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