LRTKレフィクシア株式会社

製品設計の外注で故障モード分析を活用する6つのリスク評価手順

製品設計を外注する際には、要求仕様を満たす設計図面や試作品を完成させるだけでなく、製品の使用中に発生する可能性がある故障や不具合を事前に洗い出すことが重要です。特に、機械部品、電子機器、産業用装置、屋外設置機器などでは、設計段階で見落としたリスクが、量産開始後の品質問題や現場での故障につながることがあります。

こうしたリスクを体系的に評価する方法として活用されているのが、故障モード影響解析(FMEA)です。FMEAは、製品や構成部品にどのような故障が起こり得るか、その故障が製品全体にどのような影響を与えるか、原因をどのように抑制するかを整理する分析手法です。

しかし、製品設計を外注する場合、発注側と設計会社の間で製品の使用条件や安全性に関する認識が一致していないと、故障モード分析を実施しても重要なリスクが抜け落ちる可能性があります。また、評価結果を作成するだけで終わり、実際の設計変更や検証試験に反映できなければ、十分な効果は期待できません。

本記事では、製品設計の外注を検討している開発担当者や品質保証担当者に向けて、故障モード分析を活用した6つのリスク評価手順を詳しく解説します。分析対象の設定から故障原因の特定、リスクの優先順位付け、対策の検証、外注先との責任分担まで、実務で役立つ考え方を紹介します。

製品設計の外注で故障モード分析が重要になる理由

製品設計を外注すると、専門技術を持つ設計者の知識や経験を活用できる一方で、発注側が想定する使用環境や運用上の制約が、設計担当者に十分伝わらないことがあります。

例えば、屋外で使用する電子機器の設計を依頼する場合、発注側は雨天や高温環境での使用を当然の前提として考えていても、外注先が受け取った仕様書には使用温度や防水性能が明確に記載されていないことがあります。この状態で設計を進めると、初期の動作確認では問題がなくても、実際の使用環境で結露や浸水、熱による動作不良が発生する可能性があります。

このような問題を防ぐには、設計者の経験だけに依存するのではなく、製品に求められる機能と想定される故障を体系的に整理する必要があります。

故障モード分析では、まず製品や構成部品が果たすべき機能を明確にし、その機能が失われたり、性能が低下したりする状態を故障モードとして抽出します。さらに、故障による影響、考えられる原因、既存の予防策や検出方法を検討します。

例えば、電源コネクタを備えた装置であれば、接触不良、端子の変形、固定部の緩み、腐食などが故障モードとして考えられます。これらが発生すると、装置の停止や断続的な動作不良につながる場合があります。原因には、振動、組立時の負荷、接続回数、使用環境など複数の要因が存在するため、それぞれを分けて評価することが重要です。

外注設計におけるFMEAの大きな利点は、発注側と外注先が同じ資料を使い、設計リスクについて具体的に議論できることです。

発注側は製品の使用目的、顧客要求、過去の不具合、保守条件などの情報を提供し、外注先は部品構造、材料特性、設計上の制約、故障の発生メカニズムなどを検討します。この両者の知識を組み合わせることで、一方だけでは発見しにくいリスクを洗い出しやすくなります。

また、FMEAは設計完了後に形式的に実施するものではありません。構想設計や基本設計の段階から分析を始め、詳細設計、試作評価、設計変更に合わせて内容を更新することで、重大な問題を早期に発見できる可能性が高まります。

ただし、故障モード分析を実施すれば故障を完全に防げるわけではありません。FMEAは、検討時点で把握できる情報を基にリスクを可視化する手法であり、未知の故障原因や想定外の使用条件をすべて網羅できるものではないためです。

そのため、故障モード分析は設計レビューや試験評価と組み合わせ、継続的に改善する活動として位置付けることが重要です。

手順1:製品の使用条件とリスク評価の対象範囲を明確にする

故障モード分析を始める際に最初に行うべきことは、評価する製品の範囲と使用条件を明確にすることです。

分析対象が曖昧なまま作業を進めると、発注側と外注先で異なる前提を使って評価してしまい、分析結果を比較できなくなることがあります。また、対象範囲が広すぎると検討項目が膨大になり、重要な故障モードの検討が不十分になるおそれがあります。

まず、製品全体を分析するのか、特定の機構や電子回路、筐体、接続部などを対象とするのかを決めます。

例えば、産業用計測装置を外注設計する場合、筐体構造、電源回路、通信機能、センサー固定部、外部接続部などに分けて分析することが考えられます。それぞれの領域で故障の発生要因や影響範囲が異なるため、適切な単位に区切ることで検討内容を整理しやすくなります。

このとき、各構成要素の境界だけでなく、要素間の接続部分も評価対象に含める必要があります。例えば、筐体と基板の固定部分、電源と制御回路の接続部分、可動部と駆動部の連結部分などは、個々の部品に問題がなくても組み合わせによって不具合が発生することがあります。

次に、製品が実際に使用される条件を整理します。

温度、湿度、振動、衝撃、水分、粉じん、腐食性物質、使用時間、操作頻度、保管環境などは、故障リスクに影響を与える代表的な条件です。屋外機器であれば日射や降雨、携帯機器であれば落下や持ち運び時の衝撃、産業機械であれば連続運転や繰り返し荷重なども検討対象になります。

重要なのは、使用条件を「過酷な環境でも使用可能」といった抽象的な表現だけで指定しないことです。想定する温度範囲、連続運転時間、繰り返し動作回数、許容される外力などを、可能な範囲で具体的な条件として定義します。

一方、明らかな誤使用や仕様外の使用条件についても、どこまで分析対象に含めるか判断する必要があります。合理的に予見できる誤使用は安全上のリスク評価に関係する場合があるため、単に仕様外という理由だけで除外することは適切ではありません。

製品が故障した際に人身事故や重大な設備損傷につながる可能性がある場合には、通常使用時だけでなく、異常状態や単一故障時の影響も検討します。適用される安全要求がある場合は、その要求に基づいた別途の安全評価が必要になることもあります。

さらに、設計外注の業務範囲とリスク評価の対象範囲を一致させることが重要です。

外注先が筐体設計のみを担当する場合でも、筐体の変形が内部電子部品に影響する可能性があります。そのため、外注先が直接設計しない部分についても、必要なインターフェース情報や使用条件を共有しなければなりません。

評価対象の境界を定めたら、分析の前提条件、対象外とする範囲、その理由、未確定の仕様を記録します。特に未確定事項は、仮の条件を正式な要求仕様と混同しないように管理します。

この段階で分析範囲と設計責任を明確にしておけば、後の工程で故障モードの見落としや認識違いが発生するリスクを減らしやすくなります。

手順2:製品の機能を分解して要求仕様と評価基準を整理する

分析対象を決めたら、次に製品が実現すべき機能を整理します。

故障モードとは、単に部品が破損することだけではありません。本来の機能を実行できない、要求された性能を満たせない、意図しない動作をするなど、機能要求から外れた状態も含まれます。

そのため、故障モードを洗い出す前に、対象となる製品や構成部品の機能を正確に理解する必要があります。

例えば、電動機を使用した位置決め装置であれば、駆動力を発生させる機能、回転運動を伝達する機能、位置を検出する機能、指定位置で停止する機能、異常時に安全な状態へ移行する機能などに分解できます。

これらの機能を区別することで、位置がずれる、停止できない、動作速度が低下する、異常を検出できないといった故障状態を具体的に検討できるようになります。

ここで注意したいのは、製品を構成する部品の名称を並べるだけでは、十分な機能分析にならないことです。

例えば、「ねじ」という部品名だけでは故障モードを適切に評価できません。ねじが担う機能を「構成部品を所定の締結力で保持する」と定義すれば、締結力の不足、緩み、破断、ねじ山の損傷など、機能に対応した不具合を考えやすくなります。

機能を整理した後は、それぞれに必要な性能や受入基準を設定します。

寸法精度、位置決め精度、許容荷重、消費電力、応答時間、耐久性、密閉性能などについて、要求値や確認方法を明確にします。数値化が難しい機能についても、正常と異常をどのように区別するのかを検討する必要があります。

例えば、操作部のクリック感や外観品質など、利用者の感覚に関係する要求については、比較用の限度見本や評価条件を設定する方法があります。ただし、官能評価を行う場合は評価者による差が生じる可能性があるため、判断条件をできるだけ統一します。

製品設計を外注する場合、この機能分析を外注先だけに任せきりにしないことが重要です。

外注先は設計構造や実現方法に詳しくても、最終利用者の操作方法や現場で重視される性能まで把握しているとは限りません。発注側が使用場面や顧客要求を説明し、外注先が技術的な実現条件へ落とし込む形で共同検討することが効果的です。

また、製品の主要機能だけでなく、補助機能にも目を向ける必要があります。

例えば、電子機器の固定構造には、部品を保持するだけでなく、振動を抑える、熱による変形を吸収する、電気的な絶縁を確保するなどの役割がある場合があります。このような補助機能を見落とすと、主要機能に問題がない設計でも、長期使用時に不具合が発生する可能性があります。

さらに、複数の機能が互いに影響する部分も確認します。

防水性を高めるために筐体の密閉度を上げた結果、内部の放熱性能が低下する場合があります。また、軽量化を優先すると、振動や衝撃に対する余裕が小さくなることもあります。個別の性能を満たしていても、機能間の相互作用によって製品全体の信頼性が損なわれる可能性があるためです。

機能分析の成果は、要求仕様と故障モードを結び付ける資料として残します。どの要求に対して、どの故障モードを検討し、どの試験で確認するのかを追跡できる状態にすることで、後の設計変更や外注先とのレビューに活用できます。

手順3:想定される故障モードと原因・影響を洗い出す

製品の機能と要求仕様を整理したら、それぞれの機能について想定される故障モードを洗い出します。

この段階では、故障モード、故障の影響、故障原因を混同しないことが重要です。

故障モードは、対象とする部品や機能がどのように正常状態から外れるかを示します。故障の影響は、その結果として製品や利用者に何が起こるかを表します。故障原因は、故障モードを引き起こす設計上の要因や使用条件などを指します。

例えば、屋外設置型の電子機器において、筐体の密閉機能を分析する場合を考えます。

故障モードは、密閉部分から水分が侵入することです。その影響として、内部回路の腐食、絶縁性能の低下、装置の停止などが考えられます。原因としては、シール部の圧縮不足、筐体の変形、組立時の位置ずれ、材料の経年変化などが想定されます。

このように原因と影響を分けることで、対策を検討する対象が明確になります。

もし故障モードを「装置が故障する」とだけ記載すると、原因が広すぎて有効な設計改善策を検討しにくくなります。逆に、具体的な故障状態を定義できれば、寸法変更、材料変更、固定方法の見直し、検査条件の追加など、対策の候補を整理しやすくなります。

故障モードを抽出する際には、通常使用中の故障だけでなく、輸送、保管、設置、組立、点検、保守、廃棄に至るまでの状態を考慮します。

例えば、製品を正常に使用している間は問題がなくても、保守時に繰り返し着脱するコネクタが摩耗したり、輸送中の振動で締結部が緩んだりする場合があります。製品のライフサイクルを広く捉えることで、設計段階では気付きにくいリスクを発見できる可能性があります。

また、単一の部品故障が他の部品へ波及するケースも重要です。

冷却機能が低下した結果、内部温度が上昇し、電子部品の性能が変化することがあります。固定部品の破損によって可動部分の位置がずれ、周辺構造と干渉する場合もあります。こうした連鎖的な影響を評価するには、個別部品だけでなく、製品全体の機能関係を確認する必要があります。

外注先との検討では、過去の設計変更履歴、試作時の不具合、量産品の品質記録、顧客からの問い合わせ、保守点検記録などを活用すると効果的です。

過去に発生した不具合は、実際の使用条件を反映した貴重な情報です。ただし、過去に不具合が発生していないことだけを理由に、リスクが低いと判断するのは適切ではありません。使用実績が少ない製品や新しい技術を採用した製品では、十分な故障データが蓄積されていないこともあります。

さらに、設計担当者だけで分析すると、特定の視点に偏る可能性があります。

機械設計担当者は強度や摩耗に注目し、電気設計担当者は電源や信号の異常を重視する傾向があります。品質保証担当者は検査の実現性を、製造担当者は組立ばらつきを、保守担当者は点検時の作業性を重視する場合があります。

複数の立場から検討することで、故障モードの網羅性を高めやすくなります。

ただし、思い付く故障を無制限に追加すればよいわけではありません。分析対象の機能と結び付かない項目や、同じ内容を異なる表現で重複記載した項目が増えると、評価の効率が低下します。

故障モードは機能との対応関係を確認しながら整理し、原因ごとに必要な評価を行える粒度で記録します。故障が発生したときの影響範囲も、部品単位、製品単位、利用者や周辺設備への影響に分けて考えると、後の重大度評価を進めやすくなります。

手順4:重大度・発生度・検出度からリスクを評価する

故障モードと原因、影響を洗い出した後は、それぞれのリスクを評価します。FMEAでは、重大度、発生度、検出度の3つの観点を用いて評価する方法が広く知られています。

重大度は、故障が発生した場合の影響の大きさを表します。発生度は、対象とする故障原因がどの程度発生し得るかを評価する指標です。検出度は、定められた検出管理によって故障原因や故障モードを事前に発見できる可能性を評価する指標として扱われます。

ただし、評価方法や尺度は、採用するFMEAの手順、対象製品、業界の要求によって異なります。すべての製品に共通する点数基準が存在するわけではないため、発注側と外注先で評価尺度の定義を確認する必要があります。

まず重大度については、故障によって製品のどの機能が失われるか、利用者や周辺設備にどのような影響があるかを検討します。

例えば、表示部の一部に不具合が発生する場合と、装置の可動部が停止できなくなる場合では、想定される影響の性質が異なります。後者が人身事故や重大な設備損傷につながる可能性を持つ場合には、安全上の影響を慎重に評価しなければなりません。

重大度は、故障が起こりにくいことや検査で発見できることだけを理由に小さく評価するものではありません。対象となる故障の影響を明確にし、発生可能性や検出可能性とは区別して判断することが基本です。

次に発生度では、設計上の余裕、材料特性、使用環境、過去の故障実績、予防管理の有効性などを確認します。

例えば、繰り返し荷重を受ける固定部品では、想定荷重や使用回数に対して十分な耐久性を備えているかが評価材料になります。ただし、試験実績が少ない段階では、故障発生の可能性を精度よく見積もることが難しい場合があります。

過去の実績が不足しているときは、類似製品の情報や技術的な検討結果を参考にしながら、不確実性が残ることを記録します。根拠がないまま低い発生度を設定すると、設計上の重要な課題が見逃されるおそれがあります。

検出度では、設計レビュー、解析、試作試験、検査などの管理方法が、対象とする故障原因や故障モードを適切な段階で発見できるかを確認します。

例えば、筐体の密閉不良に対して、図面上の寸法確認だけを実施する場合と、必要な使用条件を反映した密閉性能試験まで実施する場合では、検出管理の内容が異なります。ただし、試験を追加すれば必ず検出度が改善するとは限りません。試験条件や測定方法が対象となる故障を適切に捉えているかを確認する必要があります。

点数方式を採用する場合は、重大度をS、発生度をO、検出度をDとして整理することがあります。一般的な方式の一部では、検出が難しいほどDの評価値を大きく設定しますが、実際の尺度は採用する評価基準に従います。

また、S、O、Dを乗算してリスク優先数を求める方法もあります。しかし、同じ数値であっても重大度と発生度の組み合わせは異なるため、単純な積の大小だけで対応の要否を決めることは適切ではありません。

特に安全性や法令上の要求に関わる故障は、数値が相対的に小さくても個別の検討が必要です。リスク優先数を利用する場合でも、重大度の高さ、故障原因、既存対策、製品固有の要求を考慮して判断します。

製品設計の外注では、評価点数だけを受け取るのではなく、その点数を設定した理由や参照資料まで共有することが重要です。発注側と外注先で判断根拠を確認できれば、評価のばらつきや前提条件の違いを発見しやすくなります。

手順5:リスクの優先順位を決めて設計改善策を検討する

リスク評価を終えたら、どの故障モードから対策を検討するかを決めます。

製品設計では、すべての故障モードに対して同じ程度の時間や資源を投入できるとは限りません。そのため、影響の重大さ、発生の可能性、検出管理の有効性を踏まえ、優先的に改善する項目を整理することが重要です。

特に、人身安全や重大な設備損傷に関係する故障については、単純な順位付けだけでなく、適用される安全要求や許容条件に基づいて対応の必要性を検討します。

例えば、電源回路の故障によって装置の一部機能が停止する場合と、保護機能が働かず危険な動作を継続する場合では、求められる対策が異なる可能性があります。故障の頻度だけに注目せず、故障が発生した際の影響と安全上の要求を確認することが必要です。

改善策を検討する際には、可能な範囲で故障原因そのものを除去することや、発生可能性を低減する設計変更を優先的に検討します。

例えば、締結部の緩みが懸念される場合には、ねじの選定、締結構造、荷重条件、振動対策、組立条件などを見直します。密閉部分からの浸水が懸念される場合には、シール構造、接触面の寸法、公差、材料、排水構造などについて改善の余地を検討します。

検査を追加する方法も重要ですが、検査だけでは故障原因そのものがなくなるわけではありません。設計上の問題が残った状態で検査工程のみに依存すると、検査条件から外れた製品や使用状態で不具合が発生する可能性があります。

そのため、発生防止策と検出策の役割を区別し、対象となる故障に適した組み合わせを検討します。

また、設計改善には副作用が生じる場合があります。

例えば、部品の強度を高めるために肉厚を増やすと、重量や寸法、放熱性、組立性などに影響する可能性があります。防水性を高めるために密閉構造を変更すると、温度上昇や保守時の分解作業に影響することもあります。

したがって、改善策を採用する前には、その変更によって新しい故障モードが発生しないかを確認する必要があります。

外注先から改善案が提示された場合は、設計変更の内容だけでなく、対象となる故障原因、期待する効果、必要な検証方法、変更が及ぶ範囲まで説明を求めることが望まれます。

改善案が複数ある場合には、技術的な実現性、品質への影響、製造工程への適合性、保守性などを比較します。ただし、安全要求を満たすことが必要な項目については、一般的な利便性や開発上の都合だけを理由に要求を緩和しないよう注意します。

対策の優先順位を決定したら、担当者、実施予定時期、確認方法、判断責任者を明確にします。対策案がFMEAの資料に記載されただけでは、改善が完了したことにはなりません。

設計変更の実施状況を追跡し、必要な検証が終わるまで管理することで、リスク評価を実際の品質改善につなげやすくなります。

手順6:対策の検証結果を反映して残留リスクを管理する

設計改善策を実施した後は、その対策が意図した効果を持っているかを検証します。

FMEAは故障モードを洗い出して点数を付ければ完了するものではありません。対策を実施し、検証結果を確認し、必要に応じて分析内容を更新することで、設計上のリスク管理に活用できます。

まず、実施した設計変更が対象の故障原因に対して有効かを確認します。

例えば、振動による締結部の緩みを防ぐために固定構造を変更した場合、変更後の設計が想定する振動条件に適合するかを検討します。必要に応じて振動試験や締結状態の確認を実施し、試験前後の状態を記録します。

密閉性能を改善した場合には、想定する水分や環境条件に応じた試験方法を選定します。温度変化が大きい製品では、材料の膨張や収縮による影響も評価対象になることがあります。

ここで重要なのは、試験に合格したという結果だけでなく、試験条件が実際の要求仕様や故障原因に対応しているかを確認することです。

試験時間、温度条件、負荷条件、試料数、測定方法、合否基準などが不明確であれば、得られた結果をどの範囲まで適用できるか判断しにくくなります。

また、試作段階で問題が確認されなかった場合でも、量産時の材料ばらつきや製造条件によって品質が変化する可能性があります。必要に応じて、製造工程に関するリスク分析や量産条件での検証を別途実施します。

対策の検証後は、FMEAの評価を更新します。

発生防止策によって故障原因の発生可能性が低下したと判断できる場合には、その根拠を確認したうえで発生度を見直します。検出管理の改善についても、実際の検出能力を確認できた場合に評価へ反映します。

一方、重大度は故障が発生した場合の影響に基づくため、単に検査を強化したという理由だけで低くするものではありません。故障時の影響そのものが変わる設計変更を行った場合には、その内容に応じて再評価を検討します。

改善後にも残るリスクは、残留リスクとして整理します。

残留リスクがあること自体で直ちに設計不適合と判断するのではなく、製品に適用される要求事項やリスク受容基準に照らして判断する必要があります。安全に関わる製品では、別途必要な安全評価や承認手順との整合も確認します。

外注設計では、検証結果と残留リスクの管理責任を曖昧にしないことが重要です。

外注先が試験を担当する場合でも、発注側が製品全体の要求仕様や使用条件を管理している場合があります。どの組織が検証結果を確認し、設計変更を承認し、最終的な受入判断を行うかを事前に取り決めておきます。

さらに、量産開始後や市場投入後に不具合情報が得られた場合には、必要に応じてFMEAを更新します。実際の故障情報を設計評価へ戻すことで、次の設計変更や類似製品の開発に活用しやすくなります。

製品設計の外注先と共有すべき資料と責任分担

故障モード分析を外注設計に活用するには、分析手法だけでなく、発注側と外注先の情報共有と責任分担を整える必要があります。

まず共有したいのは、製品の要求仕様書です。製品の使用目的、主要機能、性能要求、使用環境、想定寿命、保守条件、適用される安全要求などを整理し、分析の前提を統一します。

仕様書の内容が未確定の場合は、確定済みの要求と検討中の条件を区別します。外注先が仮定した条件についても、発注側が確認できる状態にしておくことが重要です。

次に、構成図、機能ブロック図、設計図面、部品情報などを共有します。これらの資料があれば、どの構成要素がどの機能を担当し、故障がどこへ波及する可能性があるかを検討しやすくなります。

過去の不具合履歴や試験結果も有用です。類似製品で発生した故障や設計変更の経緯は、今回の製品で検討すべき故障モードを判断する際の参考になります。ただし、仕様や使用条件が異なる場合は、その差を考慮する必要があります。

FMEAの記録については、分析対象、機能、故障モード、影響、原因、既存管理、評価結果、対策、担当者、検証結果、更新履歴などを追跡できる形で管理します。

特に外注先が複数存在する場合は、構成要素間の境界条件を誰が確認するかを明確にすることが重要です。

例えば、筐体設計と電子回路設計を異なる外注先へ依頼する場合、筐体内部の発熱、基板固定部の振動、配線の取り回しなどは、双方の設計条件に関係します。

このような項目について担当範囲が曖昧だと、各外注先が自社の設計範囲だけを評価し、製品全体としてのリスクが十分検討されない可能性があります。

そのため、発注側が製品全体の要求仕様と設計上の境界条件を管理し、外注先と共同で評価内容を確認する体制が考えられます。具体的な役割は契約や開発体制に応じて定めます。

また、設計変更を行う場合の連絡方法も重要です。

一つの部品を変更すると、関連する構造や回路、検査条件にも影響する可能性があります。変更内容、理由、影響範囲、承認状況を記録し、必要な関係者へ共有できる仕組みを整えます。

FMEAの評価資料は、作成時点の設計版数と対応付けることが望まれます。古い設計情報を基にした評価を最新の設計へそのまま適用すると、変更後に発生した新しいリスクを見落とすおそれがあります。

さらに、外注先との契約では、成果物の範囲、レビューの実施時期、設計変更時の対応、試験結果の提出方法、記録の管理責任などを確認しておきます。

機密情報を共有する場合は、契約上の取扱条件やアクセス権限を定め、必要な資料を適切に管理します。

最終的には、誰が資料を作成するかだけでなく、誰が内容を確認し、どの段階で設計判断を行うかを明確にすることが、外注設計におけるリスク管理の実効性を高めるポイントになります。

故障モード分析で起こりやすい失敗と改善方法

製品設計の外注で故障モード分析を実施しても、進め方によっては十分な効果が得られない場合があります。

代表的な失敗の一つは、過去に作成したFMEAの内容を、今回の製品へ十分な確認をせずに流用することです。

類似製品の分析資料は参考になりますが、使用環境や材料、製品構成、設計条件が変われば、故障原因や影響も変化する可能性があります。既存資料を利用する場合は、今回の設計条件との違いを確認し、必要な項目を追加または修正します。

次に、評価点数の設定そのものが目的になってしまうケースがあります。

評価項目を埋めることだけに集中すると、故障原因を十分に検討しないまま、経験的な判断で点数を付けてしまう可能性があります。点数の高低だけでなく、原因と影響のつながり、評価根拠、既存管理の有効性を確認することが重要です。

また、リスク優先数が一定の基準より低ければ対策不要と機械的に判断する方法にも注意が必要です。

重大度が高い故障については、発生度や検出度の評価が低くても、適用される安全要求や製品固有の基準に基づく確認が必要になる場合があります。優先順位の決定には、複数の評価観点を用いることが望まれます。

外注先へ分析を任せきりにすることも、よくある課題です。

外注先は設計技術に精通していても、利用者の操作方法、過去の故障経験、現場での保守条件などを十分把握しているとは限りません。発注側が必要な情報を提供し、分析結果を共同で確認することが重要です。

さらに、設計変更後にFMEAを更新しないことも問題になります。

設計変更によって一つの故障原因が解消された場合でも、別の構成要素に影響が生じる可能性があります。変更前の評価を残したままにせず、変更内容と検証結果を反映して分析を更新する必要があります。

試験結果の管理不足にも注意が必要です。

試験を実施した事実だけが記録され、試験条件や合否基準、対象となる設計版数が不明確な場合、後から結果を再確認することが難しくなります。試験結果は、要求仕様、対象故障モード、設計変更履歴と結び付けて管理します。

また、FMEAだけですべての安全上のリスクを評価できると考えることも避ける必要があります。

FMEAは故障モードから影響を検討する手法であり、複数の独立した故障の組み合わせ、複雑な操作上の危険、システム全体の安全性などについては、別の分析手法や安全評価が必要になる場合があります。

対象製品に適用される要求事項を確認し、必要な分析や検証を組み合わせることが重要です。

これらの失敗を防ぐには、分析の開始時点で目的と範囲を明確にし、定期的なレビューを通じて評価結果と実際の設計を一致させることが有効です。

FMEAを単なる提出資料ではなく、設計判断の根拠を共有するための資料として運用することが、外注設計の品質向上につながります。

まとめ:故障モード分析を設計品質の向上につなげる

製品設計の外注では、設計図面や試作品が要求仕様を満たしているかを確認するだけでなく、使用中に発生し得る故障や不具合を事前に検討することが重要です。

故障モード影響解析を活用すると、製品の機能、故障モード、原因、影響、既存の管理方法を整理し、設計リスクについて発注側と外注先が共通の認識を持ちやすくなります。

実務では、最初に分析対象と使用条件を明確にし、要求機能を分解して故障モードを洗い出します。その後、重大度、発生度、検出度などを用いて評価し、優先的に対応すべきリスクを検討します。

改善策を実施した後は、試験や設計レビューによって有効性を確認し、残留リスクと設計変更履歴を管理することが必要です。

特に重要なのは、FMEAの評価点数や資料の完成そのものを目的としないことです。設計上の課題を発見し、必要な改善を実行し、その結果を確認する一連の活動として活用することが求められます。

また、製品設計を外注する場合は、分析範囲、設計責任、資料の共有方法、変更管理、最終的な承認手順を事前に整理しておくことが望まれます。

FMEAは、すべての故障や危険を予測できる万能な方法ではありません。しかし、要求仕様の確認、設計レビュー、必要な安全評価、検証試験と組み合わせることで、設計段階におけるリスクの見落としを減らすための有用な手法となります。

製品設計の外注を進める際には、外注先の設計技術だけでなく、リスク評価への参加体制や改善内容の検証方法まで確認し、開発初期から継続的に品質を作り込むことが重要です。

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