プレス加工を外注する際、製品の寸法精度や金型の加工能力、材料の選定には注意を払っていても、抜き落とし品を回収するシュートの設計までは十分に確認できていないケースがあります。抜き落とし品は、金型内で所定の形状に加工された後、シュートを通って回収容器へ移動します。この排出工程で製品同士が衝突したり、シュートの壁面に接触したりすると、打痕や擦り傷が発生する可能性があります。
特に、外観品質が重視される金属部品や、後工程で表面処理を行う製品では、小さな傷が品質上の問題になることがあります。金型内では良品として加工できていても、回収工程で傷が発生すれば、不適合品の増加や再選別、工程の見直しにつながります。
こうした問題を防ぐには、抜き落とし直後の製品の動き、シュートの傾斜、接触面の材質、出口の形状、異物の管理方法などを総合的に確認することが重要です。また、外注先にシュート設計を任せる場合でも、発注側が品質要求と確認条件を明確に伝える必要があります。
本記事では、プレス加工外注で抜き落とし品の傷を防ぐために確認したい6つのシュート設計ポイントを解説します。金型の新規製作を依頼する場合だけでなく、既存金型の傷対策や量産工程の改善にも活用できる内容です。
プレス加工外注で抜き落とし品に傷が発生する主な原因
プレス加工における抜き落とし品とは、打ち抜き加工によって材料から分離され、金型の下方などへ排出される製品や部品を指します。加工方法によっては、打ち抜かれた部分が製品となる場合もあれば、不要な抜きかすとして扱われる場合もあります。本記事では、抜き落とされた部分を製品として回収する工程を中心に解説します。
抜き落とし品の品質を安定させるには、金型内部の加工精度だけでなく、金型から排出された後の製品の取り扱いも重要です。
例えば、抜き落とし直後の製品がシュートの底面に強く衝突すると、接触部分に打痕が残る可能性があります。また、シュートを滑り落ちる途中で製品が回転したり、壁面に繰り返し接触したりすると、外周部や表面に擦り傷が発生することがあります。
特に薄板製品では、傷だけでなく変形にも注意が必要です。板厚が薄く、面積が大きい製品は、落下姿勢や衝撃の受け方によって反りや曲がりが発生する場合があります。外観上は目立たない変形でも、後工程の組立精度に影響する可能性があります。
一方、小型で重量のある製品では、搬送速度が高くなることで出口や回収容器への衝突が問題になることがあります。硬い製品同士が繰り返し接触すると、製品表面の局所的な傷が増える場合もあります。
抜き落とし品の傷が発生する原因は、単純なシュートの材質不良だけではありません。搬送経路の段差、過度な傾斜、鋭い接触端部、異物の堆積、回収容器への落下高さ、製品同士の衝突など、複数の要因が関係します。
さらに、製品の形状や材料によって傷の発生条件は異なります。平板状の製品では広い面がシュートに接触しやすく、突起のある製品では局所的な接触圧力が高くなることがあります。表面が仕上げられた製品では、微細な擦り傷でも外観不良として扱われる場合があります。
そのため、プレス加工を外注する際には、単に「傷がつかないシュートにしてください」と伝えるだけでは十分とはいえません。どの面を保護する必要があるのか、どの程度の接触が許容されるのか、どの工程で傷が発生しやすいのかを具体的に整理することが重要です。
また、傷の原因を調査する際には、金型内で発生した傷と排出工程で発生した傷を区別する必要があります。抜きパンチやダイとの接触による傷、材料搬送時の傷、シュートでの擦り傷は、発生位置や形状に特徴が現れる場合があります。ただし、傷の外観だけで原因を断定できるとは限りません。
加工直後の製品と回収後の製品を比較し、傷が増える工程を確認することで、対策すべき場所を絞り込みやすくなります。
確認1:抜き落とし直後から回収までの搬送経路を確認する
シュート設計で最初に確認したいのは、抜き落とし品が金型から排出されて回収容器に到達するまでの搬送経路です。
傷を防ぐためには、製品がどの位置から落下し、どの面でシュートに接触し、どのような姿勢で移動するのかを把握する必要があります。
プレス加工では、金型から抜き落とされた製品が自然落下によってシュートに入る構造が一般的に用いられます。ただし、製品が常に同じ姿勢で落下するとは限りません。製品形状の偏り、重心位置、排出時の姿勢、周囲の部品との接触などによって、落下方向や回転の仕方が変化する場合があります。
そのため、シュート入口は、製品が想定される範囲で姿勢を変えても、不要な衝突や引っ掛かりが生じにくい形状とすることが重要です。
例えば、シュート入口が狭すぎると、製品の角部が側壁に接触しやすくなります。反対に、入口を広げすぎると、製品の落下位置がばらつき、想定していない場所へ衝突する可能性があります。
必要な開口寸法は、製品の外形寸法だけでなく、抜き落とし時の姿勢変化や落下位置のばらつきを考慮して決める必要があります。
また、搬送経路に急激な方向転換がある場合も注意が必要です。
シュートの途中で進行方向が大きく変わると、製品が壁面へ衝突することがあります。特に速度が高い状態で方向転換すると、局所的な衝撃が増加しやすくなります。
可能であれば、製品の進行方向が滑らかに変化する構造を検討します。曲がり部分に適切な曲率を持たせることや、接触位置を分散させることが有効な場合があります。
ただし、単純に曲面を設ければ傷が防げるわけではありません。曲面の半径や位置によっては、製品の姿勢が不安定になったり、搬送途中で回転したりすることがあります。実際の製品形状に合わせた確認が必要です。
さらに、シュートを複数の部材で構成する場合には、接続部分の段差も確認します。
接続部にわずかな段差があるだけでも、製品の角部が引っ掛かることがあります。段差によって搬送が一時的に停止し、後続の製品が衝突すると、傷や変形が発生する可能性があります。
シュートの継ぎ目、固定金具、ねじ頭、溶接部などが製品の搬送経路に突出していないかを確認することが重要です。
外注先との設計確認では、図面上のシュート形状だけでなく、金型をプレス機に取り付けた状態での位置関係も把握する必要があります。機械本体のフレーム、周辺設備、回収装置などとの干渉によって、理想的な経路を確保できない場合があるためです。
発注段階で設備配置や使用可能な空間を共有し、製品の排出方向と回収位置を明確にしておくと、設計後の手戻りを減らしやすくなります。
搬送経路の確認では、製品が無理なく流れることだけでなく、傷が発生しやすい接触点を減らすことが基本になります。
確認2:シュートの傾斜角度と搬送速度を適切に設定する
シュートの傾斜角度は、抜き落とし品の搬送状態に大きく影響します。
傾斜が小さすぎる場合、製品が滑りにくくなり、途中で停滞する可能性があります。一方、傾斜が大きすぎる場合、製品の移動速度が高くなり、出口や回収容器での衝突が強くなることがあります。
つまり、シュート設計では、製品を確実に排出することと、搬送中の衝撃を抑えることの両立が求められます。
適切な傾斜角度は、製品の材質、重量、形状、接触面の状態、加工油の有無などによって変化します。そのため、すべてのプレス加工製品に共通する最適角度を一律に設定することは困難です。
例えば、平らな金属製品では、接触面積が大きくなることで摩擦の影響を受けやすい場合があります。また、加工油が付着していると、摩擦状態が変化するだけでなく、接触面の密着によって滑りにくくなる場合もあります。
これに対して、厚みがあり接触面積の小さい製品では、比較的小さな抵抗で滑ることがあります。ただし、製品が転がりやすい形状の場合には、滑走よりも転動によって速度が上がる可能性があります。
したがって、傾斜角度を決める際には、実際の製品とシュート材を使用して搬送状態を確認することが重要です。
また、シュート全体を同じ角度にする必要はありません。
入口部分では製品を確実に受け取り、中間部分では安定して搬送し、出口付近では必要に応じて速度を抑えるなど、区間ごとに役割を分ける方法も考えられます。
ただし、傾斜を途中で急激に変えると、その位置で製品が衝突したり、滞留したりする場合があります。角度変更部には滑らかな接続形状を設け、製品の姿勢変化を確認する必要があります。
さらに、連続生産では、後続の抜き落とし品との間隔も重要です。
単品では問題なく流れるシュートでも、加工速度が上がると製品同士が接触する可能性があります。先行する製品の移動速度が遅く、後続の製品が追いつく場合には、衝突による傷が発生しやすくなります。
特に、シュートの途中に減速部分を設ける場合は、その場所が製品の滞留点にならないかを確認する必要があります。
搬送速度を抑えるために摩擦の大きい材料を使用すると、傷の軽減につながる場合がある一方、製品が滑らずに堆積するリスクも生じます。
そのため、摩擦による減速だけに頼らず、搬送経路や出口構造を含めて検討することが重要です。
外注先に傾斜角度の設計を依頼する際には、予定している加工速度や製品の排出頻度を伝えておきます。低速の試打ちだけで判断すると、量産時の製品間隔や搬送状態を十分に評価できない可能性があります。
実機で確認する際には、滑り出しの安定性、途中停止の有無、製品の回転、出口での速度、後続品との接触などを観察します。
傷の少なさだけでなく、排出不良による金型内への製品残留や設備停止の危険性も含めて評価することが必要です。
確認3:シュートの材質と接触面の仕上げを確認する
シュートの材質と表面状態は、抜き落とし品の擦り傷や打痕に直接関係する重要な設計要素です。
金属製シュートは剛性や耐久性を確保しやすい一方、製品と硬い面が接触することで傷が発生する場合があります。特に、製品表面の外観品質が厳しく求められる場合には、シュートの接触面について慎重な検討が必要です。
傷対策としては、金属製のシュートに樹脂製のライナーを取り付けたり、弾性を持つ材料を接触部分に使用したりする方法があります。
ただし、柔らかい材料であれば必ず傷を防げるわけではありません。
接触材の硬さ、摩擦特性、耐摩耗性、耐油性などによって、搬送状態や保守性が変化します。柔らかすぎる材料では、製品の角部が食い込んで搬送不良を起こす可能性があります。また、摩耗によって表面に段差や異物が生じると、かえって傷の原因になる場合があります。
接触材を選定する際には、製品側の材質や表面仕上げも考慮します。
例えば、外観面を持つ薄板部品では、硬い接触点を減らすことが重要になる場合があります。一方、打ち抜き後に鋭い端部やバリが残る製品では、柔らかいライナーが削られたり、切れたりする可能性があります。
そのため、製品のバリの方向や高さを把握し、接触材の損傷リスクも評価する必要があります。
また、シュート表面の粗さや加工状態にも注意が必要です。
金属製シュートの表面に加工痕や突起が残っていると、製品が滑る際に擦り傷が発生することがあります。特に、板材の切断端面や溶接部分が搬送面に露出している場合には、局所的な接触による傷が問題になる可能性があります。
シュートの接触面は、必要な範囲で滑らかに仕上げ、鋭い端部を除去することが基本です。
ただし、表面を滑らかにすれば必ず搬送性が向上するとは限りません。加工油や製品の接触状態によっては、平滑な面で密着が発生する場合もあります。仕上げ状態と実際の滑りやすさを組み合わせて評価する必要があります。
さらに、接触材の固定方法も重要です。
樹脂製ライナーなどを取り付ける場合、固定ねじや留め具が製品に接触しないようにする必要があります。使用中にライナーが浮き上がったり、ずれたりすると、段差による引っ掛かりが発生する可能性があります。
ライナーの固定方法は、搬送面の平坦性を維持できる構造とし、摩耗した場合に交換しやすいことも考慮します。
シュートを長期間使用する場合には、接触材の摩耗や変形によって初期の搬送状態が変化することがあります。そのため、初期設計の評価だけでなく、定期点検や交換を前提とした構造にしておくことが望まれます。
外注先へ材質選定を依頼する際には、単に「傷がつきにくい材料」と指定するのではなく、製品の材質、重量、外観要求、使用する加工油、想定される稼働条件を共有します。
材質の選定理由を確認し、必要に応じて候補材料を比較することで、品質と搬送安定性の両立を図りやすくなります。
確認4:シュート出口と回収容器の衝突対策を確認する
シュートの途中では傷が発生していなくても、出口から回収容器へ落下する際に傷がつく場合があります。
そのため、シュート設計では搬送途中の状態だけでなく、最終的な回収方法まで含めて確認することが重要です。
特に問題になりやすいのが、シュート出口から回収容器までの落下高さです。
落下高さが大きくなると、製品が回収容器の底面や既に回収された製品に衝突する際の速度が高くなる可能性があります。製品の重量や形状によっては、打痕や変形の原因になります。
ただし、適切な落下高さは製品ごとに異なります。製品の重量、板厚、接触する面、回収容器の材質、堆積状態などを考慮して判断する必要があります。
傷を抑える方法としては、シュート出口を回収容器に近づける、出口の向きを調整する、受け面に適切な緩衝材を設けるなどの対策が考えられます。
ただし、緩衝材の使用にも注意点があります。
柔らかい材料を使用すると衝突時の負荷を緩和できる場合がありますが、製品が引っ掛かったり、堆積しやすくなったりする可能性があります。衝撃の緩和と回収の安定性を両立できるかを確認することが重要です。
また、回収容器の底面に傷対策を施しても、製品が積み重なった後には製品同士の接触が発生します。
特に、鋭い角部やバリを持つ製品では、堆積した製品同士が擦れ合うことで傷が増える場合があります。金属同士が接触する回数を減らすことが重要な製品では、単純な一括回収が適していないこともあります。
そのような場合には、一定数量ごとに回収する方法や、製品の姿勢を揃えて受け取る方法、仕切りを設ける方法などを検討します。
ただし、姿勢制御や整列回収を行う場合には、装置の複雑化によって排出不良や詰まりが生じないかも確認する必要があります。
さらに、回収容器内の製品量が変化すると、落下条件も変わります。
空の容器へ落下する場合と、製品が一定量たまった状態では、衝突する対象や高さが異なります。満杯に近い状態では、シュート出口付近まで製品が堆積し、正常な排出を妨げる可能性もあります。
そのため、試打ちでは空の回収容器だけでなく、製品が堆積した状態も確認することが重要です。
回収容器の容量や交換頻度、製品の堆積高さを考慮し、量産時に無理なく運用できる構造を検討します。
外注先との打ち合わせでは、金型からの排出だけを設計範囲とするのか、回収容器まで含めて検討するのかを明確にしておく必要があります。
金型製作会社とプレス加工会社、後工程の担当者が異なる場合には、シュート出口以降の責任範囲が曖昧になることがあります。
傷の発生を防ぐには、製品が回収されるまでの工程を一体として考え、必要な設備条件を事前に共有することが重要です。
確認5:加工油や抜きかすの付着を防ぐ清掃・保守構造を確認する
シュートの初期状態が良好でも、量産を続けるうちに傷が発生することがあります。
その原因の一つが、加工油や抜きかす、金属粉などの堆積です。
プレス加工では、加工条件によって潤滑油が使用されることがあります。加工油が製品やシュートに付着すると、搬送時の摩擦状態が変化します。
油膜によって滑りやすくなる場合がある一方、油の粘性や接触面の密着によって製品が停滞することもあります。そのため、加工油がある状態とない状態では、シュート内の製品挙動が異なる可能性があります。
さらに、加工油に金属粉や微細な抜きかすが付着すると、傷の原因になる場合があります。
例えば、シュート表面に硬い金属粒子が残っている状態で製品が滑ると、粒子が製品表面を擦り、線状の傷を生じさせる可能性があります。
また、シュートの曲がり部分や接続部に異物が堆積すると、製品の搬送抵抗が増加し、途中停止や姿勢の乱れにつながることがあります。
そのため、シュートには清掃しやすい構造を取り入れることが重要です。
具体的には、異物がたまりやすい段差や隙間を減らし、必要な箇所に点検用の開口部を設けるなどの方法があります。
シュートの形状が複雑で内部を確認しにくい場合には、異物の堆積を発見するまでに時間がかかる可能性があります。点検しやすい構造にしておくことで、傷の発生原因を早期に把握しやすくなります。
また、清掃のために部品を取り外す必要がある場合には、作業性にも注意が必要です。
ライナーやカバーを取り外した後、元の位置に正しく取り付けられなければ、段差や固定不良が発生する可能性があります。繰り返し清掃する部分では、位置決めしやすい構造や、取り付け状態を確認しやすい構造が望まれます。
清掃方法についても、使用材料との適合性を確認する必要があります。
樹脂製の接触材や緩衝材は、洗浄に使用する液体との組み合わせによって膨潤や劣化が生じる場合があります。加工油や洗浄剤に対する耐性を考慮して材質を選定することが重要です。
さらに、シュート内で発生する異物だけでなく、金型内部から持ち込まれる異物にも注意します。
金型内で発生した微細な抜きかすや金属粉が製品に付着したまま排出される場合、シュート側の清掃だけでは傷を十分に防げないことがあります。
そのため、傷が繰り返し発生する場合には、金型内部の異物発生状況や、材料表面の状態についても確認する必要があります。
外注先に保守構造を確認する際には、通常運転中にどの部分へ異物がたまりやすいか、清掃にどのような作業が必要か、接触材の交換方法はどうなっているかを質問するとよいでしょう。
ただし、清掃や点検では、プレス機の安全停止、予期しない起動の防止、可動部への接近防止など、設備に応じた安全手順を守ることが前提です。
量産時の傷対策では、設計段階の品質だけでなく、日常的な保守によって良好な状態を維持できることが重要になります。
確認6:試打ちと量産条件で傷の発生状況を検証する
シュート設計の最終確認では、実際の抜き落とし品を使用した検証が欠かせません。
図面上では問題がないように見えても、実際のプレス加工では製品の落下姿勢や滑り方が想定と異なる場合があります。
そのため、試打ちでは製品の寸法精度だけでなく、排出後の外観状態まで確認することが重要です。
まず、傷の判定基準を明確にします。
製品にどの程度の傷が許容されるかは、用途や外観要求によって異なります。外観面として使用される部品と、組立後に見えなくなる内部部品では、重視する品質項目が異なる場合があります。
ただし、外観上目立たない場所であっても、組立機能や疲労強度、表面処理の品質などに影響する傷は問題になる可能性があります。
そのため、外注先との間で保護すべき面や傷の許容条件を共有し、必要に応じて限度見本や検査方法を定めることが重要です。
次に、傷が発生する工程を確認します。
金型から抜き落とされた直後の製品と、シュートを通過した後の製品を比較できれば、排出工程で傷が増えているかを判断しやすくなります。
ただし、加工直後の製品を確認する場合には、金型内やプレス機の可動領域へ不用意に手を入れないことが重要です。安全に取り出せる専用の確認方法を設け、設備の安全手順に従って実施する必要があります。
また、試打ちでは少数の製品だけで判断しないことが重要です。
数個の製品が問題なく排出されたとしても、量産時に同じ状態が維持されるとは限りません。加工速度が上がると、製品の排出間隔や衝突条件が変化することがあります。
さらに、連続運転によって加工油や異物が堆積すると、搬送状態が変わる場合もあります。
そのため、評価では低速運転時と予定する量産条件での違いを確認します。
確認する内容としては、製品の落下姿勢、シュート内での滞留、製品同士の接触、出口での衝突、回収後の傷の状態などが挙げられます。
傷が発生した場合には、傷の位置や方向、発生頻度を記録します。
例えば、特定の角部に傷が集中する場合には、シュートの壁面や段差との接触が疑われます。製品の広い面に擦り傷が発生する場合には、底面との摩擦や異物の影響が考えられます。
ただし、傷の形状だけで原因を確定するのではなく、実際の接触状態と照合することが必要です。
改善を行う場合には、変更内容と結果を対応させて管理します。
例えば、シュートの傾斜を変更した場合には、搬送速度だけでなく、途中停止や出口での衝突状態も再確認します。接触材を変更した場合には、傷の発生状況に加え、滑りやすさや摩耗の状態も評価する必要があります。
複数の変更を同時に行うと、どの対策が有効だったのか判断しにくくなる場合があります。可能な範囲で変更条件を整理し、検証結果を残すことが重要です。
さらに、試打ちで問題がなかった場合でも、量産立ち上げ後に再確認することが望まれます。
製品の回収量、稼働時間、設備の振動、清掃状態などが変わることで、初期検証では確認できなかった問題が現れる可能性があります。
量産条件での評価を通じて、設計上の問題と運用上の問題を切り分けることが、継続的な品質安定につながります。
プレス加工外注先へシュート設計を依頼する際の確認事項
プレス加工を外注する際には、金型の製作仕様だけでなく、シュートの設計条件も発注段階で共有しておくことが重要です。
特に、新規製品の立ち上げや既存製品の外注先変更では、発注側が想定する回収品質と、加工会社が通常採用している回収方法に違いがある場合があります。
そのため、まず製品の品質要求を具体的に伝える必要があります。
単に「傷がないこと」とするのではなく、外観面の位置、傷の許容条件、検査方法、後工程での取り扱いなどを共有します。
例えば、表面処理前の製品であれば、後工程で傷が目立つ可能性があります。また、組立時に他部品と接触する部分では、傷だけでなく変形やバリの状態が問題になることがあります。
製品の用途を説明することで、外注先が保護すべき部分を理解しやすくなります。
次に、金型から回収容器までの設備条件を共有します。
使用するプレス機の構造、金型の取り付け位置、排出方向、回収容器の設置場所などによって、シュートの形状は制約を受けます。
特に、既存設備を使用する場合には、金型下部の空間や周辺機器との干渉を考慮する必要があります。
シュートを設計した後に設備との干渉が判明すると、搬送経路の変更が必要になる場合があります。変更によって傾斜や接触位置が変われば、傷対策を再検討することにもなります。
そのため、設備の外形図や設置状況、使用可能な空間を早い段階で共有することが望まれます。
また、予定する加工速度や生産数量、連続運転時間についても伝えておくことが重要です。
試作段階では低速で加工する場合でも、量産では排出頻度が高くなることがあります。シュートの搬送能力が不足すると、製品同士の衝突や滞留につながる可能性があります。
外注先には、予定する量産条件で安定して排出できるかを確認する必要があります。
さらに、シュートの設計範囲と責任分担も明確にします。
金型製作会社がシュートまで製作する場合もあれば、プレス加工会社が設備に合わせて設計する場合もあります。回収容器や整列装置を別の担当者が準備する場合には、設備間の接続条件を明確にしておくことが重要です。
責任範囲が曖昧なままでは、傷が発生した際に原因調査や改善対応が進みにくくなる可能性があります。
そのため、シュート入口、搬送部分、出口、回収容器のそれぞれについて、設計担当と確認担当を決めておくことが望まれます。
また、試打ち時の判定方法についても事前に取り決めておきます。
傷の検査方法、評価する数量や運転条件、改善が必要と判断する条件などを共有しておくことで、検証結果についての認識違いを減らしやすくなります。
特に、外観品質の判定は担当者によって差が生じる場合があります。必要に応じて現物見本や写真を利用し、判定基準を具体化することが重要です。
プレス加工外注では、加工可能な設備を保有しているかだけでなく、排出工程の品質まで考慮して提案できるかを確認することが、安定した調達につながります。
量産開始後も抜き落とし品の傷を防ぐ管理方法
シュートの設計と試打ちが完了しても、傷対策はそこで終わりではありません。
量産工程では、設備の稼働や日常的な保守作業によってシュートの状態が変化する可能性があります。そのため、設計時の品質を維持するための管理方法を決めておく必要があります。
まず重要なのは、日常点検の対象を明確にすることです。
シュートの固定状態、ライナーの摩耗、搬送面の汚れ、接続部の段差、回収容器の位置などは、傷の発生に関係する可能性があります。
これらの項目を定期的に確認し、異常があれば早期に対応できる体制を整えることが重要です。
特に、接触材の摩耗は徐々に進行する場合があります。
初期状態では傷が発生していなくても、使用を続けるうちに表面が荒れたり、固定部分に段差が生じたりすることがあります。そのため、外観品質が厳しい製品では、接触材の状態を継続的に確認することが望まれます。
また、シュートを清掃した後や部材を交換した後には、搬送状態を再確認する必要があります。
清掃によって異物が除去されても、ライナーの取り付け位置が変化すれば、製品の滑り方が変わる可能性があります。部品交換後の確認方法を標準化しておくことで、保守作業に伴う品質変動を抑えやすくなります。
さらに、傷が発生した際の記録管理も重要です。
傷の発生日時、対象製品、加工条件、傷の位置、設備の状態、直近の保守作業などを記録しておくと、原因調査に役立ちます。
例えば、特定の加工条件で傷が増える場合には、搬送速度や製品間隔の影響が考えられます。また、清掃後に傷が減少する場合には、異物の堆積が関係している可能性があります。
ただし、記録上の関連だけで原因を断定せず、実際の設備状態と照合することが必要です。
また、量産中にシュートの構造を変更する場合には、変更管理を行うことが重要です。
傾斜角度の変更、接触材の変更、出口位置の調整などは、傷の改善につながる場合がありますが、別の搬送不良を発生させる可能性もあります。
そのため、変更前後の状態を記録し、必要な検証を実施したうえで量産条件へ反映することが望まれます。
外注加工の場合には、発注側と加工会社の間で変更内容を共有する仕組みも必要です。
例えば、加工会社がシュートの接触材を変更した場合、発注側がその変更を把握していなければ、後から品質変動が発生した際に原因を追跡しにくくなる可能性があります。
傷の発生に影響する可能性がある変更については、事前連絡や承認の要否を取り決めておくとよいでしょう。
さらに、回収後の製品の取り扱いも管理対象に含める必要があります。
シュートでの傷対策が十分でも、回収容器の移動や製品の移し替え、保管中の接触によって傷が発生する場合があります。
特に、外観品質が厳しい製品では、回収後の容器の取り扱い方法や製品の重ね方についても確認することが重要です。
プレス加工外注の品質を安定させるには、金型、シュート、回収、保管までを連続した工程として考える必要があります。
一つの工程だけで傷対策を完結させるのではなく、製品が次工程へ引き渡されるまでの取り扱い条件を管理することが、継続的な品質改善につながります。
まとめ:シュート設計まで含めたプレス加工外注で品質を安定させる
プレス加工外注で抜き落とし品の傷を防ぐには、金型内での加工精度だけでなく、製品が金型から排出されて回収されるまでの工程を適切に設計することが重要です。
特に、シュートの搬送経路、傾斜角度、接触材、出口構造、異物対策、試打ちでの検証は、傷の発生を抑えるうえで確認しておきたい項目です。
シュートの入口や接続部に段差があれば、製品の引っ掛かりや局所的な衝突が発生する可能性があります。また、傾斜が大きすぎると搬送速度が高まり、回収容器への衝突が問題になる場合があります。
接触材についても、柔らかい材料を使用するだけでは十分ではありません。製品の形状や材質、加工油の状態などを考慮し、搬送安定性と傷対策を両立できる構造を選定する必要があります。
さらに、シュート出口から回収容器への落下や、製品同士の接触にも注意が必要です。抜き落とし品がシュートを通過するまでの状態が良好でも、最終的な回収方法によって傷が発生する可能性があります。
プレス加工を外注する際には、こうした条件を加工会社と共有し、設計段階から確認することが望まれます。
特に、外観品質が重視される製品では、傷の許容条件や保護すべき面を明確にし、試打ちで実際の製品状態を評価することが重要です。
また、量産開始後もシュートの摩耗や異物の堆積、保守作業による状態変化を確認し、品質を継続的に管理する必要があります。
こうした改善活動では、設備の状態や変更内容を写真と記録で残し、関係者が同じ情報を確認できるようにすることも役立ちます。
特に、工場内の設備設置や改修工事を伴う場合には、シュートの取り付け位置や周辺設備との関係、施工前後の状況を記録しておくことで、設備変更の経緯を確認しやすくなります。
現場写真・位置情報・施工記録を管理するLRTK Phoneは、こうした設備設置や改修に伴う現場情報の整理にも活用できます。設備の設置状況や施工の経過を記録し、関係者間で現場情報を確認するための補助的な手段として検討できます。
プレス加工外注における傷対策では、加工品質だけでなく、排出工程の設計、回収方法、設備の維持管理までを含めた総合的な検討が欠かせません。シュート設計の6つの確認ポイントを押さえ、外注先と具体的な条件を共有することで、抜き落とし品の傷を減らし、安定した品質を確保しやすい生産体制につなげていきましょう。
ものづくりの次の一歩を、
相談から始めてみませんか。
加工・製造の外注先や共同開発のパートナー探しに。大田区産業振興協会の受・発注あっせん相談サービスをご利用いただけます。
