プレス加工を外注する際、材料歩留まりは製造効率を左右する重要な要素です。同じ材質、板厚、製品形状であっても、材料の配置方法や金型の設計、送りピッチの設定によって、使用する材料の量や発生するスクラップの割合は変わります。特に量産部品では、板取り設計のわずかな違いが材料使用量の差として積み重なるため、外注先との設計段階からの調整が欠かせません。
一方で、材料の無駄を減らすことだけを優先すると、製品寸法のばらつきや加工不良、金型の耐久性低下など、別の問題が発生する可能性があります。材料歩留まりの改善では、単純に部品同士の間隔を狭くするのではなく、製品品質と生産安定性を維持できる板取りを検討することが重要です。
また、プレス加工の外注先によって、対応できる材料幅、金型構造、加工方式、材料供給設備などが異なります。そのため、発注側が製品図面だけを渡して加工方法を任せる場合と、板取りの改善まで含めて相談する場合では、検討できる選択肢にも違いが生まれます。
この記事では、プレス加工外注で材料歩留まりを改善するための5つの板取り設計方法を解説します。材料幅の見直し、製品配置の工夫、送りピッチの最適化、形状調整、金型方式との組み合わせを中心に、外注先との確認事項や量産開始後の管理方法まで紹介します。
プレス加工外注で材料歩留まりが重要になる理由
プレス加工では、金属板やコイル材から必要な形状を打ち抜いたり、曲げたり、成形したりして製品を製造します。このとき、製品として使用される部分以外の材料には、打ち抜き後の骨組み状の残材や穴抜き部分、板の端部などが含まれます。
材料歩留まりとは、投入した材料のうち、どれだけの割合が良品として製品に利用されたかを示す指標です。一般的には、投入材料の重量に対する良品重量の割合や、使用材料面積に対する製品の正味面積の割合などで評価します。
例えば、一定の材料幅と送りピッチで製品を1個ずつ打ち抜く場合、板取り上の理論的な面積歩留まりは、製品の正味材料面積を、材料幅と1個当たりの送りピッチから求めた使用面積で割ることで概算できます。
ただし、この計算は板厚が一定で、材料幅や送り条件が安定していることを前提としたものです。実際の生産では、段取り時に使用する材料、コイルの先端や終端で発生する残材、試し打ち品、不良品なども材料消費に含まれます。そのため、設計上の理論歩留まりと実生産の歩留まりは分けて管理する必要があります。
プレス加工外注で材料歩留まりを改善するメリットは、単に廃棄材料を減らせることだけではありません。
まず、同じ数量の製品を製造するために必要な材料の使用量を抑えられる可能性があります。材料供給が不安定な場合には、限られた材料を効率的に使えることが生産計画の安定化にもつながります。
次に、スクラップの発生量を減らすことで、排出や回収に関する作業負担を軽減できる場合があります。プレス加工では打ち抜き後の残材を継続的に処理する必要があるため、板取り改善によって残材の形状や排出方法が整理されれば、周辺作業の効率化も期待できます。
さらに、板取りを検討する過程では、材料供給方向、金型構造、製品姿勢、工程配置などを見直すことになります。その結果、材料利用率だけでなく、送りの安定性や製品の取り出しやすさなど、加工工程全体の改善につながることもあります。
ただし、歩留まりの数値が高い設計が常に最適とは限りません。製品同士を極端に近づけると、金型の刃先強度が不足したり、材料送り中に変形が発生したりする場合があります。
また、スクラップを減らすために複雑な配置を採用すると、金型構造が複雑になり、段取りや保守の負担が増えることも考えられます。
したがって、プレス加工の外注先を選ぶ際には、材料歩留まりの改善提案だけでなく、その設計を安定して量産できる技術力も確認することが大切です。
板取り設計を始める前に確認したい基本条件
材料歩留まりを改善するためには、最初に製品と材料の条件を整理する必要があります。板取りは図面上で部品を並べる作業に見えますが、実際には材料特性や加工設備、品質要求など、複数の条件によって制約されます。
最初に確認したいのは、使用材料の材質と板厚です。
鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板などでは、強度、延性、ばね戻り、加工硬化の傾向などが異なります。同じ形状を打ち抜く場合でも、材料によって適切なクリアランスや加工条件が異なるため、板取りで確保する桟幅や金型の構造も変わる可能性があります。
板厚についても、材料の変形しやすさや打ち抜き時の荷重に関係します。薄板では送り中のたわみや変形、厚板では打ち抜き荷重や金型刃先への負担などを考慮する必要があります。
次に重要なのが、材料の圧延方向です。
金属板には圧延による方向性が残っている場合があり、材質や加工条件によっては、曲げ方向と圧延方向の関係が割れや成形性に影響します。特に小さな曲げ半径が求められる部品では、材料利用率を優先して製品を自由に回転させることが適切とは限りません。
圧延方向に関する制約がある場合は、製品図面や加工仕様書に明示しておくことが必要です。
表面品質も確認しておきたい条件です。外観部品では、材料表面の方向性、保護材の有無、傷が許される範囲などによって、製品の向きを制限する場合があります。表裏の指定がある部品では、反転配置ができるかどうかも事前に確認しなければなりません。
さらに、製品の外形寸法だけでなく、穴、切欠き、曲げ位置、バリ方向、寸法公差なども板取りに影響します。
例えば、外形の一部に細い突出部がある製品では、隣接する部品との距離を一律に狭くすると、突出部周辺のスクラップが変形しやすくなる可能性があります。また、精度が求められる穴の近くに外形打ち抜き工程を配置する場合には、加工順序による変形の影響も考慮する必要があります。
外注先の設備条件も欠かせません。
使用可能なプレス機の能力、材料供給装置が扱える幅、送り精度、金型寸法、スクラップ排出方法などによって、実現できる板取りは異なります。
材料メーカーから供給されるコイル幅や定尺板の寸法も確認が必要です。図面上で理想的な材料幅を設定しても、その幅を安定して調達できなければ、実際の生産には適用しにくくなります。
板取り改善を始める段階では、製品仕様、材料仕様、材料供給形態、外注先の設備条件を同時に整理し、変更できる条件と変更できない条件を区別しておくことが重要です。
方法1:材料幅と製品配置を見直して端材を減らす
材料歩留まりを改善する基本的な方法の一つが、材料幅と製品配置の組み合わせを見直すことです。
プレス加工では、コイル材や定尺板の幅に対して製品をどのように配置するかによって、端部に残る材料の量が変わります。特にコイル材を使用する連続加工では、材料幅と送りピッチの組み合わせが材料利用率に直接影響します。
例えば、製品を1列で配置したときに材料幅の片側へ大きな余白が残る場合、材料幅を狭くすることで歩留まりを改善できる可能性があります。
ただし、材料の端部には、金型による案内や送りの安定性を確保するための余裕が必要です。製品外形の寸法だけを基準に材料幅を決めると、金型内での位置ずれや材料の変形が発生するおそれがあります。
そのため、材料幅の検討では、製品の最大幅に加えて、左右の耳幅、材料幅の許容差、送り時の蛇行、金型の案内方式などを確認する必要があります。
材料幅を狭くする際には、外注先が使用する材料供給装置や金型のガイド構造との適合性も重要です。幅を減らしすぎると、材料を安定して案内できなくなる場合があるため、設備に応じた必要寸法を確保しなければなりません。
また、材料幅の変更だけでなく、製品を幅方向に複数配置する方法もあります。
比較的小さな製品では、材料幅に対して1個だけを配置するより、複数個を並べた方が端部の余白を有効利用できる場合があります。
ただし、複数個取りでは、同時に打ち抜く製品の数が増えるため、加工荷重や金型の大きさが変わります。部品の取り出し方法やスクラップ排出も複雑になる可能性があり、材料利用率だけで判断することはできません。
定尺板を使用する場合には、板全体に対して製品をどの方向に並べるかを検討します。
板の長手方向へ製品を並べた場合と、短手方向へ並べた場合では、最後に残る端材の形状が異なります。材料を使い切れない場合でも、残材が別の部品に利用できる形状であれば、材料全体の有効活用につながることがあります。
ただし、再利用可能な端材として扱うには、材質、板厚、寸法、材料ロットなどを識別できる管理が必要です。
外注先へ材料幅の改善を相談する際には、現在の材料幅だけでなく、製品の配置方向、耳幅、残材の発生位置、材料供給形態を共有すると検討しやすくなります。
材料幅を変更した場合の理論歩留まりを比較しながら、設備適合性と加工安定性を確認することが重要です。
方法2:製品の回転・反転・千鳥配置で材料利用率を高める
製品の向きを工夫することも、板取り設計で効果が期待できる方法です。
単純な長方形の部品では、同じ方向に並べても材料を比較的効率よく利用できます。しかし、斜めの外形や曲線、突出部、切欠きなどを持つ部品では、一方向に並べるだけでは大きな隙間が発生することがあります。
このような場合に検討したいのが、製品を回転させる配置や、隣接する部品の向きを交互に変える配置です。
例えば、片側に突出部がある製品を同じ向きで並べると、突出部の周囲に使用されない空間が生じることがあります。隣の製品を180度回転させて配置すると、一方の突出部をもう一方の凹部へ近づけられ、材料利用率を改善できる場合があります。
また、製品を互い違いにずらして並べる千鳥配置も有効です。
千鳥配置では、製品の列を一定量ずらすことで、通常の格子状配置では利用しにくい空間を活用します。特に丸みのある形状や、幅方向の寸法が位置によって変化する製品では、配置方法による差が生まれやすくなります。
ただし、回転配置と反転配置は区別して考える必要があります。
材料の平面内で製品を180度回転させることと、材料の表裏を入れ替えることは異なります。表面処理や外観の指定がある製品では、表裏の反転が認められない場合があります。
また、左右対称ではない製品について、図面上で鏡像にした形状を配置しても、それが同一部品として使用できるとは限りません。製品の識別や組付け方向まで考慮する必要があります。
回転配置を検討する際には、圧延方向との関係も重要です。
材料の方向性が加工品質に影響する部品では、板取りを改善できる角度であっても、その向きを採用できない場合があります。曲げ加工が後工程にある場合には、曲げ線と圧延方向の関係を含めて評価する必要があります。
さらに、製品の向きを変えることで、バリの発生方向や製品の取り出し方向に影響が出る場合もあります。
金型内での製品の姿勢が複雑になると、完成品の排出やスクラップの分離が難しくなることがあります。材料利用率の改善によって発生した工程上の問題を確認しなければなりません。
そのため、回転・反転・千鳥配置を比較するときには、製品外形だけを使った単純な配置計算で判断せず、実際に必要な桟幅や金型構造を反映した板取り図を作成することが大切です。
外注先には、製品の向きを変更できる範囲を明確に伝え、その制約の中で複数の配置を比較してもらうとよいでしょう。
単に最も隙間の少ない配置を選ぶのではなく、加工方向、金型強度、品質、排出性まで含めて採用案を判断することが重要です。
方法3:送りピッチと桟幅・耳幅を適正化する
コイル材を使用するプレス加工では、送りピッチ、桟幅、耳幅の設定が材料歩留まりに大きく影響します。
送りピッチとは、材料を1回の加工サイクルごとに送る距離です。製品を1個ずつ打ち抜く場合、送りピッチが大きいほど、同じ材料幅に対して1個当たりの使用材料面積が増える傾向があります。
桟幅は、一般に隣接する打ち抜き形状の間などに残す材料部分の幅を指します。耳幅は、製品外形と材料端部の間に残す幅として扱われます。ただし、これらの呼称や対象範囲は加工現場によって異なることがあるため、板取り図で具体的な寸法位置を確認することが必要です。
送りピッチを短くし、桟幅や耳幅を小さくできれば、理論上は材料利用率を高められる可能性があります。
しかし、桟幅を過度に小さくすると、打ち抜き時に残材が破断したり、変形したりするおそれがあります。特に、連続加工で材料の骨組み部分を利用して搬送している場合には、残材の強度不足が送り不良につながることがあります。
金型の刃先同士が近づきすぎる場合には、金型部品の強度や加工精度にも影響する可能性があります。
また、板厚の大きい材料や強度の高い材料では、加工時の荷重や材料変形への配慮が必要になります。適切な桟幅は材質、板厚、製品形状、加工方式、金型構造によって異なるため、すべての製品に共通する寸法として決めることはできません。
耳幅についても同様です。
材料端部の余裕を減らすと歩留まりを改善できる場合がありますが、材料供給時の蛇行や幅のばらつきがあると、製品形状が材料端部へ近づきすぎる可能性があります。
また、材料の端部をガイドとして使用する場合には、案内機能を維持するための幅が必要です。
板取りを改善するときには、現在の送りピッチや桟幅がどのような理由で設定されているのかを確認することが重要です。
過去の類似製品の設定をそのまま使用している場合には、現在の金型構造や設備条件に合わせて見直せる可能性があります。一方、送り安定性や金型寿命の確保を目的として必要な幅を設定している場合には、単純な縮小が適切とは限りません。
検討時には、桟幅と耳幅を変更した板取り図を複数作成し、それぞれの加工荷重、材料変形、金型強度、送り安定性を比較します。
試作段階では、材料が金型内で正常に送られるか、スクラップが途中で引っ掛からないか、製品の寸法が安定しているかを確認します。
さらに、連続運転時の状況を確認することも欠かせません。短時間の試し打ちで問題がなくても、材料ロットの違いや長時間運転によって、送り不良やスクラップ詰まりが発生する場合があります。
送りピッチと桟幅・耳幅の最適化では、計算上の歩留まり改善だけでなく、生産を継続できる余裕を確保することが重要です。
方法4:製品外形と共通辺の利用を検討する
板取り設計では、部品の配置方法だけでなく、製品外形そのものを見直すことで材料利用率を改善できる場合があります。
ただし、製品外形は機能や組付け条件に関係するため、発注側の設計部門と外注先の加工技術者が協力して検討する必要があります。
例えば、製品の外周に大きな突出部や切欠きがある場合、その形状が隣接する製品との間に広い空間を生むことがあります。
突出部の位置や形状を変更できれば、製品同士をより近くに配置できる可能性があります。
また、外形の角部が大きく張り出している部品では、機能に影響しない範囲で角部形状を変更することで、材料の無駄を減らせる場合があります。
ただし、角部の変更は組付け時の干渉、強度、位置決め、外観などに影響することがあります。材料歩留まりの改善だけを理由に、製品図面を無断で変更してはいけません。
外形変更を検討する際には、変更可能な部分と変更できない部分を設計段階で明確にしておくことが大切です。
もう一つの方法が、隣接する製品の共通辺を利用する板取りです。
通常の打ち抜き配置では、製品同士の間に一定の桟幅を設けます。しかし、製品形状や金型構造によっては、隣接する製品が共通の切断線を利用できる場合があります。
共通辺を利用できれば、その部分に必要なスクラップを減らせる可能性があります。
ただし、共通辺を使用する加工では、切断の順序や製品の保持方法が重要になります。切断後に材料の支持が失われると、製品の位置ずれや変形が発生する場合があります。
また、切断面の品質やバリ方向、寸法精度の要求によっては、共通辺を使用する方法が適さないこともあります。
特に、切断面を後工程で精密に位置決めする部品や、外観品質が厳しく指定されている部品では、加工方法を慎重に検討する必要があります。
共通辺を利用できるかどうかは、図面上で辺が一致することだけでは判断できません。金型の構造、加工順序、材料保持、製品の取り出し方まで含めた検討が必要です。
また、製品外形を変更しない場合でも、打ち抜き工程を分割することで、配置の自由度が変わることがあります。
例えば、外形全体を一度に打ち抜く方式と、部分的な切断を複数工程に分ける方式では、金型内で必要な材料保持部分が異なります。
工程を変更すれば、板取りの余白を見直せる可能性がありますが、その分だけ工程構成や金型の複雑さが変わることもあります。
このため、外注先には完成品の図面だけでなく、機能上重要な外形部分や変更可能な範囲も共有することが有効です。
発注側が形状変更の可否を判断し、外注先が加工方法への影響を評価することで、製品機能を維持しながら材料歩留まりを改善できる余地を探れます。
方法5:金型方式と取り数に合わせて板取りを最適化する
材料歩留まりを改善するためには、使用する金型方式と板取り設計を一体で考えることも重要です。
プレス加工には、単工程で加工する方式や、複数の工程を組み合わせる方式、材料を順次送りながら連続加工する方式などがあります。
同じ製品でも、採用する金型方式によって、材料保持に必要な部分や製品の配置方法が異なります。
例えば、順送加工では、材料を一定のピッチで送りながら複数の工程を進めます。製品が完成するまで材料の一部で保持する構造を採用する場合があり、その保持部分も板取り上の材料使用量に影響します。
このような場合には、単純な部品外形の配置だけでなく、各工程で必要な保持部分やパイロット穴、スクラップ排出経路などを考慮する必要があります。
一方、単工程の抜き加工では、製品を保持する方法や材料の取り回しが異なるため、別の配置が適している場合があります。
金型方式による優劣は製品条件によって変わるため、材料歩留まりだけで方式を選定することは適切ではありません。
もう一つの重要な検討事項が、1回の加工で生産する製品数、つまり取り数です。
1個取りの金型と複数個取りの金型では、板取りに必要な材料幅や工程配置が異なります。
小型製品を複数個取りにする場合、材料幅方向の余白を有効活用でき、理論歩留まりが向上する可能性があります。
ただし、複数個取りでは、各製品の寸法精度を安定させる必要があります。金型内の加工位置による荷重の偏りや、打ち抜き時の変形などにも注意が必要です。
また、取り数を増やすとプレス機に必要な加工能力が変わるため、外注先の設備条件を確認しなければなりません。
量産数量が少ない製品では、複雑な金型構造を採用することが必ずしも生産全体の効率化につながるとは限りません。
反対に、長期間継続して生産する製品では、板取り改善による材料使用量の削減が累積しやすいため、金型方式を含めて比較する意義が大きくなります。
さらに、材質や板厚が共通する複数の製品を扱う場合には、異なる部品を組み合わせた板取りを検討できることもあります。
例えば、大きな部品の周囲に発生する空間へ、小さな部品を配置する方法です。
この方法は、製品形状の組み合わせによって材料利用率を高められる可能性がありますが、同じ材料条件で加工できることが前提になります。
また、製品ごとに必要な数量が異なる場合には、生産数量の比率を考慮しなければなりません。板取り上の組み合わせが固定されると、一方の製品だけを追加生産したい場合に対応しにくくなることがあります。
異なる部品を同時に加工する場合には、製品の識別や排出後の混在防止も重要です。
特に外観が似ている部品や、寸法の違いが小さい部品では、取り違えが品質問題につながる可能性があります。
したがって、複数部品の組み合わせは、材料利用率だけでなく、生産数量、工程管理、検査、製品識別まで含めて検討する必要があります。
金型方式と取り数を見直す際には、外注先へ予定生産数量や継続生産の見込みを伝えることが有効です。
短期間の試作なのか、繰り返し生産する部品なのかによって、適切な金型構造や板取り設計が変わるためです。
材料歩留まりと加工の安定性を両立するには、製品形状だけでなく、生産計画に合った板取りを選ぶことが大切です。
材料歩留まりの改善効果を評価する方法
板取り設計を変更した場合には、改善効果を客観的に評価する必要があります。
見た目の隙間が小さくなっていても、材料幅や送りピッチ、加工不良の発生状況によっては、実際の材料使用量が想定ほど減らない場合があります。
そのため、改善案の比較では、最初に歩留まりの計算条件を統一することが重要です。
例えば、コイル材を使用して1送りで1個の製品を生産する場合、理論的な面積歩留まりは、製品の正味材料面積を材料幅と送りピッチの積で割って求めることができます。
仮に、製品1個の正味材料面積が6,000平方ミリメートル、材料幅が120ミリメートル、送りピッチが80ミリメートルの場合、1個当たりの使用材料面積は9,600平方ミリメートルです。
この条件では、理論上の面積歩留まりは62.5%になります。
同じ製品について、材料幅を110ミリメートル、送りピッチを75ミリメートルに変更できたと仮定すると、1個当たりの使用材料面積は8,250平方ミリメートルとなり、理論上の面積歩留まりは約72.7%になります。
この例では、板取り変更によって材料利用率が改善することが分かります。
ただし、これは計算方法を示す仮定の例です。実際に材料幅や送りピッチを変更できるかどうかは、製品形状、金型構造、材料保持、送り精度などの条件によって異なります。
また、計算上の改善がそのまま実生産の改善になるとは限りません。
実際のプレス加工では、材料を金型へ通す際の先端部分や、加工終了時に残る材料などが発生します。さらに、段取り調整や不良品の発生によって、製品として利用されない材料が増えることがあります。
そのため、量産開始後は実際に投入した材料重量と、良品として得られた製品重量を比較する方法が有効です。
実歩留まりを評価する場合には、投入材料重量に対する良品重量の割合を算出し、計算に含める対象範囲を統一します。
例えば、再利用可能な端材をどのように扱うか、段取り時の試し打ち品を含めるかなど、集計条件が異なると比較結果に差が生じます。
また、歩留まりだけでなく、不良率や生産停止の発生状況も確認する必要があります。
理論歩留まりが改善していても、材料送りの不安定化によって不良品が増えれば、実際の材料利用率は低下する可能性があります。
さらに、スクラップ排出の不具合によって設備停止が増える場合には、生産効率全体への影響も考える必要があります。
板取り改善案を比較するときには、設計上の理論歩留まり、量産時の実歩留まり、不良発生状況、加工安定性を組み合わせて評価することが大切です。
外注先から改善提案を受けた場合も、単に歩留まりの数値だけを確認するのではなく、その数値がどの条件で算出されているのかを確認しましょう。
プレス加工の外注先と共有すべき設計情報
材料歩留まりを改善するには、発注側と外注先の情報共有が欠かせません。
製品図面だけを提出して加工を依頼する場合、外注先は図面に示された要求事項を前提として金型や工程を検討します。しかし、製品の使用条件や設計変更の許容範囲が分からなければ、材料歩留まりを改善するための選択肢が限られることがあります。
まず共有したいのは、製品の用途と重要寸法です。
プレス加工品には、組付け基準となる穴、位置決めに使用する外形、曲げ位置、接触面など、機能上重要な部分があります。
これらの寸法や形状を変更できないことを明確にしておけば、外注先はそれ以外の部分で板取りの改善可能性を検討できます。
一方、外観上の角部形状や、機能に影響しない突出部などに設計変更の余地がある場合には、その範囲を共有することが有効です。
次に、材料仕様を明確にする必要があります。
材質、板厚、公差、表面状態、圧延方向、材料の供給形態などは、板取りを決める基本情報です。
材料の代替や幅変更を認める場合には、その条件も整理しておきます。材料幅だけを変更できるのか、材料供給形態も変更できるのかによって、検討できる方法が異なります。
また、バリ方向や表面傷に関する要求事項も重要です。
板取りを変更すると、製品の向きや金型内での取り出し方向が変わることがあります。製品の表裏やバリ方向が後工程に影響する場合には、あらかじめ指定しておく必要があります。
発注数量と生産計画も共有したい情報です。
試作段階で少量だけ必要な製品と、長期間にわたり定期的に生産する製品では、適切な金型方式や板取りが異なります。
継続生産を予定している場合には、想定する生産数量や発注頻度を伝えることで、外注先は量産に適した設計を検討しやすくなります。
さらに、改善案を比較する際には、板取り図を確認することが重要です。
板取り図には、材料幅、送りピッチ、製品の配置方向、桟幅、耳幅、取り数などを示してもらいます。
必要に応じて、材料送り方向、圧延方向、製品の表裏、スクラップの発生位置も確認します。
複数の外注先へ相談する場合には、同じ条件で板取りを提案してもらうことが大切です。
一方の外注先だけが製品方向の変更を前提としていたり、別の外注先だけが材料幅の変更を認められていたりすると、歩留まりの単純比較が難しくなります。
比較条件をそろえたうえで、それぞれの外注先がどのような改善方法を提案しているのかを確認しましょう。
また、材料歩留まりの改善を目的として図面変更を行う場合には、変更前後の図面を適切に管理する必要があります。
口頭での変更指示だけに頼ると、旧図面を使った製造や、変更内容の認識違いが発生する可能性があります。
設計変更の履歴、承認日、適用する製造ロットなどを明確にしておくことで、外注先との情報の食い違いを減らせます。
試作から量産まで材料歩留まりを維持する管理方法
板取り設計を改善しても、量産開始後にその条件が維持されなければ、期待した効果を得ることはできません。
特に、試作段階で成立した条件が量産時にも安定して成立するかどうかは、実際の加工環境で確認する必要があります。
試作では、まず板取り図どおりに材料を送れるかを確認します。
送りピッチを短くした場合には、送り精度や材料の位置ずれを確認し、製品の寸法に影響が出ていないかを測定します。
桟幅や耳幅を小さくした場合には、材料が金型内で変形していないか、残材が正常に排出されるかを確認することが重要です。
特に順送加工では、工程が進むにつれて材料の一部が切り離されるため、材料保持の状態が変化します。
そのため、加工開始直後だけでなく、連続運転中の材料の挙動も確認する必要があります。
次に、製品品質を評価します。
板取り変更によって製品の配置方向や加工順序が変わった場合、寸法精度、バリ、変形、表面傷などに影響が出る可能性があります。
特に穴位置や外形寸法の公差が厳しい製品では、変更前後の測定結果を比較し、品質が維持されていることを確認します。
また、材料ロットが変わった場合の影響にも注意が必要です。
同じ材質と板厚であっても、規格や仕様で認められた範囲内の機械的性質や板厚のばらつきなどによって、加工時の挙動が変わる場合があります。
板取りの余裕を極端に小さくした設計では、こうした変動の影響を受けやすくなる可能性があります。
そのため、必要に応じて複数の材料ロットや通常の生産条件で確認し、安定して加工できることを評価します。
量産開始後は、材料使用量の記録を残すことが重要です。
投入した材料の重量や長さ、製造数量、良品数量、不良数量、発生したスクラップなどを継続的に記録すると、実歩留まりの変化を把握しやすくなります。
例えば、同じ板取り条件で生産しているにもかかわらず材料使用量が増えた場合、段取り時の材料消費や不良品の増加などが影響している可能性があります。
また、材料幅や送りピッチの設定が変更されていないかを確認することも必要です。
金型の修理や設備変更の際に、送り条件やガイド位置が変更される場合があります。変更内容が記録されていなければ、歩留まりの変化がどこから生じたのかを追跡しにくくなります。
改善前後の条件を比較できるように、材料仕様、金型仕様、送り条件、板取り図の版数などを管理することが大切です。
外注先との定期的な振り返りも有効です。
量産開始後に発生した加工不良やスクラップ排出の問題を共有することで、当初の板取りが適切だったかを見直せます。
また、製品の発注数量が増減した場合には、取り数や材料供給形態を再検討する余地が生まれることもあります。
板取りは一度決めたら変更しないものではなく、製品仕様や生産条件に応じて見直す対象と考えることが重要です。
ただし、量産中の変更には品質上のリスクもあります。板取りや金型構造を変更する場合には、変更内容を承認し、必要な試作や検証を行ったうえで適用することが望まれます。
発注側と外注先が改善履歴を共有し、品質と生産実績の両面から評価することで、材料歩留まりの改善を継続しやすくなります。
まとめ|材料歩留まりと加工品質を両立する板取り設計
プレス加工外注で材料歩留まりを改善するには、製品を材料上に効率よく配置するだけでなく、材料特性、金型構造、加工方式、生産条件を総合的に検討する必要があります。
今回紹介した5つの方法は、材料幅と製品配置の見直し、回転・反転・千鳥配置の活用、送りピッチと桟幅・耳幅の適正化、製品外形と共通辺の検討、金型方式と取り数に合わせた最適化です。
これらの方法は、それぞれ単独で検討できる場合もありますが、組み合わせることで改善の選択肢が広がります。
例えば、材料幅を見直す際に製品の回転配置も検討すれば、単純な幅の縮小だけでは得られなかった改善案が見つかる可能性があります。また、送りピッチの見直しと金型構造の検討を同時に行うことで、材料の保持や排出を考慮した配置を選べる場合があります。
ただし、材料歩留まりの向上だけを優先することは避ける必要があります。
桟幅や耳幅を過度に小さくすると、材料送りの不安定化や金型への負担が生じる可能性があります。製品を回転させる場合にも、圧延方向や表面品質、後工程への影響を確認しなければなりません。
重要なのは、理論上の歩留まりだけでなく、実際の量産で安定して良品を生産できる条件を選ぶことです。
そのためには、発注側が製品の機能条件や変更可能な範囲を明確にし、外注先が加工技術の観点から板取りを検討できる環境を整えることが欠かせません。
さらに、改善後の条件を図面や記録として残し、試作結果と量産実績を比較することで、継続的な改善につなげられます。
プレス加工品が建設現場や設備の設置工事などで使用される場合には、製造段階の改善情報に加えて、現場での使用状況や施工記録を整理しておくことも有効です。
現場写真・位置情報・施工記録を管理するLRTK Phoneは、こうした現場の状況を記録し、関係者間で確認するための手段として活用できます。例えば、プレス加工品を使用する設備の設置状況や、施工時に確認した部品の状態などを記録する場面が考えられます。
LRTK Phoneは板取り設計や金型設計そのものを行うものではありませんが、製造した部品が実際の現場でどのように使用されているかを記録することで、製造側と現場側の情報共有を補完できます。
プレス加工の外注では、材料歩留まりの改善を設計段階から検討するとともに、加工品質、量産時の安定性、後工程や使用現場との情報連携まで視野に入れることが大切です。材料を無駄なく活用できる板取りと、安定した品質管理を両立させることが、継続的な製造改善につながります。
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