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プレス加工外注で板厚公差による不良を減らす5つの対策

プレス加工を外注する際、図面どおりの材料を指定したにもかかわらず、曲げ角度が安定しない、穴寸法がばらつく、組立時に部品が干渉するといった不良が発生することがあります。その原因の一つが、材料の板厚公差です。

金属板には通常、呼び板厚に対して一定の許容差が設定されています。同じ材質、同じ呼び板厚として手配しても、実際の板厚が完全に一致するとは限りません。板厚のわずかな違いが、金型とのクリアランス、曲げ加工時の変形、抜き加工の切断面、完成品の寸法などに影響する場合があります。

特に、精密部品や組立精度が求められる製品では、材料規格上は問題のない板厚のばらつきが、完成品の品質不良につながることがあります。こうした問題を防ぐには、材料選定だけでなく、図面指示、金型設計、加工条件、検査方法まで含めて外注先と調整することが重要です。

本記事では、プレス加工外注で板厚公差による不良を減らすための5つの対策を解説します。板厚公差が製品品質に与える影響から、外注先との打ち合わせで確認すべき事項まで、実務担当者が発注前に押さえておきたいポイントを整理します。

プレス加工外注で板厚公差が不良につながる理由

プレス加工は、金型と加工設備を使用して金属板にせん断や塑性変形を与え、目的の形状を作る加工方法です。抜き加工、曲げ加工、絞り加工などの工程があり、板厚は加工結果を左右する重要な条件の一つです。

板厚公差とは、指定された呼び板厚に対して認められる厚さの変動範囲を指します。例えば、呼び板厚が1.0mmで、適用する材料仕様において許容差が±0.05mmと設定されている場合、許容される板厚範囲は0.95mmから1.05mmです。この数値は説明用の例であり、実際の許容差は材質、製品規格、板幅、板厚区分、供給条件などによって異なります。

この例では板厚の上限と下限に0.10mmの差があります。一般的な部品では問題にならないこともありますが、精密な曲げ加工や薄板部品の組立では、無視できない場合があります。

まず注意したいのが、抜き加工における金型クリアランスです。抜き加工では、パンチとダイの間に適切なすき間を設けます。このすき間は、材料の板厚、強度、延性、要求される切断面品質などを考慮して決めます。

板厚が想定より厚くなると、板厚に対する相対的なクリアランスが小さくなります。反対に板厚が薄くなると、相対的なクリアランスは大きくなります。その結果、切断面の状態、かえりの高さ、加工荷重、金型摩耗などが変化する可能性があります。

次に、曲げ加工への影響です。金属板を曲げると、曲げ部の内側と外側で異なる変形が発生します。板厚が変われば曲げ剛性や変形状態も変わるため、同じ金型や加工条件でも曲げ角度、曲げ後の寸法、スプリングバックの量に違いが生じる場合があります。

ただし、スプリングバックは板厚だけで決まるものではありません。材料の降伏特性、加工硬化、曲げ半径、圧延方向、加工方式なども影響します。板厚公差だけを厳しくしても、すべての曲げ不良を防げるわけではない点に注意が必要です。

絞り加工では、板厚の違いが材料の流動やしわ、割れの発生条件に影響することがあります。また、絞り加工後の板厚は素材の板厚と必ずしも同じではなく、部位によって薄くなったり厚くなったりする場合があります。

さらに、プレス部品が複数の部品と組み合わされる場合、板厚のばらつきが組立寸法に影響します。例えば、板材を重ねて固定する構造や、曲げ部品を狭い空間に組み付ける構造では、素材の板厚差が累積したり、曲げ後の位置ずれとして現れたりすることがあります。

重要なのは、材料として許容される板厚範囲と、完成品として許容される寸法範囲を分けて考えることです。

材料規格を満たしていても、完成品の機能を満たすとは限りません。逆に、一般的な材料公差の範囲内で完成品の品質を確保できる設計と工程であれば、必要以上に材料の許容差を狭める必要はありません。

プレス加工外注では、材料の板厚公差を単独の管理項目として扱うのではなく、製品設計と加工工程の両方に関係する条件として整理することが不良削減の出発点になります。

対策1:図面で板厚公差と製品の要求精度を明確にする

板厚公差による不良を減らす最初の対策は、図面や発注仕様書で板厚に関する要求を明確にすることです。

プレス加工を外注する際、図面に呼び板厚だけが記載されていることがあります。しかし、呼び板厚だけでは、どの材料規格を適用するのか、どの程度の板厚変動を許容するのか、完成品のどの寸法を重視するのかが十分に伝わらない場合があります。

例えば、図面に板厚1.2mmと記載されていても、材料の種類や調達条件によって適用される板厚許容差が異なることがあります。発注側と外注先で想定している材料仕様が違えば、どちらも図面に従っているつもりでも、品質に対する認識が一致しない可能性があります。

このため、板厚指定では、材質、材料の状態、呼び板厚、適用する材料仕様、必要な許容差を組み合わせて伝えることが重要です。

特に板厚の影響が大きい製品では、使用可能な板厚の上限と下限を明確にする方法が有効です。ただし、材料の標準的な許容差より厳しい値を指定する場合は、その範囲を満たす材料を安定して調達できるか、外注先や材料供給側と確認する必要があります。

製品の機能に対して必要以上に厳しい板厚公差を設定すると、材料選定や受入検査が難しくなることがあります。そのため、許容差は製品の性能と工程能力を踏まえて設定することが大切です。

また、板厚公差だけでなく、完成品の寸法公差との関係も整理する必要があります。

例えば、曲げ加工した部品では、外形寸法、曲げ角度、立ち上がり高さ、穴中心から曲げ部までの距離などが重要になる場合があります。板厚が変動すると、こうした寸法に影響が現れることがありますが、どの寸法が最も重要かは製品の用途によって異なります。

組立時に穴位置の一致が求められる部品であれば、穴中心位置と基準面の関係を優先して指定する必要があります。一方、外観部品であれば、曲げ角度や面の段差、すき間の均一性などを重視する場合があります。

ここで有効なのが、重要寸法と一般寸法を区別する考え方です。

すべての寸法を同じ厳しさで管理するのではなく、機能や組立に直結する寸法を明確にします。重要寸法については、板厚の上限と下限を考慮しても許容範囲に収まる設計になっているかを確認します。

さらに、寸法の測定基準も明確にしておくことが重要です。

曲げ部品では、測定する基準面や部品の置き方によって測定結果が変わる場合があります。板厚の違いによる変化なのか、測定方法による差なのかを区別できなければ、不良原因の特定が難しくなります。

そのため、外注先には、どの面を基準に測定するのか、曲げ角度をどの状態で判定するのか、寸法測定時に部品を拘束する必要があるのかなどを伝えます。

また、図面上の板厚指定が素材の板厚を意味するのか、加工後の特定箇所の板厚を意味するのかも区別しなければなりません。特に絞り加工では、加工後に板厚分布が変化するため、素材板厚の許容差だけでは加工後の最小板厚を保証できません。

板厚公差による不良を防ぐには、単に板厚の数値を記載するのではなく、材料条件、完成品の機能、測定基準まで一貫して定義することが重要です。

対策2:材料ロットごとの板厚ばらつきを確認する

2つ目の対策は、材料ロットごとの板厚ばらつきを確認し、加工条件に影響する変動を把握することです。

プレス加工では、同じ材質と呼び板厚の材料を継続して使用することが一般的です。しかし、同じ材料仕様でも、製造ロットや供給形態によって実際の板厚分布が異なる場合があります。

あるロットでは呼び板厚に近い材料が中心でも、別のロットでは許容範囲内の上限側または下限側に分布が偏ることがあります。

材料規格に適合している限り、こうした違いが直ちに材料不良になるわけではありません。しかし、加工条件が特定の板厚範囲に合わせて調整されている場合、ロットが変わった際に加工結果が変化する可能性があります。

そのため、板厚公差による不良を減らすには、呼び板厚だけでなく、実際に使用する材料の板厚を確認することが有効です。

材料の受入検査では、適切な測定器を使用して実測板厚を確認します。一般的には、測定対象の板厚、形状、表面状態、要求精度に適した厚さ測定器を選定します。

ここで注意したいのが、測定位置です。

板材やコイル材では、幅方向や長手方向で板厚に差が生じる場合があります。材料の一か所だけを測定しても、ロット全体の板厚分布を十分に把握できるとは限りません。

測定位置と測定点数は、材料規格、供給形態、製品の重要度、過去の不良履歴などを踏まえて決める必要があります。

また、板厚測定では、測定器の精度や測定条件にも注意が必要です。

測定面に汚れや付着物がある場合、測定値が実際の母材板厚と異なることがあります。切断端部付近では、かえりや加工変形によって局所的な測定誤差が生じる可能性があります。

薄い材料では、測定器の接触圧や保持方法によって測定結果が変化する場合もあります。精密な板厚管理が必要な場合は、測定器の校正状態、測定圧、測定位置、測定回数などを統一することが重要です。

表面処理された材料については、母材板厚と表面処理層を含めた総厚を混同しないようにします。どちらを管理対象とするかは、材料仕様と製品の機能に基づいて判断します。

受入検査で得られた板厚データは、材料ロットと紐付けて管理すると効果的です。

例えば、加工後に曲げ角度のばらつきが増えた場合、使用した材料ロットの板厚分布を確認できれば、原因調査の手掛かりになります。

ただし、曲げ角度の変化には材料強度なども関係するため、板厚データだけで原因を断定することはできません。必要に応じて材料の機械的性質や加工条件の履歴も確認します。

外注先に材料調達を任せる場合は、材料ロットの識別方法や受入検査の実施範囲を事前に確認しておくことが重要です。

特に継続生産では、初回の材料だけが良好であっても、後続ロットで同じ板厚分布になるとは限りません。材料変更時や供給元変更時に、必要な確認を実施する運用が求められます。

材料ロットの管理は、不良が発生した後の原因追跡だけでなく、不良が増える前に条件変化を把握するためにも役立ちます。

対策3:金型クリアランスと加工条件を適切に設定する

3つ目の対策は、使用する材料の板厚公差を考慮して、金型クリアランスと加工条件を適切に設定することです。

プレス加工では、金型の寸法や形状だけでなく、パンチとダイの位置関係、工具の摩耗状態、加工速度、材料の保持方法などが製品品質に影響します。

その中でも抜き加工のクリアランスは、板厚変動と関係が深い項目です。

一般的なせん断加工では、パンチとダイの間に材料に応じたクリアランスを設けます。クリアランスは片側のすき間として管理されることが多いため、外注先と数値を確認する際には、片側値なのか両側の合計値なのかを明確にする必要があります。

適切なクリアランスは、板厚だけでなく、材料の強度、延性、金型構造、要求する切断面の状態などによって変わります。

クリアランスが過度に小さい場合、加工荷重の増加や工具摩耗の進行などにつながる可能性があります。一方、過度に大きい場合は、切断面の傾きやかえりの増大などが問題になることがあります。

実際の影響は材料や加工条件によって異なるため、単純にクリアランスを小さくすれば品質が向上するわけではありません。

板厚公差を考慮する際には、板厚の上限側と下限側でクリアランスの相対的な大きさが変化することを理解しておく必要があります。

例えば、ある呼び板厚を基準に金型を設計した場合、材料が上限側に偏ると、板厚に対するクリアランスの割合は小さくなります。下限側に偏れば、反対に大きくなります。

この変化が製品品質に与える影響を、試作段階で確認することが重要です。

特に精密な穴加工では、穴径、穴の真円度、切断面の状態、かえりなどを確認します。一般的な抜き加工では、穴寸法は主としてパンチ寸法の影響を受け、外形抜き寸法は主としてダイ寸法の影響を受けますが、実際の仕上がりには材料の変形や弾性回復、工具の状態なども関係します。

そのため、金型の設計寸法だけで完成品の寸法が必ず決まると考えるのは適切ではありません。

また、板厚が大きくなると、他の条件が同じ場合にせん断加工で必要となる荷重が増加する傾向があります。工具や加工設備の能力を検討する際には、板厚の上限側を考慮することが重要です。

加工荷重だけでなく、材料をパンチから引き離すための力や、材料を安定して保持するための条件にも注意が必要です。

外注先が複数の板厚に対応する金型を使用している場合は、その金型が対象材料の許容板厚範囲に適しているかを確認します。

金型を共用できる範囲は、単に板厚が近いかどうかでは判断できません。製品に求められる寸法精度や切断面品質によって、共用できる条件が変わるためです。

金型摩耗の管理も欠かせません。

初回の試作で良好な結果が得られても、連続加工によって刃先が摩耗すると、かえりや寸法のばらつきが増えることがあります。この変化が板厚の影響と重なると、原因の切り分けが難しくなります。

そのため、外注先とは、金型の点検時期、刃先の再研磨や交換の判断基準、加工後の確認項目などについても認識を合わせることが望まれます。

板厚公差への対策は、金型クリアランスの数値調整だけで完結するものではありません。材料条件、金型精度、加工荷重、工具摩耗を総合的に確認し、許容される板厚範囲で安定した加工が可能かを検証することが重要です。

対策4:曲げ・絞り加工を板厚の上限と下限で検証する

4つ目の対策は、曲げ加工や絞り加工について、板厚の上限側と下限側の両方を考慮して設計と加工条件を検証することです。

プレス加工外注では、呼び板厚に近い材料を使用した試作だけで、量産の可否を判断してしまうことがあります。

しかし、試作に使用した材料が板厚許容範囲の中央付近に偏っている場合、上限側や下限側の材料でも同じ品質が得られるとは限りません。

曲げ加工では、板厚の変化が曲げ剛性や変形状態に影響します。

例えば、同じ曲げ金型を使用した場合でも、板厚が変わることで材料と工具の接触状態や曲げ後の形状が変わる可能性があります。その結果、曲げ角度や曲げ部の寸法が変動する場合があります。

曲げ加工で特に注意したいのが、スプリングバックです。

スプリングバックとは、曲げ加工後に荷重を除去した際、材料の弾性回復によって曲げ角度や形状が変化する現象です。材料の板厚、降伏特性、加工硬化特性、曲げ半径、加工方式などが影響します。

板厚が異なればスプリングバックの量が変わる場合がありますが、その変化の方向や大きさは加工条件によって異なります。

したがって、板厚が厚いほど必ず曲げ角度が安定する、あるいは薄いほど必ず不良になるといった単純な判断は避ける必要があります。

曲げ加工を外注する際には、板厚の上限側と下限側で曲げ角度や主要寸法が要求範囲に収まるかを確認することが有効です。

板厚差による影響が大きい場合は、加工条件の調整、曲げ半径の見直し、製品形状の変更などを検討します。

また、曲げ部の内側半径にも注意が必要です。

小さな曲げ半径を指定すると、材料や板厚、圧延方向などの条件によっては曲げ外側に割れが発生する可能性があります。適切な曲げ半径は材料の成形性や製品要求に応じて判断する必要があります。

板厚公差の下限側では相対的な曲げ半径が大きくなり、上限側では小さくなるため、上限側の材料で曲げ外側のひずみが問題にならないかを確認することが重要です。

ただし、割れの発生は板厚だけで決まらず、材料の延性や加工履歴などにも左右されます。

さらに、曲げ部の近くに穴や切欠きを設ける製品では、板厚の影響を考慮する必要があります。

穴が曲げ部に近すぎると、曲げ加工時の変形によって穴形状や穴位置が変わる場合があります。板厚が変動すれば変形状態も変わる可能性があるため、穴から曲げ部までの距離や加工順序を検討します。

穴を加工してから曲げるのか、曲げた後に穴を加工するのかによっても、寸法管理の考え方が変わります。

外注先には、完成品として優先すべき寸法を伝えたうえで、加工順序の妥当性を確認することが重要です。

絞り加工の場合は、さらに複数の条件を考慮する必要があります。

絞り加工では、材料を金型に沿って流動させながら立体形状を作ります。板厚が変わると、材料の流動抵抗やしわの発生条件、割れの発生条件などが変化する場合があります。

また、加工途中では場所によって板厚が変化します。製品の側壁部や角部などで局所的な板厚減少が起こることがあり、素材板厚が規格内であっても、加工後の最小板厚が設計要求を満たさない可能性があります。

そのため、絞り加工品では素材板厚の管理に加え、必要に応じて加工後の板厚分布を確認することが重要です。

板厚分布の評価位置は、製品形状や負荷が集中する部位を踏まえて設定します。

さらに、材料の押さえ条件や金型の曲面形状、潤滑状態も絞り品質に影響します。板厚の変化による不良を防ぐには、こうした条件との組み合わせで検証する必要があります。

試作段階で上限側と下限側の材料を確保できる場合は、それぞれの条件で加工結果を確認すると、量産時のリスクを把握しやすくなります。

両端の材料を確保できない場合でも、外注先と加工実績や材料特性を確認し、必要な追加評価を検討することが大切です。

対策5:試作から量産まで検査と変更管理を徹底する

5つ目の対策は、試作段階から量産段階まで、板厚に関係する検査と変更管理を継続することです。

プレス加工では、初回試作で良好な品質が確認できても、量産時に同じ状態が維持されるとは限りません。

材料ロットの変更、金型摩耗、加工設備の状態変化、加工条件の調整などによって、完成品の寸法や外観が変動する場合があります。

特に板厚公差の影響が大きい製品では、初回の加工結果だけで品質を判断せず、量産中の変動を監視する仕組みが重要です。

まず、試作段階では、使用した材料の実測板厚と完成品の測定結果を関連付けて記録します。

例えば、試作品の板厚、曲げ角度、外形寸法、穴位置、かえりの状態などを確認し、どの板厚条件でどのような加工結果が得られたかを整理します。

ここで重要なのは、完成品が合格したかどうかだけでなく、要求寸法に対してどの程度の余裕があるかを確認することです。

すべての測定値が許容範囲内であっても、一部の寸法が許容限界に近い場合、材料や加工条件のわずかな変動で不良が発生する可能性があります。

このような場合は、加工条件の見直しや、必要に応じた製品設計の変更を検討します。

量産開始時には、初品検査を実施して、試作時に決めた条件が再現されているかを確認することが有効です。

初品検査では、主要寸法だけでなく、材料の識別情報、板厚、加工条件、金型の状態なども必要に応じて確認します。

また、量産中の検査頻度は、製品の重要度や加工工程の安定性に応じて設定します。

全数検査が必要な項目もあれば、工程能力や不良リスクに基づいて抜取検査を適用できる項目もあります。検査頻度を一律に決めるのではなく、板厚変動が品質に与える影響を考慮することが重要です。

継続生産では、材料ロット変更時の確認方法を決めておくと効果的です。

例えば、新しい材料ロットへの切り替え時に板厚を測定し、従来ロットとの差を確認します。板厚分布が大きく変わっている場合は、初品の寸法や曲げ角度などを重点的に確認する運用が考えられます。

ただし、すべてのロット変更で加工条件を変更する必要があるわけではありません。過去の検証で許容される板厚範囲が確認されていれば、その範囲内で同じ条件を維持できる場合もあります。

重要なのは、変更の有無を把握し、あらかじめ定めた判断基準に従って対応することです。

不良が発生した際の原因調査にも、記録の整備が役立ちます。

例えば、曲げ角度の不良が増えた場合、材料板厚の変化、材料の機械的性質の違い、加工設備の設定変更、金型摩耗などを順番に確認します。

板厚公差が原因だと決めつけず、複数の要因を切り分けることが重要です。

また、外注先で材料の供給元や金型の一部、加工工程などを変更する場合は、製品品質に影響する可能性がないかを事前に確認する必要があります。

発注側と外注先の間で、どの変更を事前連絡の対象とするのかを定めておけば、品質変動を早期に把握しやすくなります。

試作から量産まで検査と変更管理を一貫して行うことで、板厚公差による不良を発見しやすくなるだけでなく、工程の安定性を継続的に評価できます。

プレス加工外注先との打ち合わせで確認すべきポイント

板厚公差による不良を減らすには、発注側だけで条件を決めるのではなく、外注先の加工技術や設備条件を踏まえて仕様を調整することが重要です。

プレス加工の外注先によって、保有する加工設備、対応できる材料、金型設計の考え方、検査体制などは異なります。

同じ図面を渡しても、想定する加工方法や品質管理の内容が一致するとは限りません。

そのため、初回の打ち合わせでは、まず製品の使用目的と重要な品質特性を伝えることが大切です。

例えば、組立時の位置決めに使用する部品であれば、取付穴の位置や曲げ後の寸法が重要になります。荷重を受ける部品では、板厚の下限や加工後の局所的な板厚減少が設計性能に関係する場合があります。

こうした用途を伝えることで、外注先も板厚公差の影響を受けやすい工程や寸法を検討しやすくなります。

次に確認したいのが、使用材料の板厚許容差です。

発注側が指定した材料と、外注先が通常調達する材料とでは、供給条件が異なる場合があります。材質や呼び板厚が一致していても、適用規格や製造条件を確認することが重要です。

材料の選定については、完成品に必要な品質を満たすことを前提に、実際に調達可能な条件を検討します。

また、金型設計と材料条件の関係も確認します。

新たに金型を製作する場合は、想定する板厚範囲で加工品質を確保できる設計になっているかを確認します。既存金型を使用する場合は、対象材料の板厚公差と金型条件が適合しているかを検討します。

特に曲げ加工では、要求角度や重要寸法に対して、板厚変動を考慮した加工条件の調整が可能かを確認するとよいでしょう。

さらに、試作評価の範囲も事前に決める必要があります。

単に試作品を製作して外観を確認するだけでは、量産時の板厚変動に対する余裕を十分に把握できない場合があります。

そのため、試作時には、使用した材料の実測板厚、主要寸法、曲げ角度、抜き加工部の品質などを必要に応じて記録します。

量産移行の判断では、試作品が図面公差に入っていることに加え、継続生産で発生し得る変動への対応方法を確認します。

検査方法についても、発注側と外注先で認識を合わせることが重要です。

例えば、曲げ角度や穴位置の測定では、使用する測定器や基準面、測定時の保持条件が異なると、結果に差が生じる場合があります。

双方の測定結果が一致しない場合、製品そのものの不良なのか、測定方法の違いなのかを判断する必要があります。そのため、重要寸法については測定基準や判定方法を共有しておくことが望まれます。

不良発生時の対応方法も確認しておきます。

材料ロットの追跡が可能か、加工条件の記録が残るか、必要に応じて金型状態を確認できるかなどは、原因調査の効率に関係します。

板厚公差に起因する問題は、材料と加工条件が複合的に影響する場合があります。記録が不足していると、同じ不良が再発した際に原因を十分に絞り込めません。

外注先との協議では、発注前にすべての不良を予測することよりも、品質に影響する条件を明確にし、問題が発生した際に原因を追跡できる状態を作ることが重要です。

また、発注後の仕様変更にも注意が必要です。

例えば、部品の強度確保を目的として板厚を変更した場合、抜き加工荷重や曲げ条件、金型の適合性などを再検討する必要があります。

板厚だけの変更であっても、加工工程全体への影響を確認せずに進めることは避けるべきです。

材料変更や板厚公差の変更を行う場合は、製品設計、金型、加工条件、検査方法への影響を確認し、必要に応じて再試作や追加検証を実施します。

このように、プレス加工外注では、図面の受け渡しだけでなく、材料条件と加工工程を共有することが安定した品質につながります。

まとめ|板厚公差を考慮した外注管理で品質を安定させる

プレス加工外注で板厚公差による不良を減らすには、材料の板厚許容差を確認するだけでなく、製品設計、金型条件、試作評価、量産管理までを一体として考えることが重要です。

今回紹介した5つの対策は、図面で板厚公差と完成品の要求を明確にすること、材料ロットごとの板厚ばらつきを把握すること、金型クリアランスと加工条件を適切に設定すること、曲げ・絞り加工を板厚の上限と下限で検証すること、そして試作から量産まで検査と変更管理を徹底することです。

特に重要なのは、材料として許容される板厚の範囲と、製品として必要な品質の範囲を混同しないことです。

材料が規格に適合していても、製品寸法や加工後の形状が要求を満たさない場合があります。その一方で、適切な設計と工程管理によって、一般的な材料公差の範囲内でも安定した品質を実現できる場合があります。

不良を防ぐために板厚公差を一律に厳しくするのではなく、どの部位や工程が板厚変動の影響を受けるのかを明確にし、必要な管理を重点的に行うことが大切です。

また、外注先と加工条件や検査基準を共有し、材料ロットの変更や金型の状態変化を把握できる体制を整えることで、不良の早期発見と再発防止につなげやすくなります。

プレス加工品が建設現場や設備施工の現場で使用される場合には、工場での製造品質の管理に加え、納入後の設置位置や施工状態を正確に記録することも重要です。例えば、プレス加工した取付金具や支持部材について、現場での設置位置、施工前後の状態、取付状況などを記録しておけば、後日の確認や施工管理に役立ちます。

こうした現場記録の管理には、LRTK Phoneを活用できます。LRTK Phoneは、現場写真や位置情報、施工記録を管理するための製品であり、位置情報と関連付けた記録を残すことで、施工状況の整理や関係者間での情報共有を支援します。

なお、LRTK Phoneは材料板厚の精密測定やプレス加工品の寸法検査を代替するものではありません。製造段階では適切な測定器と品質管理手順を使用し、施工段階では写真や位置情報を活用して記録を整えるという役割分担が重要です。

プレス加工外注では、製造時の品質管理と、その後の使用・施工状況の記録をそれぞれ適切に行うことで、部品の品質確保から現場での管理まで、情報の追跡性を高めることができます。

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