LRTKレフィクシア株式会社

プラスチック試作依頼で吸水による寸法変化を検証する5つの手順

プラスチック部品の試作を依頼する際、加工直後の寸法精度だけを確認していないでしょうか。プラスチック材料の中には、空気中の湿気や水との接触によって水分を吸収し、時間の経過とともに寸法が変化するものがあります。試作品が完成した時点では図面どおりでも、保管後や実際の使用環境で膨張し、組み立て不良や動作不良につながる可能性があります。

特に、ポリアミド系樹脂などの吸水性を持つ材料では、吸水による寸法変化を考慮した設計と検証が重要です。ただし、変化の程度は樹脂の種類やグレード、部品形状、温度、湿度、使用期間などによって異なります。そのため、材料の一般的な吸水率だけで寸法変化を判断せず、実際の試作品を用いて評価する必要があります。

プラスチックの試作依頼では、使用環境の整理から材料の選定、試験条件の設定、寸法測定、結果の評価までを一連の工程として計画することが大切です。検証方法を事前に共有しておけば、試作会社との認識違いを減らし、量産移行後の品質トラブルを予防しやすくなります。

この記事では、プラスチック試作依頼で吸水による寸法変化を検証する5つの手順を、実務での進め方に沿って詳しく解説します。試験時に注意したい測定条件や、検証結果を設計改善につなげる方法についても紹介します。

プラスチック試作依頼で吸水による寸法変化を確認する理由

プラスチック材料は、金属材料とは異なる特有の性質を持っています。その一つが吸水性です。材料内部に水分が取り込まれることで、分子間の状態が変化し、体積や寸法、機械的性質に影響が生じる場合があります。

例えば、ポリアミド系樹脂は、周囲の湿度や水との接触によって水分を吸収しやすい材料として知られています。吸水が進むと材料が膨張し、穴径や外形寸法、部品の反りなどが変化することがあります。また、吸水によって剛性や強度、靱性などの特性が変わる場合もあるため、寸法だけでなく機能面の確認も必要です。

一方、すべてのプラスチックが同じように吸水するわけではありません。ポリアセタール系や一部のポリエステル系など、比較的吸水の少ない材料もあります。ただし、材料分類が同じでも、グレード、添加剤、充填材、成形条件によって特性は異なります。一般的な材料比較だけで安全性を判断せず、採用予定の材料について確認することが重要です。

プラスチック試作品では、加工完了時の寸法検査に合格していても、一定期間保管した後に寸法が変化する可能性があります。特に、軸と穴のはめ合い、摺動部、位置決めピン、シール部、複数部品を組み合わせる機構では、わずかな変化が機能に影響する場合があります。

例えば、軸を通す穴が吸水によって変形した場合、穴の寸法だけでなく真円度や位置関係にも影響が及ぶ可能性があります。部品全体が均一に膨張するとは限らず、肉厚差や繊維配向によって局所的な変形が発生することもあります。

こうした問題を防ぐためには、試作時に想定する使用環境を再現し、寸法の変化量を測定する必要があります。乾燥した状態と吸水後の状態を比較するだけでなく、変化が進む速度や一定の環境下で寸法が落ち着くまでの過程を把握することも重要です。

また、プラスチック試作依頼の目的は、試作品を図面どおりに製作することだけではありません。実際に使用する環境で、必要な機能と品質を維持できるかを確認することも重要な目的です。

そのため、吸水による寸法変化を検証項目に含めることで、材料の選択や設計公差、加工方法の妥当性を早い段階で評価できます。量産開始後に寸法不良が発生してから原因を調べるよりも、試作段階で評価条件を整理しておく方が、設計変更や製造条件の見直しを進めやすくなります。

手順1:使用環境と許容寸法変化を明確にする

吸水による寸法変化を検証する最初の手順は、試作品がどのような環境で使用されるのかを明確にすることです。使用環境が不明確なまま試験を実施すると、測定結果が得られても、実際の製品に適用できるか判断しにくくなります。

まず、試作品が屋内で使用されるのか、屋外で使用されるのか、水に接触する可能性があるのかを確認します。屋内使用であっても、空調による湿度変化や結露が発生する環境では、吸水状態が変化する可能性があります。

屋外使用の場合は、降雨、結露、季節による湿度変化なども考慮する必要があります。水中で使用される部品であれば、水との接触時間や温度、水質なども試験条件を決めるための情報になります。

次に、実際の使用期間を確認します。短時間だけ使用する治具と、長期間設置される機械部品では、必要な評価期間が異なります。吸水による寸法変化は、必ずしも短期間で完了するとは限りません。特に肉厚のある部品では、表面と内部で吸水状態が異なり、長い時間をかけて変化が進む場合があります。

そのため、試験期間は単純に一定日数で決めるのではなく、部品形状と使用環境を考慮して設定します。必要に応じて、実使用期間中に生じる変化と、一定環境下で平衡状態に近づいた際の変化を分けて評価することが有効です。

使用環境を整理した後は、許容できる寸法変化を明確にします。

例えば、図面上の基準寸法が50.00mmの部品で、吸水後も50.10mmを超えてはならない設計であれば、その上限を評価基準に含めます。ただし、これは説明用の例であり、実際の許容値は部品の機能や組立条件から設定する必要があります。

また、初期寸法からの変化量と、最終的に許される寸法範囲は区別して考えます。加工直後の寸法が許容範囲の上限に近い場合、わずかな吸水でも規格外になる可能性があります。反対に、初期寸法が小さくても、吸水後に必要なはめ合い条件を満たす設計も考えられます。

重要なのは、乾燥時だけでなく、実使用時に必要な寸法精度を定義することです。

さらに、評価対象となる寸法の優先順位も決めておきます。部品全体の外形寸法だけでなく、穴径、軸間距離、平面度、反り、組付け面の位置関係など、機能に直結する箇所を選定します。

単純な長さの変化が小さくても、反りや局所変形によって組み立てできなくなる場合があるためです。寸法変化とともに、実際の組立性や動作状態を確認する計画が望まれます。

この段階で、設計担当者、品質管理担当者、試作依頼先の間で、使用環境と合否基準を共有します。曖昧な条件を残さずに検証目的を明文化することが、後工程の試験精度と判断の一貫性につながります。

手順2:樹脂材料と試作品の初期状態をそろえる

次の手順では、検証に使用する樹脂材料と試作品の条件を整理します。吸水による寸法変化を正しく比較するためには、試験開始時の状態をできる限り統一することが重要です。

まず、試作に使用する樹脂の種類とグレードを確認します。同じ樹脂分類であっても、分子構造や添加剤、充填材の種類によって吸水特性が異なります。

特に、ガラス繊維などの充填材を含む樹脂では、材料全体の吸水量だけでなく、繊維の配向による寸法変化の方向差にも注意が必要です。射出成形品では樹脂の流動方向とその直角方向で挙動が異なる場合があり、試験片の測定方向を明確にする必要があります。

また、試作方法によっても初期状態が変わります。射出成形、切削加工、積層造形などでは、材料内部の構造や残留応力、空隙の有無、表面状態が異なる場合があります。

例えば、切削加工した試作品では、加工によって内部応力が解放され、吸水とは別の原因で反りや寸法変化が生じる可能性があります。射出成形品では、成形収縮や繊維配向が寸法安定性に影響します。積層造形品の場合は、造形方法や内部の空隙、積層方向なども考慮する必要があります。

したがって、量産予定の製造方法と試作方法が異なる場合は、検証結果をそのまま量産品に適用できるとは限りません。試作方法の違いを記録し、必要に応じて量産相当の製造条件で追加評価を実施します。

続いて、試験開始時の水分状態を決めます。

プラスチック材料は、製造後の保管環境によって既に水分を吸収している場合があります。試作品を受け取った時点の重量を測定しても、それが完全な乾燥状態を示しているとは限りません。

そのため、試験目的に応じて、乾燥状態を基準とするのか、一定の温湿度環境で調湿した状態を基準とするのかを決める必要があります。

乾燥処理を行う場合は、材料に適した温度と時間を設定します。過度な加熱によって熱変形や残留応力の緩和、材料特性の変化が起きる可能性があるため、単に高温で長時間乾燥させればよいわけではありません。

また、乾燥後の試作品を測定する際には、測定室の温度に十分なじませることも重要です。試作品が温かい状態で寸法を測定すると、熱膨張の影響が混入し、吸水による変化との区別が難しくなります。

初期状態を統一した後、重量と寸法を測定して基準値として記録します。重量は、使用する測定機器の分解能と必要な評価精度を考慮し、同じ手順で測定します。

寸法については、あらかじめ測定箇所と測定方向を決め、毎回同じ位置を測定できるようにします。形状が複雑な部品では、測定治具や基準面を設定しておくと、測定者によるばらつきを抑えやすくなります。

試験片の数量も重要です。試作品を1個だけ測定すると、個体差や加工ばらつきの影響を十分に把握できません。必要な信頼性に応じて複数の試験片を用意し、同じ条件で比較することが望まれます。

この手順では、吸水試験を始める前に材料と加工条件、保管履歴、初期含水状態、初期重量、初期寸法を記録し、後から検証結果を再現できる状態にしておくことが重要です。

手順3:吸水試験の環境条件と測定計画を設定する

材料と試作品の初期状態を整理したら、実際に水分を吸収させる試験条件を設定します。ここでは、使用環境に合った条件を選び、測定時点と評価方法をあらかじめ決めておくことが重要です。

吸水試験には、一定の湿度環境で試作品を保管する方法や、水中に浸漬する方法などがあります。それぞれ試験中の水分供給条件が異なるため、同じ材料でも吸水量や寸法変化の結果が異なる場合があります。

通常の屋内環境を想定する場合は、温度と相対湿度を管理した環境で調湿する方法が考えられます。例えば、23℃、相対湿度50%程度の条件は、材料評価で用いられる標準的な調湿環境の一例です。ただし、すべての製品でこの条件が適切とは限らず、採用する試験規格や実際の使用環境に応じて設定する必要があります。

湿度変化が大きい場所で使用する部品なら、低湿度条件と高湿度条件を比較する方法も有効です。この場合、湿度が変わった際にどの程度寸法が変化するのか、元の環境に戻したときにどの程度回復するのかを確認できます。

水と直接接触する部品では、水中浸漬試験も検討します。浸漬試験では、試作品を一定温度の水に浸し、時間経過に伴う重量と寸法の変化を測定します。

ただし、水中浸漬で得られる吸水量は、通常の湿度環境における平衡吸水量と同じとは限りません。水中浸漬試験の結果を、そのまま屋内保管時の寸法変化として扱わないことが重要です。

さらに、短期間で吸水を進める目的で高温条件を設定することもありますが、温度を高くすると吸水速度だけでなく、材料内部の状態や加水分解などの劣化反応に影響する場合があります。

そのため、高温水中での試験結果を常温環境の長期変化に単純換算することは避け、加速試験の妥当性を個別に検討する必要があります。

試験条件を決めた後は、測定間隔を設定します。

吸水による変化は時間とともに進むため、試験前と試験終了後の2点だけでは変化の過程を十分に把握できません。特に、吸水初期の変化速度が大きい材料では、初期段階の測定間隔を短くすることで挙動を把握しやすくなります。

例えば、試験開始後の早い段階から複数回測定し、その後は変化速度に応じて測定間隔を広げる方法が考えられます。ただし、具体的な間隔は材料、試験片の厚さ、試験温度、目標とする評価精度によって調整します。

測定終了の条件も事前に決めておきます。

一定期間が経過した時点で終了する方法のほか、連続する測定値の変化が所定の範囲内になったことを確認する方法があります。ただし、重量変化が小さくなったことだけで、試験片内部まで完全に均一な水分状態になったと断定することはできません。

また、実製品で想定される環境が温湿度の繰り返し変化を伴う場合は、吸湿と乾燥を繰り返す条件も検討します。一方向の吸水試験だけでは、繰り返し使用による寸法挙動を十分に評価できない場合があるためです。

試験条件は、実使用環境を反映すること、他の試作品と比較できること、再現性を確保できることの3点を意識して設定します。

手順4:吸水量と寸法変化を経時的に測定する

試験条件を設定したら、試作品の吸水量と寸法変化を継続的に測定します。この手順では、重量の変化と寸法の変化を別々に記録し、それぞれの関係を確認することが重要です。

まず、吸水量の評価では、試験開始時と各測定時点の重量を比較します。

一般的な重量基準の吸水率は、試験後の重量から基準重量を差し引き、その差を基準重量で割って100を掛けることで求められます。ただし、基準重量が乾燥重量なのか、調湿後の重量なのかによって数値の意味が異なるため、算出条件を明確にしておく必要があります。

例えば、乾燥状態の重量が10.00gで、所定の吸水試験後に10.20gとなった場合、乾燥重量を基準とした重量増加率は2.0%です。ただし、この数値は計算方法を説明するための例であり、特定材料の代表的な吸水率を示すものではありません。

水中浸漬した試験片の重量を測定する場合は、表面に付着した水分の扱いを統一します。表面に水滴が残っていると、内部に吸収された水分以外の重量が加算され、結果に誤差が生じるためです。

一方で、測定前に長時間放置すると、試験片から水分が失われる可能性があります。表面水分の除去方法、取り出しから測定までの時間、測定環境を統一することが必要です。

次に、寸法を測定します。

寸法測定では、初期寸法と各測定時点の寸法を比較し、変化量と変化率を算出します。変化率は、測定後の寸法から初期寸法を差し引き、その差を初期寸法で割って100を掛けることで表せます。

例えば、初期寸法が50.00mmで、吸水後に50.15mmとなった場合、寸法増加量は0.15mm、初期寸法に対する変化率は0.3%です。

ただし、実際の部品ではすべての方向で同じ割合の変化が起こるとは限りません。材料の配向、成形条件、肉厚差、形状による拘束などが影響するため、複数方向の寸法を測定することが重要です。

特に、繊維強化樹脂の試作品では、繊維の方向によって寸法変化が異なる場合があります。また、複雑な形状では、局所的な膨張差によって反りやねじれが発生することもあります。

そのため、重要な組立寸法だけでなく、必要に応じて平面度や直角度、真円度などの幾何学的な変化も確認します。

寸法測定時には、測定環境の温度管理も欠かせません。プラスチック材料は温度によって寸法が変化するため、試験片を異なる温度で測定すると、熱膨張の影響と吸水の影響が混在します。

水中浸漬試験後に測定する場合は、試験片の温度を規定の測定温度に近づけたうえで測定します。ただし、温度調整中にも吸水や乾燥が進む可能性があるため、温度調整の方法と時間を統一し、その条件を記録しておく必要があります。

重量測定と寸法測定の結果は、測定日時、温度、湿度、試験片番号、測定箇所とともに管理します。

測定データを時系列で整理すると、吸水が進む速度と寸法変化の進み方を比較できます。重量増加が続いていても寸法変化が小さくなる場合や、重量の変化が小さい段階でも局所的な変形が確認される場合があります。

重要なのは、重量増加率をそのまま寸法増加率として扱わないことです。両者の関係は材料や形状によって異なるため、実測値から評価する必要があります。

また、試験終了後に試作品を乾燥させ、寸法がどの程度回復するかを確認する方法もあります。吸水による可逆的な変化と、残留応力の緩和や材料劣化などによる不可逆的な変化を見分けるための参考になります。

ただし、乾燥後に寸法が元に戻らない場合でも、その原因を吸水だけと断定することはできません。必要に応じて追加試験を行い、複数の要因を切り分けることが大切です。

手順5:測定結果から合否を判断して設計を改善する

最後の手順では、測定結果を設計上の要求事項と照合し、試作品が実際の使用環境に適しているかを判断します。

吸水試験の結果は、単に寸法変化率が大きいか小さいかで評価するのではなく、製品の機能にどのような影響が生じるかという観点から確認します。

例えば、外形寸法の変化が一定範囲内でも、相手部品との隙間が不足すれば組立不良につながる可能性があります。また、穴径の変化が小さくても、穴の位置関係や部品の反りによって固定できなくなる場合があります。

したがって、設計図面上の寸法公差への適合と、実際の組立機能の維持を分けて確認することが重要です。

まず、各測定箇所について、初期寸法、最大変化量、試験終了時の寸法を整理します。複数の試験片を使用している場合は、平均値だけでなく、個々の測定結果やばらつきも確認します。

平均値が許容範囲内であっても、一部の試験片が規格外となっている場合は、製造条件や材料のばらつきを含めて原因を調べる必要があります。

また、長期間使用する部品では、試験期間中の最終値だけではなく、途中の最大寸法や最小寸法にも注目します。使用環境が変化することで、寸法が増減する場合があるためです。

次に、実際の組立状態を確認します。

吸水後の試作品を相手部品と組み合わせ、はめ合い、摺動抵抗、固定状態、密閉性など、製品の目的に応じた機能試験を実施します。寸法測定だけでは把握しにくい問題を発見できる場合があります。

例えば、樹脂製の摺動部品では、吸水による膨張が小さくても、接触圧力や摩擦状態に影響する可能性があります。また、吸水に伴う材料の剛性変化によって、組み立て時の変形量や使用時の挙動が変わることもあります。

こうした部品では、寸法と機械的性質の両方を考慮して合否を判断します。

検証結果が要求事項を満たさなかった場合は、原因に応じて改善方法を検討します。

一つの方法は、材料の変更です。吸水の影響が大きい材料を使用している場合、使用環境に適した別の樹脂グレードを検討することで、寸法安定性を改善できる可能性があります。

ただし、吸水量だけを基準に材料を変更すると、強度、耐熱性、耐薬品性、摩耗特性など、別の性能が不足することがあります。材料変更では、製品全体の要求性能を満たしているかを確認することが必要です。

もう一つの方法は、形状や寸法公差の見直しです。

吸水による変化が一定の範囲で予測できる場合は、実使用時の寸法を基準に初期寸法を設定する方法があります。また、必要なクリアランスを確保したり、部分的な膨張が機能に影響しにくい形状へ変更したりすることも検討できます。

ただし、吸水による膨張を見込んで初期寸法を一律に小さくすると、乾燥状態での組立性や機能が損なわれる可能性があります。乾燥時から吸湿時までの寸法範囲を考慮し、両方の状態で要求性能を満たす設計が必要です。

製造工程の見直しも有効な場合があります。

例えば、加工前に材料を適切な状態へ調湿することや、保管条件を統一することで、納入時の寸法ばらつきを抑えられる可能性があります。最終加工のタイミングを見直す方法もありますが、対象材料や加工方法に適した条件を確認する必要があります。

改善を実施した場合は、変更後の条件で再度試作と検証を行います。材料変更や形状変更によって別の問題が発生していないかを確認し、合否基準を満たした段階で量産条件へ反映させることが重要です。

このように、吸水試験は単なる材料評価ではなく、試作品の設計と製造条件を改善するための判断材料として活用することができます。

プラスチック試作依頼先に共有すべき検証条件

プラスチック試作依頼で吸水による寸法変化を検証する場合、依頼先との情報共有が重要になります。試作品の製作条件と評価条件が一致していなければ、検証結果の解釈に違いが生じる可能性があります。

まず、試作依頼時には、使用予定の材料、製造方法、部品形状、必要数量、重要寸法、使用環境を伝えます。特に、吸水の影響が懸念される部品では、寸法精度が必要となる箇所を明確にすることが重要です。

図面に寸法公差が記載されていても、それが加工直後の状態で適用されるのか、所定の調湿後の状態で適用されるのかが不明確な場合があります。

この違いは、加工会社にとっても重要です。

例えば、加工直後の寸法を基準に検査する契約であれば、吸水後の寸法変化は通常の出荷検査だけでは評価できません。反対に、調湿後の寸法を受入基準にする場合は、調湿方法と測定条件を事前に共有する必要があります。

したがって、図面の公差と測定時の材料状態を対応させることが大切です。

また、材料の保管条件や加工後の取扱方法についても確認します。吸湿性のある材料では、材料の受入れから加工、検査、出荷までの保管環境が、最終的な寸法状態に影響する場合があります。

試作依頼先が材料を乾燥保管しているのか、加工後に一定期間保管するのか、出荷時にどのような包装を行うのかを確認すると、寸法変化の原因を追跡しやすくなります。

ただし、包装によって吸水を完全に防げるとは限りません。包装材の防湿性能や保管期間、保管環境に応じた管理が必要です。

吸水試験を試作依頼先に実施してもらう場合は、測定機器、試験片数量、測定箇所、試験環境、測定間隔、報告内容を明確にします。

試験結果として必要なのが最終寸法だけなのか、重量変化や途中経過を含む記録なのかによって、試験計画は異なります。

また、寸法変化の検証には、測定精度の確認も欠かせません。想定される寸法変化が測定機器の不確かさと同程度であれば、実際に変化したのか測定ばらつきなのか判断しにくくなります。

そのため、要求精度に適した測定方法を選び、必要に応じて測定の繰り返しや校正状態の確認を行います。

検証を外部に依頼する場合は、試験報告書に材料情報、試験条件、初期寸法、測定結果、評価方法を残すことが望まれます。測定結果だけでなく、その値がどのような条件で得られたかを把握できるようにするためです。

さらに、量産化を予定している場合は、試作で得られた条件を量産工程へ引き継げるかを確認します。

試作段階で特別な調湿処理や測定方法を用いても、量産工程で再現できなければ、品質管理上の問題につながる可能性があります。

試作依頼先を選ぶ際には、希望形状を加工できる技術力だけでなく、材料特性を踏まえた提案力や、測定条件を整理できる対応力も評価するとよいでしょう。

吸水による寸法変化の検証で起こりやすい失敗

吸水による寸法変化の検証では、試験方法そのものよりも、試験条件や評価基準の設定に問題が生じることがあります。代表的な失敗を理解し、試作依頼の段階で対策を講じることが重要です。

一つ目は、材料の吸水率だけで寸法変化を予測してしまうことです。

材料の技術資料には吸水率が示されている場合がありますが、その値がどのような条件で測定されたものかを確認する必要があります。水中浸漬による吸水率と、一定湿度での平衡吸水率は同じではありません。

また、吸水率は通常、重量の変化を示す指標であり、寸法変化率と直接一致するものではありません。材料内部の水分量が増えても、膨張の程度や方向は材料構造と形状によって異なります。

そのため、寸法精度が重要な部品では、吸水率の資料だけで判断せず、試作品の実測結果を用いることが必要です。

二つ目は、測定時の温度差を考慮しないことです。

プラスチック材料は熱膨張の影響を受けるため、試験前後で測定温度が異なると、寸法変化の原因を正確に区別できなくなります。

特に、温水浸漬後の試作品を測定する場合は注意が必要です。温度が高い状態で測定すると、熱膨張による寸法増加が吸水による膨張として記録される可能性があります。

同じ測定温度と測定手順を採用し、必要に応じて温度の影響を別途評価することが大切です。

三つ目は、短期間の試験結果だけで長期の寸法安定性を判断することです。

吸水速度は材料や形状、肉厚、環境条件によって異なります。薄い試験片では比較的短期間で変化が進んでも、肉厚のある製品では内部まで水分が移動するのに時間がかかる場合があります。

試験開始から一定時間が経過しただけで平衡状態に達したと判断すると、その後の寸法変化を見落とす可能性があります。

実際の使用期間を考慮し、必要に応じて試験時間を延長するか、追加の長期評価を計画することが重要です。

四つ目は、試験片の形状と実製品の形状の違いを考慮しないことです。

材料比較用の単純な試験片では良好な結果が得られても、複雑な形状の実部品では、肉厚差や拘束条件によって異なる寸法変化が発生する可能性があります。

そのため、材料選定の段階では標準的な試験片を使い、最終的な設計確認では実形状の試作品を評価するというように、試験の目的を分けることが有効です。

五つ目は、寸法変化以外の性能を評価していないことです。

吸水によって材料の剛性や強度、衝撃特性などが変化する場合があります。寸法変化が許容範囲内でも、必要な機械的性能が維持されていなければ、製品として適切とはいえません。

特に荷重を受ける部品や摺動部品、固定用部品では、寸法評価と必要な機能試験を組み合わせることが望まれます。

六つ目は、試験結果を量産工程へ反映していないことです。

試作段階で適切な検証を行っても、量産時の材料保管、加工条件、出荷検査が異なれば、同じ品質を確保できない可能性があります。

試作で確立した調湿条件や寸法評価方法を製造管理の条件として整理し、量産開始後も継続して確認できる仕組みを整えることが重要です。

こうした失敗を防ぐには、試作依頼の初期段階で、何を測定し、どの状態を基準とし、どの条件で合否を判断するかを明確にすることが効果的です。

まとめ:吸水検証を試作段階に組み込み品質を安定させる

プラスチック試作依頼で吸水による寸法変化を検証する際は、材料の吸水特性を理解するだけでなく、実際の使用環境と部品の機能に合わせた評価計画を立てることが重要です。

まず、使用環境と許容寸法変化を明確にし、どの寸法を評価する必要があるのかを決定します。続いて、材料と試作品の初期状態を統一し、試験開始時の重量や寸法を記録します。

そのうえで、実使用条件に対応した吸水試験を計画し、重量と寸法の経時変化を測定します。測定結果は、設計公差と組立機能の両面から評価し、必要に応じて材料や形状、製造条件を見直します。

特に重要なのは、加工直後の寸法精度だけで試作品の品質を判断しないことです。

吸水による寸法変化は、材料の種類、温湿度、部品形状、保管期間などによって異なります。そのため、一般的な吸水率だけで実使用時の寸法を予測せず、必要な条件で実測することが確実な判断につながります。

また、試作依頼先との間で検証条件と合否基準を共有しておけば、寸法不良が発生した際にも原因を整理しやすくなります。測定記録を残すことで、材料変更や設計変更を行う場合にも、過去の検証結果を比較資料として活用できます。

さらに、プラスチック部品が設備や構造物に取り付けられる案件では、試作品単体の寸法検証に加え、実際の設置環境や取付位置、施工状態の記録も重要です。

こうした現場情報の管理には、LRTK Phoneを活用できます。LRTK Phoneは、現場写真や位置情報、施工記録を管理するための自社プロダクトです。試作品の取付場所や周辺状況、施工時の状態を記録することで、設計担当者と現場担当者の情報共有を支援します。

なお、微小な寸法変化の合否判定には、必要な測定精度を備えた寸法測定機器を使用し、LRTK Phoneによる現場記録とは役割を分けることが大切です。

プラスチック試作依頼では、材料選定、吸水試験、寸法評価、設計改善に加えて、現場での使用状況まで一貫して確認することが、安定した品質の実現につながります。試作段階から適切な検証と記録管理を組み込み、量産後や実使用時のトラブルを減らしていきましょう。

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