基板製作を外部に依頼する際、完成した基板が外観検査や導通検査に合格していても、部品実装時のリフロー工程で層間剥離が発生することがあります。特に多層基板や高密度実装基板では、積層材料の耐熱性、内部の接着状態、吸湿量、加熱条件などが複雑に関係するため、製作段階から適切な品質管理を行うことが重要です。
層間剥離は、基板内部の絶縁材料同士や絶縁材料と銅箔などの界面が分離する不具合です。発生すると、基板の膨れや変形だけでなく、スルーホール周辺の損傷、内部配線の信頼性低下、絶縁性能への悪影響などにつながる場合があります。組立工程で発見された場合には、実装済み部品の取り外しや基板の再製作が必要になることもあります。
こうしたトラブルを防ぐには、単に「耐熱性の高い基板を使用する」と指定するだけでは不十分です。基板材料の特性値、積層構造、製作後の保管状態、リフロー時の温度履歴、検査方法を具体的に確認する必要があります。
本記事では、基板製作の依頼時に確認すべき5つの耐熱項目を、実務で使える判断基準とともに解説します。製作会社への問い合わせ内容や仕様書への記載方法、不具合発生時の原因調査まで整理し、試作から量産まで安定した品質を確保するためのポイントを紹介します。
基板製作でリフロー時の層間剥離が発生する原因
基板の層間剥離を防ぐためには、まず不具合が発生する仕組みを理解する必要があります。基板は一枚の均質な材料ではなく、絶縁材料や銅箔、樹脂を含む複数の層を加熱・加圧して一体化した構造です。それぞれの材料には異なる熱膨張特性があり、温度変化によって発生する内部応力も異なります。
リフロー工程では、はんだを溶融させるために基板全体が高温にさらされます。このとき、絶縁樹脂は温度上昇に伴って剛性や熱膨張特性が変化し、厚さ方向にも膨張します。一方、銅箔やガラス繊維は樹脂とは異なる膨張挙動を示します。材料間の変形差によって界面に応力が生じ、局所的な接着強度を超えると層間剥離につながる場合があります。
特に注意したいのが、基板内部に含まれる水分です。基板の樹脂材料は保管環境によって水分を吸収することがあり、急激な加熱によって水分が移動・気化すると、内部に圧力が発生する場合があります。積層界面の接着状態が弱い部分や内部欠陥が存在する部分では、こうした作用が剥離を引き起こす要因になります。
また、基板の製作工程そのものに原因があることもあります。積層プレス時の温度や圧力、樹脂の硬化状態、内層銅箔の表面処理などが適切でない場合、完成直後の外観に問題がなくても、熱負荷を受けた際に接着不良が顕在化する可能性があります。
層間剥離が生じやすい条件は、基板の層数だけでは決まりません。板厚、材料構成、銅箔の分布、穴加工の状態、実装部品の配置、熱容量なども影響します。厚い基板や局所的に銅が集中している設計では、温度分布や熱膨張の状態が複雑になる場合があります。
さらに、リフロー回数の増加も無視できません。両面実装では基板が複数回の加熱を受けることがあります。試作中の部品交換や再加熱が重なる場合には、当初想定した熱履歴を超える可能性があります。一度の加熱に耐えられた基板でも、繰り返しの熱負荷に対して同じ結果になるとは限りません。
ここで注意したいのは、外観上の膨れをすべて層間剥離と判断しないことです。銅箔の浮き、表面の保護膜の剥離、樹脂内部の空隙、積層界面の分離は、それぞれ発生位置と原因が異なる場合があります。見た目が似ていても必要な対策は同じではないため、必要に応じて断面観察などによって不具合の位置を確認することが重要です。
また、導通検査に合格していることは、層間接着品質が十分であることを直接保証するものではありません。電気的な接続が維持されていても、内部に小さな剥離や空隙が残っている可能性があるからです。
そのため、基板製作を依頼する段階では、製作完了時の電気的品質だけでなく、その後のリフロー工程を経ても必要な構造健全性を維持できるかを確認する必要があります。
確認項目1:基板材料のガラス転移温度と熱分解特性
最初の確認項目は、基板に使用する絶縁材料の耐熱特性です。基板製作の依頼では、材料の一般名称や板厚だけを指定することがありますが、同じ種類に分類される基板材料でも、樹脂組成や耐熱性能には違いがあります。
特に確認したいのが、ガラス転移温度を表すTgです。
Tgは、樹脂材料がガラス状の状態から、分子鎖の運動が活発になる状態へ移行する温度領域を示す指標です。Tg付近を境に樹脂の剛性や熱膨張挙動が変化するため、基板の熱的信頼性を検討するうえで重要な情報になります。
ただし、Tgは基板が破壊される温度を意味するものではありません。Tgを超えた瞬間に層間剥離が発生するわけでもなく、Tgより低い温度であれば必ず安全というわけでもありません。短時間のリフローに耐えられるかどうかは、ほかの熱特性や基板構造、吸湿状態なども含めて判断する必要があります。
例えば、実装時に基板が高温にさらされる場合には、Tgが異なる材料を比較し、厚さ方向の熱膨張や接着特性も合わせて確認します。高いTgを持つ材料は有力な候補になることがありますが、Tgだけで優劣を決めるのは適切ではありません。
次に確認したいのが、熱分解温度を表すTdです。
Tdは、樹脂材料が加熱によって熱分解し、一定の質量減少を示す温度として評価されることがあります。ただし、測定方法や質量減少率の定義によって数値が変わるため、異なる条件で測定されたデータを単純に比較することはできません。
樹脂材料は、短時間で著しい分解が起きない温度でも、熱履歴によって特性が変化する可能性があります。そのため、Tdがリフローの最高温度を上回っているという理由だけで、耐熱性が十分だと判断するのは避けるべきです。
もう一つ重要なのが、厚さ方向の熱膨張係数です。一般に基板の厚さ方向をZ方向と呼び、この方向の膨張挙動がスルーホールや積層構造に影響します。
樹脂と銅では熱膨張特性が異なるため、加熱時にはスルーホールのめっき部分に応力が集中することがあります。積層界面の信頼性だけでなく、穴壁のめっき品質も含めて評価することが大切です。
さらに、一定の高温環境に保持した際、層間剥離が発生するまでの時間を評価する指標として、T260やT288があります。これらは、所定の昇温条件で試料を加熱し、それぞれ260℃または288℃で保持した際の層間剥離発生までの時間を、熱機械分析などの規定された方法で評価する指標です。
ただし、こうした特性値は所定の試験片と試験条件に基づくものであり、実際の基板がその時間だけ同じ温度に耐えられることを直接保証するものではありません。特に吸湿状態や積層構造が異なる場合、実際のリフロー結果とは差が生じる可能性があります。
基板製作会社に材料を提案してもらう際には、Tg、Td、熱膨張係数、層間剥離に関する耐熱試験情報を確認し、どの測定条件による数値なのかも説明してもらうとよいでしょう。
材料の指定では、単に「高耐熱材を使用」と書くよりも、「予定するリフロー条件に適合する材料を選定し、主要な熱特性を確認できること」と記載した方が、実装工程との適合性を確認しやすくなります。
また、試作と量産で異なる材料に切り替える場合には注意が必要です。材料の分類や公称Tgが同程度でも、樹脂の組成や加工特性、吸湿特性が異なる場合があります。代替材料を使用するときは、基板製作会社から変更内容の説明を受け、必要に応じて耐熱評価をやり直すことが望まれます。
材料の選定は、基板単体の仕様だけで完結させず、実装時の温度条件と製品の使用環境を考慮して決定することが重要です。
確認項目2:積層構造と層間接着品質
二つ目の確認項目は、基板の積層構造と接着品質です。
多層基板は、銅箔を含む内層材料と、層間を接着する樹脂含浸材料などを組み合わせて製作します。積層工程では温度と圧力を加え、樹脂を流動・硬化させることで各層を一体化します。
この工程で十分な接着状態が得られなければ、リフロー時の加熱によって内部の弱い界面が分離する可能性があります。
基板製作を依頼する際には、まず積層構成を確認します。層数や完成板厚だけでなく、各絶縁層の厚さ、材料の組み合わせ、銅箔厚、内層銅箔の配置などを整理することが重要です。
同じ板厚の多層基板であっても、絶縁層の厚さや銅箔の分布が異なれば、積層時の樹脂の流れ方や加熱時の内部応力も変わります。特に局所的に銅箔が密集する設計では、樹脂の充填状態や層間厚さのばらつきに注意が必要です。
例えば、広い銅箔領域と細い配線領域が混在している場合、製作工程によっては樹脂の流動や層間の厚さに影響することがあります。こうした設計では、基板製作会社に銅箔配置の偏りを確認してもらい、必要に応じて積層構成や内層パターンを調整することが有効です。
ただし、銅箔の配置を変更すると電気的な特性にも影響するため、製作会社の判断だけで修正することは避けます。特に電源層や接地層の変更は、電流経路や信号品質に関わる場合があります。設計者と製作会社が協議し、電気的要求を維持できる範囲で対策を決める必要があります。
次に確認したいのが、内層銅箔と絶縁樹脂の接着状態です。
積層前の銅箔表面に汚れや処理不良があると、樹脂との接着が不十分になる可能性があります。また、内層表面の処理条件が適切でない場合、リフロー時の熱応力によって界面剥離が発生することがあります。
そのため、製作会社に対しては、内層の表面処理や洗浄、積層前の保管管理について、どのような品質管理を実施しているか確認することが重要です。
積層プレスの条件も耐熱信頼性に関係します。使用材料に適した温度、圧力、加熱時間、冷却条件が管理されていなければ、樹脂の硬化不足や空隙の発生につながる可能性があります。
ただし、プレス条件には材料特性や設備構成による違いがあるため、一律の温度や時間を指定することは適切ではありません。材料に適した製作条件が設定され、工程内で管理されているかを確認する方が実務的です。
また、積層後の穴加工にも注意が必要です。スルーホールを形成する際の穴あけ条件が不適切だと、穴壁に樹脂の損傷や加工由来の不具合が生じることがあります。こうした部分が熱負荷を受けると、穴壁周辺の品質問題が顕在化する場合があります。
高密度基板では、微細な穴や層間接続部の信頼性も重要です。基板内部の接続構造には熱膨張差による応力が加わるため、積層界面の剥離と接続不良を区別して評価する必要があります。
依頼時には、積層工程が管理されているかだけでなく、実際の製造条件を反映した試験片で断面評価を行えるか確認するとよいでしょう。断面観察では、層間の空隙、樹脂の充填状態、穴壁のめっき状態などを確認できます。
さらに、製作会社が材料や積層構成を変更する場合には、事前承認のルールを設けることをおすすめします。発注時と異なる構成に変更されても、完成板厚や電気検査の結果だけでは違いを把握できない場合があるためです。
層間剥離対策では、材料の耐熱性能と積層工程の品質を切り離して考えないことが重要です。優れた熱特性を持つ材料であっても、加工条件や接着状態が適切でなければ、十分な信頼性が得られるとは限りません。
確認項目3:基板の吸湿状態と乾燥・保管条件
三つ目の確認項目は、基板の吸湿管理です。
基板の層間剥離というと、材料の耐熱性能や積層条件に注目しがちですが、製作完了後の保管状態も重要です。特に樹脂を使用した基板では、周囲の温湿度や保管時間によって内部の水分量が変化する場合があります。
基板内部に水分が存在すると、リフロー時の加熱によって水分が移動・気化し、内部に圧力が発生することがあります。この圧力が積層界面の弱い部分に作用すると、剥離や膨れが発生する可能性があります。
そのため、基板製作を依頼する際には、完成した基板をどのような状態で保管し、出荷するのか確認することが大切です。
まず確認したいのが、製作完了から梱包までの保管環境です。基板が高湿度の環境に長時間置かれていた場合、梱包時点ですでに水分を吸収している可能性があります。密封された包装であっても、封入前の基板が多量の水分を含んでいれば、その後の吸湿を抑えるだけでは問題を解決できません。
製作会社には、完成後の保管温湿度、吸湿状態の管理方法、梱包までの時間、包装方法について確認するとよいでしょう。
次に重要なのが、防湿包装の仕様です。吸湿による不具合を抑えるためには、必要に応じて防湿性のある包装材を使用し、乾燥剤や湿度状態を確認するための表示材を組み合わせる方法があります。
ただし、防湿包装を採用すれば無条件に長期保管できるわけではありません。包装材の防湿性能、封止状態、保管環境、包装前の水分量などによって、適切な保管期間は異なります。
また、基板の種類によって吸湿特性は異なります。板厚、絶縁材料、銅箔の分布、加工状態などによって水分の吸収速度や熱負荷への感受性が変わるため、すべての基板に同じ保管期限を設定するのは適切ではありません。
製作を依頼する際には、想定される在庫期間も共有しておくことが重要です。完成後すぐに実装する基板と、数か月間保管する予定の基板では、必要な管理方法が異なる場合があります。
さらに、製作会社から納入された後の取り扱いも重要です。
防湿包装された基板を開封すると、保管場所の温湿度に応じて吸湿が進む可能性があります。そのため、開封日時を記録し、実装開始までの時間を管理することが有効です。すぐに使用しない基板については、製作会社と合意した条件で再保管することが望まれます。
開封後の許容時間は、電子部品に設定される吸湿管理条件をそのまま基板へ適用するのではなく、基板材料や構造、実装工程に応じて決める必要があります。基板には部品とは異なる吸湿特性があるため、部品向けの管理基準を無条件に転用しないことが重要です。
吸湿が疑われる場合には、加熱乾燥によって水分を低減する方法が検討されます。ただし、乾燥処理には注意が必要です。
乾燥温度が高すぎる場合や乾燥時間が長すぎる場合、基板の表面処理やはんだ付け性に悪影響を及ぼす可能性があります。また、基板に使用されている材料や保護膜によっては、乾燥条件に制約が生じる場合があります。
そのため、納入後に独自の判断で高温乾燥を実施するのではなく、製作会社に適切な乾燥条件を確認することが重要です。乾燥の必要性も含め、材料や表面処理の仕様に適合する方法を検討します。特に部品を実装した後の乾燥では、電子部品側の耐熱条件も考慮する必要があります。
乾燥は、すでに発生した層間剥離や接着不良を修復する方法ではありません。あくまで吸湿状態を改善するための処理であり、材料や積層構造に問題がある場合には、乾燥だけで再発を防ぐことはできません。
実務では、基板の製造ロット、梱包日、開封日、保管環境、乾燥履歴、実装日を関連付けて管理すると、不具合が発生した際の原因調査が進めやすくなります。
例えば、同じ製造ロットの基板でも、納入直後に実装したものには問題がなく、長期間開封状態で保管したものにだけ膨れが発生した場合、吸湿状態の違いが調査対象になります。ただし、こうした傾向だけで原因を断定せず、材料や実装条件も含めて確認する必要があります。
基板製作の依頼段階から製作会社と実装会社の保管ルールを統一しておけば、両者の管理範囲に空白が生じることを防ぎやすくなります。
重要なのは、基板製作会社が出荷するまでの管理と、発注側が受け入れてから実装するまでの管理を一つの工程として捉えることです。
確認項目4:リフロー温度プロファイルと加熱回数
四つ目の確認項目は、リフロー時の温度プロファイルです。
基板の耐熱性を評価する際には、最高温度だけでなく、加熱速度、予熱時間、高温保持時間、冷却速度、加熱回数を確認する必要があります。
同じ最高温度であっても、高温状態が長く続く場合と短時間で終了する場合では、基板に加わる熱負荷が異なります。また、急激な温度変化が発生すると、材料間の膨張差による応力が大きくなる可能性があります。
そのため、基板製作会社に実装工程の情報を共有せず、材料の耐熱温度だけを指定する方法では、実際のリフロー工程に適合しているか判断しにくくなります。
まず確認したいのが、基板が実際に到達する最高温度です。
リフロー装置の設定温度と基板の実温度は必ずしも一致しません。基板の厚さ、銅箔の面積、実装部品の熱容量、装置内の風量や温度分布などによって、基板上の位置ごとに温度差が生じることがあります。
例えば、大型部品の周辺では温度上昇が遅くなる場合があり、反対に熱容量の小さい部分では温度が上昇しやすくなることがあります。
このような違いを把握するには、実際の基板や代表試験体に温度測定用のセンサーを取り付け、リフロー時の温度履歴を測定する方法が有効です。
基板上の一か所だけでなく、熱容量が大きい部分や温度上昇が速いと考えられる部分を確認すると、局所的な加熱不足や過加熱を把握しやすくなります。
ただし、測定位置の選定や測定方法によって結果が変化するため、再現性のある方法で測定することが重要です。
次に確認したいのが、予熱工程です。
リフローでは、急激な加熱を避けながら基板や部品を所定の温度領域まで上昇させるため、予熱工程を設けることがあります。
予熱によって温度差を緩和できる場合がありますが、予熱時間を長くすれば必ず層間剥離を防げるわけではありません。材料の熱負荷が増加したり、はんだ付けに必要な条件から外れたりする可能性もあるためです。
予熱条件は、基板の耐熱性だけでなく、はんだ材料や電子部品の要求条件も考慮して設定する必要があります。
続いて、はんだの液相線温度以上に保持される時間を確認します。
この時間が短すぎると、適切なはんだ接合が得られない場合があります。一方、必要以上に長い高温保持は、基板材料や実装部品への熱負荷を増加させる要因になります。
そのため、最高温度と高温保持時間の両方を指定し、製作会社に対して想定する熱履歴を共有することが重要です。
また、加熱後の冷却条件も無視できません。
急激な冷却では材料間の収縮差によって応力が生じる場合があります。ただし、冷却速度を遅くすることが常に適切とは限らず、はんだ接合部の形成状態や製品仕様との兼ね合いを考慮する必要があります。
ここで特に重要なのが、リフロー回数です。
片面実装では一回のリフローで工程が完了する場合がありますが、両面実装では複数回の加熱を行うことがあります。さらに、不良部品の交換や追加実装などで再加熱が必要になるケースもあります。
例えば、初回実装と反対面の実装に加えて補修工程を想定している場合には、その熱履歴を製作会社に伝えておく必要があります。
一回のリフロー試験に合格した基板であっても、複数回の加熱後に同等の健全性を維持できるとは限りません。使用する材料や積層構造によっては、繰り返し加熱で損傷が顕在化する可能性があります。
基板製作会社に確認する際には、「リフロー対応」という表現だけで済ませず、予定する最高温度、高温保持時間、加熱速度、冷却条件、加熱回数を共有することが望まれます。
実装条件がまだ確定していない段階では、使用予定のはんだ材料や部品の耐熱仕様を基に、想定する条件の範囲を設定します。そのうえで、試作時に実測した温度履歴と比較し、量産工程で問題がないか確認します。
また、試作時と量産時でリフロー装置や治具、基板の搭載状態が変わる場合には、温度プロファイルも変化する可能性があります。
試作で層間剥離が発生しなかったからといって、量産でも無条件に同じ結果になるとは限りません。量産条件へ移行する段階では、実際の設備と工程条件で再確認することが重要です。
確認項目5:耐熱試験と層間剥離の検査基準
五つ目の確認項目は、耐熱試験と検査基準です。
基板製作を依頼するとき、完成品の外観検査や電気検査だけを要求している場合があります。しかし、これらの検査だけでは、リフロー後に発生する内部の層間剥離を十分に評価できないことがあります。
そのため、用途や要求信頼性に応じて、熱負荷を与える試験と内部構造を確認する検査を組み合わせることが重要です。
代表的な方法として、リフロー工程を模擬した耐熱試験があります。
この試験では、実際の実装工程で想定される温度履歴を基板や代表試験片に与え、加熱後の状態を確認します。必要に応じて複数回の加熱を実施し、繰り返し熱負荷に対する構造の健全性を評価します。
ここで重要なのは、試験条件を製作会社任せにしないことです。
使用予定のはんだ材料、実装工程、加熱回数などを共有し、その基板に必要な耐熱性能をどのように確認するか協議する必要があります。
試験には標準化された方法が存在しますが、採用する試験方法や合否条件は、対象基板の仕様や要求品質に合わせて決めることが大切です。
例えば、実際には複数回リフローする基板に対して、一回だけの加熱結果で評価を終了すると、想定される熱履歴を十分に再現できない場合があります。
一方で、実際の工程とかけ離れた過度な熱負荷を与えた場合には、使用条件での信頼性とは異なる評価になる可能性もあります。
試験条件は、実装工程との対応関係を明確にしたうえで設定する必要があります。
次に重要なのが、試験後の外観確認です。
基板表面の膨れ、変色、反り、銅箔の浮きなどを確認することで、熱負荷による異常の兆候を把握できます。ただし、表面に異常が見られない場合でも、内部に剥離が存在する可能性は残ります。
そこで必要に応じて実施したいのが、断面観察です。
基板を切断して内部構造を観察することで、積層界面の分離、樹脂内部の空隙、穴壁周辺の損傷などを確認できます。特に多層基板では、内部のどの位置で異常が発生しているかを調べることが原因分析につながります。
ただし、断面観察は試料の切断位置に依存するため、観察した範囲に異常がないことだけで基板全体の健全性を保証できるわけではありません。
試験片の採取位置、観察する箇所、試料数についても事前に決めておくことが重要です。
また、試料を樹脂で固定したり研磨したりする過程で、観察状態に影響が出る場合があります。断面評価には適切な試料作製技術が必要であり、実施可能な設備や担当者の経験についても確認するとよいでしょう。
耐熱試験後には、電気的な確認も有効です。
加熱前後で導通状態や抵抗値を比較することにより、熱負荷によって配線接続部に異常が発生していないかを確認できます。特にスルーホールや層間接続部では、外観から判断しにくい接続不良が発生する場合があります。
ただし、電気検査は接着界面そのものを直接観察する検査ではありません。層間剥離の検出には、必要に応じて断面観察などの構造評価を組み合わせることが望まれます。
さらに、合否基準を明確にすることも大切です。
「リフロー後に異常がないこと」という要求だけでは、製作会社と発注側で判断が異なる可能性があります。
例えば、目視で確認できる膨れを不合格とするのか、断面で確認された特定の層間分離を不合格とするのか、許容される内部欠陥の範囲をどう扱うのかを事前に協議します。
合否基準には、適用する品質規格、基板の用途、製品に求める信頼性を反映する必要があります。許容範囲がある場合も、一般的な数値を無条件に流用するのではなく、適用規格と顧客要求を確認して決定することが重要です。
また、評価結果は試験報告書として残してもらうと、その後の品質管理に役立ちます。
報告書には、使用材料、対象ロット、試験片の情報、温度条件、加熱回数、検査方法、観察結果などが記録されていることが望まれます。
不具合が発生した際には、過去の試験結果と比較することで、材料変更や工程変更の影響を調査しやすくなります。
試作段階で必要な評価を実施しておけば、量産開始後に初めて重大な耐熱問題が発覚するリスクを低減できます。
ただし、試作での試験合格は、すべての量産品に不具合が発生しないことを保証するものではありません。量産では材料ロットや製造条件が変動する可能性があるため、必要に応じて工程管理や定期的な品質確認を組み合わせることが重要です。
基板製作の依頼書に記載すべき品質要求と確認方法
ここまで解説した5つの耐熱確認項目を実際の品質管理につなげるためには、基板製作会社へ依頼する際の情報共有が重要です。
基板製作の依頼書には、製造用の配線データやドリルデータ、外形寸法、層数、板厚などの基本仕様を記載することが一般的です。しかし、リフロー時の層間剥離を防ぐためには、完成基板をどのような工程で使用するのかという情報も必要です。
まず、基板材料に関する要求を明確にします。
絶縁材料の種類、必要な耐熱特性、材料変更の可否などを記載し、製作会社が材料を選定する場合には、使用予定材料の特性情報を提示してもらうようにします。
材料を指定する際には、一般名称だけでなく、必要な特性と評価条件を記載することが重要です。TgやTdなどの指標を要求する場合には、測定方法の違いによる認識のずれを防ぐため、どの特性を何の目的で確認するのかを明確にします。
次に、積層構造に関する要求を記載します。
層数、板厚、各層の構成、銅箔厚、絶縁層の厚さなどを図面や製造仕様書に反映させます。積層構成が確定していない場合には、製作会社から提案を受け、設計者が内容を確認する流れを設けるとよいでしょう。
特に高密度配線や微細な層間接続を含む基板では、製造可能性だけでなく、熱負荷に対する信頼性も評価する必要があります。
続いて、実装工程の情報を共有します。
予定するリフロー回数、最高温度、高温保持時間、加熱・冷却条件などを伝え、製作会社が材料や工程の適合性を判断できるようにします。
実装条件が確定していない場合には、想定範囲を記載したうえで、条件確定後に再確認する運用が適しています。
また、基板の梱包と保管に関する条件も依頼書へ反映します。
防湿包装の必要性、開封後の取り扱い、長期保管の有無、乾燥条件の確認方法などについて、発注側と製作会社で認識を合わせます。
試作から実装までの期間が長い案件では、保管管理を明確にしておくことで、吸湿に関係する不具合の発生リスクを低減できます。
さらに、検査条件の記載も重要です。
外観検査、電気検査に加えて、耐熱試験や断面観察が必要かどうかを検討します。試験を実施する場合には、試験条件、対象試料、合否基準、報告書の内容を決めておきます。
ここで注意したいのが、すべての検査を製作会社に任せるのではなく、発注側も結果を確認できる状態にすることです。
試験報告書に合格と記載されていても、どのような試験を実施したのか不明であれば、実装工程との適合性を判断しにくくなります。
また、試作と量産の品質を安定させるためには、変更管理の取り決めが必要です。
材料や積層構成、製造場所、主要工程を変更する際には、発注側へ事前連絡し、必要に応じて承認を受けるルールを定めます。変更内容によっては、耐熱試験を再実施することも検討します。
特に、試作時の評価結果を根拠として量産へ移行する場合には、試作と量産で使用する材料や製作条件が同等であるか確認することが重要です。
基板製作会社を選定する際には、耐熱性についての質問に具体的な回答が得られるかも判断材料になります。
例えば、使用材料の特性を説明できるか、積層工程の品質管理方法を説明できるか、防湿梱包や保管条件について提案できるか、リフローを模擬した試験に対応できるかを確認するとよいでしょう。
すべての会社が同じ検査設備を保有しているとは限りませんが、必要な評価を外部の試験機関と連携して実施できる場合もあります。
重要なのは設備の保有数だけではなく、要求品質を理解し、適切な方法で確認できる体制があるかという点です。
また、発注前の技術打ち合わせでは、リフロー時に層間剥離が発生した場合の調査協力についても確認しておくことが望まれます。
製作会社と実装会社のどちらが調査を担当するのか、試料の保管や検査結果の共有をどのように進めるのかを決めておけば、不具合発生時の初動を早めることができます。
基板製作の依頼では、仕様を細かく指定すること自体が目的ではありません。必要な耐熱性能を明確にし、それを実現する材料、製造工程、検査方法について製作会社と共通認識を持つことが目的です。
層間剥離が発生した場合の原因調査と再発防止策
耐熱対策を実施していても、実際のリフロー工程で層間剥離が発生する可能性はあります。
その際に重要なのは、原因を十分に確認しないまま材料やリフロー条件を変更しないことです。
例えば、基板が膨れたという情報だけで耐熱材料の不足と判断してしまうと、本来の原因である吸湿管理や積層工程の問題を見逃す可能性があります。
まず行いたいのが、不具合の発生状況の整理です。
不具合が発生した基板の製造ロット、実装日、保管期間、開封日時、リフロー装置、温度プロファイル、加熱回数などを確認します。
同じロットのすべての基板に問題があるのか、一部の基板だけで発生しているのかも重要な情報です。
例えば、同じ基板構造で複数の製造ロットを使用している場合、特定ロットだけに不具合が集中していれば、材料や製作工程の変動を調査する手掛かりになります。
一方、複数ロットで同様の不具合が発生している場合には、共通する設計条件や実装工程を確認する必要があります。
ただし、発生傾向だけで原因を確定することはできません。複数の要因が重なっている可能性もあるため、客観的な検査結果に基づいて判断することが重要です。
次に、不具合の発生位置を確認します。
基板全体に膨れが発生している場合と、特定の穴や銅箔周辺だけで異常が生じている場合では、調査すべき項目が異なります。
断面観察によって、どの積層界面で分離が発生しているかを確認します。また、樹脂内部の空隙や穴壁の損傷がないかも合わせて調べます。
リフロー前の未実装基板が残っている場合には、不具合品と比較することが有効です。
未実装基板に内部欠陥が存在していたのか、リフロー後に初めて異常が確認されたのかによって、原因調査の方向性が変わります。
ただし、未実装基板に外観異常がないことだけでは、内部欠陥が存在しないとは判断できません。必要に応じて未実装品の断面評価や耐熱試験を実施します。
吸湿が疑われる場合には、保管条件や開封後の経過時間を調査します。
同じ仕様の基板を異なる保管条件で扱っていた場合、その違いと不具合の発生状況を比較することで、吸湿の影響を検討できます。
必要に応じて水分量の測定や、乾燥条件を管理した試験も検討します。ただし、水分量の評価方法や試料の前処理によって結果が変化するため、比較条件をそろえる必要があります。
実装工程が疑われる場合には、温度プロファイルの実測結果を確認します。
装置の設定値だけで判断するのではなく、基板が実際に受けた熱履歴を調べます。特定位置で過加熱が発生していないか、加熱時間が想定より長くなっていないか、再加熱が追加されていないかを確認することが重要です。
原因の候補を整理した後は、対策の有効性を検証します。
例えば、保管条件を変更する対策であれば、変更前後で吸湿状態やリフロー後の品質を比較します。積層構成を変更する場合には、変更によって接着品質や熱膨張特性が改善しているか確認します。
リフロー条件の変更では、層間剥離だけでなく、はんだ付け品質や電子部品への影響も評価する必要があります。
また、複数の条件を一度に変更すると、どの対策が有効だったのか判断しにくくなります。実務では、原因仮説を整理し、可能な範囲で比較条件をそろえて検証することが望まれます。
再発防止では、不具合が発生したロットへの対応だけでなく、仕様書や管理基準への反映が重要です。
材料の承認条件、積層構成の変更管理、梱包方法、保管期限、リフロー回数、耐熱試験の条件などについて、必要な項目を見直します。
また、対策後に製作された基板についても、一定期間は不具合の発生状況を確認することが望まれます。対策直後の試作品だけで問題が確認されなかったとしても、量産時のばらつきまで評価できているとは限らないためです。
不具合対応で得られた情報を製作会社と実装会社の双方で共有し、次回の基板製作依頼に反映することが、継続的な品質改善につながります。
まとめ:5つの耐熱確認項目を製作前に共有することが重要
基板製作の依頼でリフロー時の層間剥離を防ぐには、基板材料の選定だけでなく、積層工程から保管、実装、検査までを一連の品質管理として考える必要があります。
特に重要なのは、材料のガラス転移温度や熱分解特性、積層構造と接着品質、吸湿状態と保管条件、リフロー温度プロファイル、耐熱試験と合否基準という5つの確認項目です。
これらの項目は、それぞれ独立しているわけではありません。
十分な耐熱特性を持つ材料でも、積層時の接着状態が悪ければ層間剥離が発生する可能性があります。また、積層品質が良好でも、過度な吸湿や想定外の熱履歴によって不具合が発生する場合があります。
そのため、どれか一つの項目だけを強化するのではなく、基板製作から部品実装までの条件を総合的に確認することが重要です。
基板製作会社へ依頼する際には、完成基板の仕様に加えて、実際のリフロー条件や予定する加熱回数を伝えることをおすすめします。製作会社が使用材料と積層工程の適合性を検討しやすくなり、事前に必要な評価方法を協議できます。
また、試作段階での耐熱評価は、量産時の品質安定化に向けた重要な取り組みです。材料や製造工程の変更が生じる場合には、試作時の結果だけに依存せず、必要な再評価を実施することが望まれます。
不具合が発生した場合には、材料、製作工程、保管、リフロー条件の各段階から原因を調査し、客観的な検査結果に基づいて対策を決定します。その結果を仕様書や工程管理に反映することで、同様の不具合の再発リスクを低減できます。
さらに、基板を組み込んだ機器を施工現場や設備設置現場で運用する場合には、製造時の品質管理に加えて、現地での設置状況や作業記録を正確に残すことも重要です。製造工程の検査記録と現地での作業記録を適切に管理することで、導入後の確認や不具合調査を進めやすくなります。
こうした現場記録の管理には、位置情報付きの現場写真や施工記録を扱えるLRTK Phoneが役立ちます。現場で取得した写真と位置情報を関連付けて記録できるため、機器の設置場所や施工状況を後から確認したい場合にも活用できます。
基板の耐熱品質は製作・実装工程で適切に評価し、製品導入後の現場状況はLRTK Phoneなどを活用して記録することで、製造から現場運用までの情報管理をより円滑に進められます。基板製作を依頼する段階から必要な品質条件を明確にし、各工程で確認した情報を確実に残していくことが、信頼性の高い製品づくりにつながります。
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