オリジナル製品の製造依頼で金型の長期運用が重要になる理由
オリジナル製品の製造を外部の工場へ依頼する場合、製品の品質や納期だけでなく、製造に使用する金型を長期間にわたって安定運用できるかどうかが重要な判断材料になります。特に、樹脂成形品やプレス加工品など、専用金型を使用して継続生産する製品では、金型の状態が製品品質や供給体制に大きく影響します。
製品の試作段階では問題がなくても、量産を開始してから金型の摩耗や部品の破損が発生することがあります。成形条件の変化や清掃不足によって不良品が増えたり、修理のために製造ラインを停止したりするケースも考えられます。こうした問題は、製品の販売計画や納品スケジュールにも影響するため、製造依頼の時点から対策を検討しておく必要があります。
金型は一度製作すれば無制限に使用できるものではありません。繰り返しの加工によって摩耗や疲労が進行し、使用する材料や加工条件によっては腐食や変形が生じる場合もあります。一方で、適切な設計と保守管理を行うことで、必要な品質を維持しながら継続使用できる期間を延ばせる可能性があります。
金型の長期運用で重要なのは、単純に頑丈な金型を製作することだけではありません。製造数量の見通し、使用条件、定期点検、消耗部品の交換、保管環境、修理時の対応など、運用全体を考慮する必要があります。
また、オリジナル製品の製造依頼では、発注企業と製造工場の間で金型に関する認識が異なることがあります。例えば、発注企業は将来的に別の工場でも同じ金型を使用できると考えていても、製造工場側では自社設備専用の仕様として設計している場合があります。
金型の所有権についても注意が必要です。金型の製作を依頼したという事実だけでは、所有権の帰属や持ち出しの条件、設計データの利用権限などが必ずしも明確になるわけではありません。これらは契約内容によって取り扱いが異なるため、事前の確認が不可欠です。
さらに、オリジナル製品は市場の反応によって生産数量が変化することがあります。当初は少量生産を想定していた製品でも、受注の増加によって量産数量が拡大する可能性があります。反対に、販売計画の変更によって生産を一時停止し、一定期間後に再開する場合もあります。
こうした変化に対応するには、金型の製作時点で想定生産期間や将来の運用方法を整理し、製造工場と共有しておくことが大切です。
ここでは、オリジナル製品の製造依頼において金型を長期的に安定運用するために確認したい5つのポイントを解説します。初めて金型を使用する製品を外注する担当者だけでなく、既存製品の製造委託先を見直したい企業にも役立つ内容です。
確認ポイント1:生産計画と金型寿命の前提を一致させる
オリジナル製品の製造依頼で最初に確認したいのは、金型に求める寿命と実際の生産計画が一致しているかどうかです。
金型の設計では、製品形状や寸法だけでなく、どの程度の数量を製造する予定なのかが重要になります。試作品や短期間の小ロット生産を目的とする金型と、長期間にわたる継続量産を想定する金型では、材料選定や構造、メンテナンス性などの考え方が異なる場合があります。
例えば、樹脂射出成形用の金型では、製品形状や成形材料、生産数量などを考慮して金型材料や表面処理を検討します。摩耗しやすい部分に適切な材料を使用したり、交換が必要になりやすい部品を分割構造にしたりすることで、長期運用時の保守性を高められる場合があります。
ただし、金型寿命は使用回数だけで一律に判断できるものではありません。同じ型材を使用していても、成形材料の性質や加工条件、金型構造、保守状態によって摩耗の進み方は変わります。
樹脂材料にガラス繊維などの充填材が含まれる場合、流路や成形面の摩耗に注意が必要になることがあります。また、材料や成形条件によって腐食性のある成分が発生する場合には、金型材料や表面処理の適合性を検討する必要があります。
そのため、製造工場に対して単に長寿命の金型を希望すると伝えるだけでは、必要な仕様を十分に共有できません。
まずは、年間の予定生産数量、想定する生産期間、最大生産数量、製品の仕様変更の可能性を整理します。そのうえで、金型の使用条件と必要な保守内容について相談することが重要です。
金型の寿命をショット数で表す場合にも注意が必要です。ショット数とは、一般に成形機で金型を使用して成形動作を行った回数を指します。ただし、1ショットで複数個の製品を成形する金型では、ショット数と製品数量は一致しません。
さらに、想定ショット数が示されていたとしても、その回数まで無条件に品質を保証できるとは限りません。交換部品の有無や点検条件、許容される寸法変化などによって、実際の運用方法が変わるためです。
製造依頼時には、想定寿命の数値だけでなく、その前提となる材料、加工条件、保守内容、品質維持の判断基準まで確認する必要があります。
また、金型の長期運用では製品品質の要求水準も重要です。
外観が重視される製品では、成形面にわずかな傷や摩耗が発生しただけでも、外観不良につながる場合があります。一方、機能部品では、穴位置や嵌合寸法などの変化が組立性や性能に影響することがあります。
そのため、どの部分の精度を優先するのか、どのような変化を許容できないのかを明確にし、金型設計へ反映させる必要があります。
例えば、寸法精度が特に重要な部分については、測定方法と検査頻度を事前に設定しておくことで、摩耗や変形による品質変化を早期に把握しやすくなります。
将来の増産にも目を向けることが大切です。生産数量が大きく増える可能性がある場合は、金型の取り数を増やす方法や、追加金型を製作する場合の条件なども検討対象になります。
ただし、取り数を増やすと金型構造や成形条件が変わり、品質管理が複雑になる場合もあります。単純に生産能力だけで判断せず、品質の安定性や設備との適合性も含めて検討する必要があります。
長期運用を目的とした金型仕様は、製品の初期品質だけではなく、将来の生産計画まで踏まえて決定することが重要です。
確認ポイント2:点検・清掃・消耗部品交換の基準を決める
金型の長期運用を安定させるためには、製作時の品質に加えて、使用開始後の保守管理体制を確認する必要があります。
金型は生産を繰り返すことで摩耗や汚れが蓄積します。樹脂成形では、材料由来の付着物やガス成分などが金型内部に残り、成形不良の原因となることがあります。また、可動部では摩耗や潤滑状態の変化が発生し、動作不良につながる場合があります。
こうした状態を放置すると、製品品質が徐々に低下したり、突発的な修理が必要になったりする可能性があります。
そこで重要になるのが、定期点検と予防保全の仕組みです。
予防保全とは、故障が発生してから対応するだけでなく、使用状況や点検結果に応じて清掃、調整、部品交換などを実施し、不具合の発生リスクを抑える考え方です。
オリジナル製品の製造を依頼する際には、製造工場がどのような基準で金型の点検を行っているかを確認しましょう。
点検のタイミングは、一定のショット数を基準にする方法や、生産ロットの切り替え時に実施する方法などが考えられます。ただし、適切な間隔は金型の構造や材料、成形条件によって異なるため、すべての金型に共通する回数を設定できるわけではありません。
初期段階では比較的短い間隔で状態を確認し、摩耗や汚れの発生状況を把握したうえで、点検周期を見直す方法も有効です。
点検内容についても具体的に確認する必要があります。
例えば、成形面の傷や摩耗、可動部の動作状態、冷却経路の状態、ガス抜き部分の汚れ、締結部の緩みなどが確認対象になることがあります。実際の点検項目は、金型の種類や構造に合わせて設定します。
特に注意したいのは、清掃と修理を混同しないことです。
定期的な清掃で改善できる状態と、部品交換や加工修正が必要な状態では、対応方法が異なります。成形面の傷を不用意に研磨すると、寸法や表面状態が変化し、製品品質に影響する場合もあります。
そのため、製造現場の判断だけで加工修正を進めるのではなく、変更内容に応じた承認手順を設けることが重要です。
消耗部品の管理も確認しておきたいポイントです。
金型には、使用条件によって交換が必要になる部品が存在します。例えば、押出し機構の部品やシール部品、ばね類などは、構造や使用状況によって定期的な確認が必要です。
これらの交換部品について、製造工場が仕様を把握しているか、交換方法が標準化されているかを確認すると、突発的な停止への備えにつながります。
また、部品交換後にどのような確認を行うかも重要です。
交換作業が完了しても、金型の組付け状態や動作条件が適切でなければ、品質不良が発生する可能性があります。必要に応じて試し成形を実施し、製品寸法や外観、金型の動作状態を確認する運用が求められます。
さらに、保守記録を継続的に残すことが大切です。
点検日、累積使用回数、確認した異常、交換部品、修理内容、作業担当者などを記録しておくことで、金型の状態を把握しやすくなります。過去の不具合と使用回数の関係を分析できれば、点検周期の見直しにも活用できます。
製造依頼先を選ぶ際には、金型を製作できる技術だけでなく、運用開始後も継続して管理できる体制があるかを確認しましょう。
確認ポイント3:金型の所有権と保管・持ち出し条件を明文化する
オリジナル製品の製造依頼では、金型の所有権と保管条件を明確にしておくことが重要です。
発注企業が専用金型の製作を依頼した場合でも、所有権の帰属や使用権限、返却条件などは契約によって異なります。製造委託契約や金型管理に関する取り決めが曖昧なままでは、将来的に製造工場を変更する際や、生産を終了する際に問題が生じる可能性があります。
まず確認したいのは、金型の所有者が誰になるのかという点です。
発注企業が所有する契約なのか、製造工場が所有する契約なのかによって、保管や使用、移管に関する取り扱いが変わります。所有権の移転時期や、所有権を確認できる書類の有無も整理しておく必要があります。
ただし、金型そのものの所有権と、金型の設計図面や加工データに関する権利は必ずしも同一ではありません。
発注企業が金型を所有していても、設計データを自由に取得、複製、改変できるとは限らないため、利用範囲を別途確認することが大切です。
次に確認したいのが、金型の保管場所と管理責任です。
量産を継続している金型は、製造工場内で保管されることが一般的ですが、すべての工場が同じ管理方法を採用しているわけではありません。
使用頻度の低い金型を専用の保管場所へ移動する場合や、長期間使用しない金型を別施設で管理する場合もあります。
金型の保管環境が適切でないと、さびや腐食、異物の付着などが発生する可能性があります。特に、金属部分が露出している金型では、湿気や結露の影響を考慮する必要があります。
長期間使用しない場合には、金型の材質や状態に応じた防錆処理や保護措置が必要になることがあります。
また、保管時の姿勢や支持方法が不適切な場合、金型の一部に負荷が集中したり、構成部品が損傷したりするおそれがあります。金型の形状や重量を考慮した保管方法を確認しておくことが重要です。
金型の識別管理についても注意が必要です。
複数の製品を製造している工場では、似た形状の金型や交換部品が混在する可能性があります。管理番号や製品番号、金型の改訂情報などを紐づけておくことで、取り違えや誤使用を防ぎやすくなります。
さらに、発注企業が金型の状態を確認できる仕組みも検討するとよいでしょう。
一定期間ごとに保管状況の報告を受けたり、必要に応じて写真を共有してもらったりする方法があります。ただし、工場内の撮影や立ち入りには安全管理や機密保持上の制約があるため、確認方法は事前に協議する必要があります。
金型の持ち出し条件も長期運用では重要です。
製造委託先を変更する場合、金型を別の工場へ移動できるか、移動時にどのような手続きが必要かを取り決めておくと、将来的な調整を進めやすくなります。
その際には、搬出前の状態確認、梱包方法、輸送中の損傷への対応、搬入後の検査方法なども検討対象になります。
加えて、発注企業の承認を受けずに他の製品の製造へ転用しないことや、第三者による使用を認めるかどうかも明確にしておく必要があります。
金型の所有権と使用条件を整理することは、資産管理だけでなく、オリジナル製品の安定供給と機密情報の保護にもつながります。
確認ポイント4:修理・改造の承認手順と履歴管理を整える
金型を長期間使用していると、摩耗や損傷に対応するための修理が必要になることがあります。また、製品の仕様変更に伴って金型を改造する場合もあります。
こうした修理や改造を適切に管理することは、オリジナル製品の品質を維持するうえで欠かせません。
特に注意したいのは、修理と改造の違いです。
修理は、損傷した部分や機能が低下した部分を所定の状態へ戻すことを主な目的とします。一方、改造は製品形状や金型構造、機能などを変更することを目的とします。
ただし、実際の作業では両者の境界が明確でない場合もあります。例えば、摩耗した部分を補修する際に寸法や形状が変化すれば、製品品質へ影響する可能性があります。
そのため、作業の名称だけで判断せず、変更が製品品質に与える影響を確認することが重要です。
製造依頼時には、どのような修理を製造工場の判断で実施できるのか、どのような作業について発注企業の事前承認が必要なのかを取り決めておきましょう。
日常的な清掃や所定の手順に基づく消耗部品交換については、製造工場が標準作業として実施する運用が考えられます。
一方、製品の寸法や外観に影響する加工修正、成形部分の形状変更、金型構造の変更などについては、事前に内容を共有し、承認を得る仕組みが望まれます。
特に、製品仕様に関係する部分の加工変更は慎重に扱う必要があります。
金型の一部を削る加工は、作業内容によっては元の状態へ戻すことが難しくなります。追加加工による影響を十分に確認せずに進めると、製品寸法や組立性が変化する可能性があります。
修理を行う場合には、損傷箇所、原因の推定、作業内容、加工後の確認方法を整理し、必要に応じて発注企業と製造工場で合意してから進めます。
また、修理後の品質確認も欠かせません。
金型の外観や動作状態だけでなく、実際に製造した製品が要求仕様を満たしているかを確認する必要があります。
修理内容によっては、初品検査や寸法測定、組立確認などを実施し、従来品との違いがないかを確認することが重要です。
さらに、修理・改造履歴を金型ごとに管理しておくことが必要です。
金型の管理番号、作業日、変更箇所、変更理由、実施した作業、検査結果、承認者などを記録しておくことで、後から変更内容を追跡できます。
特に、同じ製品を複数の金型で製造している場合には、どの金型にどの変更を実施したかが分からなくなると、品質不良の原因調査が難しくなります。
例えば、一方の金型だけで特定の寸法不良が発生した場合、過去の修理履歴を確認できれば、原因を絞り込む手掛かりになります。
修理履歴と製造ロットを関連づけておくことも有効です。
修理前後の製品を識別できるようにしておけば、不具合が発生した際に影響範囲を調査しやすくなります。
また、金型の図面や部品構成表についても、現物と整合した最新版を管理することが重要です。
修理や改造が積み重なると、製作当初の図面と実際の金型の状態が一致しなくなることがあります。この状態で交換部品を製作すると、寸法や形状が合わない問題が発生する可能性があります。
金型の長期運用では、現物の状態だけでなく、設計情報と変更履歴を継続的に一致させる管理体制が求められます。
確認ポイント5:生産停止や製造先変更に備えた引継ぎ体制を確認する
オリジナル製品の製造依頼では、同じ工場で長期間生産を継続できることが理想的ですが、事業環境の変化によって製造体制を見直す場合があります。
製造工場の設備更新や生産能力の変化、製品需要の増加、生産拠点の再編などによって、別の工場へ製造を移管することも考えられます。
このような場合に重要になるのが、金型の引継ぎ体制です。
金型が存在していても、移管先の設備でそのまま使用できるとは限りません。成形機や加工設備の仕様が異なる場合、金型の取付け方法や動作条件、周辺装置との接続方法などを確認する必要があります。
例えば、射出成形用の金型では、成形機の型締能力、タイバー間隔、金型取付寸法、型開き量、エジェクタ機構、ノズルとの適合性などが確認対象になります。
金型の寸法が設備に適合していても、冷却回路や配管の接続、材料供給条件などが異なれば、同じ成形条件を再現できない場合があります。
そのため、金型の移管を想定する場合には、金型単体の図面だけでなく、使用設備や周辺機器との適合条件を把握しておくことが重要です。
また、成形条件などの製造ノウハウについても、どの範囲まで引き継げるのかを確認する必要があります。
長年の運用によって調整された製造条件が担当者の経験だけに依存していると、別の工場で同じ品質を再現することが難しくなる場合があります。
温度や圧力、加工速度、冷却時間など、製品品質に影響する条件については、必要な範囲で記録し、管理方法を定めておくことが望まれます。
ただし、製造工場が保有する独自技術やノウハウには、機密情報や契約上の制約が存在する場合があります。そのため、共有対象となる情報と利用可能な範囲は、製造依頼時に合意しておく必要があります。
移管時の品質確認方法についても事前に検討しておきましょう。
同じ金型を使用しても、設備や加工条件が変われば、製品の寸法や外観、内部状態などに差が生じる可能性があります。
移管後には必要に応じて試作や初品検査を行い、要求仕様への適合性を確認する必要があります。重要な機能部品については、寸法検査だけでなく、組立性や性能などの確認も検討します。
さらに、製造工場の突発的な操業停止に備えることも大切です。
金型の修理が長期化した場合や設備が使用できなくなった場合、製品供給が停止する可能性があります。代替生産の方法や、必要に応じた在庫管理などを検討しておくことで、影響を抑えやすくなります。
ただし、予備金型を用意すれば必ず安定供給できるわけではありません。予備金型の保管状態や使用設備との適合性、試運転の必要性なども考慮する必要があります。
生産終了時の対応も重要です。
製品の製造を終了した際、金型を一定期間保管するのか、返却するのか、廃棄するのかについて合意しておかなければ、後から判断が難しくなることがあります。
製品の補修部品や追加注文への対応が必要な場合には、製造終了後の金型保管期間についても検討する必要があります。
製造依頼の段階から生産停止や工場変更への備えを整えておくことは、長期的な製品供給の安定性を高めるための重要な取り組みです。
製造依頼前に準備したい資料と打ち合わせの進め方
金型を長期間安定運用するためには、製造工場へ依頼する前に必要な情報を整理しておくことが重要です。
特に、オリジナル製品の製造では、発注企業が製品の用途や販売計画を把握している一方で、製造工場は加工方法や設備条件に関する専門知識を持っています。双方が必要な情報を共有することで、実際の運用に適した金型仕様を検討しやすくなります。
最初に準備したいのが、製品仕様に関する資料です。
製品図面や三次元形状データ、使用材料、寸法公差、外観要求、組立条件などを整理します。特に重要な寸法や機能については、どの部分が品質上の管理対象になるのかを明確にする必要があります。
例えば、他の部品と組み合わせる製品では、嵌合部分の寸法精度が重要になります。また、外観部品では、成形面の状態やパーティングラインの位置などが製品の見た目に影響する場合があります。
これらの要求を明確にすることで、金型の設計段階から重要な管理項目を検討できます。
次に、生産計画に関する情報を準備します。
初回の予定数量だけでなく、年間生産数量や将来的な増産の可能性、生産終了時期の見通しなども共有するとよいでしょう。
正確な生産数量が決まっていない場合には、現時点の想定と変動の可能性を区別して伝えることが重要です。
例えば、当初の生産量が少なくても、販売状況によって継続量産へ移行する可能性がある場合、その見通しを伝えておくことで、将来の使用条件を踏まえた提案を受けやすくなります。
また、品質管理に関する資料も重要です。
検査対象となる寸法、測定方法、外観判定基準、不良品が発生した場合の対応方法などを整理しておくと、金型の保守管理と製品検査を関連づけやすくなります。
例えば、金型の摩耗によって変化しやすい寸法が分かっていれば、その寸法を定期的に確認する仕組みを検討できます。
打ち合わせでは、金型の製作仕様だけでなく、製造開始後の管理体制についても確認しましょう。
金型の点検担当者、保守記録の管理方法、修理の承認手順、保管条件、異常発生時の連絡方法などを具体的に話し合うことが重要です。
製造工場が金型製作を外部へ委託する場合には、金型製作会社と量産工場の役割分担についても確認しておく必要があります。
金型を製作した会社と実際に量産する工場が異なる場合、修理時の連絡経路や設計情報の管理方法が複雑になることがあります。
そのため、金型に不具合が発生した際に誰が原因を調査し、誰が修理方針を決定するのかを整理しておくと、対応の遅れを減らしやすくなります。
さらに、打ち合わせで決定した内容は、口頭だけでなく文書として残すことが大切です。
製品仕様書や金型仕様書、製造委託契約、保守管理に関する取り決めなどに必要な内容を反映することで、担当者が変更された場合にも認識を共有しやすくなります。
契約書に記載する内容は、取引形態や金型の所有関係によって異なるため、必要に応じて専門家による確認も検討しましょう。
金型の長期運用で起こりやすいトラブルと予防策
オリジナル製品の製造では、金型を長期間使用することでさまざまなトラブルが発生する可能性があります。
代表的な問題の一つが、金型の摩耗による製品寸法の変化です。
金型の一部が摩耗すると、製品の寸法や形状が徐々に変化する場合があります。特に、可動部や摺動部、負荷が集中する部分では、使用条件に応じた管理が必要になります。
このような問題を防ぐには、初期の寸法測定結果を基準として保存し、定期的に製品寸法を確認する方法が有効です。
ただし、製品寸法の変化は金型摩耗だけが原因とは限りません。材料の状態や成形条件、測定環境などによっても結果が変化するため、複数の要因を踏まえた原因調査が必要です。
次に注意したいのが、金型内部の汚れによる品質不良です。
樹脂成形では、材料由来の付着物などによってガス抜き性能が低下し、外観不良や充填不良につながる場合があります。
このような問題に対しては、成形材料や金型構造に適した清掃方法を定め、必要な点検を実施することが重要です。
また、清掃時に不適切な工具や薬剤を使用すると、金型表面を損傷する可能性があります。清掃方法は金型の材質や表面処理との適合性を確認し、標準化しておくことが望まれます。
長期間使用しない金型の保管トラブルにも注意が必要です。
生産を一時停止した金型を保管する際、防錆処理や保管環境の管理が不十分だと、再使用時にさびや動作不良が見つかる場合があります。
そのため、生産停止時には金型の清掃や状態確認を行い、保管期間に応じた保護措置を検討する必要があります。
再使用する際にも、保管前の状態と比較し、必要に応じて点検や試し成形を行うことが大切です。
さらに、修理内容が十分に共有されないことで発生するトラブルもあります。
例えば、製造工場が金型の一部を修正したものの、その変更内容が発注企業へ伝わっていなかった場合、後から製品寸法の変化が発見されても原因の特定に時間がかかる可能性があります。
こうした問題を防ぐには、修理前の承認と修理後の報告を組み合わせた運用が有効です。
金型の状態を写真で記録することも、情報共有の補助として役立ちます。
摩耗箇所や損傷部分、修理前後の状態などを写真で残しておけば、文章だけでは伝わりにくい状況を共有しやすくなります。
ただし、写真だけで金型の寸法精度や内部状態を判断できるわけではありません。必要な測定や検査と組み合わせて活用することが重要です。
また、金型の管理情報が担当者ごとに分散している場合、過去の修理内容や交換部品の履歴を確認しにくくなることがあります。
このような問題に対しては、金型ごとに管理番号を設定し、仕様書、点検記録、修理履歴、検査結果などを関連づけて保存する方法が考えられます。
重要なのは、記録を残すこと自体を目的にするのではなく、異常発生時や保守計画の見直し時に必要な情報を取り出せる状態にしておくことです。
金型の運用管理を継続的に改善するためには、不具合が発生した際の原因分析も欠かせません。
発生した不良を一時的に修正するだけでなく、なぜその不良が発生したのか、同じ問題を繰り返さないために何を変更するべきかを検討する必要があります。
例えば、特定の部品が繰り返し破損する場合には、単純に交換するだけでなく、金型構造や加工条件、使用方法に問題がないかを確認します。
こうした改善を積み重ねることで、金型の運用上の弱点を把握し、長期的な品質安定につなげやすくなります。
まとめ:金型を長く安定して使える製造体制を構築する
オリジナル製品の製造依頼では、金型の初期品質だけでなく、長期間にわたって安定して使用できる体制を整えることが重要です。
金型の長期運用を安定させるためには、まず生産計画と金型寿命の前提を一致させる必要があります。予定生産数量や製品の要求品質、使用材料、加工条件などを整理し、製造工場と共有することで、適切な金型仕様を検討しやすくなります。
次に、点検や清掃、消耗部品交換の基準を明確にすることが大切です。金型は使用とともに状態が変化するため、定期的な確認と保守記録の蓄積によって、不具合の早期発見や予防保全につなげることが求められます。
また、金型の所有権や保管条件、持ち出しの手続きについても、製造依頼の段階で整理しておく必要があります。将来的に生産拠点を変更する可能性がある場合には、金型の移管方法や関連情報の取り扱いについても確認しておくと安心です。
修理や改造については、承認手順と履歴管理を整備し、金型の現物と設計情報が一致する状態を維持することが重要です。修理後の製品検査や変更履歴の共有を適切に行うことで、品質変化が発生した際の原因調査も進めやすくなります。
さらに、生産停止や製造工場の変更を想定した引継ぎ体制を整えることで、事業環境の変化にも対応しやすくなります。
これらの取り組みを実施するうえでは、発注企業と製造工場の継続的な情報共有が欠かせません。
金型に関する技術情報だけでなく、製造設備の設置状況や保守作業の実施状況、設備移設に伴う工事の記録なども適切に管理することで、製造体制全体の情報を把握しやすくなります。
特に、生産設備の新設や移設、工場設備の更新に伴う施工では、現場の状況を写真や位置情報と関連づけて記録しておくことが、関係者間の情報共有に役立つ場合があります。
こうした設備関連の現場記録を効率的に管理したい場合には、LRTK Phoneの活用も選択肢になります。LRTK Phoneは、現場写真や位置情報、施工記録を扱える自社プロダクトであり、位置情報を取得できる環境では、撮影した現場の情報を位置と関連づけて整理・共有する用途に活用できます。
金型自体の寿命判定や精密寸法検査を代替するものではありませんが、設備の設置工事や改修工事に関する記録を残す際には、現場の状況を可視化し、関係者との認識を合わせるための補助として役立ちます。
オリジナル製品の安定供給を実現するためには、金型そのものの保守管理と、製造設備や施工に関する情報管理をそれぞれ適切に行うことが大切です。製造依頼の初期段階から長期運用を見据えた条件を整理し、製造工場と協力して、品質と生産継続性を両立できる体制を構築していきましょう。
ものづくりの次の一歩を、
相談から始めてみませんか。
加工・製造の外注先や共同開発のパートナー探しに。大田区産業振興協会の受・発注あっせん相談サービスをご利用いただけます。
