製造委託先の紹介を受けて新しい取引先を選定するとき、加工技術や生産能力、納期への対応力と同じくらい重要なのが、検査成績書の提出条件です。製品そのものが要求仕様を満たしていても、検査成績書に必要な測定項目が記載されていなかったり、提出時期が合わなかったりすると、受入検査や出荷判定が予定どおりに進まないことがあります。
特に複数の製造委託先を比較する場合、各社が普段使用している検査成績書の様式や検査方法には違いがあります。ある企業では全数の測定結果を記録していても、別の企業では抜取検査の代表値だけを記載していることがあります。また、検査成績書を製品に同梱する企業もあれば、依頼があった場合だけ電子データで提出する企業もあります。
こうした違いを確認せずに発注すると、納品直前になって必要な検査項目が不足していることが判明し、追加測定や書類の再作成が必要になる可能性があります。製造委託先紹介の段階から提出条件を統一しておけば、候補企業の品質管理体制を比較しやすくなり、発注後の認識違いも減らせます。
この記事では、製造委託先紹介を利用する調達担当者、品質保証担当者、生産技術担当者に向けて、検査成績書の提出条件をそろえる5つの手順を解説します。検査項目の決め方から提出期限、書式の統一、初回納品時の確認まで、実務で活用できる考え方を整理します。
製造委託先紹介で検査成績書の提出条件が重要になる理由
製造委託先紹介では、希望する加工内容や生産数量、材質、納期などをもとに候補企業を探すことが一般的です。しかし、実際に取引を開始するためには、製品を製造できるだけでなく、発注側が求める品質確認や記録管理に対応できるかも確認する必要があります。
検査成績書は、製造した製品について、指定された項目をどのように測定し、どのような結果が得られたかを記録する資料です。寸法検査であれば図面に記載された寸法と測定値、外観検査であれば確認した状態や判定結果などが記載されます。
ただし、検査成績書という名称だけで記載内容が統一されているわけではありません。企業によって、検査記録、出荷検査票、品質確認記録などの名称が使われる場合もあり、それぞれの書類が証明する範囲も異なります。
発注側が詳細な測定値を必要としているにもかかわらず、委託先が合否判定だけを記載した書類を提出した場合、製品の品質が良好であっても必要な確認を完了できません。反対に、必要以上に細かい記録を要求すると、委託先の検査負荷や書類作成作業が増えることがあります。
重要なのは、必要な品質確認を確保しながら、製造委託先が継続して運用できる提出条件を設定することです。
また、検査成績書は不具合発生時の原因調査にも役立ちます。特定の製造ロットで寸法不良が発生した場合、過去の測定結果や検査日、製造番号を確認できれば、不具合の発生範囲を絞り込むための材料になります。
ただし、検査成績書があることだけで、すべての製品が良品であると保証されるわけではありません。抜取検査では未検査品が存在するため、検査結果と製造工程の管理状況を組み合わせて品質を判断する必要があります。
製造委託先紹介の段階で検査記録の内容まで確認しておけば、単に製造能力がある企業ではなく、自社の品質管理体制と適合する企業を選定しやすくなります。
手順1:検査成績書が必要な製品と提出範囲を明確にする
最初の手順は、どの製品について、どの範囲の検査成績書を求めるのかを明確にすることです。
製造委託先へ検査成績書の提出を依頼する場合、「納品時に検査成績書を提出してください」という説明だけでは十分ではありません。対象となる製品、製造ロット、数量、検査対象部位、提出単位などを具体的に決める必要があります。
まず確認したいのは、検査成績書を必要とする目的です。
例えば、受入検査を効率化するために委託先の測定結果を確認したい場合と、完成製品の品質記録として長期間保管したい場合では、必要な記載内容が異なります。顧客への提出が必要な場合には、顧客指定の書式や記録項目を確認しなければなりません。
製品の用途によっても必要な記録は変わります。一般的な機械部品では主要寸法や外観状態の記録が中心になることがありますが、重要な機能を担う部品では、材料特性、表面処理状態、機能試験結果などが必要になる場合があります。
そのため、製造委託先を紹介してもらう前に、図面、仕様書、品質要求事項、納入先からの要求条件を整理しておくことが重要です。
次に、検査成績書の提出単位を決めます。
同じ製品を100個製造する場合でも、100個すべての測定結果を記載するのか、決められた数量を抜き取って測定するのか、製造ロットごとに代表的な結果を記載するのかで、委託先の作業内容は大きく変わります。
全数検査が必要な項目と、適切な抜取検査で管理できる項目を区別することが大切です。全数検査を要求する場合でも、すべての寸法を測定する必要があるとは限りません。品質上重要な寸法や機能に関係する項目を優先して設定する考え方が有効です。
一方で、抜取検査を採用する場合には、単に「抜取検査可」とするのではなく、抜取数、抽出方法、ロットの定義、合否判定方法を決める必要があります。
製造ロットの区分が曖昧だと、異なる製造条件で作られた製品が同じ検査成績書にまとめられる可能性があります。材料の入荷単位、製造日、設備条件、加工工程などを踏まえて、どこまでを同一ロットとして扱うのかを確認しましょう。
また、試作品、初回量産品、継続量産品で提出条件を分けることも検討できます。
試作品では設計の妥当性を確認するために詳細な寸法測定が必要になることがあります。一方、量産段階では初回評価の結果や工程の安定性を踏まえ、検査項目や頻度を見直せる場合があります。ただし、顧客要求や品質上のリスクに反する省略はできません。
製造委託先紹介の担当者には、製品の加工条件だけでなく、必要な検査成績書の提出範囲も伝えておくと効果的です。
候補企業が検査設備を保有しているか、必要な検査数量に対応できるか、指定されたロット管理が可能かを事前に確認できれば、紹介後の条件調整が円滑になります。
この段階では、検査成績書の提出を依頼する製品番号、対象となる図面の改訂番号、検査対象の範囲、提出単位を整理し、発注側の関係部署で認識を合わせておくことが重要です。
手順2:検査項目・測定方法・判定基準を統一する
提出範囲が決まったら、次に検査項目と判定基準を統一します。
検査成績書に関するトラブルでは、発注側と製造委託先の間で、何を測定するべきかについて認識が異なっていることがあります。
図面に多くの寸法が記載されていても、すべてを検査成績書に記録する必要があるとは限りません。しかし、発注側が重要と考えている寸法を委託先が測定対象から外してしまうと、納品後に追加検査が必要になる可能性があります。
まず、製品の性能や組立性、安全性などに影響する重要な検査項目を特定します。
例えば、軸と穴の組合せに関係する寸法、部品同士の位置関係を決める寸法、密封性に影響する接触面の状態などは、製品の機能と結びつけて検査方法を検討する必要があります。
外観検査についても、単に「傷がないこと」とするだけでは判定が難しい場合があります。許容できる傷の程度、検査する面、照明条件、観察距離などを必要に応じて決めておくことで、検査員による判定のばらつきを抑えやすくなります。
寸法検査では、測定値とともに許容範囲を明確にします。
例えば、ある寸法の基準値が20.00ミリメートルで、許容差が上下0.05ミリメートルと定められている場合、判定する範囲は19.95ミリメートルから20.05ミリメートルです。ただし、実際の判定では測定方法や測定不確かさ、社内の判定ルールなどを考慮する必要がある場合もあります。
測定結果が許容限界に近い場合には、測定器の性能や測定条件によって判断が変わる可能性があります。そのため、必要な測定精度を確保できる機器と方法を選ぶことが重要です。
また、同じ寸法を測定していても、測定位置や測定方向が違えば結果が変わることがあります。
曲面部品の厚さ、穴の位置、溶接構造物の寸法などは、どの位置を基準に測定するのかを決めておかないと、製造委託先ごとの結果を正確に比較できません。
発注側が特定の測定方法を要求する場合には、その理由とともに委託先へ伝えます。一方、方法を指定する必要がない項目については、要求精度を満たすことを条件に委託先の標準的な検査方法を認めることもできます。
検査方法を統一するときには、測定器の管理状態も確認しましょう。
測定器の校正や点検が適切に実施されているか、必要な精度が確保されているか、測定結果の信頼性をどのように確認しているかが重要です。
ただし、すべての検査成績書に校正証明書を添付する必要があるとは限りません。測定器の識別番号や校正状況を記録し、必要な場合に関連資料を確認できる仕組みがあれば、管理目的を満たせる場合もあります。
材料検査や表面処理検査が必要な場合には、製造委託先自身が実施する検査と、材料供給元や外部の検査機関が実施する検査を区別する必要があります。
材料証明書に記載された成分分析結果を、委託先が実測した結果として扱わないように注意しましょう。どの組織が何を確認したのかを明らかにすることで、記録の意味を正しく理解できます。
さらに、図面や仕様書に改訂が発生したときの検査条件も決めておきます。
製造開始後に寸法公差が変更された場合、変更前の基準で作成された検査成績書をそのまま使用できるとは限りません。どの図面改訂版に基づいて検査した結果なのかを確認できることが必要です。
このように、検査項目、測定方法、判定基準を一体として整理しておけば、複数の製造委託先から提出される検査成績書の内容を比較しやすくなります。
手順3:検査成績書の書式と記載情報をそろえる
検査内容を統一した後は、検査成績書の書式と記載情報を整理します。
製造委託先紹介で候補企業を比較すると、各社が独自の書式を使用していることがあります。書類の見た目が違うだけであれば大きな問題にならない場合もありますが、必要な情報が欠けていると品質確認に支障が生じます。
書式を統一する目的は、すべての企業に同じ見た目の書類を作成させることではありません。必要な情報が漏れなく記録され、発注側が確認しやすい状態を整えることです。
基本情報として、製品名、製品番号、図面番号、図面改訂番号、製造ロット番号、検査日、検査数量、検査担当者などを記載することが考えられます。
製品の種類や品質要求によっては、製造日、製造設備の識別情報、測定器番号、検査環境、承認者などの情報が必要になる場合もあります。
どの項目を必須とするかは、品質管理上の必要性を踏まえて決めます。記載項目を増やせば管理が必ず良くなるわけではなく、記入や確認の負荷も大きくなるためです。
特に重要なのは、検査結果と現物を対応付けられるようにすることです。
同じ製品番号の部品を複数回に分けて納品する場合、検査成績書に製品番号だけが記載されていても、どの納品分に対応する結果なのか判断できないことがあります。
そこで、製造ロット番号や出荷ロット番号、必要に応じて個体識別番号を記載する方法が考えられます。
例えば、検査成績書には製造ロット番号を記載し、納品書や製品包装にも対応する識別情報を表示します。これにより、受入担当者が現物と書類の対応関係を確認しやすくなります。
ただし、製造ロットと出荷ロットが必ず一致するとは限りません。複数の製造ロットをまとめて出荷する場合や、一つの製造ロットを分割して納品する場合には、両者の関係を追跡できるようにしておく必要があります。
測定結果の記載方法についても確認が必要です。
合格または不合格という判定のみで足りる項目と、実際の測定値が必要な項目を区別します。寸法の変化傾向を確認したい場合には、合否だけでなく測定値を記録する方が適しています。
また、複数箇所を測定する場合には、測定箇所を識別できる番号や図面上の位置情報を用いることが有効です。
単に「寸法1」「寸法2」と記載するだけでは、後から測定箇所を確認することが難しくなる場合があります。図面や検査指示書と対応する番号を設定すれば、品質記録の確認が容易になります。
記録の単位や小数点以下の桁数も統一しておきましょう。
長さをミリメートルで記載するのか、角度をどの単位で示すのかなどが混在すると、確認時の誤読につながります。また、測定器の表示桁数と必要な記録桁数が一致しているかも確認が必要です。必要以上の桁数を記載しても、測定精度が向上するわけではありません。
さらに、検査成績書には検査結果の確認者や承認状態を明示する仕組みを設けることが望まれます。
ただし、署名や押印の形式は取引先ごとの慣行に任せるのではなく、発注側の要求に応じて、誰が検査結果を確認し、どのような手順で承認したかが分かる方法を選びます。
電子データで管理する場合には、承認履歴や改訂履歴を確認できる仕組みも検討できます。
製造委託先が既存の書式を使用したい場合には、必要事項が満たされているかを確認したうえで採用する方法もあります。発注側の統一書式を指定する場合でも、製造委託先の記録管理方法との整合性を確認すると運用しやすくなります。
大切なのは、書式の違いをなくすこと自体ではなく、検査結果を正確に読み取り、現物と照合し、必要なときに追跡できる状態を実現することです。
手順4:提出時期・提出方法・修正対応の条件を決める
検査成績書の内容が整っていても、提出時期や提出方法が曖昧では、受入検査や生産計画に影響する可能性があります。
そのため、製造委託先紹介の段階から、検査成績書をいつ、どのように提出してもらうのかを明確にすることが重要です。
まず確認したいのは、検査成績書を提出するタイミングです。
製品の出荷前に検査成績書を確認する必要がある場合、納品時に書類を受け取るだけでは対応できません。出荷前の検査結果を発注側が確認し、その結果に基づいて出荷可否を判断する運用が必要になることがあります。
一方、委託先の検査体制が確立しており、合意済みの条件で出荷できる取引では、製品と検査成績書を同時に納品する方法が適している場合もあります。
重要なのは、自社の受入検査や製造工程との関係から、必要な提出期限を決めることです。
例えば、納品された部品をすぐに組立工程へ投入する予定がある場合、検査成績書の確認が完了しないことで工程が停止する可能性があります。こうした場合には、納品前に必要な書類を受領する運用を検討できます。
ただし、提出期限を必要以上に早く設定すると、検査や記録の確定が間に合わなくなる場合があります。製造完了、最終検査、書類承認、出荷準備に必要な時間を確認し、実行可能な日程を設定しましょう。
次に、提出方法を決めます。
紙の書類を製品に同梱する方法、電子データを指定された連絡先へ送付する方法、共有された文書管理環境に登録する方法などが考えられます。
電子データで提出する場合には、ファイル形式やファイル名の付け方を統一すると管理しやすくなります。
例えば、製品番号、ロット番号、検査日などを組み合わせてファイル名を作成すると、受領した資料を整理しやすくなります。ただし、ファイル名だけに重要情報を依存させず、検査成績書の本文にも識別情報を記載することが必要です。
また、電子データの受領後に内容が変更されないよう、改訂版の管理方法も検討します。
検査成績書に誤記が見つかった場合、元の書類を何の説明もなく差し替える運用では、どちらが正式な記録なのか分からなくなる可能性があります。
修正版を提出する場合には、改訂番号、修正日、修正理由、変更箇所などを確認できるようにする方法が有効です。修正前の記録の保管や無効化についても、品質管理のルールに沿って取り扱います。
さらに、提出された検査成績書に不足や不明点があった場合の連絡窓口も決めておきます。
調達担当者が書類を受領し、品質保証担当者が内容を確認する体制では、確認結果を誰が製造委託先へ伝えるのかを明確にする必要があります。
問い合わせ先が複数存在すると、同じ修正依頼が重複したり、異なる内容の指示が出されたりする可能性があります。
修正依頼の担当者と承認者を決め、必要な場合には製造委託先の品質担当者と直接確認できる連絡経路を確保しておくことが望まれます。
検査成績書の保存期間についても合意が必要です。
発注側の品質管理上の必要性、顧客との契約、製品の用途、適用される要求事項などを踏まえて保存期間を決めます。保存期間は製品や業界によって異なるため、一律の年数を設定するのではなく、該当する条件を確認することが重要です。
製造委託先が検査の元記録を保管し、発注側には集約した成績書を提出する場合には、元記録の保管範囲や照会方法についても確認しておきます。
提出時期、提出方法、修正対応、保存条件を事前に整理することで、納品後の書類確認を安定して進めやすくなります。
手順5:紹介先との合意内容を文書化して初回納品で検証する
最後の手順は、これまで整理した提出条件を製造委託先と合意し、実際の納品で問題なく運用できるかを確認することです。
製造委託先紹介では、紹介担当者を通じて候補企業の情報を受け取ることがあります。しかし、紹介担当者から伝わった条件と、製造委託先の担当者が理解している条件が完全に一致しているとは限りません。
そのため、正式な発注前に、検査成績書の提出条件について委託先と直接確認する機会を設けることが重要です。
確認した内容は、口頭の説明だけで終わらせず、図面、仕様書、検査指示書、品質に関する合意文書などに整理します。
文書化するときには、どの資料が正式な要求条件なのかを明確にします。
例えば、図面には検査すべき寸法が示され、検査指示書には測定方法や記録頻度が記載されている場合があります。複数の資料に異なる要求が記載されていると、委託先がどちらを優先すべきか判断できません。
資料間で矛盾が発生したときの確認先や、仕様変更時の承認方法を決めておくことが有効です。
また、発注側が指定した提出条件に対して、製造委託先が実際に対応できるかを確認する必要があります。
検査設備が不足している場合や、要求する測定項目に対応できない場合には、追加設備、外部検査、検査方法の見直しなどを検討することになります。
ただし、要求精度を満たせない方法へ安易に変更してはいけません。変更が必要な場合には、製品の品質要求を満たせるかを技術的に確認し、必要な承認を得ることが重要です。
合意後は、初回納品で提出条件を検証します。
初回納品時には、検査成績書の記載項目がそろっているかだけでなく、実際の納品製品と記録が対応しているかを確認します。
製品番号、図面改訂番号、ロット番号、数量、検査結果などの整合性を確認し、必要な記録が不足していないかを調べます。
例えば、製品の包装に表示されたロット番号と検査成績書のロット番号が異なっている場合、単なる記載ミスなのか、別の製造ロットの書類が添付されたのかを確認する必要があります。
また、合格判定が記載されていても、必須測定項目の結果が欠けている場合には、提出条件を満たしているとは判断できません。
このような確認を初回納品で行うことで、量産が本格化する前に書類運用の問題を発見しやすくなります。
問題が見つかった場合には、修正が必要な内容と対応期限を明確にし、製造委託先と改善方法を協議します。
ただし、書類の不備と製品そのものの品質不良は区別して扱う必要があります。
検査成績書に転記ミスがあった場合と、実際の測定値が許容範囲から外れていた場合では、必要な対応が異なります。
前者では正しい記録の確認や書類修正が中心になりますが、後者では製品の適合性評価や処置の判断が必要になります。
製品の不適合が疑われる場合には、出荷や使用の可否を所定の権限者が判断し、必要な場合には対象品の識別や隔離、追加検査などを行います。
初回納品で問題がなかった場合も、継続取引の中で条件を見直す機会を設けることが有効です。
製品仕様の変更、生産数量の増加、製造工程の変更などによって、従来の検査条件が適切でなくなることがあります。
変更の影響を確認し、必要に応じて検査項目や提出方法を更新することで、品質記録の有効性を維持しやすくなります。
複数の製造委託先を比較するときの確認ポイント
製造委託先紹介を活用して複数の候補企業を比較する場合には、検査成績書の提出可否だけで判断しないことが重要です。
候補企業が「検査成績書の提出に対応できます」と回答していても、実際にどのような検査を行い、何を記録できるかは企業によって異なります。
そのため、可能であれば候補企業が通常使用している検査成績書の見本を確認し、必要な情報が含まれているかを比較します。
このとき、検査成績書の見た目が整っているかだけではなく、検査結果の信頼性を確認する視点が必要です。
例えば、測定した値が具体的に記載されているか、規格値や許容差と照合できるか、測定対象の識別情報が明確かといった点は、品質確認に直結します。
さらに、製造委託先の検査体制にも注目します。
検査担当者が必要な技能を持っているか、測定器が適切に管理されているか、検査記録が保存されているかなどを確認することで、書類の作成能力だけでなく、品質管理の実態を把握しやすくなります。
ただし、設備の保有数や担当者の人数が多いことだけで、品質管理能力が高いと判断することは適切ではありません。
自社の製品に必要な精度や検査数量に対応できるか、検査方法が安定しているか、問題発生時に適切な対応ができるかを総合的に評価する必要があります。
また、外部の検査機関を利用している候補企業については、検査の責任範囲を確認しておきます。
外部検査を利用すること自体が問題なのではなく、測定結果の管理、提出書類の確認、異常発生時の対応などを誰が担当するかが明確になっていることが重要です。
製造委託先の紹介担当者には、必要な検査設備や品質記録の提出条件をあらかじめ伝えておくと、候補企業との適合性確認に役立ちます。
また、検査成績書の提出に関する追加作業が発生する場合には、発注条件の一部として作業範囲や納期への影響を確認しておくことが望まれます。
候補企業を比較する際には、単に提出できる書類の種類を見るのではなく、要求された検査を安定して実施し、その結果を継続的に記録できるかという視点が重要です。
検査成績書の提出で起こりやすいトラブルと防止策
検査成績書の提出条件を整えていても、実際の取引ではさまざまな問題が発生することがあります。
代表的なトラブルの一つが、必要な測定項目の記載漏れです。
発注側は図面に記載された重要寸法を検査対象と考えていても、製造委託先では標準的な検査項目だけを測定している場合があります。この問題を防ぐには、検査対象を図面上で明確にし、検査指示書と対応させることが有効です。
次に多いのが、検査成績書と納品製品の対応関係が分からない問題です。
製品番号は一致していても、ロット番号や出荷数量が異なる場合には、どの検査結果が納品製品に対応するか確認できません。
このような問題を防ぐには、発注段階で識別方法を決め、製品、納品書、検査成績書の間で情報を照合できるようにします。
また、検査結果の記載方法が統一されていないことで、品質確認に時間がかかる場合もあります。
ある製造委託先では実測値を記載しているのに対し、別の委託先では合格という判定だけを記載している場合、発注側が必要とする比較や傾向分析を実施できないことがあります。
この問題を防ぐには、実測値が必要な項目と合否判定で足りる項目を事前に区別しておくことが重要です。
提出期限に関する問題も注意が必要です。
納品日に製品だけが到着し、検査成績書が後から送られてくる運用では、発注側の受入判定が遅れる可能性があります。
必要な書類がそろうまで製品を使用できない運用の場合には、生産工程にも影響します。提出時期を明確にし、遅延が見込まれる場合の連絡方法を決めておくことで、対応を早めやすくなります。
さらに、検査成績書の修正履歴が残らない問題もあります。
提出済みの検査成績書に誤りが見つかったとき、修正版だけを送付して以前の書類との関係が分からなくなると、記録の整合性に疑問が生じます。
そのため、書類の改訂履歴を管理し、どの版が正式な記録なのかを明確にすることが重要です。
製品の品質異常と書類の誤記を混同しないことも大切です。
例えば、測定値が誤って転記されていた場合には、元の測定記録を確認する必要があります。実際の測定値そのものが規格から外れていた場合には、製品の不適合として適切な処置を検討します。
元記録が存在しない場合には、必要に応じて再測定の可否を確認し、取得できる客観的な証拠をもとに判断します。測定していない項目について、推測で数値を記載することは避けなければなりません。
また、担当者の変更によって提出条件が引き継がれなくなることもあります。
初回取引では詳細な条件を確認していても、継続発注の担当者が変わったことで、検査成績書の提出が省略されたり、古い書式が使われたりする場合があります。
こうした問題を防ぐには、担当者個人の記憶に頼らず、発注書や品質関連文書から提出条件を確認できる状態にすることが重要です。
製造委託先側でも担当者変更や工程変更が発生するため、定期的に提出条件の運用状況を確認することが望まれます。
特に初回取引や仕様変更後の初回納品では、書類の確認を重点的に行うことで、継続的な不備の発生を防ぎやすくなります。
検査成績書の提出で発生する問題の多くは、検査能力そのものの不足だけでなく、要求条件や担当範囲の認識違いが関係しています。
製造委託先紹介の段階から条件を明文化し、発注側と委託先の双方が確認する仕組みを整えることが、トラブル防止につながります。
まとめ:検査成績書の条件統一で製造委託先との取引を円滑にする
製造委託先紹介で新しい取引先を探す場合、加工技術や生産能力に加えて、検査成績書の提出条件を確認することが重要です。
検査成績書は、製品が要求された検査を受け、どのような結果が得られたかを確認するための資料です。必要な情報が不足していたり、提出時期が適切でなかったりすると、受入検査や品質確認に支障が生じる可能性があります。
こうした問題を防ぐには、最初に検査成績書の対象製品と提出範囲を決め、次に検査項目、測定方法、判定基準を整理することが基本です。
そのうえで、必要な記載情報と書式をそろえ、提出時期や修正対応の条件を明確にします。最後に、製造委託先との合意内容を文書化し、初回納品で実際に運用できるかを確認することで、継続取引に向けた管理体制を整えやすくなります。
重要なのは、すべての製造委託先に一律の検査方法を要求することではありません。製品の品質要求を満たすために必要な条件を明確にし、それぞれの製造委託先が適切に対応できる運用を構築することです。
また、検査成績書の管理は、製造委託先の品質管理だけで完結するものではありません。製品を設備や構造物へ組み込む案件では、製造段階の検査記録に加え、納入後の設置位置、施工状態、現場写真などを確認する必要がある場合もあります。
こうした現場の記録管理を効率化する選択肢として、LRTK Phoneの活用も考えられます。LRTK Phoneは、現場写真や位置情報、施工記録の管理に活用できる自社プロダクトです。製造委託先から受領した検査成績書と、現場で取得した位置情報付きの記録を案件や製品の識別情報に基づいて対応付けて管理する運用を整えれば、製造段階から施工段階までの確認履歴を追跡しやすくなります。
ただし、現場写真や位置情報は検査成績書そのものを代替するものではありません。製造段階の測定結果と現場での確認記録は、それぞれの目的に応じて取得し、適切に管理することが必要です。
製造委託先を選定する際には、製品を作れるかだけでなく、必要な品質情報を正確に提出できるかまで確認しましょう。検査成績書の提出条件を統一し、製造委託先との認識をそろえることが、受入検査の円滑化と安定した取引関係の構築につながります。
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