LRTKレフィクシア株式会社

設備稼働率から進める製造コスト見直し5つの分析方法

設備稼働率を製造コスト見直しの出発点にする理由

製造業において製造コストの見直しは、利益率の改善や競争力の維持に直結する重要な経営課題です。原材料の使用量や作業工数、外注工程、設備の維持管理など、検討すべき要素は多岐にわたります。そのなかでも設備稼働率は、既存の生産体制にどの程度の改善余地があるのかを把握するための有効な指標です。

製造設備は、実際に製品を加工している時間だけでなく、段取り替え、点検、清掃、故障対応、材料待ちなど、さまざまな活動を伴って運用されています。設備が停止している間にも、減価償却費や設備維持に必要な費用などが発生する場合があります。そのため、計画した生産時間のうち、実際に付加価値を生み出す生産活動に使われた時間を把握することは、製造コストを見直すうえで重要です。

ただし、設備稼働率を高めれば必ず製造コストが下がるわけではありません。必要以上に製品を生産すると、仕掛品や完成品の在庫が増加し、保管や運搬に伴う負担が大きくなる可能性があります。また、設備を高速運転することで不良品が増加すれば、生産数量が増えても良品当たりのコストは悪化することがあります。

重要なのは、設備稼働率を単独の目標として扱うのではなく、生産数量、品質、作業工数、設備保全、工程間の負荷などと関連付けて評価することです。設備がどの程度動いているかだけでなく、動いている時間に何を生み出しているか、停止している時間にどのような損失が発生しているかを確認する必要があります。

例えば、同じ種類の加工設備を複数台保有している工場で、一部の設備だけ稼働率が低い場合を考えます。その原因が受注量の不足なのか、段取り時間の長さなのか、故障の頻発なのかによって、適切な改善方法は異なります。受注量が不足している場合には生産計画や設備配置の見直しが必要ですが、故障が原因であれば保全活動の改善が優先されます。

このように、設備稼働率は製造コストの問題を発見するための入口になります。本記事では、製造コストの見直しに取り組む実務担当者に向けて、設備稼働率を起点とした5つの分析方法と、その結果を具体的な改善活動につなげる手順を解説します。

分析前に統一したい稼働率とコストの定義

設備稼働率を使って製造コストを分析する前に、まず確認したいのが指標の定義です。工場によっては、設備が動いていた時間を暦上の時間で割る場合もあれば、計画された生産時間で割る場合もあります。分母となる時間が異なれば、同じ設備でも稼働率の数値が変わるため、比較条件を統一する必要があります。

製造現場で使いやすい指標の一つが、計画生産時間に対する実稼働時間の割合です。例えば、ある設備の計画生産時間が480分で、停止時間を除いた実稼働時間が390分だった場合、稼働率は81.25%になります。この計算により、計画した生産時間のうち約19%が停止時間になっていることを把握できます。

ただし、この数値だけでは停止原因までは分かりません。設備故障による停止と、製品切替に伴う段取り停止では改善方法が異なります。また、休憩時間や計画保全時間を計画生産時間から除外するのかについても、あらかじめ決めておく必要があります。

さらに、設備稼働率と設備の負荷率は区別して考えることが重要です。設備負荷率は、利用可能な時間に対してどの程度の生産負荷を計画しているかを示す指標として使われます。一方、稼働率は計画された時間のうち実際に設備が動いた割合として管理できます。工場全体の設備余力を評価する場合と、計画に対する停止損失を評価する場合では、確認すべき指標が異なります。

製造コストとの関係を見る際には、稼働率に加えて時間当たりの生産数量と良品率も確認します。設備が停止せずに動いていても、加工速度が遅くなっていれば生産能力を十分に活用できていません。また、加工した製品の一部が不良になっている場合、実際に出荷可能な良品数量はさらに少なくなります。

こうした損失を総合的に評価する方法として、設備総合効率という考え方があります。一般に、時間稼働率、性能稼働率、良品率を掛け合わせることで、計画生産時間に対して良品を効率よく生産できている程度を把握します。ただし、各指標の分母や対象時間をそろえなければ、正確な比較はできません。

コスト側の定義も統一する必要があります。材料費、直接労務費、設備維持費、減価償却費、電力使用に伴う費用、製造間接費などを、どの範囲まで含めるかを決めます。特に固定費と変動費を区別することが重要です。稼働率が改善しても固定費の総額が直ちに減るとは限らず、良品生産量の増加によって製品当たりの負担が小さくなる場合と、実際の支出が削減される場合は分けて評価する必要があります。

分析期間については、日単位の短期変動だけで判断せず、週単位や月単位の傾向も確認します。生産品種や受注量が大きく変化する工場では、前年同月や同条件の生産期間など、比較可能な対象を選ぶことが重要です。

分析方法1:停止時間を原因別に分解する

設備稼働率を用いた製造コスト見直しの第一歩は、設備が停止している時間を原因別に分解することです。単に稼働率が低いという結果だけを把握しても、具体的な改善活動につなげることは難しいためです。停止がいつ発生し、何が原因で、どの程度の時間を占めているのかを明らかにします。

停止時間には、設備故障、工具交換、材料待ち、作業者待ち、段取り替え、品質確認、清掃、調整などがあります。これらをまとめて非稼働時間として扱うと、重要な問題が見えにくくなります。例えば、材料待ちが多い設備に対して故障対策を強化しても、稼働率改善への効果は限定的です。

分析では、まず停止開始時刻、復旧時刻、停止理由、対象設備、対象製品などを記録します。設備から自動的に取得できる情報と、作業者による記録を組み合わせる方法が考えられます。自動取得だけでは停止理由を特定できない場合があるため、設備状態と現場で発生した出来事を関連付けることが重要です。

例えば、1日の計画生産時間480分に対して停止時間が90分あったとします。その内訳が設備故障35分、段取り替え25分、材料待ち20分、確認作業10分だった場合、最も大きい停止要因は設備故障です。ただし、1日だけの結果では偶発的な故障の影響を受けるため、一定期間のデータを蓄積して傾向を確認します。

設備故障による停止が継続的に多い場合は、故障箇所、発生条件、復旧時間を分析します。同じ部品の不具合が繰り返されている場合には、交換周期や点検項目の見直しが有効かもしれません。一方、故障そのものの頻度は低くても復旧に長時間を要している場合には、保守部品の準備や復旧手順の標準化が改善策になります。

材料待ちが多い場合は、設備単体ではなく生産管理や物流工程に原因がある可能性があります。材料の供給時刻、前工程の完了時刻、作業指示の発行時刻などを比較し、どこで待ち時間が発生しているのかを確認します。設備稼働率の問題として表面化していても、改善対象は資材供給や生産計画である場合があります。

製造コストとの関係を分析する際には、停止によって発生した追加作業や生産計画への影響を確認します。停止時間を補うために時間外作業が必要になった場合や、代替設備への移管、外注工程の追加などが発生した場合には、それらの負担を把握します。ただし、停止時間に設備の時間当たり固定費を掛けた値を、そのまま削減可能なコストとみなすことは適切ではありません。

停止時間の分析では、停止時間の長さだけでなく、発生頻度にも注目します。短い停止が何度も発生する設備では、作業者が都度対応することで見えにくい工数が積み重なっている可能性があります。反対に、発生頻度は少なくても長時間停止につながる故障は、納期や工程全体への影響が大きくなる場合があります。

この分析方法の目的は、停止時間を一律に減らすことではありません。安全確保や品質保証に必要な停止と、改善可能な待ち時間や異常停止を区別し、製造コストへの影響が大きい損失から優先的に対策することが重要です。

分析方法2:理論能力と実際の生産量の差を調べる

設備が動いている時間を把握したら、次に確認したいのが生産能力と実際の生産量の差です。稼働率が高い設備であっても、想定した加工速度で生産できていなければ、設備能力を十分に活用しているとはいえません。そこで、設備の基準サイクルタイムと実際の加工時間を比較します。

サイクルタイムとは、一定の工程で製品を1個生産するために要する時間です。設備や製品によって定義は異なりますが、同じ条件で継続的に比較することで、加工速度の変化を捉えやすくなります。分析では、設備仕様上の最大能力をそのまま基準にするのではなく、対象製品や品質条件に適した基準時間を設定することが重要です。

例えば、ある製品の基準サイクルタイムを60秒とし、設備の実稼働時間が360分だったとします。この条件では、基準上の生産可能数量は360個です。しかし、実際の加工数量が300個だった場合、加工速度や短時間停止などによる能力損失が存在する可能性があります。

この差を調べる際には、単純に作業者の作業速度だけを問題にするべきではありません。材料の寸法ばらつき、工具摩耗、設備調整、製品形状の違い、搬送装置の動作時間など、さまざまな要因がサイクルタイムに影響します。設備の設定条件が同じでも、製品の仕様が異なれば適切な加工時間が変わる場合があります。

そのため、分析では製品別、加工条件別、設備別にサイクルタイムを比較します。異なる製品の実績を単純平均すると、製品構成の変化による影響と設備性能の変化を区別できなくなるためです。同じ製品を同等の条件で生産した場合に、なぜ加工時間に差が生じるのかを検討します。

加工速度の低下が工具の摩耗によるものであれば、工具交換の基準や加工条件の管理方法を見直します。設備の調整時間が増えている場合は、設定手順の標準化や点検項目の改善を検討できます。搬送工程で滞留が発生している場合には、加工設備だけでなく、投入や取り出しを含めた一連の動作を確認する必要があります。

製造コストへの影響は、良品1個を完成させるために必要な設備時間や作業時間の変化として捉えられます。例えば、同じ良品数量を生産するための設備稼働時間が短縮されれば、電力消費や補助作業の負担が減る可能性があります。また、設備能力に余裕が生まれることで、時間外稼働や外注への依存を減らせる場合もあります。

ただし、加工速度の向上が常に望ましいとは限りません。過度な高速運転によって工具寿命が短くなったり、加工精度が不安定になったりする場合には、設備全体の効率が悪化します。適切な評価では、生産速度だけでなく、工具使用量、良品率、設備負荷、保全頻度なども併せて確認することが必要です。

設備の理論能力と実績の差を分析することで、稼働率の数字だけでは発見できない能力損失を把握できます。製造コストを見直す際には、設備を長く動かすことよりも、必要な品質を満たす良品を安定して生産できる状態を目指すことが重要です。

分析方法3:段取り時間と生産品種の関係を分析する

多品種少量生産を行う工場では、段取り替えに必要な時間が設備稼働率に大きな影響を与えることがあります。製品の種類が増えるほど、工具交換、治具交換、加工条件の設定、材料の入れ替え、初品確認などの機会が増えるためです。

段取り替えは必要な生産活動ですが、その時間が長くなると実際の加工に使える時間が減少します。特に、小ロットの製品を頻繁に切り替える生産形態では、段取り時間の割合が大きくなり、設備能力を十分に活用できないことがあります。

分析では、段取り開始から次の製品の生産を開始できるまでの時間を記録します。その際、前製品の生産終了時刻、設備停止時刻、工具や治具の交換完了時刻、初品確認完了時刻などを区別すると、どの作業に時間がかかっているかを把握しやすくなります。

例えば、1回の段取り替えに40分かかる設備があり、1日に4回の切替が必要だった場合、段取り時間の合計は160分になります。段取り作業を見直して1回当たり30分に短縮できれば、1日当たり40分の時間を確保できます。ただし、その時間を有効に使えるかどうかは、受注量や後工程の処理能力によって異なります。

段取り時間を詳しく分析する際には、設備を停止しなければできない作業と、設備停止前に準備できる作業を分けて考えます。工具や治具の事前準備、材料の確認、作業指示書の確認などを適切なタイミングで実施できれば、設備停止中の作業時間を短縮できる可能性があります。

また、段取り時間が作業者によって大きく異なる場合には、作業手順や必要な技能の違いを確認します。作業順序が統一されていないことや、工具の保管場所が一定でないことなどが、段取り時間のばらつきにつながっている場合があります。標準作業の整備や治具の改善によって、作業時間の安定化を図ることができます。

生産品種との関係を見る際には、製品ごとの段取り負荷と生産数量を併せて評価します。加工時間が短い製品でも、切替のたびに複雑な準備が必要であれば、設備の利用効率に大きな影響を与えます。製品単位の加工時間だけでなく、段取り時間を含めた総設備占有時間を把握することが重要です。

ただし、段取り回数を減らす目的で生産ロットを大きくすると、仕掛品や完成品の在庫が増加する可能性があります。在庫が増えれば、保管場所の確保、運搬、管理、仕様変更時の対応など、新たな負担が生じます。段取り時間の短縮効果と在庫増加による影響を比較し、適切なロットサイズを検討する必要があります。

また、納期の異なる製品をまとめて生産する場合には、受注状況や出荷計画との整合性も欠かせません。設備稼働率だけを優先すると、必要な製品の生産が後回しになり、納期遅延につながるおそれがあります。

段取り時間と品種構成を分析する目的は、単に切替回数を減らすことではありません。必要な製品を必要なタイミングで生産する柔軟性を保ちながら、段取りによる設備停止と作業負担を減らすことが重要です。

分析方法4:不良・手直しによる稼働損失を原価に結び付ける

製造コストを見直すうえでは、設備の稼働時間と生産数量だけでなく、完成した製品の品質を評価することが欠かせません。設備が長時間稼働していても、不良品が多ければ、投入した材料や作業時間の一部が良品の生産につながっていないことになります。

特に注意したいのが、不良品の発生による直接的な損失だけでなく、手直しや再加工によって設備能力が消費される点です。再加工のために設備を使用すれば、本来予定していた別の製品の加工時間が減少する場合があります。その結果、稼働率は高くても、新たに生産できた良品の数量が伸びないという状況が生まれます。

分析では、設備ごとの総生産数量、不良数量、良品数量を把握し、不良の種類や発生工程を確認します。さらに、不良品の廃棄、選別、手直し、再加工に必要な時間を記録することで、品質問題が設備能力に与える影響を明らかにできます。

例えば、同じ設備で1日に500個を加工していても、良品が480個の場合と450個の場合では、良品1個当たりに投入された設備時間が異なります。設備稼働率が同じであっても、良品率が低下すれば、良品当たりの製造コストが上昇する可能性があります。

不良原因の分析では、設備条件、材料状態、工具の使用状況、作業手順、周辺環境などを確認します。不良が特定の設備や時間帯に集中している場合は、設備の状態や運転条件に原因がある可能性があります。一方、複数設備で同じ不良が発生している場合は、材料や設計条件、工程全体の管理方法を調べる必要があります。

また、不良品が発生してから検出されるまでの時間も重要です。加工直後に異常を検出できれば、同じ不良が連続して発生することを防ぎやすくなります。しかし、最終検査で初めて問題が発見される場合には、すでに複数の工程で作業が進んでいるため、手直しや廃棄による負担が大きくなる場合があります。

製造コストとの関係を見る際には、不良により使用できなくなった材料だけでなく、追加検査、再加工、選別、廃棄、設備占有時間などを把握します。これらの項目を記録することで、品質問題がどの工程に負担を与えているかが明確になります。

ただし、不良発生時に投入済みの費用をすべて追加損失として二重計上しないよう注意が必要です。通常の製造原価に含まれる費用と、不良によって追加的に発生した負担を整理し、分析目的に合った集計方法を採用します。

品質改善を検討する際には、単に不良率を下げるだけでなく、改善によって確保できる設備時間にも注目します。不良の再加工に使っていた時間を通常生産に振り向けられれば、設備を増設せずに必要な生産能力を確保できる可能性があります。

このように、設備稼働率と品質データを組み合わせることで、見かけ上の高稼働に隠れている品質損失を発見できます。製造コストの見直しでは、総生産数量よりも良品数量を基準に効率を評価することが重要です。

分析方法5:工程間の負荷と設備別コストを比較する

設備稼働率を使った製造コスト見直しでは、設備単体の分析に加えて、工程全体の負荷バランスを確認する必要があります。特定の設備だけ稼働率が高くても、前後の工程との処理能力が合っていなければ、工場全体の生産効率は向上しないためです。

例えば、加工工程、洗浄工程、検査工程が連続している製造ラインを考えます。加工設備の能力が高くても、洗浄工程の処理能力が不足していれば、加工済みの仕掛品が滞留します。この状態で加工設備の稼働率をさらに高めると、仕掛品が増加し、運搬や保管、進捗管理の負担が大きくなる可能性があります。

反対に、加工工程の能力が不足している場合には、後工程の設備が材料待ちによって停止することがあります。この場合、後工程の稼働率が低いからといって後工程の改善を優先しても、全体の生産量は増えない可能性があります。

工程間の負荷を分析する際には、各設備の計画生産時間、実稼働時間、生産数量、基準サイクルタイム、仕掛品数量などを比較します。そのうえで、生産ライン全体の処理能力を制約している工程を特定します。

制約工程とは、製品の流れ全体の処理能力を制限している工程です。制約工程の停止や能力低下は、工場全体の生産数量に影響しやすいため、改善の優先度が高くなる場合があります。ただし、製品構成や生産計画によって制約となる工程が変化することもあるため、継続的な確認が必要です。

設備別コストを比較する場合には、設備の稼働時間と良品生産数量に加え、減価償却費、保全費、電力使用量、工具や消耗品の使用状況などを確認します。ただし、設備ごとに構造や能力、加工対象が異なるため、単純に時間当たりのコストだけを比較しても適切な評価にならない場合があります。

例えば、高精度な加工を担当する設備と、比較的単純な加工を担当する設備では、求められる加工条件や設備構成が異なります。両者の稼働率や設備維持費だけを比較して、どちらが非効率かを判断することはできません。製品仕様、加工精度、品質条件、必要な工程能力を踏まえて評価する必要があります。

さらに、製造間接費の配賦方法にも注意します。設備の稼働時間を基準として間接費を製品に配賦している場合、稼働時間や生産数量の変化によって製品別の原価が変動します。しかし、配賦額の変化は必ずしも工場全体の実際の支出削減を意味しません。

設備稼働率が改善して良品生産数量が増えれば、一定の固定費をより多くの製品で負担できる可能性があります。一方、需要が不足している場合には、生産能力の余力を確保しても追加生産につながらないことがあります。その場合は、設備の集約、生産計画の調整、保全時間の確保など、別の観点から運用を見直すことが考えられます。

複数設備を保有する工場では、加工内容や品質条件に応じた負荷の再配分も検討対象になります。ただし、設備を変更する際には、加工条件の再設定、品質確認、作業者教育、工程管理などの追加負担が発生する場合があります。単に空いている設備へ作業を移すだけでなく、移管に伴う影響を含めて判断する必要があります。

設備別の分析と工程全体の分析を組み合わせることで、局所的な稼働率改善が本当に製造コストの見直しにつながるかを判断しやすくなります。重要なのは個々の設備を最大限動かすことではなく、必要な品質と納期を守りながら、工場全体として無駄の少ない生産体制を構築することです。

分析結果を現場の改善行動につなげる進め方

設備稼働率の分析を実施しても、結果が報告資料の作成だけで終わってしまえば、製造コストの見直しにはつながりません。分析で明らかになった問題を具体的な改善活動へ落とし込み、効果を確認する仕組みが必要です。

最初に取り組みたいのは、改善対象となる設備や工程の選定です。すべての設備を同時に分析しようとすると、データ収集や確認作業の負担が大きくなります。そのため、停止時間が長い設備、品質問題が多い工程、生産計画への影響が大きい設備などから対象を絞る方法が現実的です。

改善対象を選ぶ際には、稼働率の低さだけでなく、改善によって期待できる効果と実施の難易度を評価します。例えば、頻繁に発生している短時間停止を簡単な作業手順の変更で減らせる場合には、比較的着手しやすい改善対象になります。一方、大規模な設備改造が必要な場合は、生産への影響や安全性を含めた慎重な検討が必要です。

次に、分析期間と評価指標を設定します。設備停止時間、段取り時間、良品率、実績サイクルタイムなど、改善テーマに関連する指標を選びます。このとき、評価指標を増やしすぎると現場の記録負担が大きくなるため、目的に合った項目を優先することが重要です。

改善前の状態を把握したら、原因を仮説として整理します。例えば、段取り時間が長い原因として工具準備の遅れが疑われる場合、実際の作業を観察し、準備開始時刻や設備停止中の作業内容を確認します。数値の変化だけで判断せず、現場で起きている事実と照合することが必要です。

対策を実施する際には、可能な範囲で対象設備や対象期間を限定し、改善前後の比較を行います。複数の対策を同時に実施すると、どの対策が効果を生んだのか分かりにくくなることがあります。改善内容と実施日を記録し、稼働データの変化と対応付けることで、効果を検証しやすくなります。

効果測定では、改善した指標だけでなく、副次的な影響も確認します。段取り時間が短縮しても不良率が増加していないか、加工速度が上がっても工具交換頻度が増えていないか、設備負荷の変更によって後工程に滞留が発生していないかなどを調べます。

製造コストへの効果を評価する際には、改善によって実際に減少した作業工数や材料損失と、追加の生産余力として確保された時間を分けて整理します。生産余力の増加は将来の受注対応や納期安定化に役立つ可能性がありますが、それだけで直ちに支出削減が実現したとは限りません。

また、分析を継続するためには、現場で無理なく記録できる運用方法が欠かせません。記録項目が細かすぎると入力の抜けや記録品質のばらつきが発生しやすくなります。停止理由の分類や記録のタイミングを標準化し、必要に応じて自動取得できるデータを活用することが有効です。

改善活動の結果は、製造部門だけでなく、生産管理、品質管理、設備保全、原価管理などの関係部門と共有することが望まれます。設備稼働率の低下には、複数部門にまたがる原因が存在する場合があります。部門ごとに異なる指標だけを追うのではなく、共通のデータをもとに原因と対策を検討することが重要です。

設備稼働率の改善で注意したい落とし穴

設備稼働率を製造コストの見直しに活用する際には、数字を高めること自体が目的にならないよう注意が必要です。稼働率は設備の使用状況を示す指標であり、製造コスト全体を直接表しているわけではありません。

代表的な注意点は、稼働率を高めるために必要以上の生産を行うことです。受注数量を超えて生産した場合、設備稼働率は向上しても、完成品在庫や仕掛品が増える可能性があります。在庫が増加すると、保管や運搬、在庫確認などの管理負担も増えるため、工場全体の効率が低下するおそれがあります。

また、短期的な稼働率を優先して設備保全を後回しにすることも避ける必要があります。計画的な点検や部品交換の時間を削減すると、一時的には設備の運転時間が増える場合があります。しかし、設備故障や突発停止の発生リスクが高まれば、長期的な生産安定性が損なわれる可能性があります。

品質確認についても同様です。検査や初品確認を短縮することで稼働時間を増やしたとしても、品質問題が発生すれば、再加工や廃棄などによって結果的に製造コストが悪化することがあります。必要な品質保証活動を維持したうえで、作業方法や工程設計を改善することが重要です。

さらに、設備間の比較では生産条件の違いを考慮する必要があります。同じ設備形式でも、生産品種、加工精度、ロットサイズ、作業者の配置、材料の状態によって稼働率は変化します。条件をそろえずに数値だけを比較すると、改善が必要な設備を誤って判断する可能性があります。

製造コストの評価では、固定費の扱いにも注意が必要です。稼働率が向上して製品1個当たりの固定費負担が小さくなった場合でも、減価償却費や一定の設備維持費が直ちに減少するとは限りません。原価計算上の改善と、実際の費用削減を明確に区別する必要があります。

設備稼働率を改善するために追加の作業負担が生じていないかも確認します。例えば、設備を停止させないために作業者が頻繁に材料を運搬したり、通常とは異なる手順で対応したりしている場合には、安全性や作業負荷の観点から問題が生じる可能性があります。

改善活動では、安全、品質、納期、作業負荷を維持しながら、設備能力を適切に活用することが基本です。稼働率は改善の方向性を判断するための指標として活用し、現場全体の生産性と製造コストを総合的に評価することが重要です。

また、稼働率の改善効果を長期的に維持するには、設備や生産条件が変化した際に分析基準を見直す必要があります。新しい製品の導入、設備の更新、加工条件の変更などによって、従来の基準サイクルタイムや停止時間の分類が適切でなくなることがあります。

一度設定した指標を固定的に使い続けるのではなく、生産実態に合わせて定期的に確認することで、分析結果の信頼性を保ちやすくなります。

まとめ:稼働率を継続的な製造コスト見直しにつなげる

製造コストの見直しを進めるうえで、設備稼働率は現場の損失を把握するための重要な指標です。ただし、単純に設備の運転時間を増やすだけでは、製造コストの改善につながるとは限りません。

効果的な分析では、まず設備停止時間を原因別に分解し、改善余地の大きい問題を特定します。次に、設備の基準能力と実際の生産量を比較し、加工速度や短時間停止などによる能力損失を把握します。さらに、段取り替えと生産品種の関係、不良や手直しによる設備占有時間、工程間の負荷と設備別コストを分析することで、設備単体では見えにくい問題を明らかにできます。

これらの分析を実施する際には、計画生産時間、実稼働時間、良品数量などの定義を統一し、比較可能なデータを継続的に収集することが重要です。改善前後の変化を記録し、製造コストへの実際の影響を検証することで、根拠のある改善活動を進めやすくなります。

また、設備稼働率の改善は、生産現場の状態を正確に把握することから始まります。設備の配置変更、作業エリアの調整、材料供給経路の変更などを伴う場合には、設備周辺の状況や作業位置、改善前後の現場情報を適切に記録することも重要です。

こうした現場情報の記録や共有を効率化する手段として、LRTK Phoneの活用も考えられます。LRTK Phoneは、位置情報を付与した現場写真の取得や、現場の計測情報、施工記録の管理・共有に役立つ製品です。設備配置や作業環境の変更を伴う改善活動において、現場の状況を位置情報とともに残すことで、関係者間の情報共有を支援できます。

設備の稼働データや原価データによる数値分析と、現場写真や位置情報を用いた実態の記録を組み合わせることで、改善対象となる状況をより具体的に把握しやすくなります。設備稼働率を出発点として、製造現場の問題を継続的に発見し、品質と生産性の両立を図りながら製造コストの見直しを進めていくことが重要です。

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