小型歯車の加工精度は何を基準に判断するのか
小型歯車は、減速機構、位置決め機構、搬送装置、精密な駆動ユニットなど、限られた空間で回転や動力を伝える部品として使われます。外径が小さくても、歯面のわずかな形状差や歯の配列の乱れが、回転むら、異音、摩耗、位置決め誤差につながることがあります。そのため、図面上の外径や穴径が公差内に収まっているだけでは、必要な性能を満たしているとは判断できません。
とくに加工精度の相談で難しいのは、「歯車の精度」という一つの言葉の中に複数の評価項目が含まれる点です。歯面の曲線が正しいか、歯が等間隔に並んでいるか、回転中心に対して歯列が偏っていないか、歯厚が適切かという問題は、それぞれ異なる検査で確かめます。一つの測定値だけで歯車全体の適否を保証することはできません。
さらに、同じ歯車でも使用目的によって優先する項目は変わります。低速でトルクを伝える機構では接触状態や耐久性が重要になり、高速回転する機構では伝達誤差や振動への配慮が必要です。往復動作や位置決めに使う機構では、回転方向を切り替えたときの遊びや再現性も見逃せません。検査項目を増やす前に、どの不具合を防ぎたいのかを明確にすることが合理的です。
小型歯車では、モジュールが小さくなるほど歯溝に測定子を入れにくくなり、形状測定の対象範囲が制限される場合があります。測定子の先端径や接触力、光学測定での輪郭検出条件が結果に影響するため、通常サイズの歯車と同じ測定手順をそのまま適用できるとは限りません。部品形状、測定機の対応範囲、測定不確かさを加工先と確認することが重要です。
相談の初期段階では、歯車の種類、モジュール、歯数、圧力角、歯幅、ねじれ角の有無、材質、熱処理・表面処理の条件を共有します。併せて、軸穴、端面、軸部のどこを基準に取り付けるのか、相手歯車の仕様、使用回転数、負荷、潤滑状態も伝えます。これらが分かると、形状の測定だけで十分なのか、組み合わせた機能評価まで必要なのかを判断しやすくなります。
また、歯車の設計では、理論上の歯形から一部を意図的に修整することがあります。歯先修整や歯すじ修整が指定されている場合、理論歯形と異なること自体を不良とみなすのは適切ではありません。加工先には、修整を含む設計上の目標形状と、その評価範囲を伝える必要があります。以下では、加工精度の相談で優先して整理したい七つの検査項目を解説します。
1. 歯形誤差を測定して設計どおりの歯面を確認する
最初に確認したいのは、歯の側面が設計された歯形に沿って仕上がっているかという点です。一般的なインボリュート歯車では、基準となる曲線からの偏差を測定し、歯形全体のずれ、傾きに相当する成分、局所的な形状の乱れを評価します。歯形誤差は、滑らかな動力伝達や回転の均一性に関わる重要な指標です。
歯形が適切でないと、かみ合いの途中で接触位置や荷重のかかり方が設計意図から外れる可能性があります。その結果、運転条件によっては異音、振動、局所的な摩耗が起こりやすくなります。ただし、歯形誤差だけで運転音や寿命が決まるわけではありません。歯面粗さ、軸の支持剛性、組付け誤差なども関係するため、機能上の問題と測定結果を関連づけて評価する必要があります。
測定では、歯元付近から歯先付近までのどの領域を評価対象にするかを決めます。歯先修整、歯元の逃げ、面取りがある場合、その部分を評価に含めるかどうかで結果が変わります。単に最大偏差の数値を指定するだけでなく、評価開始位置、評価終了位置、設計上の修整量を図面または検査仕様で示すことが大切です。
加工先へ相談するときは、総合的な歯形偏差と、歯形の傾きや局所的なうねりを区別して確認すると原因を絞り込みやすくなります。たとえば歯面全体が一方向に傾く場合と、特定の位置だけに周期的な凹凸が出る場合では、見直すべき加工条件や工具の状態が異なる可能性があります。合否判定だけでなく偏差の形を記録することが、再発防止につながります。
小型歯車では、接触式の歯形測定機で十分な測定範囲を確保できるかが課題になることがあります。測定子が歯底や隣接する歯に干渉する場合は、対応可能な測定子の形状や、非接触測定の適用を確認します。非接触方式を選ぶ場合も、反射、表面状態、エッジの検出方法によって測定結果が変動するため、測定条件の妥当性を検証しなければなりません。
すべての歯を詳細に測定する必要があるかどうかも相談事項です。試作段階では複数の歯と周方向の位置を比較し、ばらつきや加工の傾向を把握することが有効です。量産段階では工程能力と不具合リスクに応じて検査頻度や測定歯数を決めます。ただし、少数の歯だけを測る方法では全周の異常を見落とす可能性があるため、別の全周評価と組み合わせる判断も必要です。
設計者と加工先の間で確認したいのは、どの用途に対してどの程度の歯形偏差を許容するかです。一般的な精度等級を指定する場合でも、歯形の評価条件と検査対象の寸法範囲を併記することで解釈の食い違いを減らせます。図面の要求値に対して測定機の不確かさが十分に小さいかも、受入判定前に確かめておきましょう。
2. 歯すじ誤差を調べて歯幅方向の片当たりを防ぐ
歯形が歯たけ方向の形状を扱うのに対し、歯すじは歯幅方向に延びる歯面の状態を示します。平歯車では歯すじの直線性や傾きを、はすば歯車では設計されたねじれに対する偏差を確認します。歯すじ誤差は、歯幅方向に荷重がどう分布するかを考えるうえで欠かせません。
歯幅の一方だけに接触が集中すると、局所的な面圧や摩耗が増える可能性があります。一方で、歯すじが規定どおりでも、軸の傾き、軸受のすきま、ハウジングの変形によって片当たりが生じることがあります。このため、単品の歯すじ測定と、実際の組付け状態に近い接触確認を分けて考える必要があります。
検査相談では、歯幅全体の偏差のほか、傾き成分と局所的な形状成分をどのように評価するかを決めます。端部にクラウニングなどの歯すじ修整を設ける設計では、中央部と端部の目標形状が異なります。修整の意図を伝えずに直線からのずれだけを判定すると、適切に加工された歯面まで不良として扱ってしまうおそれがあります。
小型歯車は歯幅が狭いことも多く、測定する位置や点数によって評価値が変わりやすくなります。歯幅端部の面取りやバリを避けた有効測定範囲を決め、同じ基準で比較できるようにします。熱処理後に歯すじが変化する場合もあるため、熱処理前の測定値だけで完成品を保証しないことが大切です。
また、歯すじ誤差を確認する際は、歯車の端面と軸穴の直角度や、取付軸の振れも併せて点検する価値があります。歯面の問題に見える症状が、保持方法や取付基準に起因していることもあるためです。検査時の心出し方法と、実機での支持条件に大きな差がないかを確認すると、測定結果を現場の不具合解析に活用しやすくなります。
加工条件の見直しにつなげる場合は、歯すじ偏差の分布と、工具の摩耗、保持剛性、加工中のたわみを関連づけます。ただし、偏差の形だけで原因を一つに断定せず、加工履歴や設備の点検結果と照合します。必要に応じて複数ロットを比較し、特定設備や段取り変更に依存した傾向がないかを確認しましょう。
3. 単一ピッチ誤差と累積ピッチ誤差を確認する
歯車は歯の形だけでなく、各歯が円周方向に適切な間隔で並んでいる必要があります。この間隔のばらつきを調べるのがピッチ誤差の検査です。歯一つごとの間隔に着目する単一ピッチ誤差と、複数の歯を通して位置のずれを評価する累積ピッチ誤差は、目的が異なるため区別して扱います。
単一ピッチ誤差が大きいと、隣接する歯へ接触が移る際のタイミングや荷重の受け渡しに影響する可能性があります。累積ピッチ誤差が大きい場合は、周方向に歯の位置が偏っている状態が疑われます。回転伝達の滑らかさや位置決めの再現性を重視する用途では、両方の値が重要になることがあります。
たとえば一回転中の特定位置で動作が重くなる装置では、局所的な歯形の問題に加え、周方向のピッチの変動も候補になります。また、方向転換を繰り返す機構では、相手歯車との組み合わせによる伝達位置の変動が性能に影響する場合があります。ピッチ検査は、歯面の単独形状測定では把握しきれない回転方向の配置精度を確認するために有効です。
検査方法を決める際は、基準となる回転中心、測定方向、対象歯数を明確にします。軸穴を基準にするのか、軸一体型の歯車ならどの軸部を基準にするのかで測定結果の解釈が変わります。測定方向が一定でなければ比較が難しくなるため、検査手順を統一する必要があります。
小型歯車では、歯間に測定子を確実に当てられるか、繰り返し測定で安定した結果が得られるかも確認します。歯面に微小なバリや異物があると測定値を乱す場合があるため、洗浄状態と測定前の外観確認も重要です。非接触測定を利用する場合は、輪郭から歯位置を算出する方法や基準円の設定を明らかにしておきます。
試作段階では全歯の分布を確認し、偏差の周期性や特定箇所への集中を把握すると改善に役立ちます。量産移行後は加工方法の安定性を踏まえて、全数検査、抜取検査、かみ合い検査の組み合わせを検討します。ただし、かみ合い検査の結果が良好でも個別のピッチ誤差の許容値を自動的に満たすとは限りません。保証すべき項目に対応した測定を残すことが必要です。
相談時には「ピッチ精度を良くしたい」とだけ伝えず、単一ピッチと累積ピッチのどちらを管理し、許容値をどう判定するかを具体化します。歯形や振れとの関係も確認することで、製造側が加工条件を検討しやすくなり、発注側も検査成績書を正しく読めるようになります。
4. 歯溝の振れと取付基準の関係を評価する
歯車を回転させたときに歯列が中心からどれだけ偏っているかを確認する項目が、歯溝の振れです。歯溝に測定子などを当てて周方向の変動を調べる方法があり、歯列と基準軸の位置関係を評価する手掛かりになります。小型歯車では、歯面形状が良好でも軸穴との中心がずれていると、組付け後の動作に影響することがあります。
歯溝の振れが大きい場合、歯車の回転位置に応じて有効なかみ合い状態が変化し、運転条件によって回転むらや振動の一因になる可能性があります。ただし、測定される歯溝の振れには歯厚や歯溝形状などの影響も含まれ得るため、結果をそのまま純粋な偏心量とみなすべきではありません。原因を判断するときは、軸穴の真円度や同軸度に関わる測定も組み合わせます。
加工先への相談では、完成品が実際に何を基準として回るかを先に決めます。軸穴を圧入する構造、軸と一体の構造、端面と軸で位置決めする構造では、重要な基準が異なります。検査治具上では外径で保持しているのに、実機では軸穴で支持する場合、測定結果が実機の状態を十分に表さないおそれがあります。
特に、歯切り加工後に軸穴を仕上げる工程や、熱処理後に基準面を再加工する工程では、工程順序と基準の引き継ぎが精度を左右します。歯列と穴を別々の段取りで加工する場合は、それぞれの芯出し方法と、最終検査で使用する基準を共有するとよいでしょう。単品時点での検査だけでなく、圧入や組立で生じる変形が懸念されるときは、組付け後の確認条件も決めます。
歯溝の振れ測定には適切な測定子寸法が必要です。モジュールが小さく歯溝が狭い場合、測定子の接触位置が安定しにくく、歯底まで入り込めないことがあります。接触位置のずれが結果に影響する可能性があるため、対象歯車に適した方法かを事前に確認します。必要に応じて形状測定や回転軸に対する輪郭評価との照合を検討します。
不適合が出た際は、歯溝の振れ、軸穴の寸法・形状、端面の振れ、測定治具の保持誤差を分けて調べます。歯切り精度の改善だけで解決しない場合もあるからです。加工精度の相談では、歯車単体の形状と実際の取付状態をつなぐ検査項目として、基準設定を重視してください。
5. 歯厚とバックラッシに関わる寸法を検査する
歯形やピッチが規定どおりでも、歯厚が適切でなければ相手歯車とのかみ合いに問題が生じる場合があります。歯厚が大きすぎると組付け条件によって必要なすきまを確保できず、小さすぎると遊びが増える可能性があります。歯厚は、回転方向の遊びであるバックラッシに関わるため、位置決めや方向転換を伴う機構では重要な確認項目です。
歯厚の測定には、またぎ歯厚やピン・球を用いた寸法測定など、歯車の形状に応じた方法があります。ただし、これらの測定値は歯厚そのものと同一ではなく、歯数、歯形、圧力角、ねじれ角、測定位置などの条件から関連づけて評価します。測定方法だけを指定して基準寸法を示さないと、発注側と加工側で判定が一致しないおそれがあります。
小型歯車では、歯数が少ないためにまたぎ測定が成立しにくい場合や、測定用のピンを適切に配置しにくい場合があります。対象形状に応じて、測定できる寸法、測定の安定性、作業者による差を確認することが必要です。接触式の測定では押し付け力による部品や治具の変形にも配慮し、繰り返し性を確かめます。
ここで注意したいのは、歯厚の合否と実機でのバックラッシの合否を混同しないことです。バックラッシには、相手歯車の歯厚、中心距離、軸受のすきま、軸やハウジングの変形、組立状態などが影響します。片側の歯車の寸法だけが良好でも、組み合わせた機構の遊びが目標に収まるとは限りません。
組付け時に中心距離を調整できる構造か、固定された中心距離で使う構造かによっても、歯厚への要求は変わります。位置決め用の機構で遊びを小さくしたい場合でも、温度変化や負荷による変形を考えずにすきまを減らしすぎると、運転時にかみ合いがきつくなる可能性があります。必要なバックラッシは使用条件を踏まえて設定し、単に小さいほど良いと判断しないことが大切です。
検査仕様には、採用する歯厚関連寸法、測定方法、測定位置、許容範囲、必要に応じた相手歯車との組合せ条件を記載します。熱処理や表面処理を行う場合は、処理後に寸法が変化する可能性があるため、最終的な合否判定をどの工程で行うかも決めます。
量産時は測定値のばらつきを工程別に追うことで、工具摩耗や段取り変更の影響を早期に把握しやすくなります。平均値だけが規格内でも、ばらつきが大きいと一部が限界値を超えるおそれがあります。加工先には検査値の分布や変更履歴も確認し、合格品を継続して製作できる管理体制があるかを相談しましょう。
6. 歯面粗さとバリ・エッジの状態を確認する
六つ目の項目は、歯面の粗さと歯先・歯端の微小なバリなどの状態です。これらは歯形偏差やピッチ誤差とは別の品質項目ですが、小型歯車のかみ合いに影響することがあります。寸法測定で良品となった歯車でも、歯端のバリが相手歯に接触したり、局所的な傷が摩耗の起点になったりする可能性があるためです。
歯面粗さは、潤滑条件や荷重、材質、運転速度などと組み合わさって摩擦・摩耗に関係します。ただし、表面が滑らかであれば必ず長寿命になるとは限りません。加工方法によって生じる表面の方向性や、潤滑油膜の状態も考慮する必要があります。使用条件に見合う品質を指定することが重要です。
小型歯車では歯面が狭く曲率もあるため、一般的な粗さ測定子で十分な測定長さを確保できない場合があります。加工先には、歯面で直接粗さを測れるのか、測定範囲や方向をどう設定するのかを確認します。必要に応じて、対象形状に適した光学的な表面評価や、同条件で加工した試験片による工程確認を検討します。ただし、試験片の結果を製品歯面の実測値と同一視しないことが必要です。
バリの確認では、歯先、歯端、歯底付近など発生しやすい位置を意識します。歯切り後や面取り後に微小な突起が残ると、組付け時の引っ掛かりや異物発生につながることがあります。一方、バリを強く除去しすぎると歯先形状や有効な歯面まで変えてしまう場合があるため、除去方法と許容するエッジ形状をあらかじめ決めておきます。
検査では「バリなし」という曖昧な要求だけに頼らず、観察倍率、照明条件、対象部位、機能上許容できない状態を明確にします。必要であれば、限度見本や拡大画像を用いて発注側と加工側の判断を合わせます。外観の合否判定と、歯形などの寸法保証は別に整理し、両方の結果を追跡できるようにすることが望まれます。
特に、微小な歯車を複数まとめて搬送・洗浄する工程では、部品同士の接触で傷が生じる可能性もあります。加工直後に問題がなくても、洗浄、運搬、組立前の保管で品質が変わることがあるため、最終検査と梱包条件を一体で確認してください。歯面を触れさせない保持方法や異物管理も、加工精度を維持するための実務的な対策です。
7. かみ合い試験で総合的な機能を評価する
最後に相談したいのは、歯車同士を実際にかみ合わせて行う総合的な評価です。個別の形状・寸法が合格していても、組み合わせた際の回転むらや接触状態は別途確認する価値があります。かみ合い試験は、単品検査では見つけにくい組合せ上の問題を把握するための手段です。
代表的な方法には、基準となる歯車と対象歯車をかみ合わせ、中心距離の変動などから総合的な誤差を評価する方法があります。また、使用目的に応じて、所定の中心距離での回転伝達、バックラッシ、接触状態、異音や振動などを調べることもあります。どの試験を採用するかは、保証したい機能に合わせて選びます。
ただし、総合かみ合い検査が良好だからといって、歯形誤差や単一ピッチ誤差などの個別値まで規格内と断定できるわけではありません。複数の要因が重なって一つの測定結果に現れるため、異常を検出できても原因を特定できないことがあります。量産での選別には有効な場合がある一方、原因分析には個別項目の測定を組み合わせる必要があります。
試験条件では、相手歯車の精度、中心距離、回転方向、回転速度、負荷、潤滑の有無などを決めます。とくに実機で使う相手歯車との組み合わせを評価する場合、特定の組だけで良好な結果が得られても、別ロットの部品で同じ結果になるとは限りません。互換性が必要なら、相手部品の公差を含む組合せ評価が重要です。
小型歯車を使った位置決め機構では、回転方向の切替時の遊び、停止位置の繰り返し性、運転中の負荷変動を確認することがあります。静的な歯厚測定では把握しきれない挙動を調べられる反面、軸受や駆動系の影響も含まれるため、結果をすべて歯車単体の加工誤差に帰属させないことが大切です。
耐久性が重要な場合は、短時間のかみ合い試験と長時間の運転試験を区別します。初期状態で回転が滑らかでも、継続運転によって摩耗や温度上昇が生じる可能性があります。材質、硬さ、表面処理、潤滑の管理も必要になり、歯形精度だけで寿命を保証することはできません。検査目的を「寸法の確認」「機能の確認」「耐久性の確認」に分けて考えると、試験計画を整理しやすくなります。
発注時は、測定装置による総合評価を行うのか、実機に近い治具で動作確認を行うのかを明らかにします。試験ごとの合否基準と、異常が発生した際の追加検査の手順まで合意しておくと、試作から量産への移行時に判断がぶれにくくなります。
加工先への相談時に決めておきたい検査仕様と合否基準
七つの検査項目を理解していても、加工先への依頼内容が曖昧なままでは適切な品質保証につながりません。最初に行いたいのは、図面と検査仕様の整合を取ることです。歯車の基本諸元、材質、熱処理条件、取付基準、完成品の公差を示し、各検査項目について「何を、どの方法で、どこまで測るか」を共有します。
検査項目の選定では、すべてを一律に厳しくするのではなく、不具合の影響度に応じて優先順位を付けます。たとえば位置決め精度を重視する場合にはピッチやバックラッシ、連続運転の安定性を重視する場合には歯形や歯すじ、接触状態の検証が重要になります。ただし、これは一般的な整理であり、実際には歯車の形式と機構条件によって必要な項目が変わります。用途に合った判断が不可欠です。
合否基準は、目標値だけでなく測定条件まで含めて定義します。同じ部品でも、基準軸、固定方法、測定する歯、測定位置、測定機の設定が異なれば結果を単純に比較できない場合があります。加工先が実施できる測定方法と、その測定不確かさを確認し、要求公差に対して判定の信頼性が確保できるかを検討しましょう。
測定機の能力が要求精度に対して不足している場合、数値が規格内に見えても良否の境界を判定できない可能性があります。特に許容範囲の境界に近い測定値については、測定不確かさを踏まえた判定ルールを決めることが大切です。検査結果を小数点以下の桁数だけで信用するのではなく、校正状況、繰り返し性、測定者差も確認します。
外注先が歯切り加工から熱処理、仕上げ、検査まで一貫して対応するか、工程ごとに別の事業者へ委託するかによって管理上の注意点も変わります。再委託がある場合は、どの工程で精度を保証し、どの段階の測定記録を最終成績書に反映するのかを明確にします。工程間で基準や図面の版が変わらない仕組みも必要です。
試作相談では、いきなり量産時の検査方式だけを決めるのではなく、詳細測定によって不具合の出方を把握する段階を設けると効果的です。初期試作では歯形と歯すじの測定曲線、全歯のピッチや振れ、組合せ試験の結果を比較し、設計要求と加工能力の差を整理します。その結果を踏まえて、量産ではどの項目を全数で確認し、どの項目を抜取や定期測定で管理するかを決定します。
検査成績書には、単に「合格」と記載するだけでなく、測定項目、実測値、単位、合否基準、測定日、対象ロット、測定機や治具を識別できる情報を残すと、後の不具合解析が容易になります。修整歯形の偏差曲線やかみ合い試験の記録が重要な場合は、数値だけでなく評価の根拠になるデータの保存方法も相談してください。
試作から量産まで検査品質を安定させる管理方法
小型歯車の品質を安定させるには、測定項目の設定だけでなく、製造条件と測定結果を継続して結び付ける仕組みが必要です。試作で高精度な結果が得られても、量産で工具摩耗、温度変化、段取りの違い、保持方法の変更が重なると、精度が変動する可能性があります。検査成績を工程改善に使える形で記録することが重要です。
まず、初品確認のタイミングを決めます。新規立上げ時だけでなく、工具交換、設備変更、加工条件変更、治具の交換、図面改訂、材料や熱処理条件の変更があったときに、どの検査を再実施するかを明らかにします。変更前後の実測データを比較できれば、予期しないばらつきを早く発見できます。
次に、測定環境と測定方法の再現性を確認します。微小な歯車では、わずかなごみや保持圧、測定子の位置ずれが結果に影響する場合があります。洗浄と乾燥、測定時の温度管理、治具の点検、測定機の校正、作業者への手順教育を行い、誰が測っても同じ基準で判定できる状態を目指します。
抜取検査を採用する場合は、検査頻度やサンプル数を単に経験で決めず、不具合が発生した場合の影響、工程の安定性、ロット規模に応じて検討します。重要な機能に直結する項目や工程変更直後の項目では、確認を厚くする判断が必要です。全数か抜取かという二択ではなく、全数で確認しやすい総合検査と、定期的な詳細形状測定を組み合わせる方法も考えられます。
不適合が発生したら、測定値だけでなく、加工日、設備、工具、加工条件、熱処理ロット、担当工程を追跡できるようにします。歯形の局所的な異常、歯すじの傾き、ピッチの周期的な変動など、どの症状がどの条件で出たかを蓄積すれば、原因分析の精度を高めやすくなります。ただし、測定結果から原因を推測する際は、再測定や工程確認で裏付けを取ることが大切です。
また、梱包や輸送後の外観確認も検査計画に含めます。製造時点で合格した歯車でも、運搬時に歯面が接触すると傷や変形が生じる場合があります。微小部品ほど異物や打痕を見逃しやすいため、個別保持、識別表示、ロット管理、受入時の確認内容を加工先と取り決めておくと安心です。
まとめ|小型歯車の精度相談は使用条件まで共有する
小型歯車の歯形精度を確保するには、歯形誤差だけでなく、歯すじ、ピッチ、歯溝の振れ、歯厚、歯面状態、かみ合い性能を関連づけて確認することが重要です。それぞれの検査には異なる目的があり、一つの測定値だけで部品全体の機能を判断することはできません。加工精度の相談では、まず使用中に避けたい不具合を整理し、必要な検査を選定することが出発点になります。
また、測定値の良し悪しは、設計上の基準、評価範囲、測定方法、測定不確かさによって解釈が変わります。加工先には歯車の基本諸元と取付条件を伝え、試作時の詳細評価から量産時の検査頻度、変更時の再確認まで、一貫した管理方法を相談しましょう。検査仕様と工程管理がつながることで、品質トラブルを未然に発見しやすくなります。
歯車が設備に組み込まれ、据付や保守の現場作業まで関わる場合は、加工検査の成績書に加えて、現地での確認記録を残すことも大切です。たとえば設置場所の写真、作業位置、施工や交換の履歴を整理しておくと、後から発生した不具合の状況を共有しやすくなります。LRTK Phoneは、こうした現場写真・位置情報・施工記録の管理に活用できる自社プロダクトです。歯車の歯形そのものは適切な専用測定方法で評価しながら、設備の現場情報はLRTK Phoneで記録・共有することで、製造品質と施工・保全の履歴をそれぞれ確認できる体制づくりにつなげられます。
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