LRTKレフィクシア株式会社

射出成形の委託で材料選定に失敗しない5つのポイント|用途に合う樹脂を選ぶ

射出成形の委託で材料選定が重要な理由

射出成形を外部に委託する際、製品の品質を左右する重要な判断の一つが材料選定です。射出成形では、同じ形状の製品であっても、使用する樹脂の種類やグレードによって強度、耐熱性、寸法安定性、外観、耐久性などが変わります。そのため、用途に合わない材料を選んでしまうと、試作品では問題が見つからなくても、量産開始後や実際の使用環境で不具合が発生する可能性があります。

射出成形は、加熱して溶融させた樹脂を金型内に充填し、冷却して製品を成形する加工方法です。複雑な形状の部品を繰り返し製造できる一方で、使用材料の特性が成形条件や製品品質に大きく影響します。

樹脂材料には、比較的幅広い用途で使用される汎用樹脂から、機械的強度や耐熱性などを重視したエンジニアリングプラスチックまで、さまざまな種類があります。同じ樹脂系統であっても、補強材、添加剤、分子量などの違いによって物性や加工特性が異なるため、用途に応じたグレードの選択が必要です。

例えば、屋内で使用する外装カバーと、屋外設備に取り付ける部品では、求められる性能が異なります。屋内用では外観品質や組立性を重視する場合がありますが、屋外用では紫外線、温度変化、水分などへの耐性も検討しなければなりません。

また、荷重を受ける構造部品では、引張強度や曲げ強度だけでなく、長期間荷重が作用したときの変形や、繰り返し負荷による疲労も重要です。初期の強度試験で問題がなくても、実際の使用条件では時間の経過とともに変形が進む可能性があります。

材料選定を誤ると、製品の割れ、変形、反り、寸法不良、表面の劣化などにつながることがあります。不具合の発見が量産開始後になれば、材料の再選定だけでなく、製品設計や金型の見直しが必要になる場合もあります。

さらに、樹脂の種類によって溶融時の流動性、冷却時の収縮、吸湿特性、必要な成形温度などが異なります。そのため、材料変更は単純な置き換えでは済まないことがあります。成形品の寸法や外観に影響するだけでなく、ゲート位置や肉厚などの設計条件を再検討する必要が生じることもあります。

射出成形を委託する場合、材料選定を委託先にすべて任せるのではなく、発注側が製品の使用条件と要求性能を明確にし、委託先が成形技術や材料特性の観点から適合性を確認する進め方が重要です。

特に初めて射出成形を委託する場合や、従来とは異なる用途の製品を開発する場合には、樹脂の名称だけで材料を指定することを避けたいところです。使用温度、負荷条件、薬品との接触、寸法精度、成形性などを整理し、委託先と十分に確認したうえで材料を決定する必要があります。

この記事では、射出成形の委託を検討している設計担当者、調達担当者、生産技術担当者に向けて、材料選定で失敗しないための5つのポイントを解説します。樹脂の特徴を比較する考え方から、委託先との確認事項、試作評価、量産移行時の注意点まで、実務で役立つ判断方法を紹介します。

ポイント1:製品の用途と使用環境から必要性能を明確にする

射出成形の材料選定で最初に確認したいのは、製品がどのような場所で、どのような目的に使用されるかという点です。樹脂の性能を比較する前に、製品に必要な機能と使用環境を整理することで、候補材料を合理的に絞り込めます。

まず、使用場所が屋内か屋外かを明確にします。屋外で使用する場合には、日射、雨水、湿度、温度変化などの影響を考慮する必要があります。特に紫外線への耐性が不足している材料では、使用環境や経過時間によって変色や物性低下が進む場合があります。

屋内で使用する製品であっても、高温になる設備の近くや、低温環境、湿度の高い場所では条件が異なります。製品が通常使用される温度だけでなく、一時的にさらされる温度や保管時の環境も確認することが大切です。

例えば、通常は室温付近で使用される機器のカバーであっても、内部の発熱部品や周囲の熱源によって局所的に温度が上昇する場合があります。このような製品では、周囲温度だけを基準に材料を選ぶのではなく、実際の部品温度を想定して耐熱性を検討する必要があります。

次に、製品に作用する荷重を整理します。固定された状態で一定の荷重を受け続ける部品なのか、繰り返し動作する部品なのか、衝撃を受ける可能性がある部品なのかによって、重要となる材料特性は変わります。

一定の荷重が長時間作用する部品では、クリープと呼ばれる時間依存の変形を考慮する必要があります。一方、繰り返し曲げられる部品や開閉動作を行う部品では、疲労特性が重要になります。

例えば、樹脂製の固定具や取付部品では、組立直後に十分な保持力があっても、長期間使用した際に変形が進み、固定状態が変化する可能性があります。このような製品では、初期強度だけで材料を判断しないことが重要です。

衝撃が加わる可能性のある部品では、衝撃強度も検討対象です。ただし、材料の衝撃特性は温度や試験条件によって変わる場合があります。低温環境で使用する部品や、落下・衝突が想定される製品では、実際の使用状況に近い条件で評価することが望まれます。

薬品や液体との接触条件も確認しなければなりません。洗浄剤、油、燃料、潤滑剤などに接触する可能性がある製品では、候補樹脂の耐薬品性を確認する必要があります。

材料によっては、特定の液体との接触により膨潤、変色、強度低下、亀裂などが発生する場合があります。耐薬品性は薬品の種類だけでなく、濃度、温度、接触時間、製品に作用する応力などにも影響されます。

そのため、樹脂の一般的な耐薬品性だけを確認するのではなく、実際の使用条件に近い状態で評価することが望まれます。特に、薬品に接触した状態で荷重が作用する部品では、材料内部の応力や成形時の残留応力も考慮する必要があります。

さらに、製品に求める外観や機能も材料選定に関係します。透明性が必要な部品、光沢のある外装部品、摩耗を抑えたい摺動部品、電気絶縁性を求める部品では、それぞれ適した材料候補が異なります。

電気機器の部品では、必要に応じて難燃性や電気的特性を確認します。食品に接触する製品や安全性に関わる部品では、使用地域や用途に適用される規制、要求仕様への適合性も確認が必要です。樹脂の種類だけで適合を判断できるとは限らないため、対象グレードや最終製品の条件まで確認します。

こうした要求を整理する際には、必ず満たさなければならない条件と、可能であれば満たしたい条件を分けることが有効です。例えば、一定の荷重に耐えることや指定温度で機能することは必須条件とし、外観の光沢や軽量化などは優先順位を付けて検討する方法があります。

すべての性能を最大限に高めようとするのではなく、製品の用途に対して重要な条件を明確にすることが適切な材料選定につながります。

委託先には、製品の用途を単に説明するだけでなく、使用温度の範囲、想定荷重、接触物質、使用期間、保管条件、必要な外観品質などを具体的に伝えることが大切です。

使用環境が明確になれば、委託先も候補材料の特徴を比較しやすくなり、材料選定の根拠を共有できます。要求性能を言葉だけで伝えるのではなく、可能な範囲で数値や評価条件に落とし込むことが、後工程での認識違いを防ぐうえでも重要です。

ポイント2:樹脂の物性とグレードを比較して候補を絞る

用途と必要性能を整理したら、次に樹脂材料の物性を比較します。射出成形に使用される樹脂には多くの種類があり、それぞれ得意な性能と注意すべき特性があります。

材料選定では、単に強い材料や耐熱性の高い材料を選ぶのではなく、製品に必要な性能との適合性を評価することが重要です。

代表的な汎用樹脂の一つにポリプロピレンがあります。ポリプロピレンは比較的軽量で、一定の薬品に対する耐性を持つグレードが多く、容器や各種成形部品などで利用されています。

ただし、低温での衝撃特性、剛性、長期間の荷重による変形などは、グレードや使用条件によって評価が必要です。耐熱性や寸法安定性を重視する部品では、使用条件に適合するか確認しなければなりません。

ABS樹脂は、外装部品や機器カバーなどで利用されることがある材料です。外観と機械的特性のバランスを考えて候補に挙げられますが、屋外使用や特定の薬品との接触、高温環境などでは、適切なグレードの選択と評価が必要です。

ポリカーボネートは、透明性や耐衝撃性が求められる用途で検討されることがあります。一方、薬品との接触や成形品に残る応力などの条件によっては、亀裂などの問題が生じる可能性があります。透明性を必要とする部品では、外観品質や成形条件も含めて確認することが大切です。

ポリアミドは、機械部品や構造部品などで使用されることがある樹脂です。機械的強度や耐摩耗性などを重視する用途で候補になりますが、吸湿によって寸法や機械的特性が変化する場合があります。

そのため、ポリアミドを使用する場合には、成形直後の状態だけでなく、実際の使用環境で吸湿した状態も考慮して評価する必要があります。特に寸法精度が厳しい部品では、調湿状態による寸法変化が組立性に影響しないか確認することが重要です。

ポリアセタールは、摺動性や耐摩耗性、機械的特性などを重視する部品で検討される材料です。ただし、使用温度、薬品との適合性、接合方法などには注意が必要であり、製品用途ごとに確認することが求められます。

このように樹脂にはそれぞれ特徴がありますが、樹脂名だけでは実際の性能を確定できません。同じ種類の樹脂でも、補強材の有無、添加剤、製造グレードによって性能は異なります。

例えば、ガラス繊維などの補強材を配合した樹脂では、剛性や強度が向上する場合があります。一方で、成形時の樹脂流動方向によって収縮や機械的特性に差が生じ、反りや寸法変化に影響することもあります。

また、衝撃特性を重視した改質材料や難燃性を付与した材料では、他の物性や成形性とのバランスを確認する必要があります。ある性能を改善するための添加剤が、流動性、外観、寸法安定性などに影響する可能性もあるためです。

材料データを比較する際には、物性値がどのような試験条件で測定されたものかを確認することが重要です。

引張強度、曲げ強度、衝撃強度、熱変形温度などは材料選定の参考になりますが、試験片の形状、温度、測定方法、調湿状態などが異なれば、数値を単純に比較できない場合があります。

特に熱変形温度は、指定された試験荷重や条件で測定される値であり、その温度まで製品を長期間使用できることを直接保証するものではありません。

長期使用における耐熱性を判断する場合には、連続使用条件や荷重条件を含めて適切な評価を行う必要があります。短時間の試験結果と長期使用時の挙動を混同しないことが大切です。

また、材料の物性値が優れていても、実際の製品形状では同じ性能が得られるとは限りません。肉厚、成形条件、ウェルドライン、残留応力などが製品性能に影響するためです。

そのため、材料選定では材料データによる一次比較と、実際の成形品による評価を組み合わせることが望まれます。

委託先には、候補となる樹脂の種類と具体的なグレードを確認し、選定理由を説明してもらうことが重要です。候補材料の利点だけでなく、使用上の制約や成形時に注意すべき点も共有することで、判断の精度を高められます。

複数の候補を比較する場合には、要求性能に対する適合性、成形性、寸法安定性、材料調達の継続性などを同じ条件で確認します。材料の一部の性能だけで判断するのではなく、製品全体の要求事項との整合性を確認することが重要です。

ポイント3:成形性と寸法精度を考慮して材料を選ぶ

射出成形の材料選定では、製品に必要な性能だけでなく、安定して成形できるかどうかも重要な判断基準です。

樹脂の種類によって流動性、成形収縮率、必要な温度条件、冷却時の挙動などが異なります。そのため、材料の性能が用途に適していても、製品形状との組み合わせによっては成形上の課題が生じることがあります。

特に薄肉部品、細長い部品、複雑な形状を持つ部品では、樹脂の流動性が成形品質に影響します。

流動性が不足する場合、金型内の細部まで樹脂が充填されず、ショートショットと呼ばれる充填不足が発生する可能性があります。一方、流動性の高い材料であっても、金型構造や成形条件が適切でなければ、バリや外観不良などが生じることがあります。

樹脂の流動性を評価する指標として、一定条件下での溶融樹脂の流れやすさを示す値が用いられることがあります。ただし、測定条件が異なる材料の数値を単純比較することは適切ではありません。

また、実際の充填挙動は金型形状や射出条件によっても変化します。そのため、委託先には材料の成形実績だけでなく、対象製品の形状に適した流動特性を持つか確認することが重要です。

寸法精度を要求する部品では、成形収縮率の確認が欠かせません。射出成形では、溶融樹脂が冷却される過程で収縮します。この収縮量は材料の種類だけでなく、製品の肉厚、金型温度、保圧条件、樹脂の流動方向などによって変化します。

したがって、材料データに記載された成形収縮率だけを使って、完成品の寸法を正確に予測できるわけではありません。

特に補強繊維を含む材料では、流動方向とそれに直交する方向で収縮挙動が異なる場合があります。この方向による差が、反りや寸法ばらつきの要因になることがあります。

寸法公差が厳しい製品では、材料選定の段階から金型設計と成形条件を合わせて検討することが必要です。

また、製品形状に急激な肉厚変化がある場合には、冷却の不均一によって反りやヒケが発生する可能性があります。ヒケは、製品表面に局所的なくぼみが生じる現象です。

厚肉部やリブ、ボスの周辺などで発生することがあり、外観や寸法に影響する場合があります。材料の変更だけで対処するのではなく、肉厚の均一化、リブ形状の調整、ゲート位置の検討など、製品設計と金型設計の両面から対策を考えることが重要です。

さらに、ウェルドラインにも注意が必要です。ウェルドラインは、金型内部で分かれて流れた溶融樹脂が合流する位置などに形成される線状の痕跡です。

外観への影響だけでなく、材料や成形条件によっては局所的な強度低下につながる場合があります。荷重が集中する位置にウェルドラインが形成される可能性がある場合には、ゲート配置や材料特性を含めて検討します。

吸湿性を持つ樹脂を使用する場合には、成形前の乾燥条件も重要です。材料中の水分が多いと、樹脂の種類によっては成形時の外観不良や分子量低下などの原因になることがあります。

必要な乾燥条件を満たせる設備や材料管理体制があるかどうかも、委託先を選ぶ際の確認事項です。

乾燥が必要な材料では、乾燥温度や乾燥時間だけでなく、乾燥後の保管や成形機への供給方法も品質に影響する場合があります。適切に乾燥した材料でも、成形前に再び吸湿すれば、想定した状態で加工できない可能性があるためです。

また、金型の冷却構造や成形サイクルも材料選定と関係します。冷却に時間がかかる材料や、成形条件の管理範囲が狭い材料では、生産性や品質安定性への影響を考慮する必要があります。

材料の性能だけでなく、委託先が保有する成形設備や温度管理能力、過去の成形経験などとの適合性を確認することが大切です。

なお、試作段階で切削加工などによって製作した部品と、射出成形によって製作した部品では、材料の状態や内部構造、残留応力などが異なる場合があります。

切削試作品で要求性能を満たしたからといって、射出成形品でも同じ性能が得られるとは限りません。成形性と寸法精度を適切に確認するためには、可能な範囲で実際の材料と量産に近い成形条件を使用して評価することが重要です。

材料選定は金型設計に入る前の独立した作業ではなく、製品設計、金型構造、成形条件と一体で進めるべき工程と考える必要があります。

ポイント4:材料の調達安定性と品質管理体制を確認する

射出成形の委託では、技術的に適した材料を選ぶだけでなく、その材料を継続して調達できるかどうかも重要です。

試作段階では必要な材料を確保できても、量産開始後に材料の供給状況が変化すれば、生産計画や納期に影響する可能性があります。

特に特殊な添加剤を配合した材料や、限定された用途向けのグレードを採用する場合には、供給条件を事前に確認しておくことが望まれます。

まず、使用する材料の種類、グレード、色、補強材の有無などを明確にします。単に樹脂の系統名だけを図面や仕様書に記載すると、同じ系統の別グレードが使用される可能性があります。

同じ系統でも物性や成形収縮率が異なる場合があるため、製品に必要な性能を維持するためには材料仕様を具体的に管理する必要があります。

次に、材料をどちらが調達するかを確認します。発注側が材料を支給する場合と、委託先が材料を調達する場合では、管理責任や確認すべき内容が異なります。

材料支給では、支給ロット、保管状態、受入数量、使用期限の考え方、開封後の管理などを明確にしておくことが重要です。

委託先が材料を調達する場合には、材料の仕様確認、受入検査、保管方法、使用履歴の管理などについて確認します。

特に吸湿性のある材料では、保管時の湿度管理や開封後の取り扱いが成形品質に影響する場合があります。材料の種類に応じて適切な保管・乾燥手順が用意されているか確認することが必要です。

また、材料ロットごとの品質管理も重要です。同じグレードの材料であっても、製造ロット間で一定の物性ばらつきが存在する場合があります。

通常は材料仕様の範囲内で管理されますが、寸法精度や成形条件に敏感な製品では、その影響を評価する必要があります。

材料の受入時には、必要に応じて材料証明書や仕様書との照合を行い、ロット番号を記録します。成形後の製品と使用材料のロットを対応付けられるようにしておけば、不具合が発生した際に影響範囲を調査しやすくなります。

こうした履歴管理では、材料ロットだけでなく、成形日、成形設備、金型、主要な成形条件、検査結果などを必要な範囲で関連付けることが有効です。

不具合が発生した際に、特定の材料ロットに起因する問題なのか、設備や成形条件の変化による問題なのかを切り分けやすくなります。

材料の再利用についても事前に条件を決めることが重要です。射出成形では、ランナーやスプルーなどを粉砕した再生材を使用する場合があります。

ただし、再生材の配合割合、熱履歴、異物混入、材料特性の変化などによって、製品品質に影響が出る可能性があります。

再生材を使用するかどうか、使用する場合にはどの範囲まで認めるかを、製品の要求性能と評価結果に基づいて決める必要があります。

製品によっては再生材の使用を制限する必要がある一方、適切な条件管理のもとで使用できる場合もあります。重要なのは、委託先の通常運用に任せたままにせず、発注側と合意した条件を明文化することです。

さらに、材料の代替に関するルールも確認します。採用材料が調達できなくなった場合に、委託先の判断だけで別材料へ変更すると、強度、寸法、外観、耐久性などに影響する可能性があります。

代替材料を採用する際には、発注側の承認を受け、必要な性能評価や成形条件の確認を行う運用が望まれます。

代替品の検討では、同じ樹脂系統であることや類似した物性値を持つことだけでは、同等性の十分な根拠にならない場合があります。添加剤、補強材、成形収縮率、耐候性などの違いを確認し、用途に応じた再評価が必要です。

また、材料の廃番や供給条件の変更に備えて、委託先から情報を受け取る連絡体制を整えることも有効です。材料変更の検討を早期に開始できれば、試作や評価の計画を立てやすくなります。

量産を継続する製品では、材料の供給状況、変更管理、ロット管理、保管管理まで含めて委託先の対応力を確認することが、安定した品質確保につながります。

ポイント5:試作評価と量産移行の判断基準を決める

材料選定では、候補材料を決めた時点で判断を終えるのではなく、試作評価によって適合性を確認することが重要です。

材料データや過去の成形実績は有用な情報ですが、実際の製品形状や使用条件で要求性能を満たすかどうかは、個別に評価する必要があります。

試作評価を始める前には、何を確認すれば材料選定を完了できるのかを明確にします。

例えば、構造部品では強度や変形、外装部品では外観や耐候性、組立部品では嵌合状態や寸法精度などが重要になります。

評価項目は製品の用途によって異なるため、すべての試験を一律に実施するのではなく、要求性能と想定される不具合に基づいて設定することが合理的です。

初期段階では、候補材料を比較するための基礎評価を行います。必要に応じて材料試験片による物性確認や、簡易試作品による機能確認を実施します。

この段階では、明らかに要求性能を満たさない材料を除外し、詳細評価に進む候補を絞り込むことが目的です。

次に、実際の射出成形品による評価を行います。可能であれば、量産に近い材料、製品形状、金型構造、成形条件で試作品を製作し、寸法、外観、組立性、機械的性能などを確認します。

特に寸法精度が重要な製品では、成形直後だけでなく、必要に応じて一定時間経過後の寸法変化も確認します。

吸湿や温度変化の影響を受ける材料では、実使用環境を考慮した条件で評価することが重要です。

例えば、組立時には問題なく嵌合する部品でも、温度や湿度の変化によって寸法が変わると、組立後の締結状態や動作に影響する可能性があります。

このような部品では、単体の寸法測定だけでなく、相手部品との組立状態や実際の動作を確認することが有効です。

また、長期間使用する製品では、耐久性や劣化の評価も必要になる場合があります。繰り返し荷重、温度変化、紫外線、薬品接触など、製品の使用条件に応じた評価を計画します。

短時間の加速試験で得られた結果を実使用寿命に換算する場合には、その評価方法の妥当性を確認する必要があります。

試作時には、良品が製作できたかどうかだけでなく、成形条件の安定性も確認します。

特定の条件でしか良品が得られない場合、量産時に材料ロットや設備状態が変動すると不良が発生しやすくなる可能性があります。

そのため、委託先には成形温度、保圧、冷却時間、乾燥条件など、品質に影響する主要な条件を記録してもらうことが有効です。

可能であれば、成形条件を一定範囲で変化させた際の品質変動を確認し、安定して良品を製造できる条件範囲を把握することも重要です。

量産移行前には、評価結果を踏まえて使用材料と成形条件を承認する仕組みを整えます。

承認対象には、材料の種類、グレード、添加剤や補強材の仕様、色、必要な成形条件などを含めます。

管理対象を明確にすることで、量産開始後の意図しない変更を防ぎやすくなります。

また、試作段階で使用した材料と量産で使用する材料が同一仕様であることを確認する必要があります。

試作では入手しやすい材料を使用し、量産で別のグレードに変更する場合には、必要な再評価を行わなければなりません。

量産立ち上げ時には、初期の成形品を対象とした検査や工程確認を行い、寸法や外観、必要な機能が安定しているか確認します。

複数の金型キャビティで生産する場合には、必要に応じてキャビティ間のばらつきも確認します。

さらに、量産開始後に材料の仕様変更、調達先変更、再生材の使用条件変更などが発生した場合には、変更内容に応じて再評価や承認を行う運用が重要です。

材料選定の成功は、試作品が一度合格することだけでは判断できません。量産工程で安定して要求品質を満たし、使用環境でも必要な性能を維持できることが重要です。

試作から量産まで一貫した判断基準を持つことで、材料変更や成形条件の調整による品質トラブルを抑えやすくなります。

射出成形の委託先に材料選定を相談する際の準備

射出成形を委託する際、材料選定の相談を円滑に進めるためには、発注側が必要な情報を整理しておくことが重要です。

材料について専門的な知識が十分でない場合でも、製品の用途や要求性能を具体的に説明できれば、委託先から適切な提案を受けやすくなります。

最初に準備したいのは、製品の図面や形状情報です。製品の全体寸法、肉厚、穴位置、取付部、嵌合部などが分かる資料を用意します。

三次元形状データがある場合には、必要に応じて委託先へ共有すると、成形性や金型構造の検討に役立ちます。

ただし、初期相談の段階で図面が完成していない場合でも、製品の概略形状や使用目的を説明することで、材料候補や成形上の注意点について相談できる場合があります。

次に、製品に必要な性能を整理します。単に強度が必要、熱に強い材料がよいと伝えるだけでは、候補材料を適切に比較することが難しくなります。

想定される荷重、使用温度、接触する薬品、必要な使用期間、許容できる変形量などを、可能な範囲で具体化します。

特に重要な性能については、合格と不合格を判断するための条件を決めておくことが望まれます。

寸法精度についても、すべての箇所に同じ厳しさを求めるのではなく、組立や機能に影響する重要寸法を明確にすることが大切です。

寸法公差が厳しい部分を示すことで、委託先は材料の収縮特性や金型構造を考慮した検討を行いやすくなります。

外観品質が重要な場合には、目立つ面や許容できない不具合を説明します。

例えば、外観面のヒケ、ウェルドライン、色むら、光沢差などについて、どの程度まで管理が必要かを共有します。外観要求によって適した材料やゲート位置、成形条件が変わる場合があるためです。

生産数量や将来の生産計画も重要な情報です。試作のみを目的とするのか、継続的な量産を予定しているのかによって、材料調達や金型仕様の考え方が変わります。

量産を予定している場合には、想定数量、生産頻度、将来の数量変動、継続使用の予定などを伝えることが有効です。

また、材料を発注側が指定するのか、委託先から提案してもらうのかも明確にします。

材料指定の場合には、指定した理由や代替可能な範囲を共有することが重要です。委託先から材料提案を受ける場合には、必要性能と優先順位を伝え、複数の候補を比較できるようにします。

委託先の材料提案を評価する際には、その材料を推奨する理由だけでなく、使用上の制約や想定される不具合についても確認することが大切です。

また、委託先が対象材料の成形経験を持っているか、必要な乾燥設備や成形設備を備えているか、試作評価に対応できるかなども確認します。

材料の承認権限についても決めておく必要があります。最終的な材料仕様を誰が承認するのか、試作評価の結果を誰が判断するのか、量産後の変更にはどのような手続きが必要かを明確にしておくことで、後工程での認識違いを減らせます。

発注側の設計担当者、品質保証担当者、調達担当者の間でも、材料選定に関する役割を整理することが重要です。

設計担当者は要求性能との適合性、品質保証担当者は評価方法や検査基準、調達担当者は供給継続性や発注条件などを確認することで、異なる観点から材料選定を検討できます。

射出成形の材料選定は、委託先の提案を受けるだけでは完結しません。発注側が製品に求める条件を整理し、委託先の技術的な知見と組み合わせることで、より妥当な判断が可能になります。

材料選定で起こりやすい失敗と防止策

射出成形の委託では、材料選定に関する情報共有が不足すると、試作や量産の段階で問題が表面化することがあります。

よくある失敗の一つは、過去に使用した材料を十分な検討なしに別製品へ採用することです。

同じ樹脂が以前の製品で問題なく使用できていたとしても、新しい製品では肉厚、荷重、温度、薬品接触などの条件が異なる場合があります。

過去の採用実績は参考になりますが、新しい製品の要求性能を満たす根拠としては、使用条件の共通点と相違点を確認する必要があります。

別の失敗として、材料データに記載された数値だけで判断してしまうケースがあります。

例えば、引張強度が高い材料を選んでも、製品に必要な耐衝撃性や長期荷重に対する寸法安定性が十分とは限りません。

また、材料試験片の物性が良好でも、実際の射出成形品ではウェルドラインや成形時の残留応力などによって性能が変化する場合があります。

こうした問題を防ぐには、材料データの比較に加えて、製品形状と使用条件を踏まえた評価を行うことが重要です。

成形性を十分に考慮せず材料を決定することも、失敗につながる要因です。

製品の要求性能を優先して材料を選んだ結果、樹脂の流動性や収縮特性が製品形状に適合せず、寸法不良や外観不良が発生する場合があります。

このような問題を避けるには、金型製作前に材料候補と製品形状を委託先へ提示し、必要な設計変更の可能性を検討することが有効です。

さらに、材料の指定が曖昧なまま量産へ移行することにも注意が必要です。

図面に樹脂の系統名だけが記載され、具体的なグレードや添加剤の条件が明確でない場合、材料の選択範囲が広がり、意図した性能との不一致が発生する可能性があります。

材料仕様を文書化し、承認した材料以外への変更には所定の確認を必要とする仕組みを設けることが重要です。

色変更や添加剤変更も軽視できません。見た目の変更だけを目的とする場合でも、着色剤や添加剤によって成形性や物性に影響が生じる可能性があります。

特に寸法精度や機械的性能への要求が厳しい製品では、変更内容に応じた確認が必要です。

試作と量産の条件が一致していないことも、品質トラブルの原因になります。

試作では良好な結果が得られていても、量産時に材料グレード、乾燥条件、成形設備、金型条件などが変われば、同じ品質を再現できるとは限りません。

量産移行時には、試作で確認した条件と量産で採用する条件を比較し、差異がある場合にはその影響を評価することが重要です。

また、不具合が発生した際に材料だけを原因と決めつけることも避ける必要があります。

成形品の割れや変形は、材料特性だけでなく、製品形状、金型構造、成形条件、組立方法、使用環境などが複合的に関係して発生する場合があります。

材料変更を検討する前に、発生状況や製造履歴を確認し、原因を切り分けることが重要です。原因を十分に確認しないまま別材料に変更すると、別の不具合や寸法問題が生じる可能性もあります。

材料選定で失敗を防ぐためには、問題が発生してから対応するのではなく、設計、材料、成形、評価、調達の各段階で判断内容を記録し、関係者が共有できる状態を整えておく必要があります。

材料を採用した理由、評価結果、承認した仕様、量産時の管理条件を記録しておけば、将来の設計変更や材料供給状況の変化にも対応しやすくなります。

まとめ:用途に合う樹脂を選び安定した射出成形につなげる

射出成形の委託で材料選定に失敗しないためには、樹脂の種類や物性値だけで判断せず、製品の用途から量産時の品質管理まで一貫して検討することが重要です。

まず、製品の使用環境と必要性能を明確にし、候補となる樹脂の特徴やグレードを比較します。そのうえで、成形性や寸法精度への影響を確認し、材料調達の安定性と品質管理体制についても検討する必要があります。

さらに、試作段階では実際の製品形状や使用条件に応じた評価を行い、量産へ移行するための判断基準を明確にすることが大切です。

材料の物性が要求を満たしていても、成形条件が安定しなければ製品品質にばらつきが生じる可能性があります。反対に、成形しやすい材料であっても、実使用環境で必要な耐久性を満たさなければ適切な選定とはいえません。

そのため、発注側と委託先が製品の要求性能、材料仕様、評価方法、変更管理のルールを共有し、双方の役割を明確にして進めることが重要です。

特に建設設備や土木現場で使用する機器のカバー、取付部品、保護部材などを射出成形で製作する場合には、材料自体の性能に加えて、実際の設置環境や使用状況を記録することも品質管理に役立ちます。

設計段階で想定した使用条件と、現場での設置状況や周辺環境を照合できれば、製品の改良や不具合発生時の原因調査に活用しやすくなります。

例えば、屋外設備に取り付ける樹脂製部品では、設置場所による日射条件や周辺環境の違いが、長期使用時の劣化や変形に関係する場合があります。現場の写真や設置位置、施工時の状況を継続的に記録しておくことで、材料選定時の想定条件と実際の使用状況を比較するための情報を残せます。

こうした現場情報の記録と管理には、LRTK Phoneの活用も選択肢となります。

LRTK Phoneは、現場写真や位置情報、施工記録の管理に利用できるため、部材の設置場所や施工時の状況を記録し、関係者間で共有する際に役立ちます。

射出成形品の材料仕様や製造履歴は別途適切に管理しながら、現場での使用状況をLRTK Phoneで記録することで、設計・製造段階の情報と施工段階の情報を照合しやすい管理体制を構築できます。

射出成形の委託では、材料選定を単独の検討事項として扱うのではなく、製品設計、成形技術、品質管理、実際の使用環境までをつなげて考えることが大切です。

用途に合った樹脂を選び、委託先との確認と評価を丁寧に進めるとともに、製品が使用される現場の情報も適切に残すことで、安定した製品品質と継続的なものづくりにつなげられます。

ものづくりの次の一歩を、
相談から始めてみませんか。

加工・製造の外注先や共同開発のパートナー探しに。大田区産業振興協会の受・発注あっせん相談サービスをご利用いただけます。

ものづくり 外注先を探す。公益財団法人大田区産業振興協会の受・発注あっせん相談。無料でプロに相談!公的機関だから安心!
ものづくりの協力先探し大田区産業振興協会無料相談