射出成形を外部の製造会社へ委託する際、特に注意したい品質課題の一つが成形品の寸法ばらつきです。図面どおりの金型を製作し、指定した樹脂材料を使用していても、成形条件や冷却状態、材料の収縮特性などによって、完成品の寸法が想定と異なる場合があります。
射出成形では、溶融した樹脂を金型内に充填し、冷却して固化させる過程で体積や形状が変化します。そのため、金属部品の切削加工とは異なり、金型寸法と成形品寸法が必ずしも一致しません。さらに、成形直後と一定時間経過後では寸法が変わることがあり、測定するタイミングによって検査結果が異なるケースもあります。
特に、組立部品や嵌合部品、精密機構部品などを射出成形で製作する場合、わずかな寸法差が組立不良や機能不良につながる可能性があります。寸法公差を満たす製品を継続的に調達するには、射出成形委託先の設備能力だけでなく、収縮率の考え方、金型設計、成形条件、測定方法、品質管理体制まで確認することが重要です。
また、寸法ばらつきが発生した際に、委託元と委託先で測定結果が一致しない問題も見逃せません。測定器の種類や測定位置、測定環境、測定時点が異なると、同じ成形品でも評価に差が生じることがあります。こうした認識の違いを防ぐには、委託開始前から測定条件と判定方法を明確にしておく必要があります。
本記事では、射出成形委託で寸法ばらつきを抑えるために確認したい6つのポイントを、収縮率と測定条件を中心に解説します。委託先の選定、金型製作、試作評価、量産立上げ、量産中の品質管理まで、実務で活用できる考え方を紹介します。
射出成形委託で寸法ばらつきが発生する主な原因
射出成形品の寸法ばらつきは、一つの原因だけで発生するとは限りません。材料特性、金型構造、成形条件、冷却状態、測定方法など、複数の要因が組み合わさって生じることがあります。
代表的な要因が樹脂材料の成形収縮です。射出成形では、溶融した樹脂が冷却される過程で体積が減少し、成形品が金型の寸法より小さくなる傾向があります。ただし、収縮の程度は材料の種類や成形条件によって異なり、すべての方向で均一に収縮するとは限りません。
例えば、繊維状の補強材を含む樹脂材料では、樹脂の流動方向とそれに直交する方向で収縮挙動が異なることがあります。材料の配向状態によっては、特定方向の寸法だけが変化したり、反りが発生したりする場合があります。
結晶性の樹脂材料では、冷却過程における結晶化の進み方も寸法変化に影響します。一方、非晶性の樹脂材料でも収縮や内部応力による寸法変化が生じるため、材料区分だけで寸法精度を判断することは適切ではありません。
金型側にも寸法ばらつきの原因があります。樹脂の流入口であるゲートの位置、樹脂流路の構造、冷却回路の配置、金型温度の分布などによって、成形品内部の圧力や冷却速度が不均一になる場合があります。これにより、同じ製品内でも部位によって収縮量が異なり、反りや変形が発生することがあります。
さらに、量産中の成形条件の変動も重要です。樹脂温度、金型温度、射出速度、保圧、冷却時間などが変化すると、樹脂の充填状態や収縮挙動に影響する可能性があります。
寸法検査においては、測定方法そのものがばらつきの原因となることもあります。測定者によって測定位置が異なる場合や、測定器が成形品を押す力によって変形する場合には、実際の製品寸法の変動と測定誤差を区別する必要があります。
射出成形委託で寸法品質を安定させるには、こうした要因を個別に把握するとともに、工程全体を通して管理することが重要です。委託元が図面を渡すだけでなく、どの寸法を重要視し、どの条件で検査するのかを委託先と共有することが、品質トラブルの予防につながります。
確認1:樹脂材料の収縮率と材料仕様を明確にする
射出成形委託で最初に確認したいのが、使用する樹脂材料の仕様と収縮率です。材料の選定は成形品の強度や耐熱性だけでなく、寸法精度にも大きく関係します。
成形収縮率とは、一般に金型内の基準寸法と成形後の製品寸法との差を、所定の条件に基づいて表したものです。ただし、収縮率の数値は測定方法や成形条件、試験片の形状によって変わるため、材料資料に記載された値をすべての製品形状にそのまま適用できるわけではありません。
実際の製品では、肉厚、形状、ゲート位置、樹脂の流動方向、冷却条件などによって収縮挙動が変化します。そのため、材料の代表的な収縮率だけを根拠に金型寸法を決めると、成形後の寸法が目標から外れる可能性があります。
委託先には、指定する樹脂材料の種類だけでなく、材料仕様の管理方法も確認しましょう。同じ種類の樹脂であっても、補強材の有無や含有量、添加剤、材料グレードの違いによって収縮特性が異なる場合があります。
特に寸法公差が厳しい製品では、委託先の判断によって材料を変更しない仕組みが必要です。代替材料を使用する場合には、強度や外観だけでなく、収縮率や成形条件への影響を評価し、委託元の承認を得てから適用する運用が望まれます。
材料のロット差についても確認が必要です。適切に規格管理された材料であっても、物性には一定の変動が存在します。寸法精度への影響が大きい製品では、材料ロットの切替時に重要寸法を確認し、通常の工程変動と区別できるようにしておくことが有効です。
また、吸湿性のある樹脂材料では、成形前の乾燥状態が品質に影響します。材料の水分状態が適切でない場合、材料によっては成形時の劣化や外観不良、物性変化などにつながる可能性があります。乾燥温度や乾燥時間については、材料の推奨条件と製造工程の実情に応じて管理する必要があります。
再生材や粉砕材を混合する場合にも注意が必要です。混合比率や材料の履歴によって流動特性などが変化することがあるため、使用の可否や管理範囲を事前に取り決めておくことが重要です。
材料仕様の確認では、収縮率の数値だけでなく、その数値がどのような条件で得られたものかを把握しましょう。委託先が過去に類似形状や同系統の材料を扱った経験を持っている場合には、実際の成形結果と設計時の収縮率の関係について説明を求めることも有効です。
ただし、過去の実績があるからといって、今回の製品でも同じ収縮率になるとは限りません。最終的には試作成形による実測値を確認し、必要に応じて金型寸法や成形条件を調整することが重要です。
材料仕様と収縮率を委託元と委託先で共通認識にしておくことで、寸法不良が発生した際にも、材料に起因する問題なのか、別の工程条件が影響しているのかを切り分けやすくなります。
確認2:金型設計とキャビティごとの寸法差を確認する
射出成形品の寸法精度は、金型設計の段階で大きく左右されます。委託先を選定する際には、成形設備の能力だけでなく、金型設計と寸法調整に関する技術力も確認する必要があります。
金型では、樹脂が冷却によって収縮することを考慮して、製品の目標寸法に応じた形状や寸法を設定します。ただし、単純にすべての寸法へ一定の収縮率を適用するだけでは、複雑な形状の製品に対応できない場合があります。
例えば、肉厚の異なる部分が隣接する製品では、冷却速度や収縮量に差が生じることがあります。厚肉部分では冷却に時間がかかり、薄肉部分とは異なる収縮挙動を示す場合があります。その結果、反りや局部的な変形が発生し、測定位置によって寸法が異なることがあります。
そのため、金型設計では肉厚の均一化や樹脂流動のバランス、冷却回路の配置などを総合的に検討する必要があります。製品形状を変更できる段階であれば、成形しやすい形状へ設計を見直すことも、寸法ばらつきの低減につながります。
ゲート位置の確認も重要です。ゲートの位置によって樹脂の流動方向や充填圧力の分布が変わるため、収縮や反りに影響することがあります。特に細長い製品や平板形状の製品では、樹脂の流れ方と寸法変化の関係を検討しておくことが望まれます。
また、複数の製品を同時に成形する多数個取り金型では、キャビティごとの寸法差に注意が必要です。同じ金型内で成形していても、樹脂流路や冷却条件の違いによって、各キャビティの製品寸法に差が生じる場合があります。
このような場合、一部のキャビティだけを測定して金型全体の寸法品質を判断すると、ほかのキャビティの不良を見逃す可能性があります。試作評価や初期流動管理では、キャビティごとに製品を識別し、重要寸法の測定結果を比較することが有効です。
金型の寸法調整を見込んだ設計についても、委託前に確認しましょう。試作結果に応じて金型を修正する場合、修正可能な方向や加工余裕は金型構造によって異なります。寸法が目標から外れた際に、どの部位をどの方法で調整できるのかを検討しておくと、量産立上げ時の手戻りを減らしやすくなります。
さらに、量産開始後の金型摩耗や部品交換にも注意が必要です。長期間の成形によって金型の状態が変化すると、製品寸法に影響する場合があります。金型の点検周期、交換部品の管理、修理後の寸法確認方法についても委託先と取り決めておくことが重要です。
委託先の金型設計力を評価する際には、図面を受け取って製作する能力だけでなく、成形後の寸法変化を予測し、試作結果を金型修正へ反映できるかを確認しましょう。
重要寸法について設計上のリスクを説明できる委託先であれば、製品開発の早い段階から寸法品質を作り込むための協議を進めやすくなります。
確認3:成形条件の管理方法と変更ルールを確認する
射出成形では、同じ金型と材料を使用していても、成形条件によって製品寸法が変化することがあります。そのため、寸法ばらつきを抑えるには、委託先が成形条件をどのように設定し、維持しているかを確認する必要があります。
代表的な管理項目には、樹脂温度、金型温度、射出速度、保圧、保圧時間、冷却時間などがあります。これらの条件はそれぞれ独立しているわけではなく、組み合わせによって樹脂の充填状態や収縮挙動が変わります。
例えば、保圧は樹脂の冷却収縮を補う役割を持ちますが、保圧の効果はゲートの固化状態や製品形状などにも左右されます。保圧が不足すると寸法や外観に影響する場合がある一方、過度な保圧によって内部応力や変形などの問題が生じることもあります。
冷却時間についても同様です。十分に冷却されない状態で製品を取り出すと、取り出し後の変形や寸法変化が大きくなる場合があります。一方で、冷却時間を長くするだけで、すべての寸法問題が解決するわけではありません。金型温度の分布や製品形状との関係も考慮する必要があります。
委託先には、試作段階で決定した成形条件をどのように記録し、量産時に再現するのかを確認しましょう。設備の設定値だけでなく、実際の工程状態を把握するために必要な記録項目も明確にしておくことが重要です。
成形設備によっては、設定値が同じでも実際の樹脂状態や機械動作が完全には一致しないことがあります。そのため、別の設備へ生産を移管する場合や、設備の主要部品を交換する場合には、製品寸法への影響を確認する必要があります。
量産中の条件変更についても、明確なルールが必要です。寸法不良や外観不良を改善するために現場で成形条件を変更すること自体は、工程改善の一環となる場合があります。しかし、変更内容が記録されず、品質への影響も確認されない状態では、後から寸法ばらつきの原因を追跡することが難しくなります。
重要な成形条件については、管理範囲を定め、範囲外となった場合の対応方法を決めておくとよいでしょう。変更が必要になった際には、変更理由、変更前後の条件、確認した製品寸法、承認結果を記録する運用が有効です。
また、生産開始直後と連続生産中では、金型や設備の温度状態が異なる場合があります。設備停止後の再立上げ、材料ロットの切替、金型の清掃や保全後など、工程状態が変わるタイミングで重要寸法を確認することが望まれます。
寸法ばらつきの低減には、良品ができた際の成形条件を保存するだけでなく、その条件を維持するための監視と異常対応が欠かせません。
射出成形委託先を評価する際には、作業者の経験だけに頼らず、条件設定、記録、変更承認、品質確認を組み合わせて管理できる体制があるかを確認することが重要です。
確認4:成形後の冷却・保管条件と寸法安定化を確認する
射出成形品の寸法は、金型から取り出した時点で必ずしも安定しているとは限りません。材料や製品形状、成形条件によっては、取り出し後の冷却や時間経過、吸湿などによって寸法が変化することがあります。
そのため、射出成形委託では、成形直後の寸法だけでなく、いつ、どのような状態の製品を測定するのかを決めておく必要があります。
例えば、成形直後の製品は周囲温度より高い場合があります。この状態で測定すると、温度が十分に落ち着いた後の寸法とは異なる結果になることがあります。特に寸法公差が厳しい製品では、測定前に製品温度を安定させることが重要です。
また、材料によっては成形後に収縮が進行したり、内部応力の影響で形状が変わったりする場合があります。このような寸法変化の程度や時間的な推移は、材料特性と成形条件によって異なります。
吸湿性のある樹脂材料では、周囲環境から水分を吸収することによって寸法が変化する場合もあります。したがって、成形後の寸法変化を評価する際には、温度だけでなく湿度や保管時間にも注意が必要です。
委託先には、成形後の製品をどのような場所で、どの程度の時間保管してから検査しているかを確認しましょう。一定時間保管した後に寸法を測定する運用であれば、その時間を委託元と委託先で共有することが重要です。
ただし、すべての樹脂材料や製品に対して一律の保管時間を設定すればよいわけではありません。寸法安定化に必要な条件は製品ごとに異なるため、材料特性や実際の寸法変化を確認したうえで決定する必要があります。
製品を保管する際の置き方にも注意が必要です。薄肉製品や長尺製品、剛性の低い製品では、積み重ねや自重、包装材からの圧力などによって変形が生じることがあります。成形時の寸法が良好であっても、保管方法が適切でなければ出荷時に寸法不良となる可能性があります。
委託元と委託先では、成形後の冷却方法、製品の置き方、保管環境、検査までの時間、輸送時の荷重条件などを必要に応じて取り決めましょう。
また、寸法変化が懸念される製品では、成形直後、所定時間経過後、出荷前などの複数の時点で試験的に測定することが有効です。寸法がどのように推移するかを把握できれば、量産時に採用すべき測定時点を合理的に決めやすくなります。
最終的に重要なのは、製品が実際に使用される時点で必要な寸法や機能を満たしていることです。成形工場内での検査結果だけでなく、輸送や保管、組立工程を経た後の寸法状態も考慮して、品質基準を設定することが望まれます。
成形後の取り扱い条件まで含めて管理することで、金型や成形条件だけでは説明できない寸法不良の発生を抑えることにつながります。
確認5:寸法測定の方法・環境・タイミングを統一する
射出成形委託で特に注意したいのが、委託元と委託先の寸法測定条件の違いです。同じ成形品を測定していても、使用する測定器や測定位置、測定時点が異なれば、結果に差が生じることがあります。
そのため、図面に寸法公差を記載するだけでなく、重要寸法については具体的な測定方法を取り決めることが重要です。
まず確認したいのが測定位置です。射出成形品には、反りや変形、抜き勾配、局部的な形状変化が存在する場合があります。測定位置がわずかに異なるだけで測定値が変わることがあるため、測定対象となる部分や基準位置を明確にする必要があります。
例えば、円筒形状の外径を測定する場合、測定する高さや方向によって値が異なることがあります。また、平板形状の製品では、測定時の支持方法によって反りの影響が変化する可能性があります。
測定器の選定も重要です。寸法の種類や要求精度に応じて、接触式の測定器、非接触式の測定器、三次元的な形状を評価する測定装置などを使い分ける必要があります。
特に柔軟な樹脂部品では、接触式の測定器による押し付け力が測定結果に影響することがあります。測定者が強く挟む場合と軽く接触させる場合で値が変わることもあるため、測定力や測定方法の統一が必要です。
測定用治具を使用する場合には、治具が製品を過度に変形させていないかも確認しましょう。製品を安定して保持することは重要ですが、保持力によって本来の形状が変わってしまうと、実際の寸法状態を正しく評価できない可能性があります。
次に確認したいのが測定環境です。樹脂材料は温度によって寸法が変化するため、測定時の製品温度や室温が結果に影響する場合があります。高精度な寸法管理が必要な製品では、測定環境の温度を管理し、必要な温度安定時間を確保することが重要です。
湿度による影響も材料によって異なります。吸湿によって寸法が変わりやすい製品では、測定前の保管状態や環境条件を合わせる必要があります。
さらに、測定するタイミングを統一することも欠かせません。委託先が成形後の早い段階で測定し、委託元が納品後に測定している場合、両者の値が異なる原因が成形不良なのか、時間経過による寸法変化なのかを判断しにくくなります。
重要寸法については、成形後の経過時間や測定前の保管条件を含めて測定手順を定めることが望まれます。必要に応じて、測定基準となる製品状態を図面や検査仕様書に記載すると、認識の違いを減らしやすくなります。
測定器の管理状態についても確認が必要です。適切な校正や点検が行われていない測定器では、測定結果の信頼性が低下する可能性があります。委託先が測定器の校正履歴や使用条件を管理しているかを確認しましょう。
また、測定者間のばらつきを把握することも有効です。同じ製品を複数の測定者が測定し、その結果を比較することで、測定方法や作業者による差を確認できます。必要に応じて測定システム解析を行い、測定誤差が要求公差に対して適切な範囲にあるかを評価することも検討できます。
特に量産品では、委託元と委託先が同じ製品を持ち寄って測定結果を照合する方法が役立ちます。差が生じた場合には、測定器の違いだけでなく、測定位置、測定力、温度、製品の保持状態などを確認することが重要です。
寸法測定は、製品の良否を判断するための基礎となる工程です。測定条件が統一されていなければ、成形条件を適切に調整しても、寸法品質の改善効果を正しく評価できません。
射出成形委託では、測定結果そのものだけでなく、その結果を得るための条件と手順を共有することが、安定した品質管理につながります。
確認6:寸法公差の判定基準と量産監視体制を確認する
射出成形委託で寸法ばらつきを継続的に管理するには、寸法公差の設定と量産中の監視体制を明確にする必要があります。
図面上の寸法公差は、製品の機能や組立性、使用環境に基づいて設定することが基本です。ただし、要求公差が厳しい場合には、対象となる樹脂材料や製品形状、成形方法で安定的に実現できるかを検討する必要があります。
例えば、すべての寸法に一律の厳しい公差を適用すると、製品機能に直接関係しない部分まで高度な管理が必要になる場合があります。その結果、重要寸法の管理に必要な検査や工程改善が複雑になることも考えられます。
委託前には、組立や機能に影響する重要寸法と、それ以外の寸法を整理することが有効です。重要寸法については、測定方法、検査頻度、異常時の対応を明確にし、重点的に管理する体制を整えましょう。
量産開始時には、試作段階で良品が得られたことだけでなく、一定の生産条件のもとで寸法が安定しているかを確認する必要があります。初期流動管理では、成形開始直後の製品や連続生産中の製品を測定し、寸法の変動傾向を把握することが重要です。
多数個取り金型を使用する場合には、キャビティごとの寸法データを分けて確認する方法が有効です。全キャビティのデータをまとめた平均値だけでは、特定のキャビティに発生している寸法異常を見逃す可能性があります。
量産中の検査頻度については、製品の重要度や工程の安定性、不良発生時の影響を考慮して決定する必要があります。一定数量ごとに抜取検査を行う方法や、生産開始時、材料切替時、設備停止後などのタイミングで重点的に測定する方法が考えられます。
ただし、抜取検査だけで全数の寸法品質を保証できるわけではありません。重要度が高い製品では、工程の安定性や検査方法の有効性を確認し、必要に応じて検査体制を見直すことが重要です。
寸法データを継続的に収集できる場合には、管理図などを活用して工程の変動傾向を確認する方法もあります。寸法が公差内であっても、測定値が一方向へ変化している場合には、金型摩耗や設備状態、材料の変化などが影響している可能性があります。
工程能力の評価を行う場合には、測定システムの妥当性や工程の安定性を確認する必要があります。工程能力指数などの数値だけで品質を判断するのではなく、データの取得条件や工程の変動状況を踏まえて評価することが重要です。
不適合品が発生した場合の対応方法も、委託前に取り決めておきましょう。寸法が規格外となった製品をどのように識別し、どの範囲の製品を確認対象とし、誰が出荷可否を判断するのかを明確にする必要があります。
また、金型修理や成形条件変更によって不具合を改善した場合には、改善後の寸法を確認するとともに、必要に応じて継続生産での安定性を評価することが望まれます。一度の測定で良品となっただけでは、工程が安定したと判断できない場合があります。
検査記録の保存方法についても確認が必要です。測定日、製造ロット、使用金型、キャビティ、測定結果などを適切に関連付けることで、寸法不良が発生した際の原因調査や影響範囲の特定を進めやすくなります。
射出成形委託先には、単に検査設備があるかを確認するだけでなく、測定結果を工程改善へ反映できる管理体制が整っているかを確認することが重要です。
射出成形委託を成功させるための事前準備と進め方
ここまで紹介した6つの確認事項を実務で活用するには、委託開始前の情報整理と、試作から量産へ移行するまでの合意形成が重要です。
まず、委託元は製品図面や仕様書を整理し、要求する寸法精度を明確にする必要があります。図面には寸法や公差だけでなく、必要に応じて測定基準や機能上重要な箇所を示すことが望まれます。
また、製品の使用環境や組立方法も委託先へ共有しましょう。射出成形品の寸法品質は、単体部品の測定値だけでは判断できない場合があります。ほかの部品との嵌合や締結、使用時の温度変化などが機能に関係する場合には、設計段階から考慮する必要があります。
次に、委託先との技術打合せで、材料仕様と収縮率の考え方を共有します。材料資料に記載された収縮率を参考にしながら、実際の製品形状で想定される寸法変化について協議することが重要です。
特に、肉厚差が大きい製品や細長い製品、補強材を含む樹脂を使用する製品では、寸法ばらつきや反りのリスクを事前に検討する必要があります。
金型製作前には、寸法調整が必要になった場合の対応方法についても確認しておくとよいでしょう。試作結果によって金型修正が必要になった際の判断手順や、委託元と委託先の役割を明確にしておくことで、量産立上げ時の手戻りを抑えやすくなります。
試作段階では、成形条件と測定結果を関連付けて記録することが重要です。良品が得られたかどうかだけでなく、どの条件で製作した製品が、どの程度の寸法ばらつきを示したかを把握する必要があります。
必要に応じて複数の成形条件で試作し、重要寸法への影響を比較する方法も有効です。ただし、条件を変更する際には、変更した項目とその影響を追跡できるようにしておくことが重要です。
試作品の寸法評価では、測定方法と測定時点を統一しましょう。委託元と委託先が異なる条件で測定すると、金型修正の必要性について判断が分かれる可能性があります。重要寸法については、同一の測定基準に基づいて結果を照合することが望まれます。
量産移行時には、試作時の成形条件を量産設備で再現できるかを確認する必要があります。試作と量産で設備や金型の使用条件が異なる場合には、その違いが寸法品質へ及ぼす影響を評価することが重要です。
さらに、量産開始後の検査頻度や記録方法、条件変更時の承認手順、不適合品の処置方法についても合意しておきましょう。これらのルールを文書化することで、担当者が変更された場合でも同じ基準で品質管理を継続しやすくなります。
射出成形委託先の選定では、設備台数や成形可能な製品サイズだけでなく、材料特性を理解し、金型調整と成形条件管理、測定結果の分析を一貫して実施できるかを確認することが重要です。
また、寸法不良が発生した際に、原因を材料、金型、成形条件、測定方法などに分けて調査し、改善につなげられる技術体制があるかも評価ポイントになります。
委託元と委託先が品質に関する判断基準を共有し、試作から量産まで同じ考え方で管理できる状態を作ることが、継続的な寸法品質の安定につながります。
まとめ|収縮率と測定条件の共有が寸法品質を安定させる
射出成形委託で寸法ばらつきを抑えるには、金型精度や成形設備の性能だけでなく、材料の収縮特性から測定方法までを総合的に管理することが重要です。
特に確認したいのは、樹脂材料の収縮率と仕様、金型設計とキャビティごとの寸法差、成形条件の管理と変更ルール、成形後の寸法安定化、測定条件の統一、そして量産中の品質監視体制という6つのポイントです。
樹脂材料の収縮率は、材料資料の数値をそのまま適用するのではなく、製品形状や成形条件による影響を考慮する必要があります。金型設計では、流動や冷却のバランスを検討し、試作結果に応じた寸法調整を進めることが重要です。
また、成形条件を適切に管理していても、測定位置や測定時点が異なれば、委託元と委託先で寸法評価が一致しない場合があります。そのため、測定方法、測定環境、成形後の経過時間などを明確にし、共通の基準で製品を評価することが欠かせません。
量産段階では、寸法が公差内に収まっていることだけでなく、その状態を継続的に維持できるかが重要になります。キャビティごとの測定記録や工程条件の管理、異常時の対応手順を整えることで、寸法ばらつきの早期発見と改善につなげやすくなります。
射出成形委託を成功させるためには、委託元が要求品質を明確にし、委託先と十分に技術的な協議を行うことが大切です。収縮率や測定条件を共通認識にしたうえで、試作評価と量産管理を進めることが、安定した製品品質の確保につながります。
さらに、射出成形品を建設設備や現場用機器などに組み込む案件では、製造段階の寸法記録に加え、設置場所や施工状況を適切に記録することも重要です。製品の製造履歴と現場での使用状況を関連付けることで、不具合が発生した際の状況確認や品質情報の共有を進めやすくなります。
こうした現場情報の管理には、現場写真・位置情報・施工記録を整理できるLRTK Phoneの活用も選択肢になります。射出成形品そのものの精密な寸法検査は適切な測定器と検査手順で実施しながら、現場側の設置状況や施工履歴をLRTK Phoneで記録することで、製造から現場での使用までの情報を補完できます。
射出成形委託では、製造条件と測定条件を明確にし、必要な品質記録を継続して残すことが重要です。製造現場と施工現場の双方で情報を適切に管理し、品質トラブルの予防と迅速な原因確認につながる体制を整えていきましょう。
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