装置製作で部品交換や修理のしやすさが重要になる理由
装置製作を外部に依頼するとき、処理能力や動作精度、設置寸法、納期などを優先して検討する企業は少なくありません。しかし、装置は完成して稼働を開始した後も、点検や消耗部品の交換、故障への対応が必要です。そのため、装置製作の依頼段階から部品交換や修理のしやすさを設計条件に含めることが重要になります。
装置の保守性とは、点検、整備、部品交換、故障診断などを適切かつ効率的に実施できる性質を指します。保守性の高い装置では、故障箇所を把握しやすく、必要な部品へ安全にアクセスでき、交換後の動作確認まで円滑に進められます。
反対に、保守性を十分に考慮せずに製作した装置では、小さな部品を交換するために多数のカバーを取り外したり、周辺機器を移動させたりする場合があります。部品そのものは簡単に交換できる構造でも、工具が入らない、配線を外さなければ取り出せないといった問題が発生すると、復旧までの作業が複雑になります。
例えば、製造ラインで使用する搬送装置のセンサーが故障した場合を考えます。センサーが装置の奥に設置され、交換時に搬送機構を大きく分解する必要がある構造では、交換作業だけでなく、分解後の位置調整や動作確認にも時間がかかります。
一方、センサーの取り付け位置や配線の接続方法が交換を前提に設計されていれば、周辺部品を大きく取り外さずに対応できる可能性があります。交換後の位置合わせ方法まで決められていれば、復旧作業のばらつきも抑えやすくなります。
保守性は、単に修理作業を楽にするための要素ではありません。生産設備であれば停止時間の短縮、検査装置であれば測定品質の維持、自動化装置であれば安定稼働の継続にも関係します。
ただし、保守性を高めるために装置を必要以上に大型化したり、すべての部品を簡単に取り外せる構造にしたりする必要はありません。交換頻度、故障時の影響、作業環境、安全性を考慮して、優先的に改善すべき箇所を判断することが大切です。
また、製作後に保守性の問題が判明すると、筐体や配線経路、部品配置などの大幅な変更が必要になる場合があります。設計初期であれば比較的調整しやすい内容でも、製作が進んでからでは変更できる範囲が限られます。
そのため、装置製作を依頼する担当者は、完成時の機能だけでなく、稼働開始後にどのような保守作業が発生するかを想定し、依頼先と共有する必要があります。
ここからは、装置製作の依頼時に実践したい、部品交換や修理のしやすさを高める5つの工夫を具体的に解説します。
工夫1:交換対象の部品と保守条件を設計段階で明確にする
装置製作の依頼で最初に取り組みたいのは、交換や修理が必要になる部品を整理し、保守条件を仕様書に反映することです。
装置に使用される部品には、定期的な交換を想定するものと、通常は長期間使用するものがあります。例えば、フィルター、ベルト、シール部品、摩耗部品などは、使用条件に応じて点検や交換が必要になります。モーター、減速機、電源装置、制御基板なども、故障時に交換が必要になる可能性があります。
すべての部品について同じ水準の交換性を求めると、装置の構造が複雑になることがあります。そのため、部品の交換頻度と故障時の影響を組み合わせて優先順位を決めることが重要です。
例えば、頻繁に交換するフィルターは、装置の外側から安全に取り出せる構造が適しています。一方、交換頻度が低い大型機構部品については、必要な保守作業時に装置を停止し、所定の分解手順で交換できる設計が現実的な場合もあります。
ここで重要なのは、交換頻度だけでなく、部品が故障したときの影響も考慮することです。交換する機会が少ない部品でも、故障によって設備全体が停止する場合は、復旧作業のしやすさを優先する価値があります。
装置製作を依頼するときは、想定する稼働時間、運転環境、清掃頻度、点検周期、保守作業を担当する人員などを伝えます。例えば、連続運転する装置と、必要なときだけ使用する装置では、保守計画の考え方が異なります。
粉じんや水分が存在する環境では、汚れの付着や腐食への配慮が必要です。高温環境で使用する装置では、停止後の冷却時間や耐熱部品の取り扱いも保守条件に関係します。
さらに、交換作業の実施場所を明確にすることも大切です。装置を設置場所から移動できるのか、固定したまま交換する必要があるのかによって、適切な構造は変わります。
保守作業を行う担当者の技術水準も設計条件の一つです。専門技術者が対応することを前提とする装置と、現場の保全担当者が日常的に部品交換する装置では、必要な表示や作業手順、調整機構が異なります。
また、交換に必要な目標時間を設定しておくと、依頼先との認識を合わせやすくなります。ただし、単に短時間で交換できることを求めるのではなく、設備の停止、安全確保、残留エネルギーの処理、交換後の確認作業まで含めて考える必要があります。
例えば、センサー交換後に位置調整や動作確認が必要であれば、それらの作業を含めた復旧手順を整理します。部品を取り付ける時間だけを短縮しても、調整作業が複雑であれば全体の復旧時間は短くなりません。
仕様書には「部品交換が容易であること」といった抽象的な表現だけでなく、交換対象、必要な作業空間、取り外し方法、交換後の調整範囲などを具体的に記載することが望まれます。
依頼先に保守条件を伝える段階では、交換対象の一覧を用意し、重要度の高い部品から設計上の配慮を確認します。
この準備によって、完成後に交換作業の問題が判明するリスクを減らし、装置の使用目的に合った保守性を確保しやすくなります。
工夫2:点検・交換作業に必要なスペースとアクセス経路を確保する
装置の保守性を左右する大きな要素が、部品へのアクセス性です。
部品が交換可能な構造であっても、作業者の手や工具が届かなければ、実際の交換作業は困難になります。そのため、装置製作では、部品の配置と周辺スペースを設計段階から確認する必要があります。
特に注意したいのは、装置内部の部品配置だけを見て交換性を判断しないことです。装置単体では十分な作業空間があっても、工場に設置すると壁や柱、隣接設備によって点検口が開かなくなる場合があります。
例えば、制御盤の扉を開く方向に別の設備が設置されていると、内部の部品を確認しにくくなります。装置背面に交換対象部品を配置した場合、設置後に背面へ回り込めないことも考えられます。
こうした問題を防ぐには、装置本体の寸法だけでなく、設置場所における保守作業空間も含めて検討することが重要です。
装置製作の依頼時には、設置場所の寸法、周辺設備との距離、搬入経路、床面の段差などを共有します。将来の設備増設によって作業空間が狭くなる可能性がある場合は、その条件も考慮します。
また、点検口やカバーの配置も保守性に関係します。交換頻度の高い部品に対して、必要以上に大きな外装部品を取り外さなければならない構造は、作業負担を増やす原因になります。
ただし、開口部を増やせばよいわけではありません。保護カバーには、可動部への接触防止や異物侵入防止などの役割があります。点検口を設ける場合は、安全機能や必要な保護性能を維持した構造にすることが前提です。
工具の使用空間にも注意が必要です。固定ねじが見える位置にあっても、工具を差し込む角度が確保できなければ、取り外しに時間がかかります。
奥まった位置のボルトやナット、周辺部品に囲まれた継手などは、組立時には問題がなくても、装置を設置した後の交換作業で扱いにくくなる場合があります。
設計レビューでは、部品をどの方向へ取り出すのか、周辺部品との干渉がないか、工具を操作できるかを確認します。必要に応じて、交換作業の姿勢や部品を保持する方法まで検討すると効果的です。
重量のあるモーターや機構部品については、取り外した部品を安全に移動できる経路も必要です。持ち上げ作業が想定される場合には、適切な吊り具や支持方法を検討し、交換中に周辺部品へ無理な荷重が加わらない構造にします。
交換部品を取り外す際、配線や配管が引っ張られる構造にも注意します。部品の移動方向と配線経路が干渉すると、別の部品を破損させるおそれがあります。
装置内部を清掃する必要がある場合は、清掃工具が届く範囲や汚れの排出方法も確認します。清掃が難しい場所に粉じんや切粉が蓄積すると、故障や動作不良につながる可能性があります。
設計図面だけでは作業性を判断しにくい場合、実寸を想定した配置確認や試作段階での交換作業を行うことが有効です。
装置製作の依頼先には、単に部品を配置するだけでなく、交換する人の動作まで考慮した設計を求めることが大切です。
工夫3:部品の共通化とユニット化で交換作業を簡単にする
装置の部品交換を効率化するには、部品の共通化とユニット化が有効です。
共通化とは、同じ機能や仕様を持つ部分に、できるだけ共通の部品を採用する考え方です。ユニット化とは、関連する部品を一定のまとまりとして構成し、必要に応じてまとめて取り外しや交換ができるようにする設計方法です。
例えば、装置内に複数のセンサーが使われている場合、要求仕様を満たす範囲で同じ種類のセンサーに統一できれば、交換部品の管理を簡素化できます。
取付金具や接続方法まで共通化されていれば、作業者が交換方法を覚えやすくなり、取り付け間違いを防ぐ効果も期待できます。
一方、用途ごとに異なる性能が必要な部品を無理に統一すると、装置本来の機能を損なう可能性があります。共通化は、性能、耐久性、使用環境、保守性を満たす範囲で進めることが重要です。
部品の型式だけでなく、ねじの種類や工具の使用方法を整理することも有効です。装置内で多数の異なる工具が必要になると、現場での準備や交換作業が複雑になります。
同一の固定方法を採用できる箇所では、使用工具を共通化することで保守作業を進めやすくなります。ただし、締結強度や緩み止めなどの要求が異なる場合には、それぞれに適した固定方式を優先する必要があります。
ユニット化も、修理のしやすさを高める方法の一つです。
例えば、駆動モーター、取付板、関連する機構部品を交換可能なユニットとして設計すれば、故障した部分をまとめて取り外し、別のユニットと交換できる構成にすることが可能です。
この方式では、装置停止中の作業をユニット交換に集中させ、取り外したユニットの詳しい点検や修理を別の場所で実施する運用も考えられます。
ただし、ユニット化すれば必ず交換時間が短くなるわけではありません。ユニット自体が大きく重い場合や、接続箇所が増える場合には、かえって作業が複雑になることがあります。
そのため、どの範囲を一つのユニットとするかは、故障の発生箇所、部品の重量、取り外し方向、調整作業の必要性を考慮して判断します。
ユニット交換を採用する場合、位置決め構造も重要です。交換のたびに複雑な芯出しや高さ調整が必要になると、交換作業自体は簡単でも復旧までに時間がかかります。
位置決めピンや基準面などを適切に設けることで、交換後の再現性を高められる場合があります。ただし、要求精度によっては交換後の測定や調整を省略できないため、必要な確認工程を明確にしておきます。
電気配線や流体配管の接続部分についても、交換作業を想定した構造が求められます。
取り外し可能な接続方式を採用する場合は、誤接続防止、接続部の保護、必要な保持力、耐環境性などを確認します。接続箇所を増やしすぎると、接触不良や漏れの発生要因が増える可能性もあるため、利便性と信頼性のバランスが必要です。
また、装置に採用する部品の供給継続性も考慮します。特殊仕様の部品だけで構成すると、将来の交換時に同等品を確保しにくくなる場合があります。
重要な部品については、代替品の使用可否や変更時に必要となる評価内容を依頼先と相談しておくことが望まれます。
このように、共通化とユニット化は単なる部品点数の削減ではなく、装置の修理方法や保守体制を含めて検討することが重要です。
工夫4:故障箇所を特定しやすい配線・表示・診断機能を整える
装置の修理時間を短縮するには、部品を交換しやすくするだけでなく、故障箇所を特定しやすくする工夫も必要です。
実際の故障対応では、部品交換よりも原因調査に時間がかかる場合があります。異常が発生しても、どの部品や回路に問題があるのか分からなければ、確認作業を繰り返すことになります。
そのため、装置製作を依頼するときは、配線の識別方法、異常表示、診断機能などを設計条件に含めることが効果的です。
まず重要なのが、配線と端子の識別です。
装置内部の配線に適切な識別表示があり、電気図面と対応していれば、保守担当者は確認対象を絞り込みやすくなります。
反対に、配線番号がない、端子表示と図面の記載が一致しない、改造後の配線変更が反映されていないといった状態では、故障調査が難しくなります。
装置製作の依頼時には、配線識別のルールと図面の記載方法を確認し、製作後の状態と図面が一致することを引き渡し条件にすることが重要です。
また、電源系統、制御信号系統、駆動系統などを適切に整理することで、点検時に確認する範囲を把握しやすくなります。配線の分離や保護については、電気的な安全性やノイズ対策の要求も踏まえて設計します。
次に検討したいのが、異常状態の表示方法です。
装置が停止したときに、単に「異常」と表示されるだけでは、どこから点検すべきか判断できません。
例えば、センサーの検出異常、駆動機構の動作未完了、温度の異常、通信の異常などを区別して表示できれば、保守担当者は原因調査の対象を絞りやすくなります。
ただし、表示された異常が必ずしも故障原因そのものを示すとは限りません。例えば、センサーの異常表示が出ても、実際には対象物の位置ずれや配線不良が原因の場合があります。
そのため、異常表示は原因を断定するものではなく、点検すべき範囲を示す情報として設計することが適切です。
装置の制御機能に余裕がある場合は、異常発生時刻や運転状態、検出値などの履歴を残すことも検討します。
異常が断続的に発生する装置では、現象が再現しないために原因調査が難しくなることがあります。発生時の状態を確認できれば、問題が起きた条件を整理しやすくなります。
例えば、特定の運転速度でだけ異常が発生する場合や、連続稼働後に動作不良が生じる場合には、運転条件と異常履歴を関連付けて確認することが有効です。
また、装置の点検に必要な測定箇所を設けることも保守性の向上につながります。
電気回路の状態を確認するための測定箇所や、流体圧力を点検するための接続部などを設ける場合は、保守担当者が安全に測定できる構造と手順を整える必要があります。
測定箇所があっても、危険な姿勢で作業しなければならない場合や、測定によって機器を損傷するおそれがある場合は、適切な診断構造とはいえません。
異常履歴を記録する場合には、記録容量や保存期間、電源停止時の保持方法なども確認します。履歴が残る設計でも、必要なタイミングで情報を取得できなければ、十分に活用できません。
装置製作の依頼先と相談するときは、故障時に誰が、どの情報を使って、どこまで原因調査を行うのかを明確にすることが大切です。
故障箇所を特定しやすい装置は、修理時間の短縮だけでなく、不要な部品交換の抑制や故障原因の再発防止にも役立ちます。
工夫5:交換手順書・図面・予備品管理を引き渡し条件に含める
装置の構造が保守しやすく設計されていても、交換手順や必要な情報が残されていなければ、長期間にわたって安定した保守を行うことは難しくなります。
そのため、装置製作の依頼では、完成した装置だけでなく、保守に必要な資料や情報の引き渡し範囲も明確にすることが重要です。
まず確認したいのが、装置の構造を理解するための図面です。
機械図面、電気図面、配線図、配管図、部品表などは、故障箇所の調査や交換部品の特定に必要となります。
ただし、設計途中の図面と実際に完成した装置の構成が異なる場合があります。製作中に変更が発生した場合は、最終的な装置の状態を反映した図面を受け取ることが重要です。
特に、現場調整によって部品の位置や配線接続が変更された場合、その内容が図面に反映されていないと、将来の修理で混乱する可能性があります。
次に必要なのが、交換手順書です。
交換手順書には、作業開始前の安全確認、必要な工具、取り外す部品、作業順序、取り付け時の注意点、交換後の確認方法などを記載します。
例えば、ベルト交換が必要な装置では、交換前の停止処置だけでなく、張力の調整方法や交換後の確認条件が重要です。
センサー交換では、取付位置の基準や調整方法、動作確認の手順が必要になります。
単に部品の取り外し方を記載するのではなく、交換前の状態から正常な運転状態へ戻すまでの作業を一連の手順として整理することが大切です。
また、交換後の品質確認が必要な装置では、動作確認だけでは不十分な場合があります。検査装置であれば測定精度の確認、位置決め装置であれば繰り返し位置決め精度の確認など、装置の用途に応じた復旧判定が必要です。
交換手順書には、必要な調整値や判定基準を記載し、作業者によって確認内容が変わらないようにします。
予備品の管理方法も、依頼時に検討したい項目です。
装置が故障した際、交換部品をすぐに確保できなければ、装置の構造が優れていても復旧までに時間がかかります。
そのため、交換頻度が高い部品や、故障時に装置全体が停止する重要部品については、予備品を保有する必要性を検討します。
ただし、すべての部品を予備として保管することが適切とは限りません。保管期間中に劣化する部品や、保管環境に制約がある部品も存在します。
予備品を選定するときは、故障の影響、調達に必要な期間、保管条件、交換作業の難易度などを考慮します。
さらに、交換用部品の型式や仕様だけでなく、互換性の条件も確認します。部品の仕様変更によって取り付け寸法や電気的な条件が変わる場合には、交換前に適合性を評価する必要があります。
保守資料の管理方法も重要です。紙の資料だけで運用すると、改訂履歴を把握しにくくなる場合があります。一方、電子データで管理する場合も、最新版を識別できなければ古い手順を参照するおそれがあります。
図面や手順書には改訂番号や更新日を設定し、装置に対する変更と資料の更新を対応付けることが望まれます。
引き渡し時には、実際の交換対象部品を使って保守手順を確認することも有効です。作業を実施することで、工具が届かない、記載された順序では部品を取り外せない、交換後の調整方法が分かりにくいといった問題を発見できる場合があります。
このように、交換手順書、完成図面、予備品情報、復旧確認方法をまとめて整備することで、装置導入後の保守を継続しやすくなります。
保守性と安全性を両立させる装置設計の注意点
装置製作で部品交換や修理のしやすさを高める際には、安全性との両立が欠かせません。
点検口を増やす、カバーを簡単に取り外せるようにする、部品を外部に配置するといった変更は、作業性を改善する一方で、設計によっては危険源への接近を容易にする可能性があります。
そのため、保守性の向上を目的とした設計変更でも、装置全体のリスクを評価する必要があります。
例えば、駆動機構の近くに点検口を設ける場合、装置の運転中に可動部へ接触する危険がないかを確認します。必要に応じて、保護カバーの構造や開閉状態を検出する安全機能などを検討します。
ただし、安全機能の構成は装置の危険源や使用条件によって異なるため、特定の方式を採用するだけで安全が確保できるわけではありません。
また、装置を停止しただけでは、すべての危険がなくなるとは限りません。
電気回路に残るエネルギー、空気圧や油圧の残圧、ばねに蓄積された力、高温部品、重力によって動く機構などは、保守作業中の危険につながる可能性があります。
部品交換のために保護カバーを開く前には、対象となるエネルギー源を把握し、必要な隔離、放出、固定、状態確認などを実施できる構造と手順を整える必要があります。
特に、空気圧で動作する機構では、供給を停止しても回路内に圧力が残る場合があります。交換作業の前に適切な方法で残圧を処理できるよう、回路構成と手順を検討することが重要です。
重量物の交換でも、安全性への配慮が必要です。
交換する部品が落下する危険がある場合、仮固定や支持を行える構造が求められます。作業者が無理な姿勢で重量物を保持しなければならない設計は、事故のリスクを高める可能性があります。
また、保守作業中に安全機能を一時的に解除する必要がある装置では、通常運転とは異なる危険を考慮し、適切な保守モードや作業手順を検討する必要があります。
安全機能を無効化したまま通常運転へ戻してしまうことがないよう、復旧時の確認方法も明確にします。
装置製作を依頼する担当者は、交換しやすいことと、安全に交換できることを区別して考える必要があります。
保守性に優れた装置とは、作業工程が少ない装置というだけではありません。必要な安全措置を確実に実施でき、作業者が危険な姿勢や操作を避けながら交換できる装置です。
そのため、設計レビューでは交換時間だけでなく、停止方法、危険源への対策、作業姿勢、復旧後の安全確認まで含めて評価することが重要になります。
装置製作の依頼先と確認したい設計レビューと受入検査
装置の保守性を高めるためには、依頼内容を仕様書に記載するだけでなく、設計から完成までの各段階で確認することが重要です。
装置製作では、機械設計、電気設計、制御設計、組立、調整など、複数の工程が関係します。それぞれの担当者が個別に作業を進めるだけでは、装置全体としての保守性が十分に確保されない場合があります。
例えば、機械設計では部品の交換空間を確保していても、電気設計の段階で配線ダクトが配置され、工具を使用できなくなることがあります。
また、制御盤の配置を決めた後に周辺の機械構造が変更され、扉の開閉や内部部品の交換が難しくなる場合もあります。
こうした問題を防ぐには、設計段階で機械、電気、制御の各要素を合わせて確認することが有効です。
基本設計の段階では、装置全体の配置、保守対象部品、点検口、作業空間などを確認します。詳細設計の段階では、具体的な取り外し方向、工具の使用空間、配線や配管との干渉、交換後の調整方法まで確認します。
設計レビューでは、装置を組み立てる順序だけでなく、故障した部品を取り外す順序を想定することが重要です。
組立時には装置の外装や周辺部品が取り付けられていないため、内部部品へ容易にアクセスできます。しかし、完成後にはカバーや配線、配管などが追加され、同じ作業を行えない場合があります。
そのため、完成状態を前提とした交換方法を確認する必要があります。
必要に応じて、設計データ上で部品の移動経路や工具の干渉を確認します。ただし、設計データだけでは作業者の姿勢や実際の工具操作を十分に判断できないこともあるため、重要な箇所は実機で確認することが望まれます。
装置完成後の受入検査では、指定した保守作業が実施できるかを確認します。
例えば、交換頻度の高い部品について、実際に取り外しと再取り付けを行い、周辺部品を破損させずに作業できるかを評価します。
交換後には、必要な調整や動作確認を行い、装置が要求仕様を満たす状態へ復旧できることを確認します。
また、異常表示や診断機能についても、あらかじめ定めた方法で確認することが重要です。安全性や機器保護に配慮した試験条件を設定し、想定した異常を適切に検出・表示できるかを確認します。
保守資料については、提出された図面や手順書が実際の装置と一致しているかを確認します。部品番号が一致していても、取り付け位置や接続方法が異なる場合には、修理時の混乱につながります。
さらに、装置を現場に設置した後にも、保守空間が確保されているかを確認することが大切です。
製作工場では問題なく開閉できた点検口でも、設置先の壁や周辺設備と干渉する可能性があります。装置単体の受入検査と設置後の確認を適切に組み合わせることで、実際の運用環境における保守性を評価できます。
依頼先を選定する際には、保守性を考慮した設計経験だけでなく、交換作業の検証や保守資料の作成まで対応できるかを確認するとよいでしょう。
また、設計変更が発生した際に、保守性への影響をどのように確認するかも重要な判断材料になります。
装置製作では、途中で部品や構造が変更されることがあります。変更後の配置によって交換空間が狭くなったり、特殊な工具が必要になったりする場合があるため、変更内容と保守性への影響を合わせて確認する仕組みが求められます。
このように、設計レビューと受入検査を通じて保守性を確認することで、装置の完成後に発見される問題を減らしやすくなります。
まとめ:装置製作は導入後の保守まで考えて依頼する
装置製作を依頼するときは、要求する機能や性能だけでなく、導入後の部品交換や修理のしやすさも重要な設計条件として扱うことが大切です。
保守性を高めるためには、まず交換が必要になる部品と保守条件を整理し、どの作業を容易にする必要があるのかを明確にします。
そのうえで、作業空間やアクセス経路を確保し、部品の共通化やユニット化を適切に取り入れることで、交換作業の複雑さを減らすことができます。
また、故障箇所を特定しやすい配線や表示、診断機能を整えることも重要です。修理に必要な時間は、部品交換だけでなく、故障原因の調査や交換後の調整にも左右されます。
さらに、完成図面、交換手順書、予備品情報などを整備しておくことで、装置の導入後も適切な保守を継続しやすくなります。
これらの工夫を実際の装置に反映するには、製作依頼先との情報共有が欠かせません。設計段階で保守条件を伝え、設計レビューや受入検査を通じて、想定した交換作業が安全かつ確実に実施できることを確認する必要があります。
装置を設置した後は、点検口の位置、交換対象部品の配置、周辺設備との距離など、現場の状態を記録しておくことも役立ちます。設置状況や施工時の変更内容が分かる記録は、将来の保守計画や装置改修を検討する際の参考になります。
こうした現場情報の記録には、現場写真・位置情報・施工記録を管理できるLRTK Phoneの活用も選択肢になります。装置の設置位置や周辺状況を位置情報とともに記録し、施工時の状態を整理しておくことで、後から現場条件を確認しやすくなります。なお、機器内部の保守図面や交換履歴などは、必要に応じて別途管理することが重要です。
装置製作の品質は、完成時に正常に動くことだけで決まるものではありません。長期間使用する中で、点検や部品交換を安全かつ確実に行えることも重要です。
装置製作を依頼する段階から保守性を具体的な要求事項として整理し、製作依頼先と十分にすり合わせることで、安定稼働と維持管理のしやすさを両立した装置づくりにつなげられます。
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