LRTKレフィクシア株式会社

電子回路設計の依頼で電源変動による誤動作を減らす5つの設計条件

電子回路で電源変動による誤動作が発生する原因

電子回路設計を外部の設計会社へ依頼する際、回路機能や使用部品、基板寸法などを詳しく指定していても、電源変動への対策が十分に検討されていないことがあります。試作段階では正常に動作していた回路が、実際の装置に組み込んだ途端に再起動したり、通信が途切れたり、センサーの測定値が不安定になったりする場合があります。

こうした問題の原因の一つが、電源電圧の変動です。

電子回路は、使用する半導体や周辺部品ごとに正常動作できる電圧範囲が定められています。電源電圧がその範囲を外れると、内部の論理回路や発振回路、アナログ回路などが想定どおりに動作しなくなる可能性があります。

特に、制御回路、通信回路、計測回路、モーター駆動回路などを一つの基板に搭載する場合、負荷電流の変化によって電源電圧が瞬間的に変動しやすくなります。

例えば、通信回路が送信を開始した瞬間に消費電流が増加し、電源ラインの電圧が一時的に低下することがあります。また、モーターや電磁弁などの負荷を切り替える際には、配線の抵抗やインダクタンス、誘導性負荷から発生する過渡電圧などが電源品質に影響します。

電源変動による誤動作は、必ずしも装置全体の停止として現れるわけではありません。演算処理の異常、通信データの欠落、アナログ測定値の変動、設定データの破損、出力信号の予期しない変化など、さまざまな症状として現れます。

また、発生時間が非常に短い電圧変動は、一般的な電圧表示だけでは確認できない場合があります。平均的な電源電圧が正常に見えていても、短時間の電圧低下やノイズによって誤動作が発生することがあります。

このような問題を防ぐには、電子回路設計の依頼段階から、電源の使用条件、電源回路の性能、基板配線、異常検出、評価方法を具体的に定めることが重要です。

電源変動対策は、単にコンデンサを追加したり、高性能な電源部品を選定したりすれば完了するものではありません。電源から負荷までの経路全体を対象として、どのような変動が発生し、どこまでの変動を許容するのかを明確にする必要があります。

ここでは、電子回路設計を依頼する際に確認したい5つの設計条件を、実務上の確認方法とともに解説します。

設計条件1:入力電源の変動範囲と許容条件を明確にする

電源変動による誤動作を防ぐ最初の条件は、電子回路へ供給される入力電源の仕様を明確にすることです。

電子回路設計では、公称電圧だけを指定してしまうことがあります。しかし、実際の電源電圧は常に一定とは限りません。電源装置の出力精度、配線の電圧降下、周囲温度、接続される負荷、電源切り替えなどによって変動します。

例えば、公称12Vの電源を使用する装置でも、実際の入力電圧が常に12Vで維持されるとは限りません。負荷電流が増えたときの電圧低下や、外部電源の特性による出力変動などを考慮する必要があります。

設計を依頼する際には、公称電圧に加えて、通常動作を保証する最小電圧と最大電圧を指定することが重要です。さらに、その範囲を一時的に外れた場合に、回路が動作を継続する必要があるのか、安全に停止すればよいのかも区別します。

この区別が曖昧なままだと、設計側は通常動作範囲だけを前提に電源回路を構成し、実際の運用時に発生する瞬間的な電圧低下へ十分に対応できない場合があります。

入力電源の仕様では、電圧変動の大きさだけでなく、継続時間も重要です。

例えば、比較的小さな電圧低下が長時間続く場合と、大きな電圧低下が極めて短時間だけ発生する場合では、必要な対策が異なります。前者では電源変換回路の入力電圧範囲や発熱条件が重要になり、後者では蓄積エネルギーや電源回路の過渡応答が重要になります。

また、外部電源と内蔵電池を切り替える装置では、切り替え時に電源が一時的に途切れる可能性があります。切り替え方式によっては、電源電圧が不連続に変化するため、その間も動作を維持する必要があるかどうかを事前に決める必要があります。

入力電源に長いケーブルを使用する場合には、ケーブル抵抗や接点抵抗による電圧降下も考慮します。負荷電流が大きくなるほど電圧降下は増加するため、電源装置の出力端子では正常な電圧が確認できても、電子回路の入力端子では十分な電圧が確保できないことがあります。

さらに、逆接続、過電圧、電源投入時の突入電流など、通常動作とは異なる条件についても確認が必要です。これらは電源変動とは別の故障要因になる場合がありますが、入力保護回路や電源構成を決定するうえで密接に関係します。

設計会社へ依頼する際には、通常動作範囲、短時間の変動条件、異常電圧時の動作、復帰条件を分けて仕様化することが望ましいです。

例えば、一定範囲内の入力電圧では全機能を正常に動作させ、それを下回った場合は重要なデータを保護して停止し、電源が回復した後に所定の手順で再起動する、といった条件を定義します。

こうした仕様を最初に共有しておけば、設計担当者は電源変換方式、保護回路、電源監視回路、必要な容量などを合理的に検討できます。

電源変動対策の出発点は、電源電圧を一定と仮定することではなく、実際に起こり得る変動を設計条件として扱うことです。

設計条件2:電源回路の出力安定性と負荷応答性能を確保する

入力電源の条件を整理した後は、電子回路内部で使用する電源の安定性を確認します。

一般的な電子回路では、外部から供給される電圧を、そのまま全ての部品へ供給するとは限りません。制御回路、通信回路、センサー回路など、それぞれが必要とする電圧へ変換して使用します。

この電源変換回路の性能が不足すると、入力電源が安定していても、内部の電源電圧が変動することがあります。

特に確認したいのが、負荷応答性能です。

負荷応答とは、消費電流が変化したときに、電源回路が出力電圧をどの程度維持できるかを示す特性です。負荷電流が急激に増加すると、電源回路が直ちに追従できず、一時的に出力電圧が低下することがあります。

反対に、負荷電流が急激に減少した場合には、出力電圧が一時的に上昇することもあります。

そのため、電源回路の設計では、平均消費電流だけでなく、最大消費電流、瞬間的な電流変化量、変化速度を確認する必要があります。

例えば、通信機能を備えた機器では、待機中と送信中で消費電流が大きく異なる場合があります。平均電流だけを基準に電源部品を選定すると、送信開始時の急激な負荷増加によって電源電圧が低下する可能性があります。

電子回路設計を依頼する際には、各負荷の動作状態と電流変化を設計会社へ伝えることが重要です。

電源回路には、定格電流だけでなく、過電流保護の作動条件、入力電圧低下時の動作、発熱特性なども関係します。

特に、最大負荷電流が電源回路の出力能力に近い場合、部品の温度上昇や入力電圧の変化によって、想定した出力性能を維持できなくなることがあります。

そのため、定格値だけを満たす設計ではなく、使用温度や負荷条件を考慮した余裕を確保することが重要です。ただし、過剰な容量を持つ部品を選べば必ず安定するわけではなく、制御方式や周辺部品との組み合わせも確認する必要があります。

電源回路の方式によっては、入力電圧と出力電圧の差が不足すると、出力電圧を維持できなくなります。入力電源が低下する環境では、必要な電圧差や変換可能な入力範囲を確認しておく必要があります。

また、電源回路の出力に接続するコンデンサは、単に容量が大きければよいわけではありません。使用する電源制御回路によって、推奨される容量、等価直列抵抗、配置条件などが異なります。

適切でないコンデンサの組み合わせは、電源回路の応答性能を悪化させたり、制御ループの安定性へ影響したりする場合があります。

設計会社には、選定した電源回路が実際の入力電圧範囲と負荷条件で安定動作することを確認してもらう必要があります。

その際、定常状態の出力電圧だけでなく、負荷が急変したときの最大電圧低下量、最大電圧上昇量、回復までの時間を評価対象とします。

電源変動による誤動作を減らすには、必要な電流を供給できることに加え、負荷が変化した瞬間にも各部品の許容電圧範囲を維持できることが重要です。

設計条件3:電源配線とデカップリングで電圧変動を抑える

電子回路の電源品質は、電源回路そのものだけで決まるわけではありません。プリント基板の配線構造やコンデンサの配置によっても、大きく変わります。

設計を依頼する際には、回路図だけでなく、基板レイアウトを含めた電源変動対策を確認することが重要です。

電源配線には抵抗やインダクタンスが存在します。負荷電流が流れると配線抵抗による電圧降下が生じ、電流が急激に変化すると配線インダクタンスの影響によって過渡的な電圧変動が発生します。

特に、消費電流が短時間で大きく変化する回路では、電源ラインのインピーダンスが問題になることがあります。

例えば、制御用半導体の近くに適切なデカップリングコンデンサが配置されていない場合、内部回路の動作に伴う瞬間的な電流を遠くの電源回路から供給する必要があります。

その結果、配線のインダクタンスなどによって局所的な電源電圧が変動し、回路の安定動作へ影響する可能性があります。

デカップリングコンデンサは、こうした局所的な電流変動を補うために使用されます。電源端子の近くに配置することで、短時間の電流需要に対応し、電源電圧の変動を抑える役割を果たします。

ただし、必要なコンデンサ容量や種類は、対象となる半導体の特性や電源配線の構造によって異なります。

小容量のコンデンサは比較的高い周波数帯域の電流変動への対応に用いられることが多く、大容量のコンデンサは比較的長い時間の負荷変動を補う目的で使用されます。

実際には、コンデンサの等価直列抵抗や寄生インダクタンス、周波数特性なども影響するため、容量だけで役割を判断することはできません。

また、コンデンサの実効容量は、印加される直流電圧や温度条件によって変化する場合があります。部品表に記載された公称容量だけでなく、実際の使用条件で期待できる容量を確認することが重要です。

基板レイアウトでは、電源ラインとグラウンドの戻り経路を適切に構成する必要があります。

大電流が流れる負荷回路と、微小な信号を扱うアナログ回路が不適切な経路を共有すると、共通インピーダンスによる電位変動が測定精度や制御動作へ影響する場合があります。

そのため、大電流の経路をできるだけ短くし、ノイズの影響を受けやすい回路から適切に分離することが重要です。

ただし、グラウンドを単純に分割すれば必ず改善するわけではありません。信号の戻り電流がどこを流れるかを考慮せずに分割すると、かえって電流経路が長くなり、ノイズが増加する場合があります。

設計会社には、電源電流と信号の戻り経路を考慮した基板レイアウトを依頼することが望ましいです。

また、電源回路の入力側と出力側では、必要な配線条件が異なる場合があります。特にスイッチング動作を利用する電源回路では、電流が急激に変化するループを短く構成することが重要です。

設計した回路図が適切でも、基板上の配線が不適切であれば、電源電圧の変動やノイズが増加する可能性があります。

電子回路設計の依頼では、回路図の完成だけを設計品質の判断基準にせず、電源配線、コンデンサ配置、グラウンド構造まで含めて確認することが重要です。

設計条件4:電源監視とリセット制御で異常動作を防止する

電源変動による誤動作を減らすには、電源電圧を安定させる対策だけでなく、電源が正常範囲を外れた場合の動作を設計することも重要です。

どれだけ電源回路を工夫しても、外部電源の停止や大きな瞬間電圧低下など、全ての変動を吸収できるとは限りません。

そのため、電源が不足した状態で電子回路が不定な動作を続けないようにする仕組みが必要です。

代表的な対策が、電源監視回路とリセット制御です。

電源監視回路は、電源電圧が設定した条件を満たしているかを監視し、必要に応じて制御回路をリセット状態に保持したり、負荷の動作を停止させたりするために使用されます。

例えば、制御用半導体の電源電圧が正常動作範囲を下回った場合、内部処理が不安定になる前にリセットを実行することで、予期しない制御信号の出力を防ぎやすくなります。

ただし、リセットを実行すれば全ての異常動作を防げるわけではありません。リセット信号の有効電圧範囲や周辺回路の動作条件も考慮する必要があります。

設計時には、リセットを開始する電圧、解除する電圧、解除までの待機時間などを適切に設定します。

電源電圧がしきい値付近で繰り返し変動する場合には、リセットと解除が短時間で何度も繰り返される可能性があります。このような不安定動作を防ぐため、しきい値に適切な差を設ける方法や、一定時間の安定を確認してから解除する方法が用いられます。

複数の電源電圧を使用する電子回路では、電源投入順序にも注意が必要です。

例えば、制御回路と周辺回路が異なる電源電圧で動作する場合、電源の立ち上がり順序によっては、信号端子を通じて意図しない電流が流れることがあります。

使用する部品の仕様によっては、電源が供給されていない状態で信号電圧が入力されることを避ける必要があります。

そのため、設計会社には、各電源の投入順序、停止順序、電源が不安定な期間の信号状態を確認してもらうことが重要です。

また、電源電圧が一度低下した後、回復したときにどのような手順で動作を再開するかも重要な設計条件です。

例えば、通信機器では、電源復帰後に通信回路を初期化し、必要な設定を読み込み、通信相手との接続を再確立する必要がある場合があります。

制御装置では、電源復帰と同時にモーターや電磁弁が動作すると危険な場合があるため、出力を安全な状態に保持し、必要な条件を確認してから運転を再開する構成が求められます。

さらに、不揮発性メモリへの書き込み中に電源が低下すると、保存データが不完全になる可能性があります。

この場合には、電源低下を検出して書き込みを停止する仕組みや、データの整合性を確認する方法、更新途中でも復旧できる保存方式などを検討します。

電源監視は、単に電圧低下を検出する機能ではありません。電源異常時に何を停止し、何を保護し、どのような条件で復帰するかまで含めた設計が重要です。

設計条件5:実使用環境を想定した電源変動試験を設計に組み込む

電源変動に対する設計条件は、回路図上の検討だけで完結させないことが重要です。

設計段階で必要な対策を盛り込んでいても、実際の部品特性、基板配線、接続負荷、周囲環境などによって、想定とは異なる電源変動が発生する場合があります。

そのため、電子回路設計を依頼する際には、試作基板を使った電源変動試験をあらかじめ設計業務の範囲に含めることが望ましいです。

試験では、通常動作条件だけでなく、電源変動が発生しやすい条件を意図的に再現します。

例えば、入力電圧を通常動作範囲の下限付近まで低下させた状態で、消費電流の大きな負荷を動作させる試験が考えられます。

この条件では、電源回路の入力余裕が小さくなり、負荷増加による電圧低下の影響が現れやすくなることがあります。

また、通信開始時、モーター起動時、複数の機能を同時に動作させたときなど、実際に電流が急変する場面を評価する必要があります。

ここで重要なのは、試験条件と合否基準を事前に決めておくことです。

単に「電源変動試験を実施する」という依頼だけでは、設計会社によって試験範囲や判定方法が異なる可能性があります。

例えば、入力電源をどの範囲で変化させるのか、変化速度をどの程度にするのか、電圧低下を何回繰り返すのか、各条件でどのような機能を動作させるのかを整理します。

合否基準についても、誤動作が発生しないことだけでなく、各電源電圧が許容範囲に収まること、異常発生時に安全な状態へ移行すること、電源復帰後に所定の動作へ戻ることなどを具体化します。

なお、入力電圧が通常動作保証範囲を外れた場合には、必ずしも全機能の動作継続を要求する必要はありません。設計仕様に応じて、安全停止や自動復帰を正常な動作として定義することもできます。

さらに、試験時には測定波形を記録することが重要です。

電源電圧が瞬間的に低下していても、装置の動作状態だけを観察していると問題を見逃す場合があります。波形を記録しておけば、電圧低下量、継続時間、回復特性などを確認できます。

試験では、常温だけでなく、必要に応じて高温や低温での評価も検討します。

電源回路に使用する半導体やコンデンサなどは、温度によって特性が変化する場合があります。常温では十分な余裕があっても、使用温度の上限や下限付近では電源品質が変化する可能性があります。

また、量産を予定している場合には、試作基板一枚の結果だけで十分と判断せず、必要に応じて部品ばらつきや複数基板での再現性も評価します。

試験結果に問題が見つかった場合、電源回路の設定、コンデンサ構成、基板レイアウト、制御ソフトウェアなど、原因に応じた改善が必要です。

この改善作業を円滑に進めるためにも、設計依頼の段階で測定項目、記録方法、判定基準、問題発生時の対応範囲を合意しておくことが重要です。

電子回路設計の依頼前に整理しておきたい仕様情報

電源変動に強い電子回路を設計してもらうには、設計会社へ渡す情報の具体性が重要になります。

発注側が装置の使用条件を十分に伝えていない場合、設計担当者は一般的な使用環境を想定して回路を構成することになります。その想定が実際の使用条件と異なると、試作後の追加対策が必要になる場合があります。

まず整理したいのが、使用する電源の種類です。

外部電源装置を使用するのか、電池を使用するのか、装置内部の別基板から電源を供給するのかによって、想定される電源変動は異なります。

外部電源を使用する場合には、電源装置の出力仕様に加えて、接続ケーブルの長さや太さ、接続方式なども重要です。

電池を使用する場合には、充電状態や放電状態による電圧変化、負荷電流による電圧低下、低温時の特性などを考慮する必要があります。

次に、電子回路へ接続する負荷の情報を整理します。

制御回路や通信回路だけでなく、モーター、表示器、照明、センサーなど、電源を消費する全ての機能について、想定される動作状態を共有します。

特に、短時間だけ大きな電流を必要とする負荷や、複数の負荷が同時に動作する可能性がある場合には、その条件を明確にしておくことが重要です。

平均消費電流だけでは、瞬間的な電源変動を評価するための情報として不足する場合があります。

さらに、装置の誤動作として何を許容しないのかも整理します。

例えば、短時間の電源低下が発生しても計測データを失ってはいけない装置と、一時停止しても安全に再起動できればよい装置では、求められる対策が異なります。

通信が一時的に切断されることを許容できるのか、測定データの欠落を認めないのか、電源復帰後に自動的に運転を再開する必要があるのかといった条件は、回路構成に直接影響します。

電源変動対策では、全ての状況で動作を継続させることが唯一の正解ではありません。用途に応じて、動作継続、安全停止、データ保護、自動復帰などの優先順位を決める必要があります。

設計依頼書には、こうした動作要求をできるだけ具体的に記載することが望ましいです。

また、完成時に受け取る設計資料についても確認しておきます。

回路図、部品表、基板設計データだけでなく、主要電源の設計根拠、負荷条件、試験結果などを共有してもらうことで、後の設計変更や量産移行が進めやすくなります。

設計会社がどのような電源変動を想定し、どの範囲まで動作を保証する設計としているのかを、発注側でも把握できる状態にすることが重要です。

試作評価で確認したい電源品質と測定方法

試作基板が完成した後は、電源電圧の実測によって設計条件を満たしているか確認します。

ここで注意したいのは、電源電圧の測定位置です。

電源回路の出力端子で正常な電圧が得られていても、負荷部品の電源端子では配線の影響によって電圧が変動している場合があります。

そのため、測定対象は電源回路の出力だけでなく、制御用半導体や通信回路など、誤動作が問題となる部品の電源端子付近まで含めることが重要です。

測定時には、時間的な電圧変化を確認できる測定器を使用し、必要な時間分解能と周波数帯域を確保します。

一般的な電圧計では確認しにくい短時間の電圧低下やノイズを調べる場合、波形観測が必要です。

また、測定器の接地方法や測定用配線にも注意が必要です。

測定用のグラウンド配線が長い場合、周囲のノイズや測定ループの影響によって、実際の電源変動とは異なる波形が観測されることがあります。

特に高周波成分を含む電源ノイズを測定する場合には、測定器の接続方法を適切に選択し、測定そのものが結果へ与える影響を小さくする必要があります。

測定対象によっては、差動測定や絶縁された測定方法など、安全性と測定精度を考慮した構成が必要です。

評価では、装置が正常に動作しているときの波形だけでなく、起動時、停止時、負荷切り替え時、通信開始時など、電源電流が変化する瞬間を確認します。

例えば、通信開始時に誤動作が発生する場合には、その時刻に電源電圧の低下が発生していないかを調べます。

必要に応じて、電源電圧とリセット信号、負荷制御信号などを同時に観測すると、誤動作の原因を絞り込みやすくなります。

ただし、電源電圧の変動と誤動作が同じ時刻に観測されたからといって、直ちに因果関係が確定するわけではありません。

負荷切り替えによって電源電圧と信号ノイズが同時に変化している可能性もあるため、配線条件や負荷条件を変更するなどして原因を検証することが重要です。

また、電源電圧を意図的に変化させる試験では、通常動作を保証する範囲内の試験と、異常時の安全動作を確認する試験を区別します。

通常動作範囲内では、各機能が仕様どおり動作することを確認します。一方、保証範囲外では、必要な保護動作や復帰動作が実行されるかを確認します。

試験結果は、測定条件とセットで保存することが重要です。

入力電圧、負荷状態、周囲温度、基板の識別情報、測定位置などを記録しておけば、後から問題が発生した場合にも比較しやすくなります。

試作評価は、回路が一度正常に動いたことを確認する作業ではありません。実際に想定される電源変動に対して、どの程度の余裕を持って安定動作できるのかを確認する工程です。

電源変動対策で見落としやすい設計上の注意点

電子回路設計の依頼では、電源変動対策を実施しているつもりでも、重要な条件を見落としていることがあります。

代表的なのが、コンデンサ容量を増やすだけで対策が完了したと判断することです。

電源ラインへコンデンサを追加すると、一部の電圧変動が改善する場合があります。しかし、電圧変動の原因が配線抵抗や電源回路の出力能力不足にある場合、コンデンサの追加だけでは十分な改善が得られないことがあります。

また、容量を大きくすると、電源投入時の充電電流が増加する場合があります。結果として、電源装置の電流制限機能が作動したり、起動が不安定になったりする可能性もあります。

そのため、電源変動の原因を確認したうえで、必要な容量と配置を決めることが重要です。

次に注意したいのが、電源回路と制御ソフトウェアを別々に検討してしまうことです。

電源電圧が低下した際、ハードウェア側でリセットを実行できても、ソフトウェア側が異常終了や再起動を想定していなければ、正常な復帰が難しくなることがあります。

例えば、設定情報の保存中に電源が低下した場合、再起動後に保存内容の整合性を確認する処理が必要になることがあります。

また、異常停止から復帰した際に、過去の制御状態をそのまま使用してよいのか、必ず初期化すべきなのかも用途によって異なります。

こうした条件は、回路設計担当者とソフトウェア担当者の間で共有しておくことが重要です。

さらに、試作時に使用した電源装置と、実際に使用する電源が異なる場合にも注意が必要です。

実験室の電源装置では安定動作していても、量産装置に組み込む電源では出力インピーダンスや過電流保護特性などが異なり、負荷変動時の挙動が変わる可能性があります。

接続ケーブルやコネクタが変わるだけでも、電源電圧の変動条件は変化します。

したがって、最終的には実際の装置構成に近い条件で電源品質を確認することが望ましいです。

もう一つの注意点は、設計変更による影響です。

部品の入手性や製造上の都合によって電源回路の部品を変更した場合、出力容量、周波数特性、負荷応答、起動特性などが変化する可能性があります。

電源部品の変更を単純な置き換えとして扱わず、必要に応じて電源変動試験を再実施することが重要です。

特に、量産段階でコンデンサや電源制御部品を代替する場合には、定格値だけでなく、実使用条件での特性を比較する必要があります。

電源変動対策は、試作段階で一度確認すれば終わるものではありません。設計変更や部品変更によって電源品質が変わる可能性を考慮し、変更内容に応じた再評価を実施できる管理体制が重要です。

まとめ:電源変動に強い電子回路は仕様定義と実測評価が重要

電子回路設計を依頼する際、電源変動への対策は製品の安定動作を左右する重要な設計項目です。

電源電圧が正常に見えていても、瞬間的な負荷電流の増加、配線による電圧降下、電源回路の応答遅れ、電源投入時の不安定な状態などによって、誤動作が発生する可能性があります。

こうした問題を減らすためには、入力電源の変動範囲を明確にし、負荷応答に適した電源回路を構成し、基板配線とデカップリングを適切に設計することが必要です。

さらに、電源電圧が許容範囲を外れた場合の監視とリセット制御を設け、実使用環境を想定した試験によって対策の効果を確認することが重要になります。

特に、電子回路設計を外部へ依頼する場合には、「電源を安定させる」「誤動作しないようにする」といった抽象的な要求だけではなく、どのような電源変動を想定し、どの状態まで正常動作を求めるのかを具体的に伝えることが大切です。

また、全ての電源変動に対して動作を継続させる必要があるとは限りません。用途によっては、異常を検出して安全に停止し、電源回復後に確実に復帰できることが重要な設計目標になります。

そのため、電源変動への耐性を考える際には、回路の安定性だけでなく、データ保護、安全性、復帰動作まで含めた要求仕様を整理することが望ましいです。

設計会社との打ち合わせでは、電源条件、負荷条件、基板レイアウト、異常時の動作、試験方法について認識を合わせ、試作評価で確認できる条件として定義することが重要です。

こうした取り組みによって、試作後の原因調査や回路変更を減らし、安定した製品開発につなげやすくなります。

また、電子回路を搭載した装置が屋外の建設現場や設備管理現場などで使用される場合には、電源トラブルが発生したときの現場状況を正確に記録することも、原因調査や改善活動に役立ちます。

例えば、電源設備の設置状況、配線経路、装置の設置位置、接続状態などを写真と位置情報で管理しておくことで、トラブル発生時の条件を後から確認しやすくなります。

レフィクシア株式会社のLRTK Phoneは、現場写真と位置情報を関連付け、施工記録を管理するための製品です。電子回路の電源波形そのものは適切な測定器で確認する必要がありますが、LRTK Phoneを活用して設備の設置状況や配線変更前後の現場写真、位置情報を記録することで、現場での状況把握や関係者間の情報共有を支援できます。

電子回路そのものの信頼性を高める設計と、実際の使用現場における記録管理を組み合わせることで、問題発生時の調査を進めやすくなり、継続的な品質改善にもつなげられます。

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