受託製造を相談するときは、加工できる材質や寸法、品質保証体制、生産能力、納期対応などに目が向きやすいものです。しかし、金型や専用治具を使って製造する製品では、それらを量産中だけでなく生産休止中もどのように管理するのかが、長期的な安定供給に大きく関わります。
金型・治具は、一度作って終わるものではありません。継続生産で繰り返し使うほか、量産終了後に補修部品を追加生産したり、数年後に再発注したりするときにも必要になる可能性があります。保管方法が不十分で錆や腐食が進んでいたり、所在が分からなくなっていたりすれば、再生産を予定どおり始められないことがあります。
また、発注者が所有する金型・治具を受託製造先へ預ける場合には、所有者と管理者が異なることにも注意が必要です。発注者は「当然保管されている」と考え、受託製造先は「一定期間経過後の扱いは決まっていない」と認識していると、長期保管、修理、移動、廃棄などを巡って認識のずれが生じます。
こうした問題は、量産が始まってから考えるのではなく、受託製造の相談段階で管理条件を確認することで防ぎやすくなります。本記事では、「受託製造 相談」で製造先を検討している実務担当者に向けて、金型・治具の劣化や紛失を防ぎ、再発注まで見据えて確認しておきたい6項目を詳しく解説します。
受託製造では金型・治具の管理体制まで確認する
受託製造先を選ぶ際には、加工設備や製造技術だけでなく、製造に使用する資産を継続的に管理できる体制があるかを確認することが重要です。特に専用の金型や治具を使う製品では、金型・治具の状態が製品品質や納期に影響するため、単なる保管物として扱うことはできません。
金型は、プレス、成形、鋳造などで同じ形状を繰り返し製造するために使われます。治具も、部品を一定位置に固定する、加工位置を決める、組立を補助する、検査時の基準をつくるなど、工程の安定化に重要な役割を持っています。製品によっては、金型や治具のわずかな摩耗、変形、位置ずれが製品寸法や外観に影響することがあります。
そのため、受託製造の相談では「金型を保管してもらえますか」と確認するだけでは不十分です。どのように個体を識別するのか、どこに保管するのか、保管場所が変わったときに記録を更新するのか、長期間使わないときにどのような劣化対策を行うのかなど、具体的な管理方法まで確認する必要があります。
量産中は毎日のように金型・治具を使用するため、現場担当者も状態や所在を把握しやすくなります。問題が起こりやすいのは、生産量が減った後や生産休止後です。半年、1年、数年と使わない期間が続けば、担当者の異動、工場レイアウトの変更、保管場所の整理、倉庫移転などが発生する可能性があります。
受託製造を長期間続ける場合には、「今使えているか」だけでなく、「数年後でも正しい金型・治具を見つけ、状態を確認し、安全に再使用できるか」という視点が必要です。相談時点から将来の再生産まで想定しておくことで、発注後のトラブルを減らしやすくなります。
確認項目1:金型・治具を個体識別できる管理方法
最初に確認したいのは、金型・治具を一つずつ識別できる仕組みです。製品名や見た目だけで管理している場合、似た形状の金型や治具が増えるほど取り違えの危険が高まります。
例えば同一製品でも、工程ごとに複数の金型を使用することがあります。また、設計変更によって旧仕様と新仕様の金型が両方残る場合もあります。治具についても、加工用、組立用、検査用など目的が異なるものが存在し、外観だけでは区別しにくいことがあります。
そこで、金型・治具ごとに管理番号を設定し、対象となる製品、部品番号、図面、仕様、使用工程、保管場所などを関連付けて管理することが重要になります。受託製造の相談では、単に管理番号があるかではなく、その番号から必要な情報を確認できるかまで聞いておくとよいでしょう。
現物と管理台帳が確実に対応していることも重要です。台帳には番号が登録されていても、現物側の表示が消えていたり、読みにくかったりすれば、正しい照合ができません。長期間使う金型・治具では、油分、摩擦、清掃、温度環境などによってラベルや表示が劣化する場合があります。識別表示を定期的に確認し、必要に応じて更新する運用があるかを確認すると安心です。
複数部品で構成される金型の場合には、本体だけ管理していても十分とは限りません。交換部品、入れ子、付属部品、専用工具などを組み合わせて使うものでは、それぞれの対応関係が分からなくなると再使用時に不足が判明することがあります。どの部品が一式を構成しているのかまで確認できる管理が望まれます。
さらに、現役の金型・治具と使用停止品を区別することも重要です。設計変更後も旧仕様品を保管している場合、現行仕様と同じ場所で区別なく保管すると誤使用につながる可能性があります。使用中、予備、保管中、修理中、使用停止、廃棄待ちなどの状態を識別できるかを確認しておくと、現場での取り違え防止につながります。
受託製造先へ相談するときには、「管理番号を付けていますか」という一問だけで終わらせず、現物と台帳が一致する仕組み、設計変更時の旧型管理、付属品との紐付けなどまで確認することが大切です。
確認項目2:保管場所と移動履歴を追える管理方法
金型・治具の紛失を防ぐには、保管場所を明確にする必要があります。ここでいう紛失とは、工場外へ完全になくなることだけを意味しません。工場や倉庫のどこかには存在していても、必要なときに所在が分からない状態であれば、生産上は大きな問題になります。
保管場所は、倉庫名だけでなく、必要に応じて保管エリアや棚、区画などと管理番号を対応させることが有効です。重要なのは、最初に保管場所を登録することではなく、移動のたびに情報が更新されることです。
工場では、設備の移設、生産ラインの変更、倉庫整理、保管スペースの見直しなどによって金型・治具の置き場所が変わることがあります。実物を移動したにもかかわらず管理台帳が更新されなければ、数年後には記録と現物の位置が大きく食い違ってしまいます。
また、金型・治具は必ずしも同じ工場内だけを移動するとは限りません。修理や改造のため外部へ搬出したり、別の製造拠点へ移したりする場合があります。受託製造先が一部工程を別の事業者へ委託する場合には、発注者が所有する金型や治具が別拠点へ移動する可能性もあります。
このため、受託製造の相談時には、金型・治具を工場外へ持ち出す場合の手続きを確認しておくことが重要です。誰が移動を承認するのか、移動先を記録するのか、返却日や現在位置を追跡できるのか、発注者への連絡が必要なのかといった条件を整理します。
複数工場を持つ製造先の場合には、拠点間移動の扱いも確認しておきます。製造能力の調整や設備都合によって別拠点で生産する場合、金型を移動することがあります。発注者側が「契約した工場に保管されている」と認識していても、実際には別工場へ移動しているという状態を避けるため、移動時の情報共有ルールを決めておくことが大切です。
定期的な現物確認も所在管理に役立ちます。管理台帳に保管中と記録されているだけでは、現物が本当に指定場所にあるとは限りません。一定の周期や必要な時期に台帳と現物を照合する運用があれば、長期間使われていない金型・治具の所在不明を早めに発見しやすくなります。
保管能力についても確認しておきましょう。量産終了後も長期間保管してもらうことを想定しているなら、製造先に十分な保管場所があるか、保管可能期間に条件があるかなどを事前に整理する必要があります。「預けているから永久に保管される」と考えず、保管期間を双方で明確にすることが重要です。
確認項目3:錆・腐食・変形などの劣化を防ぐ保管方法
金型・治具は、使用していない間にも劣化する可能性があります。金属製のものでは、材質や表面状態、周囲の湿気などによって錆や腐食が発生することがあります。重量物であれば、不適切な置き方や積み重ねによって変形、転倒、損傷が起こる可能性もあります。
そのため、受託製造の相談では量産中のメンテナンスだけでなく、生産休止中の保管方法も確認することが重要です。
必要な防錆処置は金型・治具の材質や構造、保管期間などによって異なります。すべての金型を同一条件で管理すればよいわけではありません。重要なのは、対象の特性に応じて清掃、防錆、保護、保管姿勢などを判断できる仕組みがあることです。
金型を長期保管する場合には、生産終了時の状態も重要になります。加工時の付着物や水分などが残った状態で長期間保管すると、次回使用時に整備が必要になる可能性があります。使用を終えた時点で清掃や確認を行い、保管に適した状態へ移す手順が決められているかを確認しましょう。
治具では、基準面、位置決め部、クランプ部など、製品精度に関係する箇所を損傷させない保管方法が必要です。精密な治具を床へ直接置いたり、上に重量物を積んだりすれば、変形や損傷につながる可能性があります。保管姿勢や支持位置が決められているかも確認したいポイントです。
保管環境についても、実際の対象物に応じた判断が求められます。粉じん、水分、薬品、油などが多い場所では、金型・治具への影響を考える必要があります。一律に特別な保管設備が必要ということではありませんが、使用しない期間も含めて対象物の状態を維持できる環境かを確認することが大切です。
さらに見落としやすいのが、長期保管中の状態確認です。量産中であれば金型や治具を取り出すたびに異常へ気付く機会があります。しかし、数年間使用しないものは、人の目に触れる機会が少なくなります。保管中の金型・治具について、必要に応じて外観や保管状態を確認する仕組みがあるか聞いておきましょう。
ただし、点検頻度を一律に決めればよいわけではありません。対象物の重要度、保管環境、材質、使用頻度、次回使用予定などを考慮して適切に管理することが現実的です。受託製造先がどのような基準で管理方法を決めているかを確認すると、単なる形式ではなく実際の管理力を評価しやすくなります。
工場を訪問できる場合には、保管場所の現場確認も有効です。識別表示が見やすいか、金型が安定した状態で置かれているか、使用可能品と使用停止品が区別されているかなどを見ることで、説明された管理方法が現場で定着しているかを確認しやすくなります。
確認項目4:使用履歴と点検・修理履歴の管理方法
金型・治具は繰り返し使用するため、時間とともに摩耗や劣化が進みます。ただし、状態の変化は単純な経過年数だけでは判断できません。使用する材料、加工条件、生産数量、負荷、構造などによって摩耗の進行は異なります。
そこで確認したいのが、使用状況と点検・修理履歴の管理方法です。
金型では、生産数量や使用回数などを参考にしながら点検や保全の時期を判断する場合があります。一方、使用条件によっては回数だけで判断しにくいこともあります。重要なのは、対象ごとの特性に合わせて状態確認を行い、その結果を次の保全判断へ生かせることです。
治具でも、繰り返し使用によって位置決め部やクランプ部が摩耗したり、固定部にがたつきが生じたりする場合があります。外観上は壊れていなくても、位置決め精度が変化して製品品質へ影響する可能性があります。そのため、品質に影響する治具では、必要に応じて寸法や機能を確認する運用があるかを確認します。
修理履歴も重要です。いつ異常が発生し、どの部分を修理し、何を交換したのかが残っていれば、後に同様の不具合が発生したときに原因を検討しやすくなります。特定箇所で修理が繰り返されていれば、単発の故障ではなく構造や使用条件に原因がある可能性を検討する材料にもなります。
特に注意したいのは、保全作業と仕様変更の境界です。消耗部品を同等品へ交換するような通常の保全と、製品形状や品質へ影響する部分を変更する作業では、管理方法を分ける必要があります。
金型形状を修正したり、治具の基準位置を変更したりすれば、製品品質へ影響する可能性があります。こうした変更を受託製造先の判断だけで実施できるのか、発注者の事前承認が必要なのかを相談段階で明確にしておくことが大切です。
また、修理後にどのような確認を行うかも重要です。修理したという事実だけでなく、修理後に必要な確認を行い、生産へ戻してよい状態か判断する仕組みがあるかを確認します。製品への影響が大きい修理であれば、必要に応じて試し加工や製品確認を行うことも考えられます。
使用履歴と製造履歴を関連付けられる体制があると、不具合発生時の調査にも役立ちます。ある時期から製品寸法の傾向が変わった場合、その期間に使用した金型や治具、直前に行った修理、点検結果などを確認できれば、原因の切り分けがしやすくなります。
受託製造の相談では、「定期的にメンテナンスしています」という説明だけで判断しないことが大切です。何を基準に点検するのか、結果を記録するのか、修理履歴を残すのか、重要な修理を発注者へ報告するのかまで確認することで、継続的な管理体制を把握しやすくなります。
確認項目5:破損・紛失・移動・廃棄時の連絡ルール
どれだけ丁寧に管理していても、破損や所在不明などの異常が発生する可能性を完全になくすことはできません。そのため、異常を絶対に発生させないという考え方だけでなく、異常が起きたときにどのように対応するかを決めておくことが重要です。
まず確認したいのが、金型・治具を破損した場合の連絡方法です。軽微な保全であれば受託製造先の判断で対応できる場合もありますが、製品仕様や精度に関係する部分を修理する場合には、発注者と協議する必要が生じることがあります。
生産を急ぐあまり、製造先が独自判断で大きな修理を行い、後から発注者が知るような状態は避けたいところです。どの範囲まで通常保全として対応でき、どの範囲から事前連絡や承認が必要になるのかを決めておくと、判断が安定します。
紛失や所在不明が発生した場合の連絡ルールも確認します。現場内で一時的に見つからないだけなのか、外部への移動記録が不明なのかによって状況は異なりますが、発注者所有の重要資産について問題が発生した場合に情報が長期間共有されないことは避けなければなりません。
移動時の承認も重要です。修理先や別工場、外部工程などへ金型・治具を移す可能性があるなら、受託製造先の判断で移動できるのか、発注者への事前連絡が必要なのかを明確にします。移動後の管理責任が誰にあるかについても整理しておくと安心です。
さらに、長期取引では廃棄ルールが重要になります。量産終了後に使用予定がなくなった金型・治具は、時間が経つほど保管スペースを占有します。しかし、発注者の所有物であれば、受託製造先が独自判断で廃棄できる状態は避ける必要があります。
保管期間をどのように設定するのか、期限が近づいたときに誰が連絡するのか、廃棄にどのような承認が必要なのかを事前に決めておきましょう。補修部品の供給が続く製品では、量産終了から時間が経過した後に再び金型が必要になる可能性があります。
廃棄前には、その金型・治具を本当に今後使用しないのかを発注者側でも確認することが大切です。製品そのものの販売が終わっていても、補修や保守目的で追加生産が必要になる場合があります。廃棄後に再度生産することになれば、金型や治具を改めて準備する必要が生じる可能性があります。
取引終了時の返却条件についても、相談段階から考えておくと安心です。返却対象が金型本体だけなのか、交換部品や専用工具、付属治具も含むのかを記録しておけば、返却時の不足確認が容易になります。
金型・治具を預ける時点で一式を記録し、返却時に照合できる状態をつくっておくことが、長期的な資産管理の基本になります。
確認項目6:長期休止後や再発注時の再使用確認方法
金型・治具管理で特に差が出やすいのが、数か月から数年生産していなかった製品を再び製造する場面です。保管されていた金型・治具が存在するからといって、すぐに以前と同じ条件で使用できるとは限りません。
長期保管中には錆、腐食、固着、摩耗部の状態変化などが生じる可能性があります。そのため、再使用前には必要に応じて外観や可動部、重要部分の状態を確認し、製造へ使用できるか判断することが大切です。
精度への影響が大きい金型・治具では、目視だけでなく必要な測定や機能確認が求められる場合があります。状態によっては整備や部品交換を行い、その後に試し加工などを実施して製品の状態を確認してから量産へ移行することも考えられます。
受託製造の相談段階では、こうした再立ち上げ時の手順があるかを確認しましょう。重要なのは、注文を受けたら倉庫から金型を出してそのまま生産するのではなく、休止期間や対象物の状態に応じて再使用の可否を確認できることです。
再発注時には、物理的な状態だけでなく最新仕様との整合も確認する必要があります。前回の製造から時間が経過している間に、製品図面や要求仕様が変更されている可能性があるためです。
金型が良好な状態でも、旧仕様に対応したままであれば最新製品には使用できない場合があります。検査治具についても、旧仕様の判定基準を使えば現在の要求と異なる結果になる可能性があります。
そのため、再使用時には現物の状態確認と、現在有効な図面や仕様との照合を組み合わせることが重要です。管理番号と図面情報が適切に関連付けられていれば、この確認を進めやすくなります。
量産終了時の記録も再発注時に役立ちます。最終使用日、最後に行った点検、修理履歴、保管開始時の状態などが記録されていれば、再開時に必要な作業を検討しやすくなります。
反対に、最終使用時の状態が何も分からなければ、再発注を受けてから金型を一から調査しなければならず、生産開始までの確認項目が増える可能性があります。再発注時の納期を検討するときには、金型・治具の確認や整備に必要な期間も考慮することが重要です。
また、再使用できない場合の対応も考えておきましょう。状態によっては修理できる場合もあれば、新しく製作する必要がある場合もあります。製品仕様によっては別の製造方法を検討することも考えられます。
重要なのは、「保管されていること」と「すぐ使えること」を同じ意味として扱わないことです。再使用前の確認工程を明確にすることで、再発注時の品質や納期の不確実性を抑えやすくなります。
金型・治具の所有権と管理責任を明確にする
金型・治具のトラブルを防ぐには、現場での管理方法だけでなく、誰が所有し、誰が管理責任を持つのかを整理する必要があります。
受託製造では、発注者が費用を負担して製作した金型を製造先で保管する場合や、製造先が自社設備の一部として準備する場合など、さまざまな形態があります。外観だけを見ても所有関係は分からないため、相談段階で明確にすることが重要です。
発注者所有で受託製造先が保管する場合には、日常管理を製造先へ任せるとしても、修理、改造、移動、廃棄などにどこまで製造先の判断を認めるのかを決めておく必要があります。
例えば通常の清掃や消耗部品交換は製造先が行う一方、製品寸法に影響する改造や工場外への移動、廃棄には発注者の承認が必要といったように、行為ごとの判断範囲を明確にします。
また、保管期間も重要です。発注者側は長期間の保管を想定していても、受託製造先が同じ認識とは限りません。生産終了後の保管期間、期間満了時の確認方法、返却や廃棄の手続きなどを決めておくことで、後からの認識違いを防げます。
口頭での合意だけに依存しないことも大切です。金型・治具は長期間使われる可能性があり、その間に双方の担当者が交代することがあります。将来の担当者が確認できる形で管理条件を残しておくと、取引が長期化しても運用を継続しやすくなります。
管理台帳だけでなく実際の運用状況まで確認する
受託製造先から「金型管理台帳があります」と説明を受けても、それだけで管理体制が十分とは判断できません。重要なのは、台帳が存在することではなく、実際の業務の中で更新されていることです。
受託製造の相談では、可能であれば管理情報にどのような項目が含まれているか確認します。管理番号、対象製品、保管場所、状態、使用履歴、点検履歴、修理履歴など、必要な情報を追跡できるかを見ると管理方法を把握しやすくなります。
さらに、誰が情報を更新するのかも重要です。金型を移動した際に、現場担当者が記録するのか、管理担当者へ連絡するのかなど、業務上の流れが明確でなければ情報が更新されなくなる可能性があります。
工場訪問が可能であれば、実物と管理情報が一致しているかを見ることも有効です。指定された場所に対象物があるか、識別表示が見えるか、使用停止品と現役品が区別されているかなどを確認すると、管理ルールが現場へ定着しているかを判断する材料になります。
また、整理整頓の見た目だけで評価しないことも大切です。保管場所が整然としていても、履歴が更新されていなければ長期管理では問題が起こる可能性があります。逆に、特別に豪華な保管設備でなくても、対象物の特性に応じた管理方法と記録更新が徹底されていれば、安定した管理につながります。
受託製造先を比較するときには、形式的な規程の有無だけでなく、現物、記録、担当者の運用がつながっているかという視点を持つことが重要です。
取引終了や製造先変更まで想定して条件を決める
受託製造の相談では、これから取引を始めることに意識が向くため、取引終了時のことは後回しになりがちです。しかし、金型・治具は製品の生産先を変更するときに重要な資産となります。
将来、品質、納期、生産能力、事業方針などの理由から製造先を変更する可能性はあります。そのとき、発注者所有の金型・治具を返却できなければ、次の製造先へ円滑に移行できません。
そのため、契約開始時点で取引終了時の返却方法を決めておくことが有効です。どの資産を返却対象とするか、付属部品や専用工具も含むのか、返却前にどのような状態確認を行うのかなどを整理します。
返却時には数量だけでなく状態の確認も重要です。預けた時点の状態や、その後の修理・改造履歴が分かれば、返却された金型を別の製造先で使用する際の判断材料になります。
複数部品で構成される金型では、本体だけ戻ってきても生産できない場合があります。専用部品、付属治具、交換部品などを含めて一式を識別できる管理が、製造先変更時にも役立ちます。
また、金型を別拠点へ移送するときには、安全な輸送方法や梱包方法を検討する必要があります。重量や構造によって取り扱い条件が異なるため、返却時になって初めて考えるのではなく、必要に応じて事前に条件を整理しておくとよいでしょう。
取引終了を想定したルールは、製造先を疑うためのものではありません。長期取引ほど担当者や事業環境が変化する可能性があるため、双方の責任範囲を明確にし、将来の混乱を防ぐための仕組みとして考えることが大切です。
金型・治具の管理記録を再発注に生かす
金型・治具管理では、実物を良好な状態で保管することと同じくらい、記録を残すことが重要です。どこにあるか、どのような状態か、いつ使用したか、どのような点検や修理を行ったかが分かれば、再発注や不具合調査を進めやすくなります。
特に長期休止後の再発注では、記録の有無によって確認作業の負担が変わります。量産終了時の状態、最終点検日、修理内容などが分かれば、再使用時に確認すべきポイントを絞り込みやすくなります。
担当者交代への備えとしても記録は重要です。金型・治具の状態や保管場所を特定の担当者だけが知っている状態では、その担当者が異動したときに情報が失われる可能性があります。管理番号を軸にして情報を組織として共有できる状態にすることが望まれます。
ただし、記録は残すだけでは十分ではありません。実際の状態と一致していなければ、かえって誤った判断につながります。保管場所を変更したとき、修理したとき、使用停止へ切り替えたときなど、状態が変化するタイミングで記録を更新する仕組みが重要です。
写真による記録も補助的に活用できます。長期保管へ移す際の外観や、修理前後の状態、保管場所、識別表示などを写真として残しておけば、後から状況を確認しやすくなります。
ただし、写真だけで金型や治具の精度、安全性、使用可否を判断できるわけではありません。必要な寸法測定や機能確認は別途行い、写真は所在や外観、現場状況を補完する記録として扱うことが適切です。
また、発注者側でも必要な範囲の情報を把握できるようにしておくと、再発注時の確認が容易になります。受託製造先が保有するすべての管理情報を共有してもらう必要はありませんが、自社所有の金型・治具について、現在の保管場所や状態、主要な修理履歴、最終使用時期などを必要に応じて確認できる状態が望まれます。
製造先との定期的な確認機会を設ける方法もあります。長期間使っていない重要な金型について所在や状態を確認することで、再発注の直前になって問題が発覚するリスクを減らしやすくなります。
まとめ
受託製造を相談するときは、加工技術、品質、納期、生産能力だけでなく、金型・治具を長期間適切に管理できるかまで確認することが重要です。金型・治具は製造工程を支える重要な資産であり、保管中の劣化や所在不明が発生すると、再発注時の品質や納期に影響する可能性があります。
最初に確認したいのは、金型・治具を一つずつ識別できる管理方法です。管理番号と対象製品、図面、保管場所などが対応していれば、似た形状の金型や旧仕様の治具が存在していても取り違えを防ぎやすくなります。
次に、保管場所と移動履歴を追えることも重要です。工場内の移動だけでなく、修理先や別拠点へ持ち出した場合にも現在位置を把握できる仕組みがあれば、所在不明になるリスクを抑えられます。
保管中の劣化対策については、対象物の材質や構造、保管期間に応じて清掃、防錆、保護、適切な保管姿勢などを判断できるかを確認します。長期間使用しない金型については、必要に応じて状態を確認する仕組みも重要です。
使用履歴、点検履歴、修理履歴を残すことは、摩耗状態の把握や不具合調査、再使用判断に役立ちます。特に製品品質へ影響する修理や改造については、受託製造先が独自に判断できる範囲と、発注者への連絡や承認が必要な範囲を事前に決めておくことが大切です。
破損、紛失、移動、廃棄などの異常時についても、発生してから対応を考えるのではなく、相談段階で連絡経路と承認ルールを整理しておきましょう。発注者所有の金型・治具では、特に保管期限と廃棄手続きの認識を合わせる必要があります。
さらに、長期休止後の再発注では、保管されているという理由だけで直ちに使用できるとは限りません。金型・治具の物理的な状態と最新図面・仕様との整合を確認し、必要に応じて整備や試し加工を行ってから量産へ戻す仕組みが必要です。
受託製造先を選定するときには、「金型を保管できますか」という確認だけでなく、識別、所在管理、劣化防止、点検、修理、異常時対応、再使用まで一貫して管理できるかを見ることが重要です。管理台帳の有無だけで判断せず、実際の保管状態や情報更新の方法、担当者が変わっても運用できる仕組みまで確認すると、長期的な製造パートナーとしての管理力を判断しやすくなります。
また、金型・治具の管理記録を文字情報だけで完結させるのではなく、現場写真や確認場所、作業記録と組み合わせることで、関係者間で状況を共有しやすくなる場合があります。特に複数の保管場所や製造拠点を確認するときには、いつ、どこで、どのような状態を確認したのかを記録として残すことが有効です。
LRTK Phoneは、現場写真・位置情報・施工記録を管理する自社プロダクトです。金型・治具の専用台帳や保全管理そのものを置き換えるものではありませんが、保管場所の現況写真や現場確認の記録を位置情報とともに残す用途などに活用できます。受託製造先の現場確認や資産管理に関する記録を整理し、後から確認できる情報として残したい場合には、LRTK Phoneを現場記録の補助として活用することも一つの方法です。
ものづくりの次の一歩を、
相談から始めてみませんか。
加工・製造の外注先や共同開発のパートナー探しに。大田区産業振興協会の受・発注あっせん相談サービスをご利用いただけます。
