電線共同溝で防火区画貫通部の確認が重要な理由
電線共同溝は、電力線や通信線などを道路の地下へ収容し、無電柱化を進めるための道路施設です。一般に、管路部、特殊部、分岐部、引込部などから構成され、道路管理者と電線管理者などの関係者が調整しながら整備と維持管理を行います。([国土交通省 交通研究所][1])
電線共同溝の管路が建築物、地下施設、電気室、機械室、地下通路などへ接続する場所では、壁や床に設けられた開口をケーブルや配管が貫通することがあります。その壁や床が建築基準法令上の防火区画、防火上主要な間仕切り、または設計図書で耐火処理を求める区画に該当する場合は、貫通部についても区画の要求性能を損なわない処理が必要です。ただし、道路内の管路接続部がすべて建築物の防火区画貫通部になるわけではありません。適用の有無は、施設の用途、区画の根拠、管理境界、設計図書、関係法令を確認して判断します。
区画を構成する壁や床が所定の性能を備えていても、貫通物の周囲に連続した隙間が残れば、火炎や高温ガス、煙などが隣接空間へ移動する経路になり得ます。火災時にはケーブル被覆の変形や焼失、保持材の変形、充てん材の脱落などが生じる可能性もあるため、表面だけを埋めて見栄えを整えるのではなく、壁または床、貫通物、充てん材、保持材、支持方法を一つの構成として確認することが重要です。
防火区画貫通部では、似た材料を使えばよいとは限りません。壁と床の別、区画を構成する部材、開口寸法、ケーブルや管の種類と本数、充てん深さ、補助材の配置などは、採用する仕様や認定工法ごとに適用条件が異なります。国土交通省の令和7年版公共建築工事標準仕様書では、ケーブルまたはバスダクトが防火区画等を貫通する場合、関係法令に適合し、貫通部に適合する材料と工法によることが示されています。また、処理箇所の付近に必要事項を記載した表示を設ける規定もあります。
施工後の外観だけでは、内部の充てん深さ、保持材の位置、ケーブル束の内部空隙まで確認できません。令和7年版公共建築工事標準仕様書でも、防火区画貫通部の耐火処理は施工の立会い時期を「処理過程」としています。したがって、現場では完成時だけでなく、開口形成後、貫通物設置後、保持材設置後、充てん途中、仕上げ後など、後から見えなくなる段階で記録と確認を行うことが有効です。
最初に確認したい防火区画の適用範囲
電線共同溝の実務で最初に整理したいのは、どの壁や床がどの根拠で区画されているかという点です。単にコンクリート壁がある、厚い床があるという外観だけでは、防火区画かどうかを判断できません。建築基準法令上の防火区画である場合、別の法令や技術基準に基づく区画である場合、発注仕様で独自に耐火処理を求めている場合では、確認する根拠と必要資料が異なります。
道路内の特殊部から民地側の建築物へ引込管が接続される場所では、道路施設と建築設備の管理境界が設けられることがあります。建築物側の壁が防火区画を構成している場合は、その壁を貫通する管やケーブルの処理が確認対象になります。一方、防火区画に該当しない壁でも、止水、気密、耐久性、構造保護、害虫侵入防止など、別の目的による処理を求められることがあります。
見た目が似ていても、防火処理と止水処理は同じ性能を意味しません。止水材だけで塞いだ開口が法令や設計上の耐火性能を満たすとは限らず、防火用の材料が常時湿潤環境や水圧に耐えられるとも限りません。防火、止水、気密、耐震など複数の要求が重なる場所では、一つの材料へ安易に全機能を期待せず、それぞれの要求と材料の適用環境が両立する構成を設計者や発注者と確認します。
実務では、平面図だけで判断せず、防火区画図、断面図、貫通部詳細図、設備図、電線共同溝の系統図、特殊部構造図、管理境界図を相互に照合します。図面間で区画線の位置が異なる場合、建築図には開口がないのに設備図には貫通がある場合、または工事区分が不明な場合は、施工前に設計者、発注者、道路管理者、施設管理者、電線管理者などと協議し、根拠図面と責任範囲を確定します。
建築基準法令では、防火区画等を貫通する管について、管の材質や外径などによる仕様、または所定の性能を満たす認定構造など、複数の適合方法が定められています。大臣認定工法を採用する場合は、認定書に記載された壁や床、開口、貫通物、材料、施工方法などの条件を確認する必要があります。法令の条項や経過措置は改正されることがあるため、工事時点で有効な法令、告示、認定書、確認済図書を用いて判断することが安全です。([e-Gov 法令検索][2])
延焼につながる貫通部の弱点
防火区画貫通部で起こりやすい問題の一つは、ケーブルと充てん材の間に残る連続した隙間です。表面から見える範囲が埋まっていても、壁や床の内部に空洞があれば、区画の性能を損なうおそれがあります。複数のケーブルが密着して束になっている場合は、ケーブル同士の谷間へ材料が入りにくく、外周だけが仕上がった状態になりやすいため注意が必要です。
次に注意したいのが、施工後のケーブル追加です。当初は適用条件に合う状態で処理されていても、追加配線のために材料を切り取ったまま復旧しなかったり、既存開口へ適用範囲を超える貫通物を追加したりすると、当初の構成から外れる可能性があります。外観上は材料が残っていても、必要な充てん寸法、ケーブル間隔、開口寸法、貫通物の組み合わせを満たさなくなる場合があります。
管と壁の間だけを確認し、管内部を見落とすこともあります。空配管や予備管が区画を貫通している場合、管内部の閉塞が設計または採用工法で求められていれば、ケーブルが入っていないことを理由に確認を省略できません。仮蓋、布、一般的な発泡材などを詰めただけでは、必要な性能を証明できないことがあります。
貫通物の自重や引張力が処理部へ直接作用すると、ひび割れ、剥離、隙間の発生につながる可能性があります。ケーブルラック、支持金物、管支持部が適切に設けられていない場合、ケーブルのたわみや入線時の力が充てん部へ伝わります。平常時の振動や温度変化、点検時の接触、地震時の変位も考慮し、防火処理材を支持材の代わりにしないことが重要です。
地下施設では、水分も重要な確認対象です。漏水や結露が続くと、材料や躯体との境界に変色、浮き、ひび割れ、軟化などが生じる場合があります。水みちを防火材で塞ぐだけでは根本的な止水にならないことがあり、水圧や繰り返しの湿潤によって処理部が損傷する可能性もあります。防火上の不適合と漏水原因を分けて調査し、それぞれに適した対策を行います。
処理確認1 設計図書と適用工法の条件を照合する
一つ目の処理確認は、現場で採用する材料と工法が設計図書、法令、告示、認定書、施工要領書などの適用条件に合っているかを照合することです。材料名だけでなく、壁または床の種類、必要な性能、開口の向き、貫通するケーブルや管の種類、施工可能な寸法範囲を確認します。
施工要領書を見るときは、代表断面だけで判断しないことが大切です。同じ名称の材料でも、壁用と床用で保持方法や施工厚さが異なる場合があります。鉄筋コンクリート壁、軽量間仕切壁、床スラブなどでは、適用できる下地や固定方法が異なることもあります。壁に適用できる構成を、根拠を確認せず床へ転用しないようにします。
設計図書に記載された構成と、現場へ搬入された材料の組み合わせも照合します。主材が合っていても、保持材、裏当て材、固定部材、補助材が異なれば、確認済みの構成と一致しない可能性があります。余った材料を現場判断で組み合わせたり、施工しやすい別材料へ無断で変更したりすることは避けます。
特に注意したいのが「同等品」の扱いです。防火区画貫通部は、複数の部材を組み合わせた構造として性能が確認されていることがあります。材質や外観が似ていることだけを理由に同等と判断せず、適用根拠と性能資料を確認し、設計図書や契約条件に応じた承認または協議の手続きを経て採用します。
国土交通省は過去に、防火区画貫通部が大臣認定の仕様と異なる状態で施工され、建築基準法違反として調査と是正の対象になった事例を公表しています。完成後の外観が整っているかだけではなく、認定書や設計上の構成と実施工が一致しているかを確認する必要があります。([国土交通省][3])
現場管理では、対象箇所ごとに管理番号を付け、適用工法と施工条件を紐づける方法が有効です。同じ施設内でも、壁厚、床厚、開口寸法、管径、ケーブル本数が異なれば、適用条件が変わる可能性があります。すべてを同一処理として一括管理するより、開口ごとに条件を確認できる記録へ整理したほうが、検査と将来の改修に対応しやすくなります。
電線共同溝側と建築物側で工事区分が分かれる場合は、誰がスリーブを設置し、誰が貫通物を通し、誰が最終処理を行い、誰が検査記録を引き渡すのかを明確にします。前工程と後工程の双方が相手の施工範囲だと認識すると、未処理のまま引き渡されるおそれがあります。工事区分表だけでなく、処理完了の条件と確認責任まで合意しておくことが重要です。
処理確認2 開口寸法と貫通物の組み合わせを確認する
二つ目の処理確認は、実際の開口寸法と貫通物の構成を測り、採用工法の適用範囲内にあるかを確認することです。図面上の寸法が適切でも、削孔位置のずれ、はつりによる拡大、端部の欠けなどがあれば、計画した構成をそのまま適用できない場合があります。
確認する寸法は、開口の幅と高さだけではありません。円形開口では直径、矩形開口では縦横寸法を測り、壁厚または床厚も確認します。貫通物と開口端部の離隔、ケーブル相互の間隔、管とケーブルの配置、隣接開口との残り寸法など、採用工法が条件としている項目を記録します。
開口をはつって拡大した場合は、端部の欠損やひび割れ、下地の健全性も確認します。削孔粉、泥水、油分、錆、既存シール材などが残っていると、材料の付着や充てんを妨げることがあります。ただし、清掃方法、乾燥条件、プライマーや下地調整材の使用可否も工法ごとに異なるため、一般的な方法を一律に適用せず、施工要領に従います。
ケーブル本数は、図面だけでなく現物と照合します。電力ケーブル、通信ケーブル、接地線、制御線などが同じ開口を通る場合は、種類と外径を区分して記録します。密集して外径を確認しにくい場合は、ケーブル表示、材料資料、入線記録と照合し、推測だけで適用可否を判断しないようにします。
ケーブルを束ねた状態で貫通させる場合は、束の内部へ所定の材料を施工できる構成かを確認します。密着したケーブル間へ材料が入らない場合、外周だけを覆っても内部空隙が残る可能性があります。採用工法が要求する配列、間隔、充てん方法に合わせ、必要に応じて処理前に配列を整えます。
管路を貫通させる場合は、管の外側だけでなく内部の用途も確認します。使用中の管、予備管、将来用の空管、閉塞済みの管を区別し、管端または管内の処理が必要かを設計図書と工法条件から判断します。将来用であることは、開口や管内に未処理の空隙を残す根拠にはなりません。
既設貫通部を改修する場合は、外観だけで開口寸法や内部構成を確定できないことがあります。安易な解体や抜き取りは、供用中のケーブル損傷、感電、通信障害、区画性能の低下につながるおそれがあります。既設資料、施工履歴、停電や停止の条件を確認し、施設管理者と電線管理者の承認を得た調査方法で状態を確認します。
処理確認3 充てん材の厚さと施工状態を確認する
三つ目の処理確認は、指定された材料が必要な位置へ、必要な厚さ、密度、固定方法で施工されているかを確認することです。完成面を平らに仕上げても、内部に空洞が残っていれば、設計または認定どおりの構成とはいえません。
施工前には、壁または床のどちら側から施工するのか、両側施工が必要か、保持材をどの位置へ設けるのか、充てん深さをどこから測るのかを確認します。床貫通部では、材料が硬化する前に落下しない保持方法が必要になる場合があります。壁貫通部でも、反対側へ材料が押し出され、片側の必要厚さが不足しないよう注意します。
充てん作業は、採用工法の施工要領に従って行います。ケーブルの下側、束の中心、管の裏側、開口の角部などは死角になりやすいため、施工途中で反対側や下面からも確認します。表面から一度に押し込む方法が適さない工法もあるため、充てん順序や一回当たりの施工厚さを現場独自に変更しないことが重要です。
材料を複数回に分けて施工する場合は、施工可能時間、層間処理、硬化条件を守ります。硬化が進み過ぎた表面へ追加施工すると一体化しにくいことがあり、反対に硬化前にケーブルを動かすと、表面から見えない剥離や空隙が生じる可能性があります。処理後に別工事が貫通物へ力を加えないよう、工程を調整します。
規定量より多く材料を使えば必ず安全になるわけではありません。過剰な充てんや圧縮によってケーブルへ無理な力を加えたり、認定構成と異なる厚さになったり、将来の点検や更新を困難にしたりする場合があります。必要な厚さ、施工範囲、仕上げ形状を施工要領どおりに管理します。
異なる材料を層状に使用する場合は、その組み合わせが設計または工法で認められているかを確認します。一般的なシーリング材、断熱材、発泡材などを、隙間を埋めやすいという理由だけで追加すると、火熱を受けた際の挙動や付着性が確認済みの構成と異なる可能性があります。
完成時には、ひび割れ、剥離、欠け、未充てん、著しい凹凸、ケーブル周囲の隙間、材料の汚染、表示の有無を確認します。目視だけでは内部厚さを確認できないため、保持材の位置や充てん深さが見える施工途中の寸法写真を残します。国土交通省の工事監理に関する例示でも、防火区画貫通部に用いる材料、認定工法、隠蔽部の位置、寸法、材料、支持状態などを、目視、計測、施工記録、工事写真等で確認する考え方が示されています。
表示を設ける場合は、処理部を傷付けず、点検の妨げにならない方法を選びます。表示板の固定のために処理部へねじを打つ、状態を確認できない厚い仕上げで覆うなどの行為は避け、設計図書と施工要領に従って材料、工法、管理番号などを識別できるようにします。
処理確認4 ケーブル支持と周辺環境を確認する
四つ目の処理確認は、防火処理部だけでなく、ケーブルや管を支える金物と周辺環境を確認することです。材料が正しく施工されていても、貫通物の荷重、振動、相対変位が集中すれば、長期的に隙間やひび割れが生じる可能性があります。
区画壁や床の近くでは、ケーブルラック、支持金物、吊り材、管固定部の位置と状態を確認します。支持間隔や耐震支持は、ケーブルの重量、管の材質、施工方向、施設条件、設計図書に従って決めます。防火処理材へ貫通物の自重を負担させず、必要な荷重を独立した支持部で受けることが基本です。国土交通省の公共建築設備工事標準図にも、防火区画貫通部に隣接する配管支持や耐震支持の例が示されています。
ケーブル敷設時には、引張力や曲げによって貫通部へ横方向の力が加わることがあります。敷設直後に異常がなくても、余長整理や接続作業でケーブルを引き戻すと処理部が損傷する場合があります。原則として最終的な貫通物の配置を確定してから処理し、処理後に動かす必要が生じた場合は、再点検と必要な復旧を行います。
電線共同溝は、供用後の追加敷設や更新が想定される施設です。現在の収容状態だけでなく、将来作業のための支持位置、施工空間、予備管の扱い、追加配線時の復旧方法まで検討しておくと、後から既存処理を無理に切り広げるリスクを減らせます。
水分が確認された場合は、材料表面を拭くだけで処理を継続せず、漏水経路を調査します。管路からの流入、壁や床のひび割れ、継手部、結露など、原因によって対策は異なります。常時湿潤する場所では、採用材料の適用環境と止水構成を確認し、防火処理と止水処理の施工順序も調整します。
土砂、粉じん、油分が堆積する場所では、材料表面の変色や劣化を見落としやすくなります。清掃時に硬い工具で処理部を傷付けることもあるため、清掃方法と点検時の注意事項を施設管理者へ引き継ぎます。害虫や小動物による損傷が想定される場合は、防火性能を損なわない侵入対策を設計者と検討します。
建築物と電線共同溝の接続部では、異なる構造物間の相対変位が生じる可能性があります。変位を吸収する部位と区画性能を維持する部位の役割を整理し、硬い充てん材だけですべての変位を拘束しようとしないことが大切です。耐震性や可とう性が必要な場合は、その条件を含めて適用できる構成を選びます。
処理確認5 検査記録と維持管理情報を残す
五つ目の処理確認は、施工状態を後から照合できる検査記録を残し、供用後の維持管理へ引き継ぐことです。防火区画貫通部は、完成すると内部が見えなくなるため、施工途中の記録が適合性確認と将来改修の重要な手掛かりになります。
記録には、施設名、区画名、階または特殊部番号、壁と床の区分、管理番号、施工日、施工者、開口寸法、壁厚または床厚、貫通物の種類と本数、使用材料、適用工法、検査結果を含めます。認定工法を用いる場合は認定番号や適用した仕様を、設計変更があった場合は変更内容と承認経緯を、契約図書のルールに従って記録します。
写真は完成後だけでなく、施工前、下地処理後、保持材設置後、充てん途中、完成後の順で残します。ケーブルが密集する場所では両側から撮影し、床貫通部では上面と下面を記録します。開口全体、管理番号、計測器の目盛りが同じ写真で確認できる構図にすると、後から寸法と位置を照合しやすくなります。
写真だけでは位置を特定できないことがあるため、平面図や断面図へ管理番号を記入します。「電気室北側」などの曖昧な記載だけでは、将来の改修時に別の開口と取り違える可能性があります。柱、壁通り、扉、点検口、特殊部、管路系統など、長期的に確認できる基準物との関係を残します。
検査では、施工者による自主確認に加え、契約条件や監理体制に応じて別の担当者が設計図書との照合を行います。外観だけではなく、適用工法、開口寸法、貫通物、施工厚さ、保持状態、支持、表示、写真記録を一連の項目として確認します。
完成図書は、建築側の防火区画図と電線共同溝側の管路図を関連付けて保存します。片方の図面だけでは、道路側から建築物側までの経路や管理境界を追えないことがあります。管理主体が異なる場合は、機密性や設備保安にも配慮しつつ、双方が維持管理に必要な範囲の情報を保持できる引渡し方法を協議します。
管理番号は、現地表示、写真名、検査票、完成図、電子台帳で統一します。途中で番号体系を変える場合は対応表を残し、撤去した番号を別の場所へ安易に再利用しないようにします。履歴を切らさず、いつ、誰が、どの構成へ変更したかを追える状態にすることが重要です。
施工段階ごとに確認するタイミング
防火区画貫通部の品質は、完成検査だけでは確認しにくいため、施工段階に応じた確認が必要です。最初の確認時期は、開口を形成する前です。この段階で、防火区画線、予定開口位置、構造部材、既設設備、管理境界、工事区分を確認します。
鉄筋コンクリート壁や床へ削孔する場合は、構造上の制約、鉄筋、埋設配管、既設ケーブルなどを確認します。防火処理の施工性だけを理由に開口位置を変更すると、構造安全性や他設備との離隔へ影響する可能性があります。変更が必要な場合は、設計者などの確認を受け、変更図へ反映します。
次の確認は、開口形成後です。実測寸法、壁厚または床厚、端部の欠損、ひび割れ、下地状態を確認します。計画より開口が大きい、形状が異なる、壁厚が不足するなどの差異があれば、予定材料をそのまま使用せず、適用条件と是正方法を再確認します。
貫通物を設置した後は、本数、外径、材質、配置、支持状態を確認します。将来増設用に空間を確保する場合も、現時点で区画性能を維持できる閉塞方法が必要です。単に「将来用」と表示して空隙を残すことは避けます。
保持材設置後と充てん途中は、完成後に見えなくなる重要な確認時期です。保持材の種類と位置、充てん深さ、ケーブル束内部への施工状態、下面の状態などを記録します。設計図書や施工計画書で必要とされる場合は、監督職員や工事監理者の立会いを受けてから次工程へ進みます。
完成後は、両面の仕上がり、ひび割れ、隙間、表示、周辺清掃、支持状態を確認します。検査後に別工事がケーブルを追加したり、仮設材の撤去時に処理部を傷付けたりすることがあるため、施設引渡し直前にも現況と完成記録が一致しているかを再確認します。
不適合を発見したときの是正手順
不適合が疑われる場合は、表面へ材料を塗り足して見えなくするのではなく、まず現状を記録します。管理番号、位置、開口寸法、貫通物、ひび割れや隙間の範囲、変色、漏水の有無を写真と図面へ残します。
次に、設計図書、認定書、施工要領書、施工記録と現状を照合し、どの条件から外れているかを整理します。材料の種類が不明、内部厚さを確認できない、ケーブル本数が記録と異なる、認定番号が追えないなど、未確認事項を明確にします。
是正方法は、現場担当者だけで決めず、発注者、設計者、工事監理者、施設管理者、施工者、電線管理者などの関係者と協議します。供用中の電力線や通信線がある場合は、停電や通信停止の要否、感電防止、誤切断防止、作業空間、換気、火気管理なども施工計画へ反映します。
部分補修が可能か、既存処理を撤去して再施工する必要があるかは、工法条件と損傷範囲によって異なります。外周の小さな欠けに見えても内部まで剥離している可能性があり、逆に確認のための過剰な解体が健全部やケーブルを損傷するおそれもあります。根拠資料に基づき、必要な範囲を安全に調査します。
撤去作業では、粉じんや破片が特殊部や管路へ入り込まないよう養生します。工具を使用する際は、ケーブル被覆、管、支持金物を傷付けない方法を選びます。電力線と通信線が混在する場所では、対象設備を確実に識別し、関係する管理者の立会条件を確認します。
是正後は、初回施工と同様に途中工程を記録します。「補修済み」という結果だけでなく、撤去範囲、再施工方法、使用材料、施工寸法、適用根拠、検査結果を残します。再発の可能性がある場合は、施設の点検計画に組み込み、ひび割れ、剥離、漏水などが再び生じていないかを確認します。
供用後の追加配線で防火性能を失わない管理
電線共同溝では、供用開始後に引込線や通信回線の追加、既設ケーブルの更新や撤去が行われます。防火区画貫通部を長期的に維持するには、追加配線を通常の入線作業だけで完結させず、既存処理の変更を伴う作業として管理することが重要です。
追加配線前には、既存開口の管理番号、適用工法、現在のケーブル構成、追加可能な範囲を確認します。空いているように見えても、認定書や施工要領で定める開口寸法、貫通物の外径、本数、配置を超える場合があります。既存処理の一部を取り外す必要があるときは、撤去範囲と復旧方法を事前に決めます。
取り外した材料をそのまま再利用できるとは限りません。変形、乾燥、汚染、欠損がある材料を押し戻すだけでは、当初と同じ構成にならない場合があります。再使用の可否は工法条件に従い、必要な新品材料、保持材、表示材を準備してから開口します。
追加したケーブルは、既存ケーブルや処理部へ過大な荷重を掛けないよう支持します。狭い開口へ無理に押し込むと、既存処理が剥離したり、ケーブル被覆が傷付いたりするおそれがあります。施工後は開口の両側または上下を確認し、材料の押し出し、割れ、隙間がないかを点検します。
撤去したケーブルの跡も見落とせません。ケーブルを抜いた後に細長い空洞が残れば、当初の構成から外れる可能性があります。撤去後の空隙を適用工法に従って復旧し、ケーブル本数、写真、完成図、台帳を更新します。
日常点検では、処理部の外観だけでなく、新しいケーブルや管が追加されていないか、現地表示と台帳が一致しているかを確認します。施工履歴にない貫通物を発見した場合は、誰がいつ施工したかを調べ、適用条件と復旧状態を確認します。
位置情報と写真を結び付ける記録方法
電線共同溝の防火区画貫通部は、地下や設備室の似た景観の中に複数設置されるため、近接写真だけでは場所を特定しにくいことがあります。記録の実用性を高めるには、管理番号、図面上の位置、現場写真、施工情報を一つの台帳で結び付けることが重要です。
地上から確認できる特殊部の蓋、建築物の引込位置、出入口などは、衛星測位が可能な環境で位置情報を取得し、図面や台帳へ登録できます。一方、地下内部や建築物内ではGNSS衛星からの信号を受信しにくいため、地上の既知点、構内基準点、壁通り、扉、点検口などを起点に、距離、方向、高低差を測って貫通部の位置を関連付けます。地下で直接取得できていない座標を推測値のまま確定座標として扱わず、測定方法と想定精度を記録します。
写真は、貫通部へ近づいた詳細写真だけでなく、周囲の壁、ラック、扉、点検口などが分かる遠景写真も残します。遠景、中景、近景、寸法確認、施工途中という順で撮影すると、初めて現場へ入る担当者でも位置と状態を把握しやすくなります。
LRTK Phoneは、屋外で衛星測位条件が確保できる場所において、位置情報を付けた写真や測位点の記録に利用できます。地上の特殊部や引込位置を管理番号と結び付け、地下内部については既知点からのオフセット計測や図面上の位置と組み合わせることで、点検対象へ到達するための手掛かりを整理できます。ただし、測位精度は衛星配置、遮蔽物、補正情報の状態などに左右されるため、取得時の測位状態を確認し、重要箇所は設計図や基準点との照合を行います。([Lefixea Irtk][4])
位置情報や写真は、適用工法の確認や現物検査を代替するものではありません。設計図書、認定書、施工要領書、寸法記録、検査結果と組み合わせて使用することで、維持管理に役立つ記録になります。
更新作業のたびに同じ管理番号へ新しい写真と検査結果を追加すれば、ひび割れ、変色、漏水、ケーブル増設などの変化を時系列で比較できます。紙の検査票を使用する場合でも、電子台帳と対応する管理番号を記載し、現場と図面と記録が分断されないようにします。
まとめ
電線共同溝の防火区画貫通部で延焼を防ぐには、完成面を見て隙間がないことを確認するだけでは不十分です。最初に、その壁や床がどの根拠で区画され、どの管理主体が処理と検査を担うのかを確認し、設計図書と現場条件を照合する必要があります。
一つ目の確認は、壁や床の種類、貫通物、適用工法が一致しているかを確認することです。二つ目は、開口寸法、壁厚または床厚、ケーブルや管の種類と本数を実測することです。三つ目は、指定された材料、保持材、施工厚さ、施工順序が守られ、内部に未処理の空隙が残っていないかを施工途中から確認することです。
四つ目は、ケーブル支持、漏水、振動、相対変位、将来の追加配線など、処理部へ影響する周辺条件を確認することです。五つ目は、施工途中を含む写真、寸法、材料、適用根拠、検査結果を管理番号と結び付け、供用後まで引き継ぐことです。
防火区画貫通部は、正しく施工された時点で管理が終わる設備ではありません。ケーブルの追加、撤去、更新のたびに構成が変わるため、作業前の適用確認、施工中の記録、作業後の復旧検査、台帳更新を一つの運用として定着させることが重要です。
地上の特殊部や引込位置を現地で特定し、写真と位置情報を継続的に整理する仕組みを整えることで、点検対象の取り違えや記録の分断を減らしやすくなります。LRTK Phoneを用いる場合も、屋外で取得した位置情報を地下の既知点やオフセット計測と組み合わせ、防火処理の適合確認は設計図書と現物検査によって行うという役割分担を明確にしてください。