電線共同溝の特殊部やハンドホール、マンホールなどの内部では、自然換気が働きにくく、酸素濃度の低下や有害ガスの滞留が起こる可能性があります。地上から異常が見えず、においを感じない場合でも、内部の空気環境が作業に適しているとは限りません。作業者が体調不良や意識障害を起こした後、保護具を持たずに救助へ入った人まで被災する二次災害にも注意が必要です。
とくに危険なのは、蓋や開口部を開けただけで換気できたと判断することです。電線共同溝の内部には、管路口、ケーブル、支持金具、隔壁、段差、滞留水などがあり、空気の流れが遮られる場合があります。開口部付近で問題のない測定値が得られても、底部、上部、奥部、くぼみなどに危険な空気が残っている可能性があります。
換気不足による作業事故を防ぐには、送風機の設置だけでなく、作業場所の法令上の位置付け、内部構造、測定方法、換気経路、作業中の監視、退避条件、救助体制までを一体で計画することが重要です。対象場所が酸素欠乏危険場所に該当する場合は、酸素欠乏症等防止規則に基づき、作業主任者の選任、作業従事者への特別教育、濃度測定、換気、監視、人員確認、避難用具の準備など、必要な措置を確実に実施しなければなりません。
この記事では、電線共同溝の内部で作業するときに確認したい6つの項目を解説します。実際の作業では、関係法令、発注者や道路管理者の基準、設備管理者の手順、施工計画書、作業手順書、使用機器の取扱説明書を確認し、現場条件に応じた安全対策を実施してください。
電線共同溝で換気不足が起こる原因
電線共同溝は、電力線や通信線などを地下に収容する施設です。道路景観の向上や道路空間の有効利用、災害時の安全性向上などに役立つ一方、特殊部やハンドホールの内部は、通常時に人が長時間滞在することを前提とした空間ではありません。点検、清掃、排水、ケーブル工事、設備交換などで内部へ入る場合は、閉鎖的な作業場所として空気環境を慎重に確認する必要があります。
地上との開口が限られている場所では、外気の入口と内部空気の出口が十分に分かれず、自然換気だけでは空気を入れ替えにくいことがあります。開口部が一つしかない場合や、内部に隔壁、段差、奥行きのある区画がある場合は、開口部付近だけが外気と混ざり、奥部に滞留した空気が残る短絡流が生じることがあります。
内部に滞留水や堆積物がある場合も注意が必要です。有機物を含む汚泥などが存在する場所では、微生物による分解などに伴って酸素が消費されたり、硫化水素などが発生したりする可能性があります。周辺の地盤、排水設備、下水系統、接続管路などから、外部の空気やガスが流入する可能性もあります。
発電機、エンジン式ポンプ、工事車両などの排気ガスが開口部や送風機の吸気口へ流れ込むケースにも注意が必要です。外気を送っているつもりでも、吸気口の近くに内燃機関があれば、一酸化炭素などを含む排気を内部へ送り込むおそれがあります。機械の設置場所だけでなく、風向き、道路交通、周辺作業の変化まで確認しなければなりません。
塗料、接着剤、洗浄剤、防水材などを使用する作業では、作業開始後に蒸気やガスが発生することがあります。入坑前の測定結果に異常がなくても、作業中に空気環境が悪化する可能性があります。使用材料の安全データシートを確認し、発生し得る物質、必要な換気方法、火気や着火源の管理、適切な測定項目を事前に整理することが重要です。
酸素欠乏や一酸化炭素は、においだけで判断できません。硫化水素も、濃度によっては嗅覚が当てにならなくなるため、においの有無を安全判断に使うことは危険です。感覚や経験ではなく、適切な測定器による客観的な確認を基本とします。
確認項目1 作業場所の構造と法令上の位置付けを確認する
最初に確認するのは、作業対象となる電線共同溝の構造と作業条件です。図面、設備台帳、過去の点検記録を確認し、特殊部の形状、深さ、容積、開口部、接続管路、隔壁、段差、ケーブル配置、滞留水、堆積物などを把握します。
同じ電線共同溝でも、内部構造と危険性は場所ごとに異なります。入口直下だけで作業する場合と、奥行きのある特殊部へ入る場合では、必要な換気方法や測定位置が変わります。重い気体がたまりやすい底部だけでなく、軽い気体や温度差の影響を受ける上部、気流が届きにくい奥部も確認対象とします。
図面があっても、現地の状態と一致しているとは限りません。設備改修、ケーブル増設、止水処理、仮設材、堆積物などによって、当初とは空気の流れが変わっている可能性があります。開口部から安全に確認できる範囲を調べ、ダクトを通せる経路、換気の障害になる設備、空気が滞留しそうな場所を把握します。
ただし、確認のために顔や上半身を開口部へ入れてはいけません。開口部付近に酸素濃度の低い空気や有害ガスが滞留している可能性があります。照明、カメラ、測定用ホースなどを用い、原則として安全な外部から確認します。内部へ入らなければ測定できない場合は、作業主任者の指示の下で、空気呼吸器等、監視人、墜落制止用器具等を含む必要な保護措置を整えます。
作業開始前には、対象場所や作業が酸素欠乏危険作業に該当するかを確認します。電線共同溝という名称だけで一律に判断するのではなく、構造、接続先、滞留物、作業内容、関係法令上の区分を確認します。該当する場合は、必要な技能講習を修了した酸素欠乏危険作業主任者を選任し、作業方法の決定、作業者の指揮、濃度測定、設備点検、保護具の使用状況の監視を行わせます。
作業従事者に必要な特別教育が実施されているかも確認します。酸素欠乏の原因や症状、呼吸用保護具の使用方法、退避、救急そ生などを理解していなければ、警報時の初動や救助時の判断を誤るおそれがあります。資格証や教育記録の確認だけでなく、当日の作業条件と中止基準を全員へ具体的に周知します。
複数の開口部を使用できる場合は、給気側と排気側を分けられるか検討します。ただし、別の特殊部や管路へ有害な空気を押し出す可能性もあるため、排気先に人がいないか、別作業へ影響しないかを確認します。接続管路が図面上でつながっていても、止水材やケーブルで実質的に閉塞していれば、換気経路として機能しない場合があります。
雨天後、浸水後、周辺掘削後、排水後などは、過去の作業時と条件が変わります。以前に異常がなかった場所でも、当日の安全が保証されるわけではありません。事前確認の結果を、測定位置、換気方法、作業人数、退避経路、救助方法に反映させます。
確認項目2 入坑前に酸素濃度と有害ガスを安全な方法で測定する
電線共同溝へ入る前には、内部の空気環境を測定します。測定のために危険な空間へ不用意に立ち入ることは避け、可能な限り外部から測定用ホースなどを使用します。測定前の安全確保が必要な場合は、作業主任者の指示に従って換気し、測定者の監視、呼吸用保護具、墜落防止措置などを整えます。
対象場所が酸素欠乏危険作業場に該当する場合、その日の作業開始前に酸素濃度を測定します。第二種酸素欠乏危険作業に該当する場合は、酸素濃度に加えて硫化水素濃度も測定します。また、全作業者が場所を離れた後に作業を再開するときや、作業者の身体、換気装置などに異常があったときも再測定が必要です。
酸素濃度は18%以上に保つことが法令上の基準です。第二種酸素欠乏危険作業では、硫化水素濃度を10ppm以下に保つ必要があります。ただし、この値を満たせば他の危険がすべてなくなるわけではありません。作業履歴や周辺環境に応じて、一酸化炭素、可燃性ガス、使用材料から生じる蒸気など、必要な測定項目を追加します。
測定位置は一か所だけで済ませないことが重要です。気体の分布は、種類、温度、気流、内部形状によって異なります。開口部付近、上部、中央部、底部、奥部、くぼみ、作業者の呼吸位置など、危険な空気が存在し得る場所を選んで測定します。作業者が移動する場合は、移動範囲を踏まえて測定位置を設定します。
吸引式測定器とホースを使用する場合は、ホースの長さによる吸引遅れを考慮します。ホース先端を測定位置へ到達させた直後の表示は、ホース内に残った外気を示している可能性があります。取扱説明書に示された吸引時間や応答時間を確認し、表示が安定してから記録します。
測定器は、電源が入ることだけでなく、センサーの有効期限、校正または点検の状況、電池残量、警報設定、吸引ポンプ、ホース、フィルターの状態まで確認します。測定対象や濃度範囲に適した機器を選び、干渉ガスの影響や測定上限も理解して使用します。
換気前の状態を把握する必要がある場合でも、安全を確保せずに測定者が内部へ入ってはいけません。外部から測定できない、または換気前の測定自体に危険がある場合は、作業主任者と安全担当者が測定方法を再検討します。測定値を得ることより、測定者を危険にさらさないことを優先します。
測定結果は、測定日時、方法、箇所、条件、結果、測定者、測定結果に基づいて講じた措置を記録します。酸素欠乏危険作業場で法令に基づく測定を行った記録は、所定の期間保存します。口頭連絡だけで済ませず、作業交代時にも確実に引き継ぎます。
確認項目3 必要な換気量と送風方法を検討する
換気設備は、とりあえず送風機を置けばよいものではありません。作業空間の容積、内部構造、開口部の数、作業人数、作業内容、発生するガスや蒸気、ダクトの長さや曲がりを踏まえ、必要な換気能力を検討します。
送風機のカタログに示された風量は、ダクトを接続しない条件や一定の試験条件による値であることがあります。長いダクト、多数の曲がり、つぶれ、接続部の漏れ、フィルターの目詰まり、水や異物の混入などによって、実際に内部へ届く風量は低下します。定格値だけで安全を判断せず、必要に応じてダクト先端や作業位置で風速や風量を確認します。
送風方式には、汚染されていない外気を送り込む給気方式と、内部の空気を吸い出す排気方式があります。給気方式は作業位置へ新鮮な空気を届けやすい一方、押し出された空気の排出先を管理する必要があります。排気方式は発生源付近の空気を除去しやすい一方、排気が地上作業者、歩行者、建物の給気口、別の地下空間へ影響しないようにします。
奥行きのある空間や隔壁の多い構造では、給気と排気を組み合わせたり、複数のダクトを使用したりする方法も検討します。ただし、気流が互いに打ち消し合ったり、開口部の近くだけを循環したりしないよう、作業範囲を通過する流れをつくる必要があります。
換気用の吸気口は、発電機、エンジンポンプ、工事車両、溶接、喫煙場所などから離します。風向きが変化して排気が吸気口へ戻る可能性もあるため、開始時だけでなく作業中も周辺状況を確認します。発電機を使用する場合は、排気方向、設置場所、電源ケーブルの防水、漏電保護、通行障害にも注意します。
酸素欠乏危険作業の換気に純酸素を使用してはいけません。酸素濃度を高めれば安全になるという考えは誤りであり、燃焼や酸化を促進して火災危険を高めます。換気には、汚染されていない外気を使用します。
可燃性ガスや可燃性蒸気が存在する可能性がある場合は、送風機、照明、測定器、電源設備などが着火源にならないか確認します。危険場所の評価に応じた仕様の機器を選び、通常型機器を使用できると決めつけないことが重要です。
内部容積と送風量から求めた換気時間は、あくまで目安です。短絡流、死角、隔壁、ダクト配置によって、計算上の時間が経過しても危険な空気が残る場合があります。換気後は所定の位置で濃度を測定し、基準を満たしていることを確認してから入坑します。
作業中にガスや蒸気が発生する場合は、入坑前の置換換気だけでは足りません。発生源に近い位置で排気する局所換気や、作業中の連続換気を検討します。作業工程や材料の使用量が変わるときは、換気能力と測定方法を見直します。
確認項目4 給気口と排気口の位置を適切に設定する
十分な能力の送風機を使用しても、ダクトの位置が不適切なら換気効果は下がります。重要なのは、風を感じることではなく、作業範囲の空気を計画的に入れ替えることです。
給気ダクトの先端を開口部の直下に置くだけでは、送り込んだ空気がすぐ地上へ戻る短絡流が生じる可能性があります。給気ダクトは、作業位置、奥部、底部、空気が滞留しやすい区画を考慮して配置します。作業者へ強い風を直接当て続けることが別の負担になる場合もあるため、気流と作業性の両方を確認します。
排気方式では、吸引口を開口部付近に置くだけでは、深い位置や奥部の空気を十分に除去できません。ガスの発生源や滞留しやすい場所へ近づけます。ただし、ダクトが昇降、作業、退避、救助を妨げないようにします。
内部にはケーブル、支持金具、接続部、電気設備などがあります。ダクトを無理に押し込むと、既設設備を損傷したり、ダクトが折れ曲がって風量が低下したりする可能性があります。通過経路を事前に確認し、必要に応じて既設設備へ負担をかけない方法で固定します。
固定が不十分なダクトは、送風の反力、作業者との接触、車両振動などで位置が変わることがあります。作業開始時の位置だけでなく、作業中も先端位置、接続部、つぶれ、外れを確認します。ダクトを固定するときは、ケーブルや設備へ不適切に結束しないよう管理者の方法に従います。
複数の開口部を使用する場合は、給気口と排気口を適度に離し、空気が作業範囲を通過する経路を計画します。排気口から出た空気が吸気口へ戻らないようにし、地上の風向きも考慮します。
排気に有害ガスや溶剤蒸気が含まれる可能性がある場合は、監視員、交通誘導員、歩行者、周辺住民が吸い込まない位置へ排出します。建物の給気口、店舗入口、地下通路、側溝、別のマンホールなどへ流入する可能性も確認します。
換気経路を確認するために発煙などを用いる場合は、設備管理者が認めた安全な方法に限ります。可燃物、電気設備、火災報知設備への影響を確認し、不用意な発煙材や薬剤を使用しないようにします。
開口部周辺には、ダクト、測定ホース、電源ケーブル、通信線、救助器具が集中しやすくなります。空気環境だけでなく、作業動線、転落防止、交通規制、緊急退避、救助動線を含めて配置を決めます。換気設備を設置した状態で、安全に出入りできることを作業前に確認します。
確認項目5 作業中も換気と空気環境の監視を続ける
入坑前に安全を確認しても、作業中に条件が変化する可能性があります。堆積物を動かす、滞留水を排出する、高圧洗浄を行う、薬剤を使用する、止水部を開放するといった作業により、閉じ込められていたガスや蒸気が放出されることがあります。
必要な換気は作業中も継続します。騒音が気になる、寒い、ダクトが邪魔になるといった理由だけで送風機を止めたり、風量を下げたりしてはいけません。換気装置を停止する必要が生じた場合は、原則として作業を中止し、作業者を退避させたうえで対応します。
送風機の運転音がしていても、正常に換気できているとは限りません。ダクトの外れ、つぶれ、吸気口の閉塞、電源停止、電圧低下、ブレーカー作動などにより、風量が低下する場合があります。監視人は、送風機本体だけでなく、吸気口、排気口、ダクト、電源の状態も確認します。
酸素欠乏危険作業では、常時作業の状況を監視し、異常を早期に把握して関係者へ通報できる体制が必要です。監視人が交通誘導や資材運搬を兼務すると、作業者の変化や換気設備の異常を見逃すおそれがあります。監視に集中できる役割分担を行います。
空気環境は、作業条件に応じて定期測定または連続測定を行います。状態が急変する可能性がある場合は、作業者が携帯できる警報機器や連続測定器を検討します。ただし、警報器を持たせるだけで換気や監視を省略できるわけではありません。
測定器は、作業者の呼吸位置や危険な空気が滞留しやすい場所を考慮して配置します。一か所に固定した測定器だけでは、作業者が移動した先の変化を把握できない場合があります。作業範囲、発生源、気流の変化に応じて測定位置を見直します。
警報が鳴った場合は、測定器の故障だと決めつけず、直ちに作業を中止して退避します。内部に残って原因を確認しようとすると、退避の機会を失うおそれがあります。退避後に換気設備、測定器、作業内容、周辺環境を確認し、安全が再確認されるまで再入坑しません。
頭痛、めまい、吐き気、息苦しさ、ふらつき、判断力低下、異常な疲労感などが見られた場合も、空気環境の異常を疑います。本人が大丈夫だと述べても作業を続けさせず、速やかに退避させ、必要に応じて医療機関へつなぎます。
地上監視員は、内部作業者と継続的に連絡できる状態を保ちます。無線機や有線通信を使用する場合は、地下で実際に通信できるかを事前に確認します。通信不能を作業中止条件に含め、合図や通報手順を全員で統一します。
休憩、交代、停電、降雨、周辺作業の変更後は、換気と測定を改めて確認します。全作業者が場所を離れた後に再開する場合や、作業者の身体、換気装置などに異常があった場合は、再測定を行います。
確認項目6 異常時の退避と救助体制を整える
換気不足による事故では、最初の被災者を助けようとした人が、呼吸用保護具を持たずに内部へ入り、二次災害に巻き込まれることがあります。救助を急ぐ場面でも、安全が確認できない空間へ無防備で入ってはいけません。
作業開始前に、退避条件を具体的に決めます。測定器の警報、換気装置の停止、通信の途絶、作業者の体調不良、異臭、煙、浸水、火災、車両事故、ダクトの外れなどを中止条件として共有します。誰が中止を判断できるかも明確にします。
退避経路は、昇降設備、開口部までの通路、ダクトやケーブル、資材配置を含めて確認します。作業中に工具や資材を通路へ置くと、緊急時の退出を妨げます。入坑者と退坑者の人員確認を確実に行い、誰が内部にいるかを常に把握します。
作業者が自力で昇降できなくなった場合に備え、開口部の寸法、深さ、内部構造、作業者の装備に適した避難用具と救出用具を準備します。はしご、繊維ロープ、空気呼吸器等、要求性能墜落制止用器具等、引き上げ装置などを使用する場合は、現場条件への適合、取付設備の強度、操作手順を事前に確認します。
救助器具を現場に置くだけでは不十分です。実際に開口部へ設置できるか、道路設備や既設ケーブルと干渉しないか、救助者が安全に操作できるかを確認します。緊急時に初めて組み立てるのではなく、作業前に設置手順と役割分担を確認します。
酸素欠乏等の場所へ入って救出作業を行う場合、救助者には空気呼吸器等が必要です。防じんマスクや一般的な防毒マスクは、酸素が不足した環境で呼吸用空気を供給するものではありません。用途を誤ると救助者まで被災するおそれがあります。
救出後は、被災者に速やかに医師の診察または処置を受けさせます。外見上回復したように見えても、自己判断で作業へ戻さないようにします。消防や救急へ伝える現場名称、住所、進入口、作業位置、深さ、負傷者数、想定ガス、交通規制状況を整理します。
携帯電話がつながらない、騒音で通話しにくい、進入口が分かりにくいといった状況も想定します。複数の連絡手段を用意し、地上で救助隊を誘導する担当者を決めます。緊急連絡先は書類に記載するだけでなく、現場で確認しやすい位置に掲示します。
救助計画は書類だけで終わらせず、退避訓練や救助手順の確認を行います。誰が換気装置を確認するのか、誰が通報するのか、誰が交通を止めるのか、誰が救助器具を操作するのかを具体的に共有します。
異常発生後は、数値が一時的に正常へ戻っただけで作業を再開してはいけません。原因を調査し、換気方法、測定位置、作業手順、設備配置、監視体制を見直し、責任者の確認を受けてから再開します。
換気作業で見落としやすい注意点
電線共同溝の換気では、送風機の能力や測定値だけでなく、開口部周辺の転落、交通、電気、暑熱、騒音なども同時に管理する必要があります。
開口部へダクトや測定ホースを通すために、手すりや囲いを外すと、作業者や通行者が転落する危険があります。換気経路を確保しつつ、開口部への接近防止、覆工、手すり、監視など必要な転落防止措置を維持します。
送風機の騒音によって、内部作業者と監視員の連絡が聞こえにくくなる場合があります。換気装置を止めなくても連絡できる通信手段を用意し、連絡不能を作業中止条件に含めます。
降雨時には、送風機や電源設備が水にさらされる可能性があります。防水性、接地、漏電保護、配線経路を確認し、水たまりや鋭利な部分との接触を避けます。雨水が開口部へ流入して水位が上がる可能性がある場合は、退避基準を厳しく設定します。
高温期は、酸素欠乏だけでなく熱中症の危険が高まります。地下空間は湿度が高く、送風しても外気自体が高温であれば十分な冷却にならないことがあります。作業時間、休憩、水分と塩分の補給、体調確認を組み合わせます。
冬季は、冷たい外気の送風によって身体が冷えたり、結露が増えたりする可能性があります。換気を弱めるのではなく、防寒具、作業時間、休憩方法、滑り防止を調整し、必要な換気を維持します。
内部に通電中のケーブルや電気設備がある場合は、接近限界、充電部、損傷しやすい接続部を確認します。ダクト、測定器、金属部品、救助器具が電気設備へ接触しないようにし、換気安全と電気安全を一体で管理します。
滞留水の排出、高圧洗浄、堆積物の除去を行うと、空気環境が変化する場合があります。水位低下で汚泥が露出したり、堆積物がかき混ぜられたりすると、ガスが放出される可能性があります。作業開始後も測定と換気を継続します。
洗浄剤などの薬剤を使用する場合は、安全データシートと設備管理者の手順を確認し、異なる薬剤を不用意に混合しません。とくに酸性剤と塩素系薬剤など、組み合わせによって有害ガスが発生し得るものは厳格に分離します。
開口部を複数開ければ必ず安全になるわけではありません。転落箇所や交通規制範囲が増え、車両排気が別の開口部から流入する可能性もあります。各開口部の役割を決め、周辺環境を含めて管理します。
経験のある作業者が以前と同じ方法で作業する場合でも、確認を省略してはいけません。地下水位、堆積物、周辺工事、気象、ケーブル配置は変化します。過去の経験は参考になりますが、当日の測定や換気確認の代わりにはなりません。
記録を残して次回の安全管理につなげる
換気不足による事故を防ぐには、当日の作業を安全に終えるだけでなく、確認結果を記録し、次回へ引き継ぐことが重要です。
記録には、作業場所、日時、天候、作業内容、入坑者、監視人、作業主任者、測定者、換気設備、ダクト配置、測定位置、測定項目、測定値、換気開始時刻、入坑時刻、退坑時刻、異常の有無などを残します。測定値が変化した場合は、その時点の作業内容や換気状態も記載します。
酸素欠乏危険作業場で法令に基づく濃度測定を行った場合は、測定日時、方法、箇所、条件、結果、測定者、講じた措置を記録し、所定の期間保存します。測定値だけでは、後から安全性を検証できないため、位置と条件を合わせて残すことが重要です。
内部構造やダクト配置は、文章だけでは伝わりにくい場合があります。設備管理者が認める方法で、配置図、略図、写真などを残すと、次回の計画に活用しやすくなります。ただし、撮影に気を取られて監視や安全確認がおろそかにならないようにします。
換気前後や作業工程ごとの測定結果を比較すれば、採用した換気方法が有効だったかを検証できます。ただし、換気前の測定が必要な場合も、測定者の安全を確保した方法で行います。十分な改善が見られなかった場所では、ダクト位置、給排気方式、送風量、測定位置を見直します。
送風機や測定器に不具合があった場合は、機器名だけでなく、風量低下、電源停止、警報不作動、ホース詰まりなどの症状を記録します。点検や修理が完了するまで使用しない管理を徹底します。
作業者の気付きも重要です。奥部まで風が届きにくかった、騒音で連絡が取りにくかった、ダクトが退避経路を狭めた、測定器の表示を確認しにくかったなど、数値に表れない問題を残します。
異常やヒヤリハットが発生した場合は、個人の不注意だけで処理せず、作業計画、設備配置、教育、監視体制、機器選定に改善点がなかったかを検討します。原因と対策を手順書やチェックシートへ反映し、同じ問題の繰り返しを防ぎます。
作業終了後は、責任者が記録内容を確認します。不足があれば当日のうちに確認し、次回へ曖昧な情報を残さないようにします。
まとめ
電線共同溝の換気不足による作業事故を防ぐには、送風機を運転するだけでは足りません。内部構造、法令上の位置付け、濃度測定、換気方法、作業中の監視、退避、救助、記録を一連の安全管理として実施する必要があります。
一つ目は、作業場所の構造と法令上の位置付けの確認です。図面だけで判断せず、開口部、隔壁、ケーブル、管路、滞留水、堆積物を確認し、酸素欠乏危険作業に該当する場合は、作業主任者の選任と特別教育など必要な措置を整えます。
二つ目は、入坑前の空気環境測定です。原則として安全な外部から測定し、開口部付近だけでなく、上部、中央部、底部、奥部、作業者の呼吸位置を確認します。酸素濃度だけでなく、現場条件に応じて硫化水素、一酸化炭素、可燃性ガス、使用材料から生じる蒸気も検討します。
三つ目は、必要な換気量と送風方式の検討です。定格風量だけに頼らず、ダクトの長さ、曲がり、つぶれ、内部構造による風量低下を考慮します。換気に純酸素を使用せず、汚染されていない外気を使用します。
四つ目は、給気口と排気口の配置です。空気が開口部付近だけを循環しないよう、作業範囲を通過する気流をつくります。排気が地上の作業者、歩行者、建物、別の地下空間へ影響しないことも確認します。
五つ目は、作業中の継続監視です。換気装置の停止、ダクトの外れ、作業によるガス発生、作業者の体調変化に備え、監視人、通信手段、測定器を適切に配置します。
六つ目は、異常時の退避と救助体制です。警報や体調不良が発生した場合は直ちに退避し、呼吸用保護具を持たない人が救助のために入ることを防ぎます。避難用具、救助器具、通報、誘導、医療機関への連絡まで事前に確認します。
電線共同溝の内部環境は、天候、地下水、周辺工事、作業内容によって変化します。過去に問題がなかった場所でも、その日の安全が保証されるわけではありません。事前確認、測定、換気、監視、退避、救助、記録を徹底し、換気不足による作業事故と二次災害の防止につなげることが重要です。