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電線共同溝の酸素欠乏事故を防ぐ5つの入坑前確認

電線共同溝の特殊部やマンホールなど、人が立ち入る地下空間では、地上から内部が見えていても安全な空気が確保されているとは限りません。長期間閉鎖されていた場所、雨水や地下水が滞留した場所、泥や有機物が入り込んだ場所では、微生物による分解や金属の酸化などによって酸素が消費されることがあります。隣接する管路や地下設備、周辺で使用する機械の影響により、低酸素空気や有害ガスが流入する可能性もあります。

酸素欠乏の危険は、目視や臭いでは正確に判断できません。外観に異常がなくても、入坑直後に意識障害を起こすおそれがあります。倒れた作業者を助けようとして、呼吸用保護具を使用せずに救出へ入り、救助者まで被災する二次災害も防がなければなりません。

電線共同溝の安全管理では、入坑後に異常を探すのではなく、入坑前に法令上の位置付けと現場固有の危険を確認し、換気、測定、監視、退避、救出の条件を整えることが重要です。本記事では、電線共同溝で酸素欠乏事故を防ぐための5つの入坑前確認を、現場管理者、設備管理者、点検担当者、施工担当者が運用しやすい形で解説します。

電線共同溝で酸素欠乏事故が起こる背景

酸素欠乏症等防止規則では、空気中の酸素濃度が18%未満の状態を酸素欠乏と定義しています。また、同規則では、酸素濃度が18%未満である状態または硫化水素濃度が10ppmを超える状態を酸素欠乏等として扱っています。酸素欠乏危険作業では、作業場所の酸素濃度を18%以上に保つよう換気することが原則です。第二種酸素欠乏危険作業では、酸素濃度を18%以上、かつ硫化水素濃度を10ppm以下に保つ必要があります。

電線共同溝に関して特に重要なのは、労働安全衛生法施行令別表第6が、ケーブル、ガス管その他地下に敷設される物を収容するための暗きょ、マンホールまたはピットの内部を酸素欠乏危険場所として掲げている点です。電線共同溝の特殊部や人が立ち入るマンホールがこの構造と用途に当たる場合、その内部で行う作業は、単なる自主的な安全配慮ではなく、酸素欠乏危険作業として法令に沿った管理が必要です。

したがって、「電線共同溝だから有害ガスは発生しない」「通信や電力の設備だから酸素欠乏危険場所ではない」と判断してはいけません。一方で、施設の名称だけを見て作業区分を決めるのでもなく、対象設備が暗きょ、マンホール、ピットなどのどの構造に当たり、どのような物を収容し、滞水や汚泥などの条件があるかを図面と現地で照合します。第二種酸素欠乏危険作業への該当性や、酸素と硫化水素以外に測定すべきガスがあるかも、場所と作業内容に応じて確認します。

電線共同溝の特殊部は、地上との開口部が限られ、内部の空気が自然に入れ替わりにくい場合があります。蓋を開けただけでは、底部、管路口付近、隔壁の裏側、ケーブルラックの下部まで十分に換気されないことがあります。内部が複数区画に分かれている場合は、入口付近の測定値が正常でも、奥側に低酸素空気が残っている可能性があります。

雨水や地下水が流入した場所では、水や泥に含まれる有機物の分解によって酸素が消費されることがあります。鋼製部材や金具の酸化、周辺地盤からの気体流入、汚泥や腐敗物からの硫化水素発生も考慮が必要です。排水して水位が下がった後も、空気が安全な状態へ戻っているとは限りません。泥を動かしたことで、それまで水中や堆積物中にあったガスが放出されることも想定します。

工事中は、発電機や内燃機関を使用する機械の排気にも注意が必要です。送気用の吸気口付近で排気ガスを発生させると、換気によって一酸化炭素などを地下へ送り込むおそれがあります。舗装、掘削、排水、清掃などが周辺で同時に行われる場合は、自分たちの作業だけでなく近接作業の開始時刻、使用機械、排気位置、設備操作も確認します。

酸素欠乏事故を防ぐには、測定器を持参するだけでは不十分です。法令上の該当性、危険要因、作業計画、作業主任者、特別教育、換気、測定、監視、人員確認、退避、救出を一つの管理手順として組み立てる必要があります。

入坑前確認1 作業場所の法令上の位置付けと作業計画を確認する

最初の入坑前確認は、対象となる特殊部やマンホールが酸素欠乏危険場所に該当するかを確認し、その前提を作業計画へ反映することです。電線共同溝のうち、ケーブルなど地下敷設物を収容する暗きょ、マンホールまたはピットの内部に該当する場所では、酸素欠乏危険作業として必要な措置を計画します。判断に迷う場合は、施設管理者、安全衛生担当者、元方事業者などと確認し、法令の適用を自己判断で狭めないことが大切です。

事前資料として、施設台帳、完成図、構造図、点検記録、過去の濃度測定結果、補修履歴、浸水履歴、排水設備の運転履歴などを確認します。ただし、前回の測定値が正常だったことは、当日の安全を保証しません。閉鎖期間中に浸水、腐食、堆積、管路からの空気流入などが生じている可能性があるため、その日の作業開始前に改めて測定します。

確認するのは、特殊部の深さや広さだけではありません。入口の数、換気に利用できる開口部、内部の区画、管路の接続方向、集水部、排水設備、ケーブルや支持金具の配置、はしごの状態、作業者の移動経路も重要です。空気が滞留しやすい場所を想定できれば、測定点と換気ホースの位置を具体的に決められます。

過去に滞水した場所では、現在の水位だけでなく、泥や堆積物が残っていないかを確認します。排水ポンプを運転する場合は、排水によって堆積物が乱されること、隣接空間との空気の流れが変わることも検討します。排水施設や別の地下設備とつながっている場合は、低酸素空気や有害ガスが流入する経路にならないかを確認します。

作業計画には、入坑目的、作業範囲、予定時間、入坑人数、作業順序、換気方法、測定項目、測定点、測定時期、監視方法、連絡方法、退避条件、救出方法を具体的に記載します。内部で清掃、泥のかくはん、切断、接着、塗装、排水、はつり、溶接などを行う場合は、その作業により粉じん、蒸気、溶接ガス、一酸化炭素、可燃性ガスなどが発生しないかも評価します。酸素と硫化水素だけで安全を判断できない作業では、想定されるガスに応じた測定器を選びます。

近接する作業場の影響によって酸素欠乏等のおそれがある場合は、作業場同士で連絡を保つ必要があります。周辺で別工事や設備操作が予定されているときは、開始時刻、使用機械、排気位置、管路やバルブの操作、排水操作、停電予定などを事前に共有します。作業中に連絡なしで条件が変わらないよう、連絡責任者も決めます。

作業計画では、中止基準を先に定めます。濃度が基準を満たさない、測定値が安定しない、換気装置に異常がある、監視体制を確保できない、連絡機器が使えない、救出用具が準備できない、開口部周辺の交通安全を確保できないといった場合は入坑しません。換気しても安全な濃度を維持できない場合は、作業方法そのものを見直し、法令に適合する空気呼吸器等の使用を含めて再計画します。

「入口のすぐ下だけ」「数分で終わる」という理由で確認を省略してはいけません。酸素欠乏の影響は作業時間の長さだけで決まらず、危険な空気を吸入すれば短時間でも重篤な状態になるおそれがあります。短時間作業ほど準備が簡略化されやすいため、入坑の有無を基準として同じ確認手順を適用します。

入坑前確認2 作業主任者と入坑者の体制を確認する

2つ目の確認は、作業を指揮する人、入坑する人、地上で監視する人の役割を明確にすることです。酸素欠乏危険作業では、第一種酸素欠乏危険作業については、酸素欠乏危険作業主任者技能講習または酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習を修了した人から作業主任者を選任します。第二種酸素欠乏危険作業については、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習を修了した人から選任する必要があります。

作業主任者は、書類に氏名を記載するだけの役割ではありません。作業方法を決定し、労働者を指揮し、定められた時期に濃度測定を行い、測定器具、換気装置、空気呼吸器等を点検し、呼吸用保護具の使用状況を監視します。入坑前には、選任された作業主任者が現場にいて、対象場所、作業内容、測定結果、設備の状態を把握できることを確認します。

入坑者については、酸素欠乏危険作業に必要な特別教育を受けているかを確認します。教育内容には、酸素欠乏等の発生原因、症状、空気呼吸器等の使用方法、事故時の退避、救急そ生などが含まれます。経験年数が長いことや過去に同じ場所へ入ったことは、特別教育の代わりにはなりません。

新規入場者、応援作業者、協力会社の作業者が加わる場合は、教育記録だけでなく、当日の作業手順と退避ルールを理解しているかを確認します。地下空間では、声が届きにくい、照明が限られる、ケーブルや設備が移動の障害になるといった条件があります。入坑後に初めて手順を説明する運用は避けます。

酸素欠乏危険作業では、常時作業状況を監視し、異常時に作業主任者や関係者へ直ちに通報する人を置くなど、異常を早期に把握するための措置が必要です。監視担当者が別作業に集中して入口から離れると、入坑者の異常や換気停止を見逃すおそれがあります。監視に必要な視認、通信、警報確認を継続できる配置とし、兼務させる場合も監視機能が失われないことを確認します。

入坑者と退坑者の人員確認も欠かせません。作業場所への入場時と退場時に人数を確認し、交代、休憩、資材搬入などで出入りがあるたびに記録します。入口が複数ある場合は、別の入口から退坑した人を見落とさないよう、名簿、入坑札、無線連絡などの方法を統一します。

関係者以外の立入りを防ぐため、開口部周辺には立入禁止の表示と区画を設けます。道路や歩道上では、第三者の転落防止、車両接触防止、蓋や資材の転倒防止も同時に計画します。酸素欠乏対策だけに集中して、開口部からの墜落や交通災害を見落とさないことが重要です。

体調確認も入坑前に行います。睡眠不足、発熱、呼吸器症状、強い疲労などがある人は、異常の自覚や退避が遅れる可能性があります。本人の申告を受けるだけでなく、現場責任者が会話や動作を確認し、無理な入坑をさせない判断をします。

入坑前確認3 換気方法と空気の流れを確認する

3つ目の確認は、換気装置を設置したかではなく、作業範囲全体へ新鮮な空気が届き、安全な濃度を維持できる計画になっているかを確認することです。特殊部の蓋を開けただけの自然換気では、底部や奥部の空気が十分に入れ替わらないことがあります。送気、排気、または両方を組み合わせ、空間の形状と危険物質の発生位置に応じて換気します。

送気式では、地上の新鮮な空気を内部へ送り込みます。送気用の吸気口を車両、発電機、内燃機関を使用する機械などの排気口付近へ置いてはいけません。風向きが変わることも考慮し、排気源から離れた清浄な位置を選びます。送気口周辺で塗装や薬剤使用などが行われる場合も、吸い込む空気が汚染されないことを確認します。

排気式では、排出したい空気が滞留している場所の近くへ吸込み口を配置します。底部や奥側に低酸素空気や有害ガスが残る可能性があるのに、入口付近だけを排気しても十分な効果は得られません。排気管の吐出口は作業者や第三者へ影響しない位置に設け、排出した空気が送気口へ戻らないようにします。

送気と排気を同時に行う場合は、送気口と排気口を近づけすぎないことが重要です。近接させると、送った空気が作業範囲を通らずに排出される短絡が起こる可能性があります。隔壁、ケーブル、ラック、資材などが空気の流れを妨げる場合は、ホースを分岐させる、位置を変更する、複数の開口を利用するなどして死角を減らします。

換気装置の能力は、カタログ上の風量だけで判断しません。ホースの長さ、曲がり、口径、つぶれ、接続部の漏れ、フィルターの目詰まりによって実際の風量は低下します。設置後は、ホースの接続状態、吐出口の風、電源、燃料、漏電対策、予備電源や代替機の有無を確認します。

作業中は、安全な濃度を維持するために換気を継続します。休憩や資材搬入の都合で安易に停止しないようにし、電源コードの抜け、ブレーカー作動、燃料切れ、ホース外れなどを監視担当者が直ちに把握できる配置とします。換気が停止した場合は、原因確認のために内部へ残るのではなく、定めた手順に従って退避し、再換気と再測定を行います。

換気後は、濃度測定によって安全な状態を確認します。「何分換気したから安全」という時間だけの判断はできません。内部容積、形状、区画、堆積物、管路からの流入、送風量などによって必要な換気時間が変わるためです。

換気に純酸素を使用してはいけません。純酸素を送り込むと酸素濃度が過度に高くなり、燃焼や酸化を促進して火災など別の危険を生じさせます。酸素欠乏危険作業の換気は、新鮮な空気を用いて行います。

爆発や酸化の防止のため換気できない場合、または作業の性質上換気が著しく困難な場合は、通常の換気作業と同じ扱いで入坑してはいけません。法令に適合する空気呼吸器、酸素呼吸器または送気マスクなどを、同時に作業する人数に応じて準備し、使用前点検と装着訓練を行います。防じんマスクや吸収缶式の防毒マスクなど、周囲の空気をろ過する方式の保護具は酸素を供給しないため、酸素欠乏環境の対策にはなりません。

入坑前確認4 酸素濃度などの測定方法を確認する

4つ目の確認は、測定器が現場にあるかではなく、必要な測定器を用いて、作業主任者が安全な方法で適切な場所と時期に測定できる状態かを確認することです。酸素欠乏危険作業では、その日の作業開始前に酸素濃度を測定します。第二種酸素欠乏危険作業では、酸素濃度と硫化水素濃度の両方を測定します。

作業主任者は、その日の作業開始前に加え、休憩などで作業に従事するすべての労働者が作業場所を離れた後に再び作業を開始する前、労働者の身体や換気装置等に異常があったときにも測定します。作業前の一回だけで測定を終える運用では不十分です。

測定器は、使用前に外観、電池残量、センサー、吸引ポンプ、採気ホース、フィルター、警報機能を点検します。製造者や機器管理者が定めた方法と周期に従って、校正、バンプテスト、作動確認などが実施されていることも確認します。前回使用できた機器でも、保管中に電池が消耗したり、センサーやホースが劣化したりする可能性があります。

測定は、外部の安全な場所から行うことを原則とします。採気ホースなどを使用し、入口付近、中間部、底部、奥部、管路口付近、隔壁の裏側など、空気が滞留しやすい場所を確認します。測定のために身を乗り入れたり、未測定の空間へ顔や上半身を入れたりしてはいけません。内部へ立ち入って測定する必要がある場合は、空気呼吸器等を使用し、転落のおそれに応じた墜落制止用器具を用い、測定者を監視する体制を整えます。

内部の形状が上下に長い場合は、上部、中部、下部のように高さを変えて測定します。横方向に広い場合は、入口側と奥側、左右の区画、管路が集中する位置などを分けます。特定のガスが必ず上部または下部だけに集まると決めつけず、作業者が移動する範囲と、ガスの流入または発生が想定される範囲を網羅します。

測定値は、表示された瞬間値だけで判断しません。採気ホースの長さと機器の応答時間を考慮し、表示が安定してから記録します。地点を移した直後の値や、外気が混ざりやすい開口部付近の値だけを採用すると、内部の状態を見誤る可能性があります。

酸素濃度は18%以上を確保します。第二種酸素欠乏危険作業では、硫化水素濃度を10ppm以下に保つ必要があります。基準を満たさない場合は入坑せず、換気方法やガスの流入源を見直して再測定します。測定値が基準に近い、地点による差が大きい、変動が続くといった場合は、数値を都合よく解釈せず、換気の強化、測定点の追加、連続監視など安全側の措置を取ります。

発電機や内燃機関の排気が影響する可能性がある場合は一酸化炭素、可燃性ガスの流入が想定される場合は可燃性ガスなど、作業計画で抽出した危険に応じて測定項目を追加します。酸素濃度が正常でも、別の有害ガスが安全とは限りません。使用する多成分ガス検知器が必要なガス種に対応し、警報設定が現場の管理基準に合っていることを確認します。

内部で排水、泥のかくはん、清掃、資材移動、隔壁や設備の開放などを行うと、空気の状態が変化する可能性があります。作業内容に応じて携帯型の警報付き測定器を使用し、作業中も濃度変化を監視します。警報が鳴った場合は、その場で原因を探すのではなく、まず退避することを全員に徹底します。

測定値に疑問がある場合は、別の測定器で照合する、器具を点検する、採気ホースを交換する、測定地点を増やす、換気をやり直すなどの対応を取ります。測定値が不安定であること自体が、空気環境または測定条件に問題がある可能性を示しています。

入坑前確認5 監視と緊急時対応を確認する

5つ目の確認は、異常が起きたときに入坑者が確実に退避でき、救助者の二次災害を防げる体制があるかを確認することです。濃度測定と換気を実施しても、停電、換気装置の故障、ホース外れ、気体の急な流入、泥のかくはんなどによる環境変化を完全に排除できるわけではありません。

監視担当者は、入坑者の人数、位置、作業状況、換気装置の運転状態、警報器の状態、周辺作業の変化を継続して把握します。地下では無線や携帯通信が届きにくいことがあるため、現場条件に合う有線通話、無線、定時連絡、ロープ合図などを組み合わせます。通信機器は入坑前に実際の位置で試験します。

連絡合図は、通常連絡、作業中止、退避、救助要請を区別して決めます。一定時間応答がない場合は異常として扱い、監視担当者が単独で内部へ確認に入らないことも明確にします。救出は、事前に定めた指揮系統と装備の下で行います。

退避条件には、測定器の警報、換気停止、停電、異臭、視界の急変、めまい、頭痛、吐き気、息苦しさ、判断力低下、足元のふらつきなどを含めます。一人でも異常を訴えた場合は、症状の軽重を現場で見極めようとせず、全員を退避させます。酸素欠乏等のおそれが生じたときは、直ちに作業を中止し、作業従事者を退避させ、危険がないことを確認するまで立入りを制限します。

非常時に必要な用具として、作業条件に適合する空気呼吸器等、はしご、繊維ロープなどを準備し、その日の作業開始前に点検します。酸素欠乏症等によって転落するおそれがある場合は、墜落制止用器具と安全に取り付ける設備も必要です。単に入口付近へ置くだけでなく、誰が装着し、誰が操作し、どの経路で引き上げるかを決めます。

倒れた人を発見しても、空気呼吸器等を使用せずに救出へ入ってはいけません。救助者が同じ空気を吸えば、同様に意識を失う可能性があります。酸素欠乏等の場所で救出作業を行う人には空気呼吸器等を使用させ、地上からの救出が可能な場合は、救出装置やロープを用いて不用意な再入坑を避けます。消防への通報を含め、無理な単独救助をしない方針を共有します。

緊急連絡先、現場住所、開口部の位置、進入経路、ゲートの開け方、誘導担当者も決めます。地下施設の入口が道路上や広い工事区域内にある場合、救急隊が到着しても場所を特定できないことがあります。位置を説明できる地図や目標物を地上側で用意し、誘導担当者を配置します。

入口周辺では、救助活動に必要な空間を確保します。換気装置、資材、車両などで動線をふさぐと、担架や救出器具を使用できません。通常作業の効率だけでなく、緊急時に人を引き上げ、救急隊へ引き渡せる配置になっているかを入坑前に確認します。

入坑直前の打ち合わせで認識をそろえる

5つの確認を実施した後は、入坑者、作業主任者、監視担当者、現場責任者が集まり、入坑直前の打ち合わせを行います。書類上の計画が整っていても、関係者が内容を理解していなければ安全対策は機能しません。

打ち合わせでは、作業範囲、入坑順序、担当作業、換気装置の運転状態、測定項目、測定点、測定結果、連絡方法、退避合図、中止条件、救出手順を口頭で確認します。測定結果は「異常なし」とだけ伝えるのではなく、どこを測り、どのような値だったかを共有します。

作業中に予定を変更する可能性がある場合は、変更できる範囲と再確認が必要な条件を決めます。予定より奥へ進む、別区画を開放する、泥を除去する、排水設備を動かす、換気ホースを移動する、作業機械を追加するといった変更は、空気環境へ影響する可能性があります。作業主任者の確認を受けずに範囲や手順を広げないようにします。

入坑直前には、換気が継続していること、必要な地点の測定が完了していること、測定器が作動していること、監視担当者が配置されていること、連絡機器が使えること、人員管理方法が機能していること、救出用具が準備されていることを最終確認します。一つでも満たせない条件があれば、開始時刻を優先せず作業を保留します。

電線共同溝の点検では、交通規制時間、停電時間、立会時間などの制約から開始を急ぎたくなる場面があります。しかし、酸素欠乏事故が起きれば、重大な人的被害だけでなく長期の作業停止につながります。工程上の制約を理由に入坑前確認を省略しないことが、結果として工事全体の安定につながります。

測定結果と作業記録を次回の安全管理につなげる

酸素濃度などの測定結果は、その日の入坑可否を判断するだけでなく、次回の作業計画を改善する資料になります。法令上の測定を行ったときは、測定日時、測定方法、測定箇所、測定条件、測定結果、測定者の氏名、測定結果に基づいて講じた措置をその都度記録し、3年間保存します。

測定場所は、「特殊部内」とだけ記録するのではなく、入口、底部、北側管路口、奥側区画など、後から位置を再現できる表現にします。測定値に差があった場合は、換気ホースの位置、換気時間、蓋の開放状態、排水や清掃の実施状況も記録すると、空気が滞留しやすい場所を分析できます。

換気前後の測定値を残せば、換気方法の改善に役立ちます。ただし、過去に何分換気すれば正常になったかという記録だけで、次回の安全を判断することはできません。気温、浸水、堆積物、周辺作業、風向きなどが変わるため、毎回の測定と現場確認が必要です。

測定器や換気装置に不具合があった場合は、その場で交換して終わりにせず、不具合内容、発生日時、処置、点検結果を記録します。同じ機器で不具合が繰り返される場合は、保守方法、校正周期、保管方法、更新時期を見直します。

警報が一時的に作動した、連絡が途切れた、換気ホースが外れた、第三者が作業区域へ入った、入口付近へ車両の排気が流れたといった事象も記録します。事故にならなかった出来事にも、設備配置や手順を改善する情報が含まれています。

記録を現場写真や位置情報と関連付ける場合は、安全管理を優先し、撮影や端末操作のために監視を中断しないよう担当を分けます。地下内部では衛星測位を利用できないため、位置情報を使うときは、地上の開口位置や安全な地上側の撮影地点を基準に整理します。また、可燃性ガスなどによる爆発性雰囲気のおそれがある場所では、一般の電子機器を安易に持ち込まず、施設管理者の規程と防爆要件を確認します。

地上の開口位置、点検対象、写真、作業記録を関連付けて管理する方法を検討する際は、使用条件を確認したうえでLRTK Phoneを活用する選択肢もあります。ただし、LRTK Phoneを含む記録機器は、酸素濃度測定器、ガス検知器、監視、換気、救出用具の代わりにはなりません。端末による記録は地上側の補助業務として位置付け、安全確認を終えた範囲で使用します。

まとめ 電線共同溝の入坑は法令確認と濃度測定から始める

電線共同溝のうち、ケーブルなど地下敷設物を収容する暗きょ、マンホールまたはピットの内部は、労働安全衛生法施行令別表第6に掲げる酸素欠乏危険場所に該当します。対象となる特殊部へ入る作業では、法令上の位置付けを確認したうえで、作業計画、作業主任者、特別教育、換気、濃度測定、監視、人員確認、退避、救出の措置を整える必要があります。

蓋を開けたときに異臭がない、入口から内部が見える、前回の点検で問題がなかったといった情報は、安全を保証しません。人の感覚や過去の実績ではなく、その日の作業開始前に行う測定と、定められた手順によって入坑可否を判断します。

酸素濃度が18%以上であっても、第二種酸素欠乏危険作業では硫化水素濃度を10ppm以下に保つ必要があります。また、作業内容や周辺機械によっては、一酸化炭素や可燃性ガスなど別の危険も確認しなければなりません。作業中は換気と監視を継続し、作業者の身体、換気装置、測定値に異常があれば直ちに退避します。

安全管理の質を高めるには、測定値、測定位置、換気条件、作業内容、設備不具合、ヒヤリとした事象を記録し、次回の計画へ反映する仕組みが欠かせません。記録のデジタル化は有効な補助となりますが、入坑前の測定と現場体制を置き換えるものではありません。電線共同溝の入坑は、法令上の該当性を確認し、安全な空気を測定で確かめ、異常時に退避できる体制を整えてから始めます。

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