電線共同溝の管路には、将来のケーブル敷設や更新に備えて通線ロープが収容されていることがあります。通線ロープは、呼び線や仕様に合う牽引用ロープを管路内へ通すための補助材です。長期間使われないことも多く、地上から状態を確認できないため、通線作業の直前まで劣化が見つからない場合があります。
作業開始後にロープが切断すると、切断片が管路内に残る、新しい呼び線を別の方法で通し直す、牽引中の接続部や対象物が途中で止まるなど、工程へ大きな影響が及びます。長い管路、曲線部が多い管路、内部へ土砂や水が入っている管路では、復旧に時間を要する可能性があります。
電線共同溝の維持管理では、施設の破損状況、設置環境、交通状況、設備形態などを考慮し、画一的ではなく総合的に判断することが求められます。また、点検結果は文字や数値だけでなく、図面や写真も含めて管理する考え方が示されています。
通線ロープも、設置年数だけで一律に交換時期を決めるのではなく、材質、構造、直径、保管状態、管路環境、過去の荷重、端末処理などを合わせて評価する必要があります。なお、現場で独自に破断試験や過大な引張試験を行い、切れなかったことだけを根拠に使用可能と判断してはいけません。判定は道路管理者や設備管理者の基準、ロープ製造者の取扱説明書、施工計画に従って行います。
本記事では、電線共同溝の通線ロープ劣化を見逃さないための5つの交換判断基準を解説します。表面損傷、材質変化、端末部、使用中の挙動、使用履歴と管路環境を総合的に確認し、安全な通線作業につなげるための実務上の考え方を整理します。
電線共同溝の通線ロープが劣化する原因
通線ロープは、通線作業に使った回数だけでなく、管路内で保管されている間にも状態が変化します。地下管路は常に乾燥しているとは限らず、浸入水、結露、土砂、温度変化、油分、薬品、金具との接触など、複数の要因が重なることがあります。
合成繊維ロープについては、紫外線、熱、化学薬品、溶剤、吸湿などの影響で強度が低下する場合があること、鋭角部との接触や地面での引きずりが損傷につながることが、業界団体監修の取扱説明書やメーカー資料で注意されています。保守点検では、摩耗、切断箇所、キンク、熱による溶融、アイ加工部の抜けや傷などを確認し、損傷が大きいロープは使用しないことが示されています。([TESAC][1])
管路へ水が入り、低い位置に滞留すると、ロープが泥水に長期間触れることがあります。材質によって吸水性や耐薬品性は異なるため、水に濡れたという事実だけで直ちに廃棄を決めることも、反対に乾燥させれば必ず元の性能へ戻ると考えることも適切ではありません。製品仕様が不明な場合や、泥水、油、薬品への接触履歴がある場合は、製造者の見解を確認するか、予防交換を検討します。
土砂が流入した管路では、砂粒がロープ表面や内部へ入り、通線時の摩擦によって摩耗を進める可能性があります。特に曲線部、継手部、管端の段差、管口周辺ではロープが局部的に押し付けられやすいため、表面損傷が集中していないかを確認します。
過去の作業で大きな抵抗が生じたロープも注意が必要です。対象物が引っ掛かった状態で牽引を続けた、牽引機器を急に始動した、接続部が急停止したといった事象があると、外観から分かりにくい内部損傷が生じる場合があります。一度切れなかったことは、次回も同じ荷重へ耐えることの保証にはなりません。
端末処理や保管方法も劣化速度を左右します。鋭い金具へ直接掛ける、狭い箇所へ強く締め付ける、蓋へ挟む、床面へ置いて踏み付ける、滞水へ浸けたままにするといった状態では、短い範囲へ損傷が集中します。余長を小さく巻き過ぎると、同じ位置へ曲げが残りやすくなります。
地上や明るい特殊部へ露出した端部では、紫外線や熱の影響が管路内部より強くなることがあります。反対に、見えている端部だけが健全で、管路内部の曲線部や滞水部に損傷がある場合もあります。目視できる端部の状態だけで、ロープ全長を健全と判断しないことが重要です。
交換判断基準1 毛羽立ちや繊維切れが広がっている
第一の交換判断基準は、毛羽立ち、擦れ、繊維切れ、ストランドの損傷、局部的な細り、編み構造の崩れなどが確認されることです。合成繊維ロープに対して「素線」という語を使うと、鋼線で構成されるワイヤロープと混同しやすいため、本記事では繊維切れ、ヤーン切れ、ストランド損傷など、対象の構造に合う表現を用います。ワイヤロープでは、素線はストランドを構成する細い鋼線を指します。([リンヤ][2])
軽微な毛羽立ちだけで直ちに破断を断定することはできません。ただし、毛羽立ちが長い範囲に連続する、一か所へ深く集中する、複数の繊維やストランドが切れている、芯材や内層が露出する、直径が部分的に細くなるといった状態では、荷重を負担する断面が減っている可能性があります。
点検では、損傷の量だけでなく、位置と分布を記録します。全体へ薄く広がる摩耗と、管口から一定距離の一か所に集中する深い擦り傷では、後者が局部破断へつながりやすい場合があります。管口からの距離、端末からの距離、損傷長さ、周方向の範囲を写真とともに残します。
泥や水分が付いたロープでは、細かな繊維切れが見えにくくなります。清掃する場合は、製造者の取扱条件に反しない方法で付着物を落とし、鋭い工具や強いブラッシングで新たな損傷を作らないようにします。清掃剤を使用する場合も、材質へ影響しないことを確認します。
ロープを緩やかに曲げると、直線状態では見えなかった繊維切れや硬化が分かる場合があります。ただし、点検のために強く折る、ねじる、キンクを作ることは避けます。キンクや結びがあるロープは強度が低下しているため使用しないよう、業界団体監修の取扱説明書でも注意されています。
損傷部を除去して残りを再利用できるかは、現場判断だけで決めません。製造者が認める補修方法や再スプライス方法があり、必要長さと強度が確保でき、適切な技能を持つ者が施工できる場合に限って検討します。単に見える損傷の直前で切り、結び直して再利用する方法は、端末強度や周辺の潜在損傷を確認できないため避けます。
損傷が広い範囲へ及ぶ、複数箇所にある、芯材が露出する、直径変化が大きい、管路内の状態を確認できない、仕様や設置時期が不明といった場合は、部分的な再加工より全交換を優先します。交換基準に数値が定められている製品は、その基準を優先します。
交換判断基準2 変色や硬化などの材質変化がある
第二の交換判断基準は、変色、退色、硬化、軟化、べたつき、溶融、焦げ、異常な光沢、弾力低下などの材質変化が確認されることです。表面に大きな切れがなくても、本来の柔軟性や繊維状態が失われていれば、必要な性能を維持していない可能性があります。
変色には、泥、さび、鉄分などの付着によるものと、紫外線、熱、薬品などによる材質変化が考えられます。清掃後に色が戻るかどうかは一つの参考になりますが、色だけで残存強度を判定することはできません。異臭、べたつき、脆さ、硬さ、繊維の固着なども合わせて確認します。
端部だけが退色している場合は、露出部で紫外線を受けていた可能性があります。管路内部は比較的暗くても、特殊部内の開口付近や地上へ引き出した部分では条件が異なります。露出期間が不明で、退色と硬化が同時に見られる場合は、重要な通線作業への再使用を避ける判断が必要です。
黒っぽい油状の汚れ、薬品臭、膨潤、溶けたような表面がある場合は、接触物質を確認します。材質ごとに耐薬品性が異なるため、付着物の種類が分からないまま拭き取って再使用可能と判断してはいけません。安全データシート、現場の流入履歴、製造者資料などを確認します。
硬化したロープは、緩やかに曲げても滑らかに追従せず、局部的に折れるような形になることがあります。反対に、異常に柔らかくなり、繊維同士が分離しやすい状態も異常です。いずれも外観だけでは強度を定量評価できないため、原因が特定できない場合は交換を基本に検討します。
表面の光沢については、単なる圧縮痕と、摩擦熱による溶融やグレージングを区別する必要があります。繊維が固着して硬い、焦げや溶融がある、周囲の構造が崩れている場合は使用を中止します。取扱説明書でも、熱による溶融は点検項目とされ、損傷の大きいロープは使用しないよう示されています。([TESAC][1])
同一仕様の未使用品や健全品と比較すると、色、太さ、柔軟性の変化を把握しやすくなります。ただし、手触りの比較は補助的な方法です。製造ロット、保管期間、材質が異なるロープを比較し、感覚だけで使用可否を決めないようにします。
交換判断基準3 結び目や端末部に損傷が集中している
第三の交換判断基準は、結び、輪加工部、スプライス部、アイ加工部、接続金具との接触部、管口付近などへ損傷が集中していることです。ロープ本体が比較的健全でも、荷重を伝える端末部が弱ければ、通線開始直後に破損する可能性があります。
結びはロープへ急な曲げと締め付けを生じさせ、強度を低下させることがあります。業界団体監修の取扱説明書では、結びやキンクのあるロープは強度が低下しているため使用しないこと、端末処理やスプライス加工は正しい方法で熟練者が行うことが示されています。したがって、既設ロープに結びがあることを前提に再使用するのではなく、製造者と管理者が承認した端末処理へ改めることを基本とします。
結び目や圧着部を解放できる場合は、管理手順に従い、隠れていた範囲を確認します。元の太さへ戻らない、扁平化している、光沢や硬化がある、繊維が切れている、編み目がずれている場合は、その部分を端末として再利用しません。
金具との接触部では、さび、ばり、角、変形、寸法不適合を確認します。ロープだけを新品へ交換しても、接続金具に鋭利部が残っていれば、新しいロープも損傷します。シャックル、フック、アイ、支持金具、滑車などは、ロープ径、端末構造、予定荷重に適合するものを使用します。
管口付近では、ベルマウスや保護材の欠落、管端の段差、砂の付着、牽引方向の偏りを確認します。一定方向へ長く続く擦り傷がある場合は、ロープ交換だけでなく、管口保護具や滑車の配置、牽引方向、送り出し方法を見直します。
端末部を切り詰めて再加工する場合は、製造者が認める方法、必要な除去長さ、スプライス仕様、端末強度を確認します。作業は必要な技能を持つ者が行い、完成後に外径、抜け止め、識別、必要余長を確認します。接続部の外径が大き過ぎると管路内の段差や曲線へ引っ掛かるため、強度だけでなく通過性も検討します。
特殊部内で保管する端末は、滞水へ浸からず、蓋に挟まれず、点検者が踏まず、他設備へ絡まない位置に保持します。端末部の交換後は、固定状態と周辺金具を含めて撮影し、初期状態を残します。
交換判断基準4 使用時や承認された確認で異常な伸びや変形が現れる
第四の交換判断基準は、実際の使用開始時または管理者と製造者が定めた確認手順の中で、異常な伸び、局部的な細り、ねじれ、編み構造の開き、外層のずれ、形状の戻りにくさが現れることです。
現場でロープを限界まで引っ張り、切れなければ使用可能とする独自の試験は行いません。過大荷重や衝撃荷重によって、確認作業そのものがロープを損傷させるほか、破断時の反動で作業者が被災する危険があります。取扱説明書でも、過荷重や急激な衝撃荷重を避け、荷重が掛かったロープの上に立つ、またぐ、延長線上で作業する行為を禁止しています。
引張確認が必要な場合は、対象ロープの製品仕様、予定使用荷重、確認荷重、保持時間、測定方法、合否基準、使用機器、退避範囲を文書で定めます。これらを現場担当者の感覚だけで設定せず、道路管理者、設備管理者、施工管理者、製造者の承認を得ます。
確認は急な始動や停止を避け、ロープ、接続部、金具、牽引機器の延長線上から人を退避させた状態で行います。荷重計を用いる場合は、測定範囲、校正状況、取付方向、接続部のがたつきを確認します。表示値だけでなく、ロープ全体と端末部の挙動を観察します。
一部だけが急に細くなる、編組が開く、外層がずれる、ねじれが一か所へ集まる、異常音がする、金具が移動する場合は、荷重を下げて作業を中止します。音がしないことや、荷重を除いた後に外形が戻ることだけを理由に健全とは判断しません。
使用開始時に予定より抵抗が大きい場合は、ロープ強度だけでなく、土砂、滞水、管路変形、管端段差、接続部の引っ掛かり、送り出し側の絡みなどを疑います。力を増やして突破しようとせず、抵抗が生じた位置と荷重を記録し、原因を確認します。
重要なケーブルを通す長距離管路や曲線の多い管路では、切断時の影響が大きくなります。仕様不明、履歴不明、外観異常あり、確認時の挙動異常ありのいずれかに該当する場合は、本番で使用せず交換する判断が安全です。
交換判断基準5 使用履歴や管路環境から再使用リスクが高い
第五の交換判断基準は、外観上の損傷が小さくても、設置時期、材質、直径、使用履歴、過去の荷重、管路環境などから再使用リスクが高いと判断されることです。合成繊維ロープは外観だけで残存強度を正確に把握できない場合があるため、履歴管理が重要です。
設置年月、製造者、品名、材質、直径、最小破断荷重、用途が不明なロープは、重要な作業への使用を避けます。色や太さが似ていることだけで仕様を推測してはいけません。識別情報が失われている場合は、交換して新しい仕様を台帳へ登録する方法が確実です。
過去に大きな牽引抵抗が生じた、牽引機器が何度も停止した、対象物が途中で固着した、接続部が衝撃を受けたといった履歴がある場合は、外観が比較的きれいでも慎重に扱います。荷重記録がない場合は、作業者の証言や作業日報も確認します。
使用回数だけで交換時期を決めることも適切ではありません。軽量の呼び線を引いた作業と、強い抵抗が生じた作業では負担が異なります。何を引いたか、管路長と曲線数、牽引方法、最大荷重、停止や引っ掛かりの有無を記録します。
長期滞水、土砂流入、油分、薬品、火災、高温などの履歴がある場合は、ロープだけでなく管路環境を確認します。原因を残したまま新品へ交換すると、同じ損傷が繰り返されます。必要に応じて管路清掃、導通確認、スコープ等による内部確認、排水設備や封止部の点検を行います。国土交通省の手引きでも、電線共同溝の管路内部をスコープで観察するなど、地中埋設物に応じた点検技術の必要性が示されています。
通線作業の中断による影響が大きい場合は、ロープ単体の交換費用だけでなく、交通規制、作業員、牽引機器、関係事業者の再手配を含めて判断します。使用できる可能性が残っていても、仕様や履歴を確認できず、失敗時の影響が大きい場合は予防交換が合理的です。
設置時期不明、仕様不明、過荷重履歴、長期滞水、化学物質接触など、複数の要因が重なる場合は再使用リスクが高まります。一つの変状が軽微であっても、総合評価で交換を決めることが重要です。
通線ロープ点検を安全に進める手順
点検は、対象となる管路を正しく特定することから始めます。路線名、特殊部番号、管路番号、起点と終点、管路延長、曲線部、既設ケーブルの有無を図面や台帳で確認し、現地表示との一致を確かめます。
特殊部やハンドホールへの立入りが必要な場合は、まずその場所が酸素欠乏危険場所等に該当するかを事前に確認します。該当する作業では、関係法令と管理者の手順に従い、作業開始前の酸素濃度等の測定、必要な換気、作業主任者の選任、監視、保護具、救出体制などを整えます。厚生労働省の災害事例では、酸素欠乏危険作業について作業前の酸素濃度と硫化水素濃度の測定、必要な換気などが対策として示されています。([あんぜんサイト][3])
点検前には、交通規制、蓋の開閉、転落、感電、滞水、滑り、挟まれ、既設設備との接触などの危険を確認します。対象ロープの両端に作業者を配置する場合は、連絡方法、合図、停止条件を決めます。
ロープ端部が蓋、支持金具、既設ケーブル、土砂へ拘束されていないかを確認します。急に引くと、周辺設備を傷つけたり、ロープが跳ねたりするため、最初は無荷重に近い状態で拘束の有無を確かめます。
外観点検では、端末、スプライス、アイ加工、金具接触部、管口付近を優先し、その後、可能な範囲でロープを確認します。摩耗、繊維切れ、直径変化、キンク、変色、硬化、軟化、溶融、べたつき、異臭を記録します。
ロープを引き出す前に、元へ戻す方法または新品へ交換する方法を決めます。既設ロープを完全に抜いた後、新しい呼び線を通せなくなる事態を防ぐためです。固着して動かない場合は無理に引かず、原因調査へ切り替えます。
荷重が掛かったロープの上に立つ、またぐ、身体へ巻き付ける、延長線上に立つ行為は避けます。突然の移動や破断時の反動を想定し、立入禁止範囲を設けます。
写真は、管路番号と周辺状況が分かる全景、端末部、損傷部の近景を組み合わせます。近景にはスケールを写し、前回点検と比較できるよう、可能な範囲で撮影方向と距離をそろえます。
判定は、使用可、要観察、交換、専門確認など、管理者が定めた区分で行います。点検者ごとのばらつきを減らすため、代表的な損傷写真、製品別の廃棄基準、判断に迷った事例を共有します。
交換作業で旧ロープを途中切断させない注意点
既設ロープを利用して新品を引き込む方法は効率的ですが、劣化した旧ロープへ荷重を加えるため、途中切断のリスクがあります。交換計画では、旧ロープが切れた場合の代替通線方法も準備します。
交換前に端末部と可能な範囲の本体を点検します。深い摩耗、複数の繊維切れ、キンク、溶融、異常な硬化、仕様不明がある場合は、旧ロープを牽引用として使う方法を見直します。
旧ロープと新ロープの接続は、管理者と製造者が認める方法で行い、必要強度と通過性を確保します。結びだけで接続するのではなく、適切なスプライス、プーリンググリップ、スイベル等を管路条件とロープ仕様に応じて選定します。端末処理やスプライス加工は正しい方法で熟練者が行うよう、取扱説明書でも示されています。
接続部から金具やテープが突出していると、継手や曲線部へ引っ掛かる可能性があります。外形を滑らかに整える場合も、巻いた材料が脱落して管路内に残らない方法を選びます。
入口側と出口側は連絡を取り、一定速度で引き込みます。送り出しが追い付いていない状態で牽引すると、旧ロープへ衝撃が加わります。抵抗が急増した場合は、荷重を増やさず直ちに停止します。
新品の送り出しでは、ターンテーブル等を用い、外側から順に引き出してねじれやキンクを防ぎます。取扱説明書でも、引き出し方法を誤ると撚りが変化し、ねじれやキンクが生じて性能低下につながるとされています。([TESAC][1])
管口へ強く擦れる場合は、管口保護具や滑車を使用し、牽引方向を管路中心へ近づけます。路面へ直接置かず、泥、砂、油、鋭利物から保護します。
新品が到達した後は、接続部周辺、本体、端末を再点検します。新しい摩耗や切れが見つかった場合は、管路内部の段差や異物を疑い、そのまま将来用として保管しません。
交換中の最大荷重、抵抗が増えた位置、停止回数、接続方法、使用機器、異常の有無を記録します。次回のケーブル通線計画へ反映し、同じ箇所での再発を防ぎます。
新しい通線ロープを選定する際の確認事項
新しい通線ロープは、以前と同じ色や見かけの太さだけで選びません。将来の用途、想定荷重、管路長、曲線部、既設物との干渉、保管環境、端末加工方法に合う仕様を選定します。
まず、軽い呼び線を引く補助ロープなのか、仕様の定まった牽引用ロープへ入れ替えるためのロープなのか、対象物を直接牽引するロープなのかを明確にします。用途を超える荷重へ使用しないよう、端部表示と台帳へ用途を記載します。
必要強度は対象物の重量だけで決まりません。管路内面との摩擦、曲線部の抵抗、始動時の荷重、接続部、施工方法を考慮し、設計条件、施工計画、管理者仕様、製造者資料に基づいて決めます。
直径は、強度、取り扱いやすさ、接続金具、管路内の占有、曲線部の通過性に関係します。細過ぎると端末や手元へ荷重が集中しやすく、太過ぎると既設物との干渉や引っ掛かりが増える場合があります。
材質は、耐水性、耐摩耗性、伸び特性、耐熱性、耐薬品性、長期保管への適性を確認します。同じ合成繊維ロープでも特性は異なるため、一般名だけで選定せず製品データを確認します。
伸びの大きいロープは衝撃を緩和しやすい一方、操作の遅れや蓄積エネルギーに注意が必要です。伸びの小さいロープは動きが伝わりやすい一方、急な荷重が端末へ伝わりやすくなります。複数種類を接続する場合も、伸び特性と接続方法の適合を確認します。
端末は、製造者が指定するスプライス、アイ加工、金具を用い、必要な技能を持つ者が加工します。結びを標準的な端末方法として安易に採用しません。完成後は識別、余長、外径、抜け止め、損傷の有無を確認します。
製造者、品名、材質、直径、長さ、製造ロット、設置日、予定用途を記録します。可能な範囲で同一路線の仕様を統一すると、点検と交換判断を標準化しやすくなります。
施工前の保管では、直射日光、高温多湿、化学薬品、有機溶剤、鋭利物を避け、地面へ直接置きません。取扱説明書も、直射日光を避け、熱源や薬品から離し、風通しの良い場所で保管するよう示しています。([TESAC][1])
交換後の劣化を抑える保管と管口管理
新品へ交換しても、管口や特殊部内の状態が悪ければ劣化は再発します。交換作業では、ロープだけでなく、水、土砂、鋭利部、端末拘束などの原因も除去します。
管口には、管理者仕様に合う封止と保護を行います。封止が不十分だと水や土砂が入りやすくなる一方、封止材でロープを強く押しつぶしたり、取り出せない状態にしたりしてはいけません。将来の点検と交換が可能な納まりを確認します。
特殊部内の余長は、床面の滞水へ浸からず、点検者の通路を妨げず、蓋へ挟まれず、設備へ絡まない位置に保持します。細い結束材で強く締めず、ロープを傷めにくい固定具を使用します。
余長を巻く場合は、製造者が示す曲げ条件を確認し、小さ過ぎる輪やキンクを避けます。巻取り時に撚りを入れず、必要に応じてターンテーブル等を使います。
地上へ露出する部分は紫外線と雨水から保護します。ただし、密閉袋の内部へ水がたまり、長期間湿潤状態になる構造は避けます。保護と同時に排水性、通気性、点検性を確保します。
繰り返し滞水する場合は、排水口、集水部、ポンプ、管口封止、接合部を点検します。土砂流入がある場合は、流入経路を確認し、清掃だけで終わらせません。
交換直後には、ロープ端末、余長、支持状態、管口、特殊部内の全景を撮影します。初期状態が分かれば、次回点検で変化を比較しやすくなります。
点検記録を次回の交換判断に生かす方法
交換判断を点検者の経験だけに依存させないため、記録様式を統一します。路線名、特殊部番号、管路番号、起点と終点、製造者、品名、材質、直径、設置日、点検日、点検者を記載します。不明な項目は推測で埋めず、不明と記録します。
変状は、種類、位置、範囲、程度を具体的に残します。毛羽立ち、繊維切れ、ストランド損傷、直径変化、キンク、変色、硬化、軟化、溶融、端末異常を分けて記録します。
写真は全景と近景を組み合わせ、管路番号、端末、損傷位置の関係が分かるようにします。近景にはスケールを写し、前回と同じ方向で撮影できるよう撮影位置を決めます。
使用履歴には、通線日、対象物、管路長、牽引方法、最大荷重、停止回数、抵抗が増えた位置、接続方法を記録します。荷重を測定していない場合は、通常より重かった、途中で固着したなどの状況を残します。
交換時は、交換理由、新しいロープの仕様、旧ロープの損傷状況、交換中の異常、管路清掃や封止補修の有無を記録します。交換済みという結果だけでなく、なぜ交換したかを残すことが次回判断に役立ちます。
管路環境は、滞水深、土砂量、油膜、異臭、管口封止、排水設備、温度異常などを記録します。同じ管路で劣化が繰り返される場合、環境記録を比較して原因を探ります。
電子化する場合は、ファイル名、写真番号、入力項目、位置情報の付け方を統一します。国土交通省の点検要領も、文字数値情報と図面・写真情報を点検結果データとして管理する考え方を示しています。
判断に迷った事例も蓄積します。追加確認後に使用したか、予防交換したか、製造者へ照会したかを残すことで、組織内の判断基準を改善できます。
まとめ
電線共同溝の通線ロープは、管路内に収容され、劣化を地上から確認しにくい補助材です。通線中に切断すると、新しい呼び線の再通線、牽引作業の中断、交通規制の延長、関係者との再調整につながる可能性があります。
第一の交換判断基準は、毛羽立ち、繊維切れ、ストランド損傷、局部的な細り、構造崩れなどの表面損傷です。広範囲または局部的に深い損傷がある場合は、使用前の交換を優先します。
第二の基準は、変色、硬化、軟化、べたつき、溶融、焦げなどの材質変化です。汚れだけと決め付けず、紫外線、熱、油、薬品との接触履歴を確認します。
第三の基準は、結び、スプライス、アイ加工、金具接触部、管口付近の局部損傷です。結びやキンクは強度低下につながるため、製造者と管理者が認める端末処理へ改めます。
第四の基準は、実使用または承認された確認手順で現れる異常な伸び、細り、ねじれ、構造の開き、戻りにくさです。現場独自の破断試験や過大な引張試験は行いません。
第五の基準は、設置時期、仕様、過荷重、滞水、土砂、薬品、高温などの履歴から再使用リスクを判断することです。外観が比較的きれいでも、仕様や履歴を確認できないロープを重要な作業へ使用しないことが安全です。
交換後は、材質と強度だけでなく、端末処理、余長の保管、管口封止、排水、土砂流入まで確認します。点検写真と使用履歴を継続して残し、管理者基準と製造者資料に基づいて総合評価することで、通線時の切断と工程の手戻りを減らせます。