電線共同溝の特殊部では、ケーブルの接続、点検、清掃、排水、補修、写真記録などのために、作業員が内部へ立ち入ることがあります。特殊部は地上から見ると十分な広さがあるように見えても、開口部が限られ、自然換気を期待しにくい地下空間です。長期間閉鎖されていた場合や、雨水、湧水、汚水などが流入または滞留した履歴がある場合には、内部の酸素濃度が外気と同じとは限りません。目で見て異常がなく、強い臭いも感じないから安全だと判断することはできません。
酸欠事故の怖さは、危険を自覚してから退避すれば間に合うとは限らない点にあります。酸素濃度が低い空気を吸い込むと、判断力や運動能力が低下し、自力で昇降口まで戻れなくなるおそれがあります。さらに、倒れた作業員を助けようとして、呼吸用保護具を着用せずに入った同僚まで被災する二次災害にも注意が必要です。酸素欠乏症等防止規則では、空気中の酸素濃度が18%未満の状態を酸素欠乏と定義しています。厚生労働省
電線共同溝の安全管理では、測定器を用意するだけでは不十分です。作業場所の法令上の区分、作業主任者、特別教育、測定方法、換気経路、入退場管理、監視、退避、救出計画を、一つの作業手順としてつなぐ必要があります。本記事では、電線共同溝の特殊部内作業で酸欠事故を防ぐために、実務担当者が押さえるべき6つの安全管理を解説します。
電線共同溝の特殊部で酸欠事故が起こる理由
労働安全衛生法施行令の別表第六では、ケーブル、ガス管その他地下に敷設される物を収容するための暗きょ、マンホールまたはピットの内部を、酸素欠乏危険場所として掲げています。したがって、電線共同溝の特殊部がこの構造と用途に該当する場合、酸素濃度を測ってから対象かどうかを決めるのではなく、酸素欠乏危険場所として必要な管理を計画することが基本です。雨水、河川水、湧水が滞留したことのあるマンホールやピットも別表第六に掲げられています。日本の技術者協会
特殊部内で酸素が減る原因は一つではありません。滞留水とともに入り込んだ有機物の腐敗、微生物の活動、金属の酸化、周辺地盤や接続管路からの低酸素空気の流入などが考えられます。また、作業中に発電機や内燃機関を開口部付近で稼働させると、排気ガスが送風機の吸気口から取り込まれたり、特殊部内へ流入したりするおそれがあります。溶接でアルゴン、炭酸ガス、ヘリウムなどを使用する場合には、空気が置き換えられて酸素濃度が低下する可能性があります。入場前に安全な値であっても、作業条件の変化によって危険な状態へ移行することがあります。
臭いによる判断も危険です。酸素そのものには危険を知らせる臭いがなく、酸素濃度が低下していても作業員が気付けない場合があります。硫化水素も臭いだけで安全を判定してはいけません。酸素欠乏症等防止規則上、第二種酸素欠乏危険作業は、海水が滞留したことのある場所、し尿、腐泥、汚水などを入れてあり、または入れたことのある場所など、法令で定められた区分に該当する場所での作業です。一般的なケーブル収容用マンホールに該当するだけで直ちに第二種になるわけではありませんが、同じ特殊部が別表第六第九号などにも該当すれば、第二種として酸素と硫化水素の両方を管理する必要があります。第一種と第二種の判断は、臭いや当日の測定値ではなく、構造、用途、流入物、使用履歴などを法令の区分に照らして行います。Ministry of Health, Labour and Welfare+1
酸素欠乏症等防止規則では、酸素濃度18%未満を酸素欠乏と定義し、第二種酸素欠乏危険作業に係る場所では、酸素濃度を18%以上、かつ硫化水素濃度を10ppm以下に保つよう換気することを定めています。ただし、この数値は作業を無条件に安全と保証する値ではありません。一酸化炭素、可燃性ガス、溶剤蒸気など、作業や周辺条件から別の危険が予想される場合は、リスクアセスメントに基づいて追加の測定と対策を行う必要があります。厚生労働省
電線共同溝の実務では、「以前も問題なく入れた」「蓋を開けてしばらく置いた」「浅い特殊部だから大丈夫」といった経験則が判断を弱める原因になります。特殊部ごとに深さ、容積、滞留水、接続管路、周辺地盤、施工履歴、開放期間が異なるため、隣接する特殊部で安全な測定値が得られても、今回入る特殊部の安全を保証しません。作業日ごと、作業場所ごとに確認する運用が必要です。
安全管理1 作業場所を調査して酸欠危険作業の体制を決める
最初の安全管理は、特殊部に入る前の段階で、法令上の区分と現場固有の危険性を確認し、必要な管理体制を確定することです。現地到着後に蓋を開け、その場で担当者同士が手順を相談する進め方では、測定器の不足、換気能力の不足、資格者の不在、救出用具の未準備が判明しても、工程を優先して作業を始めてしまうおそれがあります。作業計画には、対象となる特殊部の識別情報、用途、構造、深さ、開口寸法、内部の段差、昇降設備、滞留水の有無、接続管路、隣接作業、使用機器、作業人数、予定時間、交通規制、緊急連絡先を含めます。
法令上の確認では、まず対象特殊部が労働安全衛生法施行令別表第六のどの項目に該当するかを整理します。ケーブルを収容するマンホールやピットとして第三号に該当する場合は第一種が基本ですが、海水が滞留した履歴がある場所、し尿、腐泥、汚水などを入れたことのある場所、厚生労働大臣が定める場所に該当する場合は第二種となり得ます。単に「硫化水素が出そうだから第二種」「測定値が低くないから対象外」と現場判断せず、場所の用途と履歴を確認して区分します。判断が難しい場合は、発注者、元請の安全衛生担当者、資格者などと事前に確認し、必要に応じて所轄の労働基準監督署などへ相談します。Ministry of Health, Labour and Welfare+1
酸素欠乏危険作業を行う場合は、第一種では酸素欠乏危険作業主任者技能講習または酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習を修了した者から、第二種では酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習を修了した者から、酸素欠乏危険作業主任者を選任します。作業主任者は名義上配置するだけではなく、作業方法の決定、作業員への指揮、所定の時機における濃度測定、測定器具や換気装置、空気呼吸器等の点検、空気呼吸器等の使用状況の監視を担います。厚生労働省
当該業務に就く労働者には、第一種または第二種の業務に応じた特別教育が必要です。教育には、酸素欠乏等の発生原因、症状、空気呼吸器等の使用方法、事故時の退避と救急そ生などが含まれます。資格証や教育記録を作業前に確認し、協力会社を含む全員が対象作業のルールを理解している状態にします。厚生労働省+1
作業計画では、作業中止の基準も先に決めます。濃度が管理範囲を外れた場合、測定器が正常に作動しない場合、換気装置が停止した場合、通信が途絶えた場合、豪雨や道路冠水のおそれが生じた場合、作業員から頭痛、吐き気、息苦しさなどの異常申告があった場合には、原因調査より先に退避させます。誰が中止を指示できるか、どの経路から、どこまで退避するかを明文化します。監視を担当する者や作業主任者が即時に中止を指示できる体制を、作業前打合せで共有しておくことが大切です。
複数会社が同じ特殊部や隣接特殊部で作業する場合には、作業間の影響を調整します。別班が洗浄、排水、溶接、発電機の運転、薬剤の使用などを始めると、こちらの作業環境が変化する可能性があります。近接作業によって酸素欠乏等のおそれがあるときは、関係作業場との連絡を保つことが規則で定められています。工程表だけでなく、当日の開始、停止、再開、機器変更を相互に連絡する仕組みが必要です。厚生労働省
安全管理2 入場前に酸素濃度などを正しい手順で測定する
二つ目の安全管理は、作業員が特殊部へ入る前に、適切な測定器と手順で内部の空気を確認することです。事業者は、その日の作業開始前に、第一種では酸素濃度を、第二種では酸素濃度と硫化水素濃度を測定しなければなりません。測定を行ったときは、測定日時、測定方法、測定箇所、測定条件、測定結果、測定者の氏名、測定結果に基づいて防止措置を講じた場合はその概要を記録し、3年間保存します。厚生労働省
測定器は、現場へ持参しただけで使用可能とは限りません。使用前に外観、電池残量、センサー、吸引ポンプ、採気管、警報、表示を確認し、製造者の取扱説明書や社内基準に従って作動確認や必要な校正管理を行います。測定対象に合わない機器や、点検期限を過ぎた機器を使用すると、数値が表示されていても安全確認として信頼できません。予備電池や予備機の準備、測定器が故障した場合の作業中止ルールも決めておきます。
測定は、測定者自身が危険な空気を吸わない方法で行う必要があります。実務では、原則として測定者が内部へ入らず、開口部の外から採気管などを使って測定します。蓋を開けた直後に顔を近づけたり、上半身を特殊部内へ乗り入れたりする方法は避けます。内部に立ち入らなければ測定できない場合は、その測定行為自体を酸素欠乏危険場所への立入りとして扱い、空気呼吸器等、必要な墜落防止措置、監視と連絡を含む安全措置を講じます。
特殊部内の空気は均一とは限りません。開口部付近だけを一度測って安全と判定すると、底部、隅部、ケーブルや支持金物の陰、接続管路付近、滞留水面付近の異常を見落とす可能性があります。構造と実際の作業範囲を踏まえ、上部、中間部、底部、作業員の呼吸域、奥部など、代表性のある複数箇所を測ります。採気管の長さ、吸引速度、機器の応答時間を考慮し、測定位置の空気がセンサーへ到達して表示が安定してから読み取ります。測定箇所は図面や見取図と対応させ、後から同じ位置を再測定できるようにします。
測定のタイミングも重要です。酸素欠乏危険作業主任者は、その日の作業開始前に加え、作業に従事する全員が作業場所を離れた後に再び作業を開始する前、作業員の身体や換気装置等に異常があったときにも測定します。第二種では酸素と硫化水素の両方が対象です。さらに、送風経路を変更したとき、別の蓋を開閉したとき、排水や清掃で内部状況が変わったとき、溶接や薬剤使用などへ作業内容が変わったときは、法定の測定時機に該当するかだけでなく、リスクの変化に応じて再評価と再測定を行う運用が安全です。厚生労働省
測定結果が管理基準を満たさない場合は、入場を禁止し、原因を確認したうえで換気などの措置を講じ、再測定します。数値がわずかに届かないだけだから、短時間だから、入口付近だけの作業だからという理由で立ち入ってはいけません。一度基準を満たしたことは、その後も安全である証明にはなりません。作業中に携帯型測定器を使用する場合も、入場前測定、換気、監視を省略する根拠にはせず、環境変化を早期に把握する追加的な管理として位置付けます。
安全管理3 作業範囲全体に新鮮な空気が届くよう換気する
三つ目の安全管理は、特殊部内の酸素濃度を法定の範囲に保つための換気です。酸素欠乏危険作業では、原則として作業場所の酸素濃度を18%以上に保つよう換気し、第二種酸素欠乏危険作業では、これに加えて硫化水素濃度を10ppm以下に保つ必要があります。爆発や酸化などを防止するため換気できない場合、または作業の性質上換気が著しく困難な場合には、同時に就業する労働者数と同数以上の空気呼吸器等を備え、使用させなければなりません。単に換気設備の準備が面倒という理由で、換気を省略して呼吸用保護具へ置き換えることはできません。厚生労働省
換気計画では、特殊部の容積だけでなく、空気の入口と出口、ダクトの位置、内部の障害物、作業範囲を考えます。送風機を開口部の上に置いて空気を吹き込むだけでは、入口付近の空気だけが入れ替わり、底部や奥部に滞留域が残ることがあります。送風ダクトの先端を換気したい位置まで延ばし、送気と排気が短絡しないよう配置します。複数の開口を使える場合でも、送気した新鮮空気がすぐ隣の開口から抜け、作業場所を通らない経路になっていないかを確認します。
送風機の吸気位置には特に注意します。道路上の発電機、工事車両、排水ポンプなどの排気口近くから空気を取り込むと、一酸化炭素などを特殊部内へ送り込む危険があります。吸気口は清浄な外気を取り込める場所に設け、車両の停車位置や風向きが変わっても排気を吸い込みにくい配置とします。送風機を発電機で駆動する場合は、発電機を特殊部内へ持ち込まず、開口部や吸気口との位置関係、排気の流れを確認します。
換気は、測定値が基準を満たした時点で直ちに止めるのではなく、作業中の発生源と環境変化を踏まえて継続します。電源コードの抜け、ブレーカーの作動、ダクトの潰れ、送風機の転倒、吸気口の塞がりなどが起きると、内部環境が変化します。監視を担当する者は運転音だけに頼らず、表示、風量、ダクト、電源を確認し、停止や異常があれば作業中止基準に従って直ちに退避させます。
換気に純酸素を使用してはなりません。酸素欠乏症等防止規則は、換気に純酸素を使用することを禁止しています。酸素濃度を過度に高めると燃焼が激しくなる危険があるため、換気には清浄な外気を用います。火気を使用する場合は、酸欠だけでなく、可燃物、可燃性ガス、電気設備、火花の飛散を含めて管理します。厚生労働省
排気側にも配慮が必要です。特殊部から排出した空気に硫化水素、溶剤蒸気、排気ガスなどが含まれる可能性がある場合、歩行者、交通誘導員、作業員が排気を直接吸い込む位置へ吐き出してはいけません。排気口周辺を区画し、風向きや周辺施設への影響を確認します。換気によって特殊部内だけを安全にし、地上側に新たなばく露場所を作ることがないようにします。
安全管理4 入退場と監視と連絡を途切れさせない
四つ目の安全管理は、誰が特殊部へ入り、誰が地上で監視し、異常時にどう連絡するかを明確にすることです。酸素欠乏危険作業では、入場時と退場時に人員を点検し、作業従事者以外の者の立入りを禁止する管理が求められます。協力会社、点検者、写真撮影者などが短時間だけ入る場合でも、入退場管理から除外してはいけません。入場者名、入場時刻、退場時刻、担当作業、使用する保護具などを記録し、作業終了時に全員の退場を確認します。厚生労働省
監視を担当する者は、単に開口部付近に立っているだけではありません。酸素欠乏症等防止規則では、常時作業状況を監視し、異常があったときに直ちに作業主任者その他の関係者へ通報する者を置くなど、異常を早期に把握する措置を求めています。交通誘導、資材運搬、長時間の電話対応など、監視が途切れる兼務は避けます。監視位置から作業員を目視できない場合は、音声通話、無線、合図、映像など、現場条件に合う連絡方法を用意し、通信不能を作業中止条件にします。厚生労働省
連絡方法は、通常時と緊急時を分けて決めます。通常時には、入場、測定完了、換気開始、作業開始、休憩、再開、作業終了を共有します。緊急時には、作業中止の合図、退避指示、救急要請、道路管理者や発注者への連絡を、短い言葉で確実に伝えられるようにします。特殊部内は送風音や工具音が大きく、通常の会話が聞こえにくいことがあります。事前に通信試験を行い、作業員が最も奥にいる状態でも連絡できるかを確認します。
立入禁止措置も重要です。蓋を開放した特殊部の周囲には、酸欠危険だけでなく、通行人や作業員の転落、資材の落下、車両接触のおそれがあります。バリケード、表示、監視配置などにより、関係者以外が近づかないようにします。表示は、酸素欠乏危険場所であり、作業従事者以外の立入りが禁止されていることが分かる内容にします。異常によって全員を退避させた後も、酸素欠乏等のおそれがないことを確認するまで、特に指名した者以外を立ち入らせない管理が必要です。厚生労働省
入退場管理には、作業員の体調確認も組み込みます。睡眠不足、発熱、飲酒の影響、強い疲労などがあると、酸欠の初期異常と通常の体調不良を区別しにくくなります。入場前に体調を確認し、作業中に頭痛、吐き気、息苦しさ、動作の乱れ、返答の遅れなどが見られた場合は、原因を推測せず直ちに退避させます。本人が「少し休めば大丈夫」と言っても、特殊部内で経過を見てはいけません。
複数の特殊部を順番に点検する場合は、場所を移るたびに測定、換気、入退場、監視の管理をやり直します。最初の特殊部で適切な測定値が得られても、次の特殊部が同じ状態とは限りません。対象番号、蓋の位置、測定記録、写真、入場者を取り違えないよう、作業票と現地表示を一致させます。
安全管理5 保護具と作業設備を事前点検して複合災害を防ぐ
五つ目の安全管理は、酸欠対策に必要な機器を確実に使用できる状態にするとともに、特殊部内で起こり得る他の災害も同時に防ぐことです。酸素欠乏場所で使用する呼吸用保護具は、一般的な防じんマスクや防毒マスクで代用できません。酸素が不足している空気をろ過しても酸素は補給されないため、法令上の空気呼吸器等である空気呼吸器、酸素呼吸器、送気マスクを、適用条件に応じて使用します。換気できない場合や、作業の性質上換気が著しく困難な場合には、同時に就業する労働者数と同数以上を備え、使用させます。厚生労働省
空気呼吸器等を使用する場合は、その日の作業開始前に点検します。面体、接続部、ホース、バルブ、圧力、警報、背負具、空気供給源などに異常がないかを確認し、不具合があれば直ちに補修または交換します。送気式では、ホースが車両、蓋、資材で押しつぶされない経路を確保し、空気供給が停止した場合の退避方法を決めます。保護具が置いてあるだけでは足りず、使用者が教育と訓練を受け、正しく装着して移動できることが必要です。厚生労働省
特殊部への昇降では、墜落や転落も重大な危険です。固定はしご、昇降設備、足掛金物、開口部周囲、取付設備を点検し、泥、水、油で滑りやすくなっていないかを確認します。酸素欠乏症等にかかって転落するおそれがある場合は、要求性能墜落制止用器具その他の命綱を使用させ、安全に取り付ける設備等を設けなければなりません。狭い開口から資材を持ったまま昇降せず、工具袋、ロープ、荷下ろし設備などを使い、両手を使える状態で昇降します。厚生労働省
電気設備の管理も欠かせません。特殊部内に滞留水や結露がある場合、照明、延長コード、電動工具、ポンプなどの損傷は感電につながります。使用環境に適した機器を選び、ケーブル被覆、接続部、漏電保護、接地、配置を確認します。電源コードを昇降経路に這わせると、つまずきや救出時の妨げになります。換気装置と照明の電源系統を整理し、照明や工具を止める操作で換気装置まで停止しないよう表示と手順を整えます。
火気や溶接を伴う作業では、酸欠だけでなく、火災、爆発、煙、有害ガスを含む複合リスクを評価します。アルゴン、炭酸ガス、ヘリウムを使用して通風不十分な場所で溶接する場合は、酸素濃度を18%以上に保つ換気または空気呼吸器等の使用が必要です。作業内容を変更する前後には再評価し、ガス送給設備の停止、配管やバルブの管理、誤操作防止まで確認します。厚生労働省
救出用具は、通常作業用の資材と区別して配置します。酸素欠乏危険作業では、空気呼吸器等、はしご、繊維ロープなど、非常時の避難または救出に必要な用具を備えなければなりません。これらもその日の作業開始前に点検し、開口部付近で直ちに使用できる状態にします。車両の奥や施錠された倉庫に保管したままでは、緊急時に使用できません。厚生労働省
安全管理6 退避と救出の手順を作り二次災害を防ぐ
六つ目の安全管理は、異常が起きたときに、迷わず退避し、安全な方法で救出する仕組みを事前に作ることです。酸欠事故では、倒れた人を見た同僚が反射的に内部へ入り、同じ空気を吸って倒れる二次災害が起こり得ます。人命救助を急ぐことと、無防備で危険場所へ入ることは同じではありません。救助者が被災すれば、救出はさらに困難になります。
酸素欠乏等のおそれが生じた場合は、直ちに作業を中止し、作業従事者を退避させなければなりません。測定器の警報、換気停止、通信断、急な浸水、作業員の体調変化など、事前に定めた異常が発生したら、原因確認より退避を優先します。地上へ出た後は人員を点検し、酸素欠乏等のおそれがないことを確認するまで、特に指名した者以外を再入場させません。厚生労働省
救出計画には、通報、現場統制、救助者の保護、要救助者の引上げ、応急処置、救急隊への引継ぎを含めます。誰が救急要請をし、誰が道路上で救急車を誘導し、誰が設備を操作し、誰が関係者へ連絡するかを決めます。特殊部の位置が分かりにくい場合は、路線名、交差点名、特殊部番号、進入経路を整理し、通報時に伝えられるようにします。
酸素欠乏等の場所で被災者を救出する作業に労働者を従事させる場合は、救助者に空気呼吸器等を使用させなければなりません。防じんマスク、防毒マスク、濡れタオルなどでは酸素欠乏を防げません。外部からロープや引上げ装置を使って救出できる計画を優先し、危険空間へ進入する必要がある場合は、呼吸用保護具、監視、連絡、墜落防止を確保した訓練済みの体制で行います。厚生労働省
救出した作業員に意識が戻ったように見えても、現場判断だけで作業へ戻してはいけません。酸素欠乏症等にかかった労働者には、直ちに医師の診察または処置を受けさせることが規則で定められています。救急要請時には、酸欠または硫化水素などの疑い、測定値、ばく露した可能性のある時間、使用していた保護具を伝えます。厚生労働省
訓練は書面確認だけで終わらせません。開口部の形状、はしご、ロープ、空気呼吸器等、通信機器を使い、退避合図から人員確認、通報、救出準備までを模擬します。実地訓練を行うと、ロープの長さ不足、取付点の不適合、救出用具へのアクセス不良、通信不能などが事前に見つかります。訓練後は問題点を作業手順書に反映し、次回の作業前教育で共有します。
特殊部内作業を安全に進める標準的な流れ
特殊部内作業は、準備、現地確認、開口、換気、測定、入場、作業中管理、退出、閉鎖、記録の順に進めると、確認漏れを減らせます。ただし、現場条件により必要な追加措置があるため、この流れをそのまま全現場へ当てはめるのではなく、関係法令、発注者や道路管理者の基準、施工計画、リスクアセスメントに合わせて具体化します。
準備段階では、対象特殊部の資料を確認し、第一種または第二種の区分、作業主任者、特別教育修了者、監視を担当する者、作業員、測定器、換気装置、電源、空気呼吸器等、墜落防止設備、救出用具、連絡体制を確定します。現地では、特殊部番号と作業票を照合し、交通規制、開口部周囲、冠水、周辺の排気源、隣接工事を確認します。蓋を開ける際は、危険な空気への接近、転落、腰部負担、蓋の不意な閉鎖に注意し、開口後は直ちに立入禁止措置を行います。
換気と測定は、作業主任者の職務と作業計画に従って実施します。換気装置の吸気と排気の位置を確認し、特殊部内の滞留域を減らすようダクトを配置します。測定は測定者が危険な空気へ接近しない方法で行い、複数箇所の酸素濃度を確認します。第二種では硫化水素濃度も確認します。測定結果が基準を満たしても、作業中に環境が変化するおそれを踏まえて換気と監視を継続し、通信手段を確保してから入場します。
作業中は、換気装置、測定器、通信、作業員の状態を継続的に監視します。全員が退出した後に再開する場合や、作業員の身体、換気装置等に異常があった場合は、作業主任者が所定の測定を行います。作業方法、内部状態、使用材料などが変化した場合も、リスクを再評価します。測定値が管理範囲を外れた場合や、機器異常、通信断、体調異常、浸水などがあった場合には、事前に定めた基準に従って即時に退避します。
作業終了後は、工具や資材の置き忘れ、ケーブルや設備への影響、排水状態を確認し、全員の退出を点検してから閉鎖します。測定記録、換気状況、入退場、作業内容、異常の有無、写真、改善事項を整理します。測定値だけを残すのではなく、どの特殊部のどの位置で、どの条件で測ったかを記録することが重要です。過去の記録は、換気に時間がかかる場所や通信が届きにくい場所を把握する資料になりますが、今回の測定や安全確認を省略する根拠にはなりません。
LRTK Phoneで特殊部ごとの安全記録を整理する
電線共同溝の酸欠対策では、法定の濃度測定記録に加えて、特殊部の位置、蓋の状態、換気装置の配置、吸気口と排気口、立入禁止措置、救出用具の配置などを写真で残すと、作業後の確認や次回計画に役立ちます。しかし、同じ路線に似た形状の特殊部が連続していると、撮影した写真がどの場所のものか分からなくなり、記録の取り違えが起きやすくなります。
LRTK Phoneは、cm精度測位、点群、AR、測位写真、クラウド共有などに対応しており、特殊部ごとの現場記録を位置と関連付けて整理する用途に活用できます。地上の開口位置で測位写真を取得し、特殊部番号、作業票、測定記録と対応させれば、開口前の周辺状況、送風機とダクトの配置、立入禁止措置、作業完了後の復旧状況を場所ごとに確認しやすくなります。レフィクシア株式会社
ただし、LRTK Phoneを含むデジタル機器は、酸素濃度測定器、硫化水素測定器、換気装置、空気呼吸器等、監視、作業主任者、法定記録を代替するものではありません。特殊部内へ機器を持ち込む場合は、可燃性ガスや火気の可能性、電気機器の使用条件、発注者や管理者の持込み規則を確認します。防爆性能が必要な場所では、適合が確認できない機器を持ち込まないことが重要です。また、地下では衛星測位が難しいため、地上の開口位置で位置を確定し、内部写真には特殊部番号や撮影方向を付けるなど、現場条件に合う運用にします。
安全記録のデジタル化で大切なのは、写真を増やすことではなく、後から安全判断の経緯を追えることです。作業前、換気後、入場前、作業中、完了後の各段階で記録項目を統一します。特殊部番号、日時、作業主任者、測定者、測定箇所、測定条件、測定結果、換気条件、入退場者、異常時の措置を一つの案件として結び付けると、記録の検索、監査、再発防止に活用しやすくなります。紙の作業票と併用する場合も、管理番号をそろえて不一致を防ぎます。
まとめ
電線共同溝の特殊部内作業で酸欠事故を防ぐには、入場直前に酸素濃度を一度測るだけでは足りません。対象特殊部が法令上の酸素欠乏危険場所に該当することを前提に、第一種または第二種の区分を確認し、区分に適合する作業主任者と特別教育修了者を配置します。そのうえで、測定者が危険な空気へ接近しない方法で複数箇所を測定し、作業範囲を換気し、入退場と監視を管理し、保護具と救出用具を点検し、異常時に即時退避できる体制を作ります。
特に注意したいのは、見た目、臭い、過去の経験に頼らないことです。長期間閉鎖された特殊部、滞留水のある特殊部、隣接作業の影響を受ける特殊部では、作業環境が時間とともに変化する可能性があります。その日の作業開始前だけでなく、全員が退出した後の再開前や、作業員の身体、換気装置等に異常があった場合にも、作業主任者が所定の測定を行います。倒れた人を呼吸用保護具なしで助けに入らないという原則も、全員が事前に共有しておかなければなりません。
測定値、測定条件、換気配置、入退場、写真、異常対応を特殊部ごとに整理すると、次回の作業計画と安全教育の質を高められます。LRTK Phoneなどで位置と写真を関連付ける場合も、法定措置を代替させず、特殊部番号と作業票を確実に対応させることが重要です。電線共同溝の酸欠対策は、測定、換気、監視、保護具、退避、救出を一連の作業許可手順として運用することで、確認漏れと二次災害の防止につながります。