LRTKレフィクシア株式会社

電線共同溝のガス滞留を見逃さない6つの測定・換気基準

電線共同溝でガス滞留が起こる背景

電線共同溝のマンホールや特殊部、地下の接続空間は、外気との自然な空気交換が起こりにくい場所です。地上から見ると開口部があり、内部に目立った汚れがない場合でも、安全な空気が保たれているとは限りません。長期間ふたが閉じられていた場所では、内部の酸素が消費されている可能性があり、浸入水や堆積物、周囲の土壌、金属の腐食などが空気環境へ影響することもあります。

電線共同溝で注意しなければならないのは、臭いを感じる有害ガスだけではありません。酸素濃度が低下した空気は、色や臭いでは判断できません。作業者が内部へ入った後に息苦しさやめまいを感じた時点では、自力で退避できなくなっているおそれがあります。そのため、見た目や臭い、過去の作業経験ではなく、入溝前の測定結果に基づいて作業の可否を判断する必要があります。

また、電線共同溝の内部環境は、同じ施設であっても常に一定ではありません。降雨後の浸水、地下水位の変化、周辺での掘削、近接する地下埋設物の状態、気温差による空気の流れなどによって、前回の点検時とは異なる状態になることがあります。前回異常がなかったという記録は参考になりますが、今回の安全を保証するものではありません。

ふたを開けると外気が入り始めますが、開口しただけで内部全体の空気が入れ替わるとは限りません。電線共同溝の内部には、ケーブル、支持金物、隔壁、管路口、排水溝、段差などがあり、空気がよどむ場所が生じます。開口部付近の酸素濃度が正常であっても、底部や奥部には酸素の少ない空気や有害ガスが残っている可能性があります。

作業中に空気環境が悪化することにも注意が必要です。滞水を排出したり、底部の汚泥を動かしたりすると、それまで水中や堆積物の内部にとどまっていたガスが放出されることがあります。発電機や車両の排気が送風機の吸気側へ流れ込めば、換気しているつもりで汚染空気を送り込む結果にもなります。補修材や洗浄剤を使う作業では、揮発成分が新たな危険源になる場合もあります。

したがって、電線共同溝のガス対策は、作業開始前に一度測定するだけでは不十分です。危険源の調査、測定対象の選定、多点測定、機械換気、換気後の確認、作業中の監視、異常時の退避までを連続した安全管理として組み立てることが重要です。

実際の作業では、関係法令、発注者の仕様、道路管理者や施設管理者の基準、現場ごとの作業手順を優先しなければなりません。電線共同溝の構造や周辺条件によって必要な措置は異なるため、酸素欠乏危険作業主任者などの有資格者を中心に、現場条件に応じた測定・換気計画を作成することが前提となります。

基準1 入溝前に危険源と測定対象を整理する

一つ目の基準は、測定器を準備する前に、現場で発生する可能性がある危険を整理することです。酸素濃度だけを測れば、すべての電線共同溝で安全を確認できるわけではありません。施設の状態や作業内容によっては、硫化水素、可燃性ガス、一酸化炭素、補修材などから発生する蒸気を測定対象へ加える必要があります。

事前調査では、まず対象となる電線共同溝の構造を確認します。マンホールの深さ、特殊部の長さ、隣接するマンホールとの接続、隔壁の有無、排水設備、管路口の位置などを図面や管理台帳で確認します。長い空間や複雑な分岐を持つ施設では、一つの開口部から換気しても、奥部まで新鮮な空気が届かないことがあります。構造を把握せずに換気方法を決めると、空気が入れ替わらない区画を残すおそれがあります。

次に、過去の点検記録や補修履歴を確認します。以前の作業で酸素濃度の低下が確認された場所、換気に時間を要した場所、浸水や汚泥の堆積が繰り返されている場所は、重点的な管理が必要です。過去の異常値が記録されている場合は、その後に原因が除去されたのか、一時的に換気して作業を終えただけなのかを区別します。

浸水履歴も重要な確認事項です。雨水だけに見える滞水であっても、周辺から有機物を含んだ水が流入している可能性があります。水面に変色や油膜がある場合、強い臭いがある場合、底部に黒色の汚泥が堆積している場合は、酸素濃度に加えて硫化水素などを警戒します。ただし、異臭がないから測定不要と判断してはいけません。臭いを感じない状態でも危険な濃度になっていることがあるためです。

道路地下には、電力や通信の設備だけでなく、ガス管、上下水道管、熱供給設備などが近接している場合があります。周辺の占用物件や工事履歴を確認し、ガスが流入する可能性を検討します。近隣で地下工事が行われている場合は、地盤内の空気の流れや水の流れが変わり、通常とは異なる経路からガスが入り込む可能性もあります。

その日に行う作業内容も、測定対象を決める材料になります。内部で塗装、接着、洗浄、防水、加熱などを行う場合は、使用する材料の性質を事前に確認します。発電機や燃焼機器を使用する場合は、一酸化炭素を含む排気の流入を防ぐ配置が必要です。火気を使用する場合には、可燃性ガスや蒸気による火災・爆発の危険も別途評価しなければなりません。

測定計画には、誰が、どの測定器を使い、どの位置を、どの順番で測るかを記載します。さらに、測定値が基準を外れた場合の対応、換気後の再測定方法、作業を中止する条件、緊急時の連絡方法まで決めます。現場へ着いてから測定点や警報値を考えるのではなく、作業計画の段階で判断条件を共有しておくことが大切です。

測定対象の選定で迷う場合は、対象を減らすのではなく、安全側に立って追加測定を検討します。測定器が準備できない、または危険源を特定できない状態では、入溝を優先せず、作業方法や日程を見直す必要があります。作業を予定どおり始めることよりも、安全を確認できる条件を整えることが優先されます。

基準2 酸素濃度18%以上を測定で確認する

二つ目の基準は、作業場所の酸素濃度が18%以上であることを確認することです。酸素欠乏危険作業に該当する場所では、作業を行う空間の酸素濃度を18%以上に保つことが基本となります。電線共同溝の内部へ入る前に測定し、基準を満たさない場合は、作業者を入れずに換気を行わなければなりません。

18%という数値は、これをわずかに超えていれば十分な余裕があるという意味ではありません。通常の外気と比べて明らかに低い値が出ている場合は、内部で酸素が消費されている可能性や、酸素の少ない空気が流入している可能性を疑います。測定値が18%以上でも、外気に近い値から大きく離れている場合や、測定点によってばらつきが大きい場合は、原因を確認せずに入溝を急がないことが重要です。

酸素濃度の測定は、開口部付近だけで終えてはいけません。ふたを開けた直後から外気が入り始めるため、開口部のすぐ下では比較的高い値を示すことがあります。しかし、底部や隔壁の裏側、ケーブルの下部、奥まった接続部には、酸素濃度の低い空気が残っている可能性があります。作業者が実際に通過する降下経路と、作業する場所の両方を測定する必要があります。

測定は、原則として地上の安全な位置から行います。測定ホースや採気管を使い、作業者が内部へ立ち入る前に上部、中部、下部の濃度を確認します。測定のために顔を開口部へ近づけたり、上半身を内部へ入れたりすると、測定者自身が酸素欠乏空気を吸い込むおそれがあります。測定作業そのものが入溝と同じ危険を伴わないよう、外部から測定できる機材と方法を準備します。

吸引式の測定器を使用する場合は、ホース先端からセンサーまで空気が到達する時間を考慮します。ホースを深く下ろした直後に表示された数値だけで判断すると、前の測定地点の空気が測定器内に残っていることがあります。測定器の取扱方法に従い、表示が安定するまで十分な時間を取ります。

酸素濃度が18%未満であった場合は、換気を行い、再測定します。ふたを開けて待つだけの自然換気では、底部や奥部まで空気が入れ替わらないことがあります。送風機や排風機を使用し、空間全体に新鮮な空気の流れをつくります。換気後は、最初に異常が確認された位置を含め、複数の測定点で酸素濃度を確認します。

換気後に18%以上となっても、換気を停止した状態で値が維持されるとは限りません。内部に酸素を消費する原因が残っていれば、時間の経過とともに再び低下する可能性があります。原則として作業中も換気を継続し、携帯型測定器や定置型測定器による監視を行います。

酸素濃度の測定では、数値だけでなく測定条件を記録します。ふたを開けた時刻、換気を始めた時刻、換気前の値、換気後の値、測定位置、測定者、使用した測定器などを残します。同じ施設を次回点検するときに、どの位置で値が下がりやすかったかを把握できれば、測定点の設定や換気計画の改善につながります。

基準3 硫化水素濃度10ppm以下と追加ガスを確認する

三つ目の基準は、硫化水素が発生するおそれのある場所では、濃度が10ppm以下であることを確認することです。第二種酸素欠乏危険作業に該当する環境では、酸素濃度18%以上に加えて、硫化水素濃度10ppm以下を保つことが基本となります。滞水、汚泥、有機物の腐敗、下水系統からの流入などが疑われる場合には、酸素だけでなく硫化水素を測定します。

硫化水素は、臭いによる判断が危険なガスです。低い濃度では特有の臭いを感じることがありますが、濃度や暴露状況によっては嗅覚が働きにくくなることがあります。そのため、開口時に臭いがないことや、作業者が異臭を感じていないことを安全確認の代わりにはできません。

電線共同溝の底部に汚泥や滞水がある場合は、表面の空気だけでなく、汚泥を動かした後の濃度変化にも注意します。排水ポンプを設置したり、清掃用具で堆積物を動かしたりすると、内部に閉じ込められていたガスが放出される可能性があります。作業開始前の測定値が基準内であっても、排水や清掃を始める前後に再測定する必要があります。

硫化水素の測定点は、底部だけに限定しません。ガスの性質や内部の空気の流れによって、濃度分布は変化します。換気によって一部のガスが別の場所へ移動することもあるため、上部、中部、下部と奥行き方向の複数箇所を確認します。

電線共同溝で測定すべきガスは、硫化水素だけとは限りません。周囲にガス管などがある場合は可燃性ガス、車両や発電機の排気が流入する可能性がある場合は一酸化炭素などを検討します。塗料、接着剤、洗浄剤、防水材などを使う場合は、使用材料から発生する蒸気が測定対象となることもあります。

可燃性ガスを測定する場合は、測定器の表示単位と警報設定を事前に確認します。測定器によっては、ガスの濃度を直接表示するものと、爆発下限界に対する割合を表示するものがあります。表示の意味を理解しないまま数値だけを見ても、適切な判断はできません。作業前の打合せで、どの警報が鳴ったら退避するのか、火気や電源をどう扱うのかを共有します。

酸素濃度が正常であることと、有害ガスが存在しないことは別の問題です。外気の流入によって酸素濃度が回復していても、一部のくぼみや隔壁の裏に有害ガスが残っている可能性があります。反対に、有害ガスの濃度が低くても、酸素濃度が不足していることがあります。酸素と対象ガスは、それぞれ独立した測定項目として確認します。

対象となるガスの種類を追加した場合は、換気方法も見直します。空気より重いガスが疑われる場合と、上部へ移動しやすいガスが疑われる場合では、排気口の位置が異なります。ただし、ガスの比重だけで配置を決めず、構造物や温度差、送風方向を含めて空気の流れを確認することが必要です。

基準4 上部・中部・下部と奥行き方向を多点測定する

四つ目の基準は、一つの測定値だけで電線共同溝全体を安全と判定しないことです。地下空間では、測定する高さや位置によって濃度が異なる場合があります。開口部直下で正常な値が得られても、底部や奥部に酸素濃度の低い空気や有害ガスが残っていることがあります。

基本となる考え方は、上部、中部、下部を段階的に測定することです。最初に開口部から比較的近い位置を確認し、次に作業者の呼吸域となる高さ、最後に底部付近を確認します。途中の測定を省略してホースを一気に底部へ下ろすと、高さごとの濃度変化を把握できません。

奥行きのある特殊部では、入口側と奥側を分けて測定します。隔壁、分岐部、ケーブルラックの裏側、管路口周辺、床面のくぼみなどは、空気がよどみやすい場所です。構造図や現地確認をもとに、空気が滞留しそうな場所を測定点へ加えます。

複数のマンホールが連続している区間では、一方の開口部から送風するだけで全区間を換気できるとは限りません。中間部に隔壁や断面変化があると、空気の流れが弱い区画ができます。作業範囲が複数の区画にまたがる場合は、区画ごとに測定点を設定し、作業者が移動する先の安全も確認します。

測定の際は、採気ホースの位置を正確に把握します。ホースがケーブルや金物に引っ掛かると、想定した位置まで届いていないことがあります。先端が滞水や汚泥へ入れば、吸引不良や測定器の故障につながります。ホースへ深さの目印を付けるなど、地上から測定位置を確認できる工夫が有効です。

測定値は、表示が落ち着くまで待って記録します。測定点を移動した直後は、ホースや測定器内部に前の場所の空気が残っています。吸引時間が不足すると、実際よりも安全な値を記録してしまうおそれがあります。ホースの長さ、ポンプの吸引能力、測定器の応答時間を考慮し、定められた時間を確保します。

開口直後、換気中、換気後では、測定値の意味が異なります。開口直後の値は、閉鎖されていた空間の状態を推定する重要な情報です。換気中の値は、空気がどの範囲まで入れ替わっているかを確認する材料になります。換気後の値は、入溝可否を判断するための情報です。それぞれを区別して記録することで、換気効果を検証しやすくなります。

測定者は、開口部から離れた安全な姿勢を保ちます。マンホール周辺には墜落、転倒、車両接触の危険もあります。ガス測定に集中するあまり、交通誘導や開口部の養生が不十分にならないよう、測定者と周辺監視者の役割を分けます。

測定位置は、次回も再現できる表現で記録します。単に「内部上部」「内部下部」と書くのではなく、開口部からの深さ、方角、壁面からの距離、底部からの高さ、隔壁との位置関係などを残します。同じ位置を継続的に測れば、季節や降雨による変化を比較しやすくなります。

基準5 給気と排気の経路を設計して連続換気する

五つ目の基準は、換気装置を動かすだけではなく、新鮮な空気がどこを通り、汚染空気がどこから出るかを設計することです。送風機が稼働していても、空気が開口部付近だけを循環している場合は、奥部や底部の空気が入れ替わりません。

換気方法を決める前に、電線共同溝の内部形状を確認します。開口部の位置、特殊部の長さ、隔壁、ケーブルラック、管路口、床面の段差などを把握し、空気が流れにくい場所を想定します。長い空間では、ダクトの先端を作業場所の近くまで延ばす必要があります。

送気式の換気では、清浄な外気を内部へ送り込みます。送風機の吸気側には、車両、発電機、燃焼機器、排気口などを置かないようにします。道路上では機器の配置場所が限られますが、排気を吸い込む位置しか確保できない場合は、その配置のまま作業を始めず、作業帯や換気方式を見直します。

排気式の換気では、吸込み口をガスが滞留している場所へ近づけます。排気された空気が作業員や歩行者へ当たらないよう、吐出口の向きと立入区域を管理します。周辺の建物に吸気口や開口部がある場合は、排気が流れ込まない位置を選びます。

送気と排気を併用する場合は、給気口と排気口を離し、内部全体に空気の流れをつくります。両者が近すぎると、送り込んだ空気がすぐ排出される短絡が起こり、中央部や奥部の空気が残ります。煙などを使った安易な流れ確認は、電気設備や有害物質の問題を生じさせる可能性があるため、施設管理者が認めた安全な方法と測定値の変化によって換気効果を確認します。

必要な換気時間は、空間の容積だけでは決まりません。送風機の能力、ダクトの長さや曲がり、漏れ、内部の障害物、給気口と排気口の位置などによって、実際の空気交換は変わります。計算上の時間を経過しただけで入溝せず、複数の測定点で酸素濃度と対象ガスの濃度を確認します。

特定の測定点だけ改善しない場合は、換気時間を延ばすだけでなく、ダクト先端の位置を変更します。空気が届いていない区画へ送気口を移す、排気位置を変える、別の開口部を利用するなど、流れそのものを修正します。測定値が改善しない原因を確認せず、強い風量だけで解決しようとすると、別の場所へガスを移動させることがあります。

作業中は、原則として換気を継続します。騒音、寒さ、暑さ、作業のしにくさなどを理由に、作業者の判断で換気装置を停止してはいけません。換気音によって連絡が取りにくい場合は、換気を止めるのではなく、通信機器や合図方法を改善します。

換気装置が停止した場合は、測定器がすぐに警報を発していなくても作業を中止します。ガス濃度は停止直後から急激に変化するとは限らず、しばらくしてから悪化する場合もあります。安全状態を維持する設備が停止した時点で、入溝条件が失われたと判断する運用が必要です。

酸素濃度を上げるために、純酸素を送り込んではいけません。酸素濃度が過度に高い空間では、通常より燃焼が激しくなり、火災の危険が増します。換気には、新鮮で汚染されていない外気を使用します。

換気しても基準を満たせない場合や、換気を継続できない構造の場合は、通常の装備で入溝してはいけません。作業方法の変更、遠隔作業、施設の隔離、適切な呼吸用保護具の使用などを検討し、有資格者の管理下で別の安全対策を組み立てます。

基準6 作業中の再測定と即時退避条件を定める

六つ目の基準は、入溝前の測定値だけで作業終了まで安全と考えないことです。電線共同溝の空気環境は、換気設備の状態や作業内容によって変化します。作業開始前に正常であっても、作業中に酸素濃度が低下したり、有害ガスが放出されたりする可能性があります。

作業中は、携帯型または定置型の測定器を使用して監視します。測定器は、作業者の呼吸域やガスが滞留しやすい場所へ配置します。作業者が移動する場合は、測定器の位置も見直し、現在の作業場所を監視できるようにします。

警報音が換気装置や道路交通の騒音で聞こえにくい場合は、表示、振動、地上側の受信機などを組み合わせます。測定器を設置していても、誰も警報を確認できない状態では連続監視とはいえません。内部の作業者と地上の監視員の双方が、異常を把握できる仕組みが必要です。

再測定は、作業開始前だけでなく、昼休みなどで作業者全員が退出した後に再入溝するときにも行います。換気装置を移動したとき、電源が停止したとき、ダクトの位置を変えたとき、測定器に異常があったときも、作業を再開する前に測定します。

排水、清掃、汚泥の除去、隔壁の開放、管路口周辺の作業など、内部環境を変化させる工程の前後でも再測定します。特に、底部の堆積物を動かす作業では、短時間でガス濃度が上昇する可能性があります。一定時間ごとの測定だけでなく、作業内容の変化に合わせて測定を追加する考え方が必要です。

即時退避の条件は、作業開始前に明確にします。酸素濃度が管理基準を下回った場合、硫化水素やその他の対象ガスが管理基準を超えた場合、測定器が警報を発した場合は、原因調査より先に退避します。換気装置の停止、電源異常、連絡手段の故障、測定器の故障も退避条件に含めます。

作業者に頭痛、めまい、吐き気、息苦しさ、意識のぼんやり、目や喉の刺激などが現れた場合も、測定値に関係なく退避します。体調異常があるにもかかわらず、測定器が正常値を示していることを理由に作業を続けてはいけません。未測定のガス、測定器の異常、作業者固有の体調など、別の原因がある可能性があります。

退避後は、安全な場所で人数を確認します。原因を調べるために別の作業者がすぐ内部へ入ることは避けます。測定器の確認、換気設備の復旧、追加測定を地上から行い、安全が確認できるまで再入溝しません。

監視員は、内部の作業者数、入退場、測定値、換気装置、連絡状況を継続的に確認します。監視員が資材運搬や交通誘導など別の作業へ集中すると、異常の発見が遅れる可能性があります。監視業務の範囲を明確にし、必要に応じて専任者を配置します。

電線共同溝が長く、作業者の姿を開口部から確認できない場合は、定期的な連絡方法を決めます。連絡間隔、呼び掛けへの応答方法、応答がない場合の行動を作業前に共有します。通信機器を使う場合でも、電池切れや電波状況を考慮し、予備の連絡手段を準備します。

測定器と換気設備の点検で数値の信頼性を守る

測定値に基づいて入溝の可否を判断する以上、測定器が正常であることは安全管理の前提です。センサーが劣化していたり、吸引ホースが詰まっていたりすると、実際とは異なる数値を表示する可能性があります。

使用前には、外観、電池残量、センサーの使用期限、校正の状態、警報音、警報表示、吸引ポンプ、フィルター、ホースを確認します。複数のガスを測定する機器では、すべてのセンサーが有効であることを確認します。一つの表示が正常であっても、別のセンサーが停止している場合があります。

測定器の校正や機能確認は、定められた周期と方法に従って実施します。現場へ持ち込んだ後に校正期限切れが判明した場合は、そのまま使用せず、正常な予備器へ交換します。予定どおり作業を始めることを理由に、未確認の測定器を使用してはいけません。

採気ホースは、ひび割れ、折れ、接続不良、汚れ、水分の付着を確認します。ホースに漏れがあると、測定対象箇所ではなく開口部周辺の外気を吸い込み、実際より安全な数値を表示するおそれがあります。フィルターが目詰まりしている場合は、測定器が空気を十分に吸引できません。

測定器の保管では、高温、多湿、結露、強い衝撃、薬品蒸気を避けます。使用後に濡れたまま収納すると、センサーや端子の不具合につながる可能性があります。現場で水や汚泥を吸い込んだ場合は、外観上問題がなくても点検を行います。

換気設備では、送風機や排風機の本体、電源、ケーブル、接続部、羽根、保護カバー、ダクトを確認します。ダクトに穴や破れがあれば、必要な位置まで風が届きません。長いダクトが資材の下敷きになったり、急な曲がりでつぶれたりしていないかも確認します。

道路上では、換気設備が車両や歩行者と接触しない配置が必要です。ケーブルやダクトによるつまずき、風圧による転倒、雨水の浸入にも注意します。固定具や養生を使用し、作業中に位置が変わらないようにします。

換気装置が動いているかどうかは、運転音だけで判断しません。ダクト先端の送風状態と、内部の測定値の変化を確認します。送風機が回転していても、ダクトが外れていたり、吸気側がふさがれていたりすれば、十分な換気はできません。

停電や故障に備えて、予備電源や予備機を準備する方法があります。ただし、予備設備へ切り替える間に安全な換気が維持できない場合は、作業者を一度退避させます。換気を止めたまま機器交換を行い、内部作業だけを継続する運用は避けます。

測定器や換気設備に不具合があった場合は、その内容と処置を記録します。電池交換だけで復旧したのか、センサー異常があったのか、ホースを交換したのかを残します。不具合のある機器が別の現場へ持ち出されないよう、使用禁止の表示や保管場所の分離も必要です。

作業計画と救出体制を入溝前に整える

ガス測定と換気が適切でも、緊急時の対応を決めていなければ被害が拡大する可能性があります。酸素欠乏や有害ガスによる事故では、倒れた作業者を助けようとして、保護具を着けていない人が内部へ入り、二次災害に遭う危険があります。

作業計画では、作業責任者、作業主任者、測定者、監視員、入溝者の役割を明確にします。誰が入溝可否を判断するのか、誰が測定値を記録するのか、誰が換気設備を監視するのかを事前に決めます。役割が重なりすぎる場合は、異常の見落としが起こらないか検討します。

入溝者の人数と氏名は、地上側で管理します。作業の途中で人員が交代する場合も、入退場を記録します。緊急時に内部の人数が分からなければ、救出や消防への情報提供が遅れます。

連絡方法は、通常時と緊急時を分けて決めます。通常時の定時連絡、異常を知らせる合図、直ちに退避する合図を共有します。換気装置や交通の騒音が大きい場合は、音声だけに頼らない方法も準備します。

救出に必要な設備は、作業開始前に使用可能な状態で配置します。作業場所の深さや開口部の形状に応じて、はしご、墜落制止用器具、救出用ロープ、引き上げ設備などを検討します。救出設備が倉庫や車両の奥に収納されていて、すぐ使えない状態では十分ではありません。

呼吸用保護具が必要となる作業では、種類、使用者、装着方法、使用可能時間、点検状態を確認します。保護具を現場へ置いているだけでは安全対策になりません。実際に使用する人が正しく装着でき、緊急時に安全に行動できる体制が必要です。

作業者が内部で倒れた場合、保護具のない人は救助のために入溝してはいけません。地上から可能な救出を試み、消防などの救助機関へ通報します。やむを得ず救助者が入る場合は、適切な呼吸用保護具と墜落防止措置を使用し、単独で行動しないことが前提です。

救急要請時に伝える情報も整理します。現場の住所、道路名、マンホール番号、進入経路、内部の深さ、負傷者数、測定されたガス、換気状況などを準備します。道路上の作業では、緊急車両が接近できる経路を確保しておくことも重要です。

作業前の打合せでは、正常時の手順だけでなく、換気装置が止まった場合、測定器が警報を発した場合、連絡が途絶した場合、作業者が体調不良を訴えた場合を想定します。各自が何をするかを確認し、迷わず退避できる状態をつくります。

測定記録を位置情報と結び付けて管理する

電線共同溝のガス管理では、測定値だけでなく、どの施設のどの位置で測定したのかを残すことが重要です。同じ路線に複数のマンホールがある場合、施設番号や位置情報が不十分だと、別の場所の記録を参照してしまう可能性があります。

記録には、路線名、施設番号、道路上の位置、作業日、天候、直前の降雨、開口時刻、測定時刻、換気開始時刻を含めます。さらに、測定者、測定器の識別番号、校正確認、測定対象、測定位置、換気前後の数値、作業中の数値を残します。

測定位置は、上部、中部、下部という区分だけでなく、方角や奥行きも記載します。例えば、開口部から見た進行方向、隔壁の手前と奥、底部からの高さなどを記録すれば、次回も同じ場所を測定しやすくなります。

換気方法も記録します。送気か排気か、使用した開口部、ダクト先端の位置、換気装置の運転時間、換気中の異常などを残します。酸素濃度が改善するまでに要した時間を蓄積すれば、次回の機器選定や作業時間の見積もりに活用できます。

写真を撮影する場合は、測定器の表示だけでなく、測定ホースや換気ダクトの配置が分かるようにします。ただし、写真撮影のために開口部へ身を乗り出したり、交通規制範囲から外れたりしてはいけません。安全な位置から撮影できない情報は、文章や簡単な位置記録で補います。

異常値が出た場合は、換気後の正常値だけを残すのではなく、最初の値から改善後までの経過を記録します。異常値を消してしまうと、次回の危険予測に使えません。どの位置で異常があり、どの換気方法で改善したかを残すことが、再発防止につながります。

記録は、測定者が作成し、作業主任者や現場責任者が確認する流れを定めます。記入漏れや測定位置の不一致があれば、入溝前に修正します。作業終了後にまとめて思い出しながら記録すると、時刻や数値を取り違える可能性があるため、現場で順次記録することが望まれます。

地上にあるマンホールや特殊部の位置を管理する際には、LRTK Phoneを活用し、位置情報と現場写真、施設番号を結び付ける方法があります。地下内部では衛星信号を受信しにくいため、内部の測定点を直接測位できると考えず、地上の開口部位置を基準として内部の深さや方向を記録する運用が適しています。

LRTK Phoneはガス濃度を測る機器ではありません。酸素濃度や有害ガス濃度の確認には、用途に適した専用の測定器が必要です。LRTK Phoneは、地上位置の特定、現場写真の整理、点検履歴の共有など、測定結果を正しい施設へ結び付ける補助として活用します。

位置情報付きの履歴が蓄積されれば、酸素濃度が低下しやすい場所、降雨後に注意が必要な場所、換気に時間を要する場所を整理しやすくなります。ただし、過去の測定値が正常であっても、当日の測定を省略することはできません。履歴は作業を省略するためではなく、危険予測と測定計画の精度を高めるために使用します。

まとめ

電線共同溝のガス滞留を見逃さないためには、ふたを開けて臭いを確認するだけでは不十分です。入溝前に危険源を整理し、酸素濃度と現場に応じた有害ガスを測定し、内部全体を換気したうえで作業を始める必要があります。

一つ目の基準は、施設の構造、浸水履歴、周辺設備、当日の作業内容を確認し、測定対象を決めることです。二つ目は、酸素濃度18%以上を複数の測定点で確認することです。三つ目は、硫化水素が発生するおそれのある場所で10ppm以下を確認し、必要に応じて可燃性ガスや一酸化炭素などを追加することです。

四つ目は、開口部付近の一点だけで判断せず、上部、中部、下部、奥部を多点測定することです。五つ目は、給気と排気の位置を設計し、内部全体に空気の流れをつくって作業中も換気を続けることです。六つ目は、作業中の再測定と連続監視を行い、警報、換気停止、通信異常、体調不良があれば直ちに退避することです。

測定器や換気設備が正常に機能することも欠かせません。校正期限、センサー、吸引ホース、ダクト、電源などを点検し、異常のある設備を使用しない運用が必要です。安全を確認するための機器に不安がある状態では、作業予定を優先せず、正常な機器を準備するまで入溝を延期します。

また、異常時に保護具を着けていない人が救助へ入ると、二次災害につながります。監視員、連絡手段、救出設備、通報方法を作業前に整え、緊急時にも安全な手順を守れる体制を構築することが重要です。

ガス測定の結果は、施設番号、測定位置、換気方法、作業時刻とともに残します。異常値を含む経過を記録することで、次回点検時の測定点や換気計画を改善できます。地上のマンホール位置と写真、点検履歴を正確に結び付けたい場合は、専用のガス測定器による安全確認と併せて、LRTK Phoneによる位置情報管理の活用を検討してみてください。

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