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電線共同溝の通線用潤滑剤選びでケーブル損傷を防ぐ5基準

電線共同溝の通線で潤滑剤選びが重要な理由

電線共同溝では、道路下に整備された管路や特殊部へ電力ケーブル、通信ケーブルなどを収容します。ケーブルを管路内へ引き込む通線作業では、ケーブル外被と管路内面の間に摩擦が発生します。直線区間が短い場合には問題が表面化しにくいものの、管路が長い区間、曲がりが多い区間、高低差がある区間、既設管路を使用する区間では、摩擦抵抗が積み重なり、通線張力が大きくなることがあります。

通線用潤滑剤は、この摩擦を軽減し、ケーブルを管路内へ円滑に引き込むために、施工条件に応じて使用する補助材料です。ただし、滑りやすくなるものであれば何でもよいわけではありません。ケーブル外被の材質や配合と合わない潤滑剤を使うと、条件によっては外被の軟化、膨潤、変色、ひび割れ、機械的特性の低下などを招く可能性があります。また、施工時には問題が見えなくても、管路内に残った成分が長期間にわたってケーブルへ影響するおそれもあります。

反対に、粘度が低すぎて管路内面やケーブル表面に残らない潤滑剤では、必要な摩擦低減効果を得られない場合があります。塗布した直後に流れ落ちたり、通線途中で乾燥したりすると、入口付近では滑っていても、曲線部や奥側で抵抗が増えることがあります。

潤滑剤選びは、単なる消耗品の選定ではなく、ケーブルの品質、施工の安全性、作業時間、必要な牽引力、管路内の維持管理性を左右する施工計画の一部です。特に電線共同溝は、道路管理者、設備管理者、施工会社、ケーブル供給者など複数の関係者が関わることが多いため、現場担当者の経験だけで潤滑剤を決定せず、使用条件と適合性を事前に整理する必要があります。

潤滑剤を選ぶときは、ケーブル被覆との適合性、摩擦低減性能、粘度と付着性、乾燥後の状態、作業者や周辺環境への影響という5つの基準を軸に確認すると判断しやすくなります。

基準1 ケーブル被覆との適合性を確認する

最初に確認すべき基準は、潤滑剤とケーブル外被との適合性です。通線作業では、潤滑剤がケーブル表面へ直接付着します。施工後も完全には除去できず、管路内で長期間接触し続ける可能性があるため、短時間だけ滑ればよいという考え方では不十分です。

電線共同溝に収容されるケーブルの外被には、用途や仕様に応じてさまざまな材料が使われています。同じような黒色の外観であっても、材料の種類、添加剤、難燃性、耐候性などが異なる場合があります。そのため、過去に別の現場で問題なく使用できた潤滑剤でも、今回のケーブルにそのまま使用できるとは限りません。

適合性を確認する際は、ケーブルの種類だけで判断せず、外被材料と潤滑剤の組み合わせを確認します。ケーブルの仕様書、施工要領書、製造者が示す注意事項、潤滑剤の技術資料などを照合し、使用可能な組み合わせであることを確かめます。資料上で適合性が明確にならない場合は、関係者へ照会し、回答を記録してから採用することが重要です。

注意したいのは、施工直後の見た目に異常がないことと、長期的な適合性があることは同じではない点です。外被への影響には、表面が軟らかくなる、膨らむ、硬くなる、ひび割れやすくなる、摩耗しやすくなるといった変化があります。こうした変化は、温度、接触時間、潤滑剤の濃度、管路内の湿潤状態などによって現れ方が異なります。

現場で独自に代用品を使うことも避ける必要があります。洗剤、油、グリースなど、通線用として適合性が確認されていない材料を使用すると、ケーブル外被への影響だけでなく、管路内の残留、清掃困難、作業床の滑り、土壌や排水への流出といった問題につながります。滑りやすさだけを理由に、用途が異なる材料を転用してはいけません。

複数種類のケーブルを同一の工事で通線する場合も注意が必要です。あるケーブルには使用できても、別のケーブルには使用できない潤滑剤があります。電力系統、通信系統、予備管路などで使用材料が異なる場合は、通線対象ごとに適合性を整理します。一つの潤滑剤をすべての管路に共通使用する計画は管理しやすい一方、適合性の確認を省略する理由にはなりません。

保管中に容器の表示が汚れたり、別容器へ小分けされたりすると、何を使用したのか分からなくなるおそれがあります。現場へ持ち込む段階で名称、用途、対象ケーブル、使用期限、保管条件を確認し、小分けする場合にも識別できる表示を残します。異なる潤滑剤を混合すると性状や適合性が変化する可能性があるため、製造者が明示的に認めていない継ぎ足しや混用は避けます。

ケーブル被覆との適合性は、通線作業の当日だけでなく、設備の供用期間全体に関係します。製造者の資料や工事仕様で確認できない材料を、現場判断だけで採用しないことが、ケーブル損傷を防ぐ第一の基準です。

基準2 摩擦低減性能と必要塗布量を見極める

第二の基準は、実際の施工条件で十分な摩擦低減性能を得られることです。通線用潤滑剤には、ケーブル外被と管路内面の摩擦を小さくし、必要な牽引力を抑える役割があります。しかし、容器や資料に通線用と記載されているだけでは、対象となる管路条件に十分かどうかは判断できません。

通線時の抵抗は、管路の延長、内径、曲線の数、曲率、高低差、管路内面の状態、ケーブルの外径、単位長さ当たりの重量、引込み方向などによって変わります。直線区間では比較的抵抗が小さくても、曲線部ではケーブルが管路内側へ押し付けられ、摩擦抵抗が大きくなります。複数の曲線が連続する区間では、入口側でわずかな抵抗差であっても、奥へ進むにつれて必要な牽引力へ大きく影響することがあります。

潤滑剤の性能を評価するときは、摩擦がどの程度小さくなるかだけでなく、通線完了まで効果が続くかを確認します。塗布直後の滑りがよくても、時間の経過とともに急速に乾燥したり、ケーブルから剥がれ落ちたりする場合は、長い管路には向かない可能性があります。準備から実際の引込み開始まで時間が空く現場では、塗布後の作業可能時間も考慮しなければなりません。

必要塗布量は、少なすぎても多すぎても問題になります。塗布量が不足すると、ケーブル表面全体に潤滑剤が行き渡らず、局所的に摩擦が増えます。特に管路入口、曲線部、段差がある部分では、外被へ大きな負担が集中するおそれがあります。

一方、必要以上に多く塗布しても、必ずしも摩擦が比例して小さくなるわけではありません。余分な潤滑剤が管路入口や特殊部へ流れ出すと、作業床が滑りやすくなり、転倒事故の原因になります。ケーブル端末や接続作業を行う部分へ付着すると、清掃や後工程に手間がかかることもあります。

塗布量は、ケーブル外径、管路延長、管路内径、曲線条件、潤滑剤の性状などを踏まえ、製造者の技術資料や施工要領に従って計画します。標準的な使用量が示されている場合も、それを無条件に当てはめるのではなく、対象現場の条件と比較します。管路内が乾燥しているか、湿っているか、内部に土砂や異物が残っていないかによっても、潤滑剤の広がり方は異なります。

通線中の牽引力を確認できる場合は、計画値と実測値を比較することが有効です。牽引力が想定より早い段階で上昇した場合、単純に潤滑剤を追加するだけでなく、管路内の異物、ケーブル送り出し側の抵抗、リールの回転不良、引込み速度、曲線部での引っ掛かりなどを確認します。

摩擦低減性能は重要ですが、潤滑剤によって無理な通線計画を成立させようとしてはいけません。通線張力や曲げ条件に余裕がない場合は、中間地点からの引込み、引込み方向の変更、管路ルートの再確認など、施工方法そのものを見直す必要があります。

基準3 施工条件に合う粘度と付着性を選ぶ

第三の基準は、現場の気温、管路の勾配、通線方法などに適した粘度と付着性を持っていることです。潤滑剤の粘度が施工条件に合っていないと、適合性や摩擦低減性能が高い材料でも、現場で十分な効果を発揮できません。

粘度が低い潤滑剤は広がりやすく、塗布しやすい一方、ケーブル表面から流れ落ちやすい傾向があります。勾配のある管路では低い側へ移動し、必要な位置に残らないことがあります。管路入口で塗布しても、通線開始までに大部分が落ちてしまえば、奥側へ十分に運ばれません。

粘度が高い潤滑剤はケーブル表面に残りやすく、垂直方向や勾配のある区間でも付着しやすい反面、低温時には硬くなって塗り広げにくくなる場合があります。厚く付きすぎると、ケーブル表面へ均一に塗布できず、局所的な塊となって管路入口に残ることもあります。

電線共同溝の作業では、夏季の高温、冬季の低温、降雨後の湿潤状態など、施工時期によって条件が大きく変わります。高温時に粘度が下がりすぎる材料は流れやすくなり、低温時に粘度が上がりすぎる材料は塗布作業が困難になります。技術資料に示される使用可能な温度範囲と、現場で想定される気温や管路内温度を照合する必要があります。

管路が濡れている場合に使用できるかどうかも重要です。降雨後、地下水の浸入、洗浄後の残水などにより、管路内が完全には乾燥していないことがあります。水分によって潤滑剤が薄まり、流れ落ち、性能が低下するものもあるため、湿潤面での使用条件を確認します。ただし、湿潤状態に対応した潤滑剤を選んでも、管路内に大量の水や泥が残っている状態でそのまま通線してよいわけではありません。

ケーブルへの付着方法も選定に影響します。作業員が入口で手作業により塗布するのか、専用の塗布器具を通すのか、管路内へ先に供給するのかによって、扱いやすい粘度は異なります。塗布器具を使用する場合は、潤滑剤が器具の構造に適合し、詰まりや偏りを起こさないことを確認します。

長距離の通線では、潤滑剤がケーブルとともに管路奥へ運ばれる付着性が求められます。入口だけが過剰に潤滑され、奥側で不足する状態を防ぐため、施工要領に沿ってケーブル表面に偏りなく保持される性状であることを確認します。反対に、短い直線区間で必要以上に付着性の高い材料を使うと、完了後の清掃負担が増える可能性があります。

保管条件にも注意が必要です。直射日光、高温、凍結などによって分離や性状変化が起きると、本来の粘度や付着性が得られません。使用前には容器の状態、分離、変色、異臭、固まりなどを確認します。保管期限を過ぎた材料や、一度開封して長期間保管した材料は、外観だけで使用可否を判断しないことが大切です。

粘度と付着性は、数値が高いほどよいという単純な基準ではありません。現場の温度、勾配、湿潤状態、塗布方法、管路延長に合ったバランスを選ぶことが重要です。

基準4 乾燥後の残留性と清掃性を確認する

第四の基準は、潤滑剤が乾燥した後にどのような状態になるか、また、必要な箇所を清掃しやすいかという点です。通線中の滑りだけに注目すると見落としやすいものの、施工後の残留状態は設備の維持管理や追加工事へ影響します。

製品によっては、時間の経過とともに水分などが抜け、薄い膜として残るものがあります。乾燥後も粘着性が残る場合、管路内の砂やほこりを付着させやすくなる可能性があります。将来、同じ経路で撤去、更新、追加通線などを行う際に、残留物が抵抗となることも考えられます。

乾燥後の残留物が硬化するか、柔軟な膜となるか、再び水分に触れたときにどのような状態になるかは製品ごとに異なります。管路入口、ベルマウス部、曲線部などに残留物が偏ってたまると、将来の引抜きや追加通線の抵抗要因となる可能性があるため、技術資料で乾燥後の性状を確認します。

ケーブル端末部や接続予定箇所へ潤滑剤が付着した場合の清掃方法も整理しておきます。端末処理では、ケーブル表面の清浄性が求められる場合があります。潤滑剤が残ったまま後工程へ進むと、部材の取付けや表面処理へ影響するおそれがあります。通線作業と端末作業の担当が異なる場合は、どの範囲まで清掃して引き渡すかを明確にする必要があります。

清掃に使用する材料についても、ケーブル外被への適合性を確認します。潤滑剤を除去するために、適合性が確認されていない溶剤や洗浄剤を使用すると、潤滑剤そのものより外被へ大きな影響を与える可能性があります。基本的には、ケーブルおよび潤滑剤の製造者が示す清掃方法に従います。

特殊部やハンドホール内に流出した潤滑剤を放置すると、点検時の足元が滑りやすくなったり、排水設備へ流入したりすることがあります。通線完了後は、ケーブルだけでなく、管路入口、床面、壁面、作業器具、引込み金具なども確認し、余剰分を回収します。

将来の工事を考慮すると、使用した潤滑剤の種類と施工箇所を記録しておくことも重要です。設備更新時に過去の材料が分からないと、残留物の性質や清掃方法を判断しにくくなります。施工記録には、潤滑剤の識別情報、使用対象、使用日、使用範囲、異常の有無などを残します。

乾燥後の残留性と清掃性は、施工当日の作業効率だけでは評価できません。通線後の端末処理、点検、追加通線、撤去、更新まで見据えて選定することが、電線共同溝を長期的に管理しやすくするポイントです。

基準5 作業安全性と周辺環境への影響を確認する

第五の基準は、作業者の安全性と周辺環境への影響です。通線用潤滑剤は作業中に手や衣服へ付着しやすく、床面、道路、排水設備などへ流出する可能性があります。そのため、ケーブルへの性能だけでなく、取扱い上の注意事項も確認しなければなりません。

作業者への影響は製品の成分や使用方法によって異なります。使用前に安全データシート、容器表示、取扱説明書を確認し、皮膚や眼への接触、吸入、誤飲などに関する注意事項と、必要な保護手袋、保護眼鏡、作業衣などを整理します。手作業で塗布するときは、素手で扱うことを前提にせず、製品資料と現場のリスク評価に従います。

狭い特殊部や地下空間では、換気状況にも注意します。換気の要否は、製品の安全データシート、使用量、作業場所の広さ、開口部、他の作業で使用する材料などを踏まえて判断します。必要に応じて換気、濃度確認、入場管理などを行い、潤滑剤だけでなく作業空間全体のリスクを管理します。

潤滑剤が床面へ落ちると、非常に滑りやすくなることがあります。作業員がケーブル送り出し、牽引、合図、監視などのために移動する場所では、少量のこぼれでも転倒につながります。塗布場所の下へ受け材を設置し、こぼれた場合は直ちに回収できるよう、清掃用品を準備しておきます。

道路上の作業では、潤滑剤が舗装面へ付着すると、作業員だけでなく通行車両や歩行者にも影響するおそれがあります。作業範囲を明確に区画し、容器の転倒防止、運搬経路、仮置き場所を決めます。容器を開けたまま不安定な場所へ置かないことも基本です。

排水設備や土壌への流出を防ぐ管理も必要です。環境への影響が小さいと表示される材料であっても、無制限に排水してよいという意味ではありません。余った潤滑剤、回収した残留物、汚れた清掃材などは、安全データシート、製造者の指示、現場の廃棄物管理方法、関係法令に従って扱います。

製品には水系で不燃性とされるものもありますが、性状は一律ではありません。火気や高温の影響が想定される場所では、安全データシートで引火性、燃焼性、保管温度、凍結の可否などを確認します。容器を車内や直射日光下に長時間放置すると、漏れや性状変化が起きる可能性があるため、製品ごとの保管条件に従うことが大切です。

潤滑剤を選定するときは、作業性がよいという理由だけで決めず、安全データシートや取扱方法が確認できるものを選びます。万一、目や皮膚へ付着した場合の対応、こぼれた場合の回収方法、廃棄方法を作業前に共有しておくことで、施工中の混乱を減らせます。

潤滑剤だけに頼らず通線張力と側圧を管理する

適切な潤滑剤を使用しても、通線張力や曲線部の側圧が許容範囲を超えれば、ケーブル損傷を防ぐことはできません。潤滑剤は通線計画を補助する材料であり、無理な牽引を可能にするものではありません。

通線張力は、ケーブルを引く力です。過大な張力がかかると、導体、光ファイバー、補強材、外被などへ影響する可能性があります。許容される張力はケーブルの構造、引込み金具の取付方法、牽引位置などによって異なるため、対象ケーブルと施工用具の製造者が示す条件を確認します。

曲線部では、張力によってケーブルが管路内側へ押し付けられます。この押付け力が大きいと、外被が変形したり、表面が削れたりするおそれがあります。曲げ半径が小さい部分や、複数の曲線が連続する部分は特に注意が必要です。

通線計画では、管路ルートを直線部と曲線部に分け、どの区間で抵抗が増えやすいかを把握します。設計図上では緩やかな線形に見えても、施工誤差、管路継手のずれ、沈下、異物などによって実際の抵抗が大きくなる場合があります。事前に管路の通過確認や清掃を行い、通線可能な状態であることを確かめます。

牽引機器の能力が大きければ安全という考え方も適切ではありません。強い力で引ける機器ほど、引っ掛かりが起きたときにケーブルへ過大な力を加える可能性があります。必要なのは最大能力ではなく、張力を把握しながら適切に制御できることです。

通線中は、送り出し側と引込み側の合図を統一し、異常を感じた場合に直ちに停止できる体制を整えます。牽引力が急に上がったとき、振動や異音が発生したとき、リールの回転が不安定になったときは、無理に作業を続けず原因を確認します。

潤滑剤を追加すると一時的に抵抗が下がる場合がありますが、異物や段差に引っ掛かっている状態では根本的な解決になりません。抵抗増加の原因を潤滑不足だけと決めつけないことが重要です。

潤滑剤を使用する前に確認したい施工計画

潤滑剤の性能を十分に生かすためには、通線前の施工計画が欠かせません。まず、対象となる管路の経路、延長、内径、曲線位置、高低差、特殊部の位置を確認します。図面だけでなく、現地の入口位置、作業スペース、リール設置場所、牽引機器の配置も確認します。

次に、管路内の清掃と通過確認を行います。管路内に土砂、水、異物、継手の突出などがあると、潤滑剤を使用しても抵抗を十分に下げられません。清掃後は、必要に応じて通過確認用の器具などを用い、ケーブル外径に対して通線可能な断面が確保されているかを確認します。

ケーブルの引込み方向も重要です。同じ管路でも、勾配、曲線配置、作業スペースによって、どちら側から引くかで必要な張力が変わることがあります。リールを安定して配置できるか、ケーブルをねじらず送り出せるか、曲げ半径を確保できるかを比較して決定します。

潤滑剤については、使用する種類、対象ケーブル、予定使用量、塗布位置、塗布方法、追加塗布の判断基準を施工計画へ盛り込みます。現場へ搬入してから適合性を確認するのではなく、使用材料の承認や確認を事前に終えておきます。

作業時間も考慮します。ケーブルを展開して潤滑剤を塗布してから、引込み開始まで長時間放置すると、乾燥や異物付着が起きる可能性があります。準備作業、機器確認、合図確認を先に終え、塗布後は製品の施工要領で認められた時間内に通線を開始できるようにします。

中断時の対応も決めておきます。通線途中で機器故障、天候悪化、交通規制上の問題などが発生した場合、ケーブルをどの位置で停止させるか、端部をどのように保護するか、再開時に潤滑剤を追加するかを整理します。

作業員の配置では、リール監視、ケーブル送り、潤滑剤塗布、牽引機器操作、張力監視、特殊部監視、全体指揮などの役割を明確にします。同じ作業員が複数の重要作業を同時に担当すると、塗布不足や異常の見落としにつながります。

ケーブル損傷を防ぐ潤滑剤の塗布方法

潤滑剤は、製造者が示す指定量と指定方法に従い、ケーブルと管路の接触面へ偏りなく供給することが基本です。「薄く」または「多く」と一律に決めるのではなく、ケーブル外径、管路延長、曲線条件、塗布器具、潤滑剤の性状に応じて施工します。塗布むらがあると、潤滑されていない部分で抵抗が増えることがあります。

塗布前には、ケーブル表面へ砂、金属片、泥などが付着していないか確認します。異物が付いた状態で潤滑剤を塗ると、異物を巻き込んだまま管路内へ引き込むことになり、外被を傷つける原因になります。

管路入口では、ケーブルが入口の角部へ直接当たらないよう、案内器具や保護部材を適切に配置します。潤滑剤が十分でも、入口でケーブルが鋭角に曲がったり、硬い縁へこすれたりすれば外被を損傷します。入口形状とケーブル進入角度を確認し、必要な曲げ半径を確保します。

手作業で塗布する場合は、安全データシートと作業手順で定めた保護具を着用し、ケーブルが動いている部分へ手を巻き込まれない方法を採ります。移動中のケーブルを直接つかみながら塗る作業は、手袋の巻込みや挟まれにつながる可能性があります。安全に塗布できる器具や作業位置を設定します。

通線開始直後は、潤滑剤が管路内へ適切に運ばれているかを確認します。入口で潤滑剤が削ぎ落とされ、周囲へ大量にたまる場合は、塗布量、粘度、入口形状、塗布位置を見直します。単に追加するのではなく、なぜ管路内へ入らないのかを確認することが大切です。

長距離区間では、製造者の施工要領と通線計画に従い、通線の進行に合わせて必要量を安定して供給します。入口で継続的に供給する方式、管路へ先に供給する方式、専用器具を用いる方式などがあるため、製品と施工方法の組み合わせを事前に確認します。作業が遅れた場合の乾燥や流出も考慮し、引込み速度と供給方法を調整します。

作業途中で潤滑剤の容器を交換する場合は、同じ材料であることを表示で確認します。容器の外観が似ていても、別用途の材料が置かれている可能性があります。開封済み容器の中身が不明な場合は使用しない判断も必要です。

通線完了後は、端末処理などで清浄性が必要な範囲について、指定された方法で余剰分を除去し、外被に擦り傷、切れ、へこみ、変色などがないか確認します。特に管路入口や案内器具を通過した部分は、損傷が起こりやすいため丁寧に確認します。

通線作業で起こりやすいトラブルと対処法

通線開始直後から牽引力が高い場合は、潤滑剤不足だけでなく、送り出し側の抵抗を確認します。ケーブルリールの回転が重い、ブレーキが強すぎる、ケーブルが地面や架台へ接触している、送り出し方向が適切でないといった原因が考えられます。

途中から牽引力が急に上昇した場合は、曲線部への到達、管路内の異物、継手部分の段差、ケーブル先端の引っ掛かりなどを疑います。無理に牽引を続けると、先端金具の外れや外被損傷につながるため、一度停止して状況を整理します。

牽引力が周期的に変動する場合は、リールの回転、ケーブルの巻き癖、牽引機器の動作、ロープの巻取り状態などを確認します。潤滑剤の塗布むらが影響している場合もありますが、力の変動をすべて摩擦の問題と考えないことが重要です。

潤滑剤が管路入口から大量に押し戻される場合は、粘度が条件に合っていない、塗布量が多すぎる、入口部でケーブルから削ぎ落とされている可能性があります。床面へ流れた潤滑剤は直ちに回収し、作業員の転倒を防ぎます。

ケーブル表面に擦り傷が見つかった場合は、傷の位置、長さ、深さ、発見時点を記録します。そのまま使用できるかを現場判断だけで決めず、ケーブルの仕様や関係者の判断に基づいて対応します。補修が可能な場合でも、指定された材料と手順を確認します。

通線途中でケーブルが動かなくなった場合、牽引力を急激に上げるのは危険です。送り出し側を戻す操作の可否、特殊部からの確認方法、管路経路の異常の有無を、施工責任者と関係者が確認します。引込み方向の変更や中間地点からの作業が必要になる場合もあります。

潤滑剤を追加した直後だけ抵抗が下がり、すぐに再上昇する場合は、塗布方法や付着性が施工条件に合っていない可能性があります。低温による粘度上昇、湿潤面での流出、塗布から引込みまでの時間超過なども確認します。

トラブル発生時は、発生位置と通線長をできるだけ正確に把握します。ケーブルの送り出し量、牽引ロープの位置、特殊部の位置関係が分かれば、原因箇所を絞り込みやすくなります。作業前に距離管理の方法を決めておくことが有効です。

施工記録と完了確認で品質を残す

通線作業が完了しても、ケーブルが管路内へ入ったことだけで作業を終えてはいけません。施工品質を説明できるよう、使用材料、施工条件、牽引状況、外観確認の結果を記録します。

潤滑剤については、使用した材料の識別情報、使用対象となったケーブルと管路、使用日、使用量の目安、保管状態、異常の有無などを残します。複数の種類を使用した場合は、どの区間に何を使用したのかを区別できるようにします。

通線作業では、開始時刻、完了時刻、引込み方向、作業員配置、使用機器、途中停止の有無、異常発生位置なども記録します。牽引力を確認している場合は、計画値だけでなく実際の変化や最大値を残すと、施工条件の検証に役立ちます。

完了後は、露出部のケーブル外観、端部の状態、必要な余長、表示、管路入口の保護状態などを確認します。潤滑剤や泥が付着していると細かな傷を見落としやすいため、製造者が示す方法で必要な範囲を清掃してから確認します。

特殊部やハンドホール内では、床面の清掃、余剰潤滑剤の回収、残材の撤去、排水状態、ケーブル配置を確認します。通線後のケーブルが他の設備を圧迫していないか、必要以上に曲げられていないかも確認します。

写真記録を残す場合は、単に作業員が作業している様子だけでなく、使用材料の表示、管路番号、ケーブル表示、引込み前後の状態、特殊部内の配置、外観確認箇所など、後から施工内容を判断できる対象を撮影します。

写真と施工位置の対応が分からなくなると、記録の価値が下がります。複数の特殊部や管路を連続して施工する現場では、位置情報、撮影時刻、管路番号などを関連付けて整理することが重要です。

記録は、問題が発生したときの責任確認だけを目的とするものではありません。次回の通線計画、類似管路の施工方法、潤滑剤の使用量、作業員配置などを改善するための情報にもなります。牽引力が想定より小さかった条件や、反対に抵抗が大きくなった条件を蓄積すれば、今後の計画精度を高められます。

まとめ

電線共同溝の通線用潤滑剤は、必要な施工条件でケーブルと管路の摩擦を軽減し、通線張力や外被への負担を抑えるために用いる重要な補助材料です。ただし、単に滑りやすい材料を選ぶだけでは、ケーブル損傷を十分に防げません。

選定時には、ケーブル被覆との適合性、実際の管路条件に対する摩擦低減性能、施工温度や勾配に合う粘度と付着性、乾燥後の残留性と清掃性、作業者や周辺環境への安全性という5つの基準を確認する必要があります。

さらに、潤滑剤は通線張力や曲線部の側圧を無制限に小さくできるものではありません。管路ルート、曲線、高低差、ケーブル重量、引込み方向、リール配置などを踏まえて通線計画を作成し、施工中は牽引力の変化や異常を監視することが重要です。

通線前の管路清掃、通過確認、役割分担、塗布方法の決定、異常時の停止基準まで準備しておけば、潤滑剤の性能を安定して引き出せます。完了後は、ケーブル外観、特殊部内の状態、余剰潤滑剤の回収を確認し、使用材料と施工状況を記録として残します。

電線共同溝では、地下に収容された後のケーブルを外部から直接確認しにくくなります。そのため、通線時に無理な力を加えないことと、施工位置や作業状況を追跡できる記録を残すことが、長期的な品質管理につながります。現場写真や施工位置を効率よく整理し、通線前後の状態を共有する方法を検討する際は、位置情報付きの記録を扱えるLRTK Phoneの活用へつなげることもできます。

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