LRTKレフィクシア株式会社

地下遺構をTLS計測する際の7つの安全対策

地下遺構を対象としたTLS計測は、対象物に接触せず、複雑な形状を三次元点群として記録できる有効な方法です。石室、地下通路、横穴、地下壕、井戸状遺構、地下室、発掘調査中の掘り込みなど、手作業による実測だけでは形状を把握しにくい場所でも、面的な記録を残せます。文化財の現況保存、変状把握、図面作成、修復計画、研究資料の作成など、TLSによる文化財計測の活用範囲は広がっています。 一方、TLSが非接触の計測方法だからといって、作業そのものが安全になるわけではありません。地下遺構では、崩落、落下、転倒、酸素欠乏、有害ガス、浸水、停電、通信不能など、地上とは異なる危険が重なります。計測精度を優先して危険な場所へ機器を置いたり、点群の欠測を埋めるために無理な姿勢で移動したりすれば、作業者だけでなく遺構にも損傷を与えるおそれがあります。 安全なTLS文化財計測を実現するには、現場へ入ってから注意するのではなく、立入判断、役割分担、機器配置、退避条件、データ確認までを一体として計画することが重要です。本記事では、地下遺構をTLS計測する実務担当者に向けて、現場で押さえたい7つの安全対策を詳しく解説します。

地下遺構のTLS計測で安全を先に設計する理由

TLSは、地上設置型レーザースキャナーからレーザー光を照射し、対象物までの距離と方向を取得して三次元点群を生成する計測方法です。短時間に広い範囲を記録できるため、凹凸の多い石積み、曲面を持つ石室、複雑に分岐する通路などの形状把握に適しています。対象物へ巻尺や標尺を直接当てる機会を減らせる点も、文化財保護の観点から利点となります。 しかし、地下遺構では、計測対象と作業空間がほぼ同じ場所になります。機器を設置できる平坦面が少なく、通路幅や天井高が限られるため、計測者が壁面、支保材、発掘面、開口部の近くを通らなければならない場合があります。点群の重複範囲を確保しようとして奥へ進むほど、出入口から離れ、退避に必要な時間も長くなります。 また、レーザー光が届く範囲と、人が安全に立ち入れる範囲は一致しません。TLSから対象面が見えていても、その機器位置まで作業者が安全に移動できるとは限らないからです。反対に、安全な通路上へ機器を設置できても、曲がり角や柱、支保材の背後には死角が残ります。この死角を完全になくそうとすると、危険箇所への過度な接近や設置回数の増加につながります。 地下遺構のTLS計測では、点群の完全性よりも人命と遺構保護を優先しなければなりません。欠測が残る場合は、その理由を記録し、別の観測位置、補助的な写真記録、手作業による限定的な計測などで補えるかを検討します。安全を確保できない範囲は、計測対象から外す判断も必要です。 作業計画では、文化財調査の担当者、施設管理者、安全管理を担う者、計測担当者が、同じ現場図を見ながら危険箇所と立入範囲を共有します。TLSの設置候補だけを先に決めるのではなく、安全が確認された範囲の中から設置候補を選ぶ順序が基本です。

安全対策1 事前調査で危険箇所と立入条件を整理する

最初の安全対策は、現場に入る前の情報収集と危険評価です。地下遺構の状態は、公開資料や過去の図面だけでは判断できないことがあります。以前の調査後に亀裂が広がっている、豪雨で土砂が流入している、仮設の通路や支保材が変更されているといった可能性があるため、計測当日の状態を前提として立入条件を決めます。 事前調査では、遺構の平面形状、出入口、深さ、高低差、通路幅、天井高、開口部、湧水箇所、過去の崩落履歴、補強状況を確認します。地下配管や電気設備が残る施設では、稼働状態や管理範囲も調べます。発掘調査中の現場では、壁面や床面の整形が進むたびに状態が変わるため、前日の情報をそのまま使わず、作業開始前に再確認します。 現地確認では、見える危険だけでなく、発生条件も整理することが重要です。例えば、通常は乾いている通路でも、上流側の降雨によって急に水が流れ込む場合があります。地上で大型車両が通行すると振動が伝わる場所や、隣接工事の影響を受ける場所もあります。現場内だけでなく、周辺の作業予定、天候、排水設備、地上の立入状況まで確認すると、危険の見落としを減らせます。 危険箇所は、立入可能区域、条件付き区域、立入禁止区域に分けておくと管理しやすくなります。条件付き区域では、監視者の配置、滞在時間の制限、保護具の使用、換気の継続など、入域に必要な条件を明確にします。立入禁止区域は、口頭の注意だけで済ませず、表示や区画によって現場で識別できる状態にします。 作業中止の基準も事前に定めます。落石、異音、亀裂の変化、濁水の増加、換気設備の停止、測定値の異常、照明の消失、通信不能などが確認された場合は、計測途中であっても退避します。「あと一地点だけ計測する」といった判断を現場任せにすると、危険の兆候を軽視しやすくなります。誰が中止を決めるのか、どの条件で全員が退避するのかを作業前に共有しておくことが必要です。 文化財では、管理者や関係機関による許可、立会い、保護範囲の指定が必要になることもあります。計測のために堆積物を移動したり、基準標識を固定したり、照明やケーブルを遺構へ接触させたりしてよいとは限りません。安全対策と文化財保護の条件を同じ作業計画に記載し、現場で判断が分かれないようにします。

安全対策2 構造の安定性を確認して崩落と落下を防ぐ

地下遺構では、天井、側壁、石積み、掘削面、支保材などの安定性を確認しなければなりません。外観上は形状を保っていても、石材の背後に空隙がある、目地材が失われている、土圧や地下水の影響を受けているといった可能性があります。TLSで亀裂や変形を記録できても、その計測に入る前の安全性をTLSだけで証明することはできません。 立入前には、対象構造に応じた知識を持つ担当者が状態を確認し、必要に応じて専門的な調査や補強を行います。浮石、剥離、亀裂、変色、漏水、土砂のこぼれ、支保材の変形などは、注意すべき兆候です。小さな破片が床に新しく落ちている場合も、上部で変化が生じている可能性があります。 地下空間で異音や落下物を確認したときは、その場で見上げて原因を探そうとせず、決められた経路で退避します。危険箇所の直下を素早く通過すれば安全とは限りません。原因と影響範囲が確認されるまで、周辺を立入禁止とする判断が必要です。 TLSを壁際へ寄せると、壁面を高密度に取得しやすくなる場合があります。しかし、壁面のはらみ出し、石材の抜け、土砂の崩れが疑われる場所では、近接設置によって危険が増します。機器位置は求める点密度だけでなく、落下物が届く可能性のある範囲、支保材の状態、床面の安定性を踏まえて決めます。 三脚を立てる際には、脚先で遺構や発掘面を傷つけない配慮も欠かせません。柔らかい地盤では三脚が沈み、機器が転倒することがあります。一方、脚を強く押し込むと遺構を損傷する可能性があります。必要に応じて、管理者の承認を得たうえで荷重を分散できる保護材を使用し、設置面が動かないことを確認します。保護材が滑りやすくならないか、通路を狭めないかも同時に確認します。 開口部や段差の近くでは、三脚の脚が落ち込まない位置を選びます。作業者が機器の周囲を回り込む必要がある場合は、その動作に必要な幅も確保します。機器だけが安定していても、操作する人が不安定な足場に立つ配置では安全とはいえません。 構造の安定性は、作業開始時に一度確認すれば終わりではありません。降雨、振動、温度変化、排水状況、周辺作業の進行によって状態が変化することがあります。長時間の計測や複数日にわたる計測では、作業再開ごとに目視確認を行い、前回の写真や点検記録と比較します。異常が疑われる場合は、点群取得を優先せず、専門担当者による再確認を待ちます。

安全対策3 酸素濃度と有害ガスを確認して換気を管理する

地下遺構では、空気が滞留しやすく、酸素欠乏や有害ガスの危険を目視で判断できません。においがないから安全とは限らず、作業者が自覚症状を感じてから退避しようとしても間に合わない可能性があります。井戸、立坑、地下ピット、閉鎖された通路、水や有機物が滞留する空間では、特に慎重な評価が必要です。 酸素欠乏などの危険が想定される場所では、関係法令と現場の安全管理基準に基づき、資格や教育を受けた担当者の配置、濃度測定、換気、立入管理、監視、救護体制などを整えます。酸素欠乏危険作業については、作業開始前や異常発生時などの濃度測定、設備の点検、立入禁止、退避といった措置が定められています。対象場所への該当性や必要な措置は、酸素欠乏症等防止規則を含む現行の関係法令と現場条件を確認して判断します。 濃度測定は、作業者が危険な空間へ入ってから行うのではなく、安全な位置から実施できる方法を計画します。地下空間では高さや奥行きによって空気の状態が異なることがあるため、入口付近の一点だけで全域を代表できるとは限りません。測定位置、測定時刻、換気の状態、測定結果を記録し、作業中も必要な監視を継続します。 換気設備を設置する場合は、新鮮な空気が必要な範囲へ届き、滞留部が残らないようにします。送風によって粉じん、かび、堆積物、微細な文化財片を飛散させる可能性もあるため、風向、風量、吹出口の位置は文化財担当者と調整します。換気のための配管や電源ケーブルが避難経路をふさがないよう、固定方法と通線経路も確認します。 換気設備の運転音は、落石音や呼びかけを聞き取りにくくすることがあります。作業者間の連絡手段を別に設け、設備停止時に誰が知らせるかを決めます。換気が止まった場合、空気の状態がすぐに危険値へ変化しないように見えても、自己判断で作業を続けてはいけません。定めた手順に従って退避し、原因の確認と再測定を行います。 作業者の体調変化も重要な警告です。頭痛、吐き気、めまい、息苦しさ、判断力の低下などが見られた場合は、本人の申告を待たずに退避させます。救助者が保護具や監視なしで中へ入ると、二次災害につながります。救助方法、外部への通報、救護設備の使用条件は作業前に決め、訓練や確認を行っておく必要があります。 TLS計測では、スキャン中に作業者が点群へ写り込まないよう、その場を離れることがあります。しかし、機器から離れることと、監視者から見えない場所へ単独で移動することは別です。空気環境に危険がある場所では、点群の品質を理由に監視体制を崩してはいけません。安全な待機位置を事前に決め、作業者の所在を常に把握できるようにします。

安全対策4 出入口と退避経路を確保して浸水にも備える

地下遺構では、出入口が限られます。通常の移動では問題のない通路でも、停電、煙、浸水、落下物などが発生すると通行できなくなる可能性があります。計測機器や収納ケースを通路へ置くと、さらに退避が難しくなります。そのため、計測計画では入場経路だけでなく、緊急時に全員が外へ出るための経路を先に確保します。 出入口付近には、不要な機材、梱包材、空箱を置かないようにします。TLS本体、三脚、補助照明、換気設備、ケーブルなどを持ち込む場合は、使用中の配置だけでなく、運搬途中の仮置き位置も決めます。狭い階段や梯子を使う現場では、作業者が機器を抱えたまま昇降しない運搬方法を検討し、落下防止と遺構保護の両方に配慮します。 退避経路の段差、曲がり角、狭窄部、滑りやすい箇所は、入場前に全員で確認します。暗所では方向感覚を失いやすいため、停電時にも識別できる誘導方法を用意します。ただし、標識や誘導材を遺構へ直接貼り付けると、表面を損傷することがあります。設置方法は文化財担当者の承認を受け、撤去後に痕跡を残さないようにします。 地下水や雨水の流入が想定される場所では、地上の天候も作業条件になります。現場で雨が降っていなくても、上流域や周辺での降雨によって水位が変化する場合があります。作業当日の予報だけに頼らず、過去の浸水履歴、排水設備の能力、地形、流入口、地上の水路や工事状況を確認します。 床面に少量の水がある場合でも、増水の兆候を見分けられるよう、水位や濁りの変化を監視します。水が透明から濁りへ変わる、流速が増す、新しい流入音が聞こえるといった変化があれば、早い段階で退避します。機器を回収してから逃げようとすると判断が遅れるため、緊急時は人の退避を優先することを全員で共有します。 複数の出入口がある場合も、すべてが常時利用できるとは限りません。施錠、扉の開閉方向、落差、障害物、地上側の立入規制などを確認し、実際に使用できる経路だけを退避計画へ反映します。救急隊など外部の支援者が現場へ到達するための入口、案内役、鍵の管理方法も決めておくと、緊急時の混乱を抑えられます。

安全対策5 照明と電源を整えて転倒や感電を防止する

地下遺構では、照明不足が転倒、接触、誤操作の原因になります。TLS本体の表示を確認できる明るさがあっても、足元、天井、段差、ケーブルまで見えているとは限りません。局所的に強い照明だけを使うと、明暗差によって周囲が見えにくくなることもあります。 照明計画では、移動経路を照らす照明、作業位置を照らす照明、停電時の予備照明を分けて考えます。作業者は個人用の照明も携行し、両手を使う場面で視界を確保できるようにします。照明器具の設置場所は、避難経路、TLSの視野、文化財表面への影響を考慮して決めます。 照明がTLSの計測距離へ直接影響するとは限りませんが、カラー情報を取得する場合は、光の当たり方によって色むらや影が生じます。その補正を目的として照明を頻繁に移動すると、転倒や接触の危険が増えます。安全な固定位置を優先し、色の再現条件や照明位置を記録して、後工程で判断できるようにします。 電源ケーブルは、狭い通路で大きな障害になります。可能な限り通行範囲を横切らない経路を選び、必要な場所では目立つように整理します。ただし、遺構へ釘や粘着材で固定することは避け、管理者が認めた方法を使用します。余ったケーブルを床へ無造作に置かず、巻き方による発熱や引っ掛かりにも注意します。 湧水や湿気がある場所では、電気機器の使用条件を確認します。水たまりの近くへ接続部を置かず、濡れた手で操作しないことが基本です。機器が対応できる環境条件はそれぞれ異なるため、防滴性があるという理由だけで水中や高湿度環境で使用できると判断してはいけません。使用前に仕様、点検方法、保護方法を確認し、異常な発熱、におい、変色、損傷があれば使用を中止します。 充電池を使う場合は、地下へ持ち込む本数、交換場所、保管方法を決めます。暗所での交換は、端子の損傷や部品の落下を招きやすいため、安全で明るい場所で行います。予備電源があることを理由に作業時間を延ばさず、作業者の疲労、空気環境、退避時間を含めて入域時間を管理します。 照明が消えた場合の行動も統一します。突然の暗転時にその場から動くと、段差や機器へ接触する危険があります。まず姿勢を安定させ、予備照明を確保し、監視者の指示で退避するなど、現場条件に合った手順を共有します。TLSのデータ保存や電源操作よりも、作業者の安全確認を優先します。

安全対策6 TLS機器を安全に配置して作業動線を分離する

TLS機器の配置は、計測品質だけでなく安全性を左右します。狭い地下空間で三脚を広げると、通路の有効幅が小さくなり、脚へつまずく危険が生じます。機器の周囲を通る際に三脚へ触れれば、機器の転倒だけでなく、遺構への衝突や点群の位置ずれも発生します。 設置候補を決めるときは、対象面への見通し、点群の重複、計測距離、入射角に加えて、人の通行幅、退避方向、天井高、床面の強度を確認します。計測中に他の調査作業が続く場合は、TLSの設置範囲と人の動線を分離します。作業の同時進行が危険であれば、時間帯を分けて実施する方が確実です。 三脚は、すべての脚が安定し、ロックが確実に働いていることを確認します。傾斜面や凹凸面で高さを無理に合わせると、重心が偏ります。機器を高く設置すれば遮蔽物を越えやすくなりますが、転倒時の影響も大きくなります。必要以上に高くせず、安定性を優先します。 狭い場所での機器運搬では、TLS本体を三脚へ取り付けたまま移動しないことが基本です。天井や壁面に接触しやすく、足元も見えにくくなるためです。本体と三脚を適切に分け、安全な姿勢で運びます。梯子や急な階段では、昇降する人と機器を受け渡す人の役割を決め、落下範囲へ他の作業者を入れないようにします。 スキャン開始前には、回転部分、照射方向、周辺の反射物を確認します。計測中は、光学部や照射窓をのぞき込まず、機器の安全区分と取扱説明に従います。鏡面性の高い仮設材、濡れた金属、反射板などがある場合は、意図しない方向へ光が反射する可能性も考慮します。安全な機器であっても、分解、改造、保護機構の無効化を行ってはいけません。 文化財計測では、標的や基準点を設置することがあります。粘着材、磁石、釘、ねじ、強い圧力などは、材質によって損傷や変色の原因になります。対象物へ直接固定せず、自立式の標識や既存の安全な構造を利用できるか検討します。設置と撤去の方法は事前に承認を受け、撤去漏れがないよう記録します。 機器が点群へ写ることや、三脚周辺に欠測が生じることはあります。しかし、それを避けるために不安定な台へ載せたり、開口部へ張り出したりしてはいけません。安全に取得できない部分は欠測理由を記録し、隣接地点からの追加計測で補えるかを確認します。 スキャン後は、次の設置位置へ移る前にデータの取得状況を確認します。後で欠測に気づいて危険区域へ戻ることを防ぐためです。ただし、現場内で長時間画面を確認すると滞在時間が延びます。最低限の確認項目を決め、詳細な点群処理は安全な場所へ退避してから行います。

安全対策7 複数人で監視と連絡を行い緊急対応を決める

地下遺構のTLS計測は、原則として単独作業を避け、現場条件に応じた人数と役割を配置します。最低限、地下で計測を行う担当者と、出入口側で状況を把握する監視担当者を分けて考えます。危険性が高い場所では、関係法令や現場規程に基づく作業責任者、測定担当者、救護要員など、追加の体制が必要になります。 役割分担では、誰がTLSを操作するかだけでなく、誰が入退場を記録し、誰が空気環境や天候を監視し、誰が中止を判断するかを明確にします。一人が複数の役割を持つ場合も、作業中に同時に実行できるかを確認します。点群の取得状況に集中している操作者へ、周囲の監視まで任せるのは適切ではありません。 地下では、携帯通信や無線通信が届かないことがあります。計測前に実際の通信範囲を確認し、圏外になる場所を把握します。通信機器が使えない場合は、有線連絡、定時連絡、合図、伝令など、現場条件に合った代替手段を決めます。単に「聞こえる距離だから大丈夫」と判断せず、換気設備の音や曲がり角の影響も確認します。 定時連絡を行う場合は、連絡間隔と応答がないときの行動を定めます。監視担当者が自己判断で危険区域へ入ると、二次災害につながる可能性があります。まず外部へ連絡し、定めた救助体制を開始するなど、現場の緊急計画に従います。 入退場管理では、地下へ入った人の氏名、時刻、担当、予定位置を記録します。複数の調査班が同時に作業する場合は、計測班だけの名簿では不十分です。現場全体の入域者を把握し、退避後に全員の退出を確認します。機器を取りに戻った人や、短時間だけ入った立会者も記録対象に含めます。 緊急連絡先は、現場管理者、施設管理者、消防・救急への通報手順、地上の誘導担当などを整理します。現場名称だけでは位置を説明しにくい場合があるため、入口の位置、進入経路、鍵の有無、地下での作業位置を共有できる資料を用意します。救助する側が遺構内部の構造を知らないことも想定し、簡潔な平面図や経路図を地上側に備えます。 作業前の打合せでは、危険箇所、立入範囲、退避合図、連絡方法、作業終了時刻を全員で確認します。説明を聞くだけでなく、各担当者が自分の役割を言葉にして確認すると、認識のずれを見つけやすくなります。新しい作業者が途中から加わった場合も、同じ説明を省略しません。 疲労管理も安全対策の一部です。地下では時間感覚が薄れやすく、機器の設置と移動を繰り返すことで集中力が低下します。休憩場所と交代時刻を決め、体調不良を申告しやすい雰囲気を作ります。予定より作業が遅れた場合は、終了時刻を延ばすのではなく、残りを次回へ回す判断を含めて計画します。

計測精度と安全性を両立させる作業手順

安全対策を実際の計測へ反映するには、準備、入場、設置、計測、確認、退出の各段階をつなげて管理します。まず地上の安全な場所で、TLS本体、三脚、電源、照明、記録用品を点検します。地下へ入ってから不足や故障が判明すると、不要な往復や滞在時間の増加につながるためです。 次に、作業開始前の現場点検、空気環境の確認、入退場登録を行います。危険区域と退避経路を共有した後、必要最小限の機材だけを搬入します。収納ケースは、出入口や通路をふさがない指定場所へ置きます。 最初のTLS設置位置は、出入口に近く、安全性を確認しやすい場所から選ぶと、機器操作や連絡方法の問題を早い段階で発見できます。そこから奥へ進む場合も、先に安全確認を行い、その後に機器を移動します。設置候補へ機器を持ち込んでから安全性を考える順序にしてはいけません。 各地点では、三脚の安定、周囲の通行幅、落下物の危険、照明、連絡状態を確認してからスキャンを開始します。取得範囲や設定は、目的に必要な品質を満たす範囲で調整します。過度に高密度な設定や不要な反復計測は滞在時間を増やすため、用途に対して適切な点密度と取得範囲を事前に検討します。 位置合わせに必要な重複部分は確保しますが、そのために危険区域へ機器を置く必要はありません。安全な複数位置から取得し、どうしても見えない部分は欠測として記録します。点群の自動的な位置合わせ結果だけに頼らず、基準点、標的、安定した形状などを用いて整合性を確認します。 計測終了後は、機器を順番に回収し、標的、保護材、照明、ケーブルなどの残置がないことを確認します。最後に入退場記録と照合して全員の退出を確認します。地下から出た直後に作業を終えたことにせず、機器の損傷、データ保存、異常の有無を地上側で記録します。

安全管理に役立つ記録とデータ整理

地下遺構のTLS計測では、点群データだけでなく、安全に関する記録も成果の一部として残すことが重要です。同じ遺構を将来再計測する際、前回の設置位置や危険箇所が分かれば、現場への不要な立入りを減らせます。 記録には、計測日、作業時間、参加者、役割、天候、地下の状態、換気条件、照明条件、立入範囲、使用した出入口、TLSの設置位置を含めます。空気環境を測定した場合は、測定位置、時刻、結果、使用機器、換気との関係も記録します。異常がなくても、その時点で確認した内容を残すことが大切です。 危険のため計測しなかった範囲は、単なる欠測として扱わず、安全上の理由を記録します。後工程の担当者が欠測をデータ不良と誤解し、安易な再計測を指示することを防げます。点群のファイル名や設置地点番号と現場記録を対応させ、どのデータがどの安全条件で取得されたかを追跡できるようにします。 写真記録を併用する場合は、撮影方向と位置を残します。ただし、撮影のために立入範囲を広げたり、照明を危険な場所へ置いたりしてはいけません。写真は安全な地点から取得できる範囲に限定し、必要に応じて点群上の視点と対応させます。 複数時期の点群を比較する場合は、座標系、基準点、標高基準、単位、位置合わせ方法を統一します。地下では衛星測位を直接利用しにくいため、地上の基準点から地下へどのように座標を接続したかを明確にします。基準点の設置や測量にも立入上の危険が伴うため、精度だけでなく安全な観測経路を検討します。 点群処理後に変形や亀裂らしい差分が見つかっても、それだけで構造上の危険を断定することはできません。位置合わせ誤差、遮蔽、反射状態、点密度、異物、湿潤状態などの影響を確認し、必要に応じて専門担当者が現地状況と合わせて評価します。危険が疑われる場合に、点群結果を確認するためだけに再入場することは避け、改めて立入条件を審査します。 安全記録と点群を組み合わせることで、次回計測時の設置候補、進入順序、必要な照明、ケーブル長、監視位置を具体的に検討できます。TLS文化財計測を一度限りの作業として終わらせず、計測方法と安全管理の両方を引き継ぐ資料として整備することが重要です。

まとめ 地下遺構のTLS計測は立入判断から始める

地下遺構のTLS計測では、非接触で形状を取得できる利点がある一方、作業者は崩落、酸素欠乏、有害ガス、浸水、転倒、感電、通信不能などの危険にさらされます。安全な計測を行うには、事前調査、構造確認、空気環境管理、退避経路、照明と電源、機器配置、複数人による監視という7つの対策を、現場条件に合わせて組み合わせる必要があります。 重要なのは、取得したい点群から機器位置を逆算するのではなく、安全が確認された範囲の中で計測方法を組み立てることです。欠測を完全になくすために危険区域へ入るのではなく、安全に取得できない理由を記録し、別の方法で補完できるかを検討します。人命と文化財の保護は、点群の密度や見栄えよりも優先されます。 また、安全対策は現場作業だけで完結しません。地下への座標接続、基準点の管理、設置位置の記録、再計測時の比較条件まで整理することで、将来の調査を安全かつ効率的に進めやすくなります。地上側の基準位置や入口周辺の記録を整え、地下点群との関係を明確にすることが、継続的な文化財管理につながります。 地下内部では衛星測位を利用できない、または安定しない場合があるため、地上の開けた場所で位置情報を確認し、そこから地下へ座標を接続する計画が必要です。地上側の位置確認や現場記録を効率化したい場合は、必要な精度、利用環境、地下への座標接続方法を確認したうえで、LRTK Phoneの活用も検討してください。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

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