LRTKレフィクシア株式会社

文化財TLS計測で磨崖仏の風化凹部を残す7つの照射配置

磨崖仏の風化凹部をTLSで記録する意味

磨崖仏は、自然の岩壁や露岩に仏像などを彫刻した文化財です。屋外にあるものが多く、立地や岩質、気候条件によっては、雨水、気温変化、凍結融解、塩類、植物、地衣類、風による飛来物などの影響を受けることがあります。その結果、表面には細かな剥離、亀裂、くぼみ、欠損、粒状化などが生じる場合があります。 こうした変化を記録する方法として、TLSによる文化財計測が活用されています。TLSは地上型レーザースキャナーを用いて対象物までの距離を多数計測し、表面形状を三次元の点群として取得する方法です。磨崖仏に直接触れずに広い範囲を記録できるため、現況図の作成、保存修理前後の比較、変状箇所の把握、研究用資料の整備などに利用できます。 ただし、TLSを設置して一方向から計測するだけでは、風化によってできた凹部の奥まで必ず記録できるわけではありません。レーザーは基本的に直進するため、突出部の背後や下向きの面、庇状になった部分の内側には届かないことがあります。点群上では、実際に材料が失われた欠損と、レーザーが届かなかった欠測が似た空白として現れる可能性があります。 そこで重要になるのが照射配置です。本稿でいう照射配置とは、補助照明の置き方ではなく、TLSのレーザーをどの位置と方向から対象へ照射するかという観測配置を指します。正面、左右、上下、近距離、遠距離などの視線を組み合わせることで、単一方向では隠れていた凹部の内壁や底面を補いやすくなります。 文化財TLS計測では、点の多さだけを目標にするのではなく、保存や調査の目的に必要な形状が残っているかを確認しなければなりません。とくに磨崖仏では、像の輪郭だけでなく、風化の進行を示す微細な起伏をどこまで再現するかが計画の中心になります。

計測前に整理したい風化凹部と欠測の違い

点群に穴がある場合、それが実際の凹部なのか、計測できなかった範囲なのかを慎重に判断する必要があります。実在する風化凹部では、周囲から底部に向かって点が連続し、内壁の形状がある程度確認できることがあります。一方、欠測では、突出部や段差の輪郭を境に点が突然途切れ、その奥に情報が存在しません。 ただし、点群の見た目だけで両者を完全に区別できるとは限りません。反射強度や測距の安定性は、岩石表面の反射特性、含水状態、粗さ、レーザーの入射角、測定距離、装置の測距方式などの影響を受け、装置や環境条件によっては周囲光や気象条件も影響要因になり得るためです。濡れた面、暗い面、光沢のある鉱物を含む面、レーザーが浅い角度で当たる面では、装置や条件によって周囲より点が少なくなる場合があります。 また、点群処理時のノイズ除去によって、凹部内の有効な点が除かれることもあります。孤立点を一律に削除すると、狭く深い穴の底に取得できた少数の点まで消してしまう可能性があります。現地では取得できていたのに、処理後の点群だけを見ると欠測しているように見えるケースもあるため、原データと処理後データを分けて保管することが大切です。 風化凹部の記録では、最初に対象とする変状の大きさを決めます。像全体の数十センチ規模の欠損を把握するのか、数センチ規模のくぼみを比較するのか、さらに細かな表面粗さまで検討するのかによって、必要な点間隔や配置は異なります。装置の公称精度だけで判断せず、対象面上の点間隔、入射角、位置合わせ誤差、ノイズを含めた実際の再現性を確認します。 点群から読み取れるのは、レーザーが捉えた表面の幾何形状です。材料内部の劣化や、点群の分解能より小さい変化まで直接把握できるわけではありません。TLSの結果は目視調査、写真記録、保存科学的な調査などと関連付け、どの情報を点群から判断したのかを明確にして利用する必要があります。

照射配置を決める前の現地確認

照射配置は、現地を見ずに平面図だけで決めると不足しやすくなります。磨崖仏の前面には樹木、柵、覆屋、参道、岩塊などがあり、設置可能な場所が限定される場合があります。岩壁が傾いていたり、像の上部が張り出していたりすると、正面から見えていてもレーザーが凹部の奥まで入らないことがあります。 最初の現地確認では、対象範囲、像の向き、岩壁の傾斜、主な凹部、亀裂、突出部、足元の状態、立入可能範囲を把握します。計測者が安全に移動できるかだけでなく、三脚が沈下、滑動、転倒しないかも確認します。斜面や不整地では、見通しのよい位置であっても安定した設置ができないことがあります。 次に、レーザーの通り道を想定します。対象面を正面から見るだけではなく、左、右、上、下へ視点を変え、どの部分が隠れるかを観察します。懐中電灯などで斜めから光を当てると凹凸の存在を把握しやすくなる場合がありますが、これはあくまで計画補助です。TLSのレーザーが同じように凹部へ届くとは限らないため、最終的には試験計測した点群で確認します。 基準点や標的の配置も同時に検討します。標的は対象面だけに集中させず、複数の計測位置から見え、奥行き方向にも偏らないように設けます。文化財や周辺の岩肌に標的を直接貼り付ける行為は避け、管理者の許可を得た独立支持物や既設の安定した基準を利用します。 現地の状態を記録することも重要です。計測日時、天候、岩肌の乾湿、日照、植生、仮設物、計測範囲、立入制限などを残しておけば、後日の点群比較で条件差を説明しやすくなります。再計測を予定する場合は、機器位置の再現だけでなく、座標系、標高基準、標的番号、ファイル名の付け方まで事前に統一します。

正面から全体形状を押さえる基準配置

最初の配置は、磨崖仏の正面から全体を見渡せる位置に設けます。正面配置の役割は、すべての凹部を一度に取得することではありません。像全体の輪郭、岩壁との位置関係、主要な彫刻面、周辺地形を一つの基準となる点群にまとめることです。 設置位置は、像の中心線上に機械的に合わせるのではなく、対象範囲が視野に収まり、レーザーの入射角が極端にならず、三脚を安定させられる場所から選びます。像の上部と下部で距離差が大きい場合や、岩壁が傾斜している場合には、点の密度が場所によって変わります。試験計測後に表面上の点間隔を確認し、目的に対して不足する部分がないかを判断します。 正面配置では、顔、胸部、台座、光背、岩壁の輪郭など、後続の斜め方向の点群と照合しやすい形状を広く取得します。周囲の安定した岩盤や地形も含めることで、局所的な凹部だけを見て位置合わせするより、点群統合の安定性を高めやすくなります。 一方、正面からのレーザーは、鼻や眉、衣文、岩の張り出しなどの背後へ届きにくくなります。正面点群が高密度に見えても、凹部の底面や上向き・下向きの面が抜けている可能性があります。取得直後には正面からの表示だけで確認せず、点群を横や斜めから見て、空白の奥行きを確認します。 正面配置は全体計測の基準となるため、過度に接近して視野を狭くするより、必要範囲を連続して取得できる距離を優先します。細部の不足は後の接近配置で補い、正面配置には全体座標と主要形状をつなぐ役割を持たせます。

左右の斜め方向から凹部を捉える交差配置

正面配置で隠れた部分を補う基本的な方法が、左右からの交差配置です。磨崖仏の左側と右側にTLSを設置し、異なる方向から同じ凹部へレーザーを照射します。片側からは見えない内壁が、反対側から見えることがあるため、凹部の形状を連続させやすくなります。 左右の位置は、正面位置を中心とした完全な左右対称である必要はありません。対象の彫り、岩壁の向き、障害物、足場の状態に応じて調整します。重要なのは、単に設置台数や計測回数を増やすことではなく、既存のレーザー経路とは異なる方向から凹部を観測することです。 浅い凹部では、小さな角度差でも内壁の点が増えることがあります。深い凹部や入口が狭い穴では、左右から計測しても底部が見えない場合があります。その場合は、角度をさらに広げるだけでなく、高低配置や接近配置を組み合わせます。無理に側方へ移動して危険な斜面へ入ることは避け、安全に設置できる範囲で最も有効な視線を選びます。 交差配置では、左右の点群に共通して記録される重複範囲が必要です。凹部だけを狙って範囲を狭めると、点群統合に使える共通形状が不足します。像の輪郭、周辺岩盤、基準点、標的などを一緒に取得し、各位置の点群が共通の座標へ安定して接続できるようにします。 左右の点群を重ねた後は、同じ表面に二重の輪郭が生じていないか確認します。二重に見える場合は、風化形状ではなく位置合わせ誤差の可能性があります。凹部の深さを評価する前に、周辺の安定面で点群間のずれを確認することが欠かせません。

上方と下方から段差の奥を補う高低配置

磨崖仏には、庇状の張り出し、深く刻まれた目や口、衣文の段差、台座の下面など、上下方向の遮蔽が生じやすい部分があります。左右の交差配置だけでは、上面や下面の欠測を十分に補えない場合があります。そこで、TLSの高さを変えた高低配置を加えます。 上方からの配置は、上向きの面や水平に近い棚状部分を捉えるのに役立つ場合があります。ただし、高所へ機器を設置する場合は、安定した足場と転落防止措置が必要です。文化財計測のために不安定な岩や構造物へ上ることは避け、管理者と安全管理者が認めた位置から実施します。 下方からの配置は、鼻、顎、腕、衣文、台座などの下面を補う際に有効です。TLSを低く設置すると、地表の草、柵、石、参拝設備などがレーザーを遮ることがあります。計測範囲だけでなく、TLSから対象までのレーザー経路全体を確認します。植生の移動や除去が必要な場合には、文化財管理者の許可を得なければなりません。 高さを変える目的は、点密度を一様に増やすことではなく、凹部の入口に対するレーザーの角度を変えることです。高さだけを変えても、対象までの距離や水平方向がほぼ同じであれば、期待した面が見えないことがあります。現地で凹部の開口方向を観察し、その延長上に近い視線を探します。 高低配置の点群は、正面や左右の点群より取得範囲が限定される場合があります。位置合わせのため、凹部周辺だけでなく、共通して見える広い岩盤面や標的を含めます。また、三脚高、機器高、設置位置、照射範囲を記録しておくと、再計測時に配置を再現しやすくなります。

深い凹部を近距離から補完する接近配置

深く狭い凹部は、遠方から高密度に計測しても、入口付近の縁に遮られて底部までレーザーが届かないことがあります。安全に接近できる場合は、対象との距離を短くし、開口部を見通せる位置から補完計測します。 接近配置では、距離が短くなることで、同じ角度刻みの設定なら対象面上の点間隔を細かくしやすくなります。しかし、距離を縮めれば自動的に正確になるわけではありません。装置には使用に適した測定距離があり、極端な近距離では計測できない場合があります。対象が視野から外れたり、入射角がかえって浅くなったりすることもあるため、装置仕様と試験結果を確認します。 また、接近すると一度に取得できる範囲が狭くなり、全体点群との共通部分が減ります。凹部だけを切り取るように計測せず、周辺の特徴的な輪郭や安定面を十分に含めます。位置合わせに必要な標的が近すぎたり、同一平面に偏ったりしないよう、配置にも注意します。 凹部の奥を狙うためにTLSを文化財へ過度に近づけると、三脚、作業者、ケーブル、携行品などが岩肌に接触する危険が高まります。対象との離隔を定め、必要に応じて接触防止を確認する担当者を配置するなど、非接触計測の利点を損なわない運用が必要です。 接近配置で得た高密度点群は、遠距離の全体点群と密度差が大きくなることがあります。統合後に一律の間引きを行うと、細部を記録するために取得した点が失われる可能性があります。原点群、統合点群、軽量化した閲覧用点群を分け、保存用途に応じたデータを管理します。

離れた位置から全体座標を安定させる後退配置

風化凹部の記録というと、TLSを対象へ近づけることばかりに目が向きがちです。しかし、複数の接近点群を安定してつなぐには、磨崖仏と周辺岩壁を広く取得する後退配置が役立つ場合があります。 離れた位置からの計測では、個々の細かな凹部に対する点間隔は粗くなりやすい一方、像全体、岩壁、地形、基準点を一つの視野に収めやすくなります。局所的な計測位置が増えた場合でも、全体点群を骨格として利用すれば、それぞれの点群がどこに位置するかを管理しやすくなります。ただし、後退配置そのものが座標精度を保証するわけではなく、実際の統合品質は基準点、標的、重複範囲、計測精度、位置合わせ方法などにも左右されます。 とくに、似た形状が連続する岩肌だけを用いて自動的に位置合わせすると、誤った位置へ重なる可能性があります。後退配置から取得した全体形状や、適切に配置した標的、既知座標の基準点を併用し、局所形状だけに依存しない統合を行います。 後退配置では、対象との間に人、車両、樹木、柵などが入りやすくなります。レーザー経路が長くなるため、近くでは問題にならなかった障害物が点群を分断することもあります。通行を完全に止められない場所では、管理者と調整して計測時間を選び、移動物による点を処理段階で識別できるよう現場記録を残します。 測定距離が長くなるほど、同じ角度分解能でも対象面上の点間隔は広がります。また、測定結果は装置特性、対象面の反射特性、入射角、環境条件などの影響を受ける場合があります。そのため、後退配置の点群だけで微細な風化量を評価することは避けます。後退配置は全体座標と局所点群をつなぐ役割、接近配置は凹部の細部を残す役割というように、目的を分けて利用します。

岩壁の端部と側面をつなぐ回り込み配置

磨崖仏が彫られた岩壁には、平坦な正面だけでなく、折れ曲がった側面、窟状の奥行き、像を囲む縁、隣接する岩塊などがあります。正面と左右の斜め配置を行っても、岩壁の端部を越えた部分や側面に欠測が残ることがあります。このような場所では、安全に移動できる範囲で回り込み配置を検討します。 回り込み配置の目的は、対象の裏側へ無理に入ることではありません。正面側の点群と側面側の点群を連続させ、岩壁の折れ点や凹部の側壁を記録することです。像の保存状態を理解するうえで、彫刻面だけでなく周辺岩盤との関係が重要になる場合があります。 配置を計画するときは、各位置が鎖のようにつながるように重複範囲を確保します。正面位置と側方位置の間に共通して見える範囲が少ない場合は、中間位置を設けます。大きく離れた二つの点群を、狭い凹部や似た岩肌だけで直接つなぐと、回転や平行移動の誤差を見落としやすくなります。 岩壁の角を越えると、正面側の標的が見えなくなることがあります。側面側にも必要に応じて標的を配置し、中間位置から双方を確認できる構成を検討します。標的を増やす際は文化財へ触れさせず、風や振動で動きにくい独立した支持方法を選びます。 回り込み先が急斜面、落石危険箇所、立入禁止区域に当たる場合は、その配置を採用しません。欠測を減らすことより、人と文化財の安全が優先されます。取得できなかった範囲は無理に補間して実測形状のように扱わず、欠測範囲として明示することが適切です。

現場確認後に欠測候補を狙う追加配置

最後の配置は、最初から固定するのではなく、取得済み点群を現場で確認して決める追加配置です。事前計画を丁寧に行っても、微細な凹部、植生の影、岩壁の複雑な張り出しなどをすべて予測することは困難です。撤収前に点群を確認し、保存目的に関わる欠測候補を選んで追加計測します。 確認時は、点群を正面から眺めるだけでは不十分です。上、下、左右、断面方向から表示し、点が途切れている場所を探します。凹部の入口に点がある一方で底部が空いている場合は、その空白を見通せる位置を現地で探します。 点密度や反射強度の表示を切り替えると、周囲より計測状態が不安定な範囲を見つける手掛かりになる場合があります。ただし、反射強度は距離、入射角、表面の反射特性、装置特性や設定などの影響を受けます。反射強度の差だけを材質変化や劣化と断定せず、写真や目視記録と照合します。 追加配置では、空白を埋めること自体を目的にしないことが重要です。樹木の背後、立入禁止範囲、形状評価に不要な遠景まで完全に埋めようとすると、作業時間とデータ量が増えます。保存修理や時系列比較で必要な凹部を優先し、必要性の低い欠測とは区別します。 現場で十分に確認できない場合は、未確認範囲を記録し、後工程で判断できるようにします。取得位置、照射方向、対象とした凹部、追加理由を記録しておけば、データ処理者が各点群の役割を理解できます。将来の再計測でも、同じ凹部をどの方向から取得したかを再現しやすくなります。

複数位置の点群を安定して統合する方法

七つの照射配置を用いても、点群の統合が不安定であれば、凹部の形状を正しく比較できません。複数位置から得た点群は、標的、基準点、共通形状などを利用して同一座標へ合わせます。自動処理の結果だけで完了とせず、位置合わせ後の残差や形状の整合を確認します。 標的を使う場合は、各計測位置から位置合わせに必要な数と配置が確保できるよう計画し、一直線や一つの平面に極端に偏らない構成を検討します。対象に近い標的だけでなく、全体範囲を拘束できる位置にも設けます。標的の座標を別の測量方法で求める場合は、座標系、標高の扱い、器械高、標的高などを記録します。 共通形状による位置合わせでは、風化によって不規則な岩肌が多いから安全だとは限りません。似た凹凸が連続していたり、重複範囲が狭かったりすると、見かけ上は合っていても全体がずれる場合があります。安定した広い岩盤面、像の輪郭、標的などを組み合わせて確認します。 統合後は、基準となる点群と各点群との差を周辺の安定面で確認します。凹部付近だけに差が出るのか、岩壁全体に同じ方向の差が出るのかを見分けます。全体に系統的な差がある場合は、風化ではなく位置合わせや座標変換の問題を疑います。 時系列比較を行う場合は、年度ごとに別の任意座標を設定すると比較が複雑になるため、可能な範囲で共通する基準や座標系を継続的に利用します。使用した基準、変換方法、点群処理条件を記録し、基準点自体に変位がないかを確認できる仕組みも検討します。

風化凹部を評価できる点群品質の確認

点群品質は、取得点数やファイル容量だけでは判断できません。風化凹部の記録では、対象面上の点間隔、欠測範囲、ノイズ、入射角、位置合わせ誤差、再現性を確認します。装置の仕様に記載された距離精度と、点群から識別できる最小の凹凸は同じ意味ではありません。 まず、重要な凹部を複数選び、断面を作成します。正面配置だけの断面と、左右、高低、接近配置を統合した断面を比較すると、どの配置が内壁や底面を補ったかを確認できます。断面線の位置と方向を保存しておけば、将来の計測結果とも同じ条件で比較しやすくなります。 次に、点密度の偏りを確認します。凹部の入口だけに点が集中し、奥の点が少ない場合は、見かけ上の輪郭を内挿処理で閉じないよう注意します。実測点のない範囲を自動的に面で埋めると、実測では確認されていない形状が生成される可能性があります。実測点、補間面、欠測範囲を区別して管理します。 ノイズ除去では、凹部内の少数点を一括して削除しないようにします。元の計測位置、反射状態、周囲の連続性を確認し、有効点か異常点かを判断します。処理条件を変えた複数のデータを無秩序に混在させず、処理履歴を残すことも重要です。 風化量を時系列で評価する場合は、検出した差が計測と統合の不確かさに対して十分に識別可能かを検討します。差分が表示されたからといって、すべてを実際の風化と断定することはできません。乾湿、付着物、植生、表面の一時的な堆積、異なる入射方向なども差の原因になる可能性があります。 現地で既知寸法の確認物を計測できる場合は、点群上の距離を照合する方法もあります。ただし、確認物を文化財へ取り付けたり、対象面へ接触させたりしないようにします。最終的には、調査目的に必要な凹部が連続して再現され、位置合わせ誤差と欠測範囲を説明できる状態を品質確認の一つの基準とします。

文化財を傷つけない安全な計測計画

TLSは非接触で形状を取得できますが、計測作業全体が文化財に影響を与えないとは限りません。三脚の脚、標的、資材、作業者の移動、照明、電源設備などが岩肌や周辺遺構へ接触する可能性があります。現地では管理者の指示と保存上の制約を優先します。 計測範囲に苔、植物、落葉、土砂などがある場合も、作業者の判断だけで除去してはいけません。付着物そのものが調査対象である可能性があり、不適切な清掃によって脆弱な表面を傷めるおそれがあります。必要な処置は文化財の管理者や保存担当者と協議します。 レーザーについては、使用する装置のレーザー安全区分や取扱説明書、現場の安全管理要件に従います。参拝者、見学者、周辺作業者がいる場所では、装置の仕様に応じて照射範囲、立入管理、掲示、監視方法などを検討します。公道や参道に近い場合は、車両や歩行者の動線も確認します。 崖面では落石、転倒、滑落、倒木などの危険があります。高い位置や側面から計測するために危険区域へ入ることは避け、必要に応じて専門的な安全管理を行います。雨天直後は足元が滑りやすく、岩肌の含水状態も変化するため、作業の可否を慎重に判断します。 データ管理にも配慮が必要です。磨崖仏の詳細な位置情報や高精細な三次元データは、文化財の管理方針や公開目的によって公開範囲を制限すべき場合があります。管理者と利用目的、閲覧権限、保管期間、納品形式、二次利用の扱いを確認し、原データと編集済みデータを適切に保管します。

TLSとLRTK Phoneを使い分ける考え方

磨崖仏の風化凹部を高密度に記録する手段の一つとして、複数位置から表面形状を取得できるTLSが利用できます。一方、現地ではTLSの設置位置、基準点、周辺地形、作業範囲なども合わせて記録する必要があります。目的に応じて、携行しやすい測位・計測手段を補助的に組み合わせると、現場情報を整理しやすくなります。 LRTK Phoneは、屋外で衛星測位や補正情報の利用条件が整う場合に、計測位置や確認地点を位置情報と関連付けて記録する用途が考えられます。たとえば、TLSの設置候補地点、基準点、進入経路、危険箇所、周辺施設などを現地で記録し、計測計画や再訪時の確認に活用できます。 ただし、衛星測位は上空の見通し、崖や樹木による遮蔽、電波の反射、補正情報の受信状態などの影響を受けます。岩壁の直下や覆屋の内部では、用途に必要な測位状態を得られない場合があります。測位状態の表示だけで品質を判断せず、必要に応じて既知点での確認や再測を行い、用途に適した精度が得られているかを確かめます。 TLS点群の細部形状と、LRTK Phoneで記録した位置情報を組み合わせる場合は、双方で使用する座標系と高さの基準、必要な変換条件を確認します。平面位置は合っているように見えても高さに差が生じる場合があるため、使用した座標系、標高基準、変換条件を記録します。 TLSに細部形状の取得、LRTK Phoneに現場位置の記録という役割を持たせれば、同じ装置ですべてを処理しようとせず、それぞれの特性を生かした文化財計測を計画できます。

まとめ

文化財TLS計測で磨崖仏の風化凹部を残すには、レーザーの点数を増やすだけでなく、凹部へ異なる方向からレーザーを届ける照射配置が重要です。正面から全体を押さえ、左右の交差配置で側壁を補い、上方と下方から段差の奥を観測します。さらに、接近配置で細部を取得し、後退配置で全体形状と局所点群をつなぎ、岩壁の端部では回り込み配置を検討します。最後に現場で点群を確認し、保存目的に関わる欠測候補へ追加配置を行います。 複数方向から点群を取得しても、位置合わせが不安定であれば風化凹部を正しく評価できません。標的、基準点、共通形状を適切に利用し、統合後の残差や二重輪郭を確認する必要があります。実測点のない範囲を安易に補間せず、実際の欠損とレーザーが届かなかった欠測を区別して管理することも欠かせません。 また、点群に現れた差がすべて風化を示すわけではありません。乾湿、植生、付着物、入射角、点群処理、座標統合などの影響を確認し、目視調査や写真記録と組み合わせて判断します。再計測を予定する場合は、配置、座標系、標高基準、処理条件、現地状態を継続的に記録します。 磨崖仏に接触しないこと、危険な斜面へ無理に立ち入らないこと、管理者の許可なく植生や付着物を動かさないことも基本です。取得できない場所は欠測として明示し、安全と保存を優先した計画にします。 TLSによる細部形状の記録と、現場位置や周辺情報の整理を一体化したい場合は、LRTK Phoneの活用方法も確認してみてください。

現場を3Dで残して、あとから測る。
実際の画面と動画で使い方を確認できます。

LRTK Phoneの使い方・実例を見る
資料請求導入相談
現場をスマホで3DスキャンLRTK Phone実例を見る