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文化財TLS計測で雪囲いに隠れた古民家外壁を記録する6つの時期選定

雪国の古民家では、積雪や落雪から外壁、開口部、軒下などを守るために雪囲いが設置されます。建物を保護するうえで重要な設備ですが、文化財の現況をTLSで計測するときには、外壁を遮る障害物にもなります。雪囲いを設置した状態で計測すると、壁面の点群が部分的に欠け、柱の傾き、外壁のはらみ、部材の変形、修理痕などを十分に記録できない可能性があります。 TLSは、地上に設置したレーザースキャナーから対象物へレーザーを照射し、距離と方向を計測して三次元点群を取得する方法です。短時間で多数の点を取得できる一方、レーザーが直接届かない箇所は記録できません。そのため、古民家のように軒、縁側、雨戸、植栽、仮設物が重なりやすい建物では、計測機器の性能だけでなく、いつ計測するかが成果の完全性を左右します。 特に雪囲いの撤去時期は、地域の積雪量、管理者の作業計画、建物周辺の残雪、春の降雨、草木の生育、公開行事などによって変わります。単に「雪囲いが外れた日に計測する」と決めるのではなく、外壁の露出状態、表面の乾燥、周囲の安全、植生、日照、修理工程まで含めて計画することが大切です。この記事では、「TLS 文化財 計測」で情報を探している実務担当者に向けて、雪囲いに隠れた古民家外壁を記録するための6つの時期選定を解説します。

文化財TLS計測で時期選定が重要になる理由

TLSによる三次元計測では、レーザーの照射位置から見える範囲だけが点群になります。外壁の前に雪囲いの板、支柱、縄、金物などがある場合、レーザーはそれらの表面で反射し、背後にある壁面までは到達しません。点群上では雪囲いが立体的に記録される一方、本来確認したい外壁には帯状または面状の欠損が生じます。 欠損した範囲は、周囲の点から自動的に補間すればよいとは限りません。文化財の記録では、実際に計測した形状と、推定によって補った形状を明確に区別する必要があります。土壁のはらみ、板壁の反り、柱と壁の段差、仕上げの剥落といった微細な変化は、周囲から単純に推定できないためです。見栄えのよい三次元モデルを作成することよりも、取得できた範囲と取得できなかった範囲を正しく示すことが重要になります。 雪囲いが外れていても、必ず良好な点群を取得できるわけではありません。撤去直後には外壁が濡れていたり、壁際に残雪、落ち葉、保護材、取り外した部材が置かれていたりします。撤去作業中に計測を始めれば、作業者や運搬物がレーザーを遮るだけでなく、安全上の問題も発生します。外壁が見えることと、安全かつ安定した状態で計測できることは分けて判断しなければなりません。 また、文化財建造物では、計測のために雨戸や建具を動かしたり、外壁に標識を貼ったり、周辺の植栽を切ったりできるとは限りません。指定や登録の状況、所有者の意向、管理方法、公開条件などによって、実施できる作業は異なります。現地で独自に判断せず、所有者、管理者、設計担当者、保存修理の専門家などと計測範囲や接触の可否を事前に確認することが必要です。 したがって、文化財TLS計測の時期は、雪囲いの有無だけで決めるのではなく、外壁の露出、乾燥状態、周囲の遮蔽物、作業動線、保存上の制約を総合して選定します。適切な時期を選ぶことで、追加計測の回数を抑えながら、後の変状確認や修理設計に使いやすい基礎資料を作成できます。

時期選定1 雪囲い撤去直後の外壁露出期間を狙う

最初に検討したいのは、春の雪囲い撤去後から周辺の草木が伸びるまでの期間です。この時期は外壁全体が露出しやすく、落葉樹の葉も少ないため、建物の正面だけでなく、側面、背面、軒下まで見通しを確保しやすくなります。冬季に隠れていた外壁を面的に記録する主計測の候補として適しています。 ただし、「撤去直後」を撤去作業と同時という意味で捉えるのは避けるべきです。雪囲いの取り外しでは、板や支柱の移動、高所作業、落下物の処理などが発生することがあります。作業員と計測者が同じ範囲に入ると、接触事故の危険があるだけでなく、移動中の部材が点群に写り込みます。まず撤去作業を完了させ、建物周囲が整理され、安全な通路を確保してから計測するのが基本です。 撤去直後の外壁には、結露、融雪水、泥はねなどが残っている可能性があります。濡れた表面は材質や入射角によってレーザーの反射状態が変わり、点の抜けやばらつきが増える場合があります。色付き点群を作成するために写真も取得する場合は、濡れ色によって外壁の色調が通常と異なって見えることもあります。現況の湿潤状態を記録する目的がなければ、外壁表面が乾くまで待つことを検討します。 一方で、雪囲いそのものが文化的、民俗的、管理上の記録対象になる場合もあります。その場合は、撤去前に雪囲いを含む建物全景を計測し、撤去後に外壁を改めて計測すると効果的です。撤去前後の点群を残せば、雪囲いの構造、設置位置、建物との離れ、支柱配置などと、露出した外壁の形状を別々に確認できます。雪囲いを単なる障害物として扱うのではなく、記録目的に応じて保存対象と遮蔽物の両面から整理することが重要です。 撤去日は毎年同じとは限りません。積雪、天候、管理者の都合、地域行事などによって前後するため、暦上の日付だけで計測日を固定すると、外壁がまだ覆われている可能性があります。管理者から撤去予定期間を聞き取り、完了後に現況確認を行い、そのうえで本計測日を確定する余裕を持たせます。予備日も設定しておけば、雨天や残雪による延期に対応しやすくなります。

時期選定2 芽吹きと下草の繁茂前に計測する

雪囲いが外れた後でも、樹木の葉、低木、つる植物、下草が外壁を遮れば点群に欠損が生じます。春から初夏にかけては植生が急速に成長するため、撤去後の計測を先送りすると、数週間の違いで壁際の見通しが大きく変わることがあります。外壁を広く記録するには、芽吹き前または葉が十分に広がる前の時期を優先します。 特に古民家の背面や北側は、管理用通路が狭く、植栽と壁の間にスキャナーを設置できない場合があります。葉が茂ると、レーザーは葉や枝の表面で反射し、外壁まで届く点が減ります。複数方向から計測しても、植生が壁際を連続して覆っていれば、欠損を完全には埋められません。計測位置の工夫だけで解決しようとせず、見通しのよい季節を選ぶことが有効です。 ただし、計測のために枝や草を無断で除去してはいけません。植栽自体が歴史的景観の構成要素である可能性があり、所有者の管理方針もあります。枝を持ち上げる、鉢や道具を移動する、つるを壁から離すといった一時的な作業であっても、事前に許可範囲を確認します。許可が得られない箇所は、遮蔽物を残した状態で計測し、欠損理由を記録に残します。 草木の少ない時期には、建物の基礎、礎石、雨落ち、排水経路、地表面も取得しやすくなります。外壁だけでなく、柱脚と地盤の関係、周辺の傾斜、雨水が集まりやすい箇所などを一体的に記録できる点が利点です。建物変形の把握では、壁面の形状だけでなく、基礎周辺や地盤との位置関係も重要なため、下草が伸びる前の計測には大きな意味があります。 地域によって芽吹きの時期は異なり、同じ地域でも標高、斜面の向き、日当たりによって差が出ます。一般的な季節区分だけに頼らず、前年の写真、管理日誌、現地の植生状況などを使って候補期間を絞ります。雪囲いの撤去が遅い地域では、撤去直後にすでに芽吹きが始まっていることもあるため、撤去作業と計測準備を並行して進める必要があります。 計測日の直前には現地写真を共有してもらうなど、植生の状態を確認できる仕組みを整えておくと安心です。計測班が到着してから遮蔽物の多さに気付くと、追加の機材配置や再訪が必要になります。雪囲い撤去日と芽吹きの進行を一つの工程として管理することが、効率的な文化財TLS計測につながります。

時期選定3 降雨と残雪を避けて外壁が乾いた日を選ぶ

春先の古民家計測では、雪囲いが撤去されていても、建物の周囲に残雪がある場合があります。残雪は地表面や基礎を隠すだけでなく、融雪によって足元を不安定にします。三脚の脚が沈んだり、計測中に地面が動いたりすると、スキャン位置の安定性に影響します。軒下からの落雪や雪塊の落下も考えられるため、安全が確認できるまで計測を急がない判断が必要です。 外壁の形状記録を主目的とする場合は、降雨中や降雨直後も避けることが望まれます。TLSは暗い環境でも形状を取得できますが、水滴、濡れた表面、水たまりなどは計測条件を変化させます。機器ごとの耐候性や反射特性にも差があるため、使用機器の仕様と運用条件を確認し、無理な計測を行わないことが大切です。 雨天時には、計測者が機器を保護するために簡易屋根やカバーを設けたくなることがあります。しかし、カバーがレーザーの視野に入れば点群に写り込み、スキャナーの周囲に死角が生じます。また、狭い軒下で機器と保護材を動かすと、建物へ接触する危険も高まります。天候が回復する見込みがあるなら、保護材を増やして強行するよりも、予備日に振り替えた方が安定した成果を得やすくなります。 雨上がりには、土壁、板壁、石、金属、ガラスなどの表面状態が場所ごとに異なります。壁面形状だけでなく、ひび割れ、剥落、変色などを写真で記録する場合、湿潤部分と乾燥部分が混在すると比較が難しくなります。表面の乾燥を待てない場合は、湿潤状態であることを写真台帳や現場記録に明記し、後日の比較で材質変化と水分による見え方を混同しないようにします。 風にも注意が必要です。強風で枝葉、養生材、のれん、引き戸などが動くと、同じ対象が計測中に異なる位置へ移動し、点群に重複やにじみのような状態が現れることがあります。砂ぼこりや落ち葉が舞う環境では、写真の品質や機器管理にも影響します。雨だけでなく、風速、地面の状態、軒からの落下物を確認し、穏やかな時間帯を選びます。 候補日を一日だけに絞ると、天候不良でも作業を進めざるを得なくなります。主計測日と予備日を設定し、計測前日と当日の判断基準を関係者間で共有しておくことが重要です。外壁の乾燥状態、残雪、風、足元の安全などを中止または延期の判断項目として明文化しておけば、現場での迷いを減らせます。

時期選定4 日照と気温が安定する時間帯を選ぶ

TLSによる距離計測は、一般的な写真撮影ほど日照に左右されない場合がありますが、太陽光の方向や強さを無視できるわけではありません。特に外壁写真を取得し、点群へ色を付けたり、オルソ画像や立面資料を作成したりする場合は、強い日差し、深い影、反射光が記録品質に影響します。 古民家は軒の出が深く、上部が陰になる一方、壁の下部だけに日光が当たることがあります。壁面内で明暗差が大きいと、写真上で仕上げや損傷を均一に確認しにくくなります。建物の方位と太陽の動きを踏まえ、対象面に強い斜光が当たる時間を避けるか、外壁ごとに適した時間帯を設定します。薄曇りのように光が比較的均一な条件は、外壁全体の色や状態を記録しやすい場合があります。 朝の早い時間帯は人の出入りを避けやすい反面、夜露や霜が残っている可能性があります。外壁や地面が濡れていれば、表面の見え方や足元の安定性に影響します。夕方は直射日光が弱まりますが、作業可能時間が短くなり、暗くなる前に点群確認や撤収を終えられないことがあります。単に日差しの弱い時間を選ぶのではなく、表面状態と作業時間を合わせて判断します。 気温差にも配慮します。低温の屋外から暖かい車内や室内へ機器を移動すると、条件によっては結露が生じる可能性があります。反対に、暖かい場所から寒い屋外へ持ち出した直後には、機器が周囲の温度になじむまで時間を要する場合があります。必要な準備時間や使用可能温度は機器によって異なるため、取扱条件に従って運用します。 一日の中で日照条件が変わる場合は、建物を一周する順序も計画します。東面を午前、西面を午後に計測するといった固定的な考え方ではなく、直射光の入り方、軒の影、周辺樹木の影を現地で確認して調整します。点群取得と写真撮影を同時に行う必要がなければ、形状計測と色記録の時間を分ける方法もあります。 公開施設として利用されている古民家では、来館者が少ない時間帯を選ぶことも重要です。人が頻繁に通ると、点群に人影が残り、外壁や床面が隠れます。ただし、開館前後に作業する場合は、管理者の立ち会い時間、鍵の管理、周辺住民への配慮なども必要です。光、気温、人の動きが安定する時間帯を選ぶことで、再計測の少ない成果を作れます。

時期選定5 秋の雪囲い設置前に補完計測する

春の主計測だけで外壁を完全に記録できるとは限りません。残雪、湿潤、植生、管理上の制約などにより、取得できない範囲が残る場合があります。その補完候補となるのが、秋の落葉後から雪囲いの設置前までの期間です。落葉が進めば外壁への見通しが改善し、春とは異なる条件で欠損部分を計測できます。 秋の計測には、春から秋までの変化を確認できる利点もあります。季節を通じて進行した板材の変形、土壁の剥落、雨水による汚れ、開口部周辺の状態などを記録できます。ただし、春と秋の点群差がすべて建物の変形を示すわけではありません。植生、建具の開閉、置物、湿度、計測位置、点群処理条件の違いも差として現れます。変位を評価する場合は、安定した基準と同等の計測条件を確保することが必要です。 秋は雪囲いの設置準備が始まる時期でもあります。板や支柱が建物の周囲へ運び込まれると、設置前であっても外壁が隠れることがあります。資材を一時置きした状態で計測すると、壁面下部や地表面の点群が欠けます。設置予定日だけでなく、資材搬入日、周辺清掃日、準備作業日も管理者に確認しておくことが大切です。 落葉直後は地面に葉が堆積し、礎石や排水溝を覆う場合があります。外壁面だけが対象であれば影響は限定的ですが、建物周辺の地形や基礎も記録する場合は、落ち葉の状態を確認します。清掃が必要であっても、計測者が無断で動かさず、管理者の通常作業に合わせることが安全です。 秋の天候は変わりやすく、地域によっては短期間で降雪へ移行します。補完計測を「時間があれば行う作業」とすると、雪囲いの設置に間に合わない可能性があります。春の点群を早い段階で確認し、欠損位置を図面や画像上で整理しておけば、秋に必要な計測範囲と所要時間を事前に見積もれます。 春と秋の二時期計測は、単なる保険ではありません。春は雪囲い撤去後の状態、秋は次の冬を迎える直前の状態として、維持管理の節目を記録できます。ただし、定期計測の必要性や頻度は建物の状態と記録目的によって異なります。毎年同じ回数を機械的に実施するのではなく、変状の懸念、修理計画、管理負担を踏まえて決めます。

時期選定6 修理や維持管理の工程に合わせて記録する

文化財の外壁を記録する時期は、季節だけでなく、修理や維持管理の工程とも連動させる必要があります。外壁の塗り直し、板材の交換、建具修理、屋根や雨樋の補修などが予定されている場合、工事後だけを計測すると、修理前の状態を三次元で残せません。可能であれば、着手前、必要な工程中、完了後という節目を設定します。 着手前の計測では、修理前の外壁形状、変形、欠損、既存部材の位置を記録します。保存修理の検討資料として使う場合は、単に建物全体をスキャンするだけでなく、対象部位が十分な密度で取得できているかを現場で確認します。全景点群は取得できていても、軒下、柱の背面、壁と建具の境界などに欠損が残ることがあるためです。 工事中は足場や養生が外壁を遮りますが、通常は見えない箇所が一時的に露出する機会でもあります。板壁の内側、下地、接合部などを記録できる可能性があります。ただし、工程を止めて計測するには施工者との調整が必要であり、現場へ自由に入れるわけではありません。計測対象、立ち入り可能時間、足場上での安全、機器の設置場所を事前に協議します。 足場が設置される前の全景計測と、足場上からの近接計測では目的が異なります。全景計測は建物全体の形状関係を捉えるのに適し、近接計測は細部を記録しやすい一方、視野が限られます。複数の点群を一つに統合する場合は、共通して確認できる基準や対象を確保し、位置合わせの根拠を残します。 完了後の計測では、修理によって形状や部材配置がどのように変わったかを確認できます。ただし、修理前後の差分を数値として評価するには、位置合わせの誤差、計測密度、表面状態などを考慮しなければなりません。色の変化や表面の凹凸を、すべて変位として扱わないよう注意します。 日常の維持管理と合わせる方法もあります。雪囲いの撤去、外壁点検、排水清掃などの時期にTLS計測を組み込めば、管理者の立ち会いを調整しやすくなります。一方、複数作業を同日に詰め込むと、作業員や資材が外壁を遮る可能性があります。計測を先に行うのか、清掃や移動後に行うのかを工程表に明記し、現場での競合を防ぎます。

計測時期を決める前に整理したい記録対象

適切な時期を選ぶには、何を記録するのかを先に決める必要があります。「古民家を三次元化する」という目的だけでは、必要な露出範囲や計測密度を判断できません。外壁全体の傾き、柱の変形、壁面のはらみ、開口部の寸法、仕上げの損傷、基礎周辺の地形など、成果の用途に応じて対象を具体化します。 たとえば、立面図作成が目的であれば、壁面全体の連続性と建物基準との位置関係が重要です。土壁の細かな凹凸を確認する目的であれば、対象面に対する距離や入射角を考え、より近い位置から計測する必要があります。修理前後の比較が目的なら、将来も再現できる基準点、スキャン位置、計測条件の記録が求められます。 雪囲いを撤去できない面がある場合は、完全な三次元モデルを前提にしない計画も必要です。取得可能範囲を主成果とし、欠損範囲を明示したうえで、過去図面、実測寸法、写真などの補助資料と併用します。推定形状を作成する場合は、実測点群と混同されない表現にします。 外壁の現況だけでなく、雪囲いの設置方法を記録したい場合は、撤去前の計測を別工程として位置付けます。雪囲いの板や支柱には、毎年同じ位置に取り付けるための工夫や、地域特有の納まりが残っている可能性があります。建物本体の記録と生活文化の記録を分けずに考えることで、より幅のある保存資料になります。 成果の利用者も確認します。管理者が日常点検に使うのか、設計者が修理図面の基礎にするのか、研究者が建物形状を分析するのかによって、必要なデータ形式や精度の考え方が変わります。用途を明確にすれば、春に一度だけ計測するのか、秋や修理工程で補完するのかを合理的に決められます。

雪囲いによる点群欠損を減らす計測計画

良い時期を選んでも、スキャナーの配置が不十分であれば外壁点群は欠けます。古民家には、深い軒、柱、戸袋、縁側、植栽などがあり、一つの位置から建物全体を見通すことは困難です。外壁に対して正面に近い位置だけでなく、左右の斜め方向や軒下に近い位置も候補にし、遮蔽物の背後を別方向から補います。 計測位置を増やせば欠損は減りやすくなりますが、無計画に増やすと作業時間とデータ量が大きくなります。事前の現地調査や写真から、壁面が隠れやすい箇所を抽出し、必要な方向を設計します。現地では低密度の確認計測やプレビューを利用し、外壁の取得状況を見ながら追加位置を判断します。 狭い場所では、壁面に対してレーザーが浅い角度で当たりやすくなります。浅い入射角では点の間隔が広がり、材質や表面状態によっては取得が不安定になることがあります。建物と敷地境界の間隔、植栽、斜面などを確認し、無理に一方向から取得せず、上下左右の異なる位置を組み合わせます。 軒下や縁側では、スキャナーの高さも重要です。高い位置だけから計測すると、縁側床や部材の下面が欠け、低い位置だけでは軒上部や高窓周辺が隠れます。必要に応じて高さを変えますが、不安定な台や文化財の縁側へ安易に機器を載せないことが基本です。安全な設置方法と立ち入り可能範囲を管理者と確認します。 外壁の前に取り外せない雨戸や建具がある場合は、その状態も現況として記録します。開閉して内部や背後を計測する必要があるときは、管理者の操作または許可のもとで実施し、どの状態で取得した点群かを記録します。異なる開閉状態の点群を無条件に統合すると、一つの建具が複数位置に存在するように見えるため、データを分けて管理する方法も有効です。 現場を離れる前には、外壁ごとの点群取得状況を確認します。計測回数が予定どおりであっても、通行人、植生、機器の影、反射の弱い面などによって欠損が残ることがあります。建物の東西南北、軒下、柱脚、開口部などに区分して確認し、必要な追加計測を現地で終えることが再訪の削減につながります。

季節をまたぐ点群を比較できる状態に整える

春と秋、修理前と修理後など、異なる時期の点群を比較する場合は、毎回のデータを同じ位置関係へ整えられるようにします。点群同士の形状だけを使った位置合わせは便利ですが、建物自体が変形している場合や、取得範囲が大きく異なる場合には、位置合わせの判断が不安定になることがあります。 比較の基準には、計測期間を通じて位置が変わりにくく、各回で安全に確認できる点を選びます。建物へ標識を直接貼付する方法は、表面を傷める可能性があるため、文化財では慎重な判断が必要です。既存の安定した対象を利用する方法、建物から離れた場所に非接触の基準を設ける方法などを検討し、所有者や関係者の許可を得ます。 基準点の座標だけでなく、点の位置を再確認できる写真、見取図、説明、測定方法を残します。「建物北側の点」のような曖昧な記録では、次回の担当者が同じ位置を特定できません。地面や周辺環境は積雪、除草、修理などで変わるため、長期間利用する基準については存続性も確認します。 各回の計測条件も記録します。計測日、時間、天候、外壁の乾湿、雪囲いの状態、建具の開閉、植生、スキャン位置、設定、欠損理由などが比較時の判断材料になります。点群ファイルだけを保存しても、後から表面の違いが実際の変化なのか、条件差なのかを判断できないことがあります。 差分表示を行う場合は、色の強さだけで変位の有無を断定しません。位置合わせの残差、点群密度、入射角、表面の粗さなどを確認し、評価できる範囲を区別します。土壁のように表面の凹凸がある対象では、比較に使用する代表面や評価方向を定めることも重要です。 季節ごとのデータは、原データ、処理済み点群、写真、基準情報、現場記録を関連付けて保存します。ファイル名に計測日や対象面を含め、後から春と秋を取り違えないようにします。再処理できる原データを残しつつ、成果として採用した処理条件も記録しておけば、将来の検証や再比較に対応しやすくなります。

TLS計測と現地記録をLRTK Phoneにつなげる

文化財TLS計測では、詳細な三次元点群に加えて、計測位置、基準点、外壁の状態、雪囲いの有無、欠損箇所などの現地情報を整理する必要があります。点群だけでは、なぜその面を取得できなかったのか、どの時点で建具が開いていたのか、どの場所から写真を撮影したのかが分からなくなることがあるためです。 屋外で位置情報を利用できる環境では、LRTK Phoneを現地記録の補助に活用することを検討できます。たとえば、建物周辺の基準位置や確認箇所を記録し、写真やメモと結び付ければ、TLSのスキャン位置と現場状況を整理しやすくなります。ただし、軒下、樹木の近く、建物際などでは衛星測位の状態が変化しやすいため、表示された測位状態を確認し、必要な精度が得られているかを既知の位置などで検証することが重要です。 TLSの点群座標とLRTK Phoneで取得した位置を組み合わせる場合は、座標系、高さの基準、単位、基準点の扱いを統一します。異なる基準の座標をそのまま重ねると、点群全体が平面方向または高さ方向にずれる可能性があります。文化財の局所的な形状記録を優先するのか、周辺地形を含む位置管理を行うのかを決め、目的に合った基準を採用します。 春の主計測時に確認箇所を位置付きで整理しておけば、秋の補完計測で同じ場所を探しやすくなります。雪囲い撤去前後、修理前後、季節ごとの現況を一貫して管理するためにも、TLSの高密度な形状記録とLRTK Phoneによる現地確認を、それぞれの特性に応じて組み合わせることが有効です。

まとめ

雪囲いに隠れた古民家外壁をTLSで記録するには、雪囲いが外れていることだけでなく、植生、残雪、外壁の乾燥、日照、気温、修理工程まで考慮して時期を選ぶ必要があります。主計測には春の撤去後を検討し、芽吹き前の見通しを生かします。春に残った欠損は、秋の設置前や修理工程中の補完計測によって補える可能性があります。 計測時期を決める前には、外壁全体の形状、細部の損傷、基礎周辺、雪囲い自体など、何を記録するのかを明確にします。複数時期の点群を比較する場合は、安定した基準、同等の計測条件、現場記録を確保し、実測結果と推定部分を区別することが大切です。 TLSで取得した詳細な点群に、計測位置、基準点、写真、欠損理由などの情報を結び付けると、将来の点検や修理に活用しやすい記録になります。季節をまたぐ文化財計測の現地管理を具体化したい場合は、次の段階としてLRTK Phoneを活用した位置記録と確認方法も検討してみてください。

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