太陽光 施工前に石綿含有屋根を確認する意味
既存建物の屋根に太陽光発電設備を設置する場合は、屋根の強度、防水状態、勾配、方位、日射条件だけでなく、工事の対象となる部分に石綿を含む建材が使われていないかを確認する必要があります。特に既存屋根へ穿孔、切断、撤去、研磨、配線貫通などを行う計画では、表面に見えている屋根材だけでなく、下葺き材、断熱材、軒先部材、外壁や軒裏の貫通部、既存屋根の下に残された古い材料まで確認対象になる可能性があります。
太陽光施工では、架台や支持金具を固定するための穴あけ、屋根材の部分加工、配線を通すための開口、既存設備との干渉を避けるための切断などが行われることがあります。石綿含有建材を切断、破砕、研磨、穿孔すると、建材に固定されていた石綿繊維が粉じんとともに飛散し、作業者や周辺へ影響するおそれがあります。
石綿含有建材が建物に存在する状態と、その建材を工具で壊す状態は分けて考えなければなりません。石綿は、建物に使用されているだけで常に同じ程度の飛散が生じるものではありませんが、劣化や破損、加工によって繊維が飛散し、それを吸入することが健康障害につながります。そのため、太陽光施工前の確認では、石綿含有の有無だけでなく、どの工程でどの材料へ力や工具が加わるのかまで整理することが重要です。
建築物の解体・改修工事では、法令上の例外に該当する場合を除き、工事の規模にかかわらず、工事対象部分の全ての材料について石綿含有の有無を事前に調査することが求められます。太陽光発電設備の新設という名称であっても、既存建築物の屋根材や下地などを改造または補修する作業を伴う場合は、事前調査の対象になり得ます。行政への結果報告が必要かどうかは工事規模などで分かれますが、報告対象外であることと事前調査が不要であることは同じではありません。
事前調査は、原則として設計図書などによる書面調査と現地での目視調査を組み合わせます。ただし、2006年9月1日以後に建築物の設置工事へ着手したことが設計図書などの書面で明らかであり、法令上の要件を満たす場合は、着工日の書面確認によって石綿が使用されていないと判断できる取扱いがあります。したがって、全ての建物について必ず同じ方法の目視調査や分析が必要と断定するのではなく、建物の着工時期、増改築、屋根改修、既存材料の残置状況を踏まえて適用条件を確認する必要があります。
ここでいう「石綿含有屋根を見分ける」とは、現場担当者が屋根の色や形だけを見て含有の有無を断定することではありません。建築年、設置工事の着手日、改修履歴、設計図書、材料表示、屋根の層構成、現地の状態を順番に確認し、必要な資格を持つ調査者が法令に沿って判定することを意味します。
太陽光施工の初期段階で石綿含有の可能性を把握できれば、固定方法や配線経路の変更、屋根改修の先行実施、工区の分離などを検討できます。一方、確認を行わないまま着工すると、穴あけ後に疑わしい材料が見つかり、作業中断、追加調査、設計変更、清掃方法や立入範囲の見直しが必要になる可能性があります。
安全と工程の両方を守るには、現地調査の段階から石綿確認を独立した管理項目として位置付けます。屋根の外観確認だけで終わらせず、施工範囲に存在する材料を区分し、判定根拠と未確認部分を設計や施工計画へ反映させることが大切です。
確認項目1 建築年と屋根の改修履歴を確認する
最初の確認項目は、建物の建築年、設置工事への着手日、屋根の改修履歴です。建物の竣工年だけでは、現在の屋根を構成する全ての材料の施工時期を判断できません。
建物が古くても、屋根全体が後年に葺き替えられている場合があります。反対に、外観が新しく見えても、既存屋根材を撤去せず、その上から新しい屋根材を施工する重ね葺きが採用されていることがあります。表面だけが新しい材料で覆われていても、その下に古い屋根材や下葺き材が残っていれば、支持金具の取り付けや配線貫通の対象になる可能性があります。
建築時期を確認するときは、完成した年だけでなく、建築物の設置工事へ着手した日を確認できる書面を探します。建築確認関係書類、竣工図、工事契約書、建物管理台帳、固定資産に関する資料など、複数の資料を照合すると判断の確実性を高められます。2006年9月1日以後の着工を根拠に法令上の取扱いを判断する場合は、単なる推定ではなく、書面で確認できることが重要です。
建物所有者や管理担当者への聞き取りも有効ですが、記憶だけに依存してはいけません。「以前に屋根を直した」「雨漏りした部分だけ交換した」といった情報を得た場合は、工事写真、見積書、施工報告書、請求書、保証関係書類などを探し、施工時期、工法、対象範囲を確認します。
屋根の改修履歴では、全面葺き替え、部分交換、塗装、重ね葺き、防水改修、棟や軒先だけの補修を区別します。塗装だけであれば既存屋根材が残っています。部分交換であれば、同じ屋根面に異なる時期の材料が混在している可能性があります。重ね葺きであれば、表面から見えない位置に以前の屋根材が残されていることがあります。
増築部分、後から設けられた庇、倉庫、設備室、渡り廊下などは、母屋とは別に施工時期を確認します。屋根が連続して見えても、建築時期が異なれば使用された材料も異なる可能性があります。太陽光パネルの設置範囲が複数の建築時期にまたがる場合は、屋根面を年代や工事履歴ごとに区分して扱います。
比較的新しい建物であることは重要な判断材料ですが、建物全体の竣工年だけを見て全ての材料を一括して非含有と扱うのは避けます。古い建物へ新しい屋根を重ねた場合、増築部分と既存部分が混在する場合、他の建物から移設された材料が使用された場合などは、建物の年代と施工対象材料の年代が一致しないことがあります。
一方で、2006年9月1日以後に建築物の設置工事へ着手したことが書面で明らかで、古い建築物や材料を工事対象に含まないなどの条件が確認できる場合は、法令に定められた方法に従い、その着工日の確認を判定根拠として扱えることがあります。この例外を適用できるかは、工事対象範囲と建物履歴を踏まえて調査者が整理します。
実務では、屋根伏図や平面図に、建築時期と改修時期を書き込む方法が有効です。東側屋根は新築時、西側屋根は後年の葺き替え、庇は増築時というように整理すれば、書面調査や目視調査の範囲、分析を検討する材料の区分が分かりやすくなります。
施工年代を確認できない部分は、推測で非含有と判断せず、年代不明として次の調査へ引き継ぎます。「おそらく新しい」「交換済みのはず」といった曖昧な情報は、確定事項と分けて記録することが重要です。
確認項目2 図面や仕様書から屋根材の情報を追う
二つ目の確認項目は、設計図書や工事記録から屋根材の情報を追うことです。書類が存在する建物では、現地の外観だけを見て判断せず、図面や仕様書に記載された材料情報を確認します。
主に確認する資料は、設計図、仕上表、屋根伏図、矩計図、断面詳細図、特記仕様書、材料承認関係書類、納入記録、完成図書です。屋根改修が行われている場合は、改修図、施工要領書、工事写真、修繕台帳、過去の石綿調査報告書も確認します。
仕上表に「スレート」「セメント系屋根材」などの一般名称しか記載されていない場合、その名称だけで含有の有無を確定することはできません。同じ分類に見える建材でも、製造時期や製品仕様によって石綿含有の有無が異なることがあるためです。一般名称しか分からない場合は、製品名、型式、厚さ、形状、施工時期、材料番号、納入元の証明資料などを追加で探します。
図面に記載された材料と現地の材料が一致しているかも重要です。竣工後の補修や増改築が図面に反映されていないことがあります。図面上では一種類の屋根材でも、現地で色、板厚、端部形状、固定方法が異なる部分が確認された場合は、別材料として区分する必要がないかを検討します。
製品情報や石綿含有情報を確認するため、公的な建材情報や製造者が公表した証明資料を参照する方法があります。ただし、データベース検索で該当材料が見つからないことだけを理由に、石綿を含まないと判断することはできません。過去に流通した全ての製品が完全に収録されているとは限らず、製品名や表示が読み取れない場合もあるためです。
過去の石綿調査報告書が見つかった場合は、報告書の有無だけで安心せず、調査方法、調査者、調査日、対象範囲、判定根拠を確認します。建物内部の天井や壁だけを対象とした調査で、屋根材が対象外になっていることがあります。また、調査後に屋根の改修や増築が行われていれば、以前の判定結果を現在の材料へそのまま適用できない可能性があります。
報告書に屋根材の判定が記載されていても、今回の太陽光施工範囲と一致しているかを確認します。屋根中央部だけが調査され、軒先、庇、増築部、配線貫通予定部が対象外であれば、追加調査が必要になる可能性があります。
書類を確認するときは、判明した情報と不明な情報を分けます。材料名が確認できた、施工時期が確認できた、非含有を示す根拠資料があるという情報と、図面がない、改修範囲が不明、下葺き材が記載されていないという情報を同じ管理表や図面上で区別します。
書類がないことは、石綿を含まないことの根拠にはなりません。資料が不足するほど、現地で確認すべき部位や分析を検討すべき材料が増えます。所有者から資料を入手できない場合は、設計者、過去の施工者、建物管理者が保有する記録や工事写真も確認します。
太陽光施工では、屋根材の名称だけでなく、架台固定位置や配線貫通位置に存在する全ての層を把握する必要があります。支持金具、ケーブル、引込部、電気設備の計画位置を図面へ重ね、どの材料が工事の影響を受けるのかを整理すると、調査漏れを防ぎやすくなります。
確認項目3 屋根材の層構成と施工対象範囲を確認する
三つ目の確認項目は、屋根の表面材だけでなく、屋根を構成する層と周辺部材を確認することです。太陽光施工で工具や固定部材が接触する範囲は、表面に見えている屋根材だけとは限りません。
一般的な屋根は、仕上げとなる屋根材、その下の防水層や下葺き材、野地板、断熱材、構造部材などで構成されています。工法によっては、古い屋根材を残したまま新しい材料が重ねられています。最上層が非含有と確認できても、その下に施工年代の古い材料が残っている可能性があります。
支持金具の取り付けでは、ねじやボルトが複数の層を貫通することがあります。屋根材を直接切断しない工法でも、下葺き材や下地へ穴を開ける場合があります。調査範囲を決める際は、工具が到達する深さ、固定部材が接触する材料、施工時に生じる荷重や振動を確認しなければなりません。
金属屋根であっても、表面が金属だから石綿含有建材がないとは限りません。金属板の裏側に断熱材が取り付けられている場合や、既存のスレート系屋根を残したまま金属屋根を重ねている場合があります。表面材の種類と屋根全体の層構成は分けて確認します。
波形の屋根材や薄い板状屋根材では、調査時や施工時の踏み抜きにも注意が必要です。石綿含有の判定と屋根の強度判定は別の確認ですが、劣化した材料を歩行や資材の仮置きによって破損させれば、粉じん発生の原因になる可能性があります。現地確認では、石綿対策と墜落・転落防止、踏み抜き防止を一体的に計画します。
調査対象には、棟、軒先、けらば、谷、庇、立ち上がり、設備基礎周辺、排気口周辺なども含めます。これらの部位には、屋根面とは異なる板材、シート材、断熱材、充填材、シーリング材などが使われていることがあります。
配線を建物内部へ引き込む場合は、屋根だけでなく、外壁、軒裏、天井、貫通部周辺の材料も確認対象になる可能性があります。太陽光パネルの配置範囲だけを調査し、配線工事の範囲を見落とすと、施工時に未調査材料へ穴を開けることになりかねません。
現地調査前には、施工予定図を用いて、支持金具の位置、配線経路、貫通位置、接続機器の設置位置、作業員の通路、資材の仮置き場所を示します。直接加工する場所に加えて、歩行、締め付け、荷重、振動によって破損する可能性がある場所も確認します。
当初設計の位置だけを狭く調査する方法にも注意が必要です。施工時には、下地位置、既存設備との干渉、屋根の劣化などによって固定位置が変更されることがあります。調査済み範囲が狭いと、少し位置をずらしただけで未調査部分へ施工が広がります。
設計変更の可能性を考え、支持位置の周囲や代替配線経路を含めて調査範囲を設定すると、施工中断のリスクを下げられます。ただし、範囲を広げる場合も建物全体を一括して同じ材料と判断せず、施工年代、外観、厚さ、固定方法などの違いに応じて材料を区分します。
調査時点で確認できない層がある場合は、未確認であることを明記します。重ね葺きの下層、設備の下、取り外さなければ見えない部分などは、施工前または施工の進行に合わせて確認する計画を作ります。確認できない部分を推測で非含有と扱わないことが重要です。
確認項目4 現地で形状や表示や補修痕を照合する
四つ目の確認項目は、書面で整理した情報を現地の屋根と照合することです。屋根材の形状、厚さ、重なり方、固定方法、端部、裏面表示などは、材料を区分し、製品情報を追うための手掛かりになります。
ただし、色や形だけで石綿含有の有無を断定することはできません。灰色の板だから含有である、塗装されて新しく見えるから非含有であるといった判断は避けます。塗装、汚れ、風化、苔などによって表面の特徴が変化している場合もあります。
現地では、最初に安全な位置から屋根全体を確認し、材料が変わる境界、増築部、補修部、重ね葺き部分を把握します。屋根面を複数の調査区画に分け、図面上に番号を付けると、写真、資料、判定結果を整理しやすくなります。
同じ色に塗装されていても、端部形状、板の幅、厚さ、固定間隔、表面模様が異なる場合は、別材料が混在している可能性があります。屋根の一部だけ交換されている場合は、新旧材料の境界を明確に記録します。
裏面や端部に文字、記号、製造時期を示す表示が残っていれば、材料を特定する手掛かりになります。ただし、表示を確認するために現場担当者が屋根材を持ち上げたり、割ったり、削ったりしてはいけません。破壊や採取を伴う確認は、必要な知識、資格、飛散防止措置を備えた調査者が計画して実施します。
現地では、ひび割れ、欠け、剥離、反り、固定部周辺の破損も確認します。これらの劣化は石綿含有を判定する根拠ではありませんが、調査や施工によって材料が破損しやすいかを判断する重要な情報です。
過去の塗装や補修も確認します。屋根材の一部が補修材で覆われている場合、下にある材料の表面を直接確認できません。補修箇所だけ別の板材へ交換されている可能性もあります。補修範囲を一つの調査区画として記録し、必要に応じて追加資料を探します。
軒先や雨どいに屋根材の破片が落ちている場合は、素手で触ったり、その場で折ったりしません。位置と状態を写真で記録し、調査者へ共有します。既に屋根材の破損が進み、粉じんが発生している可能性がある場合は、通常の屋根上調査を続けず、立入方法、呼吸用保護具、飛散防止措置などを見直します。
屋根上で目視調査を行う場合は、石綿対策だけでなく、高所作業の安全対策が必要です。屋根の勾配、強度、濡れ、風、苔、開口部などを確認し、適切な墜落防止設備と通路を設けます。劣化した波形屋根などでは、踏み抜きの危険を前提に調査方法を決めます。
現地写真は、屋根全体が分かる写真と材料の特徴が分かる詳細写真を組み合わせます。詳細写真だけでは撮影位置を特定できないため、図面上の区画番号と写真番号を対応させます。
写真記録には、材料境界、補修跡、支持金具予定位置、配線貫通予定位置、試料採取候補位置、未確認部分を含めます。現地調査の記録を設計図へ重ねることで、施工担当者が未調査範囲へ誤って穴を開けるリスクを減らせます。
確認項目5 適切な資格者による事前調査と分析で判定する
五つ目の確認項目は、法令上必要な事前調査を、調査対象に対応した資格者などが行うことです。太陽光施工会社の担当者が行う予備確認は、資料を集め、工事範囲を整理するうえで有効ですが、それだけで法令上の事前調査が完了するとは限りません。
2023年10月1日以降に着工する建築物の解体・改修工事では、法令上の例外に該当する場合を除き、建築物石綿含有建材調査者など一定の要件を満たす者が事前調査を行う必要があります。依頼時には、資格名だけでなく、その資格で今回の建物と部位を調査できるかを確認します。
一般建築物石綿含有建材調査者と特定建築物石綿含有建材調査者は、全ての建築物を調査できる資格です。一方、一戸建て等石綿含有建材調査者が調査できる範囲は、一戸建て住宅と共同住宅の住戸内部に限られ、共同住宅の共用部分は対象外です。屋根の外部を調査する今回のようなケースでは、一戸建て住宅であっても、この限定資格だけでは対象範囲を満たさないため、屋根外部を調査できる資格者などへ依頼する必要があります。
なお、2006年9月1日以後に建築物の設置工事へ着手したことが書面で明らかな場合など、資格者による書面・目視調査を要しない法令上の取扱いがあります。適用の可否は、増築、重ね葺き、古い材料の残置、別建物への接続などを含めて確認し、該当しない部分を一括して除外しないようにします。
事前調査では、設計図書などによる書面調査と現地での目視調査を行います。書面と目視で石綿含有の有無を明らかにできない場合は、分析調査を行うか、石綿を含有する材料とみなして法令に基づく措置を講じます。不明な材料を通常の非含有材料として加工することは避けなければなりません。
分析を行う場合は、同一材料とみなせる範囲を調査者が整理し、適切な位置から試料を採取します。屋根面に複数の材料が混在する場合、一つの試料だけで全体を代表できないことがあります。色、形状、厚さ、施工年代、固定方法が異なる部分は、別材料として判定する必要がないかを検討します。
分析調査は、法令で定められた知識と技能を有する分析調査者が実施する必要があります。試料採取を行う者と分析を行う者の役割を明確にし、採取位置、試料番号、分析結果、適用範囲が追跡できるように記録します。
屋根材が塗装されている場合は、塗膜と基材をどのように区分するかも確認します。重ね葺き屋根では、表面材と下層の既存材料を分けて調査します。支持金具が下葺き材まで到達する場合は、表面の屋根材だけを確認して調査を完了しないよう注意します。
試料採取は材料を傷つける作業です。採取時には粉じんの飛散防止と作業者のばく露防止が必要であり、採取後には屋根の防水性能を損なわない復旧も必要です。現場担当者が自己判断で屋根材を削り、簡易的に試料を作ることは避けます。
事前調査の結果には、調査した建物、工事範囲、材料の種類、使用位置、石綿含有の有無、判定根拠、調査日、調査者、目視できなかった材料の有無などを記録します。工事の対象範囲と実際に調査した範囲を明確にし、調査対象外の部分を「非含有」と誤認させない表示が必要です。
事前調査結果の記録は、調査終了後に法令で定められた期間保存し、工事中はその写しを作業場所に備え付けます。また、解体等工事の実施期間中は、石綿含有の有無や行政報告の対象か否かにかかわらず、事前調査結果の概要を周辺住民と作業者の双方が見やすい場所に掲示します。
一定規模以上の工事では、石綿が見つからなかった場合を含め、事前調査結果を着工前に所管行政機関へ報告する必要があります。建築物の改修工事では、材料費や機器費、消費税を含む工事全体の請負金額が基準となるため、太陽光設備本体を含む契約全体で報告対象を確認します。契約を分けたことだけで報告対象外になるとは限りません。
報告基準に達しない工事であっても、事前調査自体が不要になるわけではありません。工事の規模、穴あけ箇所の数、作業時間の短さだけを理由に調査を省略しないようにします。
石綿含有または含有みなしとなった場合の対応
事前調査の結果、石綿含有が確認された場合や、分析を実施せず含有材料として扱う場合は、通常の太陽光施工手順をそのまま適用してはいけません。まず、含有が確認された材料と太陽光施工の作業内容を照合し、どの工程で材料が破損する可能性があるかを整理します。
支持金具の穴あけ、屋根材の切断、配線貫通、既存屋根材の取り外し、設備基礎周辺の補修など、石綿含有材料へ直接影響する作業を抽出します。そのうえで、含有材料を加工しない固定方法や配置へ変更できるか、屋根改修を先行できるか、太陽光設備の設置自体を見直す必要があるかを検討します。
ただし、穴を開けなければ必ず安全になるとは限りません。屋根材の上を歩くことでひび割れが広がる場合や、クランプなどの締め付けによって材料が破損する場合もあります。施工方法は、材料の劣化状態、屋根構造、固定部に作用する力、防水性能、将来の保守方法を踏まえて判断します。
石綿含有成形板等を除去する場合は、切断や破砕を避け、可能な限り原形のまま取り外すことが原則です。技術上やむを得ず切断などを行う場合は、湿潤化、集じん、隔離や養生、適切な呼吸用保護具など、建材の種類と作業方法に応じた措置を講じます。必要な措置は一律ではないため、作業計画で具体化します。
石綿含有建材を取り扱う作業では、石綿作業主任者の選任、作業者への特別教育、立入禁止措置、保護具の使用、清掃、廃棄物管理など、関係法令に基づく対応が必要です。調査者が含有を判定した後は、実際の除去や加工を担当する事業者が作業方法と安全措置を決定し、関係者へ周知します。
屋根材を撤去した後に太陽光設備を設置する場合は、石綿対策工事と太陽光施工を別々に進めるのではなく、撤去後の屋根仕様を事前に調整します。野地板や構造部材の状態、防水仕様、支持金具の位置、新しい屋根材の固定方法を一体的に検討します。
既存の石綿含有屋根を残し、その上に別の屋根材を重ねて太陽光設備を設置する方法を検討する場合も、単に覆えば問題が解消するとは限りません。固定部材が既存屋根を貫通する可能性、既存屋根の劣化、建物への追加荷重、将来の撤去や改修、維持管理時の表示方法を確認する必要があります。
石綿含有屋根の撤去や加工を専門事業者が担当する場合は、作業の境界を明確にします。誰が石綿含有材料を取り扱い、誰が清掃と復旧を確認し、どの時点から太陽光施工者が屋根へ立ち入れるのかを施工計画に示します。
除去した材料や作業によって発生した廃棄物は、他の建設廃棄物と安易に混在させず、石綿含有産業廃棄物など該当する区分に応じて保管、運搬、処分します。原形のまま取り外した材料についても、現場で不要な切断や破砕を行わないことが重要です。
石綿含有が判明したことだけを理由に、必ず太陽光施工が不可能になるわけではありません。ただし、施工可能性は屋根の状態、建物構造、固定方法、石綿対策、防水、将来の維持管理を総合的に検討して判断します。安全条件を確保できない場合は、配置変更、屋根改修、施工延期、中止も選択肢になります。
調査結果を太陽光施工の設計と工程へ反映する
石綿事前調査は、太陽光設備の配置や固定方法が確定した後に付け加える手続きではありません。既存屋根へどのような施工が可能かを判断するための前提条件として、計画の早い段階で実施することが重要です。
調査結果が出る前にパネル配置や支持金具を確定すると、石綿含有部分を避けるために設計変更が必要になった際、パネル枚数、配線、電気設備の位置、施工通路などをまとめて見直すことになります。
現地調査の初期段階では、屋根材の石綿含有が未判定であることを設計担当者へ共有し、破壊を伴う固定方式を確定しないようにします。判定結果が出た後に、構造、防水、風圧、積雪、耐食性などの条件と合わせて固定方式を選びます。
施工範囲が調査範囲内に収まっているかも確認します。パネルを置く範囲だけでなく、足場、揚重、作業通路、資材仮置き、配線固定、貫通部、電気設備の設置まで含めて照合します。
工程表には、資料収集、事前調査、必要な分析、結果整理、発注者への説明、行政報告の要否確認、設計確定、作業計画、関係者への周知を組み込みます。調査や分析が完了する前に既存屋根へ穴を開ける工程を設定しないようにします。
施工開始後に固定位置を変更する場合は、変更先が調査済みの範囲かを確認します。未調査範囲へ移動する必要が生じた場合は、追加確認を完了するまで穿孔や切断を行わない運用にします。
調査結果には、非含有と判定された部分、含有と判定された部分、含有みなしで取り扱う部分、未調査部分を明確に表示します。単に「屋根は調査済み」と記載すると、異なる材料が混在する屋根で取り違えが起こりやすくなります。
石綿調査と同時に、屋根の強度、防水、腐食、下地位置も確認します。石綿を含まない屋根材であっても、劣化や耐荷力不足があれば太陽光設備を安全に設置できない場合があります。石綿の非含有判定は、屋根の施工適性や構造安全性を保証するものではありません。
発注者、元請事業者、調査者、屋根工事担当者、電気工事担当者の役割も整理します。誰が資料を提供し、誰が調査結果を設計へ反映し、誰が着工前に確認し、変更が発生した場合に誰へ連絡するのかを決めておくことが重要です。
現場記録と情報共有で施工時の取り違えを防ぐ
石綿事前調査の結果を安全な太陽光施工につなげるには、調査報告書を保管するだけでなく、現場で利用できる形に整理する必要があります。
屋根伏図や平面図に調査区画を示し、それぞれの材料、施工年代、改修履歴、判定結果を記入します。屋根面、庇、増築部、軒先などを別の区画として管理すると、異なる材料の取り違えを防ぎやすくなります。
写真は、全景写真と詳細写真を組み合わせます。全景写真には撮影方向を示し、詳細写真には区画番号と撮影位置を付けます。材料境界や補修部が分かるように撮影し、図面と写真を対応させます。
試料採取を行った場合は、採取位置、対象材料、試料番号、復旧状態を記録します。採取位置とは異なる材料へ分析結果を誤って適用しないよう、同一材料と判断した範囲も明確にします。
調査できなかった場所は、空欄にせず未調査として表示します。設備の下、重ね葺き屋根の下層、立ち入りできない庇、取り外さなければ確認できない部分などについては、確認する時期と方法を記載します。
設計変更があった場合は、調査範囲図も更新します。配置図だけが変更され、石綿調査の図面が旧版のまま残ると、施工担当者が変更後の固定位置を調査済みだと誤認する可能性があります。
図面や写真には更新日と版を付け、現場で使用する資料を統一します。着工前の打ち合わせでは、施工班が最新資料を持っていることを確認し、含有部分、含有みなし部分、未調査部分、加工禁止部分を具体的に共有します。
施工中は、固定位置や配線経路の変更内容を記録します。現場判断で位置をずらした場合も、変更先の材料と調査結果を確認してから作業します。
屋根面の位置を記録する際は、写真、図面、現地の基準となる箇所を組み合わせます。衛星測位による位置情報を利用する場合も、屋根周辺の壁、設備、樹木、上空視界などによって測位状態が変化する可能性を考慮し、位置情報だけで材料境界や施工可否を判断しないようにします。
太陽光施工前の石綿確認で起こりやすい誤判断
太陽光施工前の石綿確認で起こりやすい誤判断の一つは、屋根材の色や形で含有の有無を決めることです。見た目が似ている建材は多く、塗装や汚れによって特徴が隠れていることもあります。外観は材料を区分するための情報として使い、最終的な含有判定を外観だけで行わないようにします。
二つ目は、建物の竣工年だけで判断することです。部分補修、増築、重ね葺きが行われた建物では、建物の年代と施工対象材料の年代が一致しない可能性があります。2006年9月1日以後という法令上重要な日付を使う場合も、書面による着工日の確認と対象範囲の一致が必要です。
三つ目は、表面が金属だから石綿含有建材がないと考えることです。金属板の裏側に別の材料がある場合や、下に古い屋根材が残っている場合があります。固定部材が到達する層と、歩行や荷重で影響を受ける範囲を確認します。
四つ目は、小規模な工事だから事前調査が不要だと考えることです。行政への結果報告が必要になる工事には規模や請負金額の基準がありますが、報告対象外であることと事前調査が不要であることは同じではありません。
五つ目は、過去の調査報告書があるため今回の確認は不要だと考えることです。過去の報告書が屋根を対象としているか、現在の施工範囲と一致するか、適切な方法と資格者で調査されたか、調査後に改修されていないかを確認します。
六つ目は、試料を少し削るだけなら通常の現地担当者でも行えると考えることです。試料採取は建材を傷つけ、粉じんを発生させる可能性があります。防水上の問題もあるため、調査者が計画した方法で実施し、分析は法令上の要件を満たす者が行います。
七つ目は、一戸建て等石綿含有建材調査者であれば、一戸建て住宅の屋根外部も調査できると考えることです。この資格の調査範囲は一戸建て住宅と共同住宅の住戸内部に限られます。屋根外部は、対象範囲に対応できる資格者などへ依頼します。
八つ目は、非含有と判定された屋根であれば、太陽光施工に問題がないと判断することです。石綿を含まなくても、屋根材の劣化、下地腐食、漏水、耐荷力不足があれば、固定金具の取り付けに適さない場合があります。
九つ目は、調査後の設計変更を石綿調査へ反映しないことです。固定位置や配線経路を変更した場合は、新しい施工範囲が調査済みかを確認します。
十個目は、屋根面だけを確認し、配線貫通部や軒裏を見落とすことです。太陽光設備は屋根上だけで完結するとは限らないため、建物内部までの施工経路を一連の工事範囲として確認します。
十一個目は、石綿含有が判明したら、通常の屋根工事と同じ手順で直ちに撤去を始めることです。含有建材を扱う作業では、作業計画、作業主任者、特別教育、飛散防止、ばく露防止、立入管理、廃棄物管理など、建材と作業方法に応じた対策が必要です。
これらの誤判断を防ぐには、現場担当者だけで結論を出さず、発注者、元請事業者、設計者、調査者、屋根工事担当者、電気工事担当者が同じ資料を確認する体制を作ることが重要です。
まとめ
太陽光 施工前に石綿含有屋根を見分けるためには、外観だけで判断せず、五つの確認項目を順番に進める必要があります。
最初に建築年、設置工事への着手日、屋根の改修履歴を整理し、屋根面ごとの施工時期を確認します。次に図面、仕様書、工事写真、修繕台帳などから材料情報を追います。そのうえで、表面の屋根材だけでなく、下葺き材、断熱材、重ね葺きされた既存屋根、配線貫通部まで施工対象範囲を広げて確認します。
現地では、屋根材の形状、表示、補修痕、材料境界を記録しますが、見た目だけで石綿含有の有無を確定してはいけません。原則として、対象部位を調査できる資格者などが書面調査と目視調査を行い、必要に応じて分析調査を実施するか、石綿含有材料として取り扱います。
2006年9月1日以後に建築物の設置工事へ着手したことが書面で明らかな場合などは、法令上、着工日の確認によって石綿が使用されていないと判断できる取扱いがあります。ただし、増築、改修、重ね葺き、古い材料の残置がある場合は、対象範囲を分けて確認し、一部の新しい材料を根拠に屋根全体を非含有と扱わないようにします。
石綿含有または含有みなしとなった場合は、通常の穴あけや切断をそのまま行わず、施工方法、固定位置、配線経路、作業区域を見直します。除去が必要な場合は、切断や破砕を避け、原形のまま取り外すことを基本として、法令に沿った飛散防止とばく露防止の措置を講じます。
事前調査の結果は、報告書として保存するだけでなく、屋根伏図、現地写真、施工図と関連付けます。調査済み部分、含有部分、含有みなし部分、未調査部分を現場で識別できるようにし、設計変更が生じた場合は調査範囲も更新します。
太陽光施工を安全かつ円滑に進めるには、石綿確認を着工直前の手続きではなく、設計条件を決めるための初期調査として位置付けることが重要です。建築履歴、材料情報、現地状況、調査結果を一貫して管理することで、施工中の中断や未調査材料への誤加工を防ぎやすくなります。
屋根面の調査位置、材料境界、補修部、施工予定位置を写真と位置情報で整理し、関係者間で共有する現場記録を検討する際は、LRTK Phoneを活用する方法もあります。ただし、衛星測位の状態や現場条件を確認し、位置情報だけで石綿含有の判定や材料境界の確定を行わず、調査報告書、図面、現地表示と組み合わせて管理することが重要です。